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特許7332985除電装置およびフラットパネルディスプレイ製造装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-16
(45)【発行日】2023-08-24
(54)【発明の名称】除電装置およびフラットパネルディスプレイ製造装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/677 20060101AFI20230817BHJP
   H05F 3/04 20060101ALI20230817BHJP
   G02F 1/13 20060101ALI20230817BHJP
【FI】
H01L21/68 A
H05F3/04 Z
G02F1/13 101
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020099894
(22)【出願日】2020-06-09
(65)【公開番号】P2020184634
(43)【公開日】2020-11-12
【審査請求日】2022-03-22
(73)【特許権者】
【識別番号】302054866
【氏名又は名称】日新イオン機器株式会社
(72)【発明者】
【氏名】立道 潤一
(72)【発明者】
【氏名】高橋 元喜
(72)【発明者】
【氏名】永尾 友一
(72)【発明者】
【氏名】丹羽 雄一
(72)【発明者】
【氏名】渡り 健次
【審査官】内田 正和
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-096459(JP,A)
【文献】特開2019-119921(JP,A)
【文献】特開2003-157997(JP,A)
【文献】国際公開第2010/047060(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/199282(WO,A1)
【文献】特開平03-109223(JP,A)
【文献】特開2017-147330(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/677
H05F 3/04
G02F 1/13
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス基板に所定の処理を施す処理室と、内部を高真空状態とされ、前記処理室に前記ガラス基板を搬入する経路となる搬送室とを備えるフラットパネルディスプレイ製造装置に使用され、前記搬送室の内部にプラズマを供給して前記ガラス基板を除電する除電装置であって、
原料ガスから前記プラズマを生成するプラズマ生成室と、
通電されて前記プラズマ生成室内に熱電子を放出するフィラメントと、
前記プラズマ生成室への前記原料ガスの導入を制御するガス制御部と、を備え、
前記ガス制御部は、前記原料ガスの導入が、前記ガラス基板が前記搬送室内の所定位置に到達した時点において開始され、前記ガラス基板の除電が終了するより前であり、前記原料ガスの供給開始から所定時間経過後に停止されるよう制御し、
前記ガス制御部が前記原料ガスの供給を停止した時点において前記フィラメントは通電されていることを特徴とする除電装置。
【請求項2】
前記ガラス基板の前記搬送内における位置を検知し得る検知部を備え、
前記ガス制御部は、前記検知部の検知結果に基づいて前記原料ガスの導入を開始することを特徴とする請求項1に記載の除電装置。
【請求項3】
記原料ガスの前記プラズマ生成室内への導入の開始および停止に伴って、前記フィラメントの通電の開始および停止を制御する電流制御部をさらに備え、
前記電流制御部は、前記ガス制御部が前記プラズマ生成室への前記原料ガスの供給を停止した時点から所定時間経過後に、前記フィラメントへの通電を停止することを特徴とする請求項1または2に記載の除電装置。
【請求項4】
ガラス基板に所定の処理を施す処理室と、内部を高真空状態とされ、前記処理室に前記ガラス基板を搬入する経路となる搬送室と、前記搬送室の内部にプラズマを供給して前記ガラス基板を除電し得る除電装置と、を備えるフラットパネルディスプレイ製造装置であって、
前記除電装置は、原料ガスから前記プラズマを生成するプラズマ生成室と、通電されて前記プラズマ生成室内に熱電子を放出するフィラメントと、前記プラズマ生成室への前記原料ガスの導入を制御するガス制御部と、を備え、
前記ガス制御部は、前記原料ガスの導入が、前記ガラス基板が前記搬送内の所定位置に到達した時点において開始され、前記ガラス基板の除電が終了するより前であり、前記原料ガスの供給開始から所定時間経過後に停止されるよう制御し、
