(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-16
(45)【発行日】2023-08-24
(54)【発明の名称】B7-H3に対するモノクローナル抗体および細胞治療におけるその使用
(51)【国際特許分類】
C12N 15/13 20060101AFI20230817BHJP
C07K 16/32 20060101ALI20230817BHJP
C12N 15/12 20060101ALI20230817BHJP
C12N 15/62 20060101ALI20230817BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20230817BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20230817BHJP
A61K 47/68 20170101ALI20230817BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230817BHJP
G01N 33/53 20060101ALI20230817BHJP
G01N 33/543 20060101ALI20230817BHJP
【FI】
C12N15/13
C07K16/32 ZNA
C12N15/12
C12N15/62 Z
C12N15/63 Z
C12N5/10
A61K47/68
A61P35/00
G01N33/53 D
G01N33/543 521
(21)【出願番号】P 2021542248
(86)(22)【出願日】2019-09-26
(86)【国際出願番号】 CN2019108297
(87)【国際公開番号】W WO2020063787
(87)【国際公開日】2020-04-02
【審査請求日】2021-05-26
(31)【優先権主張番号】201811125056.4
(32)【優先日】2018-09-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】521129749
【氏名又は名称】フーヂョウ ティーセルテック バイオテクノロジー カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】FUZHOU TCELLTECH BIOTECHNOLOGY CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】A504,Building 10,Innovation Park Phase 1,Haixi High-Tech Industrial Park,Gaoxin District,Fuzhou,Fujian 350108,China
(74)【代理人】
【識別番号】100102842
【氏名又は名称】葛和 清司
(72)【発明者】
【氏名】ルオ,リクン
(72)【発明者】
【氏名】ファン,グァンシォン
【審査官】平林 由利子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/214322(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/214339(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/214335(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
C12N 1/00- 7/08
C07K 1/00-19/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下を有することを特徴とする、B7-H3結合抗体であって:
(1)重鎖可変領域、および
(2)軽鎖可変領域、
重鎖可変領域が、以下の3つの相補性決定領域CDR:
配列番号2に示すCDR1、
配列番号5に示すCDR2、および
配列番号8に示すCDR3
を含み、
軽鎖可変領域が、以下の3つの相補性決定領域CDR:
配列番号11に示すCDR1'、
配列番号14に示すCDR2'、および
配列番号17に示すCDR3'
を含む、
前記抗体。
【請求項2】
以下を有することを特徴とする、組換えタンパク質:
(i)請求項1に記載の抗体、および
(ii)任意の発現および/または精製を補助するタグ配列。
【請求項3】
抗原結合領域がB7-H3に特異的に結合するscFvであることを特徴とする、CAR構築物であって、
前記scFvが重鎖可変領域および軽鎖可変領域を有し、
重鎖可変領域が、以下の3つの相補性決定領域CDR:
配列番号2に示すCDR1、
配列番号5に示すCDR2、および
配列番号8に示すCDR3
を含み、
軽鎖可変領域が、以下の3つの相補性決定領域CDR:
配列番号11に示すCDR1'、
配列番号14に示すCDR2'、および
配列番号17に示すCDR3'
を含む、
前記CAR構築物。
【請求項4】
以下を含むことを特徴とする、工学的免疫細胞:
(a
)請求項3に記載のCAR構築物を
発現する、第1発現カセット、と
(b)PD1-CD28またはPD1-IL7Rを含む融合タンパク質を発現する任意の第2発現カセット。
【請求項5】
以下を含有することを特徴とする、抗体薬物複合体:
(a)請求項1に記載の抗体から選択される抗体部分、と
(b)前記抗体部分に結合し、検出可能なマーカー、薬物、毒素、サイトカイン、放射性核種、酵素、またはこれらの組み合わせからなる群から選択される結合部分。
【請求項6】
以下に用いられることを特徴とする、請求項1に記載の抗体、請求項2に記載の組換えタンパク質、請求項3に記載のCAR構築物、請求項4に記載の免疫細胞、または請求項5に記載の抗体薬物複合体の使用:
(i)がんまたは腫瘍を予防および/または治療するための薬物または製剤の調製、および/または
(ii)検出試薬またはキットの調製。
【請求項7】
以下を含むことを特徴とする、薬物組成物:
請求項1に記載の抗体、請求項2に記載の組換えタンパク質、請求項3に記載のCAR構築物、請求項4に記載の免疫細胞、および/または請求項5に記載の抗体薬物複合体、および
薬学上許容される担体、希釈剤または賦形剤。
【請求項8】
以下の群から選択されるポリペプチドをコードすることを特徴とする、ポリヌクレオチド:
(1)請求項1に記載の抗体、
(2)請求項2に記載の組換えタンパク質、と
(3)請求項3に記載のCAR構築物。
【請求項9】
請求項8に記載のポリヌクレオチドを含有することを特徴とする、ベクター。
【請求項10】
請求項9に記載のベクターを含有すること、または請求項8に記載のポリヌクレオチドをゲノムに組み込んだことを特徴とする、遺伝工学的宿主細胞。
【請求項11】
以下のステップを含むことを特徴とする、工学的免疫細胞を調製する方法:
(A)改変されるべき免疫細胞を提供すること、と
(B)前記改変されるべき免疫細胞に、第1発現カセットおよ
び任意の第2発現カセットを導入し、ここで、前記第1発現カセットは、請求項3に記載のCAR構築物を発現し、前記第2発現カセットは、PD1-CD28またはPD1-IL7Rを含む融合タンパク質を発現し、それによって、工学的免疫細胞を得る。
【請求項12】
以下のステップを含むことを特徴とする、in vitroで試料中のB7-H3タンパク質を検出する方法:
(1)in vitroで、前記試料を請求項1に記載の抗体と接触させる、
(2)抗原抗体複合体が形成されているか否かを検出し、複合体が形成されていることは、試料中にB7-H3タンパク質が存在することを示す。
【請求項13】
基板(支持プレート)と、請求項1に記載の抗体または請求項5に記載の抗体薬物複合体を含有する試験片とを含むことを特徴とする、検出プレート。
【請求項14】
以下を含むことを特徴とする、請求項4に記載の工学的免疫細胞を調製するためのキット:
(a)第1容器、および第1容器内に位置し、請求項3に記載のCAR構築物を発現する第1発現カセットを含有する第1核酸分子と
任意の(b)第2容器、および第2容器に位置し、融合タンパク質を発現する第2発現カセットを含有する第2核酸分子。
【請求項15】
以下を含むことを特徴とする、診断キット:
(1)請求項1に記載の抗体を含有する第1容器、およ
び
(2)請求項1に記載の抗体に対する二次抗体を含有する第2容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオ医薬品の分野に関し、具体的には、B7-H3に対するモノクローナル抗体および細胞治療におけるその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
腫瘍細胞が発現する標的分子は腫瘍が識別され、さらに治療に応用できる主要な決定要素である。現在、各種の腫瘍治療技術は標的治療、抗体および/またはCAR-T細胞などの免疫治療手段を含み、すべて腫瘍及びその関連成分に発現する特異性標的分子に依存している。標的分子の特異性は腫瘍治療の治療効果、治療副作用の程度などと密接に関連している。B7-H3(CD276)は正常な組織、細胞では発現しないか極めて低いが、大部分の実体性悪性腫瘍細胞および腫瘍内血管内皮細胞あるいは腫瘍微小環境の他の細胞成分では高い発現を示し、良好な特異性の腫瘍標的分子である。
【0003】
モノクローナル抗体は、特定の抗原エピトープに対する単一のB細胞クローンによって産生される抗体である。モノクローナル抗体は特異性の標的分子を識別することによって、すでに生物、医学の研究、臨床診断と治療などに広く応用されている。
【0004】
キメラ抗原受容体T細胞治療は、T細胞にキメラ抗原受容体(CAR)の遺伝子改変を行い、CARを発現するT細胞(CAR-T)を形成した後、CAR-T細胞を生体に戻して治療に用いる技術方法である。CAR-T細胞による腫瘍治療は、現在、研究と応用開発の人気分野である。通常、CAR-T細胞はCAR分子上の一本鎖抗体可変領域(scFv)を通じて腫瘍細胞上の特異的標的分子を認識し、腫瘍細胞を殺傷し、さらに抗腫瘍免疫効果を発揮する。
【0005】
現在、B7-H3標的分子に対する抗体の腫瘍治療における効果は不明である。この抗体は主に免疫細胞上の阻害分子の遮断や調節として臨床応用されているが、B7-H3分子の免疫の仕組みは不明であり、その治療効果は未だ知られていない。
【0006】
現在、CAR-T細胞による固形腫瘍の治療効果はまだ良くない。有効な腫瘍特異的標的分子はCAR-T細胞治療の主要な要素の1つであり、固形腫瘍に対する現在知られている標的分子のCAR-T細胞治療はいずれも正確かつ持続的な治療効果を得ていない。
【0007】
そのため、当分野ではB7-H3を特異的に標的とし、腫瘍の良好な殺傷効果を有する抗体、およびそれに対応する工学的免疫細胞の開発が急務となっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、B7-H3を特異的に標的とし、腫瘍に対する良好な殺傷効果を有する抗体、およびそれに対応する工学的免疫細胞を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の態様は、以下の3つの相補性決定領域CDRを含む抗体の重鎖可変領域を提供する:
配列番号1、2または3に示すCDR1、
配列番号4、5または6に示すCDR2、および
配列番号7、8または9に示すCDR3。
【0010】
別の好ましい例では、前記重鎖可変領域のCDRは、配列番号NH、NH+3、およびNH+6で示される3つのCDRを含み、NHはそれぞれ1、2、または3である。
【0011】
別の好ましい例では、前記アミノ酸配列のいずれかは、少なくとも1個(例えば、1~3個、より好ましくは1~2個、より好ましくは1個)のアミノ酸が任意に付加、欠失、修飾および/または置換され、B7-H3結合親和性を保持することができる誘導配列をさらに含む。
【0012】
別の好ましい例では、前記重鎖可変領域は、ヒト由来のFR領域またはマウス由来のFR領域をさらに含む。
【0013】
別の好ましい例では、前記重鎖可変領域は、配列番号19~24のいずれかで示されるアミノ酸配列を有する。
【0014】
本発明の第2の態様は、本発明の第1の態様に記載の重鎖可変領域を有する抗体の重鎖を提供する。
【0015】
別の好ましい例では、前記抗体の重鎖は、重鎖一定領域をさらに含む。
【0016】
別の好ましい例では、前記重鎖一定領域は、ヒト、マウス、またはウサギ由来である。
【0017】
本発明の第3の態様は、以下の3つの相補性決定領域CDRを含む抗体の軽鎖可変領域を提供する:
配列番号10、11または12に示すCDR1'、
配列番号13、14または15に示すCDR2'、および
配列番号16、17または18に示すCDR3'。
【0018】
別の好ましい例では、前記軽鎖可変領域のCDRは、配列番号NL、NL+3、およびNL+6で示される3つのCDRを含み、NLはそれぞれ10、11、または12である。
【0019】
別の好ましい例では、前記アミノ酸配列のいずれかは、少なくとも1個(例えば、1~3個、より好ましくは1~2個、より好ましくは1個)のアミノ酸が任意に付加、欠失、修飾および/または置換され、B7-H3結合親和性を保持することができる誘導配列をさらに含む。
【0020】
別の好ましい例では、前記軽鎖可変領域は、ヒト由来のFR領域またはマウス由来のFR領域をさらに含む。
【0021】
別の好ましい例では、前記軽鎖可変領域は、配列番号25~30のいずれかで示されるアミノ酸配列を有する。
【0022】
本発明の第4の態様は、本発明の第3の態様に記載の軽鎖可変領域を有する抗体の軽鎖を提供する。
【0023】
別の好ましい例では、前記抗体の軽鎖は、軽鎖一定領域をさらに含む。
【0024】
別の好ましい例では、前記軽鎖一定領域は、ヒト由来、マウス由来、またはウサギ由来である。
【0025】
本発明の第5の態様は、以下を有する抗体を提供する:
(1)本発明の第1の態様に記載の重鎖可変領域、および/または
(2)本発明の第3の態様に記載の軽鎖可変領域。
【0026】
別の好ましい例では、前記抗体は、本発明の第2の態様に記載の重鎖、および/または、本発明の第4の態様に記載の軽鎖を有する。
【0027】
別の好ましい例では、ヒトB7-H3(野生型)に対する前記抗体の親和性Ka(1/Ms)が2×104以上(例えば、3×104~1.5×105)、より好ましくは4×104以上、より好ましくは5×104以上である。
【0028】
別の好ましい例では、ヒトB7-H3(野生型)に対する前記抗体の親和性Kd(1/s)が5×10-4以下(例えば、5×10-6~5×10-4)、より好ましくは4×10-4以下、より好ましくは3×10-4以下である。
【0029】
別の好ましい例では、ヒトB7-H3(野生型)に対する前記抗体の親和性KD(M)が8×10-9以下(例えば、1.0×10-10~8×10-9)、より好ましくは6×10-9以下、より好ましくは5×10-9以下である。
【0030】
別の好ましい例では、ヒトB7-H3(好ましくは野生型)に対する前記抗体の親和性は、Ka(1/Ms)が8.89E+4であり、Kd(1/s)が8.72E-6であり、KD(M)が9.81E-11である。
【0031】
別の好ましい例では、ヒトB7-H3(好ましくは野生型)に対する前記抗体の親和性は、Ka(1/Ms)が6.13E+4であり、Kd(1/s)が2.30E-4であり、KD(M)が3.76E-9である。(ヒト化HC1+LC1)
【0032】
別の好ましい例では、ヒトB7-H3(好ましくは野生型)に対する前記抗体の親和性は、Ka(1/Ms)が4.12E+4であり、Kd(1/s)が6.44E-5であり、KD(M)が1.56E-9である。(ヒト化HC1+LC2)
【0033】
別の好ましい例では、ヒトB7-H3(好ましくは野生型)に対する前記抗体の親和性は、Ka(1/Ms)が4.11E+4であり、Kd(1/s)が1.78E-4であり、KD(M)が4.34E-9である。(ヒト化HC1+LC3)
【0034】
別の好ましい例では、ヒトB7-H3(好ましくは野生型)に対する前記抗体の親和性は、Ka(1/Ms)が5.29E+4であり、Kd(1/s)が3.06E-5であり、KD(M)が5.78E-10である。(ヒト化HC2+LC1)
【0035】
別の好ましい例では、ヒトB7-H3(好ましくは野生型)に対する前記抗体の親和性は、Ka(1/Ms)が5.48E+4であり、Kd(1/s)が2.34E-5であり、KD(M)が4.28E-10である。(ヒト化HC2+LC2)
【0036】
別の好ましい例では、ヒトB7-H3(好ましくは野生型)に対する前記抗体の親和性は、Ka(1/Ms)が6.73E+4であり、Kd(1/s)が8.74E-6であり、KD(M)が1.30E-10である。(ヒト化HC2+LC3)
