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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-16
(45)【発行日】2023-08-24
(54)【発明の名称】電線カバー付きコネクタ
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/56 20060101AFI20230817BHJP
   H01R 13/40 20060101ALI20230817BHJP
【FI】
H01R13/56
H01R13/40 Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020050572
(22)【出願日】2020-03-23
(65)【公開番号】P2021150218
(43)【公開日】2021-09-27
【審査請求日】2022-09-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】片岡 大輔
(72)【発明者】
【氏名】中居 和雄
【審査官】高橋 学
(56)【参考文献】
【文献】特開平8-298160(JP,A)
【文献】特開2009-37769(JP,A)
【文献】特開2006-344519(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/56-13/58
H01R 13/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電線引き出し面を有するハウジングと、
前記電線引き出し面を覆うように前記ハウジングに設置される電線カバーと、
を備え、
前記ハウジングは、前記電線引き出し面と並ぶ位置にスライド受け部を有し、
前記電線カバーは、前記スライド受け部に対してスライドするスライド部と、前記スライド受け部から離れる側に形成される電線逃がし空間と、を有し、
前記スライド部は、前記スライド受け部に対するスライド方向の前端に、前記電線逃がし空間に向けて前記スライド方向と逆向きに傾斜する電線誘導部を有している電線カバー付きコネクタ。
【請求項2】
前記スライド受け部は、前記電線カバーの内外方向において前記スライド部と重なる位置に設けられた壁である請求項1に記載の電線カバー付きコネクタ。
【請求項3】
前記スライド受け部は、前記電線引き出し面から前記電線の引き出し方向に突出したものであり、
前記電線逃がし空間は、前記スライド受け部の突出端よりも前記電線の引き出し方向にずれた位置に形成されている請求項1または請求項2に記載の電線カバー付きコネクタ。
【請求項4】
前記スライド部は、前記スライド方向の前端に、前記スライド方向の後側に窪んだ逃がし窪み部を有する請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の電線カバー付きコネクタ。
【請求項5】
前記スライド受け部は、前記スライド方向における前側に向かって前記電線カバーの内側に傾くように傾斜した第2の誘導部を有する請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の電線カバー付きコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電線カバー付きコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ハウジングの電線引き出し面に、電線カバーが取り付けられた電線カバー付きコネクタが知られている。電線カバーは、ハウジングの電線引き出し面を覆い、電線を内側に収容する。電線は、電線カバーの内側で所定の方向に屈曲される。
【0003】
電線カバーは、ハウジングに端子金具を収容した後、ハウジングに取り付けられる。例えば下記特許文献1~5に記載された電線カバー付きコネクタは、電線引き出し面に沿って電線カバーを移動させてハウジングに取り付ける。電線カバーは、ハウジングに対して正規の取り付け位置まで移動すると、ロックされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-169326号公報
【文献】特開2004-199990号公報
【文献】特開2013-161530号公報
【文献】特開2017-157416号公報
【文献】特開2009-245609号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記のように、電線引き出し面に沿って電線カバーを移動させてハウジングに取り付けるものは、電線カバーの移動の途中で電線カバーに電線が引っ掛かる場合がある。電線カバーに電線が引っ掛かると、電線カバーとハウジングとの間に電線が噛み込まれたりして電線カバーの取り付け作業に手間がかかる等の問題がある。
