(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-16
(45)【発行日】2023-08-24
(54)【発明の名称】はんだ処理装置
(51)【国際特許分類】
B23K 3/06 20060101AFI20230817BHJP
H05K 3/34 20060101ALI20230817BHJP
B23K 3/08 20060101ALI20230817BHJP
B23K 1/08 20060101ALN20230817BHJP
【FI】
B23K3/06 D
H05K3/34 506K
B23K3/08
B23K1/08 320
(21)【出願番号】P 2023001667
(22)【出願日】2023-01-10
【審査請求日】2023-01-12
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000199197
【氏名又は名称】千住金属工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149076
【氏名又は名称】梅田 慎介
(74)【代理人】
【識別番号】230117802
【氏名又は名称】大野 浩之
(72)【発明者】
【氏名】川島 泰司
(72)【発明者】
【氏名】矢寺 紀央
(72)【発明者】
【氏名】加賀谷 智丈
(72)【発明者】
【氏名】田口 寛
(72)【発明者】
【氏名】篠原 克宏
【審査官】原田 貴志
(56)【参考文献】
【文献】特許第7152691(JP,B1)
【文献】特開2002-080950(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 3/06
H05K 3/34
B23K 3/08
B23K 1/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融はんだを収容する貯留槽と、
前記貯留槽内の溶融はんだ内で少なくとも一部が延在し、
水平方向の一方側から他方側に移動するに際して上方への移動と下方への移動のそれぞれを少なくとも1回以上行いつつ、溶融はんだ内において水平方向で往復移動する延在部と、
を備える、はんだ処理装置。
【請求項2】
溶融はんだを収容する貯留槽と、
前記貯留槽内の溶融はんだ内で少なくとも一部が延在し、上下方向の位置を変えつつ、溶融はんだ内において水平方向で往復移動する延在部と、
前記延在部を溶融はんだ内において水平方向で往復移動させる移動部と、
前記移動部からの駆動力によって水平方向に移動される移動体と、
前記移動体をガイドするための波状のガイド部と、
を備え
る、はんだ処理装置。
【請求項3】
前記移動体に対して下方又は上方への弾性力を付与する弾性部材が設けられる、請求項2に記載のはんだ処理装置。
【請求項4】
溶融はんだを収容する貯留槽と、
前記貯留槽内の溶融はんだ内で少なくとも一部が延在し、上下方向の位置を変えつつ、溶融はんだ内において水平方向で往復移動する延在部と、
を備え、
前記延在部の少なくとも先端側の一部が非直線形状となっている
、はんだ処理装置。
【請求項5】
前記延在部はねじり形状となっている、凹凸形状となっている、又は表面に凹部もしくは凸部を有している請求項4に記載のはんだ処理装置。
【請求項6】
前記貯留槽内に設置され、前記溶融はんだを供給する供給部と、
溶融はんだ内に一部が浸漬され、前記延在部の移動領域と前記供給部との間に設けられる仕切部と、
を備える、請求項1乃至5のいずれか1項に記載のはんだ処理装置。
【請求項7】
移動本体部を備え、
前記延在部は、水平方向の一方側に設けられた第一延在部と、水平方向の他方側に設けられた第二延在部とを有し、
前記第一延在部は前記移動本体部の一方側端部に設けられ、
前記第二延在部は前記移動本体部の他方側端部に設けられ、
前記第一延在部及び前記第二延在部の各々は、複数の延在部材を含み、
複数の延在部材は前記往復移動に対する法線方向に沿って平行に設けられる、請求項1
乃至5のいずれか1項に記載のはんだ処理装置。
【請求項8】
前記貯留槽内に設置され、前記溶融はんだを供給する供給部と、
前記溶融はんだ内に一部が浸漬され、前記延在部の移動領域と前記供給部との間に設けられる仕切部
と、を備え
る、請求項1乃至5のいずれか1項に記載のはんだ処理装置。
【請求項9】
前記仕切部は、前記貯留槽に対して取り外し自在に設置される、請求項8に記載のはんだ処理装置。
【請求項10】
前記仕切部は、前記供給部と前記延在部との間で前記延在部の移動方向に沿って延在する仕切本体部と、前記仕切本体部の両端部に設けられ、前記延在部の移動方向に直交する方向に延在する1又は一対の仕切側方部を有する、請求項
8に記載のはんだ処理装置。
【請求項11】
前記仕切側方部の高さは、前記仕切本体部の高さよりも高くなっている、請求項10に記載のはんだ処理装置。
【請求項12】
前記仕切部は、前記供給部と前記延在部との間で前記延在部の移動方向に沿って延在する仕切本体部を有し、
前記仕切本体部の中央部を含む領域には凹部が設けられる、請求項
8に記載のはんだ処理装置。
【請求項13】
前記仕切部の下端部は、溶融はんだの液面よりも20~80mmだけ下方
に位置する、請求項
8に記載のはんだ処理装置。
【請求項14】
前記仕切部の下端部は、前記延在部の下端部と同じ位置又は前記延在部の下端部よりも低い位置であって、前記貯留槽の底面から10mm~200mmの位置に位置付けられている、請求項
8に記載のはんだ処理装置。
【請求項15】
溶融はんだを収容する貯留槽と、
前記貯留槽に設置され、前記溶融はんだを供給する供給部と、
前記貯留槽内の溶融はんだ内で少なくとも一部が延在し、溶融はんだ内において水平方向で往復移動する延在部と、
溶融はんだ内に一部が浸漬され、前記延在部の移動領域と前記供給部との間に設けられる仕切部と、
を備え、
前記延在部は、上下方向の位置を変えつつ、溶融はんだ内において水平方向で往復移動し、
前記仕切部の下端部は、往復移動する前記延在部の下端部の平均位置と同じ位置又は往復移動する前記延在部の下端部の平均位置よりも低い位置であって、前記貯留槽の底面から10mm~200mmの位置に位置付けられている
、はんだ処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶融はんだを基板に供給するはんだ処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、溶融はんだを基板に対して供給するための噴流はんだ付け装置が知られている。また、噴流はんだ付け装置においては、溶融はんだが酸化したことによって発生するドロスが形成されることも知られており、特許文献1及び2では、このようなドロスに対応するための装置が提案されている。
