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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-16
(45)【発行日】2023-08-24
(54)【発明の名称】冷却システム
(51)【国際特許分類】
   H05K 7/20 20060101AFI20230817BHJP
   H01L 23/473 20060101ALI20230817BHJP
   F28D 15/02 20060101ALI20230817BHJP
   F28D 15/06 20060101ALI20230817BHJP
   G06F 1/20 20060101ALI20230817BHJP
【FI】
H05K7/20 Q
H05K7/20 P
H01L23/46 Z
F28D15/02 L
F28D15/06 D
G06F1/20 A
G06F1/20 C
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018246946
(22)【出願日】2018-12-28
(65)【公開番号】P2020107785
(43)【公開日】2020-07-09
【審査請求日】2021-09-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000005223
【氏名又は名称】富士通株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087480
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 修平
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 陽一
【審査官】菊地 陽一
(56)【参考文献】
【文献】実開平04-079462(JP,U)
【文献】特開2015-144247(JP,A)
【文献】特開2000-205671(JP,A)
【文献】特開2005-140492(JP,A)
【文献】特開2005-326141(JP,A)
【文献】実開昭61-151395(JP,U)
【文献】特開2001-280758(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 7/20
H01L 23/473
F28D 15/02
F28D 15/06
G06F 1/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発熱部品の熱を受けて冷媒を蒸発させる蒸発器と、
前記冷媒の熱を放熱する放熱器と、
前記蒸発器と前記放熱器との間で前記冷媒が循環し、内部が大気圧よりも低い圧力に維持されている循環路と、
前記循環路に設けられ、前記冷媒を前記循環路内で循環させるポンプと、
前記循環路に設けられ、前記冷媒が充填されるとともに、伸縮可能な内部空間を備えた伸縮部とを有し、
前記蒸発器、前記放熱器、前記循環路、前記ポンプ及び前記内部空間の各々が前記冷媒で満杯に充填され、
前記冷媒が液体の状態であるときに、前記内部空間を広げ、内部の圧力を低下させる方向の付勢力を前記伸縮部に作用させる付勢部材を更に有することを特徴とする冷却システム。
【請求項2】
前記伸縮部はベローズであり、
前記付勢部材はバネであることを特徴とする請求項1に記載の冷却システム。
【請求項3】
前記バネは、前記ベローズの長さが最小長と最大長の間にあるときに自然長になることを特徴とする請求項2に記載の冷却システム。
【請求項4】
前記ベローズと前記バネとを内側に収容したカバーを更に有することを特徴とする請求項2に記載の冷却システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷却システムに関する。
【背景技術】
【0002】
LED(Light Emitting Diode)、LD(Laser Diode)、及びCPU(Central Processing Unit)等の発熱部品を冷却する冷却システムには様々なタイプのものがある。このうち、ポンプで冷媒を循環させる冷却システムにおいては、発熱部品の温度が低い場合には液体の冷媒で発熱部品を冷却し、発熱部品の温度が高い場合には冷媒が沸騰してその気化熱で発熱部品が冷却される。
【0003】
このような冷却システムは、ポンプで冷媒を循環させることで発熱部品から速やかに熱を奪うことができ、効率的に発熱部品を冷却することができる。
