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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-16
(45)【発行日】2023-08-24
(54)【発明の名称】経腸栄養バッグ
(51)【国際特許分類】
   A61J 1/10 20060101AFI20230817BHJP
   B65D 30/22 20060101ALI20230817BHJP
   B65D 33/00 20060101ALI20230817BHJP
【FI】
A61J1/10 333A
B65D30/22 A
B65D33/00 A
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2018098128
(22)【出願日】2018-05-22
(65)【公開番号】P2019201808
(43)【公開日】2019-11-28
【審査請求日】2021-04-20
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000135036
【氏名又は名称】ニプロ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001966
【氏名又は名称】弁理士法人笠井中根国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100103252
【弁理士】
【氏名又は名称】笠井 美孝
(74)【代理人】
【識別番号】100147717
【弁理士】
【氏名又は名称】中根 美枝
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 雄太
【審査官】菊地 牧子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2009/0208147(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2007/0206888(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0284630(US,A1)
【文献】特開2000-342638(JP,A)
【文献】特開2014-054406(JP,A)
【文献】特開2015-159896(JP,A)
【文献】独国実用新案第000020201248(DE,U1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61J 1/10
B65D 30/22
B65D 33/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに重ね合わされた第1のシートと第2のシートが下辺部分と両側辺部分で互いに溶着されており、該第1のシートと該第2のシートの重ね合わせ面間に液状体収容領域が形成されている経腸栄養バッグにおいて、
前記液状体収容領域の下部には液状体の排出部が設けられていると共に、
前記第1のシートと前記第2のシートの一方に第3のシートが重ね合わされて、該第1のシートと前記第2のシートの他方には目盛りが表示されており、
該第1及び第2のシートの両側辺部分において該第3のシートの両側辺部分が一体的に溶着されて、該第3のシートと該第1又は第2のシートとの重ね合わせ面間に、前記液状体の投与に際して空所とされ得ることで、該液状体の投与機能に必須の部材でなく、該液状体の投与に際して付加的に用いられる別体の医療用具(但し、液状体を連続的に搬送するためのポンプを除く)が一時的に収容される保持部が形成されていると共に、
該保持部において前記医療用具が出し入れされる開口部よりも前記液状体収容領域における液状体注入用の開口部が上側に位置しており、且つ、
前記第3のシートが前記第1又は第2のシートにおける内面と外面との少なくとも一方に重ね合わされていると共に、該第3のシートの上辺部分又は側辺部分において該第1又は第2のシートに対して非固着とされて前記保持部における前記開口部が形成されていることを特徴とする経腸栄養バッグ。
【請求項2】
前記第1及び第2のシートの下辺部分において前記第3のシートの下辺部分が重ね合わされて一体的に溶着されている請求項1に記載の経腸栄養バッグ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療分野で用いられて栄養液や薬液の液状体を収容する経腸栄養バッグに関する。
【背景技術】
【0002】
医療分野では、薬液や輸液などの液状体が用いられるが、そのような液状体の取り扱いには、例えば特開2011-78737号公報(特許文献1)に記載の如き医療用バッグが利用されている。すなわち、例えば、患者の鼻腔から挿し入れられたチューブを通じて栄養液や薬液を胃等へ投与する経腸栄養法では、医療用バッグが、所定量の栄養液や薬液を収容しておく栄養剤補給用バッグとして利用されている。また、患者の静脈に挿し入れられた輸液回路を通じて栄養液や薬液を静脈へ投与する静脈栄養法では、医療用バッグが、所定量の栄養液や薬液を収容しておく輸液バッグとして利用されている。
【0003】
ところで、かかる栄養液や薬液、輸液の投与に際して、他の作業が必要になることがある。たとえば、医療用バッグを用いた栄養液や薬液などの投与後に、シリンジを用いて、水を患者に投与したり、使用したチューブの洗浄を行ったりする場合がある。または、医療用バッグを用いた薬液などの投与の前や後、或いは同時に、シリンジを用いて他の薬液などを投与する場合もある。その際、医療用バッグおよび当該医療用バッグに収容される薬液などの他に、上述のシリンジや、当該シリンジに収容される水や薬液などが付加的に必要になることがある。
【0004】
ところが、一般に、これらの作業は、患者のベッドサイドで行われるが、従来では、患者のベッドサイドにおいて、それら付加的に必要になるものを一時的に置いたりするスペースが確保できない場合も多かった。そのため、看護師がこれらシリンジや薬液などを持参して患者のベッドサイドに赴く場合もあり、かかる場合には、看護師が患者毎に必要なシリンジや薬液などを把握する必要があったり、患者のベッドサイドとナースステーションとを往復したりする必要があるなど、労力の負担が大きかった。
【0005】
なお、このような問題に鑑み、本発明者は、医療用バッグを構成する2枚のシートのうちの一方のシートの中央部分にポケットを設けて、当該ポケット内にシリンジなど付加的に必要になるものを収容することも検討した。しかし、薄肉で軟質の樹脂シートの中央部分に対して溶着や接着で別シートの周縁部分を固着してポケットを設けた場合、単に1枚の樹脂シートとされる部分に別シートが固着されるだけであることから、強度不足や損傷の懸念があり、品質保証の観点から好ましいものではなかった。また、樹脂シートの中央部分に対して別シートの周縁部分を固着すると、樹脂シートにおいて別シートが重ね合わされた中央部分だけが局所的に変形し難くなって、医療用バッグの変形がいびつになったり、医療用バッグの取り扱いに支障が出るおそれもあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2011-78737号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上述の事情を背景に為されたものであって、その解決課題とするところは、例えば医療用バッグなどを用いて体内に薬液などを投与する際に付加的に必要とされるシリンジなどを一時的に保持せしめることを可能にする、新規な構造の医療用バッグを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以下、このような課題を解決するために為された本発明の態様を記載する。なお、以下に記載の各態様において採用される構成要素は、可能な限り任意の組み合わせで採用可能である。
【0009】
本発明の第1の態様は、互いに重ね合わされた第1のシートと第2のシートが下辺部分と両側辺部分で互いに溶着されており、該第1のシートと該第2のシートの重ね合わせ面間に液状体収容領域が形成されている経腸栄養バッグにおいて、前記液状体収容領域の下部には液状体の排出部が設けられていると共に、前記第1のシートと前記第2のシートの一方に第3のシートが重ね合わされて、該第1のシートと前記第2のシートの他方には目盛りが表示されており、該第1及び第2のシートの両側辺部分において該第3のシートの両側辺部分が一体的に溶着されて、該第3のシートと該第1又は第2のシートとの重ね合わせ面間に、前記液状体の投与に際して空所とされ得ることで、該液状体の投与機能に必須の部材でなく、該液状体の投与に際して付加的に用いられる別体の医療用具(但し、液状体を連続的に搬送するためのポンプを除く)が一時的に収容される保持部が形成されていると共に、該保持部において前記医療用具が出し入れされる開口部よりも前記液状体収容領域における液状体注入用の開口部が上側に位置しており、且つ、前記第3のシートが前記第1又は第2のシートにおける内面と外面との少なくとも一方に重ね合わされていると共に、該第3のシートの上辺部分又は側辺部分において該第1又は第2のシートに対して非固着とされて前記保持部における前記開口部が形成されていることを特徴とするものである。
【0010】
本態様に従う構造とされた経腸栄養バッグによれば、他部材を保持することのできる保持部が形成されることから、当該保持部に、シリンジなどの付加的に必要とされる部材を収容することができる。
【0011】
また、保持部を構成する第3のシートの両側辺部分が、第1および第2のシートが重ね合わされて溶着されることで実質的に2枚分の樹脂シートの厚さ寸法を有する部分に対して一体的に溶着されることから、例えば第1または第2のシートの中央部分だけに別シートが重ね合わされて周縁部分を固着されることによりポケットが形成される場合に比べて、保持部の両側辺部分の固着部位における強度を向上させることができて、強度不足や損傷のおそれが低減され得る。さらに、第3のシートが、第1および第2のシートの幅方向の全体に亘って重ね合わされて配されることから、例えば第1または第2のシートの中央部分だけに別シートが重ね合わされてポケット部が形成される場合に比して、第3のシートを溶着することに伴う、第1または第2のシートの幅方向中間部分のいびつな変形を回避または低減することもできる。また、本態様に従う構造とされた医療用バッグによれば、仮に第3のシートが有色であったり表示部を備えていたり、第1又は第2のシートの外側に重ね合わされているような場合でも、目盛りの視認性に対する第3のシートの悪影響を軽減乃至は回避することが可能になる。
