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特許7333034無線RF伝送する方法及び無線RF受信機
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-16
(45)【発行日】2023-08-24
(54)【発明の名称】無線RF伝送する方法及び無線RF受信機
(51)【国際特許分類】
   H04W 72/54 20230101AFI20230817BHJP
   H04W 72/0446 20230101ALI20230817BHJP
   H04W 72/0453 20230101ALI20230817BHJP
   H04W 72/541 20230101ALI20230817BHJP
   H04W 84/10 20090101ALI20230817BHJP
【FI】
H04W72/54 110
H04W72/0446
H04W72/0453
H04W72/541
H04W84/10
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2020569031
(86)(22)【出願日】2019-07-03
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-10-28
(86)【国際出願番号】 EP2019067851
(87)【国際公開番号】W WO2020007914
(87)【国際公開日】2020-01-09
【審査請求日】2022-04-01
(31)【優先権主張番号】18182173.7
(32)【優先日】2018-07-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】517042368
【氏名又は名称】アールティーエックス アー/エス
(74)【代理人】
【識別番号】100166006
【弁理士】
【氏名又は名称】泉 通博
(74)【代理人】
【識別番号】100154070
【弁理士】
【氏名又は名称】久恒 京範
(74)【代理人】
【識別番号】100153280
【弁理士】
【氏名又は名称】寺川 賢祐
(72)【発明者】
【氏名】ペーターセン、 イェンス トフガール
(72)【発明者】
【氏名】モールテンセン、 フレミング
【審査官】松野 吉宏
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2012/0310394(US,A1)
【文献】特開2001-285142(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0116460(US,A1)
【文献】特表2015-532815(JP,A)
【文献】特開2015-154118(JP,A)
【文献】国際公開第2015/041874(WO,A1)
【文献】特開2005-210703(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0183042(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/24 - 7/26
H04W 4/00 - 99/00
3GPP TSG RAN WG1-4
SA WG1-4
CT WG1、4
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイミングマスターである親機(FP)とタイミングスレーブである1つ又は複数の子機(PP)との間でデータパケット内のデジタルオーディオ信号を含むデジタル信号(D_I)を無線RF伝送する方法であって、前記無線RF伝送において伝送される前記デジタル信号はそれぞれが1つ又は複数のタイムスロットを含むフレームを含み、前記方法は、
-前記親機(FP)により、1つの限られた周波数帯の中の少なくとも3つのサポートするチャネルの組の間で走査を行うこと(SC_SCH)と、
-前記親機(FP)により、前記走査に応答して、前記サポートするチャネルのうちの少なくとも複数での干渉レベルの測定値を収集すること(C_FP_IL)と、
-前記親機(FP)内の選択アルゴリズムにより、前記サポートするチャネルのうちの前記複数での前記干渉レベルの測定値に応答して、前記サポートするチャネルの組から第1RFベアラ及び第2RFベアラのそれぞれに対して異なる第1周波数及び第2周波数(F1、F2)を選択すること(S_F1_F2)と、
-前記第1RFベアラ及び前記第2RFベアラの両方において、1つのフレームで、同一のデータパケットを前記親機(FP)から前記1つ又は複数の子機(PP)へ送信すること(T_FRM_F1_F2)と、
を含み、
前記同一のデータパケットが少なくとも2回送信される前記1つのフレームには、前記第1RFベアラ及び前記第2RFベアラの周波数を走査するための少なくとも1つのタイムスロットが含まれている、方法。
【請求項2】
前記選択アルゴリズムは、最も低い干渉レベルの測定値を有するRFベアラとして示される前記第1周波数及び前記第2周波数(F1、F2)を決定するよう構成される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記サポートするチャネルのうちの前記複数での前記干渉レベルの測定値を収集することは、前記親機(FP)により、前記サポートするチャネルのうちの前記複数のそれぞれのRFベアラに対するそれぞれの周波数帯でのRF活動のレベルを測定することを含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記サポートするチャネルのうちの前記複数での前記干渉レベルの測定値を収集することは、前記1つ又は複数の子機(PP)から前記親機(FP)へ報告された、前記サポートするチャネルのうちの複数に対して測定されたRSSIレベルを含むチャネル品質指標値を示す測定データを収集することを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記選択アルゴリズムはさらに、前記サポートするチャネルのうちの複数に対するパケットエラーレートを求め、前記パケットエラーレートに応答して第1周波数及び第2周波数(F1、F2)を選択するよう構成され、前記親機(FP)は、前記サポートするチャネルのそれぞれに対する前記パケットエラーレートの統計値を、前記子機(PP)から受信したパケット確認ビットに対して作用するデジタル無限インパルス応答フィルタ処理の実行により計算する、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記選択アルゴリズムは、
