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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-15
(45)【発行日】2023-08-23
(54)【発明の名称】空気調和装置
(51)【国際特許分類】
   F25B 1/00 20060101AFI20230816BHJP
   F25B 43/00 20060101ALI20230816BHJP
   F24F 11/30 20180101ALI20230816BHJP
   F24F 11/70 20180101ALI20230816BHJP
【FI】
F25B1/00 385Z
F25B43/00 B
F24F11/30
F24F11/70
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2022547487
(86)(22)【出願日】2021-08-25
(86)【国際出願番号】 JP2021031243
(87)【国際公開番号】W WO2022054584
(87)【国際公開日】2022-03-17
【審査請求日】2023-01-26
(31)【優先権主張番号】P 2020154116
(32)【優先日】2020-09-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】505461072
【氏名又は名称】東芝キヤリア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001380
【氏名又は名称】弁理士法人東京国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】永井 宏幸
(72)【発明者】
【氏名】三浦 賢
(72)【発明者】
【氏名】タリガン イルヴァン ブラタ
【審査官】五十嵐 公輔
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/160967(WO,A1)
【文献】特開2020-85269(JP,A)
【文献】特開2007-218558(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 1/00
F25B 43/00
F24F 11/30
F24F 11/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機、室外熱交換器、アキュムレータ及び過冷却熱交換器を備えた室外ユニットと、室内熱交換器を備えた複数台の室内ユニットとが連結配管により接続されて冷媒回路を構成すると共に、制御部を有する空気調和装置において、
前記アキュムレータは前記圧縮機の吸入側に接続され、このアキュムレータの底部が、弁機構を備えた戻しバイパス配管を介して前記圧縮機の吸入側に接続され、
前記圧縮機の吐出側に前記室外熱交換器及び前記過冷却熱交換器が順次接続され、前記過冷却熱交換器の冷却源が、過冷却用膨張機構を備えた過冷却バイパス回路であり、この過冷却バイパス回路は、前記室外熱交換器の下流側の冷媒を前記過冷却用膨張機構により膨張させて前記過冷却熱交換器へ導いた後に前記アキュムレータへ導くものであり、
前記制御部は、暖房運転時に前記冷媒回路内の冷媒量が過剰であると判断したときに、前記戻しバイパス配管の前記弁機構を全閉動作させ、且つ前記過冷却バイパス回路の前記過冷却用膨張機構の開度を全閉状態から徐々に開動作させるよう制御することを特徴とする空気調和装置。
【請求項2】
前記室外ユニットは、前記圧縮機の吐出側に吐出圧力を測定する吐出圧力センサを備え、前記室内ユニットは、前記室内熱交換器の液冷媒温度を測定する室内液側温度センサと、前記室内熱交換器に流入する冷媒量を調整する室内膨張機構とを備え、