【0004】
但し、この冷却システムにおいては、発熱部品を安定して冷却させるという点で改善の余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2005-259747号公報
【文献】特開2007-294655号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一側面によれば、本発明は、発熱部品を安定して冷却することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一側面によれば、発熱部品の熱を受けて冷媒を蒸発させる蒸発器と、前記冷媒の熱を放熱する放熱器と、前記蒸発器と前記放熱器との間で前記冷媒が循環する循環路と、前記循環路に設けられ、前記冷媒を前記循環路内で循環させるポンプと、前記循環路に設けられ、前記冷媒が流入する伸縮可能な内部空間を備えた伸縮部とを有し、前記蒸発器、前記放熱器、前記循環路、及び前記内部空間の各々が前記冷媒で満杯にされた冷却システムが提供される。
【発明の効果】
【0008】
一側面によれば、発熱部品を安定して冷却することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1(a)は、検討に使用した冷却システム1の構成図であり、図1(b)は、冷媒の沸点よりも発熱部品の温度が高い場合の冷却システムの構成図である。
図2図2(a)、(b)は、問題について説明するための冷却システムの構成図である。
図3図3は、第1実施形態に係る冷却システムの構成図である。
図4図4(a)は、第1実施形態に係る蒸発器とベローズの側面図であり、図4(b)は、第1実施形態に係る蒸発器とベローズの上面図である。
図5図5(a)は、第1実施形態において、最小長にあるベローズと蒸発器の断面図であり、図5(b)は、第1実施形態において、ベローズの長さが許容長に等しくなったときのベローズと蒸発器の断面図である。
図6図6(a)、(b)は、第1実施形態に係る冷却システムの動作について説明するための模式図である。
図7図7は、第2実施形態に係るベローズとその周囲の断面図である。
図8図8は、発熱部品の熱によって蒸気が発生している場合の第2実施形態に係るベローズとその周囲の断面図である。
図9図9は、第3実施形態に係るベローズとその周囲の断面図である。
図10図10は、第3実施形態の別の例に係るベローズとその周囲の断面図である。
図11図11(a)は、蒸発器から排出された冷媒が通る配管の途中にベローズを設けた場合の第4実施形態に係る冷却システムの断面図であり、図11(b)は、放熱器から排出された冷媒が通る配管の途中にベローズを設けた場合の第4実施形態に係る冷却システムの断面図である。
図12図12(a)は、第5実施形態に係る電子機器の側面図であり、図12(b)は、第5実施形態に係る電子機器の一部切欠上面図である。
図13図13(a)は、第5実施形態に係る電子機器の一部切欠側面図であり、図13(b)は、第5実施形態に係る電子機器を天地を逆にして水平面に置いたときの一部切欠側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本実施形態の説明に先立ち、本願発明者が検討した事項について説明する。
【0011】
電子機器の内部にはLED、LD、及びCPU等の様々な発熱部品が設けられる。特に、可搬型のプロジェクタや、設置時の姿勢に定めがないサーバ等の電子機器では、使用時の電子機器の姿勢を問わずに発熱部品を効率的に冷却するのが好ましい。
【0012】
図1(a)は、そのような電子機器で使用される冷却システム1の構成図である。
【0013】
冷却システム1は、LED、LD、及びCPU等の発熱部品2を冷却するシステムであり、冷媒Cが循環する循環路3を備える。その循環路3の途中には、ポンプ4、蒸発器5、及び放熱器6が設けられる。
【0014】
このうち、ポンプ4は、冷媒Cを循環路3内で循環させるポンプであり、循環路3に冷媒Cの流れ7を生成する。蒸発器5は、銅等の熱伝導性の良好な金属で形成されており、その外面に前述の発熱部品2が固着される。また、放熱器6は、外気との熱交換によって冷媒Cを冷却するラジエタである。その放熱器6の内部には、気化によって体積が増加した冷媒Cを収容するための減圧空間6aが予め設けられる。
【0015】