【0037】
別の好ましい例では、ヒトB7-H3(好ましくは野生型)に対する前記抗体の親和性は、Ka(1/Ms)が7.16E+4であり、Kd(1/s)が3.33E-5であり、KD(M)が4.66E-10である。(ヒト化HC3+LC1)
【0038】
別の好ましい例では、ヒトB7-H3(好ましくは野生型)に対する前記抗体の親和性は、Ka(1/Ms)が6.24E+4であり、Kd(1/s)が3.26E-5であり、KD(M)が5.23E-10である。(ヒト化HC3+LC2)
【0039】
別の好ましい例では、ヒトB7-H3(好ましくは野生型)に対する前記抗体の親和性は、Ka(1/Ms)が4.25E+4であり、Kd(1/s)が1.96E-5であり、KD(M)が4.62E-10である。(ヒト化HC3+LC3)
【0040】
別の好ましい例では、前記抗体は、動物由来抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、またはこれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0041】
別の好ましい例では、前記抗体は、二本鎖抗体または一本鎖抗体である。
【0042】
別の好ましい例では、前記抗体は、モノクローナル抗体である。
【0043】
別の好ましい例では、前記抗体は、部分的または完全ヒト化されたモノクローナル抗体である。
【0044】
別の好ましい例では、前記抗体の重鎖可変領域配列は、配列番号19~24のいずれかで示される、および/または
前記抗体の軽鎖可変領域配列は、配列番号25~30のいずれかで示される。
【0045】
別の好ましい例では、前記抗体は、IgG型である。
【0046】
別の好ましい例では、前記抗体は、薬物複合体の形態である。
【0047】
本発明の第6の態様は、以下を有する組換えタンパク質を提供する:
(i)本発明の第1の態様に記載の重鎖可変領域、本発明の第2の態様に記載の重鎖、本発明の第3の態様に記載の軽鎖可変領域、本発明の第4の態様に記載の軽鎖、または本発明の第5の態様に記載の抗体、および
(ii)任意の発現および/または精製を補助するタグ配列。
【0048】
別の好ましい例では、前記タグ配列は6Hisタグを含む。
【0049】
別の好ましい例では、前記組換えタンパク質(またはポリペプチド)は、融合タンパク質を含む。
【0050】
別の好ましい例では、前記組換えタンパク質は、モノマー、二量体、または多量体である。
【0051】
本発明の第7の態様は、抗原結合領域がB7-H3に特異的に結合するscFvであり、前記scFvが本発明の第1の態様で説明されるような重鎖可変領域と本発明の第3の態様で説明されるような軽鎖可変領域とを有するCAR構築物を提供する。
【0052】
別の好ましい例では、前記CARの構造は、次の式Iで表される:
L-scFv-H-TM-C-CD3ζ-Z-P (I)
ここで、
各「-」は、独立して、リンカーペプチドまたはペプチド結合である。
Lは無またはシグナルペプチド配列である。
scFvはB7-H3を標的とする一本鎖可変領域配列である。
Hは無またはヒンジ領域である。
TMは膜貫通ドメインである。
Cは共刺激シグナル分子である。
CD3ζはCD3ζに由来する細胞質シグナル伝達配列である。
Zは無、または自己切断タンパク質のコード配列である。
Pは無、または、PD1-CD28またはPD1-IL7R融合タンパク質を含むコード配列である。
【0053】
別の好ましい例では、前記scFvの構造は、式A1またはA2のように示される:
VL-VH (A1)、または
VH-VL (A2)
ここで、VLは抗B7-H3抗体の軽鎖可変領域である。VHは抗B7-H3抗体の重鎖可変領域である。「-」はリンカーペプチド(または可撓性リンカー)またはペプチド結合である。
【0054】
別の好ましい例では、前記式A1およびA2は、N端からC端に至るように構成されている。
【0055】
別の好ましい例では、前記VLおよびVHは、可撓性リンカーによって接続される。
【0056】
別の好ましい例では、前記可撓性リンカーは、1~5個(より好ましくは2~4個、より好ましくは3~4個)の連続する(G)4Sで示される配列である。
【0057】
別の好ましい例では、前記VLおよびVHは、それぞれ独立して、マウス由来、ヒト由来、ウサギ由来、または完全ヒトである。
【0058】
別の好ましい例では、VLのアミノ酸配列が、配列番号25~30のいずれかで示されるVLまたはその由来のVL(またはその活性フラグメント)からなる群から選択される。
【0059】
別の好ましい例では、VHのアミノ酸配列が、配列番号19~24のいずれかで示されるVHまたはその由来のVH(またはその活性フラグメント)からなる群から選択される。
【0060】
別の好ましい例では、前記scFvは、マウス由来、ヒト由来、ヒト由来とマウス由来のキメラ、または完全ヒト化されたの一本鎖抗体可変領域フラグメントである。
【0061】
別の好ましい例では、前記Lは、CD8、CD28、GM-CSF、CSF2RB、CD4、CD137、IL-2、IFNr、またはこれらの組み合わせからなる群から選択されるタンパク質のシグナルペプチドである。
【0062】
別の好ましい例では、前記Hは、CD8、CD28、CD137、CD80、CD86、またはこれらの組み合わせからなる群から選択されるタンパク質のヒンジ領域である。
【0063】
別の好ましい例では、前記TMは、CD28、CD3 epsilon、CD45、CD4、CD5、CD8、CD9、CD16、CD22、CD33、CD37、CD64、CD80、CD86、CD134、CD137、CD154、またはこれらの組み合わせからなる群から選択されるタンパク質の膜貫通領域である。
【0064】
別の好ましい例では、前記Cは、OX40、CD2、CD7、CD27、CD28、CD30、CD40、CD70、CD134、4-1BB(CD137)、PD1、Dap10、CDS、ICAM-1、LFA-1(CD11a/CD18)、ICOS(CD278)、NKG2D、GITR、TLR2、またはこれらの組み合わせからなる群から選択されるタンパク質の共刺激シグナル分子である。
【0065】
別の好ましい例では、前記Cは、CD28および/または4-1BB(CD137)由来の共刺激シグナル分子である。
【0066】
別の好ましい例では、前記自己切断タンパク質は、T2A、P2A、E2A、F2A、またはこれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0067】
別の好ましい例では、前記自己切断タンパク質は、furin-V5-SGSG-T2A、furin-V5-SGSG-P2A、furin-V5-SGSG-E2A、furin-V5-SGSG-F2A、またはこれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0068】
別の好ましい例では、前記自己切断タンパク質は、furin-SGSG-T2A、furin-SGSG-P2A、furin-SGSG-E2A、furin-SGSG-F2A、またはこれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0069】
別の好ましい例では、前記融合タンパク質の構造は、式IIで表される:
L1-I1-L2-H1-TM1-C1 (II)
ここで、
各「-」は、独立して、リンカーペプチドまたはペプチド結合である。
L1は無またはシグナルペプチド配列である。
I1はPD-1の細胞外セグメントである。
L2は無またはリンカーペプチド素子である。
H1は任意のヒンジ領域である。
TM1は無または膜貫通ドメインである。
C1は無または細胞内ドメインである。
【0070】
別の好ましい例では、前記L1は、GM-CSF、CD4、CD8、IL-2、IFNr、TNF、またはこれらの組み合わせからなる群から選択されるタンパク質のシグナルペプチドである。
【0071】
別の好ましい例では、前記L1のシグナルペプチド配列はMALPVTALLLPLALLLHAARP(配列番号31)である。
【0072】
別の好ましい例では、前記PD-1細胞外セグメントは、配列番号32で示されるアミノ酸配列を有する。
【0073】
別の好ましい例では、前記PD-1細胞外セグメントのアミノ酸配列は、配列番号32で示される。
【0074】
別の好ましい例では、前記リンカーペプチド素子は、G4S、mlgG3UH、LFL、cTPRs、ZAG、β2m、polyPro(Glyc)、polyPro、GlySer(Glyc)、またはそれらの組み合わせの1~9個(より良くは2~7個、より良くは2~4個)の連続する配列である。
【0075】
別の好ましい例では、前記H1は、IgG4、CD8、CD28、CD137、またはこれらの組み合わせからなる群から選択されるタンパク質のヒンジ領域である。
【0076】
別の好ましい例では、前記TM1は、CD4、CD8、CD28、またはこれらの組み合わせからなる群から選択されるタンパク質の膜貫通領域である。
【0077】
別の好ましい例では、前記TM1は、CD28からなる群から選択されるタンパク質の膜貫通領域である。
【0078】
別の好ましい例では、前記TM1は、配列番号33で示されるアミノ酸配列を有する。
【0079】
別の好ましい例では、前記TM1のアミノ酸配列は配列番号33で示される。
【0080】
別の好ましい例では、前記C1は、CD137、CD28、IL-7R、またはこれらの組み合わせからなる群から選択されるタンパク質の細胞内セグメントである。
【0081】
別の好ましい例では、前記C1は、CD28および/またはIL-7R由来の細胞内セグメントである。
【0082】
別の好ましい例では、前記C1は、配列番号34で示されるアミノ酸配列を有する。
【0083】
別の好ましい例では、前記P素子は、配列番号35で示されるアミノ酸配列を有する。
【0084】
別の好ましい例では、前記P素子のコード配列は、配列番号36で示されるヌクレオチド配列を有する。
【0085】
別の好ましい例では、前記CARのアミノ酸配列は、配列番号37で示される。
【0086】
別の好ましい例では、前記CARのコード配列は、配列番号38で示される。
【0087】
本発明の第8の態様は、以下を含む工学的免疫細胞を提供する:
(a)本発明の第7の態様に記載の外来性CAR構築物を発現する第1発現カセット、と
(b)PD1-CD28またはPD1-IL7Rを含む融合タンパク質を発現する任意の第2発現カセット。
【0088】
別の好ましい例では、前記第1発現カセットと前記第2発現カセットとの間は、自己切断タンパク質のコード配列を介して連結(またはタンデム)されている。
【0089】
別の好ましい例では、前記自己切断タンパク質は、T2A、P2A、E2A、F2A、またはこれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0090】
別の好ましい例では、前記自己切断タンパク質は、furin-V5-SGSG-T2A、furin-V5-SGSG-P2A、furin-V5-SGSG-E2A、furin-V5-SGSG-F2A、またはこれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0091】
別の好ましい例では、前記自己切断タンパク質は、furin-SGSG-T2A、furin-SGSG-P2A、furin-SGSG-E2A、furin-SGSG-F2A、またはこれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0092】
別の好ましい例では、前記融合タンパク質の結果は、式IIで示される:
L1-I1-L2-H1-TM1-C1 (II)
ここで、
各「-」は、独立して、リンカーペプチドまたはペプチド結合である。
L1は無またはシグナルペプチド配列である。
I1はPD-1の細胞外セグメントである。
L2は無またはリンカーペプチド素子である。
H1は任意のヒンジ領域である。
TM1は無または膜貫通ドメインである。
C1は無または細胞内ドメインである。
【0093】
別の好ましい例では、前記融合タンパク質は、配列番号35で示されるアミノ酸配列を有する。
【0094】
別の好ましい例では、前記融合タンパク質のコード配列は、配列番号36で示されるヌクレオチド配列を有する。
【0095】
別の好ましい例では、前記第1発現カセットは、請求項7に記載のCAR構築物をコードする核酸配列を含有する。
【0096】
別の好ましい例では、前記第2発現カセットは、前記融合タンパク質をコードする核酸配列を含有する。
【0097】
別の好ましい例では、前記第1および第2発現カセットは、それぞれプロモーターおよび/またはターミネーターをさらに含む。
【0098】
別の好ましい例では、前記プロモーターは哺乳動物プロモーターであり、好ましくはhEF1である。
【0099】
別の好ましい例では、前記プロモーターの配列は配列番号39で示される。
【0100】
別の好ましい例では、前記第1および第2発現カセットは、ベクター上に配置されるか、または工学的免疫細胞の染色体に組み込まれる。
【0101】
別の好ましい例では、前記第1発現カセットおよび第2発現カセットは、独立しているか、または連結されている。
【0102】
別の好ましい例では、前記第1および第2発現カセットは、同一または異なるベクター上に配置される。
【0103】
別の好ましい例では、前記第1発現カセットおよび第2発現カセットは、同じベクターに配置される。
【0104】
別の好ましい例では、前記ベクターは、DNA、RNA、プラスミド、レンチウイルスベクター、アデノウイルスベクター、レトロウイルスベクター、トランスポゾン、腫瘍溶解ウイルスベクター、他の遺伝子導入系、またはこれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0105】
別の好ましい例では、前記ベクターはレンチウイルスベクターである。
【0106】
別の好ましい例では、前記ベクターはトランスポゾンベクターである。
【0107】
別の好ましい例では、前記細胞は哺乳動物細胞である。
【0108】
別の好ましい例では、前記免疫細胞はインビトロである。
【0109】
別の好ましい例では、前記免疫細胞は自己である。
【0110】
別の好ましい例では、前記免疫細胞は非自己である。
【0111】
別の好ましい例では、前記免疫細胞は、ヒトまたはマウスのような非ヒト哺乳動物に由来する。
【0112】
別の好ましい例では、前記免疫細胞は霊長目動物(好ましくはヒト)由来である。
【0113】
別の好ましい例では、前記免疫細胞は、以下の群から選択される:
(i)キメラ抗原受容体T細胞(CAR-T細胞)
(ii)キメラ抗原受容体NK細胞(CAR-NK細胞)、または
(iii)外来T細胞レセプター(TCR)T細胞(TCR-T細胞)
【0114】
別の好ましい例では、前記免疫細胞は、NK細胞、T細胞、NKT細胞、(γδ)T細胞、単球、またはマクロファージを含む。
【0115】
本発明の第9の態様は、以下を含有する抗体薬物複合体を提供する:
(a)本発明の第1の態様に記載の重鎖可変領域、本発明の第2の態様に記載の重鎖、本発明の第3の態様に記載の軽鎖可変領域、本発明の第4の態様に記載の軽鎖、または本発明の第5の態様に記載の抗体、またはこれらの組み合わせからなる群から選択される抗体部分、と
(b)前記抗体部分に結合し、検出可能なマーカー、薬物、毒素、サイトカイン、放射性核種、酵素、またはこれらの組み合わせからなる群から選択される結合部分。
【0116】
別の好ましい例では、前記抗体部分と結合部分とが化学結合またはリンカーを介して結合されている。
【0117】
本発明の第10の態様は、
(i)がん若しくは腫瘍の予防および/または治療のための医薬または製剤の調製、および/または
(ii)検出試薬またはキットの調製
に使用するための、本発明の第1の態様に記載の重鎖可変領域、本発明の第2の態様に記載の重鎖、本発明の第3の態様に記載の軽鎖可変領域、本発明の第4の態様に記載の軽鎖、本発明の第5の態様に記載の抗体、本発明の第6の態様に記載の組換えタンパク質、本発明の第7の態様に記載のCAR構築物、本発明の第8の態様に記載の免疫細胞、または本発明の第9の態様に記載の抗体薬物複合体の用途を提供する。
【0118】
別の好ましい例では、前記腫瘍は、血液腫瘍、固形腫瘍、またはこれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0119】