前記ガス制御部が前記原料ガスの供給を停止した時点において前記フィラメントは通電されていることを特徴とするフラットパネルディスプレイ製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、除電装置およびフラットパネルディスプレイ製造装置に関し、特に、ガラス基板を除電するための除電装置、およびその除電装置を使用したフラットパネルディスプレイ製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイやプラズマディスプレイ、有機ELディスプレイ等のフラットパネルディスプレイの製造工程で使用され、ガラス基板に対して成膜、イオン注入、またはエッチング等の各種処理を施す装置として、特許文献1に開示されたフラットパネルディスプレイ製造装置が知られている。特許文献1のフラットパネルディスプレイ製造装置は、各種処理を施すための処理室と、処理室にガラス基板を搬出入する搬出入経路を成す搬送路とを備え、処理室内部と搬送路内部はともに高真空状態とされている。さらに、搬送路を構成する真空容器の外壁面には、ガラス基板の搬送や位置決め時に他の物体との摩擦や剥離帯電現象によって帯電したガラス基板を除電するための除電装置が配置されている。この除電装置は、不活性ガスからプラズマを生成するプラズマ室を備え、生成したプラズマを真空容器内に供給し、帯電したガラス基板をプラズマに曝すことによってガラス基板を除電するものである。特許文献1のフラットパネルディスプレイ製造装置においては、複数のガラス基板を順次搬送する過程の間、除電装置から真空容器内へのプラズマの供給が常に行われるか、または、ガラス基板の電位を計測した結果が基準値を超えていた場合に行われる構成とされている。
【0003】
従来のフラットパネルディスプレイ製造装置においては、除電装置から真空容器内へのプラズマの供給が常に行われていたため、複数のガラス基板を順次搬送して除電する過程において、プラズマ室から真空容器内に流出する不活性ガスによって真空容器の内圧が徐々に高まり、経時的に真空容器内の真空度が低下するという課題があった。また、ガラス基板の電位が基準値を超えていた場合にのみプラズマを供給する場合であっても、ガラス基板が除電され、当該ガラス基板が真空容器から搬出されるまでの間、常に不活性ガスがプラズマ室に供給されていたため、プラズマ室から真空容器内に流出する不活性ガスの量が多く、真空容器内の真空度が低下するという課題があった。すなわち、特許文献1のフラットパネルディスプレイ製造装置においては、搬送路内の内圧を所定値以下に維持する、換言すれば、真空度を所定値以上に維持することが難しいという課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-96459
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記課題を解決するものであり、搬送室内を高真空状態に維持しつつガラス基板を除電できる除電装置、および、フラットパネルディスプレイ製造装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明における除電装置は、
ガラス基板に所定の処理を施す処理室と、内部を高真空状態とされ、前記処理室に前記ガラス基板を搬入する経路となる搬送室とを備えるフラットパネルディスプレイ製造装置に使用され、前記搬送室の内部にプラズマを供給して前記ガラス基板を除電する除電装置であって、
原料ガスから前記プラズマを生成するプラズマ生成室と、
前記プラズマ生成室への前記原料ガスへの導入を制御するガス制御部と、を備え、
前記ガス制御部は、前記原料ガスの導入が、前記ガラス基板が前記搬送室内の所定位置に到達した時点において開始され、前記ガラス基板の除電が終了するより前に停止されるよう制御することを特徴としている。
【0007】
この構成によれば、原料ガスは、ガラス基板が搬送室内の所定位置に到達した時点において開始され、ガラス基板の除電が終了するより前に停止されることから、従来と比較して、一枚のガラス基板を除電する過程におけるプラズマ生成室に原料ガスが供給される時間を短くすることができる。したがって、プラズマの生成に寄与しない原料ガスが少なくなり、従来と比較して搬送室内に流出する原料ガスが少なくなることから、搬送室内を高真空状態に維持することができる。
【0008】
また、前記ガラス基板の前記搬送室内における位置を検知し得る検知部を備え、前記ガス制御部は、前記検知部の検知結果に基づいて前記原料ガスの導入を開始する構成としてもよい。
【0009】
この構成によれば、検知部がガラス基板の位置を検知した検知結果に基づいて、プラズマ生成室への原料ガスの導入を開始がされることから、プラズマ生成室への原料ガスの導入を開始するタイミングをより正確に制御できる。したがって、原料ガスがプラズマ生成室に供給される時間をより短くすることができ、搬送室内に流出する原料ガスがさらに少なくなることから、搬送室内を高真空状態より確実に維持することができる。