【0003】
特許文献1では、多数の羽根が平らな面を溶融はんだの液面に対して直交して軸に設置されており、軸は羽根の一部が溶融はんだ中に没する位置に取り付けられているとともに軸がモータと連動して回転する酸化物の分離装置が提案されている。
【0004】
特許文献2では、噴流ノズルの側面に噴流ノズルから噴流された溶融はんだを一方向に流動させる樋が設置されており、溶融はんだの流出方向となる噴流はんだ槽の端部にはノズル方向に開口を有するカバーが設置されており、カバー内にモータに連動されたスクリュウが設置されている噴流はんだ槽が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2003-53529号公報
【文献】特開2002-80950号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1及び2を採用した場合でも、ドロスを分解することを一定程度では実現できているが、その効果は限定的なものであった。
【0007】
本発明は、ドロスの分解をより効果的に行うことができるはんだ処理装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
[概念1]
本発明の第1態様によるはんだ処理装置は、
溶融はんだを収容する貯留槽と、
前記貯留槽内の溶融はんだ内で少なくとも一部が延在し、上下方向の位置を変えつつ、溶融はんだ内において水平方向で往復移動する延在部と、
を備えてもよい。
【0009】
[概念2]
概念1によるはんだ処理装置は、
前記延在部を溶融はんだ内において水平方向で往復移動させる移動部と、
前記移動部からの駆動力によって水平方向に移動される移動体と、
前記移動体をガイドするための波状のガイド部と、
を備えてもよい。
【0010】
[概念3]
概念2によるはんだ処理装置において、
前記移動体に対して下方又は上方への弾性力を付与する弾性部材が設けられてもよい。
【0011】
[概念4]
概念1乃至3のいずれか1つによるはんだ処理装置において、
前記延在部の少なくとも先端側の一部が非直線形状となってもよい。
【0012】
[概念5]
概念4によるはんだ処理装置において、
前記延在部はねじり形状となっている、凹凸形状となっている、又は表面に凹部もしくは凸部を有してもよい。
【0013】
[概念6]
概念1乃至5のいずれか1つによるはんだ処理装置は、
前記貯留槽内に設置され、前記溶融はんだを供給する供給部と、
溶融はんだ内に一部が浸漬され、前記延在部の移動領域と前記供給部との間に設けられる仕切部と、
を備えてもよい。
【0014】
[概念7]
概念1乃至6のいずれか1つによるはんだ処理装置において、
前記延在部は、水平方向の一方側に設けられた第一延在部と、水平方向の他方側に設けられた第二延在部とを有し、
前記第一延在部は前記移動本体部の一方側端部に設けられ、
前記第二延在部は前記移動本体部の他方側端部に設けられ、
前記第一延在部及び前記第二延在部の各々は、複数の延在部材を含み、
複数の延在部材は前記往復移動に対する法線方向に沿って平行に設けられてもよい。
【0015】
[概念8]
本発明の第2態様によるはんだ処理装置は、
溶融はんだを収容する貯留槽と、
前記貯留槽に設置され、前記溶融はんだを供給する供給部と、
前記貯留槽内の溶融はんだ内で少なくとも一部が延在し、溶融はんだ内において水平方向で往復移動する延在部と、
溶融はんだ内に一部が浸漬され、前記延在部の移動領域と前記供給部との間に設けられる仕切部と、
を備えてもよい。
【0016】
[概念9]
概念8によるはんだ処理装置において、
前記仕切部は、前記貯留槽に対して取り外し自在に設置されてもよい。
【0017】
[概念10]
概念8又は9によるはんだ処理装置において、
前記仕切部は、前記供給部と前記延在部との間で前記延在部の移動方向に沿って延在する仕切本体部と、前記仕切本体部の両端部に設けられ、前記延在部の移動方向に直交する方向に延在する1又は一対の仕切側方部を有してもよい。
【0018】
[概念11]
概念10によるはんだ処理装置において、
前記仕切側方部の高さは、前記仕切本体部の高さよりも高くなってもよい。
【0019】
[概念12]
概念8乃至11のいずれか1つによるはんだ処理装置において、
前記仕切部は、前記供給部と前記延在部との間で前記延在部の移動方向に沿って延在する仕切本体部を有し、
前記仕切本体部の中央部を含む領域には凹部が設けられてもよい。
【0020】
[概念13]
概念8乃至12のいずれか1つによるはんだ処理装置において、
前記仕切部の下端部は、溶融はんだの液面よりも20~80mmだけ下方に位置してもよい。
【0021】
[概念14]
概念8乃至13のいずれか1つによるはんだ処理装置において、
前記仕切部の下端部は、前記延在部の下端部と同じ位置又は前記延在部の下端部よりも低い位置であって、前記貯留槽の底面から10mm~200mmの位置に位置付けられてもよい。
【0022】
[概念15]
概念8乃至13のいずれか1つによるはんだ処理装置において、
前記延在部は、上下方向の位置を変えつつ、溶融はんだ内において水平方向で往復移動し、
前記仕切部の下端部は、往復移動する前記延在部の下端部の平均位置と同じ位置又は往復移動する前記延在部の下端部の平均位置よりも低い位置であって、前記貯留槽の底面から10mm~200mmの位置に位置付けられてもよい。
【発明の効果】
【0023】
本発明の一態様として、延在部が上下方向の位置を変えつつ溶融はんだ内において水平方向で往復移動する態様を採用した場合には、ドロスの分解を格段に効果的に行うことができる。また、本発明の別の態様として、溶融はんだ内において水平方向で往復移動する延在部が設けられ、当該延在部の移動領域と供給部との間に仕切部が設けられる態様を採用した場合には、仕切部によってドロスの供給部側への移動が遮断されることから、水平方向で往復移動する延在部による分解の効果を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】
図1は、本実施の形態によるはんだ付け装置を示した概略図である。
【
図2】
図2は、本実施の形態において、第一延在部及び第二延在部が設けられた態様を示した噴流はんだ装置の側方断面図である。
【
図3】
図3は、本実施の形態において、第一延在部が第一連結体と一体になり、第二延在部が第二連結体と一体になった態様を採用した噴流はんだ装置の上方平面図である。
【
図4】
図4は、本実施の形態において、第一延在部が移動本体部と締結部材によって締結され、第二延在部が移動本体部と締結部材によって締結された態様を採用した噴流はんだ装置の上方平面図である。
【
図5A】
