(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-16
(45)【発行日】2023-08-24
(54)【発明の名称】通電確認器具
(51)【国際特許分類】
H02G 1/12 20060101AFI20230817BHJP
B26B 17/00 20060101ALI20230817BHJP
G01R 19/145 20060101ALI20230817BHJP
G01R 31/58 20200101ALI20230817BHJP
【FI】
H02G1/12 004
B26B17/00 A
G01R19/145
G01R31/58
(21)【出願番号】P 2023105760
(22)【出願日】2023-06-28
【審査請求日】2023-06-30
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】523246938
【氏名又は名称】片山 駿
(74)【代理人】
【識別番号】100195752
【氏名又は名称】奥村 一正
(72)【発明者】
【氏名】片山 駿
【審査官】木村 励
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3115601(JP,U)
【文献】実開昭60-123175(JP,U)
【文献】韓国実用新案第20-2003-0007424(KR,Y1)
【文献】特開平11-346411(JP,A)
【文献】実開昭55-19593(JP,U)
【文献】実開平2-122667(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 1/12
B26B 17/00
G01R 19/145
G01R 31/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
通電を確認する通電確認器具であって、
2枚の刃を噛み合わせて第一電線の被覆を切断可能な第一切断部と、
2枚の刃を噛み合わせて前記第一電線とは別の第二電線の被覆を切断可能な第二切断部と、
前記第一切断部が閉じて前記2枚の刃を噛み合わせるとともに、前記第二切断部が閉じて前記2枚の刃を噛み合わせる一の握り部と、
前記握り部を握ることで、前記第一切断部が閉じて前記第一電線の被覆を切断して芯線に接触し、前記第二切断部が閉じて前記第二電線の被覆を切断して芯線に接触し、前記第一電線の芯線と前記第二電線の芯線との間の通電を確認可能な通電確認部と、
を備えたことを特徴とする通電確認器具。
【請求項2】
前記第一切断部が前記第一電線の被覆を切断して芯線に接触する位置と、前記第二切断部が前記第二電線の被覆を切断して芯線に接触する位置とは、前記第一電線及び前記第二電線の延伸方向に所定距離だけ離れていることを特徴とする請求項1に記載の通電確認器具。
【請求項3】
少なくとも前記第一切断部又は前記第二切断部いずれかの2枚の刃のうち少なくとも一方の刃に、前記被覆を切断し前記芯線が切断されずにはまり込む凹部を備えたことを特徴とする請求項1に記載の通電確認治具。
【請求項4】
少なくとも前記第一切断部又は前記第二切断部いずれかの2枚の刃のうち少なくとも一方の刃に、前記被覆を切断し前記芯線が切断されずにはまり込む凹部を備えたことを特徴とする請求項2に記載の通電確認治具。
【請求項5】
前記通電確認部は、発光素子であることを特徴とする請求項1-4のいずれかに記載の通電確認器具。
【請求項6】
前記第一切断部が前記第一電線の芯線に接触し、前記第二切断部が前記第二電線の芯線に接触した状態を保持可能な保持部を備えたことを特徴とする請求項1―4のいずれかに記載の通電確認器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電線の被覆除去を行うとともに、電線間の通電を手軽に確認できる通電確認器具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
建物内などに電気配線することはよく行われている。その際に、電気配線をスイッチや照明に接続するにあたり、電線間に電気がきているか否かを確認する通電確認が必要となる場合がある。テスターで電圧を確認するのが一般的であるがテスターを取りに行き電線の被覆を除去してテスターのプローブを電線に接触させるのは時間がかかるだけでなく効率の悪い作業である。
【0003】
特許文献1には、芯線まで届く針状の短絡試験片を2個有して手で握ることで同時に芯線を貫通させ、2芯線間の通電をチェックし、通電されていればランプを点灯させる通電チェック器具が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
