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  • 特許-底部耐火物ユニットおよび施工方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-16
(45)【発行日】2023-08-24
(54)【発明の名称】底部耐火物ユニットおよび施工方法
(51)【国際特許分類】
   F27D 1/04 20060101AFI20230817BHJP
   C21C 5/48 20060101ALI20230817BHJP
   F27B 3/22 20060101ALI20230817BHJP
   B22D 41/00 20060101ALI20230817BHJP
【FI】
F27D1/04 Z
C21C5/48 A
C21C5/48 E
F27B3/22
B22D41/00 Z
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021163894
(22)【出願日】2021-10-05
(65)【公開番号】P2023054908
(43)【公開日】2023-04-17
【審査請求日】2022-04-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000001971
【氏名又は名称】品川リフラクトリーズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】今井 忍
(72)【発明者】
【氏名】柿原 昌佳
【審査官】國方 康伸
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-087458(JP,A)
【文献】実開昭60-165454(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F27D 1/00- 1/18
B22D 33/00-47/02
C21C 5/00
C21C 5/28- 5/50
F27B 1/00- 3/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
底部に鉄皮を備え前記鉄皮に羽口を挿入可能なフランジ孔が設けられている溶融金属精錬容器に使用される、底部耐火物ユニットであって、
複数のサブユニットを含み、
前記サブユニットの長手方向に直交する断面が、四角形であり、
前記四角形の対角線が、前記フランジ孔の直径より短く、
複数の前記サブユニットはそれぞれ分離されて前記フランジ孔を通して前記鉄皮の外側に取り外しが可能である底部耐火物ユニット。
【請求項2】
複数の前記サブユニットが、中央に配置される第一サブユニットと、当該第一サブユニットに隣接して配置される第二サブユニットと、を含み、
前記第二サブユニットの長手方向に直交する断面の四角形において、前記第一サブユニットに接する第一辺部の両端における二つの内角の和が180°以下である請求項1に記載の底部耐火物ユニット。
【請求項3】
前記第一サブユニットに金属製の芯材が埋設されている請求項2に記載の底部耐火物ユニット。
【請求項4】
前記第一サブユニットに細管が埋設されている請求項2に記載の底部耐火物ユニット。
【請求項5】
前記対角線が、前記フランジ孔の直径より5mm以上短い請求項1~4のいずれか一項に記載の底部耐火物ユニット。
【請求項6】
底部に鉄皮を備え前記鉄皮に羽口を挿入可能なフランジ孔が設けられている溶融金属精錬容器の、前記底部に羽口を設ける施工方法であって、
前記フランジ孔の上に、複数のサブユニットを含み、前記サブユニットの長手方向に直交する断面が四角形であり、前記四角形の対角線が、前記フランジ孔の直径より短い底部耐火物ユニットが設置されており、
複数の前記サブユニットの少なくとも一つを、前記フランジ孔を通して前記鉄皮の外側に取り外す工程と、
前記サブユニットを取り外して生じた空地に、差替え羽口を設置する工程と、を含む施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶融金属精錬容器に使用される底部耐火物ユニット、および、溶融金属精錬容器の底部に羽口を設ける施工方法、に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄鋼業などにおいて溶融金属を取り扱う容器として、底部に溶融金属を撹拌および精錬するためのガス吹き羽口が設けられた精錬容器が汎用されている。精錬容器の内側の溶融金属が接触する部分は、一般的に耐火物により構成されているが、精錬容器の操業を続けるうちに耐火物が溶損するので、耐火物を交換する措置が必要になる。この溶損は、羽口の周辺において特に進行しやすい。
