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  • 特許-APC回路用の電流検出抵抗切替装置 図1
  • 特許-APC回路用の電流検出抵抗切替装置 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-16
(45)【発行日】2023-08-24
(54)【発明の名称】APC回路用の電流検出抵抗切替装置
(51)【国際特許分類】
   H03G 3/30 20060101AFI20230817BHJP
   H04B 1/04 20060101ALI20230817BHJP
【FI】
H03G3/30 B
H04B1/04 E
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019030222
(22)【出願日】2019-02-22
(65)【公開番号】P2020136988
(43)【公開日】2020-08-31
【審査請求日】2021-11-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000100746
【氏名又は名称】アイコム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100084375
【弁理士】
【氏名又は名称】板谷 康夫
(74)【代理人】
【識別番号】100142077
【弁理士】
【氏名又は名称】板谷 真之
(72)【発明者】
【氏名】田部 和生
(72)【発明者】
【氏名】谷地 利彦
(72)【発明者】
【氏名】加藤 香司
【審査官】及川 尚人
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第06734729(US,B1)
【文献】特開2004-040418(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0021300(US,A1)
【文献】特開2001-308664(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0024145(US,A1)
【文献】特表平08-501197(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03G 3/30
H04B 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力増幅器の電源ラインに直列に接続され合成抵抗値を可変な電流検出抵抗と、
前記電流検出抵抗の両端の電位差に基づき負帰還をかけることで前記電力増幅器の出力電力を一定に制御するAPC回路と、
ユーザーが選択した前記電力増幅器の出力電力設定に基づいて、前記APC回路に対する制御信号、及び、前記電流検出抵抗の合成抵抗値を切替えるための制御信号を生成する制御回路と、を備え
前記電流検出抵抗は、複数の電流検出抵抗を有し、一方の電流検出抵抗に対し他方の電流検出抵抗はスイッチを介して並列に接続され、
前記電力増幅器の出力電力設定がハイのとき、前記制御回路からの制御信号により前記スイッチがオンされることで前記電流検出抵抗は並列に接続され、これにより前記電流検出抵抗の値を小さくし、
前記電力増幅器の出力電力設定がローのとき、前記制御回路からの制御信号により前記スイッチがオフされることで前記電流検出抵抗は一方の電流検出抵抗のみとなり、これにより前記電流検出抵抗の値を大きくすることを特徴とするAPC回路用の電流検出抵抗切替装置。
【請求項2】
前記電流検出抵抗の両端の電位を入力とし、その比較結果を出力するコンパレータを備え、そのコンパレータの出力を前記APC回路へ与えることを特徴とする請求項1に記載のAPC回路用の電流検出抵抗切替装置。
【請求項3】
前記電力増幅器は、無線機の送信電力用であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のAPC回路用の電流検出抵抗切替装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力増幅器の制御に用いられるAPC回路用の電流検出抵抗切替装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、負荷等に流れる電流を検出するための電流検出抵抗を回路中に設け、その抵抗両端の電位差を測定することで電流検出を行う電流検出回路において、検出電流に基づき電流検出抵抗を制御することが知られている(例えば特許文献1,2,3参照)。
【0003】
特許文献1には、負荷に流れる電流を検出する直列に接続された第1及び第2の抵抗器と、これらの抵抗器にそれぞれ並列に接続されたスイッチと、これらの抵抗器に流れる電流を検出する検出器とを備え、検出される電流の大きさに応じてスイッチを排他的にオン/オフすることで検出のための抵抗器を切替える電流検出回路が示されている。
【0004】
特許文献2には、回転電機に接続するインバータ回路において、検出電流に応じて並列接続されたスイッチング素子群を切替えることで、小電流時は1つの電流検出抵抗で電流を検出して電流検出精度を上げ、大電流時には複数の電流検出抵抗に分流してスイッチング素子1個当たりの発熱を抑えることが示されている。