特許文献1:特開平11-346411
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載のものは、通電チェック器具で通電確認した後、ニッパー等に持ち替えての電線の被覆除去は手間がかかる。
【0006】
本発明は、上記問題点を解決して、通電確認と電線の被覆除去とを一つの器具で行うことを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本発明は、通電を確認する通電確認器具であって、
2枚の刃を噛み合わせて第一電線の被覆を切断可能な第一切断部と、
2枚の刃を噛み合わせて前記第一電線とは別の第二電線の被覆を切断可能な第二切断部と、
前記第一切断部が閉じて前記2枚の刃を噛み合わせるとともに、前記第二切断部が閉じて前記2枚の刃を噛み合わせる一の握り部と、
前記握り部を握ることで、前記第一切断部が閉じて前記第一電線の被覆を切断して芯線に接触し、前記第二切断部が閉じて前記第二電線の被覆を切断して芯線に接触し、前記第一電線の芯線と前記第二電線の芯線との間の通電を確認可能な通電確認部と、
を備えたことを特徴とする通電確認器具を提供するものである。
【0008】
この構成により、電線の被覆除去と通電確認を一つの器具で持ち替えることなく行うことができ効率的である。
【0009】
通電確認器具であって、前記第一切断部が前記第一電線の被覆を切断して芯線に接触する位置と、前記第二切断部が前記第二電線の被覆を切断して芯線に接触する位置とは、前記第一電線及び前記第二電線の延伸方向に所定距離だけ離れている構成としてもよい。
【0010】
この構成により、決められた被覆除去の長さを所定距離とすることで第一電線又は第二電線の被覆除去長さを容易に決めることができる。
【0011】
通電確認器具であって、少なくとも前記第一切断部又は前記第二切断部のいずれかの2枚の刃のうち少なくとも一方の刃に、前記被覆を切断し前記芯線が切断されずにはまり込む凹部を備えた構成としてもよい。
【0012】
この構成により、被覆だけを切断して芯線に第一切断部又は前記第二切断部を接触させることが容易にできる。
【0013】
通電確認器具であって、前記通電確認部は、発光素子である構成としてもよい。
【0014】
この構成により、発光を確認することで容易に通電を確認できる。
【0015】
通電確認器具であって、前記第一切断部が前記第一電線の芯線に接触し、前記第二切断部が前記第二電線の芯線に接触した状態を保持可能な保持部を備えた構成としてもよい。
【0016】
この構成により、通電確認器具の握り部から手を放しても通電確認を維持できるので、通電確認しながら他の作業を行なうことができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の通電確認器具により、電線の被覆除去と通電確認を一つの器具で行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の実施例1における通電確認器具を説明する図である。
【
図2】本発明の実施例1における通電確認器具の使用状態を説明する図である。
【
図3】本発明の実施例2における通電確認器具の第一切断部と第二切断部の関係を説明する図である。
【
図4】本発明の実施例3における通電確認器具を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0019】
本発明の実施例1における通電確認器具を
図1、
図2を参照して説明する。
図1は、本発明の実施例1における通電確認器具を説明する図である。
図2は、本発明の実施例1における通電確認器具の使用状態を説明する図である。
【0020】
実施例1における通電確認器具10は、ニッパーを2つ組合わせた構造をしている。つまり、第一ニッパーの第一切断部11と第二ニッパーの第二切断部12を有し、握り部13を手で握ることで、支点16を支点として第一切断部11が閉じるとともに、支点17を支点として第二切断部12が閉じる。これにより、第一切断部11の第一切断部第一刃111と第一切断部第二刃112が噛み合い、また第二切断部12の第二切断部第一刃121と第二切断部第二刃122が噛み合うように構成されている。そして、第一切断部第一刃111と第一切断部第二刃112の間、及び第二切断部第一刃121と第二切断部第二刃122の間に電線があれば少なくともその被覆を切断することができる。
【0021】