【0003】
そこで、精錬容器の羽口部分の耐火物のみを交換し、他の部分の耐火物は交換せずに、操業を続ける技術が提案されている。たとえば特開平4-187728号公報(特許文献1)では、ガス吹き込みノズルと同じ形状に形成した塊状の耐火物を設置しておき、当該耐火物を引き抜いて新しいガス吹込みノズルを設置できるようにしたノズルの交換方法が開示されている。また、特開平5-87458号公報(特許文献2)には、羽口レンガとまわりの耐火レンガとを炉底への装着状態に配列して、鉄帯で巻締めた状態にしてあるカセットレンガを設置しておき、カセットレンガ単位で羽口の交換を行う方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平4-187728号公報
【文献】特開平5-87458号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1の技術では、羽口の溶損の進行具合によっては、引き抜かれるべき耐火物のみを引き抜くことが難しかったり、当該耐火物の周囲の耐火物が変形しており新しいガス吹込みノズルを挿入することが難しかったり、という問題が生じる場合があった。このような場合には、交換箇所の耐火物を破砕して炉外に取り出す作業を行う必要があり、作業者による炉内作業を撤廃できなかった。また、特許文献2の技術では、カセットレンガの規模が比較的大きくなるため、比較的大きな昇降具を用いる必要があるなど、作業が大掛かりになる場合があった。このように、従来の施工方法には、作業負荷を低減する余地があった。
【0006】
そこで、差替え羽口の設置を従来に比べて容易にしうる底部耐火物ユニットおよび施工方法の実現が求められる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る底部耐火物ユニットは、底部に鉄皮を備え前記鉄皮に羽口を挿入可能なフランジ孔が設けられている溶融金属精錬容器に使用される、底部耐火物ユニットであって、複数のサブユニットを含み、前記サブユニットの長手方向に直交する断面が、四角形であり、前記四角形の対角線が、前記フランジ孔の直径より短く、複数の前記サブユニットはそれぞれ分離されて前記フランジ孔を通して前記鉄皮の外側に取り外しが可能であることを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係る施工方法は、底部に鉄皮を備え前記鉄皮に羽口を挿入可能なフランジ孔が設けられている溶融金属精錬容器の、前記底部に羽口を設ける施工方法であって、前記フランジ孔の上に、複数のサブユニットを含み、前記サブユニットの長手方向に直交する断面が四角形であり、前記四角形の対角線が、前記フランジ孔の直径より短い底部耐火物ユニットが設置されており、複数の前記サブユニットの少なくとも一つを、前記フランジ孔を通して前記鉄皮の外側に取り外す工程と、前記サブユニットを取り外して生じた空地に、差替え羽口を設置する工程と、を含むことを特徴とする。
【0009】
これらの構成によれば、差替え羽口を設置する施工対象箇所に設置される底部耐火物ユニットに含まれる各サブユニットが、フランジ孔から取り出し可能な寸法に構成されているので、底部耐火物ユニットの取り外しが従来に比べて容易である。これによって、差替え羽口の設置が従来に比べて容易になりうる。
【0010】
以下、本発明の好適な態様について説明する。ただし、以下に記載する好適な態様例によって、本発明の範囲が限定されるわけではない。
【0011】
本発明に係る底部耐火物ユニットは、一態様として、複数の前記サブユニットが、中央に配置される第一サブユニットと、当該第一サブユニットに隣接して配置される第二サブユニットと、を含み、前記第二サブユニットの長手方向に直交する断面の四角形において、前記第一サブユニットに接する第一辺部の両端における二つの内角の和が180°以下であることが好ましい。
【0012】
この構成によれば、第二サブユニットを取り外しやすい。
【0013】
本発明に係る底部耐火物ユニットは、一態様として、前記第一サブユニットに金属製の芯材が埋設されていることが好ましい。
【0014】
この構成によれば、第一サブユニットが補強されているので、第一サブユニットに打撃を加えたときに、第一サブユニットの構造が保たれたまま離脱しやすい。