【0012】
本発明の第2の態様は、前記第1の態様に係る経腸栄養バッグであって、前記第1及び第2のシートの下辺部分において前記第3のシートの下辺部分が重ね合わされて一体的に溶着されているものである。
【0013】
本態様に従う構造とされた経腸栄養バッグによれば、保持部の下辺部分の固着部位においても、その少なくとも一部が、実質的に2枚分の樹脂シートの厚さ寸法を有する部分に一体的に溶着されることから、強度不足や損傷のおそれが一層低減され得る。
【発明の効果】
【0020】
本発明に従う構造とされた経腸栄養バッグによれば、経腸栄養バッグを用いた薬液の投与に際して、付加的に必要とされるシリンジなどの部材を保持部に収容することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の第1の実施形態としての医療用バッグを示す正面図。
図2図1に示された医療用バッグの背面図。
図3図1に示された医療用バッグを背面側から示す分解斜視図。
図4図1に示された医療用バッグを手指で把持した状態を説明するための説明図。
図5】本発明の第2の実施形態としての医療用バッグを示す正面図。
図6図5に示された医療用バッグの背面図。
図7図5に示された医療用バッグを背面側から示す分解斜視図。
図8】本発明の第3の実施形態としての医療用バッグを示す正面図。
図9図8に示された医療用バッグの背面図。
図10図8に示された医療用バッグを背面側から示す分解斜視図。
図11】本発明の第4の実施形態としての医療用バッグを示す正面図。
図12図11に示された医療用バッグの背面図。
図13図11に示された医療用バッグを背面側から示す分解斜視図。
図14図11に示された医療用バッグを手指で把持した状態を説明するための説明図。
図15】本発明の第5の実施形態としての医療用バッグを示す正面図。
図16図15に示された医療用バッグの背面図。
図17図15に示された医療用バッグを背面側から示す分解斜視図。
図18】本発明の第6の実施形態としての医療用バッグを示す正面図。
図19図18に示された医療用バッグの背面図。
図20図18に示された医療用バッグを背面側から示す分解斜視図。
図21】本発明の第7の実施形態としての医療用バッグを示す正面図。
図22図21に示された医療用バッグの背面図。
図23図21に示された医療用バッグを背面側から示す分解斜視図。
図24】本発明の別の態様としての医療用バッグを示す正面図。
図25】本発明の更に別の態様としての医療用バッグを示す正面図。
図26】本発明の更に別の態様としての医療用バッグを示す正面図。
図27】本発明の更に別の態様としての医療用バッグを示す正面図。
図28】本発明の更に別の態様としての医療用バッグを示す正面図。
図29図28に示された医療用バッグを背面側から示す分解斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を更に具体的に明らかにするために、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ、詳細に説明する。
【0023】
先ず、図1,2には、本発明の第1の実施形態としての医療用バッグ10が示されている。この医療用バッグ10は袋状とされており、内部には、液状体が収容される液状体収容領域12が形成されている。そして、かかる液状体収容領域12に、栄養液や薬液、輸液などが収容されることで、医療用バッグ10が、栄養剤補給用バッグや輸液バッグとして利用されるようになっている。なお、以下の説明において、上下方向とは、図1,2中の上下方向をいう。
【0024】
より詳細には、医療用バッグ10は、図3にも示されているように、正面側(表面側)の第1のシート14と背面側(裏面側)の第2のシート16が相互に重ね合わされることで構成されており、これら両シート14,16の重ね合わせ面間に液状体収容領域12が形成されている。
【0025】
これら第1のシート14および第2のシート16は、軟質の合成樹脂により形成された薄肉の部材とされており、有色または無色透明とされている。本実施形態では、両シート14,16が相互に同形状とされて、且つ同じ材質で形成されており、それ故、同じ部材を使用することが可能となっている。これら第1および第2のシート14,16は、それぞれ上下方向が長手方向とされる縦長の略矩形状とされている。特に、本実施形態では、第1および第2のシート14,16が、上下方向の略全長に亘って略一定の幅寸法を有しており、上下方向に略ストレートに延びている。
【0026】
そして、かかる第1のシート14と第2のシート16とが相互に重ね合わされて、下辺部分と幅方向両側辺部分とが固着されている。これにより、縦長形状の液状体収容領域12が形成されており、当該液状体収容領域12が上方に開口している。すなわち、第1および第2のシート14,16において互いに溶着されていない上端縁(上辺部分)が、液状体収容領域12の開口部18とされている。
【0027】
ここで、本実施形態において、第1のシート14と第2のシート16の重ね合わせ面間には、幅方向の略全長に亘って延びるプラスチックファスナー20が設けられており、当該プラスチックファスナー20の開閉操作に伴い、液状体収容領域12の開口部18が開閉可能とされている。
【0028】
すなわち、第1のシート14における上側部分の内面には、プラスチックファスナー20を構成する凸条20aが設けられている一方、第2のシート16における上側部分の内面には、プラスチックファスナー20を構成する凹溝20bが設けられており、これら凸条20aおよび凹溝20bが相互に噛合することでプラスチックファスナー20および開口部18が閉状態とされるようになっている。本実施形態では、これら凸条20aおよび凹溝20bが、第1のシート14および第2のシート16の上端から所定距離だけ下方に離隔した位置に設けられている。なお、これら凸条20aや凹溝20bは、第1および第2のシート14,16において、相互に反対に設けられてもよい。特に、本実施形態では、これら凸条および凹溝20a,20bが、幅方向両側(上下方向両側)に延び出すシート状部21,21を一体的に備えており、第1および第2のシート14,16に対して別体として形成された凸条および凹溝20a,20bが、これらシート状部21において後固着されている。
【0029】
また、本実施形態では、第1のシート14と第2のシート16との固着が、熱溶着(ヒートシール)により行われている。すなわち、第1のシート14と第2のシート16において、外周縁部における下辺部分と幅方向両側辺部分には、所定の幅寸法をもって連続して延びる溶着部22が設けられている。尤も、第1のシート14と第2のシート16との固着手段は、熱溶着に限定されるものではなく、例えば熱以外の超音波を利用した溶着など、従来公知の溶着手段が採用され得る。
【0030】
すなわち、これら第1のシート14や第2のシート16などは、熱溶着が可能とされたシーラント層が設けられた構造とされており、溶着される面の略全面に亘ってシーラント層が設けられている。本実施形態では、第1のシート14の内面、第2のシート16の内外両面、後述する第3のシート34の内面、および凸条および凹溝26a,26bに設けられるシート状部21,21の外面にシーラント層が設けられている。第1のシート14や第2のシート16を構成する材質は、強度や印刷等、要求される特性などに応じて選択されて積層され得るものであり、何等限定されるものではない。
【0031】
さらに、これら第1のシート14と第2のシート16の重ね合わせ面間において、下辺部分には、硬質の合成樹脂からなる略筒状のポート部材24が配されて固着されている。なお、当該ポート部材24の固着方法は何等限定されるものではないが、例えば上記の如き第1のシート14と第2のシート16との熱溶着が、ポート部材24の配設箇所を除いた位置で行われた後に、ポート部材24を所定位置に配設して、溶着や接着により固着されてもよい。あるいは、第1のシート14と第2のシート16との間にポート部材24を挟んだ状態で熱溶着が行われることで、第1のシート14と第2のシート16の固着と同時にポート部材24が固着されてもよい。かかるポート部材24は、液状体収容領域12の内外を連通しており、当該ポート部材24に接続される図示しないカテーテルなどを通じて、液状体収容領域12に収容された薬液などの液状体が患者の体内に注入されるようになっている。
【0032】
なお、ポート部材24は、カテーテル等の外部流路を液状体収容領域12に連通接続し得るものであれば良く、限定されない。また、外部流路を構成するカテーテルの一方の端部を第1のシート14と第2のシート16との間に挟んで固着して、液状体収容領域12へ直接に連通させてもよい。
【0033】
更にまた、本実施形態では、第1および第2のシート14,16の上端において、幅方向中央部分から上方に突出する吊下部26が設けられており、吊下部26の中央には、円形の係止孔28が形成されている。かかる係止孔28に対して、スタンドなどから延びるフックなどが挿通されることで、医療用バッグ10をスタンドなどに吊り下げることができるようになっており、係止孔28をバッグ吊下用として利用することができる。
【0034】
更にまた、本実施形態では、第1のシート14において、目盛り30が付されて表示されている。これにより、液状体収容領域12に収容された液状体の収容量が、外部から目視で把握できるようになっている。特に、本実施形態では、ポート部材24と吊下部26(係止孔28)とが何れも第1および第2のシート14,16の幅方向中央部分に設けられており、医療用バッグ10をスタンドなどに吊り下げた際に、医療用バッグ10が、下方に真っ直ぐ吊り下げられるようになっている。すなわち、本実施形態では、目盛り30を構成する直線などが、上下方向と直交する幅方向に延びている。
