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  • 特許-近接場テラヘルツ撮像デバイス 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-16
(45)【発行日】2023-08-24
(54)【発明の名称】近接場テラヘルツ撮像デバイス
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/3581 20140101AFI20230817BHJP
   G01J 1/02 20060101ALI20230817BHJP
【FI】
G01N21/3581
G01J1/02 Q
G01J1/02 P
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020551543
(86)(22)【出願日】2019-03-28
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-08-10
(86)【国際出願番号】 FR2019050720
(87)【国際公開番号】W WO2019186074
(87)【国際公開日】2019-10-03
【審査請求日】2022-03-03
(31)【優先権主張番号】1852688
(32)【優先日】2018-03-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】520296288
【氏名又は名称】タイハイブ
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】シェリー,アニ
【審査官】井上 徹
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許第3775802(EP,B1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0212383(US,A1)
【文献】米国特許第9464933(US,B1)
【文献】国際公開第2017/149195(WO,A1)
【文献】Dae Yeon KIM et al.,Reduction of Low Frequency Noise Impact to Terahertz Detectors in CMOS,IEEE Microwave and Wireless Components Letters,2017年02月,Vol. 27,No. 2,PP.150-152
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00-G01N 21/01
G01N 21/17-G01N 21/61
G01J 1/00-G01J 1/60
G01J 11/00
H10K 30/60-H10K 30/65
H10K 39/30
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
IEEE Xplore
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
近接場テラヘルツ撮像システム用センサであって、
近接場効果によって分析対象物(12)と相互作用するように構成されたテラヘルツ放射線送信機(10)のアレイであって、各送信機は、前記アレイの両面から場を放射するように構成される、テラヘルツ放射線送信機(10)のアレイと、
前記送信機の近接場中に位置する、各送信機に対向したテラヘルツ放射線受信機を含み、かつある画像画素に対応する測定値を生成するように構成された、前記分析対象物(12)から前記送信機アレイの反対側に配置された受信機アレイ(18)と、
前記受信機(18)が半導体技術で実現される活性面を有する、テラヘルツ放射線を通す半導体材料の第1の基板(Rx)と、
前記送信機(10)が半導体技術で実現される活性面を有する、テラヘルツ放射線を通す半導体材料で作られた、前記第1の基板(Rx)と異なる第2の基板(Tx)であって、前記第1の基板(Rx)および前記第2の基板(Tx)は、前記第1の基板(Rx)および前記第2の基板(Tx)より低い屈折率を有する層によって互いに分離される、第2の基板(Tx)と、
を備える、センサ。
【請求項2】
そのそれぞれの受信機とともに各送信機を順に作動させるように構成された制御回路(20、22)を備える、請求項1に記載のセンサ。
【請求項3】
前記第2の基板(Tx)の活性面は、前記分析対象物(12)に面し、前記第2の基板(Tx)の背面は、前記第1の基板(Rx)に面する、請求項に記載のセンサ。
【請求項4】
前記第1の基板(Rx)の活性面は、前記第2の基板(Tx)から離れる方に面し、前記第1の基板(Rx)の背面は、前記第2の基板(Tx)に面する、請求項に記載のセンサ。
【請求項5】
前記アレイのピッチは、前記基板内の放射線の波長の少なくとも1/2であり、各基板は、前記基板内の放射線の波長の最大でも1/2の厚さを有する、請求項に記載のセンサ。