【0010】
また、前記原料ガスから前記プラズマを生成するためのフィラメントと、
前記原料ガスの前記プラズマ生成室内への導入の開始および停止に伴って、前記フィラメントの通電の開始および停止を制御する電流制御部と、
を備える構成としてもよい。
【0011】
この構成によれば、原料ガスのプラズマ生成室内への導入の開始および停止に伴ってフィラメントの通電の開始および停止を制御することから、原料ガスがプラズマ生成室に供給されない間におけるフィラメントへの通電が停止され、フィラメントの劣化が抑制される。
【0012】
本発明におけるフラットパネルディスプレイ製造装置は、
ガラス基板に所定の処理を施す処理室と、内部を高真空状態とされ、前記処理室に前記ガラス基板を搬入する経路となる搬送室と、前記搬送室の内部にプラズマを供給して前記ガラス基板を除電し得る除電装置と、を備えるフラットパネルディスプレイ製造装置であって、
前記除電装置は、原料ガスから前記プラズマを生成するプラズマ生成室と、前記プラズマ生成室への前記原料ガスの導入を制御するガス制御部と、を備え、
前記ガス制御部は、前記原料ガスの導入が、前記ガラス基板が前記搬送室内の所定位置に到達した時点において開始され、前記ガラス基板の除電が終了するより前に停止されるよう制御することを特徴としている。
【0013】
この構成によれば、原料ガスは、ガラス基板が搬送室内の所定位置に到達した時点において開始され、ガラス基板の除電が終了するより前に停止されることから、従来と比較して、一枚のガラス基板を除電する過程におけるプラズマ生成室に原料ガスが供給される時間を短くすることができる。したがって、プラズマの生成に寄与しない原料ガスが少なくなり、従来と比較して搬送室内に流出する原料ガスが少なくなることから、搬送室内を高真空状態に維持することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、搬送室内を高真空状態に維持しつつガラス基板を除電することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態における除電装置、および、フラットパネルディスプレイ製造装置を模式的に示す模式的平面図。
図2】除電装置の構成を模式的に示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明における一実施形態である除電装置10、および除電装置10を備えるフラットパネルディスプレイ製造装置100について説明する。
フラットパネルディスプレイ製造装置100は、液晶ディスプレイやプラズマディスプレイ、有機ELディスプレイ等のフラットパネルディスプレイの製造工程で使用され、ガラス基板Sに対して成膜、イオン注入、またはエッチング等の各種処理を施す装置である。また、除電装置10は、後述するように、キセノンやアルゴン等の不活性ガスである原料ガスGから生成したプラズマPを生成し、生成したプラズマPを搬送室30内のガラス基板Sに向けて供給する装置である。搬送中等において摩擦や剥離によって帯電したガラス基板Sは、除電装置10から供給されたプラズマPに曝されることで除電された後、所定の処理を施されることになる。
【0017】
図1に示すように、フラットパネルディスプレイ製造装置100は、ガラス基板Sに対して所定の処理を施す処理室20と、内部を大気圧下と高真空下に置き換え可能な真空予備室40と、処理室20と真空予備室40との間に配置された搬送室30を備えている。また、処理室20と搬送室30の内部は高真空状態とされている。
【0018】
図1に破線矢印で示すように、ガラス基板Sはフラットパネルディスプレイ製造100内を所定の搬送経路Rに沿って搬送装置(不図示)により搬送される。すなわち、ガラス基板Sは、外部から内部を大気圧下に置かれた真空予備室40に搬入され、真空予備室40の内部を高真空状態とした後、搬送室30内を経由して処理室20内に搬送される。つまり、搬送室30は、処理室20にガラス基板Sを搬入する経路を構成するものである。また、処理室20において所定の処理を施されたガラス基板Sは再び搬送室30に搬出され、真空予備室40を経由して外部に搬出される構成とされている。
【0019】
尚、搬送室30は、処理室20にガラス基板Sを搬入する経路を構成するものであればよく、真空予備室40と処理室20との間に配置されるものに限らない。例えば、処理室20とは異なる処理室(不図示)から処理室20への搬送経路となるものであってもよい。また、処理室20において所定の処理を施された後のガラス基板Sは搬送室30とは別の搬送室(不図示)に搬出される構成であってもよい。
【0020】
