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特許7332847単相/三相共用電力調整器及び三相6アーム位相制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-16
(45)【発行日】2023-08-24
(54)【発明の名称】単相/三相共用電力調整器及び三相6アーム位相制御方法
(51)【国際特許分類】
   G05F 1/455 20060101AFI20230817BHJP
   H02M 5/257 20060101ALI20230817BHJP
【FI】
G05F1/455 A
H02M5/257 A
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2022553248
(86)(22)【出願日】2020-09-29
(86)【国際出願番号】 JP2020036841
(87)【国際公開番号】W WO2022070241
(87)【国際公開日】2022-04-07
【審査請求日】2022-09-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000250317
【氏名又は名称】理化工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100101890
【弁理士】
【氏名又は名称】押野 宏
(74)【代理人】
【識別番号】100098268
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 豊
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(74)【代理人】
【識別番号】100166420
【弁理士】
【氏名又は名称】福川 晋矢
(74)【代理人】
【識別番号】100150865
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 司
(72)【発明者】
【氏名】後藤 茂文
(72)【発明者】
【氏名】吉川 裕久
(72)【発明者】
【氏名】古橋 遼平
【審査官】栗栖 正和
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-228468(JP,A)
【文献】特開平08-223912(JP,A)
【文献】特開昭57-055767(JP,A)
【文献】特開平08-317690(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05F 1/455
H02M 5/257
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電源からの負荷に対する電力供給の制御を位相制御によって行う電力調整器であって、
前記交流電源の線間電圧の位相情報を取得する電源位相取得部と、
単方向性電流制御素子が逆並列に接続された交流電流制御回路と、
前記交流電源の線間電圧の0V点から始まり0V点で終わる半サイクルの、始まりの0V点を起点(0°)として、後の0V点を終点(180°)として、トリガ角を定義した際に、単相制御モードにおいて、0%から100%の目標負荷率に対応するトリガ角として、0%の目標負荷率に対応するトリガ角180°と100%の目標負荷率に対応するトリガ角0°の間の目標負荷率に対応する位相角を算出し、三相制御モードにおいて、0%から100%の目標負荷率に対応するトリガ角として、0%の目標負荷率に対応するトリガ角180°と100%の目標負荷率に対応するトリガ角30°の間の目標負荷率に対応する位相角を算出するトリガ角算出部と、
前記単相制御モードにおいて、前記位相情報と単相交流電源用のトリガ角に基づいて、前記位相情報の極性に適合した前記単方向性電流制御素子に対する第1トリガ信号を出力し、前記三相制御モードにおいて、前記位相情報の極性に適合した前記単方向性電流制御素子に対して、前記位相情報と三相交流電源用のトリガ角に基づく第2トリガ信号と、当該第2トリガ信号から位相角60°遅れた時点の第3トリガ信号と、を出力する、トリガ制御部と、
を備えることにより、単相交流電源用の位相制御と、三相交流電源用の位相制御を切り替えて行うことが可能であることを特徴とする単相/三相共用電力調整器。
