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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-16
(45)【発行日】2023-08-24
(54)【発明の名称】レバー式コネクタ
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/629 20060101AFI20230817BHJP
   H01R 13/56 20060101ALI20230817BHJP
【FI】
H01R13/629
H01R13/56
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020050573
(22)【出願日】2020-03-23
(65)【公開番号】P2021150219
(43)【公開日】2021-09-27
【審査請求日】2022-09-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】片岡 大輔
(72)【発明者】
【氏名】中居 和雄
【審査官】高橋 学
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-220078(JP,A)
【文献】特開2017-174749(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/629
H01R 13/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングと、
前記ハウジングに対して第一方向に移動可能に備えられ、前記第一方向に複数並んだラック歯を有するスライダと、
前記ハウジングに設置され、前記ハウジングの電線引き出し面を覆う電線カバーと、
前記電線カバーに回転可能に設置され、前記ラック歯と噛み合うギヤを有し、前記スライダを移動させるレバーと、を備え、
前記ハウジングは、前記電線カバーを回転可能に支持する支点部と、前記電線カバーに当たって前記ギヤを前記ラック歯に噛み合い可能な位置に臨ませる位置決め部と、を有するレバー式コネクタ。
【請求項2】
前記支点部は、前記ハウジングから前記第一方向と交差する方向に突出した突出部を有し、
前記電線カバーは、前記突出部に対して前記第一方向と平行な方向から嵌合する嵌合部を有し、
前記位置決め部は、前記嵌合部に対して前記突出部と反対側の位置に設けられ、前記電線カバーの回転方向に沿って湾曲した面を有する請求項1に記載のレバー式コネクタ。
【請求項3】
前記ハウジングのうち前記第一方向における中間部に、前記電線カバーを前記ハウジングに取り付けた状態において前記ギヤが配置されるギヤ配置部が設けられ、前記突出部及び前記位置決め部はいずれも前記第一方向において前記ギヤ配置部よりも一方の側に設けられている請求項1または請求項2に記載のレバー式コネクタ。
【請求項4】
前記支点部は、前記電線カバーの回転中心となる回転軸を有し、前記回転軸の前記電線カバーとの接触面の角部は曲面である請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のレバー式コネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、レバー式コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、レバーを操作することによって、相手側コネクタとの嵌合を行うレバー式コネクタが知られている。例えば下記特許文献1~3に記載されたレバー式コネクタは、ハウジングの電線引き出し面を覆う電線カバーに、レバーが備えられている。これらレバー式コネクタのハウジングには、レバーの操作によってスライドするスライダが備えられている。スライダには、相手側コネクタに設けられたカムフォロアを受け入れ可能なカム溝が形成されている。スライダは、相手側コネクタとの嵌合を開始する際、ハウジングに対して規定の位置に保持される。規定の位置とは、相手側コネクタのカムフォロアとカム溝とが嵌合する位置である。スライダは、カムフォロアとカム溝とを嵌合させ、レバーを操作することによって規定の位置からスライドする。レバー式コネクタは、スライダのカム溝と相手側コネクタのカムフォロアとの係合によって、相手側コネクタと正規嵌合に至る。
【0003】
このようなレバー式コネクタのうち引用文献1及び引用文献2に記載されたものは、スライダにラック歯が設けられ、レバーにギヤが設けられている。このレバー式コネクタは、ギヤとラック歯との噛み合いによって、スライダが移動する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-99267号公報