1)前記サポートするチャネルのうちの複数のそれぞれに対するRFベアラのそれぞれの周波数帯でのRF活動のレベル、
2)前記1つ又は複数の子機(PP)から前記親機(FP)へ報告された、前記サポートするチャネルのうちの複数に対して測定されたチャネル品質指標値を示す測定データ、
3)現在使用されているRFベアラと、前記サポートするチャネルのうちの別のチャネルとの間の周波数距離、
4)前記サポートするチャネルのうちの複数に対して収集されたパケットエラーレート、
のうちの2つ以上の組み合わせに応答して、前記第1周波数及び前記第2周波数(F1、F2)を選択するよう構成される、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
フレームは、前記第1RFベアラでの前記データパケットのRF伝送に割り当てられる第1部分と、前記第2RFベアラでの前記データパケットのRF伝送に割り当てられる第2部分とを含み、前記第1部分及び前記第2部分は、前記サポートするチャネルの走査に割り当てられる第3部分により分離され、前記フレームの時間長は、1msから5msの範囲内である、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記第1部分は、ダウンリンクデータに対する少なくとも1つのタイムスロットと、アップリンクデータに対する1つ又は複数のタイムスロットとを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記サポートするチャネルの組は、100MHz未満の周波数域に位置するRFベアラを有し、前記サポートするチャネルのうちの2つの間の周波数距離は5MHz未満である、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記親機(FP)は、新しい周波数が前記第1RFベアラ又は前記第2RFベアラに対して選択された場合は、前記新しい周波数及びフレーム数を示す値に関する情報を前記第1RFベアラ又は前記第2RFベアラが前記新しい周波数に切り替わるまで前記1つ又は複数の子機(PP)へ送信する、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記親機(FP)及び前記子機(PP)は、前記RF伝送用に2つ以上の異なるRFアンテナを含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
各タイムスロットは巡回冗長検査(CRC)エラーチェックフィールドを含み、前記CRCのシード設定は隠されたシステム識別として使用される、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
アンテナに接続され、かつ請求項1~12のいずれか一項に記載の方法に従って前記親機(FP)として動作するよう構成されている少なくとも1つのRF送信回路を含む無線RF送信機。
【請求項14】
アンテナに接続され、かつ請求項1~12のいずれか一項に記載の方法に従って前記子機(PP)として動作するよう構成されている少なくとも1つのRF受信回路を含む無線RF受信機。
【請求項15】
請求項13に記載の無線RF送信機及び1つ又は複数の請求項14に記載の無線RF受信機のうちの少なくとも1つを含むシステムであって、無線ヘッドセット、無線マウス、ゲーム機の無線コントローラ、無線キーボード、無線マイク、無線スピーカ、無線インターホンシステム、ビデオシステム、バーチャルリアリティシステム、のうちの1つである、システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は無線伝送の分野に関し、例えば、レイテンシ(遅延)が低いにも関わらずパケットロスに対して高い耐性のあるデータ無線伝送に関する。具体的には、プロトコルはゲームなどにおけるヒューマンインタフェースデバイス(HID)のオーディオデータ及び他のデータの無線伝送に適している。したがって、無線プロトコルは、マイク、楽器やゲーム用機材、例えばキーボード、マウス、ゲーム機のコントローラ、マイク、ヘッドフォンやヘッドセットにおいて、又はバーチャルリアリティデバイスの一部としてのビデオアプリケーションで有益である。
【背景技術】
【0002】
ヘッドセット、マイクやモニタースピーカなどのリアルタイム双方向オーディオアプリケーションは、典型的には最小レイテンシの通信システムを必要とする。さらに、ゲーム用のデバイス、例えばゲーム機のコントローラ、キーボード、マウス、又はマイク/ヘッドフォン若しくはヘッドセットは、オンラインゲーム環境で外乱を引き起こしうる遅延に対して敏感である。
【0003】
このようなシステムは、パケットロスを引き起こすことでさらに信号伝送を遅延させる様々なRF干渉源の影響を受ける既知の無線接続では実現するのが困難である可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、上記の説明によれば、本発明の目的は、データパケット内のオーディオデータなどのデジタル信号を低レイテンシで確実に無線伝送する無線通信プロトコルを提供することである。例えば低レイテンシが必要となるゲーム機又は他のデバイスで信号を無線伝送できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1態様では、本発明は、タイミングマスターである親機(fixed part、FP)とタイミングスレーブである1つ又は複数の子機(portable part、PP)との間でデータパケット内のデジタル信号を無線RF伝送する方法を提供し、無線RF伝送は例えば全二重伝送を含み、無線RF伝送はそれぞれが1つ又は複数のタイムスロットを含むフレームを含み、この方法は、