【0006】
そこで、本開示は、電線カバーの取り付け時に、電線カバーに電線が引っ掛かることを防ぐことができる電線カバー付きコネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の電線カバー付きコネクタは、電線引き出し面を有するハウジングと、前記電線引き出し面を覆うように前記ハウジングに設置される電線カバーと、を備え、前記ハウジングは、前記電線引き出し面と並ぶ位置にスライド受け部を有し、前記電線カバーは、前記スライド受け部に対してスライドするスライド部と、前記スライド受け部を離れる側に形成される電線逃がし空間と、を有し、前記スライド部は、前記スライド受け部に対するスライド方向の前端に、前記電線逃がし空間に向けて前記スライド方向と逆向きに傾斜する電線誘導部を有しているものである。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、電線カバーの取り付け時に、電線カバーに電線が引っ掛かることを防ぐことができる電線カバー付きコネクタを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本実施形態にかかる電線カバー付きコネクタの側面図である。
図2図2は、ハウジングの斜視図である。
図3図3は、ハウジングの平面図である。
図4図4は、ハウジングの側面図である。
図5図5は、電線カバーの斜視図である。
図6図6は、電線カバーの側面図である。
図7図7は、ハウジングに電線カバーを取り付ける様子を示す電線カバー付きコネクタの側面図である。
図8図8は、電線誘導部によって電線逃がし空間に電線が誘導される様子を概略的に示す電線カバー付きコネクタの一部拡大側面図である。
図9図9は、電線カバーの移動途中のスライド部近傍を示す電線カバー付きコネクタの一部拡大断面図であって、図8のA-A位置における断面に相当する断面図である。
図10図10は、電線カバーの移動途中のスライド部近傍を示す電線カバー付きコネクタの一部拡大断面図であって、図8のB-B位置における断面に相当する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
【0011】
本開示の電線カバー付きコネクタは、
(1)電線引き出し面を有するハウジングと、前記電線引き出し面を覆うように前記ハウジングに設置される電線カバーと、を備え、前記ハウジングは、前記電線引き出し面と並ぶ位置にスライド受け部を有し、前記電線カバーは、前記スライド受け部に対してスライドするスライド部と、前記スライド受け部から離れる側に形成される電線逃がし空間と、を有し、前記スライド部は、前記スライド受け部に対するスライド方向の前端に、前記電線逃がし空間に向けて前記スライド方向と逆向きに傾斜する電線誘導部を有しているものである。このような構成によれば、電線カバーをハウジングに取り付ける際、電線カバーのスライド部の前側に配置された電線は、電線誘導部によってスライド受け部から離れる側に形成された電線逃がし空間に誘導される。したがって、電線カバーの取り付け時に、電線カバーに電線が引っ掛かることを防ぐことができる。
(2)前記スライド受け部は、前記電線カバーの内外方向において前記スライド部と重なる位置に設けられた壁であっても良い。このような構成によれば、電線カバーの取付時に、電線誘導部に接触した電線は、電線誘導部の傾斜に沿って電線逃がし空間に移動するから、スライド受け部とスライド部との間に電線が噛み込まれることを防ぐことができる。
(3)前記スライド受け部は、前記電線引き出し面から前記電線の引き出し方向に突出したものであり、前記電線逃がし空間は、前記スライド受け部の突出端よりも前記電線の引き出し方向にずれた位置に形成されていると良い。このような構成によれば、スライド受け部からずれた位置に電線を逃がすことができるから、電線カバーとハウジングとの間に電線が噛み込まれることを防ぐことができる。
(4)前記スライド部は、前記スライド方向の前端に、前記スライド方向の後側に窪んだ逃がし窪み部を有すると良い。このような構成によれば、スライド部の前端の逃がし窪み部に電線を逃がすことができるから、スライド部とスライド受け部との間に電線が噛み込まれることを防ぐことができる。
(5)前記スライド受け部は、前記スライド方向における前側に向かって前記電線カバーの内側に傾くように傾斜した第2の誘導部を有すると良い。このような構成によれば、スライド受け部に設けられた第2の誘導部に電線が接触した場合、電線は電線カバーの内側に誘導される。したがって、電線カバーの取り付け時に、電線カバーに電線が引っ掛かることを防ぐことができる。