握り部13は、2つのニッパーのグリップを同時に閉じることができるようにゴム状のバンドでそれぞれの2つのグリップを包み込んで固定し一の握り部としている。これにより、この一の握り部13を握ることで第一切断部11が支点16を支点として、第二切断部が支点17を支点として一緒に閉じることができる(
図2参照)。
【0022】
なお、実施例1における握り部13においては、2つのニッパーのグリップをゴム状のバンドで包み込む構成としたが、必ずしもこれに限定されず適宜変更が可能である。例えば、2つのニッパーのグリップを絶縁テープで巻いて固定してもよい。少なくとも握り部13を手で握ることで、第一切断部11の2枚の刃(第一切断部第一刃111と第一切断部第二刃112)が第一電線C1に嚙合わせるとともに、第二切断部12の2枚の刃(第二切断部第一刃121と第二切断部第二刃122)が第二電線C2に嚙合わせることが可能であればよい。
【0023】
また、2つのニッパーのグリップをゴム状バンドで包み込む、又は絶縁テープで巻き付けることに替えて、グリップ部分が一つで、第一切断部と第二切断部とを備えたニッパーとしてもよい。
【0024】
第一切断部第一刃111、第一切断部第二刃112、第二切断部第一刃121、及び第二切断部第二刃122は、ラウンド刃でもフラット刃でもよいが先端がエッジになっているものが望ましい。第一切断部11の第一切断部第一刃111と第一切断部第二刃112が閉じることで両者が噛み合い、電線の芯線を切断したり、被覆を切断、除去することができる。また、同様に、第二切断部12の第二切断部第一刃121と第二切断部第二刃122が閉じることで両者が噛み合い、電線を切断したり、被覆を切断、除去することができる。
【0025】
第一切断部11と第二切断部12とからは、それぞれ別々にケーブル151とケーブル152が接続され、LEDランプからなる通電確認部14に接続されている。これにより、第一電線C1と第二電線C2に通電されていれば、第一切断部11の2枚の刃(第一切断部第一刃111と第一切断部第二刃112)のうち少なくともどちらかが第一電線C1の芯線に接触するとともに、第二切断部12の2枚の刃(第二切断部第一刃121と第二切断部第二刃122)のうち少なくともどちらかが第二電線C2の芯線に接触することで、通電確認部14のLEDランプが発光して容易に通電を確認することができる。
【0026】
なお、実施例1においては、通電確認部14をLEDランプとしたが、必ずしもこれに限定されず適宜変更が可能である。例えば、通電確認部をテスターとしてもよいし、ブザーとしてもよい。特に、通電確認部をブザーとすれば音で確認できる。そして、少なくとも第一切断部が第一電線の芯線に接触し、第二切断部が前記第二電線の芯線に接触し、第一電線の芯線と第二電線の芯線との間の通電を確認可能できればよい。
【0027】
また、握り部13内に通電確認回路と送信回路を備えて、電圧等の通電情報をスマホやパソコンに送信するように構成してもよい。
【0028】
この通電確認器具10を使用方法するには、まず、握り部13を手で握って、第一切断部11と第二切断部12とを一緒に閉じて、それぞれの2枚の刃を嚙み合わせて第一電線C1と第二電線C2の被覆を切断、除去する(
図2参照)。そして、第一切断部11を第一電線C1の芯線に接触させるとともに、第二切断部12を第二電線C2の芯線に接触させる。すると、第一電線C1及び第二電線C2に電気が通電されていると、通電確認部14のLEDランプが発光する。これにより、通電を容易に確認することができる。
【0029】
なお、図示しないが、第一切断部11が第一電線C1の芯線に接触し、第二切断部12が第二電線C2の芯線に接触した状態を保持可能な保持部を備えていてもよい。保持部としては、適切な長さのゴム輪で構成して握り部13に固定するようにしてもよいし、握り部13にフックと孔等によるロック部を設けてもよい。
【0030】
このように、実施例1においては、通電を確認する通電確認器具であって、
2枚の刃を噛み合わせて第一電線の被覆を切断可能な第一切断部と、
2枚の刃を噛み合わせて前記第一電線とは別の第二電線の被覆を切断可能な第二切断部と、
前記第一切断部が閉じて前記2枚の刃を噛み合わせるとともに、前記第二切断部が閉じて前記2枚の刃を噛み合わせる一の握り部と、
前記握り部を握ることで、前記第一切断部が閉じて前記第一電線の被覆を切断して芯線に接触し、前記第二切断部が閉じて前記第二電線の被覆を切断して芯線に接触し、前記第一電線の芯線と前記第二電線の芯線との間の通電を確認可能な通電確認部と、
を備えたことを特徴とする通電確認器具により、通電確認と電線の被覆除去とを一つの器具で行うことができる。
