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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-16
(45)【発行日】2023-08-24
(54)【発明の名称】炭化油化処理炉
(51)【国際特許分類】
   C10B 47/02 20060101AFI20230817BHJP
   C10B 53/00 20060101ALI20230817BHJP
   B09B 3/40 20220101ALI20230817BHJP
【FI】
C10B47/02
C10B53/00 A ZAB
B09B3/40
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2019033049
(22)【出願日】2019-02-26
(65)【公開番号】P2020138987
(43)【公開日】2020-09-03
【審査請求日】2022-02-24
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】520463271
【氏名又は名称】株式会社アーバンリグ
(74)【代理人】
【識別番号】100177264
【弁理士】
【氏名又は名称】柳野 嘉秀
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 智章
【審査官】森 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-246867(JP,A)
【文献】登録実用新案第3066044(JP,U)
【文献】特開2001-107055(JP,A)
【文献】特開2005-139303(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B09B 3/00
C10B 47/02
C10B 53/00
C10G 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部から供給される過熱水蒸気によりプラスチックごみを含む廃棄物を炭化処理および油化処理する炭化油化処理炉であって、
鉄製の外側構造体と、この外側構造体に対して分離可能なステンレス製の内側構造体とで構成され、
前記内側構造体は、複数に分割された炉材からなり、これら複数の炉材が常温時において互いに接しないように前記外側構造体の内面に貼り付けられていることを特徴とする炭化油化処理炉。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチック系ごみを含む一般ごみ等の廃棄物を炭化処理および油化処理するために使用される炭化油化処理炉に関する。
【背景技術】
【0002】
有機系ごみに無酸素状態で過熱水蒸気を接触させて炭化処理する方法が知られており、本件出願人は、上記炭化処理に使用する炭化処理装置を提案している(例えば特許文献1)。この炭化処理装置の処理炉は、鉄またはステンレスで構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開番号WO2016/185631
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記提案の炭化処理装置は、有機系ごみ以外に一般ごみの処理に使用することも可能である。しかし、その場合、一般ごみに含まれる塩化ビニル等のプラスチック系ごみから発生する塩素ガスや塩化水素ガス等の腐食性ガスによって、処理炉が腐食により劣化することを考慮しなければならない。鉄に比べてステンレスは腐食し難いが、それでも長時間使用すると腐食が進んで耐用限界を超えてしまう。
【0005】
本発明は、比較的安価に製作でき、かつ稼働に伴う腐食による劣化が少なく、さらに低コストで維持管理することができる炭化油化処理炉を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は次のように構成した。すなわち、本発明に係る炭化油化処理炉は、外部から供給される過熱水蒸気によりプラスチックごみを含む廃棄物を炭化処理および油化処理する炉であって、鉄製の外側構造体と、この外側構造体に対して分離可能なステンレス製の内側構造体とで構成されていることを特徴としている。
【0007】