-FPにより、例えば連続的に、例えばISMバンドの中の1つの限られた周波数帯の中の例えば10~100、例えば40~80の少なくとも3つのサポートするチャネルの組の間で走査を行うことと、
-FPにより、走査に応答して、サポートするチャネルのうちの少なくとも複数での干渉レベルの測定値を収集することと、
-FP内の選択アルゴリズムにより、サポートするチャネルのうちの複数での干渉レベルの測定値に応答して、サポートするチャネルの組から第1RFベアラ及び第2RFベアラのそれぞれに対して異なる第1周波数及び第2周波数を選択することと、
-前記第1RFベアラ及び前記第2RFベアラの両方において、1つのフレームで、同一のデータパケットを親機FPから1つ又は複数の子機PPへ送信することと、
を含む。
【0006】
そのような方法は、この方法が2つのRFベアラ上で異なる周波数で冗長データを送信することに基づいているため、有益である。データパケットは、ヒューマンインタフェースデバイス(HID)データ及び/又はオーディオデータなどでありうる。2つのRFベアラはさらに、実際の干渉レベルの測定値に基づいて選択されて、例えば40のサポートするチャネルの中で、最小のRF干渉を有する2つの周波数を選択することが可能である。2つの二重ベアラの周波数は、干渉を避ける又は最小化して同一周波数帯の他のユーザに対する干渉が最も小さくなるように、動的に割り当てられ、また再割り当てされると理解されたい。特に、各フレームには少なくとも1つ、好ましくは2つのタイムスロットが走査のために割り当てられていることが望ましい。これによりRF伝送中のパケットロスの危険性を最小化して、RF干渉源を有することが知られているRFベアラ周波数帯を使用することが可能となり、確実なデータパケット伝送を低レイテンシで得ることができる。特に、1msから3msなどのフレーム長がありうる。
【0007】
好ましくは、この方法は、2つの二重RFベアラが2つの選択されたチャネル上で動作するのを維持する。アプリケーションペイロード及び制御・信号伝達フィールド内の情報は、典型的には冗長性のために両方のベアラで伝送するため複製される。これにより、他のRFデバイスからの干渉が存在する周波数帯において高信頼性のデータ伝送をもたらす。他のユーザは、同一技術のシステム、又は、例えばWiFiやブルートゥース(登録商標)に基づく他の無線技術のシステムでありうる。周波数選択手続きは、好ましくは動的に、すなわち連続的に行われるので、システムはRF干渉の変化に対して適応的で頑強である。また、伝送距離が従来の伝送方法よりも長いという効果がある。
【0008】
したがって、この方法は、2つの異なるチャネル上で2つの異なるタイムスロット内で同一のデータを伝送することにより、時間ダイバーシチ及び周波数ダイバーシチの両方を含む。
【0009】
以下の表現が使用され、そのため説明される。
-FPからPPへの通信方向はダウンリンクと表される。
-PPからFPへの通信方向はアップリンクと表される。
-時分割多元接続(TDMA)。
-受信信号強度インジケータ(RSSI)。
-ヒューマンインタフェースデバイス(HID)、例えばキーボード、コントローラ、マウスなど。
-エラーチェック及び行いうるデータ訂正のための巡回冗長検査(CRC)。
-単一の無線イベント、例えば送信や受信は、スロット又はタイムスロットと表される。
-同一のアプリケーションペイロードを運ぶ、別々の周波数上の2つのスロットは、二重スロットと表すことができる。
-干渉走査用のスロットを含む、ダウンリンクスロットとアップリンクスロットが繰り返されるシーケンス(TDMAフレーム)は、フレームと表される。
-同一のアプリケーションデータ及びデータパケットが2つの異なるRFベアラ周波数上で送られることは、冗長伝送と表される。
-受信機により確認されるまでデータが再送信されるチャネルは、信頼できるチャネルと表される。シーケンス番号設定により、同一データがアプリケーションへ重複して配送されるのを防ぐ。
-無線スタックの上のアプリケーション層で利用可能なユーザペイロードのサイズは、パケットサイズと表される。これには、スタックにより内部で使用される媒体アクセス制御層の信号伝達フィールドは含まれない。
-2つの異なるアプリケーションデータパケットの送信の間の間隔は、更新間隔、例えばHID更新間隔と表される。
-親機(FP)は、無線TDMAフレームタイミングのマスターである。この文脈では、PC又はゲーム機に取り付けられるドングルであってもよい。
-子機(PP)はFPのTDMAフレームタイミングに同期される。この文脈では、ヘッドセット、キーボード、マウス、リモコンなどの無線デバイスであってもよい。
-メッセージ完全性コード(MIC)が暗号化の最中に検証に用いられる。
-Counter with CBC-MAC (cipher block chaining message authentication code)はCCMと表される。
【0010】
以下で、望ましい実施形態及び特徴について説明する。
【0011】
選択アルゴリズムは、好ましくは第1周波数F1及び第2周波数F2を決定するよう構成され、F1及びF2は、すべてのサポートするチャネルの中で最も低い干渉レベルの測定値を有するRFベアラとして示される。より干渉に関連するデータ、例えばFPによって得られた測定値、そして場合によってはPPからの測定されたRSSIも利用可能な場合、選択アルゴリズムは様々な方法で設計することができる。さらに、現在2つの周波数が使用されている場合、そのような周波数ハンドオーバはいくつかのフレームと、これを有効にするために1つ又は複数のPPからの確認を含みうるので、選択アルゴリズムは一方又は両方の周波数を変更することを判断するために特定の閾値を持つことがあるのを理解されたい。好ましくは、選択アルゴリズムは、例えば信号及び干渉マージンが閾値よりも小さいとわかった場合に、ある種の破損の危険性に備えて周波数を変更することができる。
【0012】
選択アルゴリズムにより第1周波数及び第2周波数を選択するのに使用される、サポートするチャネルのうちの複数での干渉レベルの測定値の収集は、以下のうちの1つ又は複数を含みうる。
