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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-16
(45)【発行日】2023-08-24
(54)【発明の名称】炊飯方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 7/10 20160101AFI20230817BHJP
【FI】
A23L7/10 C
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019148402
(22)【出願日】2019-08-13
(65)【公開番号】P2021029098
(43)【公開日】2021-03-01
【審査請求日】2022-05-12
(73)【特許権者】
【識別番号】504101810
【氏名又は名称】有限会社かんこめ
(74)【代理人】
【識別番号】100154405
【弁理士】
【氏名又は名称】前島 大吾
(74)【代理人】
【識別番号】100201341
【弁理士】
【氏名又は名称】畠山 順一
(74)【代理人】
【識別番号】100079005
【弁理士】
【氏名又は名称】宇高 克己
(74)【代理人】
【識別番号】230116296
【弁護士】
【氏名又は名称】薄葉 健司
(72)【発明者】
【氏名】菅 圭一郎
【審査官】正 知晃
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3035172(JP,U)
【文献】特開平10-108635(JP,A)
【文献】特開2003-199513(JP,A)
【文献】特開2004-248608(JP,A)
【文献】特開2001-246272(JP,A)
【文献】健康人口倍増計画, お米を浸水させるならどこでする?冷蔵庫を使うのがお勧め![online], 2018年1月20日, [retrieved on 2023.03.02], Retrieved from the Internet, URL, https://kenkoubaizou.com/k2k0001157-post/
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
非金属製ネット状袋を用いた炊飯方法であって、
計量された玄米を前記袋に入れ、
前記袋の外側から前記袋を介して前記袋内部の前記玄米に外圧を与えて前記袋内部の玄米のロウ層を抜けるものの白米層までは到達しない傷を付け、
前記傷が付いた玄米が入った前記袋を水に浸漬し、
前記浸漬で水を含有した前記玄米が入った前記袋を前記水から引き上げて水切りし、
前記水切りされた玄米が入った前記袋と、前記計量された玄米の量に応じた量の水とを炊飯器に入れ、
炊飯する
炊飯方法。
【請求項2】
前記玄米の含水率(浸漬時間24時間)が38~41wt%であるよう傷が付けられる
請求項1の炊飯方法。
【請求項3】
前記傷は線状の傷である
請求項1又は請求項2の炊飯方法。
【請求項4】
前記非金属製ネット状袋は、その網目の一辺が1~2mmである
請求項1~請求項3いずれかの炊飯方法。
【請求項5】
前記袋の外側から前記袋を介して前記袋内部の前記玄米に外圧を与える工程は水中で行われる
請求項1~請求項4いずれかの炊飯方法。
【請求項6】
前記浸漬は0~10℃の温度下の保管庫にて行われる
請求項1~請求項5いずれかの炊飯方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は炊飯方法に関する。
【背景技術】
【0002】