この構成の炭化油化処理炉は、2層構造からなり、外側構造体は比較的安価な鉄製であり、内側構造体は腐食性ガスに対する耐性が比較的高いステンレス製である。外側構造体に鉄を使用することで、比較的安価に製作でき、かつ内側構造体にステンレスを使用することで、稼働に伴う腐食性ガスによる腐食を抑えることができる。長時間の稼働により内側構造体の腐食がある程度まで進んだ場合、内側構造体のみを交換する。外側構造体に対して内側構造体が分離可能であるため、内側構造体の交換が可能である。このように、炭化油化処理炉を新規に製作するのではなく一部だけを交換すればよいので、炭化油化処理炉を低コストで維持管理することができる。
【0008】
前記内側構造体は、前記外側構造体の内側に出し入れ可能に嵌め込まれていてもよい。この場合、内側構造体の交換が容易である。
【0009】
また、前記内側構造体が、複数に分割された炉材からなり、これら複数の炉材が常温時の状態において互いに接しないように前記外側構造体の内面に貼り付けられていてもよい。この場合、各炉材を貼り換えることで内側構造体を交換する。複数の炉材を、常温時の状態において互いに適当な隙間を開くように外側構造体の内面に貼り付けることで、鉄よりも熱膨張率の大きいステンレスが稼働時に膨張して各炉材が隙間なく接するようになり、外側構造体を無酸素状態に保持することができる。
【0010】
この発明の炭化油化処理炉は、上部が開口した炉本体と、この炉本体の上部開口を塞ぐ蓋体とを有し、少なくとも炉本体が前記外側構造体と前記内側構造体とで構成されていてもよい。この場合、外側構造体に対して内側構造体を上下に出し入れすることで、内側構造体を容易に交換することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る炭化油化処理炉は、外部から供給される過熱水蒸気によりプラスチックごみを含む廃棄物を炭化処理および油化処理する炉であって、鉄製の外側構造体と、この外側構造体に対して分離可能なステンレス製の内側構造体とで構成されているため、比較的安価に製作でき、かつ稼働に伴う腐食による劣化が少なく、さらに低コストで維持管理することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態に係る炭化油化処理炉の縦断面図である。
図2】同炭化油化処理炉の炉本体の内側構造体を交換する状態を示す図である。
図3】同炭化油化処理炉の蓋体の内側構造体を交換する状態を示す図である。
図4】本発明の異なる実施形態に係る炭化油化処理炉の縦断面図である。
図5】同炭化油化処理炉の炉材の(a)常温時の状態を示す図、(b)稼働時の状態を示す図である。
図6】同炭化油化処理炉の炉本体の内側構造体としての炉材を交換する状態を示す図である。
図7】同炭化油化処理炉の蓋体の内側構造体としての炉材を交換する状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について図面に基づき説明する。
【0014】
図1は本発明の一実施形態に係る炭化油化処理炉の縦断面図である。この炭化油化処理炉1Aは、上部が開口した炉本体2と、この炉本体2の上部開口を塞ぐ蓋体3とで構成される。炉本体2は、鉄製の外側構造体4と、この外側構造体4の内側に嵌め込まれたステンレス製の内側構造体5とで構成されている。内側構造体5を上方に引き上げることで、外側構造体4に対して側構造体5を分離可能である。蓋体3は、互いに重ね合わされた鉄製の外側構造体6とステンレス製の内側構造体7とでなる。蓋体3の外側構造体6と内側構造体7も互いに分離可能である。
【0015】
炉本体2の上端には外向きに張り出すつば状部2aが形成されており、このつば状部2aと蓋体3の外周部とをボルト等の結合手段8で結合することにより、炉本体2と蓋体3とが一体化される。これにより、炉本体2と蓋体3とで囲まれた炉空間9が密封状態となる。
【0016】
蓋体3には、熱水蒸気供給孔10が設けられている。この熱水蒸気供給孔10は外部の過熱水蒸気供給手段(図示せず)に繋がっており、過熱水蒸気供給手段からの過熱水蒸気が熱水蒸気供給孔10から炉空間9に供給されるようになっている。なお、炉本体2または蓋体3には、過熱水蒸気の供給時に炉空間9の空気を排出する排気孔(図示せず)が設けられている。
【0017】
この炭化油化処理炉1Aによる廃棄物の処理方法について説明する。