【請求項2】
前記第2トリガ信号と、前記第3トリガ信号が、連続した1つのトリガ信号であり、その信号の終期が、前記第2トリガ信号の出力時点から位相角60°遅れた時点以降、位相角180°未満の期間にあることを特徴とする請求項1に記載の単相/三相共用電力調整器。
【請求項3】
三相の交流電源と三相用負荷における各相の電源供給ラインのそれぞれに、請求項1又は2に記載の単相/三相共用電力調整器を各1台、合計で3台接続し、当該3台の各電力調整器を前記三相制御モードで動作させることを特徴とする三相6アーム位相制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、交流電源からの負荷に対する電力供給の制御を位相制御によって行う電力調整器及び当該電力調整器を使用した三相6アーム位相制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
交流電源からの負荷に対する電力供給の制御を位相制御によって行う電力調整器が従来から利用されている。これに関し、特許文献1には、三相交流の位相制御方式に関する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平6-113545号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の電力調整器は、単相交流用の電力調整器、三相交流用の電力調整器として、それぞれそれ専用に構成されているものしか存在していなかった(特許文献1は三相交流用の例)。
【0005】
本発明は、上記の点に鑑み、交流電源からの負荷に対する電力供給の制御を位相制御によって行う電力調整器であって、単相交流及び三相交流の何れに対しても利用することが可能な、電力調整器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(構成1)
交流電源からの負荷に対する電力供給の制御を位相制御によって行う電力調整器であって、前記交流電源の線間電圧の位相情報を取得する電源位相取得部と、単方向性電流制御素子が逆並列に接続された交流電流制御回路と、前記交流電源の線間電圧の0V点から始まり0V点で終わる半サイクルの、始まりの0V点を起点(0°)として、後の0V点を終点(180°)として、トリガ角を定義した際に、単相制御モードにおいて、0%から100%の目標負荷率に対応するトリガ角として、0%の目標負荷率に対応するトリガ角180°と100%の目標負荷率に対応するトリガ角0°の間の目標負荷率に対応する位相角を算出し、三相制御モードにおいて、0%から100%の目標負荷率に対応するトリガ角として、0%の目標負荷率に対応するトリガ角180°と100%の目標負荷率に対応するトリガ角30°の間の目標負荷率に対応する位相角を算出するトリガ角算出部と、前記単相制御モードにおいて、前記位相情報と前記単相交流電源用のトリガ角に基づいて、前記位相情報の極性に適合した前記単方向性電流制御素子に対する第1トリガ信号を出力し、前記三相制御モードにおいて、前記位相情報の極性に適合した前記単方向性電流制御素子に対して、前記位相情報と前記三相交流電源用のトリガ角に基づく第2トリガ信号と、当該第2トリガ信号から位相角60°遅れた時点の第3トリガ信号と、を出力する、トリガ制御部と、を備えることにより、単相交流電源用の位相制御と、三相交流電源用の位相制御を切り替えて行うことが可能であることを特徴とする単相/三相共用電力調整器。
【0007】
(構成2)
前記第2トリガ信号と、前記第3トリガ信号が、連続した1つのトリガ信号であり、その信号の終期が、前記第2トリガ信号の出力時点から位相角60°遅れた時点以降、位相角180°未満の期間にあることを特徴とする構成1に記載の単相/三相共用電力調整器。
【0008】
(構成3)
三相の交流電源と三相用負荷における各相の電源供給ラインのそれぞれに、構成1又は2に記載の単相/三相共用電力調整器を各1台、合計で3台接続し、当該3台の各電力調整器を前記三相制御モードで動作させることを特徴とする三相6アーム位相制御方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明の単相/三相共用電力調整器によれば、単相交流及び三相交流の何れに対しても利用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明に係る実施形態の電力調整器の構成の概略を示すブロック図