【0012】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示の電線カバー付きコネクタCの具体例を、図面を参照しつつ説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0013】
電線カバー付きコネクタCは、図1に示すように、ハウジング10と、電線カバー20とを備えている。ハウジング10は、電線Wが引き出される電線引き出し面11を有する。電線引き出し面11には、電線Wが引き出される開口部が形成されており、この開口部から電線Wが引き出されることで、電線Wが電線引き出し面11から引き出される。電線カバー20は、電線引き出し面11を覆って電線Wを内側に収容する。
【0014】
以下、各構成部材において、電線カバー20が取り付けられる側(図1の上側)を上側、電線カバー20が取り付けられる側とは反対側(図1の下側)を下側とする。電線カバー20をハウジング10に取り付ける際の電線カバー20の移動方向における前側(図1の右側)を前側、電線カバー20をハウジング10に取り付ける際の電線カバー20の移動方向における後側(図1の左側)を後側とする。また、図1の紙面に直交する方向の手前側を右側、奥側を左側として説明する。なお、図1における電線カバー20の位置は、電線カバー20を移動してハウジング10に取り付け終わった状態の位置である。
【0015】
ハウジング10は、合成樹脂製である。ハウジング10は、前後方向に長い形状である。ハウジング10には、図2に示すように、端子金具が収容される端子収容室18が複数設けられている。複数の端子収容室18は、前後方向及び左右方向に並んでいる。
【0016】
端子金具は、上側から端子収容室18に収容される。端子金具は、電線Wの端末部に接続されている。電線Wは、ハウジング10の電線引き出し面11から上方へ引き出される。電線Wの束は、電線カバー20の内側において前側に屈曲される。
【0017】
図2図4に示すように、電線引き出し面11の左右両側(電線引き出し面11においてスライド方向と直交する方向の両側)には、ガイドフレーム12が設けられている。ガイドフレーム12は、電線引き出し面11から上側に突出している。ガイドフレーム12は、前後方向に長く延びている。
【0018】
図2図4に示すように、ガイドフレーム12には、レール部13が設けられている。レール部13は、電線カバー20に設けられたレール受け部25に嵌合する(図5参照)。レール部13は、ガイドフレーム12の上端から外側(右側のガイドフレーム12に設けられたレール部13は右側、左側のガイドフレーム12に設けられたレール部13は左側)に突出している。
【0019】
図2図4に示すように、レール部13は、前後方向に離れて3つ設けられている。3つのレール部13は、直線状に並んでいる。各レール部13は、前後方向の寸法が左右方向の寸法よりも大きい。3つのレール部13のうち、前端に配置されたレール部13及び後端に配置されたレール部13は、前後方向の中央に配置されたレール部13よりも前後方向の寸法が小さい。後端に配置されたレール部13は、電線カバー20のロック部27が係止するロック受け部14を兼ねる。
【0020】
図2図4に示すように、ハウジング10は、スライド受け部15を有している。スライド受け部15は、電線カバー20の取付時に、図1に示すように、電線カバー20に設けられたスライド部22がスライドする。スライド受け部15は、電線引き出し面11から上方(電線Wの引き出し方向)に突出している。
【0021】
スライド受け部15は、図2及び図3に示すように、電線引き出し面11と並ぶ位置(左右両側)に設けられている。電線引き出し面11の左側に設けられたスライド受け部15は、ハウジング10の左側面に沿って突出する壁である。電線引き出し面11の右側に設けられたスライド受け部15は、ハウジング10の右側面に沿って上側へ突出する壁である。
【0022】
図3に示すように、スライド受け部15は、レール部13よりも外側(右側のスライド受け部15は右側のレール部13よりも右側、左側のスライド受け部15は左側のレール部13よりも左側)に位置する。
【0023】
図3に示すように、スライド受け部15の後面には、第2の誘導部17が設けられている。第2の誘導部17は、スライド受け部15の後面の内側(右側のスライド受け部15においては左側、左側のスライド受け部15においては右側)の角部に形成されている。第2の誘導部17は、前側(電線カバー20の移動方向前側)に向かって電線カバー20の内側に傾くように傾斜した傾斜面である。第2の誘導部17は、スライド受け部15の上端から下端にわたる全長に形成されている。