【0035】
また、第1のシート14の上側部分の外面には、引張タブ32が固着されている。この引張タブ32の材質は何等限定されるものではない。本実施形態では、かかる引張タブ32が、略矩形状のシート片とされており、手指44(図4参照)で摘める大きさで形成されている。特に、本実施形態では、当該引張タブ32の上辺部分のみが、第1のシート14の上側部分に固着されており、引張タブ32の下辺部分は自由端とされている。これにより、引張タブ32の下辺部分を第1のシート14から立ち上げて手指44で摘んで外方(図1中の紙面手前方向)に引っ張ることで、第1のシート14の主に上側部分も同方向に引っ張られ、第1のシート14と第2のシート16とが相互に離隔して、液状体収容領域12の開口部18をより大きく開くことができるようになっている。
【0036】
ここにおいて、かかる第2のシート16における外面には、第1および第2のシート14,16とは別体とされた第3のシート34が重ね合わされて固着されている。この第3のシート34は、本実施形態では、第1および第2のシート14,16と同様に軟質の合成樹脂により形成された薄肉の部材とされており、有色または無色透明とされている。なお、かかる第3のシート34の材質は何等限定されるものではない。本実施形態では、第3のシート34が、上下方向に延びる略矩形状とされており、当該第3のシート34の幅方向寸法が、第2のシート16の幅方向寸法と略等しくされているとともに、第3のシート34の上下方向寸法が、第2のシート16の上下方向寸法と略等しいか、僅かに小さくされている。なお、第3のシート34を、第1および第2のシート14,16と同形状として、第1および第2のシート14,16と同じ部材を使用することも可能である。
【0037】
そして、当該第3のシート34における上側部分には、後述する医療用バッグ10の把持時において手指44を挿し入れる挿入孔48となる挿入スリット36が形成されている。この挿入スリット36は、所定の寸法をもって上下方向に延びており、本実施形態では、一対の挿入スリット36,36が所定の幅方向の離隔距離をもって対向している。これにより、医療用バッグ10に対して横方向の両側から、即ち図2中の右側の挿入スリット36からも左側の挿入スリット36からも手指44を挿し入れることができるようになっている。かかる挿入スリット36は、第3のシート34の上端から所定距離だけ下方に位置した部分から下方に延び出しており、第1および第2のシート14,16間に設けられたプラスチックファスナー20を跨いで形成されている。すなわち、プラスチックファスナー20の外側(図2中の紙面手前側)に挿入スリット36が形成されている。
【0038】
また、第3のシート34における上下方向中間部分には、幅方向に延びるスリットとしての開口スリット38が形成されている。この開口スリット38は第3のシート34を貫通して形成されており、所定の幅方向寸法をもって、挿入スリット36よりも下方に設けられている。
【0039】
かかる第3のシート34は、第2のシート16に対して、上辺部分と下辺部分、および幅方向両側辺部分の4辺が重ね合わされて熱溶着により固着されている。すなわち、第3のシート34の下辺部分および幅方向両側辺部分が、それぞれ第1および第2のシート14,16の下辺部分および幅方向両側辺部分に一体的に溶着されている。特に、本実施形態では、第3のシート34の下辺部分が、第1および第2のシート14,16の下辺部分に対して幅方向の略全長に亘って一体的に溶着されているとともに、第3のシート34の幅方向両側辺部分が、第1および第2のシート14,16の幅方向両側辺部分に対して上下方向の略全長に亘って一体的に溶着されている。これにより、第3のシート34と第2のシート16との重ね合わせ面間には、外部空間から遮断された閉状領域40が形成されているとともに、該閉状領域40が、第3のシート34に貫通して形成された開口スリット38を通じて外部空間に開放されている。これにより、閉状領域40の下側部分には、開口スリット38を上方の開口とするポケット状の保持部42が構成されている。なお、第3のシート34における上辺部分は、第2のシート16に対して固着される必要はない。すなわち、第3のシート34と第2のシート16との重ね合わせ面間には、上方に開口する縦長のポケット部が形成されて、当該ポケット部の下側部分が保持部42とされてもよい。
【0040】
ところで、このような医療用バッグ10の製造方法は、何等限定されるものではないが、医療用バッグ10の製造方法の具体的な1例を以下に説明する。
【0041】
先ず、第1のシート14や第2のシート16等を、予め目的とする形状をもって準備するようにしても良いが、好適には、所定幅で長尺物の樹脂シートをロール状に巻いた状態で、第1のシート14と第2のシート16と第3のシート34とをそれぞれ準備する。また、プラスチックファスナー20を構成する凸条20aと凹溝20bも、同様に、長尺物をリール状に巻いた状態で準備する。なお、第1のシート14に付される目盛り30は、ロール状に巻いた状態で予め印刷されていてもよいし、第1のシート14と第2のシート16を溶着した後に印刷することもできる。
【0042】
そして、樹脂シートを熱溶着するためのプレス溶着装置のプレス溶着エリアに対して、第1のシート14の樹脂シートと、第2のシート16の樹脂シートと、第3のシート34の樹脂シートとを、それぞれロールから引き出して、それら3枚の樹脂シートを互いに重ね合わせて導き入れる。なお、第3のシート34における挿入スリット36,36および開口スリット38は、第3のシート34がプレス溶着エリアに導き入れられる前に形成されることが好ましいが、限定されるものではなく、例えばプレス溶着後に形成されてもよい。
【0043】
また、第1および第2のシート14,16には、両シートのプレス溶着エリアに至るまでの準備エリアとしてのファスナー溶着エリアにおいて、プラスチックファスナー20を構成する凸条20aと凹溝20bの各一方がリールから引き出されて、重ね合わされる。そして、これら凸条20aと凹溝20bは、第1のシート14の樹脂シートと第2のシート16の樹脂シートとに対して、長さ方向で連続して溶着される。かかる溶着は、公知のとおり、凸条20aや凹溝20bから幅方向両側に張り出して一体的に備えるシート状部21,21において、第1のシート14の樹脂シートや第2のシート16の樹脂シートに対して長さ方向で直線状に連続的に溶着することで、凸条20aや凹溝20bの開閉機能部分への熱影響を避けることができる。なお、凸条20aや凹溝20bから幅方向両側に張り出して一体的に備えるシート状部21は、剛性が大きいシート材質が好ましい。このように、第1および第2のシート14,16の重ね合わせ面には、予めプラスチックファスナー20を構成する凸条20aと凹溝20bとの各一方が固着されている。
【0044】
そして、プレス溶着エリアに導き入れられた第1のシート14の樹脂シートと第2のシート16の樹脂シートと第3のシート34の樹脂シートは、互いに重ね合わされた状態で、目的とする医療用バッグ10における左右両側辺部分と下辺部分に設定された溶着部22に対して溶着型が押し付けられてプレス溶着される。なお、このプレス溶着に際して、溶着部22に位置する凸条20aや凹溝20bは、熱変形して押しつぶされて実質的に消失する。また、第3のシート34の上辺部分を第2のシート16に溶着するに際しては、第1および第2のシート14,16の相互の溶着を回避するために、例えば溶着阻止シートを第1および第2のシート14,16間に挟み込んだ状態でプレス溶着することで実現され得る。
【0045】
その後、プレス溶着エリアから送り出された重ね合わせシート状の溶着体は、カッティングエリアに導き入れられ、プレスカッタによって、目的とする医療用バッグ10の平面形状で打ち抜き切断される。これにより、左右両側辺部分と下辺部分とが一体的に固着された第1および第2のシート14,16の重ね合わせ面間に、プラスチックファスナー20で開閉可能とされた上方への開口部18を備えた液状体収容領域12が形成される。また、上辺部分と下辺部分、および幅方向両側辺部分の4辺が一体的に固着された第2のシート16と第3のシート34との重ね合わせ面間には、外部空間から遮断された閉状領域40が形成される。
【0046】
さらに、カッティング工程の前、或いは後の工程において、第1のシート14に対して引張タブ32が溶着される。この溶着は、例えば第1および第2のシート14,16間に溶着阻止シートを挟み入れた状態でプレス溶着することで実現され得る。
【0047】
なお、カッティング工程を経て目的とする医療用バッグ10の平面形状とされた後に、人手による個別の溶着操作により、かかる引張タブ32の溶着を行ってもよい。
【0048】
また、ポート部材24は、第1および第2のシート14,16および第3のシート34のプレス溶着工程において、第1および第2のシート14,16間にポート部材24を挟み入れた状態で、ポート部材24に応じた凹みのある溶着型を用いてプレス溶着することで、第1および第2のシート14,16のプレス溶着と同時にポート部材24も溶着することができる。或いは、ポート部材24の固着部分だけ溶着せずに残した状態で、第1および第2のシート14,16の溶着部22を溶着した後、ポート部材24を挿し入れて別工程で溶着したり、接着固定するようにしてもよい。
【0049】
以上、本実施形態の医療用バッグ10の製造工程を例示したが、前述したように上述の製造工程によって限定的に解釈されるものでない。例えば、プラスチックファスナー20は、凸条20aと凹溝20bとが噛合した状態(プラスチックファスナー20が閉じた状態)で、第1のシート14と第2のシート16のプレス溶着エリアに送り込まれて、溶着部22に対するプレス溶着と同時に、それら両シート14,16の各一方に対して溶着することも可能である。また、本実施形態では、第1、第2のシート14,16および第3のシート34が同時に固着されていたが、これら第1、第2のシート14,16および第3のシート34は、それぞれ順番に固着されてもよい。
【0050】