図2】三相用負荷に実施形態の電力調整器を用いる場合のブロック図
図3】実施形態の電力調整器の処理概念を示すフローチャート
図4】回路シミュレータにおけるシミュレーション条件を示す図
図5】シミュレーション結果を示す図
図6】シミュレーション結果を示す図
図7】シミュレーション結果を示す図
図8】シミュレーション結果を示す図
図9】シミュレーション結果を示す図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。なお、以下の実施形態は、本発明を具体化する際の一形態であって、本発明をその範囲内に限定するものではない。
【0012】
図1は、実施形態の単相/三相共用電力調整器の、本発明に関する部分の構成の概略を示すブロック図である。本実施形態の電力調整器1は、負荷に対する電力供給の制御を位相制御によって行う電力調整器であり、単相交流電源用の位相制御と、三相交流電源用の位相制御(三相6アーム位相制御)を切り替えて行うことが可能な単相/三相共用電力調整器である。図1は単相の場合の配線図、図2は三相の場合の配線図をそれぞれ示している。何れも同一の単相/三相共用電力調整器が使用される(兼用される)ものであり、三相の場合には、3台の単相/三相共用電力調整器(1a~1c)が使用される。なお、三相4線式において、電力調整器を中性点と各相の何れかに接続する場合は、単相の位相制御と同様であり、図1の配線と同様である。
本実施形態の電力調整器1は、
交流電源の線間電圧の波形を取得し、線間電圧の位相情報を取得する電源位相取得部としても機能する電源波形取得部12と、
単方向性電流制御素子(131、132)が逆並列に接続された交流電流制御回路13と、
各種の制御処理を行う制御部であって、単相制御モードにおいて、0%から100%の目標負荷率に対応するトリガ角として、0%の目標負荷率に対応するトリガ角180°と100%の目標負荷率に対応するトリガ角0°の間の目標負荷率に対応する位相角を算出し、三相制御モードにおいて、0%から100%の目標負荷率に対応するトリガ角として、0%の目標負荷率に対応するトリガ角180°と100%の目標負荷率に対応するトリガ角30°の間の目標負荷率に対応する位相角を算出するトリガ角算出部、及び、単相制御モードにおいて、位相情報と単相交流電源用のトリガ角に基づいて、位相情報の極性に適合した単方向性電流制御素子に対する第1トリガ信号を出力し、三相制御モードにおいて、前記位相情報の極性に適合した前記単方向性電流制御素子(131、132)に対して、位相情報と三相交流電源用のトリガ角に基づく第2トリガ信号と、第2トリガ信号から位相角60°遅れた時点の第3トリガ信号と、を出力する、トリガ制御部としても機能する制御部11と、
を備える。ここで、トリガ角は、交流電源の線間電圧の0V点から始まり0V点で終わる半サイクルの、始まりの0V点を起点(0°)として、後の0V点を終点(180°)とする。
なお、電力調整器1には配線を行うための端子として、交流電源から負荷への電力供給ラインとしての配線が行われる主回路接続端子16a、16bと、電源波形取得部12への接続ラインとしての配線が行われる入力電源端子15a、15bを、備えている。
【0013】
本実施形態の交流電流制御回路13は、単方向性電流制御素子である単方向性サイリスタ(131、132)が逆並列に接続された構成を有する。
なお、実施形態では、制御部11や電源波形取得部12を備えるものとして、区別して説明しているが、各機能部がハード的に個別に構成されることに限定するものではない。例えば、マイコンなどの1つのデバイス上で全ての機能がソフトウェア的に実装されるもの等であってもよい。逆に、各機能部の何れか若しくは全てを専用回路等によってハード的に実装するものであってもよく、本実施形態において制御部11上でソフトウェア的に実行される処理として説明している機能(トリガ角算出部やトリガ制御部)の一部若しくは全部をハード的に実装するもの等であってもよい。
【0014】