日本では、米は主食であり、家庭でも毎日炊かれている。例えば、2合(360mL)の米が計量され、炊飯器の内釜内に入れられる。前記内釜内に水を入れ、研ぎが行われる。尤も、今日では、研ぎと言っても、洗い程度に過ぎない。特に、無洗米と言われる米が販売されており、その洗い程度すら行われない場合もある。この後、内釜内に所定量の水が加えられる。そして、スイッチが押され、炊飯が行われている。前記工程は、業務用でも、殆ど同じである。
【0003】
家庭では、一日に炊かれる回数は、多くても3回である。
【0004】
業務用では、一度に炊かれる米の量が多い。例えば、1升(1.8L)あるいは2升(3.6L)であったりする。炊飯器を多数用意している訳ではないため、炊飯頻度も多い。例えば、販売店舗にて炊飯する場合、炊飯器を1~2台しか持っていないことが多い。昼食時に、繰り返して、炊飯が行われる時も有る。例えば、顧客が予想以上に来て、炊かれたお米が無くなり、急いで炊かねばならない時も有る。
【0005】
このような事から、様々な技術が提案されている。
【0006】
特許文献1(実登録3035175号公報)では、調理用袋が開示されている。この調理用袋は、ネット状の耐熱性を持った合成繊維製の袋である。この調理用袋に計量した米が入れられる。米が入った調理用袋が炊飯器の内釜内に入れられる。水が内釜内に入れられる。そして、炊飯が行われる。特許文献1の調理用袋が用いられると、炊き上げ後には、調理用袋を持ち上げるだけで、大量の米が一気に持ち上がる。作業効率が良い。米の移動中に米の散乱が起き難い。
【0007】
近年では健康ブームによって玄米の人気が高まっている。特許文献1に記載の袋を用いて玄米を炊くと、炊き上がった玄米の食味は劣っていた。玄米は白米(胚乳)の周囲がロウ層と糠層(糊粉層、種皮、及び果皮)とで覆われている(図1参照)。前記ロウ層と糠層とがある為、玄米が通常の炊飯器で炊かれても、美味しくないと考えられている。
【0008】
玄米が美味しく味わえるようにする為、例えば特許文献2(特開昭63-173548号公報)の技術が提案されている。特許文献2では、切削刃を有するブレードが設けられた加工機を使用して玄米に加工を加える。加工は、加工機内に設けられたブレードが回転し、玄米の表面が切削刃で削られることにより行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】実登録3035175号公報
【文献】特開昭63-173548号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、何れの先行技術でも、未だ、満足できるものではなかった。
【0011】
例えば、特許文献1の技術が用いられても、美味しいご飯(白米)が味わえなかった。特許文献2の技術が用いられても、美味しいご飯(玄米)が味わえなかった。
【0012】
本発明が解決しようとする第1の課題は、美味しい玄米が食べられる(味わえる)技術を提供することである。
【0013】
本発明が解決しようとする第2の課題は、高価で格別な装置を用いずとも美味しい玄米が食べられる(味わえる)技術を提供することである。
【0014】
本発明が解決しようとする第3の課題は、効率良く玄米を美味しく炊くことが出来る技術を提供することである。
【0015】
本発明が解決しようとする第4の課題は、効率良く白米を美味しく炊くことが出来る技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、
前記第1,2,3の課題を解決する為、
非金属製ネット状袋を用いた炊飯方法であって、
計量された玄米を前記袋に入れ、
前記袋の外側から前記袋を介して前記袋内部の前記玄米に外圧を与えて前記袋内部の玄米のロウ層を抜けるものの白米層までは到達しない傷を付け、
前記傷が付いた玄米が入った前記袋を水に浸漬し、
前記浸漬で水を含有した前記玄米が入った前記袋を前記水から引き上げて水切りし、