【請求項6】
前記受信機および前記送信機は、六角形構成を有し、ハニカムマトリクス内に配置される、請求項に記載のセンサ。
【請求項7】
各受信機および送信機は、
前記活性面の金属層に形成された環状アンテナ(50)であって、前記基板内のテラヘルツ放射線の波長の少なくとも1/2の平均円周を有する環状アンテナ(50)と、
複数の金属層を通して積層された金属パターンから形成された、前記受信機または前記送信機の周辺で前記アンテナを囲むガードリング(52)と、
を備える、請求項に記載のセンサ。
【請求項8】
前記ガードリング(52)は、導体トラックと前記受信機および前記送信機を動作させるための電子部品とを収容するキャビティ(62)を形成するように構成された金属パターンを備える、請求項に記載のセンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に分析対象物と接触して配置されるテラヘルツプローブを使用した、近接撮像技術に関する。
【背景技術】
【0002】
テラヘルツ(THz)波の範囲は、ミリ波と可視光との間である。テラヘルツ波は、約300GHz~数THzの周波数の範囲とするのが定説である。この範囲内の波は、無線周波数特性および光学特性の両方を有し、特に、アンテナによって送受信され、シリコンレンズなどの光学系によって集束され得る。
【0003】
THz波は、X線の悪影響を伴わずに、特定の対象物を通過する特性を有する。医用撮像では、THz波は、例えば、癌組織を検出するために使用される。このような癌組織は、健常組織とは異なるTHz範囲内の吸収特性および反射特性を有するためである。
【0004】
論文(「Use of a handheld terahertz pulsed imaging device to differentiate benign and malignant breast tissue」、Maarten R.Grootendorstら、8巻、6号、2017年6月1日、Biomedical Optics Express 2932)は、超音波プローブと同様に、患者の皮膚の上を移動して、皮膚を波反射によって分析するように設計された手持ち式プローブを開示している。
【0005】
THz波は、プローブの外側で生成されたフェムト秒レーザパルスを介してプローブ内で実装され、光ファイバを通してプローブの内側に配置された光伝導送受信機へと誘導される。結果として得られた0.1~1.8THzのパルスは、その後、送受信機とプローブの端部に存在する石英窓との間の振動ミラーによって誘導され、26個の画素を4Hzの周波数で15×2mmの領域において段階的に走査する。走査の各ステップにおいて、反射されたTHzパルスは、対応する画素によって受信機に戻される。
【0006】
このような手持ち式プローブは、複雑で高価な光技術を使用する。さらに、約0.6mmの画素ピッチは、比較的低い解像度を提供する。この解像度は、ミラー駆動機構の正確度と、THz波の比較的長い波長とに依存する。0.6mmの画素ピッチは、使用されるパルスの最低周波数(ここでは0.1THz)および1.2mmの波長に対する空気中のアッベ回折限界にほぼ対応する。
【0007】
したがって、このようなシステムは、わずか15×2mmの画像センサを実装するために扱いにくく高価な機器を必要とし、容積の要諦は、必要なレーザビームを生成するための機器によって占められる。
【0008】
近年では、THz受信機および送信機は、同じチップ上に組み込まれた電子回路によって十分に利用可能である半導体技術を使用して成功裏に実現されている。
【0009】
したがって、THz受信機は、半導体チップ上でアレイ内にグループ化されて、コンパクトな画像センサを形成する。例えば、研究論文(「A 1 k-Pixel Video Camera for 0.7-1.1 Terahertz Imaging Applications in 65-nm CMOS」、Richard Al Hadi,Hani Sherryら、IEEE Journal of Solid-State Circuits、47巻、12号、2012年12月)は、完全に65nmCMOS技術で製造されたTHz受信機を含む画像センサを開示している。受信機は、受動素子およびトランジスタの周波数(共通ソース接続)があまり制限されない構成を使用することによってトランジスタの動作周波数よりも高い周波数で信号を処理することができる。特に、電力検出構成が使用され、すなわち、THz波がアンテナ上で受信され、得られたアンテナ信号がコンデンサを信号振動のピーク値まで充電するために整流される。ホモダイン受信機として知られるこのような受信機は、位相情報を提供せず、振幅情報のみを提供する。
【0010】
半導体技術、特にCMOSに組み込み可能なTHz送信機を設計することも可能になった。この送信機の1つの問題は、トランジスタの動作周波数よりも高い周波数を有するTHz信号を生成することであった。この問題は、いわゆる調波発振器を使用することによって克服された。このような発振器は、この技術に対応できる周波数で動作し、THz範囲で使用可能な高調波を生成する。米国特許第9083324号は、このような発振器を開示している。