電力調整器1の基本的な機能は、外部装置である温度調節器(図示せず)から入力される目標負荷率(0~100%)に基づいて、負荷2であるヒーターに対する交流電源3からの電力供給の制御を行うものである。即ち、温度調節器においてヒーターの温度と目標温度との偏差に基づくPID制御等のフィードバック制御によって目標負荷率が算出され、これが電力調整器1に入力される。電力調整器1の制御部11では、入力された目標負荷率を用いて目標電力値(若しくは、目標電圧値、目標電流値等)が算出され、この目標電力値(若しくは、目標電圧値、目標電流値等)に基づいてトリガ角が算出される。当該トリガ角に基づいて、サイリスタ131、サイリスタ132のそれぞれに対して、電源波形(交流電源の極性)に応じてトリガ信号が出力されることで、負荷2に対する電力供給の制御が行われるものである。当該位相制御に関する技術は、任意の各技術を利用できるものであるため、ここでのこれ以上の詳しい説明を省略する。
【0015】
電力調整器1は、単相交流電源用の位相制御と、三相交流電源用の位相制御(三相6アーム位相制御)を切り替えて行うことが可能な電力調整器である。
単相制御として用いる場合には、図1に示されるように、交流電源3(単相)から負荷2への電源供給ラインに主回路接続端子16a、16bを接続し、また、交流電源3(単相)の電圧波形が取得されるように入力電源端子15a、15bを接続して、単相制御モードにて電力調整器1を動作させる。
単相制御モードの電力調整器1の動作は、従来の単相交流用の電力調整器と同様であり、上述したように、温度調節器(図示せず)から入力された目標負荷率(0~100%)から、単相交流電源用のトリガ角(180°~0°)が算出され、電源の極性に合わせて、これを導通させる方向であるサイリスタ(131、132の何れか)を、単相交流電源用のトリガ角でトリガする(第1のトリガ信号を出力する)。これによって、目標負荷率にあった出力がなされるものである。単相制御モードの動作は、従来の単相交流用の電力調整器と同様であるため、ここでのこれ以上の説明を省略する。
【0016】
電力調整器1を、三相6アーム位相制御で用いる場合には、三相の交流電源3´から三相用負荷2´への各相の電源供給ラインのそれぞれに、電力調整器1を各1台、合計で3台接続し、当該3台の各電力調整器1を三相制御モードで動作させる。即ち、図2に示されるように、交流電源3´(三相)の各相の電源供給ライン(4a、4b、4c)のそれぞれに、各電力調整器1a~1c(何れも電力調整器1と同一構成)を接続する。より具体的には、電力調整器1aの主回路接続端子16a、16bが、R相の電源供給ライン4a上に接続され、電力調整器1aの入力電源端子15a、15bは、R相とS相の間の線間電圧VR-Sの波形が取得されるように電源供給ライン4a、4bに接続される。同様に、電力調整器1bの主回路接続端子16a、16bが電源供給ライン4b上に、入力電源端子15a、15bが線間電圧VS-Tの波形を取得するように電源供給ライン4b、4cに接続され、電力調整器1cの主回路接続端子16a、16bが電源供給ライン4c上に、入力電源端子15a、15bが線間電圧VT-Rの波形を取得するように電源供給ライン4c、4aに接続される。
【0017】
三相制御モードでは、温度調節器から入力された目標負荷率(0~100%)から、三相交流電源用のトリガ角(180°~30°)が算出され、電源の極性に合わせて、これを導通させる方向であるサイリスタ(131、132の何れか)を、三相交流電源用のトリガ角でトリガする(第2のトリガ信号を出力する)。また、同じサイリスタに対して、前述の三相交流電源用のトリガ角から60°遅れた位相角でトリガする(第3のトリガ信号を出力する)。
【0018】
“三相交流電源用のトリガ角”は、その位相角が180°~30°の範囲となるものであり、目標負荷率が0%(即ち、出力0%)の場合に180°、目標負荷率が100%(即ち、出力100%)の場合に30°となる。
“三相交流電源用のトリガ角”は、単相交流電源用のトリガ角(180°~0°)を、そのまま比例的に180°~30°のトリガ角範囲に変換することで、単相制御と同様の制御を行うことができることをシミュレーションで確認している。即ち、例えば、単相交流電源用のトリガ角に対して、150/180=5/6の値をかけて、30°を加算することによって、三相交流電源用のトリガ角を算出することができる。