なお、冷媒Cは特に限定されないが、この例では冷媒Cとして水を使用する。また、循環路3の内部は大気圧よりも低い圧力に維持されており、これにより大気圧での沸点よりも低い温度で冷媒Cが沸騰することになる。
【0016】
次に、この冷却システム1の動作について説明する。
【0017】
プロジェクタ等の可搬型の電子機器等に冷却システム1を設ける場合には、使用時における冷却システム1の姿勢は様々となる。
【0018】
図1(a)の例では、減圧空間6aよりも下にポンプ4が位置するように冷却システム1を使用する場合を想定している。また、冷媒Cの沸点よりも発熱部品2の温度が低く、蒸発器5において冷媒Cが沸騰していないものとする。
【0019】
この場合には蒸発器5で冷媒Cは沸騰せず、ポンプ4から送出された液体の冷媒Cで発熱部品2が冷却される。また、冷媒Cが沸騰しないため冷媒Cの体積が大きく膨張することはなく、放熱器6の内側に減圧空間6aが現れた状態が維持される。
【0020】
一方、図1(b)は、冷媒Cの沸点よりも発熱部品2の温度が高い場合の冷却システム1の構成図である。
【0021】
この場合には蒸発器5において冷媒Cが沸騰してその蒸気Vが発生する。これにより冷媒Cの体積が増加することになるが、その増加分は放熱器6の減圧空間6aによって吸収されるため、蒸気Vによって循環路3の内部が高圧になるのを防止できる。
【0022】
このように、この冷却システム1においては、放熱器6の内部を液体の冷媒Cで完全には充填せず、液体の冷媒Cが存在しない減圧空間6aを放熱器6に設けることで、沸騰した冷媒Cの体積増加を吸収することができる。
【0023】
しかしながら、本願発明者が検討したところ、冷却システム1の姿勢によっては以下のような問題が生じることが明らかとなった。
【0024】
図2(a)、(b)は、その問題について説明するための冷却システム1の構成図である。
【0025】
図2(a)は、天地を逆にして冷却システム1を使用し、減圧空間6aとポンプ4とが略同じ高さとなった場合を想定している。また、冷媒Cの沸点よりも発熱部品2の温度が低く、蒸発器5において冷媒Cが沸騰していないものとする。
【0026】
この場合には、減圧空間6aがポンプ4にまで広がるため、ポンプ4に液体の冷媒Cが供給されなくなる。その結果、ポンプ4が空転して冷媒Cを循環させることができず、液体の冷媒Cが蒸発器5に滞留してしまう。
【0027】
この状態を放置すると、図2(b)に示すように発熱部品2の温度が上昇していき、その温度が冷媒Cの沸点を超えたところで蒸気Vが一時的に発生する。これにより一時的に冷媒Cの体積が増加して減圧空間6aが消失し、ポンプ4による冷媒Cの送出が可能となるものの、ある程度の時間が経過すると発熱部品2が冷却されて蒸気Vの発生が収束する。そのため、再び図2(a)のようにポンプ4が空転し、冷媒Cで発熱部品2を冷却できない状態となる。
【0028】
このように、冷却システム1においては、その姿勢によってポンプ4が空転して冷却効率が極めて悪くなってしまう。
【0029】
以下、本実施形態について説明する。
【0030】
(第1実施形態)
図3は、本実施形態に係る冷却システムの構成図である。
【0031】
この冷却システム20は、可搬型のプロジェクタや、縦置きと横置きの別を問わないサーバ等のように使用時の姿勢に定めがない電子機器の内部に設けられるシステムであり、冷媒Cが循環する循環路30を備える。
【0032】
循環路30は、銅やステンレス等の金属製の配管であり、ポンプ22、蒸発器23、及び放熱器24の各々に接続される。
【0033】
このうち、ポンプ22は、冷媒Cを循環路30内で循環させるポンプであり、循環路30を一方向に循環する冷媒Cの流れ21を生成する。この例では、一定の回転数で回転する複数の羽根22aをポンプ22に設け、これらの羽根22aで蒸発器23に液体の冷媒Cを送出する。
【0034】
蒸発器23は、底板23a、側板23b、及び天板23cの各々で内部空間が画定された箱型の容器である。蒸発器23の材料として、例えば熱伝導性に優れた銅を採用し得る。
【0035】
また、底板23aには冷却対象の発熱部品25が固着される。発熱部品25は、LED、LD、及びCPU等のように動作時に発熱する電子部品である。この例では、底板23aに複数のピン23pを立設して底板23aの表面積を増やし、これにより冷媒Cと底板23aとの間の熱交換を促す。
【0036】
そして、側板23bには供給口23xと排出口23yが設けられる。供給口23xは蒸発器23に冷媒Cを供給するための開口であり、排出口23yは蒸発器23から冷媒Cを排出するための開口である。なお、供給口23xと排出口23yの位置は特に限定されず、これらの位置は適宜設定し得る。