【0005】
特許文献3には、ガスの濃度に対応した電流信号を出力するガス濃度センサを用いたガス濃度検出装置において、ガス濃度センサに流れる電流を検出するための直列接続された抵抗を、検出電流値に応じて切替えることで抵抗値を可変にし、ガス濃度を精度良く検出することが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2015-141170号公報
【文献】特許第5805225号公報
【文献】特許第3487159号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このような特許文献1-3は、いずれも、検出する電流の大きさに応じて、電流検出抵抗をスイッチ等で切替えて抵抗値を可変とする技術である。そして、特許文献1-3の検出対象は、発電機からの出力電流値、回転電機への出力電流値、センサからの出力電流値であり、ある一定の閾値以上、または閾値以下の電流値を検出したときに電流検出抵抗を切替えている。そして、電流検出抵抗に流れる電流が一定となるような制御を行うものではない。
【0008】
ところで、例えば、ユーザーの操作により出力電力を切替え可能な無線機に搭載される電流制御型のAPC回路(自動電力制御回路)においては、送信機の電力増幅器(パワーアンプ)に入力される電流を電流検出抵抗により検出し、APC回路でもって負帰還をかけることで送信機の出力電力を一定に制御する。このような電力増幅器の出力電力を制御する方式にあって、出力電力を小さく設定する場合、流れる電流が小さいので、測定に十分な電位差を抵抗の両端に発生させるために、電流検出抵抗の値を一定以上大きくする必要があるが、そうすると、出力電力を大きくした場合に、流れる電流が大きいので電力効率が悪くなってしまう。逆に、電力効率向上のため、電流検出抵抗の値を小さくすると、小さな出力電力を正確に設定することが困難になる。
【0009】
本発明は、上記の問題を解消するものであり、検出された電流値に応じて電流検出抵抗を切替えるものではなく、ユーザーが選択した出力電力設定に応じて、予め設定された所定の抵抗値に切替える、すなわち、出力電力設定がハイのとき、電力効率を上げるため、電流検出抵抗の値を小さくし、出力電力設定がローのとき、正確な出力電力の調整のため、電流検出抵抗の値を大きくする、という特性を実現可能なAPC回路用の電流検出抵抗切替装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、電力増幅器の電源ラインに直列に接続され合成抵抗値を可変な電流検出抵抗と、前記電流検出抵抗の両端の電位差に基づき負帰還をかけることで前記電力増幅器の出力電力を一定に制御するAPC回路と、ユーザーが選択した前記電力増幅器の出力電力設定に基づいて、前記APC回路に対する制御信号、及び、前記電流検出抵抗の合成抵抗値を切替えるための制御信号を生成する制御回路と、を備え、前記電流検出抵抗は、複数の電流検出抵抗を有し、一方の電流検出抵抗に対し他方の電流検出抵抗はスイッチを介して並列に接続され、前記電力増幅器の出力電力設定がハイのとき、前記制御回路からの制御信号により前記スイッチがオンされることで前記電流検出抵抗は並列に接続され、これにより前記電流検出抵抗の値を小さくし、前記電力増幅器の出力電力設定がローのとき、前記制御回路からの制御信号により前記スイッチがオフされることで前記電流検出抵抗は一方の電流検出抵抗のみとなり、これにより前記電流検出抵抗の値を大きくするAPC回路用の電流検出抵抗切替装置である。
【0012】
また、上記において、前記電流検出抵抗の両端の電位を入力とし、その比較結果を出力するコンパレータを備え、そのコンパレータの出力を前記APC回路へ与えるものが好ましい。
【0013】
また、上記において、前記電力増幅器は、無線機の送信電力用であることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、電力増幅器の出力電力が大きいときは、流れる電流が大きいが、小さい抵抗値の電流検出抵抗を用いるので、電流検出抵抗での電力損失を少なくでき、電力効率が向上する。また、電力増幅器の出力電力が小さいときは、流れる電流が小さいが、大きい抵抗値の電流検出抵抗を用いるので、正常に電流検出抵抗間の電位差を測定でき、APC回路での正確な出力電力調整が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態に係るAPC回路用の電流検出抵抗切替装置の回路図。
図2】同電流検出抵抗切替装置における出力電力設定に対応したスイッチ状態を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態に係るAPC回路用の電流検出抵抗切替装置について図面を参照して説明する。図1において、APC回路(自動電力制御回路)用の電流検出抵抗切替装置1は、電力増幅器(パワーアンプ)2の電源Vccのラインに直列に接続され合成抵抗値を可変な電流検出抵抗3と、電力増幅器2の出力電力を一定に制御するAPC回路4と、APC回路4に対する制御信号等を生成する制御回路5と、を備える。電力増幅器2は、本例では、無線機の送信電力用であり、無線機は出力電力設定がハイであってもローであっても使用可能である。