【0024】
図4に示すように、スライド受け部15は、ハウジング10の左右両側において前後方向に離れて2つずつ設けられている。各スライド受け部15は、前後方向の寸法が上下方向の寸法よりも大きい。スライド受け部15の上下方向の寸法は、ガイドフレーム12の上下方向の寸法と等しい。
【0025】
図4に示すように、スライド受け部15の後面には、前方に向かって上側に傾斜した傾斜面16が形成されている。前側のスライド受け部15の傾斜面16は、下端から上端までにわたる全体に形成されている。後側のスライド受け部15の傾斜面16は、前側のスライド受け部15の傾斜面16よりも上下方向の形成範囲が小さい。スライド受け部15の前面15Aは、電線引き出し面11に対して垂直である。
【0026】
電線カバー20は、電線引き出し面11に沿って移動し、ハウジング10に取り付けられる。電線カバー20は、合成樹脂製である。電線カバー20は、図5及び図6に示すように、本体部21とスライド部22とを有している。本体部21は、前後方向に長いキャップ状をなしている。本体部21は、左右一対の側面部23と、一対の側面部23の上端を連結する上面部24とを有している。上面部24は、電線カバー20をハウジング10に取り付けた状態において電線引き出し面11と対向する。本体部21の下面及び前面は開口している。
【0027】
スライド部22は、電線カバー20がハウジング10に取り付けられる際に、ハウジング10のスライド受け部15に沿ってスライドする。スライド部22は、図5に示すように、電線カバー20の左右両側に一対設けられている。左右のスライド部22は、電線カバー20の左右方向における中心を基準に対称である。
【0028】
図5及び図6に示すように、スライド部22は、本体部21の側面部23の下端に沿って、前後方向に長く延びている。スライド部22は、側面部23の内側(左側のスライド部22は左側の側面部23よりも右側、右側のスライド部22は右側の側面部23よりも左側)に突出している。
【0029】
スライド部22の外面(右側のスライド部22は右面、左側のスライド部22は左面)には、図5に示すように、スライド面31が設けられている。スライド面31は、スライド部22の前端から後側に延びている。スライド面31は、図7に示すように、ハウジング10のスライド受け部15の上面15Cに沿ってスライドする。
【0030】
スライド部22の前端には、図8及び図10に示すように、逃がし窪み部32が設けられている。逃がし窪み部32は、スライド部22の前端の外側(右側の逃がし窪み部32は右側、左側の逃がし窪み部32は左側)に形成されている。逃がし窪み部32は、スライド受け部15の上面(突出端)15Cよりも上方(電線Wの引き出し方向)の領域に設けられている。逃がし窪み部32は、後側に向かって外側に傾く窪み傾斜面32Aを有する。窪み傾斜面32Aの下端はスライド面31の前端に連なる。窪み傾斜面32Aの上端は、本体部21の下端縁21Aに連なる。
【0031】
スライド部22には、図5に示すように、ハウジング10のレール部13が嵌合するレール受け部25が設けられている。レール受け部25は、スライド部22の内側の面(左側のスライド部22は右側の面、右側のスライド部22は左側の面)から外側に凹んだ溝である。
【0032】
レール受け部25は、スライド部22の前面に開口部25Aを有している。レール受け部25の開口部25Aは、レール部13の出入り口である。レール受け部25の開口部25Aには、レール部13を誘い込むテーパ部26が設けられている。テーパ部26は、後側に向かって開口部25Aの上下左右の寸法が小さくなるように傾斜している。
【0033】
図5に示すように、スライド部22には、レール受け部25とは別に第2の溝部28が設けられている。第2の溝部28は、レール受け部25の上面から上側に凹んだ溝である。第2の溝部28は、スライド部22の前面に開口部28Aを有している。第2の溝部28の開口部28Aは、上下方向に長い形状である。第2の溝部28の開口部28Aの下端は、レール受け部25の開口部25Aの内側の端部に連なっている。第2の溝部28の開口部28Aとレール受け部25の開口部25Aとは直角に交差している。
【0034】
図6に示すように、スライド部22の後端部には、ハウジング10に設けられたロック受け部14に係止するロック部27が設けられている。ロック部27は、レール受け部25の上面から下側に突出している。ロック部27は、上下方向に弾性変位する。
【0035】