前記制御部は、暖房運転時に前記吐出圧力センサにより測定された前記吐出圧力から凝縮温度を求め、この凝縮温度と、暖房運転中に前記室内液側温度センサにより測定された前記室内熱交換器の前記液冷媒温度との差から室内過冷却度を求め、暖房運転時に冷媒回路内の冷媒量が過剰であるか否かを、前記室内過冷却度と前記室内膨張機構の開度との少なくとも一方を判断指標として判断するよう構成されたことを特徴とする請求項1に記載の空気調和装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、室外ユニットと複数台の室内ユニットとが接続された空気調和装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載の空気調和装置では、冷媒過剰検出時のアキュムレータへの液溜め方法として、運転中の室外ユニットのアキュムレータ及び停止中の室外ユニットのアキュムレータに過剰な冷媒を貯溜する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2007-218558号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、運転中の室外ユニットのアキュムレータに貯溜された冷媒は、貯溜してもすぐに排出される可能性がある。また、停止中の室外ユニットのアキュムレータに貯溜された冷媒は、この停止中の室外ユニットが再運転されるまで回収できない場合がある。従って、空気調和装置の運転状態が変化して適正冷媒量が変更された場合に、冷媒量不足や、冷媒量過剰による暖房性能の低下や、冷媒量不足解消のために行なう停止室外ユニットの再運転に伴う不必要な消費電力量などの不具合が生ずる恐れがある。
【0005】
本発明の実施形態は、上述の事情を考慮してなされたものであり、暖房運転時に冷媒回路における冷媒量を適正化して暖房性能を良好に確保できる空気調和装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施形態における空気調和装置は、圧縮機、室外熱交換器、アキュムレータ及び過冷却熱交換器を備えた室外ユニットと、室内熱交換器を備えた複数台の室内ユニットとが連結配管により接続されて冷媒回路を構成すると共に、制御部を有する空気調和装置において、前記アキュムレータは前記圧縮機の吸入側に接続され、このアキュムレータの底部が、弁機構を備えた戻しバイパス配管を介して前記圧縮機の吸入側に接続され、前記圧縮機の吐出側に前記室外熱交換器及び前記過冷却熱交換器が順次接続され、前記過冷却熱交換器の冷却源が、過冷却用膨張機構を備えた過冷却バイパス回路であり、この過冷却バイパス回路は、前記室外熱交換器の下流側の冷媒を前記過冷却用膨張機構により膨張させて前記過冷却熱交換器へ導いた後に前記アキュムレータへ導くものであり、前記制御部は、暖房運転時に前記冷媒回路内の冷媒量が過剰であると判断したときに、前記戻しバイパス配管の前記弁機構を全閉動作させ、且つ前記過冷却パイパス回路の前記過冷却用膨張機構の開度を全閉状態から徐々に開動作させるよう制御することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の実施形態によれば、暖房運転時に冷媒回路における冷媒量を適正化して暖房性能を良好に確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】一実施形態に係る空気調和装置の構成を示す系統図。
図2図1の空気調和装置における制御部を示すブロック図。
図3図1の空気調和装置の暖房運転時に冷媒量が過剰である場合の判断と制御を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための形態を、図面に基づき説明する。
図1に示す空気調和装置10は、室外ユニット11と複数台の室内ユニット12とが、連結配管としての液冷媒連絡配管13及びガス冷媒連絡配管14により接続されて冷媒回路15を構成するものであり、更に制御部16(図2)を有する。
【0010】
室外ユニット11は、冷媒回路15の一部を構成する室外側冷媒回路15Aを有する。この室外側冷媒回路15Aは、圧縮機18、四方弁19、室外熱交換器20、室外膨張機構としての室外膨張弁21、室外ファン22、アキュムレータ23、過冷却熱交換器24、液側パックドバルブ25及びガス側パックドバルブ26を備えて構成される。