【文献】特開2015-220077号公報
【文献】特開2014-165031号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、電線カバーをハウジングに取り付ける際、電線カバーのギヤがスライダのラック歯に接触し、スライダを規定の位置からずらしてしまうことがある。スライダが規定の位置からずれた場合、相手側コネクタのカムフォロアとカム溝とが嵌合できなくなる。このため、電線カバーをハウジングに取り付ける際に、電線カバーのギヤがスライダのラック歯に接触してスライダの位置をずらしてしまうことを防ぎたいという要望がある。
【0006】
そこで、本開示は、電線カバーをハウジングに取り付ける際に、電線カバーのギヤがスライダのラック歯に接触してスライダの位置をずらしてしまうことを防止できるレバー式コネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示のレバー式コネクタは、ハウジングと、前記ハウジングに対して第一方向に移動可能に備えられ、前記第一方向に複数並んだラック歯を有するスライダと、前記ハウジングに設置され、前記ハウジングの電線引き出し面を覆う電線カバーと、前記電線カバーに回転可能に設置され、前記ラック歯と噛み合うギヤを有し、前記スライダを移動させるレバーと、を備え、前記ハウジングは、前記電線カバーを回転可能に支持する支点部と、前記電線カバーに当たって前記ギヤを前記ラック歯に噛み合い可能な位置に臨ませる位置決め部と、を有するものである。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、電線カバーをハウジングに取り付ける際に、電線カバーのギヤがスライダのラック歯に接触してスライダの位置をずらしてしまうことを防止できるレバー式コネクタを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本実施形態にかかるレバー式コネクタの側面図である。
図2図2は、ハウジングの斜視図である。
図3図3は、ハウジングの平面図である。
図4図4は、電線カバーの斜視図である。
図5図5は、電線カバーをハウジングに取り付ける様子を示す一部切欠側面図である。
図6図6は、電線カバーをハウジングに取り付けた状態を示す一部切欠側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
【0011】
本開示のレバー式コネクタは、
(1)ハウジングと、前記ハウジングに対して第一方向に移動可能に備えられ、前記第一方向に複数並んだラック歯を有するスライダと、前記ハウジングに設置され、前記ハウジングの電線引き出し面を覆う電線カバーと、前記電線カバーに回転操作可能に設置され、前記ラック歯と噛み合うギヤを有し、前記スライダを移動させるレバーと、を備え、前記ハウジングは、前記電線カバーを回転可能に支持する支点部と、前記電線カバーに当たって前記ギヤを前記ラック歯に噛み合い可能な位置に臨ませる位置決め部と、を有するものである。このような構成によれば、電線カバーを支点部に支持させた状態で回転させる際、ギヤとラック歯とが噛み合うように電線カバーを位置決めできる。したがって、電線カバーをハウジングに取り付ける際に、電線カバーのギヤがスライダのラック歯に接触してスライダの位置をずらしてしまうことを防止できる。
(2)前記支点部は、前記ハウジングから前記第一方向と交差する方向に突出した突出部を有し、前記電線カバーは、前記突出部に対して前記第一方向と平行な方向から嵌合する嵌合部を有し、前記位置決め部は、前記嵌合部に対して前記突出部と反対側の位置に設けられ、前記電線カバーの回転方向に沿って湾曲した面を有することが好ましい。このような構成によれば、電線カバーを容易に位置決めできるからである。
(3)前記ハウジングのうち前記第一方向における中間部に、前記電線カバーを前記ハウジングに取り付けた状態において前記ギヤが配置されるギヤ配置部が設けられ、前記突出部及び前記位置決め部はいずれも前記第一方向において前記ギヤ配置部よりも一方の側に設けられていても良い。このような構成によれば、ハウジングの第一方向における一方の側に突出部、他方の側に位置決め部を設ける場合と比べて、ハウジングをコンパクトにできるからである。
(4)前記支点部は、前記電線カバーの回転中心となる回転軸を有し、前記回転軸の前記電線カバーとの接触面の角部は曲面であると良い。このような構成によれば、回転軸のうち電線カバーとの接触面の角部が直角である場合と比べて、電線カバーの回転をスムーズに行うことができるからである。