かかる構造とされた本実施形態の医療用バッグ10では、図4に示されているように、表裏のうち、一方のみに手指44が挿し入れられることで医療用バッグ10が保持される。すなわち、図4では右利きの使用者を想定して、左手の手指44が、第2のシート16と第3のシート34との間に挿入されており、これら第2のシート16と第3のシート34との間に手指44が挿入される挿入部46が構成されている。また、図4中では、挿入部46に対して親指を除く4本の手指44が挿入されているが、挿入部46に挿入される手指の種類や本数は何等限定されるものではない。
【0051】
特に、本実施形態では、図2中の右側の挿入スリット36から手指44が挿入されている一方、図2中の左側の挿入スリット36から手指44の先端が突出している。すなわち、第3のシート34において、一対の挿入スリット36,36の対向間と第2のシート16との間において手指44が挿通される挿入部46が構成されており、当該挿入部46が幅方向に貫通している。そして、挿入部46における幅方向両側の開口部が、実質的に手指44が挿し入れられる挿入孔48,48とされており、当該挿入孔48が、挿入スリット36を含んで構成されている。すなわち、本実施形態では、手指44が挿入される挿入部46および挿入孔48が、プラスチックファスナー20の外側に形成されている。
【0052】
そして、本実施形態では、上述のように医療用バッグ10の裏面側に手指44が挿入されて医療用バッグ10が保持される一方、反対側の手指(即ち、右手の手指)で引張タブ32を摘んで引っ張ることで、引張タブ32と共に第1のシート14が引っ張られることから、第2のシート16と第1のシート14とが相互に離隔せしめられて、開口部18がより確実に開状態に保持されるようになっている。これにより、開口状態とされた開口部18を通じて、液状体が液状体収容領域12内に収容され得て、ポート部材24および当該ポート部材24に接続されるカテーテルなどを通じて体内に液状体が投与されるようになっている。なお、引張タブ32を摘んで引っ張る際には、予めプラスチックファスナー20の凸条20aと凹溝20bとの噛合が解除されていることが望ましいが、限定されるものでない。
【0053】
また、本実施形態では、第1のシート14および第2のシート16の上端において、中央に係止孔28が形成された吊下部26が形成されている。ここで、開口部18の開状態を維持するに際して、引張タブ32を引っ張ることに代えて、第1のシート14側に設けられた係止孔28に手指を引っ掛けて引っ張ったり、第1のシート14側の吊下部26を摘んで引っ張るなどしてもよい。すなわち、第1のシート14を引っ張ることのできる引張タブが、第1のシート14の吊下部26により構成されてもよい。これにより、液状体収容領域12の開口部18を開状態とすることのできる引張タブ(吊下部26)に対してバッグ吊下用の係止孔28を巧く形成することができる。なお、本実施形態では、一対の吊下部26,26が設けられて、それぞれに係止孔28が形成されているが、係止孔は、一方の吊下部に設けられるだけでもよいし、吊下部以外の場所に設けられてもよい。
【0054】
以上の如き構造とされた本実施形態の医療用バッグ10では、第2のシート16と第3のシート34との間に、開口スリット38を上方の開口とする保持部42が設けられていることから、当該保持部42内に、医療用バッグ10の使用後、即ち例えば医療用バッグ10による薬液などの投与後に付加的に必要とされるシリンジや当該シリンジに収容される薬液、水などの他部材を収容保持することができる。なお、これら薬液や水は、例えばバイアル瓶に収容された状態で、保持部42内に保持することができる。これにより、例えば医療用バッグ10を患者のベッドサイドに運ぶ際に、予め必要とされるシリンジなどの他部材を収容することができて、看護師が患者毎に必要とされるシリンジや薬液などを把握したり運んだりする労力の軽減が図られ得る。
【0055】
特に、本実施形態では、保持部42を構成する第3のシート34が、第2のシート16と略同形状とされて、第2のシート16の略全面に亘って重ね合わされて固着されることから、保持部42を設けることに伴って第2のシート16がいびつに変形したりすることも効果的に防止され得る。さらに、第3のシート34の幅方向両側辺部分および下辺部分が、第1のシート14と第2のシート16との溶着部分(溶着部22)に対して一体的に溶着されることから、第3のシート34の幅方向両側辺部分および下辺部分における固着部位の強度が向上され得る。すなわち、第3のシート34の幅方向両側辺部分や下辺部分が、第1および第2のシート14,16が重ね合わされて厚さ寸法が大きくされた部分に一体的に溶着されることから、第3のシート34だけでなく、第1および第2のシート14,16の幅方向両側辺部分や下辺部分の強度不足や損傷のおそれが低減され得る。
【0056】
また、例えば開口スリット38が設けられた第3のシート34が第2のシート16に対して周方向の全周に亘って固着されることで、第2のシート16と第3のシート34との間に閉状領域40が設けられるとともに、開口スリット38を上方の開口とする保持部42が形成されることから、保持部42の形成が容易に実現され得る。特に、本実施形態では、第1のシート14と第2のシート16の固着と同時に第3のシート34が固着されることから、第3のシート34を別途固着する手間も省かれ得る。
【0057】
さらに、本実施形態では、手指44が挿し入れられる挿入部46(挿入孔48)を構成する第3のシート34が第2のシート16に固着されているとともに、液状体の収容量を把握するための目盛り30が第1のシート14に表示されている。これにより、第3のシート34を固着することや、手指44の陰に隠れて目盛り30が見づらくなることが回避され得る。
【0058】
次に、図5,6には、本発明の第2の実施形態としての医療用バッグ60が示されている。本実施形態の医療用バッグ60は、液状体収容領域12を構成する第1のシート62と第2のシート64とを備えている。そして、第1のシート62の外面に第3のシート66が固着されている一方、第2のシート64の外面にも第3のシート68が固着されている。本実施形態の第1および第2のシート62,64は、吊下部(26)が設けられていない点を除いて、前記第1の実施形態の第1および第2のシート(14,16)と略同様の構造とされている。なお、以下の説明において、前記実施形態と実質的に同一の部材および部位には、図中に、前記実施形態と同一の符号を付すことにより、詳細な説明を省略する。
【0059】
また、本実施形態の第3のシート66,68は、第1および第2のシート62,64と略等しい形状とされている。なお、これら第1、第2、第3のシート62,64,66,68を相互に同形状とすることにより、それぞれ同じ部材を使用することができる。そして、これら第3のシート66,68には、上下方向中間部分において、前記第1の実施形態と同様に、幅方向に延びる開口スリット38が形成されている。なお、本実施形態では、それぞれの第3のシート66,68に設けられる両開口スリット38,38が、相互に等しい上下方向位置に設けられているが、それぞれ異なる上下方向位置に形成されてもよい。
【0060】
かかる第3のシート66,68が、第1および第2のシート62,64の略全面に重ね合わされて、上辺部分、下辺部分、幅方向両側辺部分の4辺が固着(本実施形態では熱溶着)されることにより、第1のシート62と第3のシート66との重ね合わせ面間、および第2のシート64と第3のシート68との重ね合わせ面間には、それぞれ閉状領域40が形成される。また、これら第3のシート66,68に開口スリット38が設けられることにより、両閉状領域40の下側部分には、前記第1の実施形態と同様の保持部42が形成される。なお、これら第3のシート66,68の上辺部分は、第1のシート62や第2のシート64に対して固着されなくてもよく、上方に開口する縦長のポケット部が形成されて、当該ポケット部の下側部分が保持部42とされてもよい。
【0061】
さらに、本実施形態では、第1のシート62に固着される第3のシート66において、上端から所定距離だけ下方に位置した部分には、幅方向に延びて第3のシート66を貫通するスリット状の挿入スリット70が形成されている。この挿入スリット70は、第3のシート66よりも小さい幅方向寸法をもって、第3のシート66の幅方向略中央部分に形成されている。
【0062】
また、第2のシート64に固着される第3のシート68の上側部分には、前記第1の実施形態と同様に、一対の挿入スリット36,36が形成されている。これにより、第2のシート64と第3のシート68との固着時には、挿入スリット36,36の対向間と第2のシート64との間において、手指(44)を挿入する挿入部46が形成されるとともに、挿入部46の幅方向両側の開口部が、挿入スリット36を含んで構成される挿入孔48とされる。
【0063】
そして、図7に示されるように、第1、第2、第3のシート62,64,66,68をそれぞれ重ね合わせて熱溶着により同時に固着することにより、本実施形態の医療用バッグ60が形成されるようになっている。かかる本実施形態の医療用バッグ60においても挿入部46(挿入孔48)が設けられていることから、当該挿入部46(挿入孔48)に手指(44)を挿し入れることで前記第1の実施形態と同様に、医療用バッグ60を把持することができる。また、本実施形態では、前記第1の実施形態の如き引張タブ(32)は設けられていないが、第3のシート66の上端部分において幅方向に延びる挿入スリット70が設けられていることから、当該挿入スリット70に上方から、挿入部46に挿入される手指(44)と反対側(例えば、右手側)の手指を挿し入れて、第3のシート66を引っ張ることができるようになっている。このように第3のシート66を引っ張ることで第1のシート62も引っ張られ、第2のシート64と第1のシート62が離隔して、開口部18が大きく開かれるようになっている。
【0064】
本実施形態の医療用バッグ60においても保持部42が設けられて、当該保持部42に、医療用バッグ60を用いた薬液などの投与に際して付加的に必要となるシリンジなどの他部材が収容可能とされていることから、前記第1の実施形態と同様の効果が発揮され得る。