1)FPにより、サポートするチャネルのうちの複数のそれぞれに対するRFベアラのそれぞれの周波数帯でのRF活動のレベルを測定すること。
2)1つ又は複数の子機(PP)から親機(FP)へ報告された測定データ、及びサポートするチャネルのうちの複数に対して測定されたRSSIレベルなどのチャネル品質指標値を収集すること。特に、各フレームは、FPがある期間にわたってすべてのサポートするチャネルに対するRSSI値の完全な組を収集できるようにするために、サポートするチャネルのうちの1つに対するRSSI値の少なくとも一部を報告するためのフィールドを含みうる。
3)現在使用されている二重RFベアラと、サポートするチャネルのうちの別のチャネルとの間の周波数距離を求めること。
4)サポートするチャネルのうちの複数に対するパケットエラーレートを求めること。特に、FPは、サポートするチャネルのそれぞれに対するパケットエラーレートの統計値を、PPから受信したパケット確認ビットに対して作用するデジタル無限インパルス応答フィルタ処理の実行などにより計算することができる。
【0013】
特に、選択アルゴリズムは、上で述べた1)~4)のうちの2つ以上の組み合わせに応答して第1周波数及び第2周波数を選択するよう構成することができる。
【0014】
本発明の望ましいフレーム構成は、フレームが第1RFベアラでのデータパケットのRF伝送に割り当てられる第1部分と第2RFベアラでのデータパケットのRF伝送に割り当てられる第2部分とを含む構成であり、第1部分及び第2部分は、サポートするチャネルの走査に割り当てられる第3部分により分離される。特に、第1部分は、ダウンリンクデータに対する少なくとも1つのタイムスロットと、アップリンクデータに対する1つ又は複数のタイムスロットとを含みうる。フレームは、サポートするチャネルの走査に割り当てられる第4部分をさらに含みうる。フレームの望ましい時間長は1msから5msであり、より好ましくは1msから3msである。
【0015】
各タイムスロットは、好ましくは巡回冗長検査(CRC)エラーチェックフィールドを含む。特に、システム識別から得られるCRCのシード設定は、多数のシステム間でパケットを区別するのに使用することができる。
【0016】
第1RFベアラ及び第2RFベアラでのRF伝送は、好ましくはFPとPPの間の全二重伝送を含む。
【0017】
サポートするチャネルの組は、好ましくは100MHz未満の周波数域、例えば80MHz以下などに位置するRFベアラを有する。サポートするチャネルのうちの2つの間の周波数距離は、好ましくは5MHz未満であり、例えば3MHz未満や2MHz未満である。例えば、第1周波数及び第2周波数は、2.402~2.480GHzの周波数域の中で選択されうる。しかし、他のRFバンド、例えば任意のISMバンドも同様に使用することができることを理解されたい。
【0018】
周波数ハンドオーバでは、すなわち、新しい周波数が第1RFベアラ又は第2RFベアラに対してFPにより選択された場合は、FPは、好ましくは新しい周波数及びフレーム数を示す値に関する情報を第1RFベアラ又は第2RFベアラが新しい周波数に切り替わるまで1つ又は複数のPPへ送信する。円滑なハンドオーバをさらに確実にするため、ハンドオーバの手続きは、周波数上でデータパケットの送信に成功したことの確認が受領されるまでは完了したとみなされない。
【0019】
通信範囲及び伝送の信頼性をさらに高めるため、アンテナダイバーシチを使用することができる、すなわち、FP及びPPの両方で送信及び受信に2つ以上のアンテナが使用されて、これにより空間ダイバーシチがさらに付加される。望ましい実施形態では、各タイムスロットは、好ましくはアンテナプローブフィールドを有し、この中で送信機が変調された出力又は変調されていない出力を発する。受信機は、このフィールドの間に、順次、サポートする受信アンテナのうちの1つ又は複数でRSSI測定を行う。続くフレームのアンテナプローブフィールドでは、RSSI測定は他のアンテナで行われる。Nフレーム後には、RSSI測定はすべてのサポートする受信アンテナで行われており、どのアンテナが最も強い受信信号を提供するかを決定することができる。このアンテナがパケット信号伝達及びアプリケーションペイロードの受信に使用される。パケットが選択されたアンテナで正しく受信された場合、同一のアンテナが続くフレームの送信で使用される。送信用のアンテナの変更は、ピアにおける受信機のアンテナ決定プロセスを妨害しないように、遅らされる(同期される)ことがある。
【0020】
この方法で送信されるデジタル信号は、原理上はHIDからの任意のデータ信号ストリームとすることができる。特に、デジタル信号は20kHz以上のサンプリング周波数でサンプルされたデジタルオーディオ信号などのデジタルオーディオ信号を含みうる。デジタルオーディオ信号は、例えばADPCMアルゴリズム又は同種のものに従って符号化された、符号化デジタルオーディオ信号であってもよい。
【0021】
一部の実施形態では、説明された2つよりも多くの周波数が使用される。例えば、3~10のRF周波数をチャネル走査に基づいて選択して、最も低い干渉レベルの3~10のチャネルを選択することができる。そして、3~10の周波数すべてが、3~10のRFベアラのそれぞれにおいて、冗長データパケットを1つのフレームで送信するのに使用される。
【0022】
第2態様では、本発明は、アンテナに接続され、かつ第1態様の方法に従ってFPとして動作するよう構成されている少なくとも1つのRF送信回路を含む無線RF送信機を提供する。
【0023】
第3態様では、本発明は、アンテナに接続され、かつ第1態様の方法に従って子機PPとして動作するよう構成されている少なくとも1つのRF受信回路を含む無線RF受信機を提供する。
【0024】
RF送信機及びRF受信機を実現するのに必要となる、必要なRF回路、アンテナ、及びプログラミングは、本発明の方法の本明細書での記載に基づき、当業者には既知となることを理解されたい。
【0025】
第4態様では、本発明は、第2態様に係る無線RF送信機、1つ又は複数の第3態様に係る無線RF受信機のうちの少なくとも1つを含むシステムを提供する。特に、システムは、無線ヘッドセット、無線マウス、ゲーム機の無線コントローラ、無線キーボード、無線マイク、無線スピーカ、無線インターホン、ビデオシステム、バーチャルリアリティシステム、のうちの1つとすることができる。