レール受け部25は、図6に示すように、本体部21の下端縁21Aよりも下側に設けられている。電線カバー20をハウジング10に取り付けた状態において、本体部21の下端縁21Aは、スライド部22の上端と平行に延びる。本体部21の下端縁21Aとスライド部22の上端との間には、電線Wの外径寸法よりも大きい隙間があく。本体部21の下端縁21Aとスライド部22の上端との間の隙間は、前方に開放されている。
【0036】
スライド部22は、図7に示すように、スライド部22の前側に配置された電線Wを、電線逃がし空間Sに誘導する電線誘導部29を備えている。電線逃がし空間Sは、スライド部22の前面よりも前側に形成される。電線逃がし空間Sは、電線引き出し面11に対して直交する方向において、スライド受け部15から離れる側に形成されている。電線逃がし空間Sは、レール受け部25よりも上側に形成される。電線逃がし空間Sは、側面部23の内側(左側の電線逃がし空間Sは左側の側面部23の右側、右側の電線逃がし空間Sは右側の側面部23の左側)に形成される。電線逃がし空間Sは、スライド受け部15の上面15Cよりも上方(電線Wの引き出し方向)にずれた位置に形成される。
【0037】
電線誘導部29は、スライド部22の前面に形成された傾斜面である。電線誘導部29は、前端から後側に向かって電線逃がし空間S側に傾くように傾斜している。言い換えると、電線誘導部29は、下端から上端に向かって後側(電線カバー20がハウジング10から離脱する方向)に傾いている。電線誘導部29は、スライド部22の前面のうち逃がし窪み部32よりも内側の領域に形成されている(図5参照)。図8に示すように、電線誘導部29とスライド受け部15の傾斜面16とが前後方向に向き合った状態において、電線誘導部29と傾斜面16との間の前後方向の間隔は、上側に向かって大きくなる。電線誘導部29は、スライド受け部15の傾斜面16と逆向きの傾斜をなす。
【0038】
次に、電線カバー付きコネクタCの組み付け作業の一例を説明する。
【0039】
まず、ハウジング10に端子金具を収容する。電線Wの端末部に固着された端子金具をハウジング10の電線引き出し面11側から端子収容室18に挿入する。端子金具が端子収容室18に収容されると、電線引き出し面11から電線Wが引き出された状態になる。
【0040】
次に、ハウジング10に電線カバー20を取り付ける。具体的には、最初に、電線カバー20のレール受け部25の前端部を、ハウジング10の後端のレール部13に後側から嵌合する。すると、図8に示すように、電線カバー20のスライド部22のスライド面31が、ハウジング10のスライド受け部15の上面15Cに沿った状態になる。また、図9に示すように、電線カバー20のスライド部22の外側面22Aが、ハウジング10のスライド受け部15の内側面15Bに沿った状態になる。詳しくは、右側のスライド部22の右側面に右側のスライド受け部15の左側面が沿い、左側のスライド部22の左側面に左側のスライド受け部15の右側面が沿う。
【0041】
次に、電線カバー20を前側へ移動する。電線カバー20の移動は、レール部13とレール受け部25との嵌合によって直線状に案内される。電線カバー20の移動に伴って、電線Wの束は本体部21の内側で屈曲する。このとき、電線Wが本体部21の外側(本体部21の右側または左側)にはみ出してしまう場合がある。本体部21の外側にはみ出した電線Wは、図8に示すように、スライド部22の電線誘導部29に接触し、電線カバー20の前進に伴って、電線逃がし空間Sに逃がされる。ここで、電線Wが完全に電線逃がし空間Sに逃がされる前に、電線誘導部29と傾斜面16との間の前後方向の間隔が電線Wの外径寸法より小さくなる場合がある。この場合、電線Wは、スライド部22の前端に形成された逃がし窪み部32に逃げることができる。したがって、電線Wは、電線誘導部29と傾斜面16との間に噛み込まれることを防止できる。このようにして、電線Wは、電線誘導部29と傾斜面16との間に噛み込まれることなく、スライド受け部15の上端よりも上側に誘導される。また、電線Wは、スライド受け部15の第2の誘導部17に接触し、本体部21の内側へ誘導される。ここで、仮に電線Wが完全に本体部21の内側に入っていない場合であっても、電線Wは、本体部21の下端縁21Aとスライド受け部15の上面15Cとの間に位置するから、スライド部22とスライド受け部15との間に噛み込まれることを防止できる。
【0042】
やがて、電線カバー20は正規の取り付け位置に至り、ロック部27がロック受け部14に係止する。以上によって、電線カバー付きコネクタCの組み付け作業が完了する。
【0043】
次に、上記のように構成された電線カバー付きコネクタCの作用および効果について説明する。