【0012】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示のレバー式コネクタCの具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0013】
レバー式コネクタCは、図1に示すように、ハウジング10と、電線カバー30と、レバー40と、支点部50と、位置決め部60とを備えている。以下、各構成部材において、電線カバー30が取り付けられる側(図1の上側)を上側、電線カバー30が取り付けられる側とは反対側(図1の下側)を下側とし、支点部50が設けられている側(図1の右側)を後側、支点部50が設けられている側とは反対側(図1の左側)を前側とする。また、図1の紙面に直交する方向の手前側を左側、奥側を右側として説明する。
【0014】
ハウジング10は、合成樹脂製である。ハウジング10は、前後方向に長い形状である。ハウジング10には、図2に示すように、端子金具が収容される端子収容室11が複数設けられている。複数の端子収容室11は、前後方向及び左右方向に並んでいる。
【0015】
端子金具は、上側から端子収容室11に収容される。端子金具は、電線Wの端末部に接続されている。電線Wは、ハウジング10の電線引き出し面12から上方へ引き出される。電線Wの束は、電線カバー30の内側において後側に屈曲される。
【0016】
図2及び図3に示すように、ハウジング10には、電線カバー30を取付状態にロックするロック部13が設けられている。ロック部13は、ハウジング10の前端部に設けられている。ロック部13は、ハウジング10の左右両側に一対設けられている。
【0017】
ロック部13は、ハウジング10の電線引き出し面12から上側に突出したロック壁14に設けられている。ロック部13は、ロック壁14から外側(右側のロック部13は右側のロック壁14から右側、左側のロック部13は左側のロック壁14から左側)に突出している。ロック部13は、電線カバー30に設けられたロック受け部31に嵌合する。
【0018】
ハウジング10には、ギヤ配置部15が設けられている(図6参照)。ギヤ配置部15は、電線カバー30をハウジング10に取り付けた状態において、レバー40のギヤ44が配置される。ギヤ配置部15は、ハウジング10のうち前後方向(第一方向)における中央部に設けられている。図2及び図3に示すように、ギヤ配置部15は、ハウジング10の左右両側に一対設けられている。ギヤ配置部15は、上面側が開放されて下側に凹んだ凹部である。レバー40のギヤ44は、ギヤ配置部15に上側から嵌合する。
【0019】
図2及び図3に示すように、ハウジング10には、支持受け部16が設けられている。支持受け部16は、電線カバー30をハウジング10に取り付ける際に、電線カバー30に設けられた支持部35を支持する。支持受け部16は、ギヤ配置部15よりも後側に設けられている。支持受け部16は、ハウジング10の左右両側に一対設けられている。支持受け部16は、上面が開放された凹部である。
【0020】
支持受け部16の底面16Aは、電線引き出し面12と平行である。支持受け部16の側面16Bは、電線引き出し面12に垂直である。支持受け部16は、支点部50及び位置決め部60を有する。支点部50及び位置決め部60については、後ほど詳しく説明する。
【0021】
ハウジング10には、スライダ20が備えられている(図5参照)。スライダ20は、合成樹脂製である。スライダ20は、平板状をなしている。スライダ20は、ハウジング10の左右両側に一対備えられている。スライダ20には、相手側コネクタのカムフォロアが嵌合するカム溝21が形成されている。スライダ20は、前後方向(第一方向)に移動可能である。スライダ20は、相手側コネクタとの嵌合開始の際に保持されるスライダ初期位置と、相手側コネクタとの嵌合完了の際に保持されるスライダ嵌合完了位置との間を移動する。図5には、スライダ初期位置に配置された状態のスライダ20を二点鎖線で示した。スライダ嵌合完了位置は、スライダ初期位置よりも後側(図5では右側)の位置である。スライダ20は、前後方向に複数並んだラック歯22を有する。ラック歯22は、スライダ20の上面に設けられている。
【0022】