【0011】
組み込み可能なTHz受信機および送信機のさらなる情報は、2013年にヴッパータール(Wuppertal)大学で発表されたHani SherryおよびRichard Al Hadiによる論文の中で見つけることができる。
【0012】
半導体チップ上へのTHz要素の組み込み実現可能性が実証されているにもかかわらず、例えば、上述のBiomedical Optics Expressの論文に記載されているプローブに代わり得るコンパクトな反射センサを提供することは可能ではなかった。
【0013】
米国特許第9,464,933号は、センサのアレイを含む近接場THzイメージャを開示している。各センサは、発振器と検出回路との間に結合された伝送線路を備える。発振器は、分析対象物の近接によって変化する場を生成する。この変化は、伝送線路上のインピーダンスの変動に置き換わり、検出回路によって測定される。
【発明の概要】
【0014】
概して、テラヘルツ放射線受信機のアレイと、受信機のアレイと同じピッチを有するテラヘルツ放射線送信機のアレイであって、受信機のアレイと送信機の近接場中に位置する分析領域との間に位置し、各送信機が、分析領域および受信機のアレイのそれぞれの受信機の両方に向かって波を放射するように構成された、テラヘルツ放射線送信機のアレイとを備える、近接場テラヘルツ撮像システム用センサを提供する。
【0015】
センサは、受信機が半導体技術で実現される活性面を有する、テラヘルツ放射線を通す半導体材料の第1の平坦基板と、送信機が半導体技術で実現される活性面を有する、テラヘルツ放射線を通す半導体材料で作られた第2の平坦基板とをさらに備えてよい。
【0016】
センサは、そのそれぞれの受信機とともに各送信機を順に作動させるように構成された制御回路をさらに備えてよい。
【0017】
第2の基板の活性面は、分析領域に面してよく、第2の基板の背面は、第1の基板に面してよい。
【0018】
第1の基板の活性面は、第2の基板から離れる方に面してよく、第1の基板の背面は、第2の基板に面してよい。
【0019】
第1および第2の基板は、基板より低い屈折率を有する層によって互いに分離されてよい。
【0020】
アレイのピッチは、基板内の放射線の波長の少なくとも1/2であってよく、各基板は、基板内の放射線の波長の最大でも1/2の厚さを有してよい。
【0021】
受信機および送信機は、六角形構成を有してよく、ハニカムマトリクス内に配置されてよい。
【0022】
各受信機および送信機は、活性面の金属層に形成された環状アンテナであって、基板内のテラヘルツ放射線の波長の少なくとも1/2の平均円周を有する環状アンテナと、複数の金属層を通して積層された金属パターンから形成された、受信機または送信機の周辺でアンテナを囲むガードリングとを備えてよい。
【0023】
ガードリングは、導体トラックと受信機および送信機を動作させるための電子部品とを収容するキャビティを形成するように構成された金属パターンを備えてよい。
【0024】
添付図面に関連して、以下の非限定的な説明において実施形態が提示されることになる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】コンパクトな近接場テラヘルツ画像センサの実施形態の概略部分断面図である。
図2】半導体技術で実現された六角形画素の実施形態の上面図を示す。
図3図2の画素の例示的構成の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、テラヘルツ受信機のアレイおよびテラヘルツ送信機のアレイを組み合わせることが提供され、その各々は、分析対象物に対して適用されるコンパクトなイメージャデバイス内に半導体チップ上で実現され得る。受信機および送信機は、要素間の磁気結合を利用するために、近接場モード、すなわち、波長未満の十分に短い距離で使用される。
【0027】
図1は、この原理を使用したイメージャの実施形態を概略的に示す。テラヘルツ波を通す基板Txは、テラヘルツ送信機10のアレイを備える。基板は、分析領域12、例えば、皮膚に対して適用されるように設計される。基板Txは、表面12と直接接触してもよいか、または支持要素14を使用して所与の距離で保持されてもよい。
【0028】
この実施形態では、送信機画素10のアレイは、基板Txの前面に位置し、領域12に向けられる。基板の厚さは、概して、基板内の放射線の波長の最大でも1/2の厚さとなるように選択され、隣接する画素を妨害する恐れがある内部反射を制限する。
【0029】
この構成の送信機画素は、基板の両面から波を放射する。したがって、各送信機は、基板の各面について、電力放射を角度の関数として特徴づけるローブを与える。前面ローブは、この構成では背面ローブより小さく、送信機が背面を通じてより効率的であることを意味する(送信機は、通常、背面を通じて使用されるように設計される)。