蓋体3を外して、炉空間9に廃棄物Xを投入する。そして、炉本体2に蓋体3を取り付けて、炉空間9に過熱水蒸気を供給する。過熱水蒸気の温度は300℃~600℃の程度である。炉空間9が過熱水蒸気で満たされると、炉空間9は無酸素状態となる。無酸素状態で廃棄物Xが高温の過熱水蒸気に接することにより、有機系ごみが炭化すると共に、プラスチック系ごみが油化する。この炭化油化処理により生じた炭化物および油分は、回収してリサイクルされる。
【0018】
廃棄物Xがプラスチック系ごみを含む場合、プラスチック系ごみから、塩素ガス、塩化水素ガス等の腐食性ガスが発生する。腐食性ガスに晒される内側構造体5,7はステンレス製であり、ステンレスは腐食性ガスに対する耐性が比較的高いため、内側構造体5,7は腐食し難い。外側構造体4,6は、内側構造体5,7で被覆されて無酸素状態に保持されるため、炉空間9に腐食性ガスが存在していても腐食しない。
【0019】
しかし、長時間稼働すると、ステンレス製の内側構造体5,7も腐食が進行する。腐食がある程度まで進んだなら、内側構造体5,7を交換する。この炭化油化処理炉1Aの炉本体2は、外側構造体4の内側に内側構造体5が嵌め込まれた構成であるので、図2のように、外側構造体4に対して内側構造体5を上方に引き上げて、内側構造体5を容易に交換することができる。また、蓋体3についても、図3のように、外側構造体6に対して内側構造体7を取り外して、内側構造体7を容易に交換することができる。
【0020】
この炭化油化処理炉1Aは、炉本体2および蓋体3が共に2層構造からなり、外側構造体4,6は比較的安価な鉄製であり、内側構造体5,7は腐食性ガスに対する耐性が比較的高いステンレス製である。外側構造体4,6に鉄を使用することで、比較的安価に製作でき、かつ内側構造体5,7にステンレスを使用することで、稼働に伴う腐食性ガスによる腐食を抑えることができる。長時間の稼働により内側構造体5,7の腐食がある程度まで進んだ場合、内側構造体5,7のみを交換する。このように、炭化油化処理炉1Aを新規に製作するのではなく一部だけを交換すればよいので、炭化油化処理炉1Aを低コストで維持管理することができる。
【0021】
図4は本発明の異なる実施形態にかかる炭化油化処理炉の縦断面図である。この炭化油化処理炉1Bの内側構造体5,7は、複数に分割された板状の炉材11からなっている。炉材11はステンレス製である。
【0022】
図5(a)に示すように、各炉材11は、常温時において互いに接しないように外側構造体4,6の内面に貼り付けられている。ステンレスは鉄よりも熱膨張率が大きいため、稼働時に高温になると、図5(b)のように、各炉材11の端面部が互いに接触する状態となる。このため、外側構造体4,6が腐食性ガスに晒されることがなく、外側構造体4,6の腐食が防がれる。
【0023】
複数に分割された板状の各炉材11は、外側構造体4,6に取り付けた高さの相違する支柱部材が貫通する孔部を設け、該孔部に支柱部材を挿入し、隣りあわせの各炉材11が同じ高さにならないように、高低差の分だけ交互に板状炉材の端面が上部と下部とで接するようにして、溶接等の手段により支柱部材を介して炉材を取り付けるようにしてもよい。この場合は、各炉材が熱膨張によって膨張しても、各炉材11の端部が重なり合って外側構造体4,6を覆うとともに、その端面同士が必要以上に接触する状態がなくなるので、膨張率を考慮した炉材の配置を容易に行うことができる。
【0024】
この炭化油化処理炉1Bも、前記炭化油化処理炉1Aの場合と同様に、廃棄物Xを炭化処理および油化処理する。内側構造体5,7の腐食がある程度まで進んだなら、内側構造体5,7を交換する。内側構造体5,7の交換は、図6および図7に示すように、炉材11を貼り換えることによって行う。この場合も、炭化油化処理炉1Bを新規に製作するのではなく一部だけを交換すればよいので、炭化油化処理炉1Bを低コストで維持管理することができる。
【0025】
上記各実施形態の炭化油化処理炉1A,1Bは、炉本体2と蓋体3とで構成され、廃棄物Xを上方から炉空間9に投入するようになっているが、側方から炉空間9に投入するようにしてもよい。また、炉空間への廃棄物の出し入れが可能であれば、蓋体を有しない構成であってもよい。
【符号の説明】
【0026】
1A,1B 炭化油化処理炉
2 炉本体
3 蓋体
4,6 外側構造体
5,7 内側構造体
11 炉材
X 廃棄物
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7