電線カバー30は、合成樹脂製である。電線カバー30は、図1に示すように、ハウジング10に取り付けられ、ハウジング10の電線引き出し面12を覆う。電線カバー30は、図4に示すように、左右一対の側面部30Aと、一対の側面部30Aの上端を連結する上面部30Bとを有している。上面部30Bは、電線カバー30をハウジング10に取り付けた状態において、電線引き出し面12と対向する。側面部30Aの下面は、電線カバー30をハウジング10に取り付けた状態において、ハウジング10の電線引き出し面12と平行をなし、電線引き出し面12に近接する。左右の側面部30Aには、レバー40を取り付けるための支軸33が設けられている。電線カバー30の下面及び後面は開口している。電線カバー30によって、電線Wは後側に屈曲される。電線カバー30の後端部は、電線Wが後方に導出される電線導出口34である。
【0023】
電線カバー30の前端部には、ロック部13が嵌合するロック受け部31が設けられている。ロック受け部31は、電線カバー30の左右両側に設けられている。ロック受け部31は、左右方向に貫通する穴である。
【0024】
図4に示すように、電線カバー30は、支持部35を有している。支持部35は、ハウジング10に設けられた支持受け部16に嵌合する。支持部35は、電線カバー30の左右両側に一対設けられている。支持部35は、電線カバー30の側面部30Aの下面の後端部に設けられている。支持部35は、電線カバー30の前端から電線導出口34までの間においては前後方向の中央部に位置する。支持部35の左右方向の寸法は、側面部30Aの左右方向の寸法よりも小さい。
【0025】
支持部35の下面は、図6に示すように、傾斜面36、水平面37、及び湾曲面38を有する。傾斜面36は、支持部35の後端部に設けられている。傾斜面36は、電線カバー30をハウジング10に取り付けた状態において、後方に向かって上るように傾斜している。傾斜面36は、後述する嵌合部52の下面を構成する。水平面37は、支持部35の前後方向における中央部に設けられている。水平面37は、電線カバー30をハウジング10に取り付けた状態において、支持受け部16の底面16Aと面接触する。湾曲面38は、支持部35の前端部に設けられている。湾曲面38は、電線カバー30をハウジング10に取り付けた状態において、前方に向かって上るように湾曲している。支持部35は、湾曲面38の外側(右側の支持部35においては右側、左側の支持部35においては左側)に配置された外壁部39を有している。外壁部39は、支持受け部16の側面16Bに沿う。支持部35は、嵌合部52を有する。嵌合部52については後ほど詳しく説明する。
【0026】
レバー40は、図4に示すように、左右一対の側板41と、側板41の一端同士を連結する連結部42とを有している。左右一対の側板41には、支軸33が嵌合する取付穴43が設けられている。取付穴43に支軸33が嵌め込まれることによって、レバー40は、回転操作可能な状態で電線カバー30に取り付けられる。
【0027】
レバー40は、相手側コネクタとの嵌合開始の際に保持されるレバー初期位置と、相手側コネクタとの嵌合完了の際に保持されるレバー嵌合完了位置との間を回転可能である。図4には、レバー初期位置に配置された状態のレバー40を示した。レバー嵌合完了位置は、レバー初期位置よりも図4において反時計回りに回転した位置である。レバー40の側板41の外面には、ラック歯22と噛み合うギヤ44が設けられている。レバー40は、ギヤ44とラック歯22との噛み合いによってスライダ20を移動させる。
【0028】
支点部50は、電線カバー30を回転可能に支持する。支点部50は、ハウジング10の左右両側に設けられている。支点部50は、ハウジング10の後端部に設けられている。支点部50は、突出部51と、回転軸53とを有している。突出部51は、ハウジング10から上方(第一方向と交差する方向)に突出する。
【0029】
突出部51は、図5及び図6に示すように、ハウジング10の支持受け部16に設けられている。突出部51は、支持受け部16の後端に設けられた壁である。突出部51は、支持受け部16の底面16Aからハウジング10の後面に沿って上側に突出している。
【0030】
回転軸53は、突出部51の上端部に設けられている。回転軸53は、電線カバー30の回転中心となる。回転軸53は、突出部51の上端から前側に突出している。
【0031】
回転軸53のうち電線カバー30との接触面の角部は、図5及び図6に示すように、曲面56である。曲面56は、回転軸53の前端上下両側の角部に設けられている。
【0032】
回転軸53の下側には、図5及び図6に示すように、嵌合部52が嵌合する第一嵌合凹部54が設けられている。第一嵌合凹部54は、前側が開放されている。第一嵌合凹部54の深さ寸法(前後方向の寸法)は、嵌合部52の突出寸法(前後方向の寸法)よりも大きい。これによって、第一嵌合凹部54に嵌合部52が嵌合した状態において、嵌合部52の後端と第一嵌合凹部54の後端とは、前後方向に離れた状態に保持される。言い換えると、嵌合部52の後端と第一嵌合凹部54の後端との間には、隙間が形成される。