よって、従来の単相交流用の電力調整器においてトリガ角を算出する任意の方法を使用して、“単相交流電源用のトリガ角”を算出し、これを比例的に180°~30°のトリガ角範囲に変換することで、“三相交流電源用のトリガ角”を得ることができる。
【0019】
“三相交流電源用のトリガ角から60°遅れた位相角でトリガ”は、特許文献1において“ダブルパルス方式”として説明されているものと同様のものである。
即ち、図2からも明らかなように、例えばR相とS相の間の線間電圧VR-Sを負荷2´に印可するためには、電力調整器1aと、電力調整器1bのサイリスタをオンにする(一方の正側のサイリスタと、他方の負側のサイリスタをオンにする)必要がある。このように、“三相交流電源用のトリガ角から60°遅れた位相角でトリガ”は、他の電力調整器(他の相)の電力制御における電力供給が行われるように、該当のサイリスタをオンにするためのものである。
なお、3台の電力調整器1は、それぞれ独立して動作させればよく、例えば相互に通信をして制御を連携させたり同期させるなどの処理を特別に行う必要は無い。即ち、各電力調整器1では、入力された目標負荷率(各電力調整器1に対して同じ値が入力される)と、電源の位相情報に基づいて、それぞれ独立にトリガ角を算出してサイリスタをトリガするのみでよい。各電力調整器1では、電源の位相に基づいた制御が行われるため、結果的には各電力調整器1の処理が同期され、各電力調整器1のサイリスタへのトリガタイミングが同期されることになる。
【0020】
本実施形態の電力調整器1に関し、図2の構成とした場合(三相6アーム位相制御)について、回路シミュレータによるシミュレーションを行った。
図4はシミュレーション条件を示す図(トリガ角が120°の場合のもの)であり、図5~9はシミュレーション結果を示す図である。それぞれ、図5:トリガ角が150°、図6:トリガ角が120°、図7:トリガ角が90°、図8:トリガ角が60°、図9:トリガ角が30°の場合のシミュレーション結果である。なお、シミュレーションに関する各図中のトリガ角は、交流電源の線間電圧の0V点から始まり0V点で終わる半サイクルの、後の0V点である180°からの相対角度を示している。即ち、例えば、図5はトリガ角が150°の場合であるが、図中では、180°からの相対角度である30°での表記としている。
図5~9のシミュレーション結果では、三相交流電源の各線間電圧(V(L1,L2), V(L2,L3), V(L3,L1))と、三相用負荷の3つの負荷のそれぞれの両端電圧(V(U,V), V(V,W), V(W,U))と、線電流(I(Ru), I(Rv), I(Rw))と、三相用負荷の3つの負荷のそれぞれの負荷電流(I(Ruv), I(Rvw), I(Rwu))を示している。
【0021】
図5~9を参照して、TR2pとTR2nは、三相交流電源用のトリガ角150°、120°、90°、60°、30°(図中の表記では、30°、60°、90°、120°、150°)のトリガ(第2のトリガ信号)であり、トリガTR2pは、電源の位相が正である場合にこれを導通させる方向であるサイリスタに対するトリガ、トリガTR2nは、電源の位相が負である場合にこれを導通させる方向であるサイリスタに対するトリガである。
TR3pとTR3nは、三相交流電源用のトリガ角(TR2p、TR2n)から60°遅れたトリガ角のトリガ(第3のトリガ信号)である。
図5~9から理解されるように、トリガTR2pと他の相のTR3n、トリガTR2nと他の相のTR3pが必ず同期されて出力されており、これによって適切な電力出力が行われている。
また、図5~9から理解されるように、トリガ角の増大に伴って出力が増大し、トリガ角が30°(図9:図中の表記では150°)の際に、100%出力となることが確かめられている。
【0022】
図3は、電力調整器1の処理動作の概略を示すフローチャートである。
ステップ301では、モードが単相制御モードであるか三相制御モードであるかを判別する。なお、モードの設定は、例えば装置に備えられる入力部からユーザが設定をすることで行われる。
単相制御モードである場合には、ステップ302へと移行し、上述したように、従来の単相交流用の電力調整器と同様の処理によって、目標負荷率(0~100%)から、単相交流電源用のトリガ角(180°~0°)を算出し、電源の極性に合わせて、これを導通させる方向であるサイリスタ(131、132の何れか)を、単相交流電源用のトリガ角でトリガする(第1のトリガ信号を出力する)。