また、図1に示すように、フラットパネルディスプレイ製造装置100は、搬送室30に隣接するよう配置された除電装置10を備える。除電装置10は、搬送室30の内部に位置するガラス基板Sに向けてプラズマPを供給することによって帯電したガラス基板Sを除電するものである。
【0021】
図2に示すように、除電装置10は、搬送室30を構成する外壁31に絶縁版11を介して取り付けられており、キセノンやアルゴンなどの不活性ガスである原料ガスGが蓄えられたガス源18と、ガス源18から導入された原料ガスGからプラズマPを生成するプラズマ生成室13と、ガス源18からプラズマ生成室13への原料ガスGの導入を制御するガス制御部17を備えている。プラズマ生成室13において生成されたプラズマPは、プラズマ生成室13から搬送室30に通じるプラズマ輸送路12を通じてガラス基板Sに供給される構成とされている。
【0022】
図2に示すように、除電装置10は、プラズマ生成室13内に熱電子を放出し、原料ガスGを電離させてプラズマPを生成するためのフィラメント16を備えており、フィラメント16に接続されたフィラメント電源Vf、フィラメント16とプラズマを生成室11との間に接続されたアーク電源Va、およびプラズマ生成室13と搬送室30の外壁31との間に接続された引出電源Veを備えている。プラズマ生成室13の周囲には、プラズマ生成室13の内壁面での電子やイオンの消失を防止するためのカスプ磁場を生成するための永久磁石14が配置されている。
【0023】
また、プラズマ輸送路12の外周には、プラズマ輸送路12に沿った磁場Bを生成するための一対のコイル15が巻回されており、プラズマPは磁場Bに捕捉され、プラズマ輸送路12の内壁面との消失を避けて搬送室30内に放出される。また、プラズマ輸送路12には、プラズマ輸送路12の開閉を行うためのバルブVが設けられており、バルブVを閉じることによって搬送室30側を真空状態にしたたまプラズマ生成室13側を大気開放して除電装置10をメンテナンスすることが可能となる。
【0024】
図1および図2に示すように、除電装置10は、搬送経路Rに沿って搬送されるガラス基板Sが搬送室30内の所定位置Aに到達したことを検知しうる検知部19をさらに備えている。本実施形態においては、検知部19は光学センサーから構成されている。
【0025】
本実施形態においては、搬送室30内をガラス基板Sが順次搬送されていく過程において、すなわち、複数枚のガラス基板Sに対して順次除電を行う過程において、フィラメント電源Vf、アーク電源Va、および引出電源Veの各電源は常にオンの状態とされている。
【0026】
また、ガス制御部17は、ガス源18からプラズマ生成室13への原料ガスGの導入の開始および停止が、各ガラス基板Sを除電する度に繰り返されるよう制御を行うものである。すなわち、本発明は、複数枚のガラス基板Sに対して順次除電を行う過程において、原料ガスGがプラズマ生成室13へ必要最小限あるいはそれに近い時間だけ供給されるよう制御されることにより、搬送室30内に流出する原料ガスGの量を最小限に抑え、搬送室30内の高真空状態を長時間にわたって維持できるようにするものである。
【0027】
次に、本実施形態における除電装置10およびフラットパネルディスプレイ製造装置100の動作について説明する。
まず、搬送経路Rに沿ってガラス基板Sが搬送室30内を搬送される過程において、検知部19により、ガラス基板Sが所定位置Aに到達したことが検知される。すると、検知部19の検知結果がガス制御部17に伝えられ、ガス制御部17によりプラズマ生成室13への原料ガスGの導入が開始される。そして、原料ガスGの供給開始から所定時間(1秒から1.5秒程度)経過した後、プラズマ生成室13への原料ガスGの導入を停止する。このガス制御部17がプラズマ生成室13への原料ガスGの導入を停止するタイミングは、ガラス基板Sを除電するのに十分なプラズマがガラス基板Sに向けて供給され、ガラス基板Sに帯電した電荷が除去されたと考えられるタイミングより前に設定されている。すなわち、ガス制御部17は、ガラス基板Sの除電が終了するより前に、プラズマ生成室13への原料ガスGの導入を停止する。
【0028】
除電されたガラス基板Sは、処理室20に搬入されて所定の処理を施される。その後、新たなガラス基板Sが順次搬送室30内を搬送され、各ガラス基板Sが所定位置Aに到達する度に上記の動作が繰り返される。
【0029】
プラズマ生成室13に導入された原料は、フィラメント16から放出された熱電子によって電離されてプラズマPとなった後、搬送室30内のガラス基板Sに向けて供給され、ガラス基板Sを除電する。すなわち、原料ガスGがプラズマ生成室13に供給された後、プラズマとなって搬送室30内に供給され、ガラス基板Sの除電が終了するまでには時間差が生じる。したがって、仮に、ガラス基板Sの除電が終了した時点でプラズマ生成室13への原料ガスGの導入が停止される構成とすると、前述の時間差の間は、ガラス基板Sの除電に実施的に寄与しない余分な原料ガスGがプラズマ生成室13に供給されることになる。この余分な原料ガスGの少なくとも一部が搬送室30内に漏れ出すと搬送室30の内圧を徐々に高めることになり、真空容器内の真空度が低下していくことになる。