図5Aは、本実施の形態において、第一延在部材が第一連結体と一体になり、第二延在部材が第二連結体と一体になった態様を示した側方図である。
【
図5B】
図5Bは、本実施の形態において、第一延在部材が第一連結体と一体になり、第二延在部材が第二連結体と一体になった態様を示した上方平面図である。
【
図6A】
図6Aは、本実施の形態において、第一延在部材及び第二延在部材が移動本体部と締結部材によって締結された態様を示した側方図である。
【
図6B】
図6Bは、本実施の形態において、第一延在部材が移動本体部と締結部材によって締結され、第二延在部材が移動本体部と締結部材によって締結された態様を示した上方平面図である。
【
図7】
図7は、本実施の形態で用いられる移動部の一例を供給部と反対側から見た側方図である。
【
図8】
図8は、本実施の形態において、基板の搬送方向において(
図8の左右方向において)、延在部が一箇所だけ設けられた態様を示した噴流はんだ装置の側方断面図である。
【
図9】
図9は、本実施の形態において、第一延在部及び第二延在部の他に第三延在部が設けられた態様を示した噴流はんだ装置の側方断面図である。
【
図10】
図10は、本実施の形態において、第一延在部材、第二延在部材及び第三延在部材の各々が移動本体部と締結部材によって締結された態様を示した上方平面図である。
【
図11】
図11は、本実施の形態において、第一延在部材が移動本体部と締結部材によって締結された態様を示した上方平面図である。
【
図12】
図12は、本実施の形態において、弾性部材が移動本体部を下方に押し付ける態様を示した側方図である。
【
図13】
図13は、本実施の形態で用いられ得る仕切部を仕切本体部を正面とした方向から見た図である。
【
図14】
図14は、本実施の形態において、噴流はんだ付け装置とは別の分離装置に延在部が設けられた態様を示した分離装置の側方断面図である。
【
図15】
図15は、本実施の形態において、延在部が基板の搬送方向に直交する方向で往復移動する態様であって、供給部に対して基板搬送方向の下流側に延在部が設けられた態様を示した上方平面図である。
【
図16】
図16は、本実施の形態において、延在部が基板の搬送方向に直交する方向で往復移動する態様であって、供給部に対して基板搬送方向の上流側に延在部が設けられた態様を示した上方平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
実施の形態
《構成》
図1に示すはんだ付け装置は、例えば、半導体素子、抵抗、コンデンサ等の電子部品を回路上に搭載した基板200に対して、はんだ付け処理する装置である。典型的には電子部品等は基板200の下方側に位置付けられることになる。はんだ付け装置は、本体部1と、基板200を搬送する搬送部5とを有している。本体部1は、基板200を搬入する搬入口2と、基板200を搬出する搬出口3とを有している。基板200の搬送は、側方から見て所定の角度、例えば3~6度程度の傾斜をもって行われてもよい(
図2参照)。この場合、基板搬送方向Aの上流と比較して下流の方が高い位置に位置付けられることになる。但し、これに限られることはなく、基板200の搬送が例えば水平に行われるようにしてもよい。搬送部5は、基板200を搬送するための駆動力を付与する搬送駆動部(図示せず)と、基板200を案内する搬送レール6とを有してもよい。
【0026】
図1に示すように、本体部1には、基板200にフラックスを塗布するフラクサ10と、フラックスを塗布された基板200を予備加熱するプリヒータ部15と、溶融したはんだを噴流して基板200に接触させる噴流はんだ付け装置100と、はんだ付けされた基板200を冷却する冷却機20と、が設けられてもよい。搬送部5の搬送レール6に沿って搬送される基板200は、フラクサ10、プリヒータ部15、噴流はんだ付け装置100及び冷却機20を順に通過することになる。噴流はんだ付け装置100は、各構成要素に指令を与えて制御する制御部50と、様々な情報を記憶する記憶部60と、操作者が様々な情報を入力することではんだ付け装置を操作する操作部70と、を有してもよい。なお、
図1では、制御部50、記憶部60及び操作部70以外について、はんだ付け装置が上方平面図で示されている。
【0027】
フラクサ10は、搬送された基板200にフラックスを塗布するために用いられる。フラックスは溶剤及び活性剤等を含んでもよい。フラクサ10は、複数の塗布装置を設けてもよい。はんだの種類や基板200の品種に応じて、フラックスの種類を使い分けるようにしてもよい。
【0028】
プリヒータ部15は、基板200を加熱することで、基板200を均一に所定の温度まで上昇させる。このように基板200を加熱すると、基板200の所定の箇所にはんだが付着されやすくなる。プリヒータ部15は、例えば、遠赤外線パネルヒータが用いられる。遠赤外線パネルヒータは、基板200を設定した温度まで急速に加熱させることができる。また。ヒータによって加熱された気体(熱風)をファンによって基板200に吹き付けて、基板200を加熱するようにしてもよい。また、プリヒータ部15としては、ハロゲンヒータ等を用いてもよい。
【0029】
冷却機20は、図示しない冷却ファンを有し、噴流はんだ付け装置100ではんだ付け処理された基板200を冷却する。冷却ファンの制御はON及びOFFだけでもよいが、風速を調整する等するようにしてもよい。また、冷却機20としては、基板200が所定の温度となるまで冷却するようにチラー等を用いてもよい。
【0030】
図1に示す制御部50は、搬送レール6を含む搬送部5、フラクサ10、プリヒータ部15、噴流はんだ付け装置100、冷却機20、操作部70及び記憶部60に通信可能に接続されている。通信可能な接続には有線によるものと無線によるものの両方が含まれている。操作部70は、液晶表示パネルやテンキー等を有してもよく、典型的にはパソコン、スマートフォン、タブレット等である。作業者が操作部70を操作することで、制御部50は、搬送部5による搬送速度や基板200を搬送するタイミング、フラクサ10でのフラックスの温度、フラックスの塗布量、プリヒータ部15の温度、噴流はんだ付け装置100の溶融はんだSの温度や、噴流量、噴流速度、冷却機20が有する冷却ファンのONやOFF等を制御するようにしてもよい。記憶部60は、操作部70で入力された情報や、制御部50の指示、噴流はんだ付け装置100の稼働時間等を記憶するようにしてもよい。
【0031】
次に、本実施の形態の噴流はんだ付け装置100について説明する。典型的には、この噴流はんだ付け装置100がはんだ処理装置に該当する。
【0032】