【0026】
オーディオデバイスは固定された帯域幅と固定されたレイテンシを必要とするが、一部のHIDデバイスは帯域幅及びレイテンシに対して異なる要件を持っていることがある。ダウンリンク及びアップリンクに対する要件は異なることがある。しかし、すべてを本発明の実施形態に準拠させることができることを理解されたい。
【0027】
第1態様に対して説明したのと同じ利点及び実施形態が、さらに記載される態様にも同様に当てはまると理解される。さらに、説明された実施形態は、記載されるすべての態様の間で自由に混合することができることが理解される。
【図面の簡単な説明】
【0028】
これより、本発明について添付の図を参照してさらに詳細に説明する。
【0029】
図1】限られたRFバンドの中で2つのRFベアラ周波数F1、F2での全二重無線RF伝送における親機及び子機を有するシステム実施形態の簡易ブロック図を示す。
図2】方法実施形態の手順を示す。
図3a】異なる望ましいRFスロット形式を示す。
図3b】異なる望ましいRFスロット形式を示す。
図3c】異なる望ましいRFスロット形式を示す。
図4】望ましいフレーム形式を示す。
図5a】冗長伝送と再送信の組み合わせの伝送例を示す。
図5b】冗長伝送と再送信の組み合わせの伝送例を示す。
【0030】
図は本発明を実施する特定の方法を示しており、他の取りうる実施形態が添付の請求項一式の範囲に含まれるものに限定されると解釈されるべきではない。
【発明を実施するための形態】
【0031】
図1は、本発明の背後にある基本的構成、すなわち親機FP及び子機PPを示すブロック図を示し、親機及び子機が、異なる周波数F1、F2を有する2つのRFベアラで無線電磁RF信号を用いて、ここでは全二重通信で示される通信を行っている。したがって、基本的にはFPとPPの双方が、2つのRFベアラ周波数F1、F2で冗長データパケットを有するRF信号を送受信するためのRFアンテナ及びRF回路を有する。FPは、コンピュータ用のドングルとして、又は、例えばゲーム機や他の専用デバイスに一体化された部分として実現されうる。
【0032】
FPは入力デジタル信号D_Iを受信して、両方のRF周波数F1、F2でデータパケットを送信し、データパケットはPPによりRF伝送されたフレーム内で受信されて、PPがデータパケットを展開して元のデータ信号D_Oにたどり着く。
【0033】
FPは走査を行い、サポートするチャネルを含むRFバンド、例えばISMバンドの他のRFトラヒックからのRF干渉が可能な限り最小の2つの周波数F1、F2を見つけるために所定のアルゴリズムに従って周波数F1、F2を動的に選択するために、サポートするチャネルに対するRSSIデータをPPから収集するだけでなく好ましくは自身で測定を行う。
【0034】
2つの周波数をRF干渉レベル測定に応答して動的に更新することを可能とするこの2つの周波数概念を用いて低レイテンシを得ることができて、さらに伝送は信頼できるので、オーディオ信号の伝送に適している。低レイテンシ及び高信頼性は、オーディオ能力の有無に関わらずゲーム機などの製品で、例えば評価されうる。
【0035】
図1ではただ一つのPPが示されているが、本発明の実施形態は複数のPPへのブロードキャスト、すなわち、ポイントツーマルチポイント(一対多)送信をサポートすることを理解されたい。
【0036】
図1では一方向の音声のみが示されているが、例えばヘッドセットの場合は、本発明の方法は、オーディオデータをアップリンク及びダウンリンクの両方で伝送することができる実施形態をサポートすることを理解されたい。
【0037】
図2は、望ましい方法実施形態の手順を示す。第1ステップは、例えばゲームのヘッドセットからの音声であるデジタルオーディオ信号R_ASを受信して、所定の長さの複数のデータパケットへ分けることである。データパケット内のデジタル信号をタイミングマスターであるFPとタイミングスレーブである1つ又は複数のPPとの間で無線RF伝送する方法。本実施形態における無線RF伝送は全二重伝送を含み、無線RF伝送は、それぞれが1つ又は複数のタイムスロットを含むフレームを含む。
【0038】
方法は、周波数空間内でチャネルが例えば1~2MHzの間隔で密集している2.4GHz周辺の限られた帯域などの1つの限られた周波数帯の中の例えば10~100、例えば40~80の少なくとも3つのサポートするチャネルの組の間で、FPにより連続的に走査を行うことSC_SCHを含む。
【0039】
次に、FPは、自身の干渉レベル測定値、例えば、走査に応答してサポートするチャネルのそれぞれにおいて測定されたRF信号レベルの収集を行うC_FP_IL。さらに、全二重の特徴を利用して、すべてのサポートするチャネルに対するRSSIデータがPPから受信される。ある期間にわたって監視されるサポートするチャネル上のパケットエラーレートの統計値などの更なるデータを例えば含む、これらのデータに基づいて、FPは、サポートするチャネルの組から第1及び第2の二重RFベアラのそれぞれに対して異なる第1周波数及び第2周波数を選択するS_F1_F2ための選択アルゴリズムを実行する。
【0040】
次に、選択された周波数が、第1RFベアラ及び第2RFベアラの両方で同一のデータパケットを有する1つのフレームをFPから1つ又は複数のPPへ送信するT_FRM_F1_F2ために使用される。PPはフレームがその中で表現されているRF信号を受信し、その後に元のデジタルオーディオ信号データパケットを展開することができる。
【0041】
すでに述べたように、選択アルゴリズムは、第1周波数及び第2周波数を選択する際に干渉レベルの様々な測定値を考慮することができる。特に、選択アルゴリズムは、好ましくは1)そもそも第1RFベアラ及び第2RFベアラの第1周波数及び第2周波数を変更するべきか、2)それらの周波数のうち少なくとも一つを変更するべきか、どちらを変更するべきか、そして、シームレスな変更のための周波数ハンドオーバの取り扱いも決定する。選択アルゴリズムの目標は、好ましくは、他のRF源からの干渉が最少であるチャネルに対応する周波数を選択することである。特定の実装では、これは、以下で説明される6つの手続きの実装により実現される:
a)チャネル干渉走査
b)チャネル干渉RSSIレベルの報告
c)パケットエラーレートの統計値
d)チャネルパケットエラーレートの履歴
e)周波数の選択
f)周波数ハンドオーバ手続き
【0042】
a)各フレームにおいて、干渉のRSSI測定が走査スロット内で行われる。典型的には、各フレームに2つの走査スロットがある。すべてのサポートするチャネルが順次走査される。システムが80のチャネルに対応している場合、40フレームの後のすべてのチャネルが走査された。例えば、フレーム長が2msであると仮定した場合、すべてのサポートするチャネルを80msで走査することができる。各チャネルに対するエントリを有するテーブルが実装される。テーブルの各エントリに対して、進歩的でより高速なアタックタイムを持ち、より遅い固定の減衰時間を有する一次デジタルIIRフィルタアルゴリズムが実行される。フィルタのアタックタイムは、高いRSSIレベルが連続して測定されるのに反応するため、動的に変更される。干渉の存在を示しうる、連続する高いRSSIは、アタックタイムの速度を上げる。RSSIがより低い場合、固定されたより長いフィルタ減衰時間が使用されて、アタックタイムは減少する。これは、干渉は一気に発生しうるのみであるために行われ、検出確率は干渉の発生に依存する。まったく同じ走査・フィルタプロセスが、ネットワーク内のFP及びすべてのPPで行われる。
【0043】
b)すべてのPPはフィルタ処理したRSSIレベルを有するテーブル内の情報をFPへ報告している。テーブルの制御・信号伝達情報フィールド内のエントリは、連続的な周期で送られる。この報告周期は走査・測定周期とは異なることがあり、利用可能な信号伝達帯域幅に適合される。例えば、1つ又は2つのチャネルエントリが平均で2フレームごとに報告されることがあり、システムが80のチャネルに対応している場合は、完全なテーブル情報は80msから160msでFPに報告されうる。
【0044】
c)パケットエラーレートの統計値がデータパケットの想定される受信ごとにFPで計算される。FPで受信した各パケットは、PPからの受信確認ビットも含む。また、この確認情報はパケットエラーレート(二重ベアラパケットエラーレート)の計算時にも使用される。パケットエラーレート統計は、パケットOK指示及び確認ビットの一次デジタルIIRフィルタとして実装されうる。
【0045】
d)パケットエラーレートの統計値の履歴は、通信に使用される各周波数に対して記録される。この履歴情報は、経時的要因を有する。
【0046】
e)FPが、現在使用されている周波数が望ましいか、又は他の周波数がより低いパケットエラーレートを持つと予測されるかを判断するプロセスを実行した。このプロセスは、以下の情報の組み合わせに基づいた決定ルールを有する:
-すべてのサポートするチャネルの局所的干渉RSSI走査情報
-PPから報告された、すべてのサポートするチャネルの干渉RSSI
-チャネルパケットエラーレートの履歴
-現在のパケットエラーレート
-現在使用されているチャネルについての局所的で報告された干渉情報
-使用されている他のベアラへの周波数距離
【0047】
決定プロセスは、最も低い干渉レベルを示すチャネルを見つけるために、すべてのPP及びFPから、記録されフィルタ処理されたすべての干渉走査情報を検索することである。見つかったチャネルが現在使用されているチャネルよりも低い干渉RSSIを示す場合、かつ他のベアラへの周波数距離が例えば10MHzの最小距離より大きい場合、周波数ハンドオーバの手続き及びプロトコルが開始される。
【0048】
f)システムの2つのベアラは、常に2つの異なるチャネルで同一フレーム内で動作する。周波数ハンドオーバの手続きは、任意の所与の時刻に1つのベアラに対してだけ動作する。1つのベアラに対して周波数ハンドオーバが完了すると、周波数ハンドオーバの手続きを他のベアラに対して開始することができる。
【0049】
周波数ハンドオーバの手続きは、変更が影響を及ぼすまでのフレーム数に含まれる、使用される新しい周波数の情報をFPが送信している信号伝達プロトコルを使用している。新しい周波数の情報は、変更がそれに応じて調整されるまでのフレーム数を含めて、冗長性のために数回送信される。プロトコルにより、FP及びPPは、パケットロスを引き起こすことなく、使用される周波数を同時に変更することができる。
【0050】
周波数ハンドオーバの手続きは、FPが新しく選択された周波数でPPから正しいパケットを受信するまではなおも進行中である。新しく選択された周波数で、例えば200msのタイムアウト期限内にPPから確認が受信されない場合、決定プロセスは新しい周波数を選択し、周波数ハンドオーバの手続きが再び開始される。
【0051】
正しい確認パケットが接続されているすべてのPPから受信されたら、周波数ハンドオーバは完了し、周波数ハンドオーバの手続きが他のベアラに対して開始される可能性がある。
【0052】
図3a~3cは、3つの異なる望ましいタイムスロットの構成を示す。一般的なタイムスロットの活性部分は、ダイバーシチの場合にアンテナを選択するための測定に使用されるアンテナプロービングD_A PRB、同期フィールドSNC、MAC信号伝達制御及びアドレス指定MAC SGN、アプリケーションペイロードAPL、及びCRC保護CRCを含む。いくらかのガードタイムGRD DLYが、無線合成セトリングRSY、ランピング及び処理用のスロット間に必要とされる。スロット形式は、同じRF周波数でのRXとTXの間での高速スイッチングの利点を利用している。
【0053】
図3aのスロット形式D1又はU1は、単一の物理的エンドポイントに対するスロット形式の例を示す。
【0054】
図3bのスロット形式D2又はU2は、2つのデバイス用のアプリケーションペイロードAPL1、APL2を有し、各デバイス用のアドレス指定パケットシーケンス番号用の確認フィールドASも含む、多数の物理デバイス又は多数の論理エンドポイント向けのスロット形式の例を示す。
【0055】