前記水切りされた玄米が入った前記袋と、前記計量された玄米の量に応じた量の水とを炊飯器に入れ、
炊飯する
炊飯方法を提案する。
【0017】
本発明は、前記炊飯方法であって、好ましくは、前記玄米の含水率(浸漬時間24時間)が38~41wt%であるよう傷が付けられる炊飯方法を提案する。
【0018】
本発明は、前記炊飯方法であって、好ましくは、前記傷は線状の傷である炊飯方法を提案する。
【0019】
本発明は、前記炊飯方法であって、好ましくは、前記非金属製ネット状袋は、その網目の一辺が1~2mmである炊飯方法を提案する。
【0020】
本発明は、前記炊飯方法であって、好ましくは前記袋の外側から前記袋を介して前記袋内部の前記玄米に外圧を与える工程は水中で行われる炊飯方法を提案する。
【0021】
本発明は、
前記第4の課題を解決する為、
非金属製ネット状袋を用いた炊飯方法であって、
計量された白米を前記袋に入れ、
前記袋に入った前記白米を研ぎ、
前記研がれた白米の入った前記袋を水に浸漬し、
前記浸漬で水を含有した前記白米が入った前記袋を前記水から引き上げて水切りし、
前記水切りされた白米が入った前記袋と、前記計量された白米の量に応じた量の水とを炊飯器に入れ、
炊飯する
炊飯方法を提案する。
【0022】
本発明は、前記炊飯方法であって、好ましくは、前記浸漬は0~10℃の温度下の保管庫にて行われ、
前記保管庫の水から前記袋を引き上げて水切りし、
前記水切りされた米が入った袋と、前記計量された米の量に応じた量の水とを炊飯器に入れる
炊飯方法を提案する。
【0023】
本発明は、前記炊飯方法に用いられる非金属製ネット状袋を提案する。
【発明の効果】
【0024】
美味しい玄米が食べられた(味わえた)。その理由の一つとして、炊飯に際して、玄米が内部に十分な水を含んでいたからであろう。含水に必要な時間が短縮化された事から、下準備の手間が省けた。炊飯に際して加える水量が適切になり、美味しく炊けた。玄米の糠層が十分に残っており、玄米固有の味わいが十分に味わえた。特許文献2の如くの格別な装置を必要としなかった。従って、それだけコストが掛からない。玄米の含水を容易にする為に玄米に傷を付けるのであるが、この時に用いるのは金属製刃では無く、非金属製ネット状袋である事から、含水の為に適度な傷を付ける事が容易に出来た。特に、非金属製ネット状袋が用いられたことから、玄米のロウ層を貫通する(突き抜ける)ものの、白米層(胚乳部分)までは到達しない傷を付けるのに適していた。前記傷が白米層(胚乳部分)まで到達していると、即ち、傷が深い傷であると、玄米の美味しさが失われていた。勿論、前記傷の全てが白米層(胚乳部分)まで到達していてはならないと言う訳ではない。白米層(胚乳部分)まで到達している深い傷の割合は少ない方が好ましかった。例えば、20%以下であれば大きな問題は認められなかった。
【0025】
傷付けまでが終わった後の玄米が入った袋を0~10℃の温度下の保管庫に保管しておけば、急いで玄米を追加で炊かねばならなくなった場合でも、対応が簡単である。短時間での対応が可能であり、しかも美味しい玄米が食べられた。この時、ネット状袋が用いられていると、保管作業、これに続く作業がスムーズに行えた。しかも、保管時に水切りが出来、玄米表面に付着している水の除去(水切り)が一層確実になった。
【0026】
白米を炊く場合には、効率良く白米を炊くことが出来、しかも白米が美味しく炊けた。
【0027】
傷付けまでが終わった後の白米が入った袋を0~10℃の温度下の保管庫に保管しておけば、急いで白米を追加で炊かねばならなくなった場合でも、対応が簡単である。短時間での対応が可能であり、しかも美味しい白米が食べられた。この時、ネット状袋が用いられていると、保管作業、これに続く作業がスムーズに行えた。しかも、保管時に水切りが出来、白米表面に付着している水の除去(水切り)が一層確実になった。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】玄米の構造概略図