【0015】
本発明に係る底部耐火物ユニットは、一態様として、前記第一サブユニットに細管が埋設されていることが好ましい。
【0016】
この構成によれば、底部耐火物ユニットを羽口として使用しうる。
【0017】
本発明に係る底部耐火物ユニットは、一態様として、前記対角線が、前記フランジ孔の直径より5mm以上短いことが好ましい。
【0018】
この構成によれば、サブユニットの取り出しの際にフランジ孔の内面とサブユニットとの間に余地を十分に確保できるため、サブユニットを取り出しやすい。
【0019】
本発明のさらなる特徴と利点は、図面を参照して記述する以下の例示的かつ非限定的な実施形態の説明によってより明確になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】第一の実施形態に係る電気炉の底部断面図である。
図2】第一の実施形態に係る電気炉の底面における各部材の配置を示す図である。
図3】第一の実施形態に係る底部耐火物ユニットの正面断面図である。
図4図3のIV-IV線における断面図である。
図5】第一の実施形態に係る差替え羽口の正面断面図である。
図6】第二の実施形態に係る電気炉の底部断面図である。
図7】第二の実施形態に係る底部耐火物ユニットの正面断面図である。
図8図7のVIII-VIII線における断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
〔第一の実施形態〕
本発明に係る底部耐火物ユニットおよび施工方法の第一の実施形態について、図面を参照して説明する。以下では、本発明に係る底部耐火物ユニットを、電気炉100(溶融金属精錬容器の例である。)の底部に使用される底部耐火物ユニット1として使用した例について説明する(図1図2)。また、この例について、底部耐火物ユニット1が設置されている箇所を施工箇所として羽口を設ける施工方法の例についても説明する。
【0022】
(電気炉の構成)
まず、本実施形態に係る底部耐火物ユニット1および施工方法の適用対象である電気炉100について説明する。本実施形態に係る電気炉100は、溶融金属容器として使用される電気炉として公知の構成である。電気炉100は、耐火物により構成された略円筒状の本体部101を有する。電気炉100の底部100aは中央部が外側(下方)に突出した曲面状に形成されており、本体部101は曲面状の内側底面を形成している。
【0023】
電気炉100の底部100aには、本体部101を覆う鉄皮102が設けられている。また、鉄皮102にはフランジ孔103が設けられており、当該フランジ孔103の上方に羽口104が設置されている(図1図2)。羽口104は精錬ガス供給源(不図示)に接続されており、羽口104を通じて電気炉100の内部に精錬ガスを吹き込むことができるように構成されている。なお、電気炉100に設けられた加熱手段などは公知の構成であり、図示および説明を省略する。
【0024】
電気炉100には、初期状態において三つの羽口104が設けられているが、これらの羽口104は、操業を続けるうちに次第に溶損し、閉塞する場合がある。そのような場合に備えて、電気炉100の底部100aに、差替え羽口(後述する。)を設置できる差替予定箇所105を設けてあり、当該差替予定箇所105に本実施形態に係る底部耐火物ユニット1を設置してある。また、差替予定箇所105の直下にフランジ孔103が設けられているので、差替え羽口を設置したときに、当該差替え羽口を精錬ガス供給源(不図示)に接続できる。
【0025】
後述するように、羽口104が閉塞したときの措置として、または羽口104が閉塞する前の予防的措置として、差替予定箇所105を施工箇所として差替え羽口を設置して、羽口104を差替え羽口で代替することによって、操業を継続できる。
【0026】
(底部耐火物ユニットの構成)
本実施形態に係る底部耐火物ユニット1は、全体として略四角錐台状の耐火物製のユニットである(図3図4)。全体として略四角錐台状であるため、底部耐火物ユニット1の長手方向に直交する断面は四角形であり、当該四角形の対角線の長さおよび面積は、基端側(電気炉100に設置された状態における鉄皮102側)から先端側(電気炉100に設置された状態における炉内側)にかけて漸減する。また、本実施形態では、底部耐火物ユニット1の断面の四角形は台形であり、平行な二辺のうちの短い方の辺が電気炉100の中心側に向くように設置される。なお、以下の説明において断面について言及する場合、特記しない限り、底部耐火物ユニット1の長手方向に直交する断面についていうものとする。