【0033】
嵌合部52は、図5及び図6に示すように、電線カバー30の支持部35に設けられている。嵌合部52は、支持部35の下端部における後端に設けられている。嵌合部52は、支持部35の下面に沿って後側に突出している。嵌合部52は、突出部51に対して前方(第一方向と平行な方向)から嵌合する。嵌合部52は、第一嵌合凹部54に嵌合する。
【0034】
図5及び図6に示すように、嵌合部52の上側には、回転軸53が嵌合する第二嵌合凹部55が設けられている。第二嵌合凹部55は、後側が開放されている。第二嵌合凹部55の上面は、図6に示すように、後方に向かって斜め上側に延びている。第二嵌合凹部55の上面は、電線カバー30の電線導出口34の近傍まで連なっている。
【0035】
位置決め部60は、図5及び図6に示すように、支持受け部16に設けられている。位置決め部60は、突出部51との間に嵌合部52を介在させた位置に設けられている。位置決め部60は、ラック歯22とギヤ44とが噛み合うように前後方向における電線カバー30の位置を微調整可能な隙間S(図6参照)を有して電線カバー30を位置決めする。
【0036】
位置決め部60は、図3に示すように、支持受け部16の左右方向における中央部に設けられている。位置決め部60は、支持受け部16の底面16Aから上側に突出している。
【0037】
位置決め部60は、図5及び図6に示すように、電線カバー30の回転方向に沿って湾曲した位置決め面60Aを有する。位置決め面60Aは、回転軸53から前方へ離れるにつれて上方に位置するように湾曲している。位置決め面60Aは、電線カバー30がハウジング10に取り付けられた状態において、支持部35の湾曲面38と平行をなす。位置決め面60Aの上端の上下方向における位置は、回転軸53の上下方向の位置と概ね等しい。
【0038】
次に、レバー式コネクタCの組み付け作業の一例を説明する。
【0039】
まず、ハウジング10に端子金具を収容する。具体的には、電線Wの端末部に固着された端子金具をハウジング10の電線引き出し面12側から端子収容室11に挿入する。端子金具が端子収容室11に収容されると、電線引き出し面12から電線Wが引き出された状態になる。
【0040】
次に、ハウジング10に電線カバー30を取り付ける(図5及び図6参照)。このとき、レバー40は、電線カバー30に対してレバー初期位置に保持しておく。スライダ20は、ハウジング10に対してスライダ初期位置に保持しておく。そして、図5に示すように、ハウジング10に対して電線カバー30を斜め姿勢にし、電線カバー30の支持部35を、ハウジング10の支持受け部16に斜め前上方から差し入れる。電線カバー30の嵌合部52は、ハウジング10の第一嵌合凹部54に前側から浅く嵌合される。嵌合部52は、傾斜面36によって先細りの形状をなしているから、第一嵌合凹部54に容易に嵌合される。一方、ハウジング10の回転軸53は、第二嵌合凹部55に浅く嵌合する。これによって、電線カバー30は、回転軸53を中心に回転可能な状態でハウジング10に支持される。支持部35の下面は、支持受け部16の底面16Aから上側に離れている。
【0041】
次に、電線カバー30を前側へ回転する。電線カバー30は、回転軸53を中心に回転する。電線カバー30を回転しつつ、電線カバー30の前後方向の位置を微調整する。電線カバー30の支持部35は、ハウジング10の位置決め面60Aに沿って変位する。電線カバー30の支持部35は、位置決め面60Aとの間の隙間Sの範囲内で前後方向の位置が微調整される。
【0042】
嵌合部52は、回転軸53の曲面56に沿って後方へ変位し、図6に示すように、第一嵌合凹部54に深く嵌合する。嵌合部52の上面は、回転軸53の下面に面当たりする。支持部35の水平面37は、支持受け部16の底面16Aに面接触し、支持部35の湾曲面38は、支持受け部16の位置決め面60Aの上側に配置される。支持部35が位置決め面60Aに当たることによって、電線カバー30のギヤ44は、ラック歯22と噛み合う位置に配置されている。したがって、ギヤ44は、ラック歯22に接触してスライダ20を押圧することなく、ラック歯22と噛み合った状態になる。こうして電線カバー30が正規の取り付け位置に至ると、電線カバー30のロック受け部31にハウジング10のロック部13が嵌合する。以上によって、レバー式コネクタCの組み付け作業が完了する。なお、支持部35の傾斜面36は、電線カバー30の取り付け途中及び取り付け完了時のいずれにおいても支持受け部16の底面16Aから離れている。