【0030】
送信機は、近接場境界を規定するローブも有する。電力ローブは、0~1の係数を規定し、一方、近接場ローブは、近接場作用の空間的境界を規定する。図1は、近接場ローブNFの例を示す。これらの近接場ローブは、イメージャ平面に対しておおよそ対称であり、空気中の1波長のオーダーの振幅を有する。複雑なシミュレーションによって決定され得る正確な形状は、アンテナの構成および隣接する要素に依存する。
【0031】
テラヘルツ送信機の近接場中の要素の性質は、特に、送信機の発振器を通じて、波の特性に影響を及ぼし得ることが分かる。環境に依存して、発振器は、インピーダンス、位相、周波数、または振幅のシフトを受けてよい。これらの変化は、基板の両面から放射される波に均一に反映される。周波数に依存して、特定の変化また所与の閾値の超過は、分析領域で探索された材料または特性の特徴的な痕跡を形成してよく、例えば、皮膚内の癌組織は、より高い水の比率によって識別され得る。
【0032】
図1のイメージャは、この近接場特性を使用するように設計される。基板Txと測定領域12との間の距離は、測定領域12が基板Txの前面の近接場ローブNFと交差するように選択される。距離は、領域12との交差部におけるローブの表面積が、最大でも送信機画素の表面積に等しいように選択されてよい。これにより、最良の検出対象範囲を確保する。
【0033】
特有の性質を有する対象物16が、第2および第3の送信機の近接場ローブと接触する分析領域に示されている。対象物16は、点線のローブで示される、これらの送信機によって放射される波に影響を及ぼす。
【0034】
送信機10によって背面に放射された波は、送信機アレイと同じピッチを有するアレイ内に配置されたそれぞれのテラヘルツ受信機18によって受信される。受信機18のアレイは、基板Txと同じ特性を有する基板Rxの前面に形成されてよい。受信機アレイと送信機アレイとの間の距離は、可能であれば各送信機10が単一のそれぞれの受信機18に結合するような方法で、送信機および受信機が近接場モードで結合するようなものである。この構成では、各受信機18は、任意の変化を含む、そのそれぞれの送信機10によって放射された波の特性を測定および再現する。
【0035】
実際には、分析表面12が固体である場合、全てのエミッタは、近接場モードで多かれ少なかれ妨害されることになる。撮像システムは、概して、波の位相、周波数、および振幅値を疑似カラーで示す分析領域の画像を生成するか、またはこれらのパラメータの各々について3つの別個のグレースケール画像を生成するように構成されてよい。パラメータは、特徴的な性質を強調するために重み付け係数とともに単一の変数に組み合されてよい。
【0036】
図1の例では、近接場ローブNFは、1つの画素の幅を超えないという点で、かなり良好な特性を有する。このような状況では、測定領域12が前面ローブの最も幅広い部分と交差し、受信機18が背面ローブの最も幅広い部分に位置するような距離を設定するのに十分であり、示されているものにおおよそ対応する。これは、最良の感度を提供する。背面ローブが、できるだけ多くの基板の厚さを通過することも望ましく、これは、基板を背中合わせに配置することによって達成される。しかしながら、基板のものより低い屈折率を有する基板間の層(空気、真空、またはその他)の存在は、内部反射を制限する厚さの制約に関して基板がインピーダンスを保持することを可能とするため有益である。
【0037】
さらに、図1の例では、送信機の背面ローブは複数の受信機画素に決して重ならないため、受信機間のクロストークの可能性はない。前面ローブはある送信機画素から別の送信機画素へ漏れないため、送信機間のクロストークの可能性もない。この構成で、全ての送信機および受信機を「グローバルシャッタ」として同時に使用することが可能である。
【0038】
一般に、特に画素ピッチを低減することが求められる場合、各背面ローブは、送信機と受信機との間の距離に依存して、複数の受信機画素上に漏れる恐れがある。前面ローブについては、前面は、画素の表面に対してローブの有用な領域を制限するために、分析領域12に所望されるだけ近くに常に近づけられ得る。
【0039】
一般的な状況におけるクロストーク問題を回避するために、各送信機は、そのそれぞれの受信機とともに順に作動されてよい。したがって、複数の隣接する受信機が作動された送信機ローブに遭遇したとしても、指定された受信機が作動されて測定が達成される。
【0040】
シーケンスは、作動された各送信機が作動された他の送信機と関連する受信機に干渉しないパターンに従って、複数の送信機が一斉に作動されるように設計されてよい。
【0041】
図1では、各基板は、アレイ、特に画素作動シーケンスを管理するための送信機の制御回路20および受信機の制御回路22を含む。送信機画素の作動は、とりわけ、画素の局部発振器をオンにすること、または画素を共用発振器信号に接続することを含む。受信機画素の作動は、特に、測定を行うことを含む。
【0042】