【0030】
これに対し、本実施形態の除電装置10およびフラットパネルディスプレイ製造装置100では、一枚のガラス基板Sの除電に必要なプラズマPを生成し得る量の原料ガスGがプラズマ生成室13に導入された時点においてガス制御部17は原料ガスGの供給を停止するよう構成されている。すなわち、ガス制御部17はガラス基板Sの除電が終了するより前に、プラズマ生成室13への原料ガスGの導入を停止する制御を行っている。したがって、従来と比較して、一枚のガラス基板Sを除電する過程における、プラズマ生成室13に原料ガスGが供給される時間が短くなり、プラズマPの生成に寄与しない原料ガスGがプラズマ生成室13に流出することが抑制される。その結果、流出した原料ガスGによって搬送室30の内圧が徐々に高まることが抑制され、搬送室内を高真空状態に維持しつつガラス基板を除電することができる。
【0031】
尚、検知部19は、ガラス基板Sが所定位置Aに到達したことを検知するものに限らない。例えば、検知部19は、搬送経路Rのおける所定位置Aよりも手前の位置でガラス基板Sが到達したことを検知する構成としてもよい。この場合、ガス制御部17は、ガラス基板Sを検知する検知から所定位置Aへ移動するのに要する時間に基づいて原料ガスGの導入を開始する。すなわち、ガス制御部17は、検知部19の検知結果に基づいてプラズマ生成室13への原料ガスGの導入を開始するものであればよく、結果として、ガラス基板Sが搬送室30内の所定位置Aに到達した時点において原料ガスGの導入を開始するものであればよい。
【0032】
また、図2に示すように、本実施形態の除電装置10およびフラットパネルディスプレイ製造装置100においては、フィラメント16に流れる電流を制御する電流制御部50を備える構成としてもよい。電流制御部50は、フィラメント16が通電している間、引出電源Veを流れる引出電流Ieの値が一定となるよう、または、常に目標値に近づくよう制御を行っており、除電装置10は電流制御部50を備えることにより搬送室30内に安定してプラズマPを供給することができる。
【0033】
本実施形態においては、フィラメント電源Vfは常にオンの状態とされているものであるが、電流制御部50がフィラメント電源Vfのオン・オフを制御して、フィラメント16の通電を制御するものであってもよい。この場合、一例として、電流制御部50はフィラメント16への通電を、ガス制御部17がプラズマ生成室13への原料ガスGの供給を開始した時点から所定時間(0.5秒程度)経過後に開始し、ガス制御部17がプラズマ生成室13への原料ガスGの供給を停止した時点から所定時間(0.5秒程度)経過後に停止する制御を行う。したがって、電流制御部50は、原料ガスGのプラズマ生成室13内への導入の開始および停止に伴ってフィラメントの通電の開始および停止を制御することから、原料ガスGが供給されない間はフィラメントへの通電が停止されるため、フィラメント16を常に通電させる場合と比較してフィラメント16の劣化が抑制される。
【0034】
前述のように、本実施形態の除電装置10およびフラットパネルディスプレイ製造装置100は、処理室20に搬送される複数のガラス基板Sを順次除電する場合であっても、プラズマPは各ガラス基板Sが所定位置Aに到達したタイミングで間欠的に供給されることになる。つまり、一枚のガラス基板Sを除電するために供給される原料ガスG、および生成されるプラズマPは最小限に必要な程度にごくわずかなものとなり、搬送室20内の内圧が所定値を超えることなく高真空状態に維持することができる。
【0035】
また、本実施形態においては、プラズマPはフィラメント16から放出される熱電子により原料ガスGが電離されて生成するものであるが、原料ガスGからプラズマPを生成する方法はこれに限定されるものではない。例えば、プラズマ生成室13に導波管等によってマイクロ波を導入し、マイクロ波のエネルギーによって原料ガスGを電離させる構成であってもよい。
【0036】
また、本発明は前記実施形態に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0037】
S ガラス基板
G 原料ガス
P プラズマ
A 所定位置
10 除電装置
100 フラットパネルディスプレイ製造装置
13 プラズマ生成室
16 フィラメント
17 ガス制御部
18 ガス源
19 検知部
20 処理室
30 搬送室
40 真空予備室
50 電流制御部

図1
図2