【0011】
圧縮機18は、運転容量可変型の圧縮機であり、後述のインバータ46により回転数が制御されるモータによって駆動される。
【0012】
四方弁19は、冷媒の流れを切り換える弁であり、冷房運転時に室外熱交換器20を凝縮器とし、且つ室内熱交換器40(後述)を蒸発器として機能させる。四方弁19は、冷房運転時に、図1の実線に示すように、圧縮機18の吐出側と室外熱交換器20のガス側とを接続させると共に、圧縮機18の吸入側(つまりアキュムレータ23)とガス側パックドバルブ26(つまりガス冷媒連絡配管14)とを接続させる。また、四方弁19は、暖房運転時に室内熱交換器40を凝縮器とし、且つ室外熱交換器20を蒸発器として機能させる。四方弁19は、この暖房運転時に、図1の破線に示すように、圧縮機18の吐出側とガス側パックドバルブ26(つまりガス冷媒連絡配管14)とを接続させると共に、圧縮機18の吸入側と室外熱交換器20のガス側とを接続させる。
【0013】
室外熱交換器20は、伝熱管と多数のフィンにより構成され、上述の如く冷房運転時に凝縮器として、暖房運転時に蒸発器としてそれぞれ機能する。この室外熱交換器20は、ガス側が四方弁19に、液側が液側パックドバルブ25(つまり液冷媒連絡配管13)に接続されている。
【0014】
室外膨張弁21は、室外側冷媒回路15A内を流れる冷媒の圧力や流量を調整するために室外熱交換器20に流入する冷媒量を調整するものであり、室外熱交換器20の液側に接続される。この室外膨張弁21は、弁開度の調整が容易な電子膨張弁が好ましい。
【0015】
室外ファン22は、室外ユニット11内に外気を吸入して、室外熱交換器20において外気を冷媒と熱交換させた後に室外ユニット11外へ排出する。この室外ファン22は、室外熱交換器20に供給する外気の風量を変更可能なファンである。
【0016】
アキュムレータ23は、四方弁19と圧縮機18との間で圧縮機18の吸入側に接続されており、冷媒回路15内に発生した過剰な冷媒を貯溜する容器である。このアキュムレータ23は、液冷媒とガス冷媒とを分離して、ガス冷媒のみを圧縮機18に吸入させる。また、アキュムレータ23の底部は、弁機構としての電磁弁28を備えた戻しバイパス配管27を介して圧縮機18の吸入側に接続される。アキュムレータ23の底部に貯溜された冷媒と油の混合液は、戻しバイパス配管27を経て圧縮機18に吸入されるが、その混合液の流れが電磁弁28の開閉により制御される。
【0017】
室外ユニット11では、圧縮機18の吐出側に四方弁19、室外熱交換器20、室外膨張弁21及び過冷却熱交換器24が順次接続されている。このうちの過冷却熱交換器24は、室外熱交換器20において凝縮された冷媒を冷却するものであり、この過冷却熱交換器24の冷却源が過冷却バイパス回路30である。この過冷却バイパス回路30は、過冷却用膨張機構としての過冷却用膨張弁31を備える。そして、過冷却バイパス回路30は、室外熱交換器20から過冷却熱交換器24を経て室内膨張弁41へ流れる冷媒の一部を、室外熱交換器20の下流側の例えば過冷却熱交換器24の下流側で分流し、過冷却用膨張弁31により膨張させて減圧し、この減圧された冷媒を過冷却熱交換器24に導いた後にアキュムレータ23に導く。室外熱交換器20から過冷却熱交換器24内を室内ユニット12の室内膨張弁41へ向かって流れる冷媒は、過冷却バイパス回路30を流れ過冷却用膨張弁31により減圧されて過冷却熱交換器24に導かれた冷媒により熱交換されて冷却される。
【0018】
液側パックドバルブ25は、室外ユニット11の外部の配管である液冷媒連絡配管13との接続口に設けられた弁であり、過冷却熱交換器24に接続される。また、ガス側パックドバルブ26は、室外ユニット11の外部の配管であるガス冷媒連絡配管14との接続口に設けられた弁であり、四方弁19に接続される。
【0019】
室外ユニット11には各種のセンサが設けられている。つまり、圧縮機18の吐出側に、吐出圧力PDの測定する吐出圧力センサ32と、吐出温度TDを測定する吐出温度センサ34がそれぞれ設けられる。また、圧縮機18の吸入側のアキュムレータ23の上流に、吸入圧力PSを測定する吸入圧力センサ33と、吸入温度TS1を測定する吸入温度センサ35がそれぞれ設けられる。