図2】袋の構造概略図
図3】玄米を炊く場合の説明図
図4】玄米のロウ層に傷を付ける際の作業時の説明図
図5】玄米のロウ層に付けられた傷の概略図
図6】白米を炊く場合の説明図
【発明を実施するための形態】
【0029】
<第1の実施形態>
本実施形態はネット状の袋を用いた炊飯方法である。
【0030】
先ず、用いられる袋について説明する。
【0031】
図2は本発明で用いられる袋1の概略図である。袋1は、平袋状、ガゼット袋状、テトラパック状、巾着袋状、筒状、角柱状、ドーム状、球状、回転楕円体状等の形状である。袋1は開口部2を少なくとも一つ有する。前記開口部2から玄米(又は、白米)の出し入れが行われる。開口部2は、開口部2の対辺又は対面にあたる底部と大きさが略同一又は大きい方が好ましい。これによって出し入れが容易になる。
【0032】
袋1は、玄米を通さない程度の大きさの網目を有するネット状の袋である。網目の大きさ(網目の一辺)は1~2mm、例えば1.4mm程度が好ましい。米粒は縦約5mm、幅約3mm、厚さ約1.8mmである。袋1の中に入れた玄米に対して力を加えると、玄米が砕けたり、割れたりする事も場合によっては起きる。前記大きさの網目の場合には、小さく砕けたり割れたりした玄米が網目から出て行く。袋1内の玄米は粒の大きさがほぼ同程度のものになる。玄米の粒が同程度の大きさであると、1粒1粒の含水量が同じになり、ムラなく炊き上がった。割れた米から溶け出した炭水化物のせいで、釜の底が焦げたり、べちゃついたご飯になったりすることが防げた。
【0033】
袋1の素材は、炊飯に耐え得る温度、例えば120℃以上の耐熱性を有する繊維(非金属製。非ゴム製。)であれば良い。例えば、ポリエステル、アクリル、ナイロン、麻、綿などである。有機物系の合成繊維または天然繊維が用いられる。金属繊維の場合には、玄米に必要以上の傷付きが生じ、糠層が剥ぎ取られるような事が起きたりした。白米層(胚乳部分)まで到達している深い傷の割合が多かった。かつ、取扱性も悪かった。繊維としてはガラス繊維や無機質系繊維も有るが、表面層に付けられた傷の内容(特徴)や袋の取扱性からは、有機物系(天然または合成)繊維が好ましかった。
【0034】
袋1は、シート材を縫合された袋であっても、3次元に編まれた袋であっても良い。袋1の大きさは、炊飯容器3に入る大きさである。
【0035】
上記袋1を用いて玄米を炊飯する方法が説明される。平袋状の袋を用いた場合で説明される。
【0036】
図3は玄米の炊飯工程の概略図である。
【0037】
例えば、2kgの玄米が計量された。この2kgの玄米が開口部2から袋1内に投入された(ステップ1)。
【0038】
玄米が入った袋1に外圧が加えられた(ステップ2)。勿論、この時、袋1の開口部2は閉じられている。袋1の外側から、袋1(袋1を構成している紐(糸:繊維)を介して、袋1内部の玄米に外圧が加えられた。図4が参照されると、前記ステップ2がより理解できる。図4(1)は、作業台上に置かれた袋1に外圧を上から垂直に印加(押圧)している様子を横から見た場合の断面図である。袋1に対して上から外圧を印加すると、袋1の上下から袋1の中心部に向かう方向に力が伝播する。袋1の上下からの力が袋1の中心部辺りでぶつかると、力は横方向に逃げようとする。これに伴って、袋1内の玄米が横方向に移動しようとする。袋1は、非ゴム製であるから、殆ど伸び縮みしない。従って、前記移動に抵抗する力が作用する為(袋1が押し返す為)、玄米は逃げる方向を失う。袋1に対して印加する外圧の方向を前後左右のいずれかに変える。袋1を構成している紐(糸:繊維)と玄米との摩擦係数と、袋1内の玄米同士の摩擦係数とは異なる。袋1の紐と玄米との摩擦係数の方が小さい。