電源供給の終了指示等があった場合には、処理を終了し(ステップ303:Yes→終了)、終了でない場合は、ステップ302の処理を継続して行う(ステップ303:No→ステップ302)。
【0023】
三相制御モードである場合には、ステップ304へと移行し、上述したように、“単相交流電源用のトリガ角”を比例的に180°~30°のトリガ角範囲に変換することで、“三相交流電源用のトリガ角”を算出し、電源の極性に合わせてこれを導通させる方向であるサイリスタ(131、132の何れか)を、当該三相交流電源用のトリガ角でトリガする(第2のトリガ信号を出力する)。また、同じサイリスタに対して、三相交流電源用のトリガ角から60°遅れた位相角でトリガする(第3のトリガ信号を出力する)。
電源供給の終了指示等があった場合には、処理を終了し(ステップ305:Yes→終了)、終了でない場合は、ステップ304の処理を継続して行う(ステップ305:No→ステップ304)。
【0024】
以上のごとく、本実施形態の電力調整器1によれば、単相交流及び三相交流の何れに対しても利用することが可能である。1種類の電力調整器を単相・三相兼用の電力調整器として使用できるので、電力調整器の供給者にとっては、製品開発を1品種に絞って開発すればよいため、製品開発の負担を軽減できる。また、生産ラインの一本化ができるメリットもある。また、使用者(ユーザ)にとっては、メンテ用に用意する電力調整器の種類を1種類に出来るため、メンテナンスコストを低減できると言うメリットが期待できる。
また、従来の単相交流用の電力調整器に対してハード的な変更をすることなく、ソフト的な変更のみで適用することもできるため、低コストにて実現可能である。
【0025】
本実施形態では、三相交流電源用のトリガ角のトリガ(第2のトリガ信号)と、これから60°遅れた位相角のトリガ(第3のトリガ信号)を、それぞれ別のトリガ信号としているが、第2トリガ信号と第3トリガ信号を、連続した1つのトリガ信号としてもよい。第3トリガ信号の終期、即ち、第2のトリガ信号からの遅れの位相角は、180°未満である必要がある。
なお、図6~9からも理解されるように、トリガ角が120°を下回った後は(図中の表記では、60°を超えた後は)、第3のトリガ信号(TR3p、TR3n)は必要ない(該当のサイリスタがオン状態のままであるため)。よって、トリガ角が120°を下回った後は、第3のトリガ信号(TR3p、TR3n)を出力しないようにするものであってもよい。
【0026】
本実施形態では、三相交流電源がY(スター)結線、負荷がΔ結線であるものを例としているが、電源側、負荷側の何れについても、Y(スター)結線かΔ結線であるかの相違に関係なく、本発明を適用することができる。
【0027】
なお、トリガ角の表現において、交流電源の線間電圧の0V点から始まり0V点で終わる半サイクルの、始まりの0V点を起点(0°)として、後の0V点を終点(180°)としているが、別の表現を用いても構わない。例えば、図5~9で用いたように、線間電圧の正側の半サイクルの波形と負側の半サイクルの波形のそれぞれの後ろ側のゼロクロス点を基準(0°)とし、そこから遡るようにしてトリガ角が増加するものであってもよく(この場合、三相交流電源用のトリガ角は、0°~150°の範囲となる)、このような表現の相違は、本発明の概念としての相違にはならない。
【0028】
実施形態では、電力調整器として、負荷がヒーターで、外部装置である温度調節器から入力される目標負荷率に基づいて、ヒーターに対する電力供給の制御を行うものを例としたが、本発明をこれに限るものではなく、任意の負荷に対して電力供給を行う電力調整器に適用することができる。
【符号の説明】
【0029】
1...電力調整器(単相/三相共用電力調整器)
11...制御部(トリガ角算出部、トリガ制御部)
12...電源波形取得部(電源位相取得部)
13...交流電流制御回路
131、132...電流制御素子
2...負荷
2´...三相用負荷
3...交流電源
3´...三相交流電源
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9