【0065】
次に、図8,9には、本発明の第3の実施形態としての医療用バッグ80が示されている。本実施形態の医療用バッグ80も、液状体収容領域12を構成する第1のシート82と第2のシート84と、第1のシート82の外面に固着される第3のシート86と、第2のシート84の外面に固着される第4のシート88とを備えている。本実施形態における第1および第2のシート82,84は、前記第2の実施形態における第1および第2のシート(62,64)と略同様の構造とされている。
【0066】
一方、本実施形態における第3および第4のシート86,88は、相互に略同形状とされており、第1および第2のシート82,84と略等しい幅方向寸法を有しているとともに、第1および第2のシート82,84の略半分程度の上下方向寸法を有している。なお、第3および第4のシート86,88の上下方向寸法は何等限定されるものではなく、例えば第1のシート82や第2のシート84と略等しい上下方向寸法を有していてもよいし、第3のシート86と第4のシート88の上下方向寸法とが、相互に異なっていてもよい。
【0067】
ここにおいて、本実施形態における第3のシート86は、単なる略矩形状の樹脂シートとされている一方、第4のシート88には、前記第1の実施形態と同様に、一対の挿入スリット36,36が形成されている。これにより、第2のシート84に対して第4のシート88が固着されることで、一対の挿入スリット36,36の対向間と第2のシート84との間には、幅方向に貫通する挿入部46が形成されるようになっている。また、当該挿入部46における幅方向両側の開口部において、実質的に手指(44)が挿入される挿入孔48が、挿入スリット36を含んで構成されるようになっている。
【0068】
以上の如き構造とされた第1、第2、第3、第4のシート82,84,86,88が、図10に示されるようにそれぞれ重ね合わされて熱溶着により同時に固着されることにより、本実施形態の医療用バッグ80が構成されている。すなわち、本実施形態においても、第1および第2のシート82,84における下辺部分および両側辺部分が相互に熱溶着により固着されることで、上端縁(上辺部分)に開口部18を有する液状体収容領域12が形成されている。
【0069】
また、第4のシート88は、第2のシート84に対して、上辺部分および幅方向両側辺部分で固着されている。なお、本実施形態では、第1のシート82と第2のシート84とが相互に熱溶着により固着される際に、同時に第4のシート88も固着されており、第4のシート88の上辺部分において第1のシート82と第2のシート84とが相互に固着されないように、第1のシート82と第2のシート84との間には障壁部材(溶着阻止シート)が設けられる。尤も、第4のシート88は、第2のシート84に対して、例えば周方向の全周に亘って固着されてもよい。尤も、第1のシート82と第2のシート84とが固着される前に、第2のシート84と第4のシート88とが相互に固着されてもよい。
【0070】
一方、第3のシート86は、第1のシート82の外面に対して、下辺部分および両側辺部分の三方で固着されている。すなわち、第3のシート86における上辺部分は、第1のシート82に対して非固着とされており、これら第3のシート86の上辺部分と第1のシート82との間には開放口90が形成されている。そして、第1のシート82と第3のシート86との間には、当該開放口90を上方の開口とする保持部42が形成されている。これにより、保持部42の内部空間が、開放口90を通じて外部空間に連通している。なお、本実施形態においても、第1のシート82と第2のシート84との熱溶着と同時に、第1のシート82に対して第3のシート86が固着されている。かかる熱溶着の際には、第3のシート86の下辺部分において第1のシート82と第2のシート84とが相互に固着しないように、第1のシート82と第2のシート84との間に、両シート82,84の固着を阻害する障壁部材(溶着阻止シート)が設けられる。尤も、第1のシート82と第2のシート84とが固着される前に、第1のシート82と第3のシート86とが相互に固着されてもよい。
【0071】
以上の如き構造とされた本実施形態における医療用バッグ80においても、上方に開口(開放口90)を有する保持部42が設けられることから、当該保持部42に、医療用バッグ80による薬液投与に際して付加的に必要となるシリンジなどの部材を収容することができる。それ故、本実施形態においても、前記第1の実施形態などと同様の効果が発揮され得る。
【0072】
特に、本実施形態では、第1のシート82において、前記第1の実施形態における引張タブ(32)や吊下部(26)は設けられていないが、第1のシート82と第3のシート86との間に、上方に開放口90を有する保持部42が設けられている。これにより、医療用バッグ80を把持する側と反対側(例えば、右手側)の手指を開放口90から保持部42内に挿入して引っ張ることで、開口部18を大きく開くことができるようになっている。すなわち、本実施形態では、シリンジなどを収容することのできる保持部42を巧く利用して、引張タブ(32)や吊下部(26)を設けることなく開口部18を安定して開くことができるようになっている。尤も、かかる保持部42には、前記第2の実施形態に記載の如き挿入スリット(70)が設けられてもよい。
【0073】
次に、図11,12には、本発明の第4の実施形態としての医療用バッグ100が示されている。本実施形態においても、相互に重ね合わされて固着される第1のシート102と第2のシート104との重ね合わせ面間に液状体収容領域12が形成されている。本実施形態では、第1のシート102の外面に第3のシート106が重ね合わされて固着されているとともに、第2のシート104の外面における下側部分にも第3のシート108が重ね合わされて固着されて、更に、第2のシート104の外面における上側部分に第4のシート110が重ね合わされて固着されている。
【0074】
本実施形態の第1および第2のシート102,104は、相互に略同形状とされており、前記第1の実施形態の第1および第2のシート(14,16)と同様の材質により形成される一方、これら両シート(14,16)とは形状が異ならされている。すなわち、本実施形態の第1および第2のシート102,104では、下側部分に比べて上側部分の幅方向寸法が小さくされている。そして、本実施形態においても、これら第1および第2のシート102,104の下辺部分および幅方向両側辺部分が熱溶着により相互に固着されることにより、上端縁(上辺部分)が開口部18とされた液状体収容領域12が形成されている。
【0075】
また、本実施形態では、第3のシート106,108が、相互に略同形状とされており、それぞれ略矩形状の樹脂シートとされている。特に、本実施形態では、これら第3のシート106,108の上下方向寸法および幅方向寸法が、第1および第2のシート102,104の下側部分と略等しくされている。
【0076】
一方、本実施形態の第4のシート110は、上下方向に延びる略矩形状とされており、当該第4のシート110の上下方向寸法および幅方向寸法がそれぞれ、第2のシート104の上側部分の上下方向寸法および幅方向寸法よりも小さくされている。かかる第4のシート110は、例えば第1および第2のシート102,104と同様の軟質の合成樹脂により形成されて、透光性を有することが好ましいが、透光性を有していなくてもよい。
【0077】
この第4のシート110は、第2のシート104の上側部分に対して、上辺部分と下辺部分が固着されている一方、幅方向両側辺部分が固着されないで開放されている。これにより、第2のシート104と第4のシート110との間には、幅方向に貫通する挿入部112が形成されている。すなわち、本実施形態では、かかる挿入部112が、第2のシート104側に設けられている。そして、当該挿入部112における幅方向両側の開口部が、第2のシート104と第4のシート110との間に形成される挿入孔114,114とされている。本実施形態では、当該第4のシート110が、第2のシート104の上側部分における幅方向中央部分で且つプラスチックファスナー20の固着部分を上下に跨いで設けられており、プラスチックファスナー20の外側(図2中の紙面手前側)に挿入部112が位置している。
【0078】
一方、第3のシート106,108は、それぞれ第1および第2のシート102,104の下側部分に対して、下辺部分および幅方向両側辺部分が固着されている。すなわち、第3のシート106,108は、それぞれの上辺部分において、第1および第2のシート102,104に対して非固着とされている。かかる第3のシート106,108が第1および第2のシート102,104に固着されることにより、第3のシート106と第1のシート102との間、および第3のシート108と第2のシート104との間には、上方に開放口116を有する保持部42が形成されるようになっている。
【0079】
本実施形態では、かかる第3および第4のシート106,108,110および引張タブ32は、第1および第2のシート102,104に対して、図13に示される状態で重ね合わされて熱溶着により固着されている。特に、本実施形態では、第3のシート106,108が、第1のシート102と第2のシート104との固着と同時に固着されているとともに、第4のシート110および引張タブ32が、第1のシート102と第2のシート104との固着と同時に、或いは別途固着されている。なお、第4のシート110および引張タブ32の熱溶着時には、溶着部位において第1のシート102と第2のシート104とが固着しないように、第1のシート102と第2のシート104との間に、例えば溶着阻止シートが挟まれる。
【0080】
本実施形態の医療用バッグ100は、図14に示されるように、第2のシート104に設けられた挿入部112における一方の挿入孔114に対して横方から手指44を挿し入れて、幅方向寸法が小さくされた上側部分を握るようにして把持されるようになっている。
【0081】