別の好ましい例では、前記血液腫瘍は、急性骨髄性白血病(AML)、多発性骨髄腫(MM)、慢性リンパ性白血病(CLL)、急性リンパ性白血病(ALL)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、またはこれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0120】
別の好ましい例では、前記固形腫瘍は、胃がん、胃がん腹膜転移、肝臓がん、白血病、腎臓腫瘍、肺がん、小腸がん、骨がん、骨肉腫、前立腺がん、結腸直腸がん、乳がん、大腸がん、子宮頸がん、卵巣がん、リンパがん、鼻咽頭がん、副腎腫瘍、膀胱腫瘍、非小細胞性肺がん(NSCLC)、神経系腫瘍、脳グリオーマ、神経芽細胞腫、転移性悪性腫瘍、固形腫瘍腹腔転移、固形腫瘍骨盤転移、またはこれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0121】
別の好ましい例では、前記固形腫瘍は、頭頸部腫瘍、咽頭がん、肺がん、非小細胞性肺がん、気管支がん、胃がん、胃がんの腹膜転移腫瘍、食道がん、肝臓がん、胆管がん、膵臓がん、結腸直腸がん、結腸直腸がんの腹膜転移腫瘍、小腸がん、腎臓腫瘍、腎臓がん、膀胱腫瘍、移行性上皮悪性腫瘍、内分泌腫瘍、甲状腺がん、副腎腫瘍、乳がん、子宮頸がん、卵巣がん、卵巣がんの腹膜転移腫瘍、子宮内膜がん、絨毛がん、前立腺がん、精巣腫瘍、生殖細胞腫瘍、精原細胞がん、胚性腫瘍、神経系腫瘍、脳グリオーマ、神経芽細胞腫、皮膚腫瘍、悪性黒色腫、リンパがん、胸腺腫瘍、鼻咽頭がん、骨がん、肉腫、横紋筋肉腫、脂肪肉腫、血管肉腫、平滑筋肉腫、繊維肉腫、骨肉腫、ユーイング肉腫、固形腫瘍転移性腫瘍(例えば腹腔、胸腔、骨盤腔、実質臓器などの転移腫瘍)、またはこれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0122】
別の好ましい例では、前記腫瘍はB7-H3を発現または高発現する。
【0123】
別の好ましい例では、前記腫瘍はB7-H3陽性の腫瘍を含む。
【0124】
別の好ましい例では、前記腫瘍は、腫瘍血管内皮細胞または腫瘍微小環境におけるB7-H3陽性の腫瘍を含む。
【0125】
別の好ましい例では、前記抗体は、薬物複合体(ADC)の形態の抗体を含む。
【0126】
別の好ましい例では、前記検出試薬またはキットは、B7-H3を発現または高発現する腫瘍を診断するために使用される。
【0127】
別の好ましい例では、前記検出試薬またはキットは、試料中のB7-H3タンパク質を検出するために使用される。
【0128】
別の好ましい例では、前記検出試薬は試験片である。
【0129】
本発明の第11の態様は、以下を含む薬物組成物を提供する:
本発明の第1の態様に記載の重鎖可変領域、本発明の第2の態様に記載の重鎖、本発明の第3の態様に記載の軽鎖可変領域、本発明の第4の態様に記載の軽鎖、または本発明の第5の態様に記載の抗体、本発明の第6の態様に記載の組換えタンパク質、本発明の第7の態様に記載のCAR構築物、本発明の第8の態様に記載の免疫細胞、および/または本発明の第9の態様に記載の抗体薬物複合体、薬学上許容される担体、希釈剤または賦形剤。
【0130】
別の好ましい例では、前記薬物組成物は液状製剤である。
【0131】
別の好ましい例では、前記薬物組成物の剤形は注射剤である。
【0132】
別の好ましい例では、前記薬物組成物の中、前記細胞の濃度は1×103~1×109細胞/ml、より好ましくは1×105~1×108細胞/mlである。
【0133】
別の好ましい例では、前記薬物組成物は、腫瘍細胞を選択的に殺傷する他の薬物(例えば、核酸薬物、抗体薬物、標的薬物、他の免疫細胞薬物、他のCAR-T薬物、化学療法薬物、またはこれらの組合せ)をさらに含有する。
【0134】
別の好ましい例では、前記抗体薬物は、PD-1またはPD-L1阻害剤を含む。
【0135】
別の好ましい例では、前記阻害剤は、抗体、小分子化合物、microRNA、siRNA、shRNA、またはこれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0136】
本発明の第12の態様は、以下の組み合わせからなる群から選択されるポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを提供する:
(1)本発明の第1の態様に記載の重鎖可変領域、本発明の第2の態様に記載の重鎖、本発明の第3の態様に記載の軽鎖可変領域、本発明の第4の態様に記載の軽鎖、または本発明の第5の態様に記載の抗体、
(2)本発明の第6の態様に記載の組換えタンパク質、と
(3)本発明の第7の態様に記載のCAR構築物。
【0137】
本発明の第13の態様は、本発明の第12の態様に記載のポリヌクレオチドを含有するベクターを提供する。
【0138】
別の好ましい例では、前記ベクターは、細菌プラスミド、バクテリオファージ、酵母プラスミド、植物細胞ウイルス、哺乳動物細胞ウイルス(例えば、アデノウイルス、レトロウイルスなど)、または他のベクターを含む。
【0139】
本発明の第15の態様は、本発明の第13の態様に記載されたベクターを含有する、またはゲノム中に本発明の第12の態様に記載されたポリヌクレオチドが組み込まれている遺伝工学的宿主細胞を提供する。
【0140】
本発明の第15の態様は、以下のステップを含む、工学的免疫細胞を調製する方法を提供する:
(A)改変されるべき免疫細胞を提供すること、と
(B)改変されるべき免疫細胞に、第1発現カセットおよび/または任意の第2発現カセットを導入し、ここで、前記第1発現カセットは、本発明の第7の態様に記載のCAR構築物を発現し、第2発現カセットは、PD1-CD28またはPD1-IL7Rを含む融合タンパク質を発現し、それによって、工学的免疫細胞を得る。
【0141】
別の好ましい例では、ステップ(B)において、以下を含む。(B1)本発明の第7の態様に記載のCAR構築物を発現する第1発現カセットを免疫細胞に導入する。必要に応じて、(B2)融合タンパク質を発現する第2発現カセットを免疫細胞に導入する。ここで、前記ステップ(B1)は、ステップ(B2)の前に、後に、同時に、または交互に行われてもよい。
【0142】
別の好ましい例では、前記第1発現カセットは、本発明の第7の態様に記載のCAR構築物をコードする核酸配列を含有する。
【0143】
別の好ましい例では、前記第2発現カセットは、前記融合タンパク質をコードする核酸配列を含有する。
【0144】
別の好ましい例では、前記第1および第2発現カセットは、ベクター上に配置されるか、または工学的免疫細胞の染色体に組み込まれる。
【0145】
別の好ましい例では、前記第1および第2発現カセットは、同一または異なるベクター上に配置される。
【0146】
別の好ましい例では、前記第1発現カセットおよび第2発現カセットは、同じベクターに配置される。
【0147】
別の好ましい例では、前記ベクターは、DNA、RNA、プラスミド、レンチウイルスベクター、アデノウイルスベクター、レトロウイルスベクター、トランスポゾン、腫瘍溶解ウイルスベクター、他の遺伝子導入系、またはこれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0148】
別の好ましい例では、前記ベクターはウイルスベクター(例えば、レンチウイルスベクター)である。
【0149】
別の好ましい例では、前記ベクターはトランスポゾンベクターである。
【0150】
別の好ましい例では、前記免疫細胞はT細胞またはNK細胞である。
【0151】
別の好ましい例では、前記方法は、得られた工学的免疫細胞の機能および有効性を検出するステップをさらに含む。
【0152】
本発明の第16の態様は、以下のステップを含む、in vitroで試料中のB7-H3タンパク質を検出する方法を提供する:
(1)in vitroで、前記試料を本発明の第5の態様に記載の抗体と接触させる、
(2)抗原抗体複合体が形成されているか否かを検出し、複合体が形成されていることは、試料中にB7-H3タンパク質が存在することを示す。
【0153】
別の好ましい例では、前記方法は非診断的かつ非治療的である。
【0154】
本発明の第17の態様は、基板(支持プレート)と、本発明の第5の態様に記載の抗体または本発明の第9の態様に記載の抗体薬物複合体を含有する試験片とを含む検出プレートを提供する。
【0155】
本発明の第18の態様は、以下を含むことを特徴とする、本発明の第8の態様に記載の工学的免疫細胞を調製するためのキットを提供する:
(a)第1容器、および第1容器内に位置し、請求項7に記載のCAR構築物を発現する第1発現カセットを含有する第1核酸配列と
任意の(b)第2容器、および第2容器に位置し、融合タンパク質を発現する第2発現カセットを含有する第2核酸配列。
【0156】
別の好ましい例では、前記第1および第2の核酸配列は、独立しているか、または連結している。
【0157】
別の好ましい例では、前記第1および第2の核酸配列は、同一または異なる容器内に存在する。
【0158】
別の好ましい例では、前記第1および第2の核酸配列は、同一または異なるベクター上に位置する。
【0159】
別の好ましい例では、前記第1および第2の核酸配列は、同じベクターに位置する。
【0160】
本発明の第19の態様は、以下を含む診断キットを提供する:
(1)本発明の第5の態様に記載の抗体を含有する第1容器、および/または
(2)本発明の第5の態様に記載の抗体に対する二次抗体を含有する第2容器。
【0161】
別の好ましい例では、前記キットは、本発明の第17の態様に記載の検出プレートを含有する。
【0162】
本発明の第20の態様は、以下を含む、がんまたは腫瘍を治療する方法を提供する:本発明の第5の態様に記載の抗体、本発明の第6の態様に記載の組換えタンパク質、本発明の第7の態様に記載のCAR構築物、本発明の第8の態様に記載の免疫細胞、本発明の第9の態様に記載の抗体薬物複合体、本発明の第11の態様に記載の薬物組成物を、必要な対象に投与する。
【0163】
本発明の範囲内において、本発明の前記技術的特徴と、以下の実施形態のように具体的に説明される技術的特徴との間では、新規なまたは好ましい技術的解決手段を構成するように相互に結合することができることが理解されるべきである。紙幅に限りがあるので、ここではいちいち述べない。
【図面の簡単な説明】
【0164】
【
図1】ヒトB7-H3に対するモノクローナル抗体およびその一本鎖抗体(scFv)は、B7-H3に対して特異的な結合能を有することを示す図である。B7ファミリー分子のヒト由来hB7-H1、hB7-H4、hB7-H3とマウス由来mB7-H3を安定発現するCHO細胞を、それぞれ抗B7ファミリーモノクローナル抗体と抗ヒトB7-H3一本鎖抗体タンパク質(scFv)で染色し、マウスIgG抗体をホモ抗体対照(isotope)とし、フローサイトメトリーにより、B7-H3モノクローナル抗体と一本鎖抗体タンパク質(scFv)はいずれもB7-H3に特異的に結合することを示した。
【
図2】抗ヒトB7-H3一本鎖抗体およびそのモノクローナル抗体がB7-H3に近い特異的結合能を有することを示す図である。ヒトB7-H3を安定に発現するCHO細胞を、それぞれ異なる濃度の抗ヒトB7-H3モノクローナル抗体または抗ヒトB7-H3一本鎖抗体で染色し、フローサイトメトリーにより、抗ヒトB7-H3モノクローナル抗体およびその一本鎖抗体(scFv)がB7-H3に特異的に結合する能力がほぼ近似していることを示した。
【
図3-1】異なる種類の腫瘍細胞におけるB7-H3膜タンパク質の発現を示す図である。[
図3-1]複数の腫瘍のパラフィン切片を用いて免疫組織化学染色を行い、顕微鏡で観察した染色結果を示す図である。
【
図3-2】異なる種類の腫瘍細胞におけるB7-H3膜タンパク質の発現を示す図である。[
図3-2]B7-H3モノクローナル抗体を一次抗体とし、APC標識抗mIgGモノクローナル抗体を二次抗体とし、腫瘍細胞を染色し、フローサイトメトリーにより、B7-H3の各種腫瘍細胞膜上での発現を測定することを示す図である。マウスIgG1を同型一次抗体とすることを対照とした。
【
図4】抗B7-H3キメラ抗原受容体または共発現分子の抗B7-H3キメラ抗原受容体の構造を示す図である:(1)抗B7-H3一本鎖抗体と切断4-1BBを含み、かつCD3ζを欠失したB7-H3 CAR(B7-H3 Del-Z-CAR;Del-Z);(2)抗B7-H3一本鎖抗体、4-1BBおよびCD3ζ細胞内機能断片を含むB7-H3 CAR(B7-H3 4-1BB-CAR;BB-Z);(3)PD-1-CD28キメラ分子を共発現するB7-H3 4-1BB-CAR(BB-Z-PD28);PD1-CD28キメラ分子は、PD-1分子の細胞外セグメントと、CD28分子の細胞内セグメントとが連結しているキメラ分子である。(4)PD-1-IL-7Rキメラ分子を共発現するB7-H3 4-1BB-CAR(BB-Z-PDCA7R);PD1-IL-7Rキメラ分子は、PD-1分子の細胞外セグメントと、インターロイキン7受容体(IL-7R)分子の細胞内セグメントまたはその変異体とが連結しているキメラ分子である。(5)抗B7-H3一本鎖抗体とCD28,4-1BBおよびCD3ζ細胞内機能断片を含むB7-H3 CAR(B7-H3 CD28-4-1BB-CAR;28BB-Z);
【
図5】B7-H3標的細胞抗原刺激に対する異なる構造のB7-H3 CAR-T細胞の細胞増殖応答を示す図である。PD-1-IL-7Rキメラ分子を共発現するB7-H3 CAR-T細胞(BB-Z-PDCA7R)が最も増殖能が良い;B7-H3 4-1BB-CAR T細胞(BB-Z)、B7-H3 CD28-4-1BB-CAR T細胞(28BB-Z)とPD1-CD28分子を共発現するB7-H3 CAR-T細胞(BB-Z-PD28)は比較的に良い類似の増殖能を持っている;対照として、細胞内シグナル機能を欠損したB7-H3 CAR T細胞(Del-Z)は有効な細胞増殖を認めなかった。
【
図6】B7-H3に対する異なる構造のCAR-T細胞の標的腫瘍細胞に対するサイトカイン分泌応答を示す図である。異なる構造のCAR-T細胞がB7-H3陽性腫瘍細胞を特異的に認識し活性化した後、異なるレベルのサイトカイン(IL-2、IFN-r)の分泌応答を産生する。MDA-MB-231-H3KOはB7-H3ノックアウト後陰性の乳がん細胞であり、陰性標的細胞対照とし、PBSをブランク対照とした。
【
図7】異なる構造のB7-H3 CAR-T細胞による標的腫瘍細胞のin vitro特異的殺傷である。異なる構造のB7-H3に対するCAR-T細胞は一定の効果標的比でそれぞれ標的腫瘍細胞(肺がんPG細胞、卵巣がんSKOV3細胞、乳がんMDA-MB-231細胞)と共インキュベートした後、その殺傷機能を測定した。完全なCD3機能を欠損したB7-H3 CAR T細胞(Del-Z)は有効な殺傷作用がないことを除いて、他の各種CAR-T細胞はすべて類似の殺傷機能を持っている。MDA-MB-231-B7H3KOは、B7-H3ノックアウト後陰性の乳がん細胞であり、異なる構造のB7-H3 CAR-T細胞はいずれも殺傷機能を欠くことから、B7-H3標的抗原に対するB7-H3 CAR-T細胞の特異性が確認された。
【
図8】B7-H3に対する異なる構造のCAR-T細胞治療はマウス皮下腫瘍モデル(卵巣がん、肺がん)における腫瘍の成長を効果的に抑制できることを示す図である。マウス卵巣がん、肺がんの皮下モデルでは、異なる構造のB7-H3 CAR-T細胞を用いて静脈注射治療を行うと、対照としてCD3を完全に欠損したB7-H3 CAR T細胞(Del-Z)が腫瘍成長を抑制できないことを除いて、他の各種B7-H3 CAR-T細胞は腫瘍成長を効果的に抑制することができた。
【
図9】B7-H3 CAR-T細胞と抗PD-1抗体を併用することにより、抗腫瘍効果が向上したことを示す図である。マウス肺がんPGモデルにおいて、B7-H3 CAR-T細胞単独またはB7-H3 CAR-T細胞と抗PD-1抗体を併用した静脈内投与治療を行い、腫瘍の大きさをモニターすることにより治療効果を評価する。
【
図10】親和性の異なるヒト化一本鎖抗体によって構築されたCAR-T細胞の標的細胞に対する殺傷作用を示す図である。ヒト化後の異なる軽鎖と重鎖の組み合わせによって形成された一本鎖抗体は、異なる抗体親和性を有する。これらの異なる親和性一本鎖抗体に基づいて、B7H3-CAR-T-ori(ヒト化されていない配列で構築されたCAR-T)、ヒト化された異なる組み合わせ配列で構築されたCAR-T細胞(B7H3 CART-H2L2、B7H3 CART-H2L1、B7H3 CART-H1L2、B7H3 CART-L2H2)を含むCAR-T細胞をそれぞれ構築する。上記の異なる組み合わせのB7H3 CAR-T細胞はそれぞれ結腸がんLOVO細胞と共に培養(8時間)した後、その殺傷効果とサイトカイン分泌(IL-2、IFN-)を測定する。