【0037】
一方、天板23cには開口23zが設けられており、その開口23zの周囲の天板23cにベローズ27の一端27aが固定される。ベローズ27は伸縮部の一例であり、循環路30に繋がる伸縮可能な内部空間27sを備える。ベローズ27の材料は特に限定されない。例えば、銅、真鍮、及びステンレス等の金属でベローズ27を形成し得る。
【0038】
なお、天板23cは、このようにベローズ27の一端27aが固定されるベース部材として機能する。
【0039】
また、ベローズ27の他端27bにはプレート28が固定される。プレート28は、他端27bにおいてベローズ27を密閉する金属板であり、断面視でベローズ27よりも広い幅を有する。
【0040】
そして、ベローズ27の外側にはバネ29が設けられる。バネ29は、付勢部材の一例であり、その一端29aが天板23cに固定され、かつ他端29bがプレート28に固定される。
【0041】
なお、この例ではバネ29としてコイルバネを使用し、それをベローズ27と同軸に設ける。図3の状態では、バネ29は自然長よりも短い長さに圧縮されており、これにより内部空間27sを広げる方向の付勢力Fがベローズ27に作用することになる。
【0042】
一方、放熱器24は、外気Aとの熱交換によって冷媒Cを冷却するラジエタである。なお、エアコンの冷却風を外気Aとして放熱器24に当ててもよい。また、冷却水が流れる水冷管を放熱器24の周囲に巻回し、水冷により放熱器24を冷却してもよい。
【0043】
図1(a)の例とは異なり、本実施形態では放熱器24の内部に減圧空間を設けず、冷却システム20を製造した時点で蒸発器23、放熱器24、ベローズ27の内部空間27s、及び循環路30の各々の内部を液体の冷媒Cで満杯にする。これにより、冷却システム20における冷媒Cの充填率を調節する必要がなくなり、冷却システム20の製造が容易となる。
【0044】
冷媒Cは特に限定されないが、この例では水を冷媒Cとして用いる。なお、アルコールやその溶液をを冷媒Cとして用いてもよい。
【0045】
また、循環路30は大気圧よりも低い圧力に減圧されており、大気圧における沸点よりも低い温度で冷媒Cが沸騰する。ここでは、循環路30の圧力を0.01MPa~0.04MPa程度とし、冷媒Cの沸点を47℃~50℃程度に調節する。これにより、発熱時の発熱部品25の温度で冷媒Cが沸騰するようになり、冷却システム20の冷却効率が向上する。
【0046】
循環路30への冷媒Cの充填方法も特に限定されない。例えば、循環路30に注入口(不図示)を設けておき、その注入口を介して循環路30を減圧する。そして、減圧下において予め脱泡しておいた冷媒Cを注入口から循環路30に注入することにより、循環路30に冷媒Cを充填することができる。このように冷媒Cを予め脱泡することで、発熱部品25が発熱しておらずその温度が室温の状態では、気泡が存在しない液体の冷媒Cのみで循環路30が充填されることになる。
【0047】
次に、蒸発器23とベローズ27について更に詳細に説明する。
【0048】
図4(a)は、蒸発器23とベローズ27の側面図である。
【0049】
図4(a)に示すように、側面視において蒸発器23は概略矩形状である。
【0050】
また、図4(b)は、蒸発器23とベローズ27の上面図である。
【0051】
蒸発器23の大きさは発熱部品25の大きさに合わせて設定され、この例では蒸発器23を上面視で一辺の長さが約50mm程度の正方形状とする。
【0052】
そして、プレート28は、上面視で概略円形であって、ベローズ27とバネ29の各々を覆う大きさを有する。
【0053】
図5(a)は、最小長Lminにあるベローズ27と蒸発器23の断面図である。
【0054】
冷却システム20を製造した直後では、このようにベローズ27の長さが最小長Lminとなっており、ベローズ27の内部空間27sが液体の冷媒Cで満たされる。この場合に付勢力Fによってベローズ27に作用する圧力は、大気圧よりも若干高い0.1MPa~0.2MPa程度とする。これにより、蒸発器23の内部で冷媒Cが沸騰したときに、大気圧に抗してベローズ27が延びようとするのをバネ29が補助することができる。更に、内部空間27sを広げる方向の付勢力Fによって冷媒Cの気化を促すこともできる。
【0055】
図5(b)は、ベローズ27の長さが許容長に等しくなったときのベローズ27と蒸発器23の断面図である。