図3cのスロット形式D3は、FPが共有されるダウンリンクスロットを多数のPPへ送信するよう構成される、スロット形式の例を示す。この場合は、追加のデバイスアドレス指定DVAが加えられる。この構成では、すべての携帯デバイスは、スロットを受信して、自身がアプリケーションデータの送信先であるかを判断する必要がある。これは、例えば、異なるシステムからのパケットを区別するための隠されたシステム識別キャリアとしてCRCフィールドを利用するために、システム識別に基づくシード設定アルゴリズムでCRCフィールドを利用することで確認することができる。
【0056】
HIDアプリケーション向けの更新間隔は二重スロット伝送の長さに対応し、これはフレーム長と同じである。また、スタックは、干渉の場合にデータをより多くの回数再送信するように構成することができる。最も短いレイテンシは、冗長伝送の特徴を使うことなく実現される。
【0057】
図4は、FPと多数のPPデバイスの間の典型的な通信用の望ましいフレーム形式の例を示す。望ましいフレームは、各伝送方向で1つ又は複数の送信スロットを含む。各フレームでは、タイムスロットSが、使用される周波数スペクトル全体の干渉走査に割り当てられる。この走査で収集される情報は、選択アルゴリズムによりチャネル選択及びチャネル再選択に使用される。ダウンリンクスロットは記載された形式、D1、D2、D3のうちの1つとすることができて、アップリンクでは異なるサイズのU1又はU2のいずれかとすることができる。この例では、ダウンリンクスロット形式はD3であり、3つのアップリンクスロットは形式U1を利用している。
【0058】
したがって、示されるように、このフレーム形式では、周波数F1のRFベアラでのRF伝送の第1部分は1つのダウンリンクスロットと、それに続く3つのアップリンクスロットを含む。次に、走査スロットSが続く。RFベアラF2でのRF伝送の第2部分はF1におけるものと類似しており、1つのダウンリンクスロットに3つのアップリンクスロットが続き、そして最終的に第2走査スロットが続く。
【0059】
最も早いHID更新速度(最も短いHID更新間隔)は、新しいHIDデータがそれぞれの送信で送るのを許された場合に得られ、更新速度はハーフフレームに対応する。これは、プロトコルスタックが0回の冗長伝送で構成される場合の動作モードである。そうではなく冗長伝送の設定が1に設定される場合、通常の二重スロットダイバーシチ(及び周波数ダイバーシチ)が使用されて、更新間隔はフレーム長に対応する。冗長伝送の回数はより大きな数に設定することができて、したがってHID更新速度はより小さくなる。また、再送信の回数を設定することも可能である。元の送信、冗長伝送のいずれも受信に成功しない場合、再送信が行われる可能性がある。そして、無線スタックは、送信が成功する、又は再送信の最大回数に達するまで、データをあらためて再送信する。
【0060】
図5a、5bは、冗長伝送及び最大回数の再送信の、異なる構成の2つの例を示す。この例は、異なるエラーの場合に2つの周波数F1、F2で送信されるデータパケットを示す。1方向でのデータ0、データ1、データ2のパケットのみが示されている。2つのHID、HID1とHID2が想定され、アプリケーションにより均等にスケジュールされる。送信が成功したパケットは通常の文字で示され、エラーパケットは横線が引かれた文字で示されている。アスタリスクは、再送信の回数が最大値に達した場合に、プロトコルスタックがコールバックを引き起こすことを示す。
【0061】
図5aでは冗長伝送の回数は0であり、最大再送信は4で、図5bでは冗長伝送の回数は1であり、最大再送信は2である。
【0062】
パケットが送信される実際の回数nactualは、
【0063】
【数1】
で規定され、nredundantは冗長伝送の回数であり、nretransmissionは再送信の最大回数である。多数のデバイスでの冗長伝送及び再送信の手続きは、互いに依存せずに動作する。なお、形式D3は単一のデバイスのみに対して使用できる。
【0064】
2つのHIDに対して取りうる一構成では、ダウンリンクチャネルは2つのHID間で共有され、HID1及びHID2専用のアップリンク。冗長伝送は行われない。HIDのダウンリンクのスケジュール設定は動的であり、実行時にアプリケーションにより決定される。したがって、前述されたD3フレーム形式が、デバイスアドレス指定フィールドを含むため、使用される。フレーム構造に対する要件は、HIDダウンリンクが16バイト、HID1アップリンクが14バイト、HID2アップリンクが22バイト、暗号化が完全CCM、である。フレーム長成分は、ダウンリンクが190μs、アップリンク-1が144μs、アップリンク-2が176μs、走査が50μs、である。したがって、ハーフフレームは560μsであり、フルフレームは1120μs、つまり、1msをわずかに上回るに過ぎない。その結果、この例でのHID更新間隔は、ダウンリンク(共有)が560μs、デバイス1からのアップリンクが560μs、デバイス2からのアップリンクが560μs、である。
【0065】
複数のHIDがダウンリンクで均等にスケジュール設定される場合、結果として、それらのダウンリンク更新間隔は1120μsとなる。また、HIDのうちの1つを優先することも可能であり、例えば、HID1が4つのハーフフレームのうちの3つでスケジュールされる。この場合、平均HID1更新間隔は747μsであり、平均HID2更新間隔は2240μsである。これらの更新間隔は、すべての送信が無事に受信されると仮定している。送信エラーの場合は、更新間隔は、図5a及び5bに関連して前述したように、大きくなる。
【0066】
別の構成例では、2つのHID及び1つのオーディオヘッドセットが想定される。この例は、共有ダウンリンクチャネル及び0回の冗長伝送の場合の実行を示す。要件は、HIDダウンリンクが16バイト、HID1アップリンクが14バイト、HID2アップリンクが22バイト、オーディオダウンリンクが94バイト、オーディオアップリンクが25バイト、暗号化が完全CCM、である。これにより、以下のフレーム長成分となる:ダウンリンク(D2)が566μs、アップリンク-1(U1)が144μs、アップリンク-2(U1)が176μs、アップリンク-A(U1)が188μs、走査が50μs、調整が1μs。これにより、ハーフフレームは1125μsで、1フレームは2250μsとなる。