【0017】
APC回路4は、電流検出抵抗3に流れる電流値に応じて負帰還をかけることで電力増幅器2の出力電力を一定に制御する。制御回路5は、各種信号を出力するCPU51を備え、APC回路4に対する出力電力制御信号(D/A)、及び、電流検出抵抗3の合成抵抗値を切替えるための制御信号(H/L)を生成する。CPU51は、ユーザーが選択した電力増幅器2の出力電力設定、すなわち、送信出力切替操作部6からの信号に基づいて各々の信号を生成する。
【0018】
電流検出抵抗3は、合成抵抗値を可変とするために複数の電流検出抵抗31,32を有し、一方の電流検出抵抗31に対し他方の電流検出抵抗32はスイッチ33を介して並列に接続されている。電流検出抵抗31,32は、同じ抵抗値のものを用いればよいが、必ずしも同じ値である必要はない。スイッチ33は、例えば半導体スイッチを用いることができる。
【0019】
この電流検出抵抗3の電流検出抵抗31,32の接続態様による抵抗値に関し、電力増幅器2の出力電力設定がハイのとき、制御回路5のCPU51からの制御信号(H)によりスイッチ33がON(閉)されることで、電流検出抵抗31,32は並列に接続され、合成抵抗値は小さくなる。一方、電力増幅器2の出力電力設定がローのとき、制御回路5のCPU51からの制御信号(L)によりスイッチ33がOFF(開)されることで、電流検出抵抗3は一方の電流検出抵抗31のみとなり、合成抵抗値は大きくなる。
【0020】
電流検出抵抗3とAPC回路4の負帰還をかけるための入力部との間には、電流検出抵抗3の両端の電位差を検出するためのコンパレータ7を備えている。コンパレータ7は、電流検出抵抗3の両端の電位が入力される二つの入力端と、この二つの入力値を比較した結果を出力する出力端とを備え、出力信号をAPC回路4に与える。電流検出抵抗3の両端の電位とは、一方は電流検出抵抗3の電源Vcc側端の電位であり、他方は電流検出抵抗3の電力増幅器2側端の電位である。
【0021】
上記のように構成された電流検出抵抗切替装置1において、ユーザーは送信出力切替操作部6を選択操作して電力増幅器2の出力電力をハイ又はローに設定する。CPU51はハイ又はローの設定信号を受けて、APC回路4に対して所定の出力電力制御信号(D/A)を出力する。また、CPU51は、ハイの設定信号の時、電流検出抵抗3のスイッチ33をON(閉)する信号を出力し、電流検出抵抗31,32を並列接続させる。ローの設定信号の時、電流検出抵抗3のスイッチ33をOFF(開)する信号を出力し、電流検出抵抗31のみとする。
【0022】
図2は、電流検出抵抗切替装置1における出力電力設定に対応したスイッチ状態を示す。出力電力設定が大(ハイ)の時は、スイッチ33はONとなり、出力電力設定が極小(ロー)の時は、スイッチ33はOFFとなる。出力電力設定は、ハイ/ローそれぞれ単数段又は複数段(例えば、ハイ3段、ロー1段として示したが、ハイ2段、ロー2段等、それぞれ任意の切替段数であってもよい)で切替えることができる。送信出力切替操作部6で設定した出力に応じて、CPU51からパワー制御信号が出力されることにより、スイッチ33の切替が達成される。
【0023】
本実施形態から離れて、仮に、ハイ/ロー設定に関わらず電流検出抵抗3の抵抗切替を行わない場合、ハイの設定信号の時、電流検出抵抗3に流れる電流は大きく、その時には、電流検出抵抗3の抵抗値が小さくても十分な電位差が発生するため、問題なく測定することができる。しかしながら、ローの設定信号の時、電流検出抵抗3に流れる電流は小さく、その時、電流検出抵抗3の抵抗値が小さいと、抵抗の両端に十分な電位差が発生せず、正確に測定することができなくなる。電流検出抵抗3の抵抗値を大きくすると、流れる電流が大きくなったときに、電流検出抵抗3による損失が大きくなってしまう。
【0024】
それに対し、本実施形態においては、ユーザーが選択した電力増幅器2(無線機)の出力電力設定に応じて、並列に接続された電流検出抵抗3の合成抵抗値を、スイッチ33のON/OFF切替えによって大/小に切替える。これにより、流れる電流が大きい(出力電力が大きい)ときは、小さい抵抗値の電流検出抵抗3を用い、流れる電流が小さい(出力電力が小さい)ときは、大きい抵抗値の電流検出抵抗3を用いることによって、電流検出抵抗3での電力損失を少なくすると共に、小さい電流であっても正常に電流検出抵抗間の電位差を測定することができる。
【0025】
なお、本発明は、上記実施形態の構成に限られず、種々の変形が可能である。例えば、上記実施形態では、電流検出抵抗3として2つの並列関係にある抵抗のみを示したが、例えば3つの並列関係にある抵抗を切替えるものであっても構わない。
【符号の説明】
【0026】
1 電流検出抵抗切替装置
2 電力増幅器(パワーアンプ)
3 電流検出抵抗
31,32 電流検出抵抗
33 スイッチ
4 APC回路
5 制御回路
51 CPU
6 送信出力切替操作部
7 コンパレータ
Vcc 電源
図1
図2