送信機および受信機画素は同期して制御されるため、同期に必要な信号は、回路20と回路22との間で、支持要素14内に誘導されたリンク24を通して伝達されてよい。
【0043】
受信機は、発振器を含まず、振幅測定を提供することのみ可能な、非常に単純な構造のホモダインであってよい。位相または周波情報を利用することが望まれる場合、ヘテロダイン受信機が使用され得る。研究論文(「A Fully Integrated 320 GHz Coherent Imaging Transceiver in 130 nm SiGe BiCMOS」、Chen Jiangら、IEEE Journal of Solid-State Circuits、51巻、11号、2016年11月)およびHani Sherryの上述の論文は、半導体技術におけるヘテロダインテラヘルツ受信機の実装を記載している。
【0044】
それらの画素および制御回路を有する基板RxおよびTxは、例えば、CMOS技術で半導体チップとして実現されてよい。既知のチップ間組立技術が、2つの基板またはチップRxおよびTxを所望の間隔で組み立てるために使用されてよい。
【0045】
実施形態によれば、送信機および受信機画素は六角形であり、ハニカムマトリクス内に配置される。この画素の六角形構成は、検討されるTHz送信機およびTHz受信機の構造に特によく適合している。実際に、これらは、以下で分かるように、リングアンテナを基本としたものであり得、六角形構造は、リングアンテナを収容するために正方形構造よりもコンパクトである。さらに、マトリクスは、ハニカム状であるので、画素間の所与のピッチに対してより多くの画素を収容することができる。これらの組み合わされた特徴は、結果として、所与のピッチについて、正方形マトリクスよりも著しく高い解像度をもたらし、斜め線のより良好なレンダリングをもたらす。
【0046】
図2は、半導体技術、例えば、65nmCMOSで作製されたマトリクス状の六角形画素の実施形態の部分上面図を示す。受信機画素Rxのマトリクスが示されている。送信機画素のマトリクスは、同じ制約を受けるため同様であり、アンテナの寸法によって規定される。この図内の要素は、一例として、約600GHzで動作するように設計されたイメージャに対して実質的に縮尺通りに描かれている。600GHzの周波数は、空気中の0.5mmの波長に対応する。画素は、シリコン基板に組み込まれ、この場合、波長は約0.6の増倍率で減少し、波長をシリコン内では約0.3mmに低減する。さらに、許容される利得損失で解像度を2倍増加させることが可能であるので、わずか波長の1/2で、すなわち0.15mmで動作してもよい。したがって、送信機および受信機のアンテナは、この波長で動作するように寸法決めされる。この場合のアンテナ50は環状であり、つまり、アンテナの平均円周が少なくとも動作波長、すなわち0.15mmに等しいことを意味する。
【0047】
リングは、例えば、本技術の最終金属層においてエッチングされ、10μmの幅、すなわち、64μmの外径および54μmの内径を有する。
【0048】
さらに、画素間の誘導結合または容量結合による電気的擾乱の横方向伝搬を防止するために、各画素は、周辺ガードリング52(円形、またはここでは六角形であり得る)を含む。アンテナは、動作波長(0.15mm)にほぼ等しい平均直径を有する大部分が無金属の領域の中心に位置する。したがって、ガードリングの内縁は、アンテナリングの外縁から少なくとも38μm離れている。ガードリングは、さらに幅30μmであり、本技術によって推奨される金属/空隙比を満たすように構成される。したがって、画素は、六角形の2本の対辺間の幅200μmを有し、値は、0°、120°、および240°の3本の軸の各々に沿ったピッチに対応する。
【0049】
図3は、図2の画素の断面図である。画素は、半導体基板60(ここでは、シリコン製)の活性面上に形成される。最終金属層でエッチングされたアンテナ50は、基板の上面と同一平面上にある。この上面は、通常、パッシベーション層(図示せず)で覆われている。ガードリング52は、図示されているように、ビアを介して相互接続された本技術の全ての金属層(65nmCMOSでは7層)で積層された金属パターンを使用して、深さ方向に延長され得る。ビアは、スクリーニング機能を実現するピッチで、各画素の周囲に配置され得る。
【0050】
内部反射を制限するために、前述の通り、基板60の厚さは0.15mmである。
【0051】
これらのガードリングのうちの1つのガードリングの壁に関して図示されているように、金属パターンは、キャビティ62を形成するように構成され得る。キャビティ62は、画素を制御するための導体トラックおよび電子部品を収容し得る。実際には、2つの隣接するガードリングの幅は、60μmのオーダーであり、これは、65nmの技術では、画素を局所的に利用するのに必要な導体および電子部品の大多数を収容するのに十分な空間を提供する。この構成により、光学特性を妨げることになるアンテナ周辺の空き領域における金属導体の数を、厳密に最小限まで低減する。
図1
図2
図3