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特許7333119メルトブロー不織布及びこれを備えたフィルタ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-16
(45)【発行日】2023-08-24
(54)【発明の名称】メルトブロー不織布及びこれを備えたフィルタ
(51)【国際特許分類】
   D04H 3/16 20060101AFI20230817BHJP
   B01D 39/16 20060101ALI20230817BHJP
【FI】
D04H3/16
B01D39/16 A
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2022570591
(86)(22)【出願日】2022-05-24
(86)【国際出願番号】 JP2022021274
(87)【国際公開番号】W WO2022250057
(87)【国際公開日】2022-12-01
【審査請求日】2022-11-18
(31)【優先権主張番号】P 2021088607
(32)【優先日】2021-05-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】597094215
【氏名又は名称】タピルス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊東 重雄
(72)【発明者】
【氏名】田▲嶋▼ 俊也
(72)【発明者】
【氏名】福原 一美
(72)【発明者】
【氏名】田村 智彦
【審査官】伊藤 寿美
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/202899(WO,A1)
【文献】特開平11-131353(JP,A)
【文献】国際公開第2014/168066(WO,A1)
【文献】特開2013-177703(JP,A)
【文献】国際公開第2018/151058(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/059360(WO,A1)
【文献】特開2017-051953(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D04H 1/00-18/04
B01D 39/00-41/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維径の異なる複数の熱可塑性樹脂繊維を含むメルトブロー不織布であって、
前記熱可塑性樹脂繊維の樹脂成分が、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンサルファイド、及びポリアミドのうちの一種又は二種以上であり、
繊維径の標準偏差が1.2以上であり、かつ地合指数の平均繊維径に対する比が33未満であり、
熱可塑性樹脂繊維の平均繊維径が1μm~50μmであり、
メルトブロー不織布中の熱可塑性樹脂繊維のうちの、平均繊維径の2.5倍以上の繊維径を有する熱可塑性樹脂繊維の割合が4%以上であり、
メルトブロー不織布中の熱可塑性樹脂繊維のうちの、平均繊維径の0.75倍以下の繊維径を有する熱可塑性樹脂繊維の割合が46%以上である、メルトブロー不織布。
【請求項2】
前記熱可塑性樹脂繊維の樹脂成分が、ポリオレフィン、ポリエステル及びポリアミドからなる群より選択される少なくとも1種である、請求項1に記載のメルトブロー不織布。
【請求項3】
請求項に記載のメルトブロー不織布を備えるフィルタ。
【請求項4】
メルトブロー不織布中の熱可塑性樹脂繊維のうちの、平均繊維径の0.75倍を超え2.5倍未満の繊維径を有する熱可塑性樹脂繊維の割合が50%以下である、請求項1に記載のメルトブロー不織布
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メルトブロー不織布及びこれを備えたフィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
メルトブロー不織布は、気体及び液体を始めとする物質のフィルタとして広く使用されており、物質をより多くより長期間捕集できるよう、フィルタ寿命の長期化が求められている。