【0027】
底部耐火物ユニット1を構成する耐火物は特に限定されないが、たとえば公知のマグネシア-カーボン質の耐火物を使用できる。当該耐火物の組成も特に限定されないが、たとえば、マグネシアを70重量%以上95重量%以下含み、カーボンを5%以上30%以下含むマグネシア-カーボン質の耐火物でありうる。
【0028】
底部耐火物ユニット1は、複数のサブユニットから構成されており、複数のサブユニットは、中央に配置される第一サブユニット2と、第一サブユニット2に隣接して配置される第二サブユニット3と、その他のサブユニットである第三サブユニット4と、を含む。いずれのサブユニットも、長手方向に直交する断面が四角形であり、当該四角形について二本の対角線を特定できる。
【0029】
それぞれのサブユニット(第一サブユニット2、第二サブユニット3、および第三サブユニット4)は、いずれも、長手方向に直交する断面の四角形の対角線が、フランジ孔103の直径より短い寸法に構成されている。これによって、各サブユニットがフランジ孔103を通過できるので、各サブユニットを、フランジ孔103を通じて鉄皮102の外側に取り出すことができる。なお、対角線が直径より5mm以上短いと、サブユニットの取り出しの際にフランジ孔103の内面とサブユニットとの間に余地を十分に確保できるため、サブユニットを取り出しやすい。
【0030】
第一サブユニット2は、本体部分21と、本体部分21に埋設された芯材22と、基端側から本体部分21とは反対方向に延びる棒状部材23と、を有する。本体部分21は耐火物製であり、ここで使用される耐火物の組成は前述の通りである。本体部分21は四角錐台状に構成されており、その断面の四角形は正方形である。
【0031】
芯材22は、具体的には、本体部分21の長手方向の長さと略同一の長さを有する金属製の細い芯材として実装されており、本実施形態では五本設けられている。
【0032】
棒状部材23は、金属製であり、一端が本体部分21の基端側と接合されており、他端がフランジ孔103より炉外に露出する寸法に形成されている。そのため、棒状部材23は、底部耐火物ユニット1が電気炉100の底部100aに設置されたときにフランジ孔103を貫通できる寸法で設けられている。なお、棒状部材23の中途には固定用の金属製部材(不図示)が設けられており、これによって棒状部材23をフランジ孔103に固定できるように構成されている。なお、第一サブユニット2をスムーズに離脱させるために、棒状部材23の本体部分21側端部と芯材22の基端側端部との結合されていることが好ましい。
【0033】
第二サブユニット3は、耐火物製のブロックである。ここで使用される耐火物の組成は前述の通りである。第二サブユニット3は四角錐台状に構成されており、その断面の四角形は台形である。したがって、第一サブユニットに接する第一辺部31の両端における二つの内角32の和は、180°より小さい。
【0034】
第三サブユニット4も、耐火物製のブロックである。ここで使用される耐火物の組成は前述の通りである。本実施形態では、第一サブユニット2および第二サブユニット3のいずれにも該当しないサブユニットを第三サブユニット4として取り扱っており、それぞれの第三サブユニット4の形状は同一ではない。底部耐火物ユニット1において第三サブユニット4が最外方に位置していることから、底部耐火物ユニット1の外形輪郭は第三サブユニット4の形状によって決定づけられる。そのため、それぞれの第三サブユニット4の形状は、底部耐火物ユニット1が設置される差替予定箇所105の形状に基づいて決定される。
【0035】
なお、本実施形態では、一部の第三サブユニット4の形状を、第二サブユニット3と類似した形状にしてある。具体的には、底部耐火物ユニット1の断面の台形の平行な二辺のそれぞれの中央に配置された第三サブユニット4aは、断面の四角形が台形であり、かつ、当該台形の内側の辺(第二サブユニット3に接する辺)の両端における二つの内角の和は、180°より小さい。
【0036】
(差替え羽口ユニットの構成)
次に、本実施形態に係る差替え羽口サブユニット5の構成について説明する。差替え羽口サブユニット5は、本体部分51と、本体部分51に埋設された細管52およびガスプール53と、基端側から本体部分51とは反対方向に延びる給気管54と、を有する(図5)。
【0037】