【0056】
ベローズ27は弾性変形によって伸縮を繰り返すが、伸ばし過ぎると塑性変形によって元の長さに戻らなくなったり封止性能が劣化したりする。そのため、ベローズ27にはその製造業者によって許容長Laが設定される。許容長Laは、ベローズ27の最小長Lminと最大長Lmaxの間にある長さであって、製造業者がその性能を保証する長さである。
【0057】
本実施形態では、ベローズ27が許容長Laに等しくなったときに、バネ29が自然長に等しくなるようにする。これにより、ベローズ27が許容長Laを超えて延びようとしたときに、これに抗する力Gがバネ29からベローズ27に作用するようになり、許容長Laを超えたベローズ27の変形を抑制できる。
【0058】
次に、この冷却システム20の動作について説明する。
【0059】
図6(a)、(b)は、本実施形態に係る冷却システムの動作について説明するための模式図である。
【0060】
図6(a)の例では、蒸発器23の内部における冷媒Cの沸点よりも発熱部品25の温度が低く、蒸発器23において冷媒Cが沸騰していない場合を想定している。
【0061】
この場合には、ベローズ27は、製造直後と同様に最も縮んだ状態となる。また、冷却システム20の全ての部位において冷媒Cが液体となるため、冷媒Cの蒸気でポンプ22が空転することはなく、ポンプ22から送出された液体の冷媒Cによって発熱部品25が安定的に冷却される。
【0062】
なお、バネ29によってベローズ27には付勢力Fが作用しているが、液体の冷媒Cは外部の圧力を受けたときの体積変化が小さいため、付勢力Fによるベローズ27の伸びは殆どない。
【0063】
一方、図6(b)の例では、蒸発器23の内部における冷媒Cの沸点よりも発熱部品25の温度が高く、蒸発器23において冷媒Cが沸騰している場合を想定している。
【0064】
この場合は、沸騰によって冷媒Cの蒸気Vが発生し、気体と液体を合わせた冷媒Cの体積が増加する。これにより、ベローズ27が伸びてその内部空間27sが拡大し、その内部空間27sに冷媒Cが流入するようになる。特に、この例では、ベローズ27が伸びるのをバネ29が補助するため、蒸気Vが発生したときに速やかにベローズ27の内部空間27sが拡大し、蒸気Vの発生を促すことができる。なお、ベローズ27が十分に柔軟で自力で延びることが可能な場合にはバネ29を省いてもよい。
【0065】
また、蒸気Vは、ポンプ22に至る前に放熱器24で冷却されて液体の状態に戻るため、蒸気Vによってポンプ22が空転するのを抑制できる。
【0066】
特に、この例では、蒸気Vによって冷媒Cの体積変化が大きく現れる蒸発器23にベローズ27を設けたため、冷媒Cの体積変化をベローズ27ですぐさま吸収できる。
【0067】
しかも、ベローズ27とバネ29は構造が単純であり、部品点数の増加や製造工程の煩雑化を招くことなく冷却システム20を実現することができる。
【0068】
以上説明したように、本実施形態では、冷媒Cの体積増加に応じて伸縮するベローズ27を設けたため、冷媒Cの体積増加分を収容するための減圧空間を放熱器24の内部に設ける必要がない。
【0069】
そのため、冷却システム20の全体を液体の冷媒Cで予め満杯にしておくことが可能となり、冷媒Cが存在しない減圧空間がポンプ22に広がるのを防止できる。これにより、冷却システム20の姿勢の如何を問わずに液体の冷媒Cにポンプ22が接するようになるため、ポンプ22による送液が常に行われ、発熱部品25を安定して冷却することができる。
【0070】
(第2実施形態)
第1実施形態では、図5(a)を参照して説明したように、圧縮されたバネ29が伸びようとする付勢力Fでベローズ27を付勢した。本実施形態では、これとは異なる方法でベローズ27を付勢する。
【0071】
図7は、本実施形態に係るベローズ27とその周囲の断面図である。
【0072】
なお、図7において、第1実施形態で説明したのと同じ要素には第1実施形態におけるのと同じ符号を付し、以下ではその説明を省略する。
【0073】
図7に示すように、本実施形態では、蒸発器23の天板23cにカバー40を設け、そのカバー40の内側にベローズ27とバネ29を収容する。カバー40の材料は特に限定されず、天板23cと同様に銅でカバー40を形成してもよいし、プラスチック等の樹脂でカバー40を形成してもよい。
【0074】
また、カバー40は、プレート28に対向する内面40aを有しており、プレート28にバネ29の一端29aが固定されると共に、バネ29の他端29bが内面40aに固定される。