図2に示すように、噴流はんだ付け装置100は、溶融はんだSを貯留する貯留槽110と、第一駆動部である第一ポンプ141と、第一ポンプ141からの駆動力を受けて、溶融はんだSを噴出する第一供給口125と、第二駆動部である第二ポンプ146と、第二ポンプ146からの駆動力を受けて、溶融はんだSを噴出する第二供給口135と、を有している。第一供給口125及び第二供給口135から噴出される溶融はんだSは下方から上方に向けて噴流される。第一ポンプ141からの駆動力を受けた溶融はんだSはダクト内を圧送されて、基板200に向かって噴流させ、基板200の所定の箇所にはんだを付着させる。同様に、第二ポンプ146からの駆動力を受けた溶融はんだSはダクト内を圧送されて、基板200に向かって噴流させ、基板200の所定の箇所にはんだを付着させる。溶融はんだSは図示しないヒータで例えば180℃~250℃程度の温度に溶融はんだSを加熱する。第一供給口125及び第二供給口135から供給された溶融はんだSは、循環されて利用されてもよい。この場合には、図示しないフィルターを通過して循環されるようにしてもよい。第一ポンプ141及び第二ポンプ146は典型的には各々1つのポンプで構成されるが、第一ポンプ141及び第二ポンプ146は各々が複数のポンプで構成されるようにしてもよい。
【0033】
図2に示す噴流はんだ付け装置100の第一供給口125は複数の第一開口部126を有しており(
図3等参照)、第一開口部126は一次噴流ノズルを構成する。複数の第一開口部126は大量の溶融はんだSを勢いよく基板200に供給するために用いられる。第二供給口135の第二開口部136は二次噴流ノズルであり、第一供給口125と比較して弱い勢いで溶融はんだSを基板200に供給するために用いられる。第一供給口125から供給される噴流はんだは勢いよく溶融はんだSを基板200に衝突させる動的な供給であって、溶融はんだSを基板200の隅々まで行きわたらせるための供給である。他方、第二供給口135から供給される噴流はんだは静的な供給であり、静かな流れからなる溶融はんだS内を通過させることで、基板200の電極等にはんだを綺麗に付けるための供給である。
【0034】
本実施の形態では、供給部は第一供給部120及び第二供給部130を有している。
図2に示すように、第一供給部120は、第一筐体121と、第一筐体121の上面に設けられ、溶融はんだSを供給する1つ又は複数の第一開口部126を有する第一供給口125と、を有している。第一開口部126は第一筐体121の上面から上方に突出して設けられてもよい。第二供給部130は、第二筐体131と、第二筐体131の上面に設けられ、溶融はんだSを供給する1又は複数の第二開口部136を有する第二供給口135と、を有している。第一筐体121と第二筐体131とは離間して設けられてもよいが、これらは一体となって設けられてもよい。第一筐体121と第二筐体131が一体となる場合には、壁面の一部が共有されるようにしてもよい。本実施の形態では、一例として、複数の円形状の第一開口部126を有する第一供給口125と、1つのスリット状の第二開口部136を有する第二供給口135とを有してもよい。但し、このような態様に限られることはなく、例えばスリット状の第二開口部136は複数設けられてもよく、この場合には、平行して延在する態様で複数のスリット状の第二開口部136が設けられてもよい。
【0035】
溶融はんだSの温度は一般的にははんだの溶融温度+50℃程度となっている。近年、部品ダメージの低減及び機械電力消費量削減から、作業温度を下げたいというニーズが高まってきている。また、SnやAgの相場が高騰しており、これらを使わないはんだを用いることも検討されてきており、典型的にはSn-3Ag-0.5Cu(融点217℃)の代わりに、Sn-58Bi(融点139℃)が用いられることが検討されている。Sn-58Biは低温の共晶はんだである。なお、Sn-58Biを使うと、はんだ付けを200℃以下の温度で行うことができる。他方、Sn-58Biは価格が安いものの、硬くてもろく、酸化しやすいという性質もあるので、その取扱いが難しい素材ではある。
【0036】
溶融はんだSを供給している間、第一供給口125から供給される溶融はんだSと、第二供給口135から供給される溶融はんだSは混合される。このようにして混合された溶融はんだSは、第一供給口125と第二供給口135との間において、搬送部5によって搬送される基板200から離間しない構成になってもよい。
【0037】
本実施の形態では、第一供給口125から供給される溶融はんだSと第二供給口135から供給される溶融はんだSは一体となり、基板200の搬送位置よりも高い位置まで噴出される態様となってもよいが、このような態様に限られることはなく、第一供給口125から供給される溶融はんだSと第二供給口135から供給される溶融はんだSとの間には、基板200に対して溶融はんだSが接触しない箇所が設けられ、溶融はんだSが明確に2段階に分けて噴出される態様となってもよい(特許文献2参照)。
【0038】
一次噴流ノズルである第一開口部126から供給される単位時間あたりの溶融はんだSの総量は、二次噴流ノズルである第二開口部136から供給される単位時間あたりの溶融はんだSの総量と同程度であってもよく、0.8倍以上1.2倍以下となってもよい。
【0039】
第一供給口125から供給される溶融はんだSと第二供給口135から供給される溶融はんだSが一体になる態様を採用した場合には、一次噴流ノズルである第一開口部126から供給される溶融はんだSは、二次噴流ノズルである第二開口部136から供給される溶融はんだSの面よりも高い位置まで噴出されてもよい。噴出される溶融はんだSの高さは第一開口部126の先端から例えば10mm程度である。第二供給口135から供給される溶融はんだSは第一供給口125から供給される溶融はんだSによって押し上げられるというような状態となる。
【0040】
図2に示すように、貯留槽110内の溶融はんだS内に少なくとも一部が浸漬し、溶融はんだS内で延在する延在部210と、延在部210が取り付けられた移動本体部220が設けられてもよい。また、移動本体部220を水平方向で往復移動させることで、延在部210を溶融はんだS内において水平方向で往復移動させる移動部250(
図3及び
図4参照)が設けられてもよい。
図3及び
図4で示すように、移動部250と移動本体部220とは、連結体230を介して互いに連結されてもよい。延在部210、移動本体部220、連結体230及び移動部250を含むユニット(アセンブリ)が提供されてもよい。このようなユニットは既存の溶融はんだ装置に後付けで取り付けられるようにしてもよい。本実施の形態の「水平方向で往復移動」とは、水平方向の成分を含んで往復移動すれば足り、水平方向に対して傾斜して往復移動する態様を含んでいる。本実施の形態の「水平方向で往復移動」は完全な水平方向での往復移動であってもよいし、水平方向に対して45度未満の角度で往復移動する態様であってもよい。