かかる状態から、挿入部112(挿入孔114)に挿し入れられる手指44と反対側(即ち、本実施形態では右手側)の手指で引張タブ32を摘んで引っ張ることで、第1のシート102の上側部分が引っ張られることから、第1のシート102と第2のシート104とが相互に離隔して、開口部18が大きく開かれるようになっている。これにより、開口部18を通じて、液状体収容領域12内に液状体を注入することができて、ポート部材24および当該ポート部材24に接続されるカテーテルなどを通じて体内に薬液などの液状体が投与されるようになっている。
【0082】
以上の如き構造とされた本実施形態の医療用バッグ100においても、保持部42が設けられることから、医療用バッグ100を用いた薬液などの投与に際して付加的に必要となるシリンジなどの部材を当該保持部42に収容することができて、前記第1の実施形態などと同様の効果が発揮され得る。
【0083】
次に、図15,16には、本発明の第5の実施形態としての医療用バッグ120が示されている。本実施形態においても、第1のシート122と第2のシート124とが相互に重ね合わされて固着されて液状体収容領域12が構成されている。特に、本実施形態では、第2のシート124の内面に第3のシート126が重ね合わされて固着されている一方、第2のシート124の外面に第4のシート128が重ね合わされて固着されている。なお、本実施形態における第1および第2のシート122,124は、前記第4の実施形態における第1および第2のシート(102,104)と、それぞれ略同形状とされている。また、本実施形態における第4のシート128は、前記第4の実施形態における第4のシート(110)と略同形状とされている。
【0084】
ここで、本実施形態の第2のシート124において、上下方向中間部分、具体的には第4のシート128よりも下方には、幅方向に延びて、第2のシート124を貫通するスリットとしての開口スリット130が形成されている。
【0085】
また、本実施形態における第3のシート126は、略矩形状の樹脂シートとされており、第2のシート124の下側部分と略等しい上下方向寸法と幅方向寸法を有している。そして、かかる第3のシート126が、第2のシート124の内面に対して、開口スリット130と上下方向で重なる位置に固着されている。すなわち、第3のシート126が、第2のシート124の内面に対して、開口スリット130を跨ぐように固着されている。
【0086】
本実施形態では、第3のシート126が、第2のシート124の内面に対して、上辺部分、下辺部分、および幅方向両側辺部分、即ち周囲の4辺において固着されており、これにより、第2のシート124と第3のシート126との重ね合わせ面間には、外部空間から遮断された閉状領域132が形成されている。そして、かかる閉状領域132が、開口スリット130を通じて外部に開放されている。これにより、第2のシート124と第3のシート126との間には、開口スリット130を上方の開口とする保持部42が形成されている。
【0087】
なお、本実施形態において、かかる第3のシート126は、第1のシート122と第2のシート124との熱溶着と同時に、第2のシート124に対して熱溶着により固着される。かかる熱溶着時には、第3のシート126における上辺部分および下辺部分と第1のシート122とが相互に固着しないように、第3のシート126における上辺部分および下辺部分と第1のシート122との間に溶着阻止シートが挟まれる。尤も、第3のシート126は、第1のシート122と第2のシート124との固着前に、第2のシート124に対して固着されていてもよい。
【0088】
以上の如き構造とされた本実施形態の医療用バッグ120においても、保持部42が形成されて、当該保持部42に対して、医療用バッグ120を用いた薬液などの投与に際して付加的に必要となるシリンジなどの部材を収容することができることから、前記第1の実施形態などと同様の効果が発揮され得る。
【0089】
次に、図18,19には、本発明の第6の実施形態としての医療用バッグ140が示されている。本実施形態の医療用バッグ140は、液状体収容領域12を構成する第1のシート142と第2のシート144とを備えている。そして、第1のシート142の内面に第3のシート146が固着されている一方、第2のシート144の内面に第4のシート148が固着されている。本実施形態の第1および第2のシート142,144は、吊下部(26)が設けられていない点を除いて、前記第1の実施形態の第1および第2のシート(14,16)と略同様の構造とされている。
【0090】
また、本実施形態の第3および第4のシート146,148は、相互に略同形状とされており、それぞれ略矩形状とされている。これら第3および第4のシート146,148は、第1および第2のシート142,144の略半分程度の上下方向寸法を有しているとともに、第1および第2のシート142,144と略等しい幅方向寸法を有している。そして、かかる第3のシート146の内面に凸条20aが設けられている一方、第4のシート148の内面に凹溝20bが設けられている。なお、これら凸条および凹溝20a,20bは、第3および第4のシート146,148に対して一体的に形成されてもよいし、別体として形成されて後固着されてもよい。本実施形態の図では、前記第1の実施形態のプラスチックファスナー(20)と同様に、凸条および凹溝20a,20bが、第3および第4のシート146,148に対してシート状部21,21において後固着されているが、シート状部21,21を設けることなく凸条および凹溝20a,20bを第3および第4のシート146,148に直接固定することで製造上のシートの数を少なくすることができる。
【0091】
ここで、第2のシート144における第4のシート148との重ね合わせ部分には、前記第1の実施形態における第3のシート(34)の上側部分と同様に、一対の挿入スリット36,36が形成されている。これにより、第2のシート144と第4のシート148との固着時には、挿入スリット36,36の対向間と第4のシート148との間において、手指(44)を挿入する挿入部46が形成されるとともに、挿入部46の幅方向両側の開口部が、挿入スリット36を含んで構成される挿入孔48とされる。そして、かかる挿入部46が、プラスチックファスナー20を上下に跨ぐ状態で、プラスチックファスナー20の外側に形成されている。なお、本実施形態では、第2のシート144に対して第4のシート148における周囲の4辺(全周縁)が溶着されている。
【0092】
本実施形態の医療用バッグ140は、図20に示されるように、第1、第2、第3、第4のシート142,144,146,148をそれぞれ重ね合わせて熱溶着により固着することで形成される。すなわち、本実施形態では、第3のシート146が第1のシート142に固着されることで当該第3のシート146により第1のシート142の内面が部分的に構成されているとともに、第4のシート148が第2のシート144に固着されることで当該第4のシート148により第2のシート144の内面が部分的に構成されている。そして、かかる第1のシート142と第2のシート144とが、第3および第4のシート146,148を部分的に挟んで、下辺部分および幅方向両側辺部分において固着されることで、これら第1のシート142と第2のシート144との間に、上方に開口部18を有する液状体収容領域12が形成されている。すなわち、液状体収容領域12の下側部分が、第1のシート142と第2のシート144との間に形成されているとともに、液状体収容領域12の上側部分が、第3のシート146と第4のシート148との間に形成されている。
【0093】
また、本実施形態では、第1のシート142の内面に対して、第3のシート146の下辺部分および幅方向両側辺部分が固着されており、これにより、第1のシート142と第3のシート146との間には、上方に開放口150を有する保持部42が形成されている。なお、本実施形態の医療用バッグ140では、第3のシート146に引張タブ32が設けられている。尤も、かかる引張タブを設けることなく、挿入部46に手指(44)を挿入して医療用バッグ140を把持した状態で、保持部42の開放口150に反対側の手指を挿し入れて引っ張ることで、開口部18を大きく開くことも可能である。
【0094】
以上の如き構造とされた本実施形態の医療用バッグ140においても、薬液の投与などに際して付加的に必要となるシリンジなどの部材を収容することのできる保持部42が形成されることから、前記第1の実施形態などと同様の効果が発揮され得る。なお、本実施形態においては、前記第1の実施形態などと同様に4本の手指(44)を挿し入れることを想定して挿入スリット36が比較的大きく形成されているが、挿し入れられる手指(44)の本数を少なくするなど、挿入スリット36を小さく形成して第3のシート146の上下端縁部をプラスチックファスナー20に近づけることで、開口形状の安定性の更なる向上を図ることもできる。
【0095】
特に、本実施形態では、第1および第2のシート142,144においては、溶着用のシーラント層を片面(内面)のみに設ければよいことから、必要とされるシーラント材やシーラント処理を少なくすることができる。また、医療用バッグ140の外面の略全体が、第1のシート142と第2のシート144により構成されて、第3および第4のシート146,148など他の樹脂シートと重なることがないようになっている。これにより、第1のシート142や第2のシート144の外面に施される印刷などが見えにくくなることが回避されて、使用者に綺麗な外観の印象を与えることができることに加えて、印刷デザインに統一感を与えることも可能となる。
【0096】
次に、図21,22には、本発明の第7の実施形態としての医療用バッグ160が示されている。本実施形態における医療用バッグ160の構造は、前記第6の実施形態における医療用バッグ(140)の構造と同様とされており、液状体収容領域12を構成する第1のシート162と第2のシート164と、第1のシート162の内面に固着される第3のシート166と、第2のシート164の内面に固着される第4のシート168とを備えている。
【0097】
なお、本実施形態における第1および第2のシート162,164も、前記第1の実施形態における第1および第2のシート(14,16)と略同様の構造とされている。また、本実施形態では、第1のシート162の内面に凸条20aが設けられているとともに、第2のシート164の内面に凹溝20bが設けられて、プラスチックファスナー20が実現されている。