【0075】
図7の例では、発熱部品25の温度が低く、蒸発器23において冷媒Cの蒸気Vが発生していない状態を想定している。この状態ではベローズ27の長さが最小長Lminとなる。また、バネ29は自然長よりも長く伸長されており、これによりベローズ27の内部空間27sを広げる方向の付勢力Fがベローズ27に作用する。
【0076】
図8は、発熱部品25の熱によって蒸気Vが発生している場合のベローズ27とその周囲の断面図である。
【0077】
この場合は、蒸気Vによって冷媒Cの体積が増加するのに合わせてベローズ27の内部空間27sが拡大し、冷媒Cの体積増加分がベローズ27で吸収される。また、第1実施形態と同様に、ベローズ27が伸長するのを付勢力Fで補助しつつ、蒸気Vの発生を付勢力Fで促すこともできる。
【0078】
以上説明した本実施形態によれば、第1実施形態と同様に冷媒Cの体積増加分をベローズ27で吸収できる。
【0079】
しかも、カバー40を設けたことによりベローズ27とバネ29に外力が直接作用するのを防止できる。特に、ベローズ27とバネ29は、横方向からの外力に対して容易に変形してしまうため、このようにカバー40で保護することにより外力で損傷するのを防ぐことができる。
【0080】
(第3実施形態)
第1実施形態と第2実施形態では、ベローズ27に付勢力Fを作用させる付勢部材としてバネ29を利用した。これに対し、本実施形態では、バネ29とは異なる付勢部材を利用する。
【0081】
図9は、本実施形態に係るベローズ27とその周囲の断面図である。
【0082】
なお、図9において、第1実施形態や第2実施形態で説明したのと同じ要素にはこれらの実施形態におけるのと同じ符号を付し、以下ではその説明を省略する。
【0083】
図9の例では、カバー40の内面40aとプレート28との間に補助ベローズ41を設ける。補助ベローズ41はその内部が大気圧よりも低い圧力に減圧されており、これにより補助ベローズ41を収縮させる収縮力が生じる。その収縮力が付勢力Fとしてベローズ27に作用し、冷媒Cの体積が膨張したときにベローズ27が伸びようとするのを補助ベローズ41で補助することができる。
【0084】
なお、補助ベローズ41に代えて以下のようにダイヤフラムを利用してもよい。
【0085】
図10は、本実施形態の別の例に係るベローズ27とその周囲の断面図である。
【0086】
図10の例では、蒸発器23の天板23cとプレート28との間にダイヤフラム43を設ける。ダイヤフラム43は、大気圧よりも高い圧力に内部が加圧された中空のゴム製の袋であり、これによりダイヤフラム43を膨張させようとする膨張力が生じる。その膨張力が付勢力Fとしてベローズ27に作用し、冷媒Cの体積が膨張したときにベローズ27が伸びようとするのを補助ベローズ41で補助することができる。
【0087】
(第4実施形態)
第1~第3実施形態では蒸発器23にベローズ27を設けたが、ベローズ27を設ける部位はこれに限定されない。本実施形態では、ベローズ27を設ける部位の様々な例について説明する。
【0088】
図11(a)は、蒸発器23から排出された冷媒Cが流れる循環路30の途中にベローズ27を設けた場合の冷却システム20の断面図である。
【0089】
また、図11(b)は、放熱器24から排出された冷媒Cが流れる循環路30の途中にベローズ27を設けた場合の冷却システム20の断面図である。
【0090】
図11(a)と図11(b)のいずれの場合でも、冷媒Cの体積の増加をベローズ27で吸収できる。
【0091】
(第5実施形態)
本実施形態では、第1~第4実施形態で説明した冷却システムを内蔵した電子機器について説明する。
【0092】
図12(a)は、本実施形態に係る電子機器50の側面図である。
【0093】
この電子機器50は、可搬型又は設置姿勢を変更可能なプロジェクタであり、筐体51、投影レンズ52、及び脚部53を備える。
【0094】
このうち、投影レンズ52は、プロジェクタ内部からの光をスクリーンに投影するレンズであり、筐体51の前面に設けられる。
【0095】
また、脚部53は、例えば筐体51の底面に装着されたネジであり、そのネジを回転させることで脚部53の高さが変わり、水平面Hから測った筐体51の傾斜角度θを調節することができる。
【0096】
図12(b)は、この電子機器50の一部切欠上面図である。
【0097】