【0041】
延在部210は上下方向の位置を変えつつ溶融はんだS内において水平方向で往復移動してもよい。発明者らが確認したところによると、このような態様を採用することで、はんだの酸化物であるドロスの分解を格段に早くすることができた。このため、延在部210の上下方向の位置を変えつつ溶融はんだS内において水平方向で往復移動する態様を採用することは極めて有益である。上下方向の変動は10~30mmであることが好ましく、15~25mmであることがより好ましい。上下方向の変動の大きさは延在部210の水平方向での移動速度との兼ね合いになることから、上下方向の変動の大きさ及び水平方向での移動速度の両者を適宜調整するようにしてもよい。但し、このような態様に限られることはなく、延在部210は上下方向の位置を変えずに、溶融はんだS内において単純に水平方向で往復移動してもよい。
【0042】
延在部210は上下方向の位置を変えつつ水平方向で往復移動する態様を採用する場合には、移動本体部220をガイドするための波状のガイド部270(
図12参照)が設けられてもよい。本実施の形態における「波状」とは、連続的に変化する凹部(谷部)又は凸部(山部)が少なくとも1つ以上存在することを意味し、例えば
図2に示す態様では凸部が一つ存在する波状であり、例えば
図8に示す態様では凸部が2つ存在し、凸部の間に凹部が1つ存在する波状である。凸部及び凹部の数は特に限られることはなく、適宜変更でき、例えば凸部(山部)が8個設けられ、凹部(谷部)が9個設けられるような態様を採用することもできる。波状のガイド部270を採用した場合には、移動本体部220が水平方向に移動するだけで、延在部210の上下方向の位置が変わることになるので、単純な構成によって、延在部210の上下方向の位置の変更を行うことができる。例えば
図12で示すように、移動体222がガイド部270に沿って移動することで、移動本体部220が上下方向の位置の変動を行いつつ、水平方向に沿って移動するようにしてもよい。移動体222はボールベアリングであってもよいし、ローラであってもよい。なお、移動部250に上下方向に移動可能な機構が設けられており、制御部50からの指令に従い、移動部250によって移動本体部220が水平方向に移動されつつ、上下方向の位置が変動されるようにしてもよい。
図5Bに示す態様では、移動本体部220の下方に設けられた移動体222がガイド部270に沿って移動する態様となっている。
図5Aに示す態様では、後述する第一連結体215及び第二連結体216の下方に設けられた移動体222がガイド部270に沿って移動する態様となっている。
【0043】
移動本体部220をガイドするためのガイド部270が設けられている態様において、移動本体部220を下方又は上方への弾性力を付与する弾性部材260が設けられてもよい。このような態様を採用することで、確実にガイド部270に沿って移動本体部220を移動させることができ、ひいては延在部210の上下方向の位置の変動を確実に行わせることができる。弾性部材260は例えばバネからなってもよい。
図7及び
図12で示すように、ガイド部270が移動体222の下方に設けられている場合には、移動本体部220とともに移動する弾性部材260が移動体222の上方に設けられ上方から移動体222を下方に押し付けるようにしてもよいし(
図12で示す態様はこの態様である。)、移動本体部220とともに移動する弾性部材260が移動体222の下方に設けられ下方から移動本体部220を下方に引っ張るようにしてもよい(
図7で示す態様はこの態様である。)。また、ガイド部270が移動体222の上方に設けられている場合には、移動本体部220とともに移動する弾性部材260移動体222の上方に設けられ上方から移動本体部220を上方に引っ張るようにしてもよいし、移動本体部220とともに移動する弾性部材260が移動体222の下方に設けられ下方から移動体222を上方に押し付けるようにしてもよい。
【0044】
延在部210の少なくとも一部は非直線形状となってもよく、溶融はんだS内に浸される先端側の少なくとも一部が非直線形状となり、根本側は直線形状となってもよい。本願において延在部210の先端側とは、延在部210の長手方向の中心位置よりも先端側を意味する。延在部210は一例として50mm程度の長さであることから、50mmの延在部210を用いた場合には、少なくとも先端から25mm(例えば30mm)の範囲で延在部210の少なくとも一部が非直線形状となる。また、延在部210の長さは一様ではないが、別の例としては非直線形状が延在部210の先端から20~40mmの範囲で形成されてもよい。なお、延在部210の全体にわたって非直線形状となってもよい。本願の「非直線形状」というのは、延在部210の表面又は縦断面が直線形状でない態様のあらゆる態様を含んでいる。発明者らが確認したところ、このように延在部210を非直線形状とすることによって、ドロスの分解をさらに早くすることができ、非常に有益な効果があることを確認できた。特に延在部210が上下方向に移動する場合には、延在部210が溶融はんだS内に押し込まれる際に、非直線形状が寄与して、ドロスの分解をさらに促進すると考えられる。非直線形状からなる延在部210は、ねじり形状となってもよいし、凹凸形状となってもよいし、表面に凹部及び/又は凸部219が設けられてもよい(
図17B参照)。ねじり形状の一例としてはねじり平鋼形状となってもよいし(
図5A及び
図17A参照)、先端が細くなるネジ形状となってもよいし、ボルト形状となってもよい。表面に凹部及び/又は凸部が設けられる形状としては、例えば表面がジグザグ(ギザギザ)形状となってもよい。なお、延在部210は必ずしも非直線形状となっている必要はなく、延在部210が直線形状となってもよい。また、延在部210は上下方向に対して傾斜して延在するようにしてもよい。
【0045】
図3、
図4及び
図13等で示すように、貯留槽110に設置され、延在部210の移動領域と供給部120,130との間に設けられる仕切部300が設けられてもよい。延在部210の移動領域というのは、平面視した場合に延在部210が移動している範囲を意味している。このため、仕切部300が設けられる場合には、平面視した場合(上方から見た場合)に延在部210が移動している範囲と供給部120,130との間に、仕切部300の少なくとも一部が設けられることになる。このような仕切部300を設けることで、溶融はんだSに溜まったドロスが供給部120,130側に流れ込むことを防止でき、ある程度固まって存在するドロスを延在部210によって効率よく分解させることができるようになる。また、ドロスが供給部120,130側に移動すると、ドロスが溶融はんだSとともに循環して、処理している基板200に付着してしまうおそれがあるが、仕切部300を設けることによって、そのような問題が発生することを防止できる。