本体部分51は耐火物製であり、ここで使用される耐火物の組成は前述の通りである。本体部分51は四角錐台状に構成されており、その断面の四角形は正方形である。本体部分51の断面の四角形の辺の長さと、当該断面の基端からの距離と、の関係は、第一サブユニット2における本体部分21の断面の四角形の辺の長さと、当該断面の基端からの距離と、の関係と同一にしてある。一方、本体部分51の長さは、第一サブユニット2における本体部分21の長さより短くしてある。すなわち、本体部分51の外形は、第一サブユニット2の本体部分21の先端側を切り落とした形状に相当する。図5において、第一サブユニット2の外形を破線Aで示している。
【0038】
本体部分51の外形を、第一サブユニット2の本体部分21の基端側の外形と一致させてあるので、底部耐火物ユニット1から第一サブユニット2を取り外すと、第一サブユニット2を取り外して生じた空地に差替え羽口サブユニット5を設置できる。なお、差替え羽口サブユニット5を設置するときは、通常、電気炉100の操業により底部耐火物ユニット1の先端側が溶損している。そのため、第一サブユニット2の長さは、第一サブユニット2が設置されたときより短くなっている。本実施形態では、第一サブユニット2の溶損後の長さを考慮して本体部分51の長さを決定してある。なお、本体部分51の長さが互いに異なる複数種類の差替え羽口サブユニット5を用意しておくと、第一サブユニット2の溶損の程度に応じて選択される適切な差替え羽口サブユニット5を設置できるので、好ましい。
【0039】
細管52、ガスプール53、および給気管54は、精錬ガス供給源(不図示)から供給される精錬ガスの流路を形成する部材である。細管52は、ステンレス製の孔径2mmの直管である。本実施形態では、六本の細管52が設けられており、そのうちの二本が図5の断面に現れている。ガスプール53は、差替え羽口サブユニット5の基端側において六本の細管52の全てと流体連通する箱状の部材であり、精錬ガス供給源から給気管54を経て供給された精錬ガスを各細管52に分配する役割を果たす。
【0040】
(差替え羽口の施工方法)
続いて、電気炉100の底部100aに設置している差替予定箇所105において、羽口(差替え羽口)を設ける施工方法について説明する。なお、施工前の電気炉100および底部耐火物ユニット1の構成、ならびに、以下手順で設置する差替え羽口サブユニット5の構成は、上記説明の通りである。
【0041】
事前準備として、電気炉100の操業を停止する。具体的には、まず、炉内の溶融金属を全て排出する。続いて、加熱手段の運転を停止したのちに放冷し、電気炉100の温度を作業可能な水準に低下させる。また、第一サブユニット2(棒状部材23)とフランジ孔103との固定を解除しておく。
【0042】
第一に、第一サブユニット2を取り外す。具体的には、第一サブユニット2の先端側(電気炉100の炉内側)から、重機を用いて第一サブユニット2に打撃を加える。これによって、底部耐火物ユニット1から第一サブユニット2のみが離脱する。このとき、離脱した第一サブユニット2を、フランジ孔103を通じて鉄皮102の外側に取り出す。前述のように、第一サブユニット2において、断面の四角形の対角線をフランジ孔103の直径より短くしてあるので、第一サブユニット2がフランジ孔103を通過できるのである。
【0043】
なお、第一サブユニット2の本体部分21に芯材22が埋め込まれており、これによって本体部分21が補強されているので、第一サブユニット2に打撃を加えたときに、第一サブユニット2の構造が保たれたまま(本体部分21が割れることなく)、第一サブユニット2が一体に離脱しやすい。ここで、棒状部材23の本体部分21側端部と芯材22の基端側端部とが結合されていると、重機による打撃が本体部分21の基端側に確実に伝わるため、第一サブユニット2がさらに離脱しやすい。
【0044】
第二に、第一サブユニット2を取り外して生じた空地に、差替え羽口を設置する。この工程には二通りの方法があり、作業を行う時点における底部耐火物ユニット1の溶損の程度などを考慮して方法が選択される。
【0045】
(1)差替え羽口サブユニットを用いる方法
第一の方法では、差替え羽口サブユニット5を用いる。前述のように、差替え羽口サブユニット5(本体部分51)の外形を、第一サブユニット2(本体部分21)の基端側の外形と一致させてあるため、第一サブユニット2を取り外して生じた空地に差替え羽口サブユニット5を嵌め込むことができるのである。この方法は、底部耐火物ユニット1の溶損が軽度であり、第二サブユニット3、および第三サブユニット4を交換せずに操業に供することができる場合に採用される。