図12(b)に示すように、筐体51には発熱部品25が内蔵される。発熱部品25は、プロジェクタ内部の光源であるLEDやLDであって、第1実施形態で説明した蒸発器23に固着される。
【0098】
その蒸発器23にはベローズ27が固定されており、発熱部品25が高温となって冷媒C(図3参照)の体積が増加するとベローズ27が伸び、冷媒Cの体積変化をベローズ27で吸収できる。
【0099】
この電子機器50においては、使用時の状況によって傾斜角度θが変わりその姿勢が一定ではない。そのような場合でも、前述のように放熱器24を液体の冷媒Cで予め満杯にしておくことでポンプ22の空転を防止でき、発熱部品25を安定して冷却することができる。
【0100】
図13(a)は、本実施形態の別の例に係る電子機器60の一部切欠側面図である。
【0101】
この電子機器60は、サーバやパーソナルコンピュータ等の汎用のコンピュータであり、箱型の筐体61とその内部に収容された配線基板62とを有する。この場合は、配線基板62の上に実装されたCPU等のプロセッサが発熱部品25となる。
【0102】
電子機器60は水平面Hに置かれた状態で使用されるが、電子機器60の天地の方向は、電子機器60を使用するユーザの都合によって変わる。
【0103】
図13(b)は、天地を逆にして水平面Hに置かれた電子機器60の一部切欠側面図である。
【0104】
このように天地の方向が不定であっても、前述のように放熱器24を液体の冷媒C(図3参照)で予め満杯にすることで発熱部品25を安定して冷却することができる。特に、プロセッサは、デバイスの微細化によって高集積化が進みその発熱量が著しく増加する傾向にある。よって、この例のように電子機器60の姿勢を問わずにプロセッサを冷却することで、電子機器60の設置状況によらずにプロセッサを冷却してその性能を十分に発揮でき、電子機器60の利便性を高めることができる。
【0105】
以上説明した各実施形態に関し、更に以下の付記を開示する。
(付記1) 発熱部品の熱を受けて冷媒を蒸発させる蒸発器と、
前記冷媒の熱を放熱する放熱器と、
前記蒸発器と前記放熱器との間で前記冷媒が循環する循環路と、
前記循環路に設けられ、前記冷媒を前記循環路内で循環させるポンプと、
前記循環路に設けられ、前記冷媒が流入する伸縮可能な内部空間を備えた伸縮部とを有し、
前記蒸発器、前記放熱器、前記循環路、及び前記内部空間の各々が前記冷媒で満杯にされたことを特徴とする冷却システム。
(付記2) 前記内部空間を広げる方向の付勢力を前記伸縮部に作用させる付勢部材を更に有することを特徴とする付記1に記載の冷却システム。
(付記3) 前記伸縮部はベローズであり、
前記付勢部材はバネであることを特徴とする付記2に記載の冷却システム。
(付記4) 前記バネは、前記ベローズの長さが最小長と最大長の間にあるときに自然長になることを特徴とする付記3に記載の冷却システム。
(付記5) 前記ベローズと前記バネとを内側に収容したカバーを更に有することを特徴とする付記3に記載の冷却システム。
(付記6) 前記付勢部材は、大気圧よりも低い圧力に内部が減圧されて収縮力が生じるベローズであり、
前記付勢力として前記収縮力が前記伸縮部に作用することを特徴とする付記2に記載の冷却システム。
(付記7) 前記付勢部材は、大気圧よりも高い圧力に内部が加圧されて膨張力が生じるダイヤフラムであり、
前記付勢力として前記膨張力が前記伸縮部に作用することを特徴とする付記2に記載の冷却システム。
(付記8) 前記循環路は、大気圧よりも低い圧力に減圧されていることを特徴とする付記1に記載の冷却システム。
(付記9) 前記伸縮部が前記蒸発器に設けられたことを特徴とする付記1に記載の冷却システム。
【符号の説明】
【0106】
1…冷却システム、2…発熱部品、3…循環路、4…ポンプ、5…蒸発器、6…放熱器、6a…減圧空間、7…冷媒の流れ、20…冷却システム、21…冷媒の流れ、22…ポンプ、22a…羽根、23…蒸発器、23a…底板、23b…側板、23c…天板、23p…ピン、23x…供給口、23y…排出口、23z…開口、24…放熱器、25…発熱部品、27…ベローズ、27a…一端、27b…他端、27s…内部空間、28…プレート、29…バネ、29a…一端、29b…他端、30…循環路、40…カバー、40a…内面、41…補助ベローズ、43…ダイヤフラム、50…電子機器、51…筐体、52…投影レンズ、53…脚部、60…電子機器、61…筐体、62…配線基板。
図1
図2
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図13