【0046】
仕切部300は貯留槽110に対して取り外し自在に設置されてもよい。このような態様を採用する場合には、ドロスがある程度生成された段階でドロスをヘラ等によって溶融はんだS上で移動させた上で、仕切部300で供給部120,130との間を隔離することができ、ドロスが供給部120,130側に流れ込むことを防止できる。このため、簡易な運用によってドロスが供給部120,130側に移動することを防止できる。また、仕切部300でドロスの供給部120,130側への移動が遮断されることから、水平方向で往復移動する延在部210による分解の効果を高めることができる。前述したように、延在部210が上下方向の位置を変えつつ溶融はんだS内において水平方向で往復移動する態様を採用しつつ、仕切部300も採用した場合には、ドロスを分解する効果はより一層高いものとなり、非常に有益なものである。
【0047】
仕切部300は、供給部120,130と延在部210との間で延在部210の移動方向(
図3及び
図4の上下方向)に沿って延在する仕切本体部310と、仕切本体部310の両端部に設けられ、延在部210の移動方向に直交する方向(
図3及び
図4の左右方向)に延在する一対の仕切側方部320を有してもよい。「延在部210の移動方向に沿って延在する」というのは、「延在部210の移動方向」に平行である必要はなく、「延在部210の移動方向」に対して傾斜して延在する態様を含んでいる。一対の仕切側方部320は、貯留槽110の壁面に平行になるように配置されてもよい。
【0048】
仕切本体部310の下端部は、溶融はんだSの液面よりも20~80mmだけ下方の位置(
図13のD2参照)になるようにしてもよい(なお、貯留槽110の上端から5~10mmの位置に溶融はんだSの液面が来ることが典型的である。)。このような位置に下端部を設けることで、溶融はんだS内に潜り込んだドロスが仕切部300の供給部120,130側と反対側(仕切部300の内側)に自然に入り込むことが期待できる。このため、自然にドロスを仕切部300の内側に導くことができ、供給部120,130によって基板200を処理しつつ、ドロスの分解を行うということも可能となる。このため、基板200への処理を停止させることなく、また基板200への処理を行っていない時間帯に別途動作させることなく、基板200を処理しながらドロスを分解できる点で有益である。なお、ドロスの分解処理は、一定程度のドロスが溜まった後で行うことが効率的であることから、基板200を処理しながら、断続的にドロスの分解処理を行うようにしてもよい。
【0049】
溶融はんだSの液面の高さではなく、仕切本体部310との位置関係で述べるとすると、仕切本体部310の下端部は、延在部210の下端部と同じ位置又は延在部210の下端部よりも低い位置であって、貯留槽110の底面から10mm~200mmの位置に位置付けられてもよい。このような態様を採用することで、溶融はんだS内に潜り込んだドロスが仕切部300の供給部120,130側と反対側(仕切部300の内側)に自然に入り込み、かつ一度入り込んだドロスが仕切部300の供給部120,130側に戻ることを防止することを期待できる。より具体的には、貯留槽110の底面から10mm~200mmの位置に仕切本体部310の下端部を位置付けることで溶融はんだS内に潜り込んだドロスを仕切部300の供給部120,130側と反対側(仕切部300の内側)に自然に入り込ませることができ、また延在部210の下端部と同じ位置又は延在部210の下端部よりも仕切本体部310の下端部を下方側に位置付けることで一度入り込んだドロスが仕切部300の供給部120,130側に戻ることを防止することができる。なお、延在部210が上下方向に位置を変えて水平方向で移動する態様を採用した場合には、延在部210の上下方向の中心位置と比較すればよく、延在部210が上下方向の中心位置に位置付けられている際において、仕切本体部310の下端部は、延在部210の下端部と同じ位置又は延在部210の下端部よりも低い位置であって、貯留槽110の底面から10mm~200mmの位置に位置付けられるようにすることが有益である。
【0050】
図13で示すように、仕切本体部310の中央部を含む領域には凹部315が設けられてもよい。このような態様を採用することで、供給部120,130から噴流によって供給される溶融はんだSを目視しやすくなり、基板200の相対的な高さ位置を調整しやすくなる。特に基板200を処理しながらドロスを分解するという態様を採用する場合には、供給部120,130から噴流によって供給される溶融はんだSを目視できることに対するニーズは高い。なお、凹部315は仕切本体部310の全体の長さの50%以上であってもよいし、70%以上であってもよいし、80%以上であってもよい。上限は100%であってもよいし、90%であってもよい。
【0051】
仕切側方部320の高さは仕切本体部310の高さよりも高くなってもよい。生成されたドロスは延在部210の動きによって、延在部210の移動方向に沿って押し流されることになる。この結果、ドロスは仕切側方部320が設けられている側方側で溜まる傾向にあり、当該側方側において貯留槽110から流れ出てしまう可能性がある。この点、仕切側方部320の高さを高くすることで、このような問題が発生することを防止できる。仕切側方部320の高さは仕切本体部310の高さよりも20~50mmほど高くなってもよい。但し、仕切側方部320が設けられていない態様を採用することもでき、その場合には、仕切部300が仕切本体部310だけから構成されることになる。また、仕切側方部320は一対である必要はなく、仕切本体部310の一端にだけ仕切側方部320が設けられるようにしてもよい。
【0052】
仕切側方部320の上端部は取り外し可能となってもよい。仕切側方部320の上端部は基板200を搬送した後で外側に回り込む搬送部5と干渉する可能性がある(特願2022-94829号の例えば
図1参照)。このように仕切側方部320が搬送部5と干渉すると、仕切側方部320が破損することになるが、仕切側方部320の上端部が取り外し可能となることで、交換する部分を少なくすることができ、コストを削減することができる点で有益である。
【0053】
延在部210、移動本体部220、連結体230及び移動部250を含むユニットが設けられている側に向かって溶融はんだSが流れるような構成を採用してもよい。例えば、第一供給口125及び第二供給口135の延在部210が設けられている側と反対側に上方に突出した堰140を設け(
図3及び