【0020】
室外熱交換器20の液側に、室外熱交換器20に流出入する液冷媒温度TL1を測定する液側温度センサ36が設けられる。また、過冷却バイパス回路30には、過冷却熱交換器24の出口側の冷媒温度TS2を測定する過冷却バイパス温度センサ37が設けられる。また、過冷却熱交換器24と液側パックドバルブ25との間に、液管温度TL2を測定する液管温度センサ38が設けられる。更に、室外熱交換器20における外気の吸入側に、外気温度TGを測定する外気温度センサ39が設けられる。
【0021】
複数台のそれぞれの室内ユニット12は、冷媒回路15の一部を構成する室内側冷媒回路15Bを有する。この室内側冷媒回路15Bは、室内熱交換器40、室内膨張機構としての室内膨張弁41、及び室内ファン42を備えて構成される。
【0022】
室内熱交換器40は、伝熱管と多数のフィンにより構成された熱交換器であり、冷房運転時に蒸発器として機能して室内空気を冷却し、暖房運転時に凝縮器として機能して室内空気を加熱する。
【0023】
室内膨張弁41は、室内側冷媒回路15B内を流れる冷媒の流量等を調整するために室内熱交換器40に流入する冷媒量を調整するものであり、室内熱交換器40の液側に接続される。この室内膨張弁41による室内熱交換器40への流入冷媒量の調整は、後述の室内過冷却度SCと目標室内過冷却度SCOとの差に基づいて室内膨張弁41の開度が制御されることでなされる。この室内膨張弁41は、弁開度の調整が容易な電子膨張弁が好ましい。
【0024】
室内ファン42は、室内ユニット12内に室内空気を吸入し、この吸入空気を室内熱交換器40において冷媒と熱交換させた後に室内に供給する。また、室内ユニット12には、各種のセンサが設けられている。
【0025】
つまり、室内熱交換器40のガス側には、室内熱交換器40のガス冷媒温度TC1を測定する室内ガス側温度センサ43が設けられる。室内熱交換器40の液側には、室内熱交換器40の液冷媒温度TC2を測定する室内液側温度センサ44が設けられる。また、室内熱交換器40における室内空気の吸入側に、室内ユニット12内に流入する室内空気の温度(室内空気温度)TAを測定する室内空気温度センサ45が設けられる。
【0026】
上述の室外ユニット11及び室内ユニット12では、室外ユニット11の圧縮機18、四方弁19、室外熱交換器20、室外膨張弁21及び過冷却熱交換器24、室内ユニット12の室内膨張弁41及び室内熱交換器40、並びに室外ユニット11のアキュムレータ23は、冷媒配管により順次接続されて冷凍サイクルを構成する。
【0027】
また、室外ユニット11は、室外ユニット11を構成する各部の動作を制御する室外制御部16A(図2)を有し、室内ユニット12は、室内ユニット12を構成する各部の動作を制御する室内制御部16B(図2)を有する。特に室外制御部16Aは、圧縮機18の運転を周波数制御するインバータ46に指令信号を送信する。インバータ46は、商用交流電源47の電圧を整流し、整流後の電圧を、室外制御部16Aからの直流信号に応じた周波数に変換して圧縮機18のモータへ出力し、この圧縮機18の容量を周波数制御する。
【0028】
室外ユニット11の室外制御部16Aは、複数台の室内ユニット12のそれぞれの室内制御部16Bと伝送線48を介して制御信号等の送受信がなされる。即ち、室外制御部16Aと室内制御部16Bとによって、空気調和装置10全体の運転制御を行なう制御部16が構成される。
【0029】
この制御部16は、圧力センサ32及び33、並びに各種の温度センサ35~39、43~45の測定信号を受信すると共に、これらの測定信号に基づいて圧縮機18、四方弁19、室外膨張弁21、室外ファン22、電磁弁28、過冷却用膨張弁31、室内膨張弁41及び室内ファン42等を制御する。これにより、制御部16は、次に述べる空気調和装置10の冷房運転、暖房運転、及び過剰冷媒制御運転等を実施する。
【0030】
(A)冷房運転