【0067】
その結果、この例でのHID更新間隔は、ダウンリンク(共有)が1125μs、デバイス1からのアップリンクが1125μs、デバイス2からのアップリンクが1125μs、である。
【0068】
特定の実施形態では、以下の特徴が望ましい:
-フレーム形式:ダウンリンク1、アップリンク1、及び走査、並びに、ダウンリンク2、アップリンク2、及び走査
-スロット形式:合成セトリング、アンテナプローブ、Sync、Aフィールド、ペイロード、MIC、CRC
-アンテナダイバーシチ
-オーディオバッファリング方法(固定、短レイテンシ)
-シームレス周波数ハンドオーバ - 2つのベアラが独立して動作
-両エンド(親機及び子機)で干渉走査
-PPがFPへ報告
-FPがローカル情報及びリモート情報に基づいて周波数ハンドオーバを決定
-設定可能ペイロードサイズ及び調整可能フレーム長
-トポロジーのオプション:2地点間(ポイントツーポイント)及び一対多(ポイントツーマルチポイント)
-アプリケーションペイロード:オーディオ+HIDデータ
-帯域外の信号伝達フィールド(Aフィールド) - アプリケーションペイロードに影響を及ぼさない
-CRC計算にはシステム識別によるシード設定を含まない
-アプリケーションペイロードの暗号化 - 信号伝達フィールドは暗号化されない
-バインド/登録プロトコル
【0069】
特定の実施形態では、MAC/PHYは以下の特徴に基づいて設計される:
-周波数域:2.402~2.480GHz
-変調:2Mb/s、GFSK
-データ完全性チェック:CRC-24
-AES128によるペイロードデータの暗号化、32ビットMIC(設定可能)の追加を伴うCCM。同一の(共有された)セキュリティキーがネットワーク内のすべてのFP及びPPデバイスに対して使用される。
-アンテナダイバーシチ、FP及びPPの両方で2つのアンテナ。
-FP及びPPの両方で干渉走査、干渉回避手続き。
-干渉を回避するため自動周波数(再)選択及び周波数ハンドオーバ。周波数ハンドオーバは好ましくはシームレスに行われ、アプリケーションデータの流れを中断しない。
-ダウンリンク及びアップリンクの両方で、設定可能な再送信による確実なアプリケーションデータの転送。再送信手続きは両方のアクティブなキャリアを使用し、冗長伝送と組み合わせることが可能。
-MAC層の信号伝達フィールドは、同期情報、アドレス指定、シーケンス番号、確認、干渉・周波数管理情報、アンテナ制御、バインド及び接続制御コマンド、を運ぶ。MAC層の信号伝達は、アプリケーションペイロードの帯域幅には影響を及ぼさない。
-親機は、アクティブな携帯デバイスがない場合は常に、少なくとも同期ビーコンを送信する。
【0070】
以下の異なるクラスを伝送に対して定義しうる:
1)固定され予約済みの伝送帯域幅。ダウンリンク及びアップリンクで(例えばオーディオ伝送のために)使用される。
2)ダウンリンク及びアップリンクで組み合わされて使用される(例えば、同じ物理スロット内でHID及びオーディオ)
3)共有されるタイプのスロット、受領者はアドレス指定又は一定の多重化ルールにより決定され、ダウンリンクでのみ使用される。
【0071】
本発明に係るシステムで提供されるデータ伝送サービスはアプリケーションにより使用され、固定サイズのペイロードパケットのみをサポートする、又は設定可能なペイロードパケットを提供する、のいずれかが可能である。パケットサイズは、ダウンリンク及びアップリンクに対して独立して、また各HIDに対して独立して設定することができる。システムにより提供されるデータ伝送サービスは、信頼できる輸送手段として構成することができて、これは以下を意味する:
1)エラー回復が行われる、つまり、データは、(再送信の制限の範囲内で)無事受信されて確認されるまで、再送信される。再送信の制限に達した場合、アプリケーションは通知され、そのような場合にアプリケーションは適切な行動を取りうる。
2)受信側のアプリケーションにデータが重複して配送されることはない。
【0072】
要約すれば、本発明は、例えばオーディオデータであるデータの低レイテンシでの無線RF伝送用の無線通信方式及びプロトコルを提供する。方法は、同期マスターとして機能する親機(FP)及び同期スレーブである1つ又は複数の子機(PP)を含む。FPは、例えばISMバンドの中の1つの限られた周波数帯の中のサポートするチャネルの組の間で走査を行う。さらに、FPは、走査に応答して、好ましくは自身の干渉レベル測定値を使って、かつサポートするチャネルに対するRSSIデータをPPから収集することで、サポートするチャネルのうちの少なくとも複数でのRF干渉レベルの測定値を収集する。RF干渉レベルのこれらの測定値に応答して、FPは、サポートするチャネルの組から第1及び第2の二重RFベアラのそれぞれに対して異なる第1周波数及び第2周波数を選択及び再選択するための選択アルゴリズムを実行して、最も低いRF干渉を有するチャネルを選択する。最終的に、FPは、前記第1及び第2の二重RFベアラの両方で、1msから3msなどの長さの1つのフレームで同一のデータパケットをPPへ送信する。これにより、ヒューマンインタフェースデバイス及びオーディオデバイス、例えばゲーム用機材に適した、頑強で低レイテンシの無線インタフェースが提供される。
【0073】
本発明は、特定の実施形態に関連して説明されたが、提示された例に限られるとは決して解釈されるべきではない。本発明の範囲は、添付の請求項一式を踏まえて解釈されるべきである。請求項に関連して、用語、「含む(including)」又は「含む(includes)」は、他の取りうる要素又はステップを排除しない。また、「a」、「an」などの参照の言及は、複数を排除すると解釈されるべきではない。また、請求項における、図に示される要素に対する参照符号の使用も、本発明の範囲を限定すると解釈されるべきではない。さらに、異なる請求項に記載される個々の特徴は、潜在的に有利に組み合わせることができて、異なる請求項におけるこれらの特徴への言及は、特徴の組み合わせが可能であり有益であるということを排除するものではない。
図1
図2
図3a
図3b
図3c
図4
図5a
図5b