【0003】
メルトブロー不織布は、一定のピッチをおいて設置された複数のメルトブロー用ノズルから溶融ポリマーを吐出し、吐出された溶融ポリマーを紡糸することにより製造される。ノズル孔径は通常一定であるが、出願人は以前に、小径のノズルと大径のノズルを特定の個数比で設けた異孔径ノズルを作成し、異孔径ノズルでメルトブロー不織布を作成すると、通常のノズルで作成した場合よりも繊維径分布の広いメルトブロー不織布になることを確認した(特許文献1)。繊維径分布が広いと、物質を不織布の表層だけでなく内部でもより均質に捕集することができ、目詰まりが起こりにくく、濾過寿命の長いフィルタとなる。
【0004】
特許文献2には、小孔径のノズルと大孔径のノズルとして特許文献1とは異なる比率のノズルピースを用いて、1μm以下の繊維径積算頻度が5%以上、10μm以上の繊維径積算頻度が0.1~5%の範囲にあるメルトブローン不織布を製造することが記載されている。このメルトブローン不織布は吸音性能に優れている。
【0005】
特許文献3は、2~20列の多段ノズルから排出された複数のフィラメントを紡糸することで製造された幅広い繊維径を有する高ロフトの不織ウェブについて開示している。
【0006】
特許文献4は、混繊不織布を製造する方法において、繊維群Aを構成する樹脂と繊維群Bを構成する樹脂を、それぞれ別々の押出機で溶融すると共に別々の紡糸孔から吐出し、繊維群Aの吐出孔からのポリマー単孔吐出量を小さくし、繊維群Bの吐出孔からのポリマー単孔吐出量を大きく設定することにより、所望の単繊維径を有する混繊不織布を得ることについて開示している。
【0007】
特許文献5は、不織布に含まれる熱可塑性樹脂繊維の原料の熱可塑性樹脂にポリプロピレン及びポリプロピレンワックスを用いて、ノズル孔径が1種類のノズルで熱可塑性樹脂繊維の繊維径が二つのピークを有する不織布を製造することについて開示している。
【0008】
特許文献6は、平均繊維径0.8μm以下、1.0μm以下の繊維の体積比率が40%未満であることを特徴とする不織布について開示している。不織布の製造方法において、紡糸ノズル当たりの樹脂吐出量を0.01g/分以上とし、ダイ部分のポリマー圧力を2.3MPa以上となるようにダイ温度を設定する。紡糸ノズルは1種類である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開平11-131353
【文献】特開2013-147771
【文献】特表2020-505530
【文献】特開2016-160542
【文献】WO2017/142021
【文献】WO2018/030057
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
異孔径ノズルを用いた場合、単一径ノズルを用いた場合よりもフィルタの長寿命化は達成できるが、ノズルの設計上の制約から、作成できるポリマー繊維の繊維径の分布範囲が限られる。例えば、繊維を細くしていくと、ノズルの小径の孔から樹脂が出にくくなり、細い繊維が切れて、ポリマー塊であるショットが多数発生し、不織布の外観及び品質が低下し得る。他方、繊維を太くしていくと、不織布外観上で繊維の密集した部分と目の粗い部分からなるムラ、つまり繊維の粗密によるムラが大きくなり、物性のバラつきが大きくなる、太い繊維の冷却不足によるショットが発生するなど、不織布の品質が低下し得る。
【0011】
メルトブロー不織布における繊維の粗密によるムラを抑えつつ、繊維径の分布範囲をさらに広げることができれば、物質の捕集能力が向上し、フィルタの長寿命化の要求が叶えられる。
【0012】
本発明の目的は、繊維径の分布範囲が広く、かつ繊維の粗密によるムラの少ないメルトブロー不織布を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
かかる状況の下、本発明者らは、鋭意検討した結果、繊維径の異なる複数の熱可塑性樹脂繊維を含むメルトブロー不織布において、繊維径の標準偏差が1.2以上、かつ地合指数の平均繊維径に対する比が33未満であることにより上記課題を解決し得ることを見出した。従って、本発明は、以下に記載の実施形態を包含する。
【0014】
項1.繊維径の異なる複数の熱可塑性樹脂繊維を含むメルトブロー不織布であって、繊維径の標準偏差が1.2以上であり、かつ地合指数の平均繊維径に対する比が33未満である、メルトブロー不織布。