【0044】
電線カバー付きコネクタCは、ハウジング10と、電線カバー20と、を備えている。ハウジング10は、電線引き出し面11を有する。電線カバー20は、電線引き出し面11を覆うようにハウジング10に設置される。ハウジング10は、電線引き出し面11と並ぶ位置にスライド受け部15を有する。電線カバー20は、スライド受け部15に対してスライドするスライド部22と、スライド受け部15から離れる側に形成される電線逃がし空間Sと、を有する。スライド部22は、スライド受け部15に対するスライド方向の前端に、電線逃がし空間Sに向けて後向き(スライド方向と逆向き)に傾斜する電線誘導部29を有している。
【0045】
この構成によれば、電線カバー20をハウジング10に取り付ける際、電線カバー20のスライド部22の前側に配置された電線Wは、電線誘導部29によってスライド受け部15から離れる側に誘導される。したがって、電線カバー20の取り付け時に、電線カバー20のスライド部22に電線Wが引っ掛かることを防ぐことができる。
【0046】
スライド受け部15は、スライド部22の外側に重なる位置に設けられた壁である。このような構成によれば、電線カバー20の取付時に、電線誘導部29に接触した電線Wは、電線誘導部29の傾斜に沿って電線逃がし空間Sに移動するから、スライド受け部15とスライド部22との間に電線Wが噛み込まれることを防ぐことができる。
【0047】
スライド受け部15は、電線引き出し面11から電線Wの引き出し方向に突出したものである。電線逃がし空間Sは、スライド受け部15の上面15Cよりも上方にずれた位置に形成されている。この構成によれば、スライド受け部15からずれた位置に電線Wを逃がすことができるから、電線カバー20とハウジング10との間に電線Wが噛み込まれることを防ぐことができる。
【0048】
スライド部22は、前端に、後側に窪んだ逃がし窪み部32を有する。この構成によれば、スライド部22の前端の逃がし窪み部32に電線Wを逃がすことができるから、スライド部22とスライド受け部15との間に電線Wが噛み込まれることを防ぐことができる。
【0049】
スライド受け部15は、スライド方向における前側に向かって電線カバー20の内側に傾くように傾斜した第2の誘導部17を有する。この構成によれば、スライド受け部15に設けられた第2の誘導部17に電線Wが接触した場合、電線Wは電線カバー20の内側に誘導される。したがって、電線カバー20の取り付け時に、電線カバー20のスライド部22に電線Wが引っ掛かることを防ぐことができる。
【0050】
[本開示の他の実施形態]
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えるべきである。
(1)上記実施形態の場合、スライド受け部15は電線引き出し面11から上側に突出しているが、他の実施形態としては、スライド受け部をハウジングの右側面から右側に、また左側面から左側に突出させても良い。
(2)上記実施形態の場合、スライド受け部15の後面に第2の誘導部17が設けられているが、他の実施形態としては第2の誘導部を電線カバーのスライド部に設けても良い。この場合、スライド部の前面に第2の誘導部を設ければ良い。
(3)上記実施形態の場合、スライド部22はスライド受け部15の内側に配置されるが、他の実施形態としては、スライド部をスライド受け部の外側に配置しても良い。
(4)上記実施形態においてスライド部22及びスライド受け部15の数や形状を例示したが、他の実施形態としては、スライド部及びスライド受け部の数や形状を変更しても良い。
(5)上記実施形態の場合、電線誘導部29は傾斜面であるが、他の実施形態としては、誘導部は湾曲した面であっても良い。
(6)上記実施形態の場合、逃がし窪み部32は窪み傾斜面32Aを有するが、他の実施形態としては、逃がし窪み部は傾斜面ではなく湾曲した凹み面等を有しても良い。
【符号の説明】
【0051】
C…電線カバー付きコネクタ
S…電線逃がし空間
W…電線
10…ハウジング
11…電線引き出し面
12…ガイドフレーム
13…レール部
14…ロック受け部
15…スライド受け部
15A…前面
15B…内側面
15C…上面
16…傾斜面
17…第2の誘導部
18…端子収容室
20…電線カバー
21…本体部
21A…下端縁
22…スライド部
22A…外側面
23…側面部
24…上面部
25…レール受け部
25A…開口部
26…テーパ部
27…ロック部
28…第2の溝部
28A…開口部
29…電線誘導部
31…スライド面
32…逃がし窪み部
32A…窪み傾斜面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10