【
図11】
図11-1はヒト化B7-H3 CAR-T細胞(B7H3 CART-H2L2)in vitroで結腸がんLOVO細胞を殺傷し、殺傷効果とサイトカイン分泌を検出する図である。
図11-2はマウス結腸がん腫瘍モデルにおけるヒト化B7-H3 CAR-T細胞の抗腫瘍効果である。
【
図12】
図12-1はヒト化B7-H3 CAR-T細胞(B7H3 CART-H2L2)in vitroで卵巣がんSKOV3細胞を殺傷し、殺傷効果とサイトカイン分泌を検出する図である。
図12-2はマウス卵巣がん腫瘍モデルにおけるヒト化B7-H3 CAR-T細胞の抗腫瘍効果である。
【
図13】はヒト化B7-H3 CAR-T細胞(B7H3 CART-H2L2)がin vitroで胃がんHGC27細胞を殺傷し、殺傷効果とサイトカイン分泌を検出する図である。
【
図14】はヒト化B7-H3 CAR-T細胞(B7H3 CART-H2L2)がin vitroで肝がんMHCC7721細胞を殺傷し、殺傷効果とサイトカイン分泌を検出する図である。
【
図15】は抗B7-H3一本鎖抗体(H2L2)と抗B7-H3一本鎖抗体(MGA271、84D)の競合結合実験である。その結果、抗B7-H3一本鎖抗体H2L2と84Dの一本鎖抗体は不競合的に結合し、両者はB7-H3分子上の異なる抗原エピトープに結合することが明らかになった。
【発明を実施するための形態】
【0165】
本発明者は、広範かつ詳細な研究、大量のスクリーニングを経て、意外にも初めてB7-H3に対する特異性および親和性の高い抗体、および前記抗体の高い特異性に基づいたキメラ抗原受容体免疫細胞を開発した。具体的には、本発明は、意外にも非常に優れた親和性および特異性を有する抗B7-H3モノクローナル抗体を得、それに基づいてヒト化抗体を得た。本発明の抗体はB7-H3抗原に高特異的に結合し、高い親和性を有する(Ka(1/Ms)、Kd(1/s)、KD(M)を測定したところ、いずれも非常に優れている)。本発明の抗体および対応するキメラ抗原受容体免疫細胞は、B7-H3陽性またはB7-H3を発現または高発現する腫瘍細胞を特異的に標的とすることができ、優れた腫瘍殺傷効果を有し、正常細胞に対しては殺傷能力がない。本発明はこれに基づいて完成された。
【0166】
[用語]
本開示内容をより容易に理解するために、最初にいくつかの用語が定義される。本出願において使用される場合、以下の用語は、本書に別段の明示的な規定がない限り、いずれも以下に示す意味を有するものとする。その他の定義は、出願書全体で説明されています。
【0167】
「約」という用語は、当業者によって決定された特定の値または組成の許容誤差の範囲内の値または組成を意味することができ、その値または組成がどのように測定または決定されるかに部分的に依存する。
【0168】
本書で使用されるように、「キメラ抗原受容体(CAR)」は、抗原に結合することができる細胞外ドメイン、細胞外ドメインとは異なるポリペプチドに由来する膜貫通ドメイン、および少なくとも1つの細胞内ドメインを含む融合タンパク質である。「キメラ抗原受容体(CAR)」は「キメラ受容体」、「T-body」、「キメラ免疫受容体(CIR)」とも呼ばれる。前記「抗原に結合することができる細胞外ドメイン」とは、ある抗原に結合することができるいかなるオリゴペプチドまたはポリペプチドを意味する。「細胞内ドメイン」とは、細胞内の生物学的プロセスを活性化又は阻害するためにシグナルを伝達するドメインとして知られているいかなるオリゴペプチド又はポリペプチドをいう。
【0169】
本書で使用されるように、「ドメイン」とは、ポリペプチドにおいて他の領域から独立し、かつ特異的な構造に折り畳まれた領域を意味する。
【0170】
本書で使用されるように、「腫瘍抗原」とは抗原性を有する生体分子であり、その発現ががんの原因となる。
【0171】
本書で使用されるように、「一本鎖可変領域フラグメント(ScFv)」とは、抗原に結合する能力を保持する抗体由来の一本鎖ポリペプチドを意味する。ScFvの例は、DNA組み換え技術によって形成された抗体ポリペプチドを含み、免疫グロブリン重鎖(H鎖)および軽鎖(L鎖)フラグメントのFv領域がスペーサー配列を介して連結されている。ScFvを改変するための様々な方法は当業者に知られている。
【0172】
本書で使用されるように、「投与」および「処置」という用語は、動物、ヒト、被験者、細胞、組織、器官、または生物流体への外因性薬物、治療剤、診断剤、または組成物の適用を意味する。「投与」と「処理」は治療、薬物動態学、診断、研究と実験方法を指すことができる。細胞の処理には、試薬と細胞との接触、試薬と流体との接触、流体と細胞との接触がある。「投与」と「処理」はまた、試薬、診断、結合組成物又は他の細胞によるin vitro及びex vivoでの処理を意味する。「処理」とは、人、動物又は研究対象に応用する場合、治療処理、予防又は予防的措置、研究及び診断をいう。抗ヒトB7-H3抗体とヒトまたは動物、被験者、細胞、組織、生理コンパートメントまたは生理流体との接触を含む。
【0173】
本書で使用されるように、「治療」という用語は、患者に内服または外用の治療剤を投与することを指し、本発明のいずれか一種の抗ヒトB7-H3抗体およびその組成物を含み、前記の患者は1つまたは複数の疾患症状を有し、これらの症状に対して治療剤が治療効果を有することが知られている。一般に、1つまたは複数の疾患の症状を緩和するのに有効な治療剤の量(治療上有効な量)を患者に投与する。
【0174】
本書で使用されるように、「任意」または「任意に」という用語は、後に説明される事象または状況が起こることがあるが、必ず起こることはないことを意味する。例えば、「任意に1-3個の抗体重鎖可変領域を含むものを選択する」とは、特定の配列の抗体重鎖可変領域は、1個、2個、または3個であってもよいが、必ず必要とすることはないことを意味する。
【0175】
本発明に記載された「配列同一性」は、適切な置換、挿入又は欠失などの突然変異がある場合に、最適な照合及び比較の際に、2つの核酸又は2つのアミノ酸配列間の同一性の程度を表す。本発明に記載された配列とそれと同一性を有する配列との間の配列同一性は、少なくとも85%、90%、または95%であってもよく、好ましくは少なくとも95%である。非制限的実施例には、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、100%が含まれる。
【0176】
[B7-H3]
ヒトB7-H3分子はB7ファミリーのメンバーであり、506個のアミノ酸を含む分子量が110kDaのI型膜貫通タンパクである。ヒトB7-H3遺伝子は最初にヒト樹状細胞由来のcDNAライブラリーからクローニングされ、その構造がB7ファミリー遺伝子と類似していることから、B7 Homolog3、略してB7-H3と命名された。B7-H3タンパクはシグナルペプチドに導かれて発現され、細胞外がIgCおよびIgV様ドメインであり、細胞内が高度に可変なシグナルドメインのI型膜貫通タンパクであって、アミノ酸配列においてB7ファミリーの他のメンバーと20-27%の相同性を有する。
【0177】
B7-H3の発現当初は主に免疫学的な研究に集中していたが、異なる研究において、B7-H3はT細胞に対する正の共刺激活性化と免疫抑制機能を有する異なる研究報告があり、その機能はまだ確実ではなかった。B7-H3分子はCD4+T細胞とCD8+T細胞の増殖を共刺激し、T細胞免疫殺傷反応を強化誘導し、IFN-γ、IL-8、TNF-αおよびIL-10などの分泌を選択的に刺激することが報告されている。その後のより多くの研究により、B7-H3はT細胞の活性化を負に制御し、CD4+T細胞の活性化及び相応するサイトカイン、例えばIFN-γ、IL-4の分泌を抑制することが証明された。同時に、B7-H3は、DC活性化を阻害し、抗原を伝達するTregの機能にも関与している可能性がある。
【0178】
B7-H3タンパクは正常な組織、細胞に発現しない或いは極めて低く発現するが、多種の腫瘍組織に高発現し、そして腫瘍の進展、患者の予後不良と臨床転帰不良と関連している。様々な研究において、B7-H3は非小細胞肺がん、前立腺がん、黒色腫、乳がんおよび膵臓がんなど多くの患者の腫瘍組織に発現しており、また、B7-H3の高発現は関連腫瘍のリンパ節転移または骨転移、腫瘍治療抵抗、術後進展再発および患者死亡率と正の相関があることが明らかになった。従って、B7-H3分子は、新規な固形腫瘍標的分子とすることができる。
【0179】
[PD-1細胞外セグメント]
PD-1細胞外セグメントは、PD-1分子の細胞外セグメントである。
【0180】
PGWFLDSPDRPWNPPTFSPALLVVTEGDNATFTCSFSNTSESFVLNWYRMSPSNQTDKLAAFPEDRSQPGQDCRFRVTQLPNGRDFHMSVVRARRNDSGTYLCGAISLAPKAQIKESLRAELRVTERRAEVPTAH (配列番号32)
【0181】
[抗体]
本書で使用されるように、「抗体」という用語は免疫グロブリンのことであり、2本の同じ重鎖と2本の同じ軽鎖が鎖間ジスルフィド結合で連結されたテトラペプチド鎖構造である。免疫グロブリン重鎖定常領域のアミノ酸組成と配列順序が異なるため、その抗原性も異なる。これにより、免疫グロブリンを5種類に分け、あるいは免疫グロブリンのアイソフォームと呼ばれ、すなわちIgM、IgD、IgG、IgAとIgEがあり、その対応する重鎖はそれぞれμ鎖、δ鎖、γ鎖、α鎖、ε鎖である。同一種類のIgはそのヒンジ領域のアミノ酸組成と重鎖ジスルフィド結合の数と位置の違いによって、また異なる亜類に分けることができ、例えばIgGはIgG1、IgG2、IgG3、IgG4に分けることができる。軽鎖は定常領域によってκ鎖またはλ鎖に分類される。5種類のIgの各Igはκ鎖またはλ鎖を有していてもよい。異なる種類の免疫グロブリンのサブユニット構造及び三次元配置は当業者によく知られている。
【0182】
本発明に記載の抗体軽鎖は、軽鎖定常領域をさらに含むことができ、前記軽鎖定常領域はヒト由来またはマウス由来のκ鎖、λ鎖、またはその変異体を含む。
【0183】
本発明では、本発明に記載の抗体重鎖は、重鎖定常領域をさらに含むことができ、前記重鎖定常領域はヒト由来またはマウス由来のIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、またはその変異体を含む。抗体重鎖と軽鎖のN末端側に近い約110個のアミノ酸の配列に変化が大きく、可変領域(Fv領域)とする。C末端付近の残りのアミノ酸配列は比較的に安定していて、定常領域とする。可変領域は3つの超可変領域(HVR)と4つの配列が比較的保守的な骨格領域(FR)を含む。3つの超可変領域は抗体の特異性を決定し、相補性決定領域(CDR)とも呼ばれる。軽鎖可変領域(LCVR)と重鎖可変領域(HCVR)はそれぞれ3つのCDR領域と4つのFR領域からなり、アミノ末端からカルボキシ末端に至る順序はFR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4である。軽鎖の3つのCDR領域はLCDR1、LCDR2とLCDR3を指す。重鎖の3つのCDR領域は、HCDR1、HCDR2およびHCDR3を指す。
【0184】
本発明の抗体は、マウス由来抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体を含み、好ましくはヒト化抗体とする。「マウス由来抗体」という用語は、本発明において、当技術分野の知識及び技能に基づいて作製された抗ヒトB7-H3のモノクローナル抗体を指す。作製時にB7-H3抗原を被験体に注入し、所望の配列または機能・特性を有する抗体を発現するハイブリドーマを単離する。本発明の一つの好ましい実施形態では、前記マウス由来B7-H3抗体またはその抗原結合フラグメントは、マウス由来κ鎖、λ鎖またはその変異体の軽鎖定常領域をさらに含むことができ、またはマウス由来IgG1、IgG2、IgG3またはその変異体の重鎖定常領域をさらに含むことができる。
【0185】
「キメラ抗体(chimeric antibody)」という用語は、マウス由来抗体の可変領域とヒト抗体の定常領域を融合させた抗体であり、マウス由来抗体によって誘発される免疫応答反応を軽減することができる。
【0186】
「ヒト化抗体(humanized antibody)」という用語は、CDR移植抗体(CDR-grafted antibody)とも呼ばれ、マウスのCDR配列をヒトの抗体可変領域フレームワークに移植し、すなわち、異なる種類のヒト種族抗体フレームワークの配列の中で産生される抗体を指す。ヒト化抗体は、キメラ抗体が大量のマウスタンパク成分を担持するによって誘導される異種反応を克服することができる。このような構造配列は、種族抗体遺伝子配列を含む共通のDNAデータベースまたは開示された参考文献から取得することができる。免疫原性の低下と同時に引き起こされる活性の低下を回避するために、前記ヒト抗体可変領域フレーム配列に対して、少なくとも逆方向突然変異または回復突然変異を行うことにより、活性を維持することができる。
【0187】
「抗体の抗原結合フラグメント」(または「抗体フラグメント」と略称する)という用語は、抗体の抗原に特異的に結合する(例えば、B7-H3)能力を保持する1つまたは2以上のフラグメントをいう。抗体の抗原結合機能は全長抗体のフラグメントを用いて行うことができることを示した。「抗体の抗原結合フラグメント」という用語に含まれる結合フラグメントの実例としては、
(i)VL、VH、CL及びCH1ドメインからなる一価のフラグメントであるFabフラグメントと、
(ii)ヒンジ領域においてジスルフィド架橋で接続された二つのFabフラグメントの二価のフラグメントを含むF(ab’)2フラグメントと、
(iii)VH及びCH1ドメインからなるFdフラグメントと、
(iv)抗体の片腕のVH及びVLドメインからなるFvフラグメントと、が挙げられる。
【0188】
Fv抗体は抗体重鎖可変領域、軽鎖可変領域を含むが、定常領域はなく、すべての抗原結合部位の最小抗体フラグメントを有する。一般に、Fv抗体はVHとVLドメインの間のポリペプチドリンカーも含み、抗原結合に必要な構造を形成することができる。
【0189】
「CDR」という用語は抗体の可変領域内で主に抗原結合を促進する6つの超可変領域の1つを指す。前記6つのCDRの最も一般的な定義の1つは、KabatE.Aら((1991)Sequences of proteins of immunological interest.NIH Publication91-3242)によって提供された。
【0190】
「エピトープ」または「抗原決定基」という用語は、抗原における免疫グロブリンまたは抗体が特異的に結合する部位(例えば、B7-H3分子における特定の部位)を意味する。エピトープは、通常独特の空間配座で少なくとも3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14または15個の連続的または非連続的なアミノ酸を含む。
【0191】
「特異的な結合」、「選択的な結合」、「選択的に結合する」、および「特異的に結合する」という用語は、予め決定された抗原上のエピトープに対する抗体の結合を意味する。一般に、抗体は約10-7M未満、例えば約10-8M未満、10-9M未満、または10-10M未満の親和性(KD)で結合する。
【0192】
「競合結合」という用語は、本発明のモノクローナル抗体がヒトB7-H3の細胞外領域における同一エピトープ(抗原決定基とも呼ばれる)または同一エピトープの一部を認識し、前記抗原と結合する抗体を意味する。本発明のモノクローナル抗体と同一エピトープに結合する抗体とは、本発明のモノクローナル抗体が認識するヒトB7-H3のアミノ酸配列において認識し、結合する抗体を指す。
【0193】
「KD」または「Kd」という用語は、特定の抗体-抗原の相互作用の解離平衡定数を意味する。一般に、本発明の抗体は、約10-7M未満、例えば約10-8M、10-9Mまたは10-10M未満またはそれ以下の解離平衡定数(KD)でB7-H3に結合し、表面プラズモン共鳴(SPR)技術を使用してBIACORE装置において測定される。
【0194】
本書で使用されるように、「抗原決定基」という用語は、本発明の抗体または抗原結合フラグメントによって認識される抗原上の不連続な3次元空間部位を指す。
【0195】