【実施例2】
【0031】
本発明の実施例2は、第一切断部の位置と第二切断部の位置とが通電確認する電線の延伸方向に所定距離Aだけ離れている点で実施例1と異なっている。実施例2の通電確認器具について
図3を参照して説明する。
図3は、本発明の実施例2における通電確認器具の第一切断部と第二切断部の関係を説明する図である。
【0032】
実施例2の通電確認器具20は、
図3に示すように、第一切断部21が第一電線C1の被覆を切断して芯線に接触する位置と、第二切断部22が第二電線C2の被覆を切断して芯線に接触する位置とが、第一電線C1及び第二電線C2の延伸方向に所定距離Aだけ離れている。
【0033】
電気配線のときに、例えば、コネクタに電線の芯線を挿入する場合、挿入する芯線の長さが挿入長規定として決められていることがある。このような場合に、所定距離Aをこの挿入長規定の長さとしておけば、
図3のように、電線C2の被覆除去長さを挿入長規定長さとすることができる。電線C1はこの後、電線C2に合わせて被覆除去すればよい。
【0034】
このように、実施例2においては、前記第一切断部が前記第一電線の被覆を切断して芯線に接触する位置と、前記第二切断部が前記第二電線の被覆を切断して芯線に接触する位置とは、前記第一電線及び前記第二電線の延伸方向に所定距離だけ離れていることにより、決められた被覆除去の長さを所定距離とすることで第一電線又は第二電線の被覆除去長さを容易に決めることができる。
【実施例3】
【0035】
本発明の実施例3は、少なくともいずれかの刃に、被覆を切断し芯線が切断されずにはまり込む凹部を備えた点で実施例1、実施例2と異なっている。実施例3について、
図4を参照して説明する。
【0036】
実施例3の通電確認器具30は、実施例1及び実施例2と同様に、ニッパーを2つ組合わせた構造をしている。つまり、第一ニッパーの第一切断部31と第二ニッパーの第二切断部32を有し、握り部33を手で握ることで、第一切断部31の第一切断部第一刃311と第一切断部第二刃312が噛み合い、第二切断部32の第二切断部第一刃321と第二切断部第二刃322が噛み合うように構成されている。
【0037】
そして、実施例2においては、いずれかの刃に被覆を切断し芯線が切断されずにはまり込む凹部313を備えている。凹部313は、少なくとも第一切断部31又は第二切断部32いずれかの2枚の刃のうち少なくとも一方の刃に備えていればよいが、全ての刃(第一切断部第一刃311、第一切断部第二刃312、第二切断部第一刃321、及び第二切断部第二刃322)に備えていてもよい。
【0038】
これにより、第一切断部31及び第二切断部32の電線の被覆除去と芯線への接触を容易に行うことができる。
【0039】
このように、実施例3においては、少なくとも前記第一切断部又は前記第二切断部いずれかの2枚の刃のうち少なくとも一方の刃に、前記被覆を切断し前記芯線が切断されずにはまり込む凹部を備えたことにより、被覆だけを切断して芯線に第一切断部又は前記第二切断部を接触させることが容易にできる。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明における通電確認器具は、電気配線の分野に広く用いることができる。
【符号の説明】
【0041】
10:通電確認器具
11:第一切断部
12:第二切断部
13:握り部
14:通電確認部
15:ケーブル
16:支点
17:支点
111:第一切断部第一刃
112:第一切断部第二刃
121:第二切断部第一刃
122:第二切断部第二刃
20:通電確認器具
21:第一切断部
22:第二切断部
30:通電確認器具
31:第一切断部
32:第二切断部
33:握り部
311:第一切断部第一刃
312:第一切断部第二刃
313:凹部
321:第二切断部第一刃
322:第二切断部第二刃
【要約】
【課題】電線の被覆除去と通電確認を一つの器具で行うことを課題とする。
【解決手段】通電を確認する通電確認器具であって、2枚の刃を噛み合わせて第一電線の被覆を切断可能な第一切断部11と、2枚の刃を噛み合わせて前記第一電線とは別の第二電線の被覆を切断可能な第二切断部12と、前記第一切断部が閉じて前記2枚の刃を噛み合わせるとともに、前記第二切断部が閉じて前記2枚の刃を噛み合わせる一の握り部13と、前記握り部を握ることで、前記第一切断部が閉じて前記第一電線の被覆を切断して芯線に接触し、前記第二切断部が閉じて前記第二電線の被覆を切断して芯線に接触し、前記第一電線の芯線と前記第二電線の芯線との間の通電を確認可能な通電確認部14と、を備えたことを特徴とする通電確認器具10とした。
【選択図】
図1