冷房運転時には、四方弁19が図1の実線に示される状態、つまり、圧縮機18の吐出側が室外熱交換器20のガス側に接続され、且つ圧縮機18の吸入側が、ガス側パックドバルブ26及びガス冷媒連絡配管14を介して室内熱交換器40のガス側に接続される状態に、制御部16により制御される。
【0031】
この状態で、制御部16により圧縮機18、室外ファン22及び室内ファン42が起動制御されると、低圧のガス冷媒は、圧縮機18に吸入されて圧縮され、高圧のガス冷媒となる。その後、高圧のガス冷媒は、四方弁19を経由して室外熱交換器20に送られ、室外ファン22によって供給される外気と熱交換を行って凝縮し、高圧の液冷媒になる。この高圧の液冷媒は、室外膨張弁21を通過して過冷却熱交換器24に流入し、過冷却バイパス回路30を流れる冷媒と熱交換を行って更に冷却されて過冷却状態になる。
【0032】
このとき、室外熱交換器20にて凝縮され且つ過冷却熱交換器24で冷却された冷媒の一部は、分流されて過冷却バイパス回路30に流れ、過冷却用膨張弁31により減圧された後に、圧縮機18の吸入側のアキュムレータ23の上部に戻される。
【0033】
過冷却熱交換器24により過冷却状態になった高圧の液冷媒は、液冷媒連絡配管13を経由して室内ユニット12に送られる。この室内ユニット12に送られた高圧の液冷媒は、室内膨張弁41により圧縮機18の吸入圧力近くまで減圧され、低圧の気液二相状態の冷媒となって室内熱交換器40に送られ、この室内熱交換器40において室内空気と熱交換を行って室内空気を冷却すると共に蒸発し、低圧のガス冷媒となる。
【0034】
この低圧のガス冷媒は、ガス冷媒連絡配管14を経由して室外ユニット11に送られ、四方弁19を経由してアキュムレータ23に流入する。このアキュムレータ23に流入した低圧のガス冷媒は、再び圧縮機18に吸入される。
【0035】
(B)暖房運転
暖房運転時には、四方弁19が図1の破線に示された状態、つまり圧縮機18の吐出側が、ガス側パックドバルブ26及びガス冷媒連絡配管14を介して室内熱交換器40のガス側に接続され、且つ圧縮機18の吸入側が室外熱交換器20のガス側に接続される状態に、制御部16により制御される。
【0036】
この状態で、制御部16により圧縮機18、室外ファン22及び室内ファン42が起動制御されると、低圧のガス冷媒は、圧縮機18に吸入されて圧縮され、高圧のガス冷媒となり、四方弁19及びガス冷媒連絡配管14を経由して室内ユニット12に送られる。
【0037】
この室内ユニット12に送られた高圧のガス冷媒は、室内熱交換器40において、室内空気と熱交換を行って室内空気を加熱すると共に凝縮し、高圧の液冷媒となった後、室内膨張弁41を通過する際に、室内膨張弁41の弁開度に応じて減圧される。
【0038】
この室内膨張弁41を通過した冷媒は、液冷媒連絡配管13を経由して室外ユニット11に送られ、過冷却熱交換器24及び室外膨張弁21を経由して更に減圧された後に、室外熱交換器20に流入する。この室外熱交換器20に流入した低圧の気液二相状態の冷媒は、室外ファン22により供給される外気と熱交換を行って蒸発して低圧のガス冷媒となり、四方弁19を経由してアキュムレータ23に流入する。このアキュムレータ23に流入した低圧のガス冷媒は、再び圧縮機18に吸入される。
【0039】
(C)過剰冷媒制御運転
複数台の室内ユニット12を有するマルチタイプの空気調和装置10では、冷房運転を基準にして冷媒回路15内に封入する冷媒量を決定した場合、室外熱交換器20の容量に対して室内熱交換器40の容量が小さくなるような接続条件では、暖房運転時に冷媒回路15内の冷媒量が過剰になる場合がある。このように暖房運転時に冷媒量が過剰になると、圧縮機18の吐出圧力の上昇や、室内ユニット12の室内過冷却度の増大により暖房性能が低下してしまう恐れがある。
【0040】
そこで、制御部16は、まず、空気調和装置10の暖房運転時に吐出圧力センサ32により測定された吐出圧力PDから凝縮温度を換算して求める。次に、制御部16は、空気調和装置10の暖房運転時に室内液側温度センサ44により測定された液冷媒温度TC2と上述の凝縮温度との差から室内過冷却度SCを求める。そして、制御部16は、空気調和装置10の暖房運転時に冷媒回路15内の冷媒量が過剰であるか否かを、上述のようにして求めた室内過冷却度SCと実際に検出された室内膨張弁41の開度PLSとの少なくとも一方を判断指標として判断する。