【0046】
(2)底部耐火物ユニットの全体を取り出す方法
第二の方法では、底部耐火物ユニット1の全体を取り外して、その跡地に新たな羽口(差替え羽口)を設ける。この方法は、たとえば第二サブユニット3が変形しているなどの理由で、第一サブユニット2を取り外して生じた空地に差替え羽口サブユニット5を嵌め込むことができない場合や、底部耐火物ユニット1の溶損が重度であり第二サブユニット3および第三サブユニット4を操業に供することができない場合、などに採用される。
【0047】
この場合は、第一サブユニット2に加えて第二サブユニット3および第三サブユニット4を取り外す必要が生じる。ここで、第二サブユニット3および第三サブユニット4が、フランジ孔103を通過できる寸法であるので、第二サブユニット3および第三サブユニット4を、フランジ孔103を通じて鉄皮102の外側に取り出すことができる。
【0048】
ここで、第二サブユニット3および第三サブユニット4が第一サブユニット2の周囲に隙間なく設置されているため、第二サブユニット3と第三サブユニット4とが互いに互いの動きを規制して、第一サブユニット2を取り外した後もこれらが離脱しにくい場合がある。そこで本実施形態では、第二サブユニット3において第一辺部31の両端における二つの内角32の和を180°より小さくしてあり、これによって第二サブユニット3が離脱しやすいようにしてある。すなわち、第二サブユニット3が、第一サブユニット2を取り外して生じた空地から底部耐火物ユニット1の外周側(第三サブユニット4側)に向けて楔状に挿し込まれた格好になっているところ、重機を用いて第二サブユニット3を空地側に押すと楔が抜ける方向に第二サブユニット3を動かすことになるから、比較的容易に第二サブユニット3が離脱するのである。また、このように第二サブユニット3を取り外すことができるので、第三サブユニット4の規制を解除でき、第三サブユニット4の取り外しも容易になる。
【0049】
続いて、底部耐火物ユニット1の全体を取り外した跡地に新たな羽口(差替え羽口)を設けることになるが、この場合の新たな羽口(差替え羽口)の施工方法は従来の方法であるので、詳細な説明を省略する。
【0050】
なお、従来の施工方法では、差替予定箇所105に施工されている耐火物がフランジ孔103より大きいため、当該耐火物を破砕したのちに、破片を取り出す作業が必要だった。この作業は手作業を要するため、電気炉100内に作業員が立ち入る必要があり、作業負荷が大きかった。
【0051】
本実施形態に係る底部耐火物ユニット1が設置されている差替予定箇所105を施工箇所として差替え羽口サブユニット5を設置すると、第一サブユニット2を取り外して生じた空地に差替え羽口サブユニット5を嵌め込む場合であっても、底部耐火物ユニット1の全体を取り外す必要がある場合であっても、取り外す必要がある各部材をフランジ孔103から鉄皮102の外側に取り出すことができるので、従来の施工方法で必要だった手作業を削減できる。これによって、差替え羽口の設置に要する作業負荷を低減できる。
【0052】
〔第二の実施形態〕
本発明に係る底部耐火物ユニットおよび施工方法の第二の実施形態について、図面を参照して説明する。以下では、本発明に係る底部耐火物ユニットを、電気炉200(溶融金属精錬容器の例である。)の底部に使用される底部耐火物ユニット6として使用した例について説明する(図6)。
【0053】
(電気炉の構成)
まず、本実施形態に係る底部耐火物ユニット6および施工方法の適用対象である電気炉200について説明する。本実施形態に係る電気炉200は、溶融金属容器として使用される電気炉として公知の構成である。電気炉200は、耐火物により構成された略円筒状の本体部201を有し、本体部201は平面状の内側底面を形成している。
【0054】
第一の実施形態と同様に、電気炉200の底部200aに本体部201を覆う鉄皮202が設けられている。また、フランジ孔203が設けられており、当該フランジ孔203から羽口204が挿入されている点も、第一の実施形態と同様である(図6)。
【0055】
第一の実施形態と同様に、電気炉200には、初期状態において三つの羽口204が設けられている。一方、本実施形態では、第一の実施形態における差替予定箇所105に対応する部位は設けられていない。本実施形態では、羽口204として、本実施形態に係る底部耐火物ユニット6が設置されている。本実施形態では、羽口204が閉塞したときの措置として、または羽口204が閉塞する前の予防的措置として、羽口204自身を施工箇所として差し替え羽口を設置する。