図4参照)、第一供給口125及び第二供給口135から供給される溶融はんだSが延在部210の設けられている側(
図3及び
図4の左側)に導かれるようにしてもよい。また上流側調整部181及び下流側調整部182が延在部210が設けられている側(
図3及び
図4の左側)に向かって下がるように傾斜しており、第一供給口125及び第二供給口135から供給される溶融はんだSが延在部210の設けられている側に導かれるようにしてもよい。
【0054】
本実施の形態では、延在部210は噴流はんだ付け装置100の貯留槽110に設置される態様を主に用いて説明するが、このような態様に限られることはなく、噴流はんだ付け装置100とは別の分離装置290に延在部210が設置されてもよい(
図14参照)。この場合には、分離装置290がはんだ処理装置に該当することになる。分離装置290を採用する場合には、ドロスの発生した溶融はんだSを分離装置290に移し、ドロスの発生した溶融はんだSが分離装置290で分離されることになる。なお、
図14において、分離装置290の貯留槽は符号291で示されている。
【0055】
延在部210は、水平方向の一方側(一例としては基板200の搬送方向Aの上流側:
図2の左側)に設けられた第一延在部211と、水平方向の他方側(一例としては基板200の搬送方向Aの下流側:
図2の右側に設けられた第二延在部212とを有してもよい。第一延在部211は移動本体部220の一方側端部に設けられ、第二延在部212は移動本体部220の他方側端部に設けられてもよい。移動本体部220の一方側端部とは、移動本体部220の全長をLとした場合、移動本体部220の一方側端部から20%の範囲の領域を意味し、一方側端部から0.2Lの範囲の領域を意味する。同様に、移動本体部220の他方側端部とは、移動本体部220の他方側端部から20%の範囲の領域を意味し、他方側端部から0.2Lの範囲を意味する。このように第一延在部211及び第二延在部212を有する場合には、移動部250は、第一延在部211及び第二延在部212を溶融はんだS内において水平方向で往復移動させることになる。このような態様に限られることはなく、第一延在部211と第二延在部212との間に設けられた第三延在部213が設けられてもよいし(
図9参照)、移動本体部220の水平方向における一箇所だけに延在部210が設けられてもよい(
図8参照)。
【0056】
延在部210が設けられる箇所はこのような態様に限られることはなく、水平方向において、移動本体部220の4か所以上の箇所に移動本体部220が設けられてもよい。本実施の形態では、延在部210が基板200の搬送方向Aに沿って水平方向で往復移動する態様を用いて説明するが、このような態様に限られることはなく、例えば基板200の搬送方向Aに直交する方向に沿って、延在部210が水平方向で往復移動する態様を採用してもよい(
図15及び
図16参照)。但し、この場合には、基板200の下方側に延在部210が設けられることから、基板200と接触する可能性が発生してしまう。この観点からすると平面視において基板200の搬送領域とは重複しない箇所で延在部210が水平方向で往復移動する態様を採用することが好ましい。
【0057】
図7に示すように、移動部250は、駆動モータ251と、駆動モータ251によって水平方向で移動される駆動ベルト252とを有してもよい。駆動モータ251には駆動ギア253が設けられており、駆動ギア253は駆動ベルト252を介して従動側の駆動ギア254に連結されている(
図5Bも参照)。駆動ベルト252には上下方向に延在する連結体230が連結されており、連結体230が移動本体部220にネジ等の締結部材を介して固定されている。駆動モータ251が回転することで駆動ベルト252が回転し、その結果として連結体230が水平方向に移動され、連結体230に連結された移動本体部220が水平方向に移動されることになる。なお、移動部250としては別の態様を採用することもでき、例えば連結体230をシリンダによって水平方向に移動させるような態様(例えば油圧式シリンダ)を用いることもできる(
図3及び
図4参照)。
図3及び
図4に示す態様では、油圧式シリンダからなる移動部250がシリンダを伸縮することで連結体230が水平方向に移動されることになる。また、移動部250としてはアクチュエータを用いてもよく、一軸スライダーロボットを用いてもよい。アクチュエータとしては、モータの回転力を駆動機構に伝えることで、回転運動を直線運動に変換するようにしてもよい。
【0058】
ドロスを分離するための延在部210の水平方向の移動は基板200にはんだ付けをしながら行われてもよいし、基板200へのはんだ付けが行われていない間に行われてもよい。ドロスを分離するための延在部210の水平方向の移動は1回に2~5分程度であってもよいし、常時行われてもよい。延在部210を水平方向に移動させることはドロスが塊になることを抑制することにもつながる。ドロスの分離を促進したい場合には水平方向の往復移動速度を速くするようにしてもよい。移動速度は、例えば2~20m/分であり、好ましくは下限値が4m/分であり、上限値が15m/分である。塊となっておらず分離されたドロスは作業者が手動で取り除いてもよいし、特許文献2で示されているようなスクリュウと集積箱を設けて自動で回収されるようにしてもよい。
【0059】
第一延在部211は、複数の第一延在部材211aを含んでもよい。第一延在部材211aは連結体230の移動方向の法線方向に沿って平行に設けられてもよい(
図3及び
図4参照)。第二延在部212も、複数の第二延在部材212aを含んでもよい。第二延在部材212aは移動方向の法線方向に沿って平行に設けられてもよく、延在部材211a,212aの間隔の各々は略同一であってもよい。本願において「間隔が略同一」とは、最も大きな間隔Aに対して10%以内の間隔にあることを意味し、延在部材211a,212aの各々の間隔が0.9A以上1.1A以下になることを意味している。延在部材211a,212aの間隔は例えば10~30mm程度である。但し、延在部材211a,212aの先端側が非直線形状となっている場合には、延在部材211a,212aの全体が直線形状となっている態様と比較して、延在部材211a,212aの間隔を広めに設定するようにしてもよい。
図3及び