即ち、印加された外圧を受けた袋1の紐の移動量が、袋1内の玄米の移動量より大きい。故に、袋1の紐と玄米の表面とが擦れる(図4(2)参照)。傷は、袋1内の玄米の表面に付けられる必要がある。袋1内の玄米が掻き回されるようにして、印加する外圧の方向が時計回り/反時計回り等のように変更される(図4(3)及び(4)参照)。袋1内の玄米の表層に傷が効率良く付く。前記傷の多くは、玄米のロウ層を貫通している(突き抜けている)ものの、白米層(胚乳部分)までは到達しない傷であった。白米層(胚乳部分)まで到達している傷の割合はほぼ0%であった。
【0039】
図5は、玄米の白米層までは到達していないがロウ層は突き抜けて糠層で止まった傷が付いた玄米の表面図(平面図)である。傷は玄米の表面の一部に付いたものである。傷は線状である。傷は玄米の表面に複数あってもよい。複数の線状の傷は、略平行に並んだ状態、重なった状態及び交差した状態のいずれか又は組み合わせである。線状の傷の深さは、糠層に達するものの、胚乳(白米)には達しない深さである。玄米のロウ層の層厚は約10μm以下である。玄米の表面に付ける傷は、ロウ層を剥ぎ取ると言った形態ではない。ロウ層の一部である。線状の傷である。これによって、玄米固有の味を十分に味わうことが出来た。
【0040】
ステップ2の段階は水中で行われても良い。勿論、空気中で行われても良い。好ましくは、水中である。なぜならば、ロウ層への過度な傷付け及び玄米の粉砕を防ぐことが可能だからである。
【0041】
玄米のロウ層に傷を付ける工程では、傷の量が調整される。前記傷の量によって、次ステップ3での玄米の浸漬時間が変動する。傷の量は浸漬時間及び含水率[(浸漬後の玄米の重量-浸漬前の玄米の重量)/(浸漬前の玄米の重量)×100(%)]を考慮して決定される。
【0042】
玄米の果皮の表面は、蝋成分からなる膜で覆われている。この膜がロウ層と呼ばれている。ロウ層と糠層とを合わせて外皮と呼ばれている。ロウ層は、玄米(種子)が容易に発芽しないように水の浸入を防ぐ役割をしている。従って、ロウ層は水を通しにくい。玄米の食味は、炊き上がった玄米の粒の形状によって大きく変わる。破裂や割れによって炊き上がった玄米の外皮が形として残っていない場合、食味が落ちていた。炊き上がった玄米の粒の形状は、含水率によって変わる。即ち、食味は含水率によって変わる。この意味で、傷によって浸水を促すことは必要だということが分かるが、削り取って剥がし切ってしまうような過度な傷でないことが好ましかった。傷の深さは、胚乳(白米)までは達しない傷である事が好ましかった。傷が胚乳(白米)まで到達している傷は、食味を考慮すると、全体の傷の20%以下であることが好ましかった。より好ましくは10%役以下であった。更に好ましくは5%以下であった。
【0043】
前記ステップ2の後、玄米が入った袋1が水で洗われる。
【0044】
前記ステップ2でロウ層に傷が付けられた玄米が入った袋1を、水(浄水)が入った容器3に入れて、冷蔵庫(1~10℃。例えば、4℃)で保管した(ステップ3)。ロウ層に傷が付けられた玄米が入った袋1を、水(浄水)が入った容器3に入れることによって、袋1内の玄米が水の中に浸漬される。水が玄米の内部(白米)中に侵入する。本例での浸漬時間は24時間であった。含水量は、浸漬時間が長くなると、多くなった。本例における2Kgの玄米の含水後における重さは2.8Kgであった。冷蔵庫にて浸漬するのは、次の理由からである。玄米は同じ量を含水していたとしても、冷たい水でゆっくりと含水すると、玄米の組織の隅々にまで水が行き渡って食味が良いからである。また、炊き始めから沸点に到達するまでの温度差が大きいほど食味が良いからである。
【0045】