本発明は、完全な抗体だけでなく、免疫活性を有する抗体のフラグメント、または抗体と他の配列と形成された融合タンパクを含む。したがって、本発明は、前記抗体のフラグメント、誘導体、および類似体をさらに含む。
【0196】
本発明において、抗体には、当業者が熟知している技術を用いて作製されたマウス抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体又は全ヒト抗体が含まれる。ヒト及び非ヒト部分を含むキメラ及びヒト化モノクローナル抗体のような組み換え抗体は、当技術分野で周知のDNA組み換え技術を用いて作製することができる。
【0197】
本書で使用されるように、「モノクローナル抗体」という用語は、単一細胞由来のクローンから分泌される抗体を意味する。モノクローナル抗体は、個々の抗原エピトープに対して高度な特異性を有する。前記細胞は真核、原核、あるいはファージのクローン細胞株である可能性がある。
【0198】
本発明において、抗体は、単一特異性、二重特異性、三重特異性、またはさらに多くの多重特異性である可能性がある。
【0199】
本発明において、本発明の抗体はその保存的変異体を含み、本発明の抗体のアミノ酸配列と比較して、10個以下、好ましくは8個以下、より好ましくは5個以下、最適は3個以下のアミノ酸が相似または類似の性質を有するアミノ酸に置換されてポリペプチドを形成する。これらの保存的変異ポリペプチドは、好ましくは、表Aに従ってアミノ酸の置換を行って産出するものである。
【表A】
【0200】
[ヒトB7-H3特異性抗体]
本発明は抗ヒトB7-H3抗体(以下、B7-H3抗体という)を提供する。具体的に、本発明は重鎖可変領域(VH)アミノ酸配列を含む重鎖と、軽鎖可変領域(VL)アミノ酸配列を含む軽鎖とからなるB7-H3に対する高特異性、高親和性抗体を提供する。本発明のB7-H3抗体は、抗原特異性T細胞の応答を刺激することにより、T細胞の抗腫瘍作用を強化し、患者自身の腫瘍に対する免疫系反応を最大限に高め、腫瘍細胞を殺傷する目的を達成する。
【0201】
好ましくは、重鎖可変領域(VH)アミノ酸配列および軽鎖可変領域(VL)アミノ酸配列のそれぞれのCDRは、以下の群から選択される。
【0202】
a1)配列番号1;
a2)配列番号2;
a3)配列番号3;
a4)配列番号4;
a5)配列番号5;
a6)配列番号6;
a7)配列番号7;
a8)配列番号8;
a9)配列番号9;
a10)配列番号10;
a11)配列番号11;
a12)配列番号12;
a13)配列番号13;
a14)配列番号14;
a15)配列番号15;
a16)配列番号16;
a17)配列番号17;
a18)配列番号18。
【0203】
上記アミノ酸配列中の任意の1種のアミノ酸配列が少なくとも1個(例えば1-5個、1-3個、好ましくは1-2個、より好ましくは1個)のアミノ酸を付加、欠失、改変及び/又は置換したB7-H3結合親和性を有する配列とする。
【0204】
ほかの好ましい例では、少なくとも1つのアミノ酸が付加、欠失、改変および/または置換された配列で形成された配列は、好ましくは相同性が少なくとも80%で、より好ましくは少なくとも85%で、さらに好ましくは少なくとも90%で、最適は少なくとも95%である。
【0205】
本発明の抗体は、二本鎖または一本鎖抗体であってもよく、動物由来抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体から選択されてもよく、好ましくはヒト化抗体、ヒト-動物キメラ抗体とし、より好ましくは全ヒト化抗体とする。
【0206】
本発明における前記抗体誘導体は、一本鎖抗体、および/または抗体フラグメント、例えば、Fab、Fab'、(Fab')2、または当該分野で知られている他の抗体誘導体など、ならびにIgA、IgD、IgE、IgG、およびIgM抗体またはその他のサブタイプの抗体の中にいずれか1つまたは2以上であってもよい。
【0207】
ここで、前記動物は、マウス等の哺乳動物が好ましい。
【0208】
本発明の抗体は、ヒトB7-H3を標的とするマウス由来抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、CDRグラフティングおよび/または改変される抗体であってもよい。
【0209】
本発明の1つの好ましい実施例では、上記配列番号1、2、3、4、5、6、7、8および9のいずれか1つまたは2つ以上の配列、または少なくとも1つのアミノ酸が付加、欠失、改変および/または置換されたB7-H3結合親和性を有する配列は、重鎖可変領域(VH)のCDR領域に位置する。
【0210】
本発明の1つの好ましい実施例では、上記配列番号10、11、12、13、14、15、16、17および18のいずれか1つまたは2つ以上の配列、または少なくとも1つのアミノ酸が付加、欠失、改変および/または置換されたB7-H3結合親和性を有する配列は、軽鎖可変領域(VL)のCDR領域に位置する。
【0211】
本発明の1つのより好ましい実施形態では、VHCDR1、CDR2、CDR3はそれぞれ独立して、配列番号1、2、3、4、5、6、7、8および9のいずれか1つまたは2つ以上の配列、または少なくとも1つのアミノ酸が付加、欠失、改変および/または置換されたB7-H3結合親和性を有する配列から選択され、VLCDR1、CDR2、CDR3はそれぞれ独立して、配列番号10、11、12、13、14、15、16、17および18のいずれか1つまたは2つ以上の配列、または少なくとも1つのアミノ酸が付加、欠失、改変および/または置換されたB7-H3結合親和性を有する配列から選択される。
【0212】
本発明の上記内容において、前記付加、欠失、改変及び/又は置換されたアミノ酸の数は、好ましくは初期アミノ酸配列の総アミノ酸数の40%以下であり、より好ましくは35%以下であり、さらに好ましくは1-33%であり、さらに好ましくは5-30%であり、さらに好ましくは10-25%であり、さらに好ましくは15-20%である。
【0213】
本発明において、付加、欠失、改変および/または置換されたアミノ酸の数は、通常、1、2、3、4または5個であり、より好ましくは1-3個であり、さらに好ましくは1-2個であり、最適は1個である。
【0214】
[抗体の作製]
モノクローナル抗体の産生に適した任意の方法が、本発明のB7-H3抗体の産生に適用できる。例えば、連結(人工改変・構築)された、または天然に存在するB7-H3タンパクまたはそのフラグメントを用いて動物に免疫を起こらせることができる。アジュバント、免疫刺激剤、免疫強化のための反復接種を含む適切な免疫接種方法を使用することができ、1つまたは2つ以上の方法を使用することができる。
【0215】
いかなる適切な形式のB7-H3は免疫原(抗原)とし、B7-H3に特異的な非ヒト抗体を産生するのに用いれ、前記抗体の生物学的活性をスクリーニングする。免疫原は、単独で使用でき、または当技術分野で周知の1つまたは2つ以上の免疫原性増強剤と組み合わせて使用することができる。免疫原は、天然由来から精製されてもよく、遺伝的に改変された細胞において産生されてもよい。免疫原をコードするDNAは、ゲノムまたは非ゲノム(例えば、cDNA)から由来してもよい。免疫原をコードするDNAは、適切な遺伝ベクターを用いて発現することができ、前記ベクターはアデノウイルスベクター、バキュロウイルスベクター、プラスミドおよび非ウイルスベクターを含むがこれらに限定されない。
【0216】
本発明のB7-H3抗体を産出するための例示的な方法は、実施例1に記載されている。
【0217】
ヒト化抗体は、IgM、IgD、IgG、IgAおよびIgEを含む任意の種類の免疫グロブリンから選択することができる。本発明では、抗体はIgG抗体であり、IgG1またはIgG4サブタイプを用いる。
【0218】
同様に、いずれの種類の軽鎖も、本書の化合物および方法において使用することができる。具体的には、κ、λ鎖、またはそれらの変異体は、本発明の化合物および方法において使用することができる。
【0219】
本発明のB7-H3抗体をヒト化するための例示的な方法は、実施例1に記載されている。
【0220】
本発明の抗体又はそのフラグメントのDNA分子配列は、PCR増幅やゲノムライブラリースクリーニング等の従来技術を用いて取得することができる。さらに、異なる軽鎖と重鎖のコード配列を異なる組み合わせ形態で融合させて一本鎖抗体を形成することもできる。また、異なる組み合わせまたは異なるリンクで改変された一本鎖抗体の機能を検出・分析することにより、最適化された一本鎖抗体を得ることができる。
【0221】
関連する配列が取得されると、再構成法を用いて大量に関連する配列を取得することができる。これは通常、それをベクターにクローニングし、細胞に再導入した後、通常の方法で増殖後の宿主細胞から分離して関連配列を得る。
【0222】
さらに、特にフラグメントの長さが短い場合には、人工合成の方法で関連する配列を合成することもできる。通常、複数の小さなフラグメントを合成して、そしてそれらを連結することで、配列の長いフラグメントを取得できる。その後、このDNA配列は、当技術分野において公知の種々の既存のDNA分子(またはベクター)および細胞に導入することができる。
【0223】
「核酸分子」という用語は、DNA分子及びRNA分子を意味する。核酸分子は、一本鎖または二本鎖であってもよいが、好ましくは二本鎖DNAである。核酸が他の核酸配列と機能的関係にある場合、核酸は「効率的に連結されている」。例えば、プロモーターまたはエンハンサーがコード配列の転写に影響を与える場合、プロモーターまたはエンハンサーが前記コード配列に効果的に連結されている。
【0224】
「ベクター」という用語は、それに連結された別の核酸の核酸分子を輸送することができることを意味する。一実施形態では、ベクターが「プラスミド」であり、それは、ほかのDNAセグメントをその中の環状二本鎖DNAループに連結できることを指す。
【0225】
本発明はまた、上記の適切なDNA配列および適切なプロモーターまたは制御配列を含むベクターに関する。これらのベクターは、タンパク質の発現を可能にするために適切な宿主細胞を形質転換するのに使用することができる。
【0226】
「宿主細胞」という用語は、発現ベクターが導入された細胞を意味する。宿主細胞は、細菌細胞のような原核細胞であってもよく、酵母細胞のような低級真核細胞であってもよく、植物や動物細胞(哺乳動物細胞など)のような高等真核細胞であってもよい。
【0227】
本発明に記載の組み換えDNAで宿主細胞を形質転換する工程は、当技術分野に周知の技術を用いて実施することができる。得られた形質転換体は、従来の方法で培養することができ、形質転換体は本発明の遺伝子がコードするポリペプチドを発現する。使用された宿主細胞に応じて、通常の培地を用いて適切な条件下で培養する。
【0228】
通常、形質転換された宿主細胞は、本発明の抗体の発現に適した条件下で培養される。その後、プロテインA-セファロース、ハイドロキシアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析、イオン交換クロマトグラフィー、疎水性クロマトグラフィー、モレキュラーシーブクロマトグラフィー及びアフィニティークロマトグラフィー等の通常の免疫グロブリン精製工程を用いて、当業者に熟知された従来の分離・精製方法で精製し、本発明の抗体を得る。
【0229】
得られたモノクローナル抗体は、従来の手段により同定することができる。例えば、モノクローナル抗体の結合特異性は、免疫沈降またはin vitro結合試験(例えば、放射性免疫測定(RIA)または酵素結合免疫吸着測定(ELISA))によって測定することができる。
【0230】
[キメラ抗原受容体(CAR)]
キメラ免疫抗原受容体(Chimeric antigen receptors、CARs)は細胞外抗原認識領域、膜貫通領域および細胞内共刺激シグナル領域からなる。細胞外抗原認識領域は通常scFv(single-chain variable fragment)である。CARsは次のように設計された。第一世代CARは一つの細胞内シグナル成分CD3ζまたはFcγRI分子しかなく、細胞内に一つの活性化ドメインしかないため、短いT細胞増殖と比較的に少ないサイトカインの分泌を引き起こすことしかできなく、長い時間のT細胞増殖シグナルと持続的な体内抗腫瘍効果を提供することができないため、非常に良い臨床治療効果を得ていない。第二世代CARsは元の構造に基づいて、CD28、4-1BB、OX40、ICOSのような1つの共刺激分子を導入し、第一世代のCARsと比べて機能が大きく向上し、CAR-T細胞の持続性と腫瘍細胞に対する殺傷能力を更に強化した。第二世代CARsに基づいて、CD27、CD134のようないくつか新しい免疫共刺激分子を連結して、第三世代と第四世代CARsに発展した。
【0231】
CARsの細胞外セグメントは1つの特異な抗原を識別することができ、その後細胞内ドメインを通じてこのシグナルを伝達し、細胞の活性化増殖、細胞溶解毒性を引き起こし、サイトカインを分泌し、更に標的細胞を除去する。まず、患者の自己細胞(または異種ドナー)を分離し、CARを産生する免疫細胞を活性化して遺伝子改変し、その後、同じ患者に注入する。このようにして移植片対宿主病に罹患する確率は極めて低く、抗原は免疫細胞によって非MHC制限的に認識される。
【0232】
CAR-免疫細胞治療は血液悪性腫瘍治療において非常に高い臨床反応率を得ており、このような高い反応率は従来のいずれの治療手段でも達成できなかったものであり、世界各地で臨床研究のブームを引き起こしている。
【0233】
具体的には、本発明のキメラ抗原受容体(CAR)は、細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン、および細胞内ドメインを含む。細胞外ドメインは、標的特異的結合要素(抗原結合ドメインとも呼ばれる)を含む。細胞内ドメインは、共刺激シグナル伝達領域および/またはζ鎖部分を含む。共刺激シグナル伝達領域とは、共刺激分子を含む細胞内ドメインの一部を指す。共刺激分子は、抗原受容体またはそれらのリガンドではなく、リンパ球の抗原に対する効果的な応答に必要な細胞表面分子である。
【0234】
CARの細胞外ドメインと膜貫通ドメインとの間、またはCARの細胞質ドメインと膜貫通ドメインとの間にリンカーを組み込むことができる。本書で使用されるように、「リンカー」という用語は、通常、膜貫通ドメインをポリペプチド鎖の細胞外ドメインまたは細胞質ドメインに連結する役割を果たす任意のオリゴペプチドまたはポリペプチドを指す。リンカーは、0-300個のアミノ酸を含むことができ、好ましくは2-100個、最も好ましくは3-50個を含む。
【0235】
本発明のCARは、T細胞で発現する場合、抗原結合特異性に基づいて抗原認識を行うことができる。その関連抗原を結合する時、腫瘍細胞に影響を与え、腫瘍細胞の発育を阻害し、死亡を促進する或いはその他の方式で影響され、そして患者の腫瘍負荷の縮小或いは除去に繋がる。抗原結合ドメインは、共刺激分子および/またはζ鎖に由来する1つまたは2つ以上の細胞内ドメインと融合することが好ましい。好ましくは、抗原結合ドメインは、4-1BBシグナル伝達ドメイン及び/又はCD3ζシグナルドメインを組み合わせた細胞内ドメインと融合する。
【0236】
本書で使用されるように、「抗原結合ドメイン」「一本鎖抗体フラグメント」とは、いずれも抗原結合活性を有するFabフラグメント、Fab'フラグメント、F(ab')2フラグメント、または単一Fvフラグメントを意味する。Fv抗体は抗体重鎖可変領域、軽鎖可変領域を含むが、定常領域はなく、すべての抗原結合部位の最小抗体フラグメントを有する。一般に、Fv抗体はVHとVLドメインの間のポリペプチドリンカーも含み、抗原結合に必要な構造を形成することができる。抗原結合ドメインは通常scFv(single-chain variable fragment)である。scFvの大きさは一般に抗体全体の1/6である。一本鎖抗体は、ヌクレオチド鎖によってコードされるアミノ酸鎖配列であることが好ましい。本発明の好ましい手段として、前記scFvは、腫瘍高発現抗原B7-H3を特異的に認識する抗体を含み、好ましくは一本鎖抗体を含む。
【0237】
本発明において、本発明のscFvはその保存的変異体を含み、本発明のscFvのアミノ酸配列と比較して、10個以下、好ましくは8個以下、より好ましくは5個以下、最適は3個以下のアミノ酸が相似または類似の性質を有するアミノ酸に置換されてポリペプチドを形成する。
【0238】
本発明において、前記付加、欠失、改変及び/又は置換されたアミノ酸の数は、好ましくは初期アミノ酸配列の総アミノ酸数の40%以下であり、より好ましくは35%以下であり、さらに好ましくは1-33%であり、さらに好ましくは5-30%であり、さらに好ましくは10-25%であり、さらに好ましくは15-20%である。