【0056】
(底部耐火物ユニットの構成)
本実施形態に係る底部耐火物ユニット6は、耐火物製のユニットである(図7図8)。第一の実施形態に係る底部耐火物ユニット1が略四角錐台状であるのと異なり、底部耐火物ユニット6は全体として略四角柱の形状を有する。なお、底部耐火物ユニット6を構成する耐火物としては、第一の実施形態と同様に、公知のマグネシア-カーボン質の耐火物を使用できる。
【0057】
底部耐火物ユニット6は、複数のサブユニットから構成されており、複数のサブユニットは、中央に配置される第一サブユニット7と、第一サブユニット2に隣接して配置される第二サブユニット8と、その他のサブユニットである第三サブユニット9と、を含む。いずれのサブユニットも、長手方向に直交する断面が四角形であり、当該四角形について二本の対角線を特定できる。各サブユニットがいずれも、断面四角形の対角線がフランジ孔203の直径より短い寸法に構成されている点について、第一の実施形態と同様である。これによって、各サブユニットがフランジ孔203を通過できるので、各サブユニットを、フランジ孔203を通じて鉄皮202の外側に取り出すことができる。
【0058】
第一サブユニット7は、第一の実施形態に係る差替え羽口サブユニット5と概ね同様の構造を有する。ただし、第一サブユニット7の本体部分71は、四角柱状に構成されており、基端から先端にわたって断面の寸法が一定である。その他の点、すなわち、細管72、ガスプール73、および給気管74を有する点について、差替え羽口サブユニット5と同様である。
【0059】
第二サブユニット8は、耐火物製のブロックである。第二サブユニット8は四角柱状に構成されており、基端から先端にわたって断面の寸法が一定である。なお、断面四角形が台形であること、および、第一サブユニットに接する第一辺部81の両端における二つの内角82の和が180°より小さいこと、について、第一の実施形態に係る第二サブユニット3と同様である。
【0060】
第三サブユニット9も、耐火物製のブロックである。また、第三サブユニット9も四角柱状に構成されており、基端から先端にわたって断面の寸法が一定である。本実施形態でも、第一サブユニット7および第二サブユニット8のいずれにも該当しないサブユニットを第三サブユニット9として取り扱っており、それぞれの第三サブユニット9の形状は同一ではない。
【0061】
(差替え羽口の施工方法)
続いて、電気炉200の底部200aに差替え羽口を設ける施工方法について説明する。なお、施工前の電気炉200および底部耐火物ユニット6の構成は、上記説明の通りである。
【0062】
本実施形態における差替え羽口の施工方法は、第一の実施形態における差替え羽口の施工方法のうち、第二の工程(差替え羽口を設置する工程)において「(2)底部耐火物ユニットの全体を取り出す方法」が選択される場合と同様である。
【0063】
本実施形態では、第一サブユニット7が羽口としての機能を有し、現に羽口として運用された後に、底部耐火物ユニット6を施工箇所として差替え羽口を設置する。ここで、溶融金属容器として使用される電気炉において、羽口付近は最も溶損しやすい箇所であるので、本実施形態における底部耐火物ユニット6を施工箇所として差替え羽口を設置する場合において、第一の実施形態における「(1)差替え羽口サブユニットを用いる方法」に準ずる方法を採用しうる程度の軽度の溶損状態であることは想定しがたい。そのため、本実施形態では「(2)底部耐火物ユニットの全体を取り出す方法」と同様の方法が採用されるのである。
【0064】
なお、本実施形態に係る底部耐火物ユニット6において、第一サブユニット7、第二サブユニット8、および第三サブユニット9のいずれも、フランジ孔203を通過できる寸法であるので、フランジ孔203を通じて鉄皮202の外側に取り出すことができる。この点について第一の実施形態と同様である。
【0065】
〔その他の実施形態〕
最後に、本発明に係る底部耐火物ユニットおよび施工方法のその他の実施形態について説明する。なお、以下のそれぞれの実施形態で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することも可能である。
【0066】
上記では、第一の実施形態として底部耐火物ユニット1が羽口として機能しない例について説明し、第二の実施形態として底部耐火物ユニット6が羽口として機能する例について説明した。このように、本発明に係る底部耐火物ユニットが、羽口として機能するか否かは限定されない。