【0043】
次に、上記のように構成されたレバー式コネクタCの作用および効果について説明する。
【0044】
レバー式コネクタCは、ハウジング10と、スライダ20と、電線カバー30と、レバー40と、支点部50と、位置決め部60と、を備えている。スライダ20は、ハウジング10に対して前後方向(第一方向)に移動可能に備えられている。スライダ20は、前後方向に複数並んだラック歯22を有する。電線カバー30は、ハウジング10に設置され、ハウジング10の電線引き出し面12を覆う。レバー40は、電線カバー30に回転可能に設置される。レバー40は、ラック歯22と噛み合うギヤ44を有し、スライダ20を移動させる。支点部50は、ハウジング10に設けられる。支点部50は、電線カバー30を回転可能に支持する。位置決め部60は、ハウジング10に設けられている。位置決め部60は、電線カバー30に当たってギヤ44をラック歯22に噛み合い可能な位置に臨ませる。
【0045】
このような構成によれば、電線カバー30を支点部50に支持させた状態で回転させる際、ギヤ44とラック歯22とが噛み合うように電線カバー30を位置決めできる。したがって、電線カバー30をハウジング10に取り付ける際に、電線カバー30のギヤ44がスライダ20のラック歯22に接触してスライダ20の位置をずらしてしまうことを防止できる。
【0046】
支点部50は、ハウジング10から上方に突出した突出部51を有する。電線カバー30は、突出部51に対して後方から嵌合する嵌合部52を有する。位置決め部60は、嵌合部52を間にして突出部51と反対側の位置に設けられる。位置決め部60は、電線カバー30の回転方向に沿って湾曲した位置決め面60Aを有する。このような構成によれば、電線カバー30を容易に位置決めできる。
【0047】
ハウジング10のうち前後方向における中央部に、電線カバー30をハウジング10に取り付けた状態においてギヤ44が配置されるギヤ配置部15が設けられている。突出部51及び位置決め部60はいずれも前後方向においてギヤ配置部15よりも後側に配置されている。この構成によれば、ハウジング10の前後方向における前側と後側とに、突出部及び位置決め部を設ける場合と比べて、ハウジング10をコンパクトにできる。
【0048】
支点部50は、電線カバー30の回転中心となる回転軸53を有する。回転軸53の電線カバー30との接触面の角部は曲面56である。この構成によれば、回転軸のうち電線カバーとの接触面の角部が直角である場合と比べて、電線カバー30の回転をスムーズに行うことができる。
【0049】
[本開示の他の実施形態]
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えるべきである。
(1)上記実施形態の場合、支点部50が左右両側に設けられているが、他の実施形態としては、支点部50は1つのみを設けても良い。この場合、支点部をレバー式コネクタの左右方向における中央部に設けても良い。
(2)上記実施形態の場合、回転軸53は突出部51から前側に突出しているが、他の実施形態としては、回転軸を突出部から後側に突出させても良い。この場合、電線カバーの嵌合部を突出部に対して後側から嵌合しても良い。
(3)上記実施形態の場合、支点部50及び位置決め部60がハウジング10の一端側(後端側)に設けられているが、他の実施形態としては、支点部をハウジングの前後方向の一端側に、位置決め部をハウジング10の前後方向の他端側に設けてもよい。
(4)上記実施形態の場合、支点部50及び位置決め部60がハウジング10に凹み形成された支持受け部16に設けられているが、他の実施形態としては、支点部及び位置決め部をこのような凹部に設けなくても良い。
【符号の説明】
【0050】
C…レバー式コネクタ
S…隙間
W…電線
10…ハウジング
11…端子収容室
12…電線引き出し面
13…ロック部
14…ロック壁
15…ギヤ配置部
16…支持受け部
16A…底面
16B…側面
20…スライダ
21…カム溝
22…ラック歯
30…電線カバー
30A…側面部
30B…上面部
31…ロック受け部
33…支軸
34…電線導出口
35…支持部
36…傾斜面
37…水平面
38…湾曲面
39…外壁部
40…レバー
41…側板
42…連結部
43…取付穴
44…ギヤ
50…支点部
51…突出部
52…嵌合部
53…回転軸
54…第一嵌合凹部
55…第二嵌合凹部
56…曲面
60…位置決め部
60A…位置決め面(電線カバーの回転方向に沿って湾曲した面)
図1
図2
図3
図4
図5
図6