【0239】
本発明において、付加、欠失、改変および/または置換されたアミノ酸の数は、通常、1、2、3、4または5個であり、より好ましくは1-3個であり、さらに好ましくは1-2個であり、最適は1個である。
【0240】
ヒンジ領域および膜貫通領域(膜貫通ドメイン)の場合、CARは、CARの細胞外ドメインに融合した膜貫通ドメインを含むように設計されることができる。一実施形態では、CAR内のドメインの1つに自然に関連付けられた膜貫通ドメインが使用される。いくつかの例において、膜貫通ドメインを選択してもよく、または、同じまたは異なる表面膜タンパク質の膜貫通ドメインへのそのようなドメインの結合を回避し、受容体複合体の他のメンバーとの相互作用を最小化するために、アミノ酸置換によって改変されてもよい。
【0241】
本発明では、本発明のCARは、本発明の第7の態様で説明されている。
【0242】
[キメラ抗原受容体T細胞(CAR-T細胞)]
本書で使用されるように、「CAR-T細胞」、「CAR-T」、「本発明のCAR-T細胞」という用語は、いずれも本発明の第7の態様に記載されたCAR-T細胞を指し、本発明のCAR-T細胞は、腫瘍抗原(例えば、B7-H3)を標的とすることができる。
【0243】
本発明で述べたCARは発現すると細胞膜を通過し細胞膜上に局在する。
【0244】
CAR-T細胞は他のT細胞に基づく治療手段に比べて以下の優位性がある。(1)CAR-T細胞の作用過程はMHCの制限を受けない。(2)多くの腫瘍細胞が同じ腫瘍抗原を発現することに鑑み、ある種類の腫瘍抗原に対するCAR遺伝子の構築が完成すれば、広く利用されることができる。(3)CARは腫瘍タンパク質抗原を利用することができ、また糖脂質非タンパク質抗原を利用することができ、腫瘍抗原の標的範囲を拡大した。(4)患者の自己細胞を使用することにより拒絶反応のリスクが低減された。(5)CAR-T細胞は免疫記憶機能を有し、体内で長期間生存することができる。
【0245】
[キメラ抗原受容体NK細胞(CAR-NK細胞)]
本書で使用されるように、「CAR-NK細胞」、「CAR-NK」、「本発明のCAR-NK細胞」という用語は、いずれも本発明の第1の態様で説明されるCAR-NK細胞を指す。本発明のCAR-NK細胞は、腫瘍抗原(例えば、B7-H3)を標的とすることができる。
【0246】
ナチュラルキラー(NK)細胞は1種類の主要な免疫エフェクター細胞であり、非抗原特異性経路を通じて生体をウイルス感染と腫瘍細胞の浸潤から保護する。操作(遺伝子組み換え)されたNK細胞は、腫瘍抗原を特異的に認識する能力や、強化された抗腫瘍細胞傷害作用を含む新たな機能を獲得することが可能である。
【0247】
自己CAR-T細胞と比べて、CAR-NK細胞はまた次の利点を持つ。例えば、(1)パーフォリンとグランザイムを放出することによって直接腫瘍細胞を殺傷するが、生体の正常な細胞に対して殺傷作用がない。(2)それらは非常に少量のサイトカインを放出して、サイトカインストームの危険を下げた。(3)体外で増幅しやすく、「既製の」製品に発展しやすい。それ以外はCAR-T細胞治療と類似している。
【0248】
[外因性T細胞抗原受容体]
本書で使用されるように、外因性T細胞抗原受容体(T cell receptor、TCR)は遺伝子導入技術により腫瘍反応性T細胞からTCRのα鎖とβ鎖をクローニングし、遺伝子工学の手段により、レンチウイルス或いはレトロウイルスをベクターとして、外因性T細胞内に導入したTCRである。
【0249】
外因TCRに改変されたT細胞は、腫瘍細胞を特異的に認識して殺傷することができ、TCRと腫瘍特異的抗原との親和性を最適化することにより、T細胞の腫瘍との親和性を向上させ、抗腫瘍効果を向上させることができる。
【0250】
[ベクター]
所望の分子をコードする核酸配列は、当技術分野で知られている組み換え方法を利用して取得することができ、例えば、遺伝子を発現する細胞からライブラリーをスクリーニングし、当該遺伝子を含むことが知られているベクターから当該遺伝子を取得したり、標準技術を利用して当該遺伝子を含む細胞や組織から直接単離したりするなどができる。任意選択的に、対象遺伝子を合成して生産することができる。
【0251】
本発明はまた、本発明の発現カセットが挿入されたベクターを提供する。レンチウイルスのようなレトロウイルス由来のベクターは、遺伝子改変の長期的かつ安定的な統合を可能にし、かつ子細胞内で増殖するため、長期的な遺伝子導入を実現するための適切なツールである。レンチウイルスベクターは、肝細胞のような非増殖性細胞に伝達することができるため、マウス科白血病ウイルスのような発がん性レトロウイルス由来のベクターを上回る利点を有する。また、免疫原性が低いという利点もある。
【0252】
簡単に要約すると、本発明の発現カセットまたは核酸配列は、一般にプロモーターに作動可能に連結され、発現ベクターに組み込まれる。当該ベクターは、真核細胞の複製および統括に適している。典型的なクローニングベクターは、所望の核酸配列の発現を調節するのに用いる転写および翻訳ターミネーター、初期配列、およびプロモーターを含む。
【0253】
本発明の発現構築物はまた、核酸免疫および遺伝子療法のための標準的な遺伝子導入プロトコルを利用することができる。当技術分野では、遺伝子導入の方法が知られている。例えば、米国特許番号5,399,346、5,580,859、5,589,466を参照に、全文を引用する。ほかの実施形態において、本発明は、遺伝子療法ベクターを提供した。
【0254】
当該核酸は、多くのタイプのベクターにクローニングすることができる。例えば、当該核酸をクローニングできるベクターは、プラスミド、ファージ粒子、ファージ誘導体、動物ウイルス、およびコスミドを含むが、それらに限定されない。特定の対象ベクターには発現ベクター、複製ベクター、プローブ産生ベクター及びシークエンシングベクターが含まれる。
【0255】
さらに、発現ベクターはウイルスベクターの形態で細胞に提供することができる。ウイルスベクター技術は、当技術分野において公知であり、例えば、Sambrookら(2001、Molecular CloningA Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory、New York)及び他のウイルス学及び分子生物学ハンドブックに記載されている。ベクターとして利用できるウイルスには、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルス、およびレンチウイルスが含まれるが、これらに限定されない。一般に、適切なベクターは、少なくとも1つの有機体において機能する複製開始点、プロモーター配列、便利な制限酵素部位、および1つまたは2つ以上の選択可能な標識(例えば、WO01/96584;WO01/29058;米国特許番号6,326,193)が含まれる。
【0256】
哺乳動物細胞に遺伝子を導入するために、多くのウイルスベースのシステムが開発されてきた。例えば、レトロウイルスは遺伝子伝達系統のための便利なプラットフォームを提供する。選択された遺伝子をベクターに挿入し、レトロウイルス粒子にパッケージングするために、当技術分野で知られている技術を利用することができる。当該組み換えウイルスは、その後、in vivoまたはex vivoの対象細胞に単離および伝達することができる。レトロウイルス系統の多くは当技術分野で知られている。いくつかの実施形態では、アデノウイルスベクターが使用される。多くのアデノウイルスベクターが当技術分野で知られている。一実施形態では、レンチウイルスベクターが使用される。
【0257】
エンハンサーなどの追加のプロモーター要素は、転写開始の頻度を調節することができる。一般に、これらは開始部位の上流の30-110bpの領域に位置するが、最近多くのプロモーターが開始部位の下流の機能要素も含むことが示されている。プロモーター要素間の間隔は、要素が他の要素に対して反転または移動されたときにプロモーター機能を維持するように、常に柔軟である。チミジンキナーゼ(tk)プロモーターでは、プロモーター要素間の間隔を50bp増加させて分離することができ、活性が低下し始める。プロモーターに依存して、転写を開始するために、単一の要素が協働してまたは独立して機能し得ることを示す。
【0258】
好適なプロモーターの一例は、即時早期サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター配列である。プロモーター配列は、それに作動可能に連結された任意のポリヌクレオチド配列の高レベル発現を駆動することができる強構成的プロモーター配列である。適切なプロモーターの他の例は、伸長成長因子-1α(EF-1α)である。しかしながら、他の構成的プロモーター配列を使用することも可能であり、類人猿ウイルス40(SV40)早期プロモーター、マウス乳がんウイルス(MMTV)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)長い末端反復(LTR)プロモーター、MoMuLVプロモーター、鳥類白血病ウイルスプロモーター、エプスタイン・バール(Epstein-Barr)ウイルス即時早期プロモーター、ラウス肉腫ウイルスプロモーター、及びヒト遺伝子プロモーターを含むが、これらに限定されない。例えば、アクチンプロモーター、ミオシンプロモーター、ヘムプロモーター、クレアチンキナーゼプロモーターがあるが、これらに限定されない。さらに、本発明は、構成的プロモーターの用途に限定されるべきではない。誘導型プロモーターも本発明の一部として考慮される。誘導型プロモーターの使用は、誘導型プロモーターに作動可能に連結されたポリヌクレオチド配列の発現を、そのような発現が望ましい場合のみオンにし、発現が望ましくない場合にはオフにすることができる分子スイッチを提供する。誘導型プロモーターの例としては、メタロチオネインプロモーター、グルココルチコイドプロモーター、プロゲステロンプロモーター、テトラサイクリンプロモーターが挙げられるが、これらに限定されない。
【0259】
CARポリペプチドまたはその部分の発現を評価するために、細胞に導入された発現ベクターは、ウイルスベクターを介してトランスフェクションまたは感染された細胞集団からの発現細胞の同定および選択を求めるために、選択可能なマーカー遺伝子またはレポーター遺伝子のいずれか一方または両方を含むこともできる。他の面では、選択可能なマーカーをDNAの個々のセグメントに担持し、コトランスフェクション手順で使用することができる。選択可能なマーカーおよびレポーター遺伝子の両方の側面は、宿主細胞での発現を可能にするために適切な調節配列を有していてもよい。有用な選択可能なマーカーは、例えば、neoなどのような抗生物質抵抗性遺伝子を含む。
【0260】
レポーター遺伝子は、潜在的にトランスフェクションされた細胞を同定し、調節配列の機能性を評価するために使用される。一般に、レポーター遺伝子は、受容体有機体または組織に存在しないか、または受容体有機体または組織によって発現され、酵素活性などの容易に検出可能ないくつかの特性によって発現が明確に示されるポリペプチドをコードする遺伝子である。受容体細胞にDNAを導入した後、適切なタイミングでレポーター遺伝子の発現を測定する。適切なレポーター遺伝子は、ルシフェラーゼ、β-ガラクトシダーゼ、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ、分泌型アルカリホスファターゼ、または緑色蛍光タンパク質をコードする遺伝子(例えば、Ui-Teiなど、2000FEBS Letters479:79-82)を含み得る。適切な発現系統は公知であり、公知の技術を用いて作成され、又は商業的に入手可能である。一般に、最も高いレベルのレポーター遺伝子発現を示す少なくとも5つの側面領域を有する構築物がプロモーターとして同定される。このようなプロモーター領域は、レポーター遺伝子に連結され、試薬がプロモーターを調節して駆動転写する能力を評価するために使用されてもよい。
【0261】
当技術分野では、細胞に遺伝子を導入する方法、及び細胞に遺伝子を発現させる方法が知られている。発現ベクターの内容において、ベクターは、当技術分野における任意の方法により宿主細胞、例えば、哺乳動物、細菌、酵母、または昆虫細胞に容易に導入することができる。例えば、発現ベクターは物理的、化学的または生物学的手段によって宿主細胞に導入することができる。
【0262】
ポリヌクレオチドを宿主細胞に導入する物理的方法はリン酸カルシウム沈殿、脂質トランスフェクション法、粒子衝撃、マイクロ注射、エレクトロポレーションなどを含む。ベクター及び/又は外因核酸を含む細胞の製造方法は、当技術分野において公知である。例えばSambrookら(2001、Molecular CloningA Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory、New York)を参照する。宿主細胞にポリヌクレオチドを導入するための好ましい方法はリン酸カルシウムトランスフェクションである。
【0263】
宿主細胞に関心のあるポリヌクレオチドを導入する生物学的方法は、DNAおよびRNAベクターを使用することを含む。ウイルスベクター、特にレトロウイルスベクターは、ヒト細胞などの哺乳動物に遺伝子を挿入するために最も広く使用されている方法となっている。他のウイルスベクターは、レンチウイルス、ポックスウイルス、単純ヘルペスウイルスI、アデノウイルスおよびアデノ随伴ウイルスなどに由来することがある。例えば、米国特許番号5,350,674および5,585,362を参照する。
【0264】
ポリヌクレオチドを宿主細胞に導入する化学手段は高分子複合体、ナノカプセル、マイクロスフェア、マイクロビーズのようなコロイド分散システムと、水中油型乳剤、ミセル、混合ミセル、リポソームのような脂質ベースのシステムが含まれる。in vitroおよびin vivo送達ツール(delivery vehicle)として使用される例示的なコロイドシステムは、リポソーム(例えば、人工膜小胞)である。
【0265】
非ウイルス送達システムを使用する場合、例示的な送達ツールはリポソームである。宿主細胞(in vitro、ex vivoまたはin vivo)に核酸を導入するための脂質製剤の使用が考えられる。ほかの面で、核酸は脂質と関連していてもよい。脂質に関連する核酸は、リポソームの水性内部に封入することができ、リポソームの脂質二重膜の中に散在し、リポソームとオリゴヌクレオチドの両方に結合するリンカー分子を介してリポソームに取り付け、リポソームに陥没し、リポソームと複合し、脂質を含む溶液中に分散し、脂質と混合し、脂質と結合し、脂質に懸濁液として含まれ、ミセルに含まれ、もしくはミセルに複合され、またはほかの手段で脂質と関連する。組成物に関連する脂質、脂質/DNAまたは脂質/発現ベクターは、溶液中のいかなる特定の構造に限定されない。例えば、ミセルとして、もしくは「崩壊した(collapsed)」構造を有して、二分子層構造中に存在することができる。これらは溶液中に簡単に散布することもでき、大きさまたは形状が不均一な凝集体を形成することができる。脂質は脂肪物質であり、天然に発生または合成された脂質であってもよい。例えば、脂質は、細胞質および脂肪酸、アルコール類、アミン類、アミノアルコール類、アルデヒド類などの長鎖脂肪族炭化水素類およびそれらの誘導体を含むこのような化合物の中で自然に発生する脂肪小滴を含む。
【0266】
本発明の1つの好ましい実施形態において、前記ベクターはレンチウイルスベクターである。
【0267】
[製剤]
本発明は、本発明の第1の態様に記載の重鎖可変領域、本発明の第2の態様に記載の重鎖、本発明の第3の態様に記載の軽鎖可変領域、本発明の第4の態様に記載の軽鎖、第5の態様に記載の抗体、本発明の第6の態様に記載の組み換えタンパク質、本発明の第7の態様に記載のCAR構築物、本発明の第8の態様に記載の免疫細胞を含み、または本発明の第9の態様に記載の抗体薬物複合体、及び薬学上許容されるベクター、希釈剤又は賦形剤を提供する。1つの実施形態では、前記製剤は液状製剤である。好ましくは、前記製剤は注射剤である。好ましくは、前記製剤中の前記CAR-T細胞の濃度は1×103-1×109細胞/mlであり、より好ましくは1×105-1×108細胞/mlである。
【0268】
一実施形態では、前記製剤は、中性緩衝塩水、硫酸緩衝塩水などの緩衝液と、グルコース、マンノース、ショ糖またはグルカン、マンニトールなどの炭水化物と、タンパク質と、グリシンのようなポリペプチド又はアミノ酸と、酸化防止剤と、EDTAまたはグルタチオンなどのキレート剤と、アジュバント(例えば、水酸化アルミニウム)と防腐剤を含むことができる。本発明の製剤は、静脈内投与または腹腔内投与に配合されることが好ましい。