【0067】
上記では、第一の実施形態として各サブユニットが四角錐台状である例について説明し、第二の実施形態として各サブユニットが四角柱状である例について説明した。このように、各サブユニットの形状は、長手方向に直交する断面が四角形である限りにおいて限定されない。したがって、たとえば、四角柱状の第一サブユニットと四角錐台状の第二サブユニットとの組合せを含む構成であってもよい。
【0068】
上記の各実施形態では、各底部耐火物ユニットが第一サブユニット、第二サブユニット、および第三サブユニットを含む構成を例として説明した。しかし、本発明に係る底部耐火物ユニットに含まれるサブユニットの種類の数は限定されない。すなわち、本発明に係る底部耐火物ユニットは、一種類、二種類、または三種類以上のサブユニットを含みうる。
【0069】
上記の各実施形態では、第二サブユニットの断面四角形が台形であり、第一サブユニットに接する第一辺部の両端における二つの内角の和が180°より小さい構成を例として説明した。しかし、前述の通り、各サブユニットの形状は、長手方向に直交する断面が四角形である限りにおいて限定されない。ただし、第二サブユニットの断面の四角形において、第一サブユニットに接する第一辺部の両端における二つの内角の和が180°以下であると、当該内角の和が180°を超える場合に比べて第二サブユニットを取り外しやすいため、好ましい。この場合、第一辺部とこれに対向する辺部とは、平行であっても平行でなくてもよい。また、第二サブユニットの断面の四角形において、第一サブユニットに接する第一辺部の両端における二つの内角がいずれも90°以下であることがより好ましい。
【0070】
上記の第一の実施形態では、第一サブユニット2の本体部分21に芯材22が埋め込まれている構成を例として説明した。しかし、本発明に係る底部耐火物ユニットのいずれのサブユニットにおいても、芯材の有無は限定されない。
【0071】
上記の各実施形態では、差替え羽口を設置する工程の実施方法として、差替え羽口サブユニットを用いる方法と、底部耐火物ユニットの全体を取り出す方法とを例として説明した。しかし、本発明に係る施工方法において、差替え羽口を設置するは限定されない。
【0072】
上記の各実施形態では、本発明に係る底部耐火物ユニットが電気炉の底部に使用される例について説明した。しかし、本発明に係る底部耐火物ユニットが設置される溶融金属精錬容器は電気炉に限定されず、転炉や取鍋などであってもよい。
【0073】
その他の構成に関しても、本明細書において開示された実施形態は全ての点で例示であって、本発明の範囲はそれらによって限定されることはないと理解されるべきである。当業者であれば、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜改変が可能であることを容易に理解できるであろう。したがって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で改変された別の実施形態も、当然、本発明の範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明は、たとえば電気炉の底部に設置する底部耐火物ユニット、および当該底部耐火物ユニットを施工箇所として羽口を設置する施工方法に利用できる。
【符号の説明】
【0075】
〔第一の実施形態〕
1 :底部耐火物ユニット
2 :第一サブユニット
21 :本体部分
22 :芯材
23 :棒状部材
3 :第二サブユニット
31 :第一辺部
32 :第一辺部の両端における内角
4 :第三サブユニット
4a :第三サブユニット
5 :差替え羽口サブユニット
51 :本体部分
52 :細管
53 :ガスプール
54 :給気管
100 :電気炉
100a :底部
101 :本体部
102 :鉄皮
103 :フランジ孔
104 :羽口
105 :差替予定箇所
〔第二の実施形態〕
6 :底部耐火物ユニット
7 :第一サブユニット
71 :本体部分
72 :細管
73 :ガスプール
74 :給気管
8 :第二サブユニット
81 :第一辺部
82 :第一辺部の両端における内角
9 :第三サブユニット
200 :電気炉
200a :底部
201 :本体部
202 :鉄皮
203 :フランジ孔
204 :羽口
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8