【0041】
具体的には、制御部16は、図3に示すように、空気調和装置10を暖房運転させた後(S1)、室内膨張弁41の開度PLSを検出する(S2)。次に、制御部16は、室内膨張弁41の開度PLSが所定開度Aよりも大きいか否かを判断する(S3)。室内膨張弁41の開度PLSが所定開度A以下である場合に、制御部16は現在の運転状態を継続させる(S4)。
【0042】
室内膨張弁41の開度PLSが所定開度Aよりも大きい場合に、制御部16は、圧縮機18の吐出圧力PD及び室内熱交換器40の液冷媒温度TC2から室内過冷却度SCを算出して求め検出する(S5)。次に制御部16は、ステップS5にて検出した室内過冷却度SC(実際の室内過冷却度SC)と目標室内過冷却度SCOとの差が所定値Bよりも大きいか否かを判断する(S6)。
【0043】
制御部16は、ステップS6において検出した室内過冷却度SCと目標室内過冷却度SCOとの差が所定値B以下である場合に、現在の運転状態を継続させる(S4)。制御部16は、ステップS6において検出した室内過冷却度SCと目標室内過冷却のSCOとの差が所定値Bを超えている場合には、後述のアキュムレータ23への液溜め運転と、アキュムレータ23底部の戻しバイパス配管27における電磁弁28の閉止を実施する(S7)。
【0044】
ここで、空気調和装置10の暖房運転時に冷媒回路15内の冷媒量が過剰であるとの判断は、ステップS3(PLS>A)とステップS6(実SC-目標SCO>B)との2つの条件が共に満たされている場合に限らず、ステップS3の(PLS>A)のみが一定時間継続している場合、またはステップS6の(実SC-目標SCO>B)のみが一定時間以上継続している場合にも実施される。
【0045】
制御部16は、上述のようにして、空気調和装置10の暖房運転時に冷媒回路15内の冷媒量が過剰であると判断したとき、図3のステップS7に示したように、アキュムレータ23の底部と圧縮機18の吸入側とを接続する戻しバイパス配管27の電磁弁28を全閉動作(閉止)させ、且つ過冷却熱交換器24の冷却源である過冷却バイパス回路30の過冷却用膨張弁31の開度PLSを、全閉状態から徐々に開動作させて過剰な冷媒をアキュムレータ23に貯溜させる。
【0046】
以上のように構成されたことから、本実施形態によれば、次の効果を奏する。
空気調和装置10の暖房運転時に冷媒回路15内の冷媒が過剰であるとき、過冷却バイパス回路30の過冷却用膨張弁31の開度PLSを全閉状態から徐々に開動作させることで、冷媒回路15内の過剰な冷媒をアキュムレータ23に貯溜することができる。更に、戻しバイパス配管27の電磁弁28を全閉動作させることで、アキュムレータ23に貯溜された冷媒をアキュムレータ23内に長時間留めることができる。これらのことから、圧縮機18の吐出側の吐出圧力PDと室内ユニット12の室内過冷却度SCを共に適正状態に維持できるので、室内熱交換器40の凝縮性能の低下を防止して、空気調和装置10の暖房性能を良好に確保できる。
【0047】
以上、本発明の実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができ、また、それらの置き換えや変更は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0048】
10…空気調和装置、11…室外ユニット、12…室内ユニット、13…液冷媒連絡配管、14…ガス冷媒連絡配管、15…冷媒回路、16…制御部、18…圧縮機、20…室外熱交換器、23…アキュムレータ、24…過冷却熱交換器、27…戻しバイパス配管、28…電磁弁(弁機構)、30…過冷却バイパス回路、31…過冷却用膨張弁(過冷却用膨張機構)、32…吐出圧力センサ、40…室内熱交換器、41…室内膨張弁(室内膨張機構)、44…室内液側温度センサ、PD…吐出圧力、SC…室内過冷却度、TC2…液冷媒温度、PLS…室内膨張弁の開度
図1
図2
図3