玄米に水が含水した後、袋1を浄水が入った容器3から引き上げた。引き上げによって、玄米表面に付着している水の除去(水切り)が行われた(ステップ4)。好ましくは、袋1を持ち上げた後、袋1を空気中で3分間放置した。空気中で放置する事によって、水切りが確実なものになった。玄米表面に付着している水が無くなった。玄米表面に付着している水の水切りが確実に行われていると、計量された玄米の炊飯時に加える水量が美味しく炊ける水量に合わせる事ができた。前工程において、玄米表面には、意外と、水が付着している。これを、そのまま、残していると、2Kgの玄米に対して美味しく炊ける水の投入量が不正確になってしまう。美味しい玄米が炊けなかった。計量された玄米量に対して炊飯時に炊飯器に投入する水量が簡単に決まる。
【0046】
水切り後の玄米2kg(但し、含水している為、全体では2.8Kg)が入っている袋1を炊飯器4の内釜内に入れた。玄米2Kgに対応した適量(2.21リットル)の水を炊飯器4の内釜内に入れた。スイッチを入れ、炊飯が開始された(ステップ5)。
【0047】
上記のようにして得られた玄米の食味が5名のパネラーによって検証された。その結果が表1に示される。
【0048】
上記ステップ2が行われなかった場合以外は同様に行われた場合(ロウ層への傷付けが行われなかった場合)が参考例1として挙げられる。
【0049】
上記ステップ3,4が行われなかった場合以外は同様に行われた場合(浸水及び水切りが行われなかった場合)が参考例2として挙げられる。
【0050】
上記ステップ4が行われなかった場合以外は同様に行われた場合(水切りのみが行われなかった場合)が参考例3として挙げられる。
【0051】
上記ステップ2の代わりに、フードプロセッサが用いられて10秒間に亘って玄米を処理した以外は同様に行われた場合が参考例4として挙げられる。
【0052】
上記ステップ2の代わりに、玄米を両手で挟んだ状態で実施例と同じ時間だけ擦り合せて(印加して)傷付け処理を行った以外は同様に行われた場合が参考例5として挙げられる。
【0053】
表1
実施例1 歯ごたえが良い。噛んだ際のガサつきが感じられない。飲み込んだ後の後味が良い。香ばしい味わい。
参考例1 全体的に硬さを感じ、口にとげとげしい引っ掛かりを感じる。
参考例2 噛んでいる時にガサつき、所々硬さを感じる。
参考例3 口に入れた時のほぐれ具合が悪く、粘り気があり食感が悪い。
参考例4 糠臭い。水っぽく、粒の形を成しておらず飲み込みにくい。
参考例5 噛んでいる時にガサつき、口にカスが残る。土臭さが残る。
【0054】
実施例1と参考例1とを対比すると、ロウ層に傷を付ける意味合いが理解できる。玄米を水の中に漬けているのみでは、玄米の食味改善に大きな意味合いが無い事が判る。
【0055】
実施例1と参考例2とを対比すると、ロウ層に傷を付けていても、水の中に浸漬しなければ、玄米の食味改善に大きな意味合いが無い事が判る。
【0056】
実施例1と参考例3とを対比すると、ロウ層に傷を付け、かつ、水の中に浸漬を行っていても、水切りが十分に行われていなければ、玄米の食味改善に大きな意味合いが無い事が判る。
【0057】
実施例1と参考例4とを対比すると、玄米への傷付けの内容によっては、即ち、金属刃を用いての傷付けでは、炊き上がった玄米の食味改善は殆ど認められず、非金属製ネット状袋を用いる事によって、玄米のロウ層への傷付けが大事な事が判る。実施例1の場合には、玄米を口に入れた際に、ツルッとした食感が感じられたが、参考例4の場合には、そのような食感は感じられなかった。参考例4の場合は、金属製刃による処理である為、ロウ層のみならずヌカ層、更には胚乳が大きく損傷したからであると推察された。参考例4の場合、金属製刃を回転させる際に発生したモーターの熱が玄米に伝わり、処理後の玄米がほんのり温かかった。この熱が糠臭さを増大させる原因であると推察された。
【0058】
実施例と参考例5とを対比すると、玄米のロウ層への傷付けに非金属製袋1を用いる意味合いの重要性が判る。