【0269】
[治療的応用]
本発明は、本発明の発現カセットをコードするレンチウイルスベクター(LV)で導入された細胞(例えば、T細胞)で行われた治療的応用を含む。導入されたT細胞は、腫瘍細胞のマーカーであるB7-H3タンパク質を標的とすることができ、T細胞を相乗的に活性化し、細胞免疫応答を引き起こすことにより、悪性腫瘍由来の腫瘍細胞に対する殺傷効率を大幅に向上させることができる。
【0270】
したがって、本発明はまた、哺乳動物の標的細胞集団または組織に対するT細胞介在の免疫応答を刺激する方法を提供し、この方法は、本発明のCAR-T細胞を哺乳動物に投与するステップを含む。
【0271】
1つの実施形態において、本発明は、患者の自己T細胞(または異種ドナー)を単離し、CAR-T細胞を生成するために活性化および遺伝子改変を行い、その後、同一患者に注入するという一種の細胞療法を含む。このようにして移植片対宿主病に罹患する確率は極めて低く、抗原はT細胞によって無MHC制限的に認識される。さらに、一種類のCAR-Tのみで、当該抗原を発現するすべてのがんを治療することができる。抗体療法と異なり、CAR-T細胞はin vivoで複製することができ、持続的な腫瘍制御をもたらす長期持続性を産生する。
【0272】
1つの実施形態では、本発明のCAR-T細胞は、in vivoでの強固なT細胞拡張を経験することができ、延長された時間の量を持続することができる。加えて、CAR介在の免疫応答は、養子免疫療法のステップの一部であってもよく、ここで、CARに改変されたT細胞は、CAR中の抗原結合ドメインに特異的な免疫応答を誘導する。例えば、B7-H3のCAR-T細胞は、抗発現B7-H3細胞の特異的な免疫応答を引き起こす。
【0273】
本書に開示されるデータは、具体的に、抗B7-H3のscFv、ヒンジおよび膜貫通領域、ならびにCD28および/または4-1BB(CD137)、およびCD3ζシグナル伝達ドメイン、ならびに任意の自己切断タンパク質のコード配列、および任意のPD1-CD28またはPD1-IL7R融合タンパク質のコード配列のレンチウイルスベクターを開示したが、ただし、本発明は、構築物の各部分に対するそれぞれに何らかの数量の変更を含むものと解される。
【0274】
治療可能ながんには、血管新生されていないか、実質的に血管新生されていない腫瘍、または血管新生された腫瘍が含まれる。がんは、非固形腫瘍(白血病およびリンパ腫のような血液腫瘍)を含むことができ、または固形腫瘍を含むことができる。本発明のCARで治療されるがんのタイプには、がん、胚細胞腫瘍および肉腫、ならびに一部の特定の白血病またはリンパ悪性腫瘍、良性および悪性腫瘍、ならびに肉腫、がん及び黒色腫などの悪性腫瘍が含まれるが、これらに限定されない。成人の腫瘍/がん、小児の腫瘍/がんも含まれる。
【0275】
血液学のがんとは、血液または骨髄のがんのことである。血液学的(または血行性)がんの例としては、白血病が挙がられ、急性白血病(急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、急性骨髄性白血病と骨髄芽球性、前骨髄球性、骨髄単球性、単球性および赤白血病など)、慢性白血病(慢性骨髄球(顆粒球性)白血病、慢性骨髄性白血病及び慢性リンパ球性白血病)、真性赤血球増加症、リンパ腫、ホジキン疾患、非ホジキンリンパ腫(無痛と高悪性度)、多発性骨髄腫、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症、重鎖疾患、骨髄異形成症候群、有毛細胞白血病、脊髄形成不全が含まれる。
【0276】
固形腫瘍は通常嚢胞または液体領域を含まない組織の異常な腫瘍である。固形腫瘍は良性または悪性であってもよい。異なる種類の固形腫瘍には、それらを形成する細胞の種類(肉腫、がん、リンパ腫など)に従って命名される。肉腫とがんのような固形腫瘍の例として、頭頸部腫瘍、咽頭がん、肺がん、非小細胞性肺がん、気管支がん、胃がん、胃がんの腹膜転移腫瘍、食道がん、肝臓がん、胆管がん、膵臓がん、結腸直腸がん、結腸直腸がんの腹膜転移腫瘍、小腸がん、腎臓腫瘍、腎臓がん、膀胱腫瘍、移行性上皮悪性腫瘍、内分泌腫瘍、甲状腺がん、副腎腫瘍、乳がん、子宮頸がん、卵巣がん、卵巣がんの腹膜転移腫瘍、子宮内膜がん、絨毛がん、前立腺がん、精巣腫瘍、生殖細胞腫瘍、精原細胞がん、胚性腫瘍、神経系腫瘍、脳グリオーマ、神経芽細胞腫、皮膚腫瘍、悪性黒色腫、リンパがん、胸腺腫瘍、鼻咽頭がん、骨がん、肉腫、横紋筋肉腫、脂肪肉腫、血管肉腫、平滑筋肉腫、繊維肉腫、骨肉腫、ユーイング肉腫、固形腫瘍転移性腫瘍(例えば腹腔、胸腔、骨盤腔、実質臓器などの転移腫瘍)が挙がられる。
【0277】
本発明のCAR-T細胞はまた、哺乳動物に対するex vivo免疫および/またはin vivo療法のワクチン型として用いることができる。好ましくは、哺乳動物はヒトである。
【0278】
ex vivo免疫では、以下の少なくとも1つが、哺乳動物に投与される前にin vitroで起こる。i)細胞を増幅すること、ii)CARをコードする核酸を細胞に導入すること、および/またはiii)細胞を凍結保存すること。
【0279】
ex vivoプログラムは当技術分野では公知であり、以下でより完全に検討される。簡単に言えば、細胞は哺乳動物(好ましくはヒトである)から単離され、本書に開示されたCARを発現するベクターを用いて遺伝子改変(すなわち、in vitro導入またはトランスフェクション)を行われる。CARに改変される細胞は、治療的利益を提供するために哺乳動物受容体に投与することができる。哺乳動物の受容体はヒトであってもよく、CARに改変された細胞は受容体に対して自己であってもよい。任意選択的に、細胞は、受容体に対して同種異系、同系(syngeneic)、または異種であってもよい。
【0280】
ex vivo免疫に関して細胞ベースのワクチンを使用することに加えて、本発明はまたin vivo免疫で患者において抗原に対する免疫応答を引き起こす組成物および方法を提供する。
【0281】
本発明は腫瘍を治療する方法を提供し、それを必要とする対象に、本発明のCARに改変されたT細胞の治療有効量を投与することを含む。
【0282】
本発明のCARに改変されたT細胞は、単独で利用され、または薬物組成物として希釈剤とともに、および/または他の成分または他のサイトカインまたは細胞集団と組み合わせて、投与することができる。簡単に言えば、本発明の薬物組成物は、本書に記載のような標的細胞集団を含み、1つまたは2つ以上の薬学的または生理学的に受容可能なベクター、希釈剤または賦形剤と組み合わせることができる。このような組成物は、中性緩衝塩水、硫酸緩衝塩水などの緩衝液と、グルコース、マンノース、ショ糖またはグルカン、マンニトールなどの炭水化物と、タンパク質と、グリシンのようなポリペプチド又はアミノ酸と、酸化防止剤と、EDTAまたはグルタチオンなどのキレート剤と、アジュバント(例えば、水酸化アルミニウム)と防腐剤を含むことができる。本発明の組成物は、静脈内投与または腹腔内投与に配合されることが好ましい。
【0283】
本発明の薬物組成物は、未治療(または予防)の疾患に適用する方式で投与することができる。投与の量および頻度は、適切な用量は臨床試験によって決定することができるが、患者の状態、患者の疾患の種類および重症度などの要因によって決定される。
【0284】
「免疫学における有効な量」、「抗腫瘍における有効な量」、「腫瘍抑制における有効な量」または「治療量」が指摘された場合、患者(対象者)の年齢、体重、腫瘍の大きさ、感染または転移の程度、および症状の個人差を考慮して、投与される本発明の組成物の正確な量を医師が決定することができる。本書に記載のT細胞を含む薬物組成物は、103-108細胞/kg体重の用量で、好ましくは105-106細胞/kg体重の用量(それらの範囲内のすべての整数値を含む)で投与できることが一般的に指摘できる。T細胞組成物は、それらの用量で複数回投与されてもよい。細胞は、免疫療法において公知の注入技術(例えば、Rosenbergら、NewEng.J.of Med.319:1676、1988を参照する)を用いて投与することができる。特定の患者のための最適な用量および治療計画は、患者の疾患の徴候を監視し、したがって治療を調節することによって、医療分野の熟練者によって容易に決定されることができる。
【0285】
対象組成物の投与は、噴霧法、注射、嚥下、輸液、インプラント又は移植を含む任意の便利な方法で行うことができる。本明細書に記載の組成物は、皮下、皮内、腫瘍内、結節内、脊髄内、筋肉内、静脈内(i.v.)を介して注射されるか、または腹腔内、骨盤内、胸腔内、脳室内、脊髄内、関節内などの体腔内で患者に投与することができる。一実施形態では、本発明のT細胞組成物は、皮内または皮下注射によって患者に投与される。別の実施形態では、本発明のT細胞組成物は、好ましくはi.v.注射によって投与される。T細胞の組成物は、腫瘍、リンパ節または感染部位に直接注入することができる。
【0286】
本発明のいくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法、またはT細胞を治療的レベルまで拡張する当技術分野で知られている他の方法を用いて、活性化および拡張された細胞が、任意の数の関連する治療形態と組み合わせて(例えば、前に、同時に、または後に)患者に投与され、治療形態は、抗ウイルス療法、セドホビルおよびインターロイキン-2、シチジン(ARA-Cとしても知られている)、またはMS患者に対するナタリズマブ治療、乾癬患者に対するエファリズマブ治療、またはPML患者に対する他の治療などの薬剤による治療を含むが、これらに限定されない。さらなる実施形態では、本発明のT細胞は、化学療法、放射線、例えば、シクロスポリン、アザチオプリン、メトトレキサート、マコフェノールおよびFK506などの免疫抑制剤、抗体または他の免疫療法剤と組み合わせて使用することができる。さらなる実施形態では、本発明の細胞組成物は、骨髄移植と組み合わせて、フルダラビン、外部光線照射療法(XRT)、シクロホスファミドなどの化学療法剤を使用して(例えば、前に、同時に、または後に)患者に投与される。例えば、一実施形態では、対象は、高用量化学療法の標準治療の後に、末梢血幹細胞移植を受けることができる。いくつかの実施形態では、移植後に、対象は本発明の拡張免疫細胞の注入を受ける。一追加実施形態では、拡張細胞は、外科手術前または外科手術後に投与される。
【0287】
患者に投与される上記の治療の用量は、治療状態の正確な属性および治療の受け手によって変化する。ヒトに投与される用量の割合は、当技術分野で受け入れられている慣行に従って実施する。一般に、1×103個から1×109個の本発明改変T細胞を、例えば静脈内輸液の方法で、治療ごとまたは治療コースごとに患者に投与することができる。
【0288】
[検出用途およびキット]
本発明の抗体は、診断情報を提供するために、例えば検体を検出するための検出用途に使用することができる。
【0289】
本発明では、採用されるサンプル(試料)は、細胞、組織サンプル、および生検サンプルを含む。本発明で使用される用語「生検」には、当業者に知られている全ての種類の生検が含まれなければならない。したがって、本発明で使用される生検は、例えば、内視鏡的方法または器官の穿刺または針刺生検によって調製された組織サンプルを含む。
【0290】
本発明で使用されるサンプルは、固定化されたまたは保存された細胞または組織サンプルを含む。
【0291】
本発明はまた、本発明の抗体(またはそのフラグメント)、scFv、を含むキットを提供し、本発明の好ましい例では、キットは容器、取扱説明書、緩衝剤などをさらに含む。好ましい例では、本発明の抗体を検出プレートに固定化することができる。
【0292】
[本発明の主な利点は以下の通りとする]
(1)本発明の抗体は、高親和性、高特異性であることを特徴とする。
(2)本発明のヒト化抗体またはscFvは、依然としてB7-H3に対する高い親和性および高い特異性を有する。
(3)本発明の工学的免疫細胞は、腫瘍抗原(例えば、B7-H3)を標的化して、腫瘍細胞を選択的に殺傷することができる。
(4)本発明の工学的免疫細胞は、腫瘍内に増殖した血管内皮細胞を標的化することができ、腫瘍の血管形成と血液供給を破壊することによって、腫瘍細胞を抑制または損傷することができ、それによって、腫瘍細胞と腫瘍血管を同時に標的化することができ、二重に、より効果的に腫瘍細胞を殺傷することができる。
(5)本発明の工学的免疫細胞は、腫瘍微小環境に標的化することができ、線維細胞または免疫細胞などの成分を含むがこれらに限定されない、したがって、腫瘍細胞と腫瘍微小環境を同時に標的化し、二重に、より効果的に腫瘍細胞を殺傷することができる。
(6)本発明の工学的免疫細胞は、B7-H3を標的とするCARおよびPD-L1を標的とするCARまたは分泌タンパク質を共発現し、それによって腫瘍細胞に対する殺傷効果を増強することができる。
(7)本発明におけるB7-H3を標的とするCAR及びPD-L1を標的とする融合タンパク質は相乗効果を有し、CAR-T細胞の活性化、増殖、サイトカイン分泌及び遊走を高めることができ、CAR-T細胞の体内での殺傷機能を向上させ、CAR-T細胞の腫瘍組織への遊走・ホーミングを促進し、CAR-T細胞の体内での残存時間を向上させ、記憶細胞形成能力を向上させることにより、単一のCARに対してCAR-T細胞の治療効果、特に固形腫瘍に対するCAR-T細胞の治療効果を向上させることができる。
(8)本発明は、B7-H3モノクローナル抗体由来の一本鎖抗体可変領域(scFV)を用いて初めてB7-H3特異的CAR-T細胞(B7-H3-CAR-T)を構築し、B7-H3-CAR-T細胞の機能と多様な腫瘍に対する治療効果をin vitroおよび動物モデルにおいて検証した。
(9)本発明のB7-H3のモノクローナル抗体は、二重特異性抗体、ADC抗体、生物試薬、臨床診断試薬、画像試薬などにさらに応用することができる。
(10)B7-H3 CAR細胞及びその新規CAR構造及び技術は、T細胞がCAR-Tを形成するだけでなく、NK細胞等の他の免疫細胞の遺伝子改変及び改良にも用いることができる。
(11)本発明の新規CAR-T構造及び技術は、研究開発及び応用のために他の標的分子との結合に用いることができる。
【0293】
以下では、具体的な実施例に関連して、本発明についてさらに説明する。これらの実施例は、本発明を説明するためにのみ使用され、本発明の範囲を限定するためには使用されないことが理解されるべきである。以下の実施例では具体的な条件が明記されていない実験方法は、Sambrookら、分子クローン:実験室マニュアル(New York: Cold Spring Harbor Laboratory Press,1989)に記載されている通常条件か、製造業者が提案している条件に従う。パーセンテージと部数は、特に明記されていない限り、重量パーセンテージと重量部です。
【0294】
本発明の実施形態において使用される材料及び試薬は、特に明記されていない限り、市販品である。
【実施例】
【0295】
[実施例1 抗体の調製]
ヒト由来B7-H3タンパク質(4Ig-B7-H3とマウスIgG Fc断片との融合タンパク質、4Ig-B7-H3-mFc、自作)を抗原としてBalb/cマウスを免疫し、マウス血清を採取し、B7-H3タンパク質に対する親和性と力価を検証する。陽性結果は、マウス血清中に抗B7-H3抗体が産生されたことを示している。その後、免疫に成功したマウス脾臓細胞を採取し、SP2/0細胞と融合させてハイブリドーマ細胞を得る。ELISA及びフローサイトメトリー技術を用いて抗ヒトB7-H3に対する陽性モノクローナルハイブリドーマ細胞をスクリーニングする。ハイブリドーマ細胞の上清を採取し、精製してB7-H3 mAbを得、抗体機能の検証に用いる。
【0296】
[実施例2 抗体配列の測定]
モノクローナルハイブリドーマ細胞を採取し、キットを用いて総RNAを抽出し、精製する。RNAの逆転写および5'-RACE-cDNAの増幅によりモノクローナル抗体のcDNAを得る。得られたcDNAを鋳型としてPCR法により増幅し、モノクローナル抗体の軽鎖および重鎖可変領域のcDNAを得、さらに軽鎖および重鎖可変領域のcDNAをTAベクタークローニング法によりプラスミドベクターに連結する。
【0297】
重鎖、軽鎖プラスミドを感受状態細菌上で転化することにより、クローン菌板上でモノクローナルコロニーのスクリーニングを行う。