【0098】
本実施形態では、第3および第4のシート166,168の上下方向寸法が、前記第6の実施形態における第3および第4のシート(146,148)の上下方向寸法よりも小さくされている。すなわち、本実施形態では、第1および第2のシート162,164の上側部分において、凸条20aおよび凹溝20bよりも上方に第3および第4のシート166,168が位置している。
【0099】
また、本実施形態においても、第2のシート164に一対の挿入スリット36,36が設けられており、これら一対の挿入スリット36,36の対向間と第4のシート168との間に挿入部46が形成されているとともに、当該挿入部46の幅方向両側開口部が挿入孔48,48とされている。なお、本実施形態では、挿入部46を下方に外れた位置にプラスチックファスナー20が位置しており、挿入部46の外側にはプラスチックファスナー20が位置していない。
【0100】
そして、かかる第1、第2、第3、第4のシート162,164,166,168が、図23のようにそれぞれ重ね合わされて熱溶着により固着されることにより、本実施形態の医療用バッグ160が構成されている。すなわち、本実施形態においても、第1および第2のシート162,164における下辺部分および幅方向両側辺部分が相互に固着されることにより、上端に開口部18を有する液状体収容領域12が形成されている。また、本実施形態では、第1のシート162に対して第3のシート166の上辺部分、下辺部分および幅方向両側辺部分が固着されている。特に本実施形態では、幅方向一方(図21の右方)における固着部位において部分的に開口部が形成されており、当該開口部により側方に開口する開放口150が構成されている。これにより、第1のシート162と第3のシート166との間には幅方向一方の側辺部分に開放口150を有する保持部42が形成されている。
【0101】
以上の如き構造とされた本実施形態の医療用バッグ160においても、薬液の投与などに際して付加的に必要となるシリンジなどの部材を収容することのできる保持部42が形成されることから、前記第1の実施形態などと同様の効果が発揮され得る。
【0102】
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明はかかる実施形態における具体的な記載によって限定的に解釈されるものでなく、当業者の知識に基づいて種々なる変更、修正、改良などを加えた態様で実施可能である。
【0103】
たとえば、前記第1の実施形態などでは、第3のシート34の下辺部分が、第1および第2のシート14,16の下辺部分において、全長に亘って重ね合わされて一体的に溶着されていたが、かかる態様に限定されるものではない。すなわち、図24に示される医療用バッグ180のように、第3のシート182の下辺部分が、第1および第2のシート184,186の下辺部分よりも幅方向寸法が小さくされて、第1および第2のシート184,186の下辺部分における幅方向中央部分に溶着されてもよい。なお、図24に示される態様では、第3のシート182が、第1のシート184の外面に重ね合わされて、下辺部分および幅方向両側辺部分が相互に固着されており、第1のシート184と第3のシート182との間において、上方に開放口188を有する保持部42が形成されている。
【0104】
なお、第3のシート182の下辺部分は、第1および第2のシートの下辺部分に重ね合わされる必要はなく、図25に示される医療用バッグ190のように、第1または第2のシート(図25中では第1のシート184)の上下方向中間部分に重ね合わされて固着されてもよい。かかる態様において、第3のシート182における下辺部分と幅方向両側辺部分とは直線状に接続されている必要はなく、本態様に示されるように曲線状に接続されてもよい。また、図25に示される態様において、第3のシート182の下辺部分は、熱溶着以外の、例えば接着などの固着手段により固着されてもよい。
【0105】
尤も、第3のシートの下辺部分は、第1または第2のシートに固着されている必要はなく、図26に示される医療用バッグ192のように、略帯状の第3のシート194が採用されて、第3のシート194の幅方向両側辺部分が第1および第2のシート184(186)の幅方向両側辺部分に重ね合わされて一体的に溶着されるようになっていてもよい。なお、本態様では、第3のシート194と第1のシート184との間において、横長で略帯状の保持部196が構成されており、当該略帯状の保持部196において、シリンジなどの付加的に必要とされる部材を第1のシート184と第3のシート194で挟むように保持することが可能となっている。また、かかる態様では、横長の保持部196の幅方向中間部分における1箇所または複数箇所が第1のシート184(または第2のシート186)に対して、接着や溶着により固着されてもよく、横長の保持部196が幅方向で複数に仕切られて、個々が縦長の保持部196aとなっていてもよい。かかる場合には、シリンジにおいて幅広とされる、例えばシリンジの指掛部を、仕切られて縦長とされる保持部156aに引っ掛けるように保持させてもよい。
【0106】
さらに、図27に示される医療用バッグ200のように、保持部202の開口部204が、幅方向に対して傾斜して延びていてもよい。すなわち、第3のシートの上辺部分が幅方向に対して傾斜して延びてもよいし、第3のシートに形成されるスリットとしての開口スリットが幅方向に対して傾斜して延びてもよい。同様に、保持部(第3のシート)の下辺部分が幅方向に対して傾斜して延びてもよく、保持部の形状は何等限定されるものではない。
【0107】
また、本発明では、保持部の形成される位置や個数なども何等限定されるものではない。すなわち、例えば保持部を、1つの面(例えば、第1または第2のシートの内面や外面)に対して上段部分と下段部分などのように、上下方向に複数設けることも可能である。さらに、例えば第1のシートの内面側と外面側とに第3のシートを配することで、第1のシートの内面側と外面側との両方にそれぞれ保持部を形成することも可能である。また、例えば第1のシートに対して第3のシートを重ね合わせて保持部を形成するとともに、第2のシートに対しても第3のシートを重ね合わせて保持部を形成してもよい。
【0108】
更にまた、前記実施形態では、第1のシート14,62,82,102,122,142,162および第2のシート16,64,84,104,124,144,164に対して、別体とされた凸条20aおよび凹溝20bが固着されていたが、これらは一体的に形成されてもよい。すなわち、第1のシートおよび第2のシートが部分的に厚肉とされたり薄肉とされることで、プラスチックファスナーを構成する凸条や凹溝が形成されてもよい。
【0109】
尤も、液状体収容領域を開閉する部材は、前記実施形態の如きプラスチックファスナー20に限定されるものではなく、プラスチックファスナーに代えて、または加えて、面状に広がる面ファスナーや点状の凹凸などが採用されもよい。なお、かかる液状体収容領域を開閉する部材は必須なものではないが、液状体収容領域を開閉する部材を設けることで薬液などの液状体への落下菌の混入などが防止され得る。
【0110】
さらに、前記実施形態では、第1のシート14,62,82,102,122,142,162および第2のシート16,64,84,104,124,144,164が、略同じ形状、且つ同じ材質で形成されていたが、第1のシートと第2のシートとは相互に異なる形状とされてもよいし、相互に異なる材質で形成されてもよい。更にまた、これら第1のシートおよび/または第2のシートは、部分的に異なる材質で形成されてもよく、例えば部分的に変形剛性が大きくされたり小さくされてもよい。同様に、第3、第4のシートなども、部分的に異なる材質で形成されてもよい。すなわち、医療用バッグを構成する各シートは、単一の層で形成されるものに限定されず、例えば印刷層や溶着層(シーラント層)が積層されるなどしてもよく、備えさせたい機能に従って積層した構造とされてもよい。
【0111】
また、前記第3の実施形態など、第3のシートと第4のシートが設けられる場合には、第3のシートと第4のシートの何れもが、第1および第2のシートに対して熱溶着されていたが、第4のシートは、例えば熱溶着以外の溶着や接着など、従来公知の固着手段が何れも採用され得る。
【0112】
さらに、前記実施形態では、目盛り30が、第1のシート14,62,82,102,122,142,162の外面に付されていたが、第1のシートは透明であることから、目盛りは、第1のシートの外面に代えて内面に対して付されてもよいし、第1のシートの外面と内面の両方に付されてもよい。また、第1のシートに代えて第2のシートに目盛りを設けてもよいし、第1のシートと第2のシートの両方に目盛りを設けてもよい。なお、第2のシートに目盛りが設けられる場合でも、第2のシートの外面と内面の何れに設けられてもよい。さらに、第2のシートに目盛りを設ける場合には、医療用バッグを背面から見て液状体の収容量を把握することができるように目盛りを設けることが好適であるが、第1および第2のシートが透明であることから、目盛りが正面から見えるように付されてもよい。
【0113】
更にまた、前記第1の実施形態では、吊下部26(係止孔28)やポート部材24が、第1および第2のシート14,16の幅方向中央部分に設けられており、医療用バッグ10がスタンドに吊り下げられた際に下方に真っ直ぐ延びるようになっていた。また、これにより、第1のシート14に付される目盛り30を構成する直線なども、医療用バッグ10が真っ直ぐ吊り下げられた際に見やすいように幅方向に延びていたが、かかる態様に限定されない。すなわち、係止孔は、第1および/または第2のシートの上端部分において幅方向一方に設けられるとともに、ポート部材が、第1および第2のシートの下端部分において幅方向他方に設けられてもよい。これにより、医療用バッグは、スタンドに、上下方向に対して傾斜して吊り下げられ得る。かかる場合には、目盛りを構成する直線などは、見やすいように、医療用バッグの吊下方向に対応して、幅方向に対して傾斜して延びていてもよい。
【0114】