図4では3つの延在部材211a,212aが示されているが、このような態様に限られることはなく、延在部材211a,212aは2又は4以上で設けられてもよい。延在部材211a,212aの各々はブレード、スパチュラ、へら等からなってもよく、その厚みは0.1~0.3mm程度であってもよい。なお、往復移動の速度が遅い場合には延在部材211a,212aの間隔を小さくし、往復移動の速度が速い場合には延在部材211a,212aの間隔を大きくするようにしてもよい。第一延在部材211a及び第二延在部材212aとしては同じ部材・形状を採用してもよいし、異なる部材・形状を採用してもよい。なお、延在部材が一つしか設けられない場合には延在部材と延在部210は同じ意味となる。このため、第一延在部材211aが一つしか設けられない場合には第一延在部材211aと第一延在部211は同じ部材を意味することになり、同様に、第二延在部材212aが一つしか設けられない場合には第二延在部材212aと第二延在部212は同じ部材を意味することになる。
【0060】
第一延在部材211a及び第二延在部材212aの各々は、ネジ等の締結部材240を介して移動本体部220に連結されてもよい(
図2、
図4、
図6A及び
図6B参照)。また、第一延在部材211aの各々は、水平方向に延在する第一連結体215と一体に構成され、第一連結体215がネジ等の締結部材240を介して移動本体部220に連結されてもよい(
図5A、
図5B及び
図3参照)。同様に、第二延在部材212aの各々は、水平方向に延在する第二連結体216と一体に構成され、第二連結体216がネジ等の締結部材240を介して移動本体部220に連結されてもよい。
図5Aでは、第一延在部材211a及び第一連結体215と、第二延在部材212a及び第二連結体216とをまとめて図示しているが、符号211aが用いられる場合には符号215が用いられることになり、符号212aが用いられる場合には符号216が用いられることになる。
【0061】
また、移動本体部220の一箇所だけに延在部210が設けられる場合や第三延在部213が設けられる場合も同様である。移動本体部220の一箇所だけに延在部210が設けられる場合には、当該延在部210は、複数の延在部材210aを含んでもよく、延在部材210aは移動方向の法線方向に沿って平行に設けられてもよく、延在部材210aの間隔は略同一であってもよい(
図11参照)。第三延在部213が設けられる場合には、第三延在部213は、複数の第三延在部材を含んでもよく、第三延在部材は移動方向の法線方向に沿って平行に設けられてもよく、第三延在部材213aの間隔は略同一であってもよい(
図10参照)。なお、第一延在部211及び第二延在部212との間には第三延在部213の他に、第四延在部、第五延在部等の2つ以上の延在部210が設けられてもよい。
【0062】
移動部250は、貯留槽110の内側壁から5cm以下の距離まで延在部210の端部を移動させるようにしてもよい。第一延在部211及び第二延在部212が設けられている場合には、第一延在部211の端部(
図3及び
図4の上方側端部)を移動させ、貯留槽110の他方側の内側壁から5cm以下の距離まで第二延在部212の端部(
図3及び
図4の下方側端部)を移動させる構成としてもよい(
図3の矢印D1参照)。このような態様を採用することで、貯留槽110の両端部近傍まで延在部210を移動させることができる。また、第二延在部212が溶融はんだS内で移動することで作り出された溶融はんだSを第一延在部211によって分解することができ、同様に、第一延在部211が溶融はんだS内で移動することで作り出された溶融はんだSを第二延在部212によって分解することができる。このため、ドロスが塊になることをより効果的に抑制できる。
【0063】
延在部210は3cm以上の長さで溶融はんだS内に浸漬してもよく、好ましくは5cm以上の長さで溶融はんだS内に浸漬してもよく、さらに好ましくは10cm以上の長さで溶融はんだS内に浸漬してもよい。複数の延在部材210a,211a,212a,213aが設けられる場合には、延在部材210a,211a,212a,213aの各々が3cm以上の長さ、5cm以上の長さ又は10cm以上の長さで溶融はんだS内に浸漬してもよい。
【0064】
延在部210が熱伝導性材料からなってもよい。一例としては、延在部210はステンレス、鋼鉄、鋳鉄、チタン合金、マグネシウム合金等からなってもよい。延在部210の熱伝導率は10W/m・K以上となることが有益であり、13W/m・K以上となることがさらに有益であり、15W/m・K以上となることがさらにより有益である。延在部210がこのように熱伝導性の高い材料からなることで、溶融はんだSの熱を延在部210に持たせることができる。酸化くず(ドロス)の比重は軽いことから、溶融はんだSの上面に浮かぶことになるが、延在部210として熱伝導性の高い材料を採用することで、溶融はんだSの上面側に位置するドロスに熱を加えることで、ドロスを効果的に分解することができるようになる。複数の延在部材210a,211a,212a,213aが設けられる場合には、延在部材210a,211a,212a,213aの各々が熱伝導性材料からなってもよい。
【0065】
特にはんだとしてSn-58Bi(Bi58Sn42)を用いた場合には、SAC305(Sn96.5Ag3.0Cu0.5)を用いた場合と比較して酸化くずの発生がかなり多くなった。このため、本実施の形態のような延在部210を採用することはSn-58Biを用いる場合には特に有益なものとなっている。
【0066】
なお、ドロスの分離を促進するために、酸化分離剤として、米糠、ふすま、麦糠、豆類、ゴマ、ヒマワリ、ヤシ、菜種、植物油、木粉等の糖類等や、松脂、塩化アンモニューム、アミンのハロゲン化物等を溶融はんだSに提供するようにしてもよい。発明者らが確認したところによると、ゴマを用いることが特に有益であった。さらに言えば、ゴマを用いつつ、延在部210が上下方向の位置を変えつつ溶融はんだS内において水平方向で往復移動させ、かつ仕切部300も採用した場合には、ドロスを非常に迅速に分解でき、格段に優れた効果を得ることを確認できた。
【0067】
上述した実施の形態の記載及び図面の開示は、特許請求の範囲に記載された発明を説明するための一例に過ぎず、上述した各実施の形態の記載又は図面の開示によって特許請求の範囲に記載された発明が限定されることはない。また、出願当初の請求項の記載はあくまでも一例であり、明細書、図面等の記載に基づき、請求項の記載を適宜変更することもできる。
【符号の説明】
【0068】
110 貯留槽
120,130 供給部
210 延在部
211 第一延在部
212 第二延在部
219 凸部
220 移動本体部
250 移動部
260 弾性部材
270 ガイド部
300 仕切部
310 仕切本体部
315 凹部
320 仕切側方部
S 溶融はんだ
【要約】
【課題】従来の態様と比べ、ドロスの分解をより効果的に行うことができるはんだ処理装置を提供する。
【解決手段】はんだ処理装置は、溶融はんだを収容する貯留槽110と、前記貯留槽110内の溶融はんだ内で少なくとも一部が延在し、上下方向の位置を変えつつ、溶融はんだ内において水平方向で往復移動する延在部210と、を有する。
【選択図】
図2