モノクローナルコロニーを選抜し、プラスミドを抽出、精製し、従来のDNAシークエンシングにより、軽鎖と重鎖の可変領域のcDNA配列を取得する。
【0298】
抗体可変領域のシークエンシング結果をkabatなどのデータベースと比較し、CDR領域の判読を行い、正しい抗体配列を選択する。
【0299】
リンクポリペプチド(linker peptide)により重鎖、軽鎖可変領域配列を連結し、一本鎖抗体断片(scFv)を獲得し、scFvをphIgV、pmIgVプラスミドベクターにクローニングする。scFv-phIgVまたはscFv-pmIgVベクターを293T細胞にトランスフェクションして一本鎖抗体を作製し、一本鎖抗体の機能検証を行う。
【0300】
[実施例3 B7-H3モノクローナル抗体およびその一本鎖抗体scFvの親和性および特異性]
(一) B7-H3一本鎖抗体scFvを特異的に検出する。
標識されたB7-H3一本鎖抗体(scFv、自作)をそれぞれ異なるB7ファミリー分子(ヒト由来B7-H1、B7-H3、B7-H4、マウス由来B7-H3分子を含む)を発現するCHO細胞(自作)とインキュベート染色する。対応するB7ファミリー分子抗体で陽性染色対照実験を行い、初代CHO細胞を陰性対照とし、マウスIgG抗体を同型抗体対照(isotope)とする。フローサイトメトリーで検出すると、
図1を参照してください。その結果、B7-H3一本鎖抗体scFvはB7-H3分子を特異的に認識し、結合しているが、他のB7ファミリー分子には結合していない。
【0301】
(二) B7-H3モノクローナル抗体またはそのscFv親和性を検出する。
B7-H3を安定に発現するCHO細胞を、同条件で異なる濃度で標識した抗ヒトB7-H3モノクローナル抗体または抗ヒトB7-H3一本鎖抗体タンパク質scFvを用いてそれぞれ染色し、4℃で30分間インキュベートした後、フローサイトメトリーを用いて両者のヒトB7-H3結合能力を検出し比較する。その結果、
図2に示すように、B7-H3モノクローナル抗体およびその一本鎖抗体(scFv)はB7-H3分子に対して相当または同等の結合能力を有し、両者ともヒト由来のB7-H3分子に結合することを有効かつ特異的に標的化することができる。
【0302】
[実施例4 B7-H3の種々の腫瘍細胞での発現]
多種の腫瘍のパラフィン切片に対して免疫組織化学染色を行う。クエン酸/マイクロ波蒸気水浴100℃の抗原修復方法による抗原修復を行う。抗B7-H3 mAbを一次抗体とし、ABC complexキットおよびStreptavidin-HRPを用いて免疫組織化学染色を行い、顕微鏡観察により、B7-H3は結腸直腸がん、卵巣がん、乳がん、胃がん、肝臓がん、膵がん、前立腺がん、悪性グリオーマ、神経芽細胞腫、頭頸部腫瘍、悪性黒色腫など、多くの固形腫瘍において高発現しており、正常組織では発現していないか低発現であることがわかる。同時に、固形腫瘍内で増殖している血管内皮細胞にB7-H3が発現している可能性がある。部分的な免疫組織化学の結果を
図3-1に示す。
【0303】
抗B7-H3に対する一本鎖抗体を用いて、フローサイトメトリー法により、ヒト結腸がんHT-29細胞、ヒト結腸がんSW620細胞、ヒト非小細胞肺がんA549細胞、ヒト肺巨細胞がんPG細胞、ヒト肝がんHepG2細胞、ヒト肝がんHuh7細胞、ヒト黒色腫624Mel細胞、HLB100、乳がんMDA-MB-231細胞、卵巣がんSKOV3細胞、扁平上皮がんSCC47細胞、子宮頸がんHeLa細胞、ヒト白血病K562細胞などの各種腫瘍細胞株におけるB7-H3の発現を測定する。結果は
図3-2のように、B7-H3は多くの固形腫瘍細胞株および一部の血液腫瘍細胞株で高発現していることを示す。
【0304】
[実施例5 B7-H3 CARおよびそれと異なる分子との共発現による新規なCAR-T細胞を形成する]
(一)ベクター構築
抗ヒトB7-H3に対する一本鎖抗体断片(scFv)と、CD8ヒンジ領域および膜貫通領域と、CD28および/または4-1BBの細胞内シグナル伝達領域と、CD3ζの活性化機能領域とを、配列重複伸長PCR技術により連結してCARのcDNA構造を構築する。PD-1細胞外フラグメントとCD28細胞内フラグメントと、PD-1細胞外フラグメントとIL-7レセプター(IL-7R)の細胞内機能フラグメント(または細胞内変異レセプターフラグメント)とを、PD1-CD28(PD28)とPD1-IL-7R(PDCA7R)の融合cDNAを、配列重複伸長PCR技術により連結して構築する。配列重複伸長PCR技術により、T2A配列を切断連結配列とし、CAR cDNAをそれぞれPD28、PDCA7R、および/またはEGFP断片と連結し、異なる分子共発現のCAR分子の遺伝子構造を構築する、4-1BBを切断し、CD3ζを欠損したCARを対照としる。構成を
図4に示す。
【0305】
典型的なCAR構造を
図4に示し、共発現分子を含むCAR構造のアミノ酸配列を配列番号37に示し、共発現分子を含むCAR構造をコードするヌクレオチド配列を配列番号38に示す。
【0306】
(二)B7-H3 CARレンチウイルスベクターの製造方法
分子クローニング技術により、上記異なる構造のCARまたは共発現分子を含むCAR構造をレンチウイルス発現ベクターに連結する。通常のPEI、リン酸カルシウム沈殿或いはその他のトランスフェクション方法により、Lenti-X 293T細胞或いは293T細胞上で、二世代或いは三世代レンチウイルスベクターの包装調製を行う。産生したレンチウイルスベクター原液を0.45μmフィルターでろ過した後、遠心分離して濃縮する。クロマトグラフィーまたはイオン交換による精製も可能である。レンチウイルスベクターは力価鑑定後、液体窒素で急速冷凍し、マイナス80℃で保存する。
【0307】
(三)B7-H3 CAR-T細胞の調製
IL-2を含むT細胞培養液にレンチウイルスベクターと活性化したPBMCsまたはT細胞を入れ、培養器に入れてPBMCsまたはT細胞のウイルスベクタートランスフェクションを行う。培養48時間後に、CAR及び共発現分子の発現及び表現型を検出する。その後、異なる構造のCAR-T細胞をIL-2(またはIL2、IL-7、IL-15)などのサイトカインを含む培養液中で収穫まで培養を続ける。
【0308】
[実施例6 標的細胞抗原刺激に応答するB7-H3 CAR-T細胞]
100Gy照射した標的細胞を1:1のET比で調製したB7-H3 CAR-T細胞と混合刺激して3日後、トリパンブルー染色後CAR-T細胞を計数する。その後、5-7日間の3回の刺激反応を繰り返し、外来サイトカインを添加せず、半量のみの液交換を行う。CAR-T細胞の総量は、反応の各ラウンドの後に計数する。
【0309】
結果は
図5のように。データは、異なる構造のB7-H3 CAR-T細胞はB7-H3抗原の刺激を受けた後にすべて有効に増殖することができることを示す。一方、PDCA7Rを共発現するB7-H3 CAR-T細胞(BB-Z-PDCA7R CAR-T細胞)は良好な増殖能力を有する。
【0310】
[実施例7 B7-H3 CAR-T細胞の標的腫瘍細胞に対する免疫応答]
異なる構造のB7-H3 CAR-T細胞を100Gy照射または非照射の標的腫瘍細胞と共インキュベートした後、CBAキットを用いてフローサイトメトリー技術により各種サイトカインの分泌を検出する。B7-H3陽性の標的腫瘍細胞には、乳がんHLB100細胞、肺巨細胞がんPG細胞、卵巣がんSKOV3細胞、乳がんMDA-MB-231細胞などのB7-H3陽性の血液性および固形性悪性腫瘍が含まれる(ただし、これらに限定されない)。B7-H3遺伝子ノックアウト後の腫瘍細胞(例ば、MDA-MB-231-H3KO)を陰性標的細胞対照とする。
【0311】
結果は
図6のように、B7-H3 CAR-T細胞はB7-H3陽性の標的腫瘍細胞による共培養刺激後にインターフェロン(IFN-γ)、インターロイキン2(IL-2)などのTh1型サイトカインを大量に放出できることを示す。BB-Z-PDCA7R CAR-T細胞は最も高いサイトカインの産生を誘導する能力を有し、B7-H3 CAR-T細胞のB7-H3抗原に対する特異性、およびBB-Z-PDCA7R CAR-T細胞の活性化機能がより高いことを示唆する。
【0312】
[実施例8 B7-H3 CAR-T細胞による腫瘍細胞の殺傷]
異なる構造のCAR-T細胞は異なるET比(1:1、5:1、10:1、15:1)によりそれぞれFarRed標識の標的腫瘍細胞(ヒト巨大肺細胞がんPG細胞、卵巣がんSKOV3細胞、乳がんMDA-MB-231細胞)と12h共インキュベートした後、DAPI或いはAnnexin Vなどの試薬/キット染色を応用し、フローサイトメトリーによりCAR-T細胞の標的腫瘍細胞に対する殺傷機能を検出する。
【0313】
結果は
図7のように、多種構造のB7-H3 CAR-T細胞はすべて有効にB7-H3陽性の腫瘍細胞を殺傷することができ、その殺傷機能は抗原特異性があることを示す。
【0314】
[実施例9 B7-H3 CAR-T細胞動物モデルにおける抗腫瘍作用]
NCGマウスにB7-H3陽性の腫瘍細胞(肺巨細胞がんPG細胞、卵巣がんSKOV3細胞)を皮下注射し、腫瘍モデルを確立する。腫瘍の直径が約3-4mmに達する時、SKOV3群のマウスはそれぞれ12、20、29日目に5×106の異なる構造のCAR-T細胞を静脈注射し、PG群のマウスはそれぞれ5、10、15日目に5×106の異なる構造のCAR-T細胞を静脈注射し、その後腫瘍の成長、マウスの生存時間を測定する。
【0315】
結果は
図8のように、B7-H3 CAR-T細胞が皮下腫瘍の成長を効果的に抑制できることを示す。一方、BB-Z-PD28 CAR-TおよびBB-Z-PDCA7R CAR-T細胞を含む共発現分子を有するCAR-T細胞は、より優れた治療効果を有する。
【0316】
[実施例10 B7-H3 CAR-T細胞とPD-1抗体との併用療法による抗腫瘍作用の向上]
NCGマウスに0.5×106肺巨細胞がんPG細胞を皮下注射し、皮下腫瘍モデルを確立する。すべてのマウスをランダムに群化する(各群は5匹)。4-5日後、腫瘍が平均直径約4mmに達した時、それぞれ5、9、15日目にB7-H3 CAR-T細胞を静脈単独注射する(相対的に低用量)。併用療法群では、それぞれ6、11日目に抗PD-1抗体を増量投与する。週2回キャリパーで腫瘍の大きさを測定する。
【0317】
結果は
図9のように、抗PD-1抗体は併用療法によりB7-H3 CAR-T細胞の抗腫瘍効果を有意に向上させることがデータからわかる。
【0318】
[実施例11 ヒト化抗体活性およびCAR-T細胞の殺傷能力の測定]
(一)ヒト化抗体及びその活性の測定
得られたマウス由来抗B7-H3抗体の可変領域FR配列とヒト由来FR配列とを比較・スクリーニングし、FR領域配列にヒト化突然変異を行った後、それぞれ3本の軽鎖(L1、L2、L3)と3本の重鎖(H1、H2、H3)のヒト化配列を得、さらに、各軽鎖と重鎖を組み合わせた9本の一本鎖抗体の親和性定数をBiacoreにより測定する、その結果を表1に示す。
【表1】
【0319】
(二)ヒト化B7-H3 CAR-T細胞の殺傷能力の測定
異なる軽鎖と重鎖の可変領域を組み合わせたヒト化一本鎖抗体を用いてCAR-T細胞を構築する。各組み合わせCAR-T細胞をB7-H3陽性結腸がんLOVO細胞と8時間共インキュベートし、殺傷効果及びサイトカイン分泌を検出する。PBMCsとCD19 CAR-T細胞を陰性対照とし、B7-H3遺伝子ノックアウト後のB7-H3陰性のLOVO細胞(LOVO-KO、自作)を標的陰性腫瘍細胞の対照とし、腫瘍標的特異性を検証する。その結果を
図10に示す。異なる組み合わせの一本鎖抗体由来のCAR-T細胞は、標的細胞に対して異なる殺傷効果を有し、サイトカインIL-2とIFN-の分泌の程度が異なることを示す。
【0320】
以上の結果から、ヒト化後の異なる組み合わせのscFvは異なる親和性を有し、異なるscFvの親和性はCAR-T細胞に対する殺傷や免疫反応機能と相関していることがわかる。したがって、CAR-T細胞の構築および治療用途に適切な親和性を有する一本鎖抗体を選択することは、CAR-T細胞の抗腫瘍活性を最適化し、副反応を低減するのに役立つ。
【0321】
[実施例12 ヒト化B7-H3 CAR-T細胞による異なる腫瘍に対する抗腫瘍作用]
(一)体外殺傷機能検出
ヒト化B7-H3 CAR-T細胞を異なるET比によりそれぞれ標識した標的腫瘍細胞(結腸がんLOVO細胞、卵巣がんSKOV3細胞、胃がんHGC27細胞、肝がんMHCC7721細胞)と4℃で12h共インキュベートした後、DAPI或いはAnnexin Vなどの試薬/キット染色を用い、フローサイトメトリーによりCAR-T細胞の各種標的腫瘍細胞に対する殺傷機能、及びそのサイトカイン放出を検出する。
【0322】
結果は
図11-1、12-1、13、14のように、ヒト化したB7-H3 CAR-T細胞はすべて有効にB7-H3を発現する腫瘍細胞を殺傷することができ、IL-2とIFN-γを産生することができることを示す。その殺傷機能は抗原特異性を有する。
【0323】
(二)動物モデルにおける抗腫瘍作用
ルシフェラーゼ標識結腸がんLOVO細胞をNCGマウスの腹腔(5×104 Lovo細胞/匹)に注入し、結腸がん腹膜腫瘍モデルを確立する。腫瘍植栽4日後、ヒト化B7-H3 CAR-T細胞を腹腔注射治療を行い、治療群とし、同条件下で、CD19 CAR-T細胞を用いて治療し、対照群とする。1回の用量は1.0×106細胞/匹で、計2回治療する。それぞれ治療前1日、治療後21、28、35日目に、腫瘍細胞のフルオレセイン強度を検出し、腫瘍の成長を検出評価する。
【0324】
同様に、NCGマウスに卵巣がんSKOV3細胞を腹腔注射し、卵巣がん腫瘍モデルを確立し、ヒト化B7-H3 CAR-T細胞を用い、同じ用量と方法で腹腔注射治療を行い、治療後0、7、14日目に腫瘍の成長を検出する。
【0325】
その結果、B7-H3 CAR-T細胞治療は結腸がん、卵巣がん腹膜腫瘍の成長を効果的に抑制し、腫瘍を除去し(
図11-2、12-2を参照)、マウスの生存期間を延長することを示す。対照群CD19 CAR-T細胞、PBS群、腫瘍は明らかに成長し、しかも生存期間は短い。
【0326】
[実施例13 抗B7-H3モノクローナル抗体のエピトープ(epitope)特異性]
フローサイトメトリー技術を応用し、ヒト由来B7-H3を発現する293T細胞を標的細胞として、本特許における抗B7-H3モノクローナル抗体の一本鎖抗体と、既存の抗B7-H3モノクローナル抗体の一本鎖抗体(例ば、MGA271,84D[1];米国Microgenesis社)との競合結合の検出を行う。
【0327】
図15に示すように,B7-H3
+293T標的細胞を採取し,抗B7-H3モノクローナル抗体(MGA271,84D)の一本鎖抗体(84D-mlgG)10ng、1ug、10ugとそれぞれ4℃で30分間インキュベートし,ビオチン(biotin)標識の本特許の抗B7-H3抗体の一本鎖抗体(H2L2-biotin)100ngを加え,子ウシ血清1%を含むPBSで洗浄し,PE標識の抗ストレプトマイシン(anti-SA)二次抗体を加え,4℃で20分間インキュベートし,洗浄後フローサイトメトリーで分析する(
図15 A)。同様に、B7-H3一本鎖抗体競争84D一本鎖抗体実験を行う。293T細胞と4ug抗84D-mlgG抗体を4℃で30minインキュベートし、PE標識のanti-mlgG二次抗体を加え、洗浄後、それぞれ100ng、2ug、8ug抗B7-H3一本鎖抗体(H2L2-biotin)を加え、1hインキュベートし、洗浄後フローサイトメトリーを行う(
図15B)。
【0328】
その結果、抗B7-H3一本鎖抗体H2L2と84D一本鎖抗体との競合結合は存在せず、両モノクローナル抗体はそれぞれB7-H3分子の異なるエピトープに結合していることを示唆する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0329】
【文献】Loo D, et al. Development of an Fc-enhanced anti-B7-H3 monoclonal antibody with potent antitumor activity. Clin Cancer Res 2012 Jul 15;18(14):3834-45
【0330】
本発明において言及されているすべての文献は、各文献が別個に参照として引用されているのと同様に、本出願において参照として引用されている。さらに、本発明の上述の内容を読んだ後、当業者は、本発明に対して様々な変更または修正を行うことができ、これらの等価形式は、本出願に添付された特許請求の範囲において同様に限定されることが理解されるべきである。
【配列表】