また、前記実施形態では、手指44を挿入する挿入孔48,114が幅方向で対向して一対設けられて、横方の両方向から手指が挿し入れられるようになっていたが、挿入孔は、少なくとも1つ設けられればよい。例えば挿入孔が1つしか設けられない場合、手指は、横方のうちの一方向からしか挿し入れられないようになっていてもよいし、例えば前記第1~第3、第6、第7の実施形態において、挿入スリット36(挿入孔48)が、裏面側に設けられる第3または第4のシート34,66,88,148,168の幅方向中央部分に形成されることで、横方の両方向から手指が挿し入れられるようになっていてもよい。
【0115】
さらに、前記実施形態では、挿入孔48,114が一対設けられて、一方の挿入孔48,114(図2,6,9,12,16,19,22中、右方)から手指44が挿入されて、他方の挿入孔48,114(図2,6,9,12,16,19,22中、左方)から手指44の先端が突出していたが、挿入孔(スリット)は1つだけ設けられて、当該挿入孔(スリット)を通じて手指が挿し入れられるとともに、手指の先端は、第3のシートまたは第4のシートにより外側から覆われるようになっていてもよい。また、挿入孔(挿入スリット)が一対設けられる場合であっても、手指の先端は、他方の挿入孔(挿入スリット)から突出することなく、第3または第4のシートにより外側から覆われてもよい。
【0116】
更にまた、前記第1,第4の実施形態では、引張タブ32が、第1のシート14,102に対して上辺部分で固着されて、下辺部分を摘んで引っ張ることが可能とされていたが、かかる態様に限定されるものではない。すなわち、例えば引張タブの上辺部分と下辺部分が固着されて、第1のシートと引張タブとの間に幅方向に貫通する貫通孔が形成されてもよく、当該貫通孔に手指を挿入することで、引張タブおよび第1のシートを引っ張ることができるようになっていてもよい。
【0117】
なお、前記実施形態では、手指44が挿入される挿入部46,112が医療用バッグ10,60,80,100,120,140,160の表裏のうち裏側に設けられていたが、例えば医療用バッグの表側に設けたり、医療用バッグの表側と裏側の両方に設けてもよく、手指が挿入される挿入部(挿入孔)の構成は何等限定されるものではない。尤も、本発明に係る医療用バッグにおいて、挿入部(挿入孔)は必須なものではなく、医療用バッグを外側から握るように把持してもよい。
【0118】
また、前記第1の実施形態などでは、第3のシート34の幅方向寸法が、第1および第2のシート14,16の幅方向寸法と略等しくされて、第3のシート34の幅方向両側辺部分が第1および第2のシート14,16の幅方向両側辺部分に溶着されていたが、かかる態様に限定されるものではない。すなわち、例えば第3のシートの幅方向寸法が、第1および第2のシートの幅方向寸法より大きくされて、第3のシートを弛ませた(幅方向で湾曲した)状態で、第3のシートの幅方向両側辺部分が、第1および第2のシートの幅方向両側辺部分に溶着されてもよい。なお、第4のシートが設けられる場合、第4のシートの幅方向寸法は、第1および第2のシートよりも小さくされてもよく、例えば第4のシートが、第1および第2のシートの中央部分に形成されてもよい。
【0119】
更にまた、図5~6に示された前記第2の実施形態において、第1のシート62と第2のシート64との間に設けられていたプラスチックファスナー20を、第1のシート62と第2のシート64の何れかと第3のシート66(68)との間に設けることも可能である。具体的には、例えば図28~29に示されているように、前記第2の実施形態における第2のシート64のプラスチックファスナー(凹溝)20b部分を無くした高さの小さいシートを、第2のシート210として採用すると共に、前記第2の実施形態における第3のシート68にプラスチックファスナー(凹溝)20b部分を設けたシートを、第3のシート212として採用する。なお、かかる第3のシート212における挿入スリット36や開口スリット38の形成は任意である。このような構造とされた医療用バッグ214では、第2の実施形態と同様に第1のシート62と第2のシート210との重ね合わせ面間に液状体収容領域12が形成されると共に、第2のシート210と第3のシート212との間に他部材の保持部42が形成される。そして、第1のシート62と第3のシート212との間に設けられたプラスチックファスナー(凸条および凹溝)20a,20bを開くことにより、液状体収容領域12の上方への開口部が外部空間に開放されて、液状体を上方から注ぎ入れることができると共に、他部材の保持部42の上方への開口部が外部空間に開放されて、(たとえ開口スリット38が形成されていなくても)他部材を上方から保持部42へ投入して収容することが可能になる。なお、第3のシート212に開口スリット38が形成される場合には、第2のシート210の上辺部は、第3のシート212に対して、例えばプラスチックファスナー(凹溝)20bの下方のシート状部21や更にその下方で溶着されていても良い。
また、本発明はもともと以下に記載の発明を含むものであり、その構成および作用効果に関して、付記しておく。
(i) 互いに重ね合わされた第1のシートと第2のシートが下辺部分と両側辺部分で互いに溶着されており、該第1のシートと該第2のシートの重ね合わせ面間に液状体収容領域が上方に開口して形成されている医療用バッグにおいて、前記第1のシートと前記第2のシートの少なくとも一方に第3のシートが重ね合わされて、該第1及び第2のシートの両側辺部分において該第3のシートの両側辺部分が一体的に溶着されており、該第3のシートと該第1又は第2のシートとの重ね合わせ面間に他部材の保持部が形成されていることを特徴とする医療用バッグ、
(ii) 前記第1及び第2のシートの下辺部分において前記第3のシートの下辺部分が重ね合わされて一体的に溶着されている(i)に記載の医療用バッグ、
(iii) 前記第3のシートが前記第1又は第2のシートにおける内面と外面との少なくとも一方に重ね合わされていると共に、該第3のシートの上辺部分又は側辺部分において該第1又は第2のシートに対して非固着とされて開放口が形成されている(i)又は(ii)に記載の医療用バッグ、
(iv) 前記第3のシートが前記第1又は第2のシートにおける内面と外面との少なくとも一方に重ね合わされており、該第3のシートの上辺部分及び下辺部分が該第1又は第2のシートに対して固着されることで該第3のシートと該第1又は第2のシートとの重ね合わせ面間に閉状領域が形成されていると共に、該第1又は第2のシートにスリットが設けられて該閉状領域が外部に開放されることで前記保持部が構成されている(i)~(iii)の何れか1項に記載の医療用バッグ、
(v) 前記第3のシートが前記第1のシートと前記第2のシートの一方のみに重ね合わされていると共に、該第1のシートと前記第2のシートの他方には目盛りが表示されている(i)~(iv)の何れか1項に記載の医療用バッグ、
に関する発明を含む。
上記(i)に記載の態様に従う構造とされた医療用バッグによれば、他部材を保持することのできる保持部が形成されることから、当該保持部に、シリンジなどの付加的に必要とされる部材を収容することができる。また、保持部を構成する第3のシートの両側辺部分が、第1および第2のシートが重ね合わされて溶着されることで実質的に2枚分の樹脂シートの厚さ寸法を有する部分に対して一体的に溶着されることから、例えば第1または第2のシートの中央部分だけに別シートが重ね合わされて周縁部分を固着されることによりポケットが形成される場合に比べて、保持部の両側辺部分の固着部位における強度を向上させることができて、強度不足や損傷のおそれが低減され得る。さらに、第3のシートが、第1および第2のシートの幅方向の全体に亘って重ね合わされて配されることから、例えば第1または第2のシートの中央部分だけに別シートが重ね合わされてポケット部が形成される場合に比して、第3のシートを溶着することに伴う、第1または第2のシートの幅方向中間部分のいびつな変形を回避または低減することもできる。
上記(ii)に記載の態様に従う構造とされた医療用バッグによれば、保持部の下辺部分の固着部位においても、その少なくとも一部が、実質的に2枚分の樹脂シートの厚さ寸法を有する部分に一体的に溶着されることから、強度不足や損傷のおそれが一層低減され得る。
上記(iii)に記載の態様に従う構造とされた医療用バッグによれば、第1または第2のシートの内面や外面に設けられる保持部の上方や側方の開口が、開放口をもって容易に形成され得る。
上記(iv)に記載の態様に従う構造とされた医療用バッグによれば、第1または第2のシートの内面や外面に設けられる保持部の開口が、スリットをもって容易に形成され得る。
上記(v)に記載の態様に従う構造とされた医療用バッグによれば、仮に第3のシートが有色であったり表示部を備えていたり、第1又は第2のシートの外側に重ね合わされているような場合でも、目盛りの視認性に対する第3のシートの悪影響を軽減乃至は回避することが可能になる。
【符号の説明】
【0120】
10,60,80,100,120,140,160,180,190,192,200,214:医療用バッグ、12:液状体収容領域、14,62,82,102,122,142,162,184:第1のシート、16,64,84,104,124,144,164,186,210:第2のシート、30:目盛り、34,66,68,86,106,108,126,146,166,182,194,212:第3のシート、42,196,196a,202:保持部、44:手指、90,116,150,188:開放口、130:開口スリット(スリット)、132:閉状領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
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図15
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図17
図18
図19
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図22
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図29