【0059】
浸漬時間を24~96時間として同様に行った。2Kgの玄米の含水後における重さは2.76~2.81Kg(含水率:38~40.5%)であった。この場合も、炊かれた玄米の食味は上記実施例と同様であった。
【0060】
尚、浸漬時間が短くなると、含水量が少なくなり、参考例2,3の場合よりも味わいが良かったものの、炊き上げ後の玄米の味わいは低下していた。浸漬時間が長くなると、含水率は高くなった。しかし、含水率が41%を越えても、食味向上効果が一段と良くなる訳ではなかった。寧ろ、気の性かも知れないが、食味は低下していたかも知れない。かつ、浸漬時間が長くなる事は、それだけ作業効率が低下する事を意味する。従って、浸漬時間が72時間を越える事に意味は無いと考えられた。
【0061】
<第2の実施形態>
前記実施形態は玄米の場合であったが、本実施形態は白米の場合である。
【0062】
その方法は、基本的には、同様である。すなわち、ネット状の袋1を用いた炊飯方法である。袋1は前記実施形態の袋1と同様であるから、袋1の詳細は省略される。
【0063】
図6は白米の炊飯工程の概略図である。
【0064】
白米を2kg計量し、開口部から袋1内に入れた(ステップ1)。
【0065】
流水、または水を張った容器内に白米が入った袋1を入れた。袋1の外側から手で軽く揉んで白米を研いだ(ステップ2-A)。又は、袋1の開口部2から手を入れて白米を軽く揉んで研いだ(ステップ2-B)。
【0066】
袋1を水から引き上げた。水(浄水)が入った容器3内に、白米が入っている袋1を入れて、冷蔵庫(1~10℃。例えば、4℃)で保管した(ステップ3)。浸漬時間は約1時間であった。含水率は20~30wt%であった。浸漬された白米を冷蔵庫にて保管するのは、次の理由からである。白米は同じ量を含水していたとしても、冷たい水でゆっくりと含水すると、白米の組織の隅々にまで水が行き渡って食味が良いからである。また、炊き始めから沸点に到達するまでの温度差が大きいほど食味が良いからである。
【0067】
前記浸漬時間終了後、袋1が容器3から引き上げられた。水切りが行われた(ステップ4)。
【0068】
水切り後の白米2kg(但し、含水している分だけ、2Kgより重い。)が入っている袋1を炊飯器4の内釜内に入れた。白米2Kgに対した適量(2.5リットル)の水を炊飯器4の内釜内に入れた。スイッチを入れ、炊飯が開始された(ステップ5)。
【0069】
上記のようにして得られた白米の食味が5名のパネラーによって検証された。その結果が表2に示される。
【0070】
上記ステップ3が行われなかった場合以外は同様に行われた場合(浸水が行われなかった場合)が参考例6として挙げられる。
【0071】
上記ステップ4が行われなかった場合以外は同様に行われた場合(浸水後に水切りが行われなかった場合)が参考例7として挙げられる。
【0072】
表2
実施例2 もっちりして、甘みがある。
参考例6 艶がない。芯が残った炊き上がり。短時間で硬くなる。微妙な糠臭さ。
参考例7 歯ごたえが無い。べちゃついて甘味がない。
【0073】
実施例2と参考例6とを対比すると、水の中に浸漬しなければ、白米の食味改善には繋がらない事が判る。この違いは、実施例2と参考例6とを比べてみて分かる違いである。浸漬によって、白米に付いていた少量の糠の臭いが抜けたと推察された。
【0074】
実施例2と参考例7とを対比すると、水の中に浸漬を行っていても、水切りが十分に行われていなければ、白米の食味改善には繋がらない事が判る。この違いは、実施例2と参考例7とを比べてみて分かる違いである。水切りが行われなかったことによる白米の含水量が変わったからであると推察された。
【符号の説明】
【0075】
1 袋
2 開口部
3 容器
4 炊飯器
図1
図2
図3
図4
図5
図6