【0015】
項2.メルトブロー不織布中の熱可塑性樹脂繊維のうちの、平均繊維径の2.5倍以上の繊維径を有する熱可塑性樹脂繊維の割合が4%以上である、項1に記載のメルトブロー不織布。
【0016】
項3.メルトブロー不織布中の熱可塑性樹脂繊維のうちの、平均繊維径の0.75倍以下の繊維径を有する熱可塑性樹脂繊維の割合が46%以上である、項1又は2に記載のメルトブロー不織布。
【0017】
項4.熱可塑性樹脂繊維の平均繊維径が1μm~50μmである、項1~3のいずれか一項に記載のメルトブロー不織布。
【0018】
項5.前記熱可塑性樹脂繊維の樹脂成分が、ポリオレフィン、ポリエステル及びポリアミドからなる群より選択される少なくとも1種である、項1~4のいずれか一項に記載のメルトブロー不織布。
【0019】
項6.項5に記載のメルトブロー不織布を備えるフィルタ。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、繊維径の分布範囲が広く、かつ繊維の粗密によるムラの少ないメルトブロー不織布を提供することができる。かかる不織布は圧力が加えられても厚みが減少しにくく、物質の濾過後も通気度が減少しにくい。このため、かかる不織布を用いたフィルタは繊維構造を保持する能力が高く、長寿命化が期待される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明のメルトブロー不織布の製造方法のプロセスの概略図である。
図2】(A)図1の装置におけるノズル3c部分の紡糸ノズルの配列を示す部分正面図である。(B)ノズル3cの部分斜視図である。(C)図2(A)に示すノズル3cのX1-X1での断面図である。
図3】実施例1、比較例1、及び比較例2のメルトブロー不織布の粒子濾過効率を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を実施するための実施形態について説明する。以下に説明する実施形態は、本発明の代表的な実施形態の一例を示したものであって、本発明はそれらに限定されるものではない。
【0023】
本発明は、繊維径の異なる複数の熱可塑性樹脂繊維を含むメルトブロー不織布であって、繊維径の標準偏差が1.2以上であり、かつ地合指数の平均繊維径に対する比が33未満である、メルトブロー不織布を提供する。
【0024】
本発明のメルトブロー不織布は、繊維径の標準偏差が1.2以上である。繊維径の標準偏差が1.2以上であると、繊維径の分布範囲が大きく、より細い繊維とより太い繊維が混在することになる。フィルタとして使用した時に細い繊維で高い粒子捕集能力を確保し、太い繊維で濾過圧力による圧縮を抑えられ、厚み方向でより多くの粒子を捕集できるため、フィルタ寿命が改善できる。繊維径の標準偏差が1.2未満であると、不織布を構成する繊維の大部分を、ある一定の限られた範囲の繊維径の繊維が占めることになる。細繊維に偏ると粒子捕集能力は向上するが、濾過圧力により繊維間の隙間が潰れ、元の構造に戻りにくくなるため、目詰まりしやすくなる。また太繊維に偏ると繊維の粗密によるムラが大きくなり、地合いが悪く、粒子捕集能力が不足する。
【0025】
本発明において、メルトブロー不織布の平均繊維径つまりメルトブロー不織布を構成する繊維の平均繊維径は、メルトブロー不織布の電子顕微鏡写真において、1画像当たり25本程度の繊維が入る倍率にて、4枚の画像を撮影し、任意に選択した合計100本の繊維を、直径0.1μmオーダーまで繊維径を測定し、それらを平均して求める。
【0026】
本発明において、繊維径の標準偏差uは、電子顕微鏡写真において、100本の繊維の各繊維の繊維径xiと、平均繊維径xaveとを算出し、以下の式(1)により求められる値である。
【0027】
【数1】
【0028】
nは測定した繊維の総数(n=100)、xiは各繊維の繊維径の値、xave は平均繊維径の値である。
【0029】
本発明のメルトブロー不織布は、メルトブロー不織布中の熱可塑性樹脂繊維のうちの、平均繊維径の2.5倍以上の繊維径を有する熱可塑性樹脂繊維の割合が4%以上である。
【0030】
メルトブロー不織布中の熱可塑性樹脂繊維のうちの、平均繊維径の2.5倍以上の繊維径を有する熱可塑性樹脂繊維の割合は、メルトブロー不織布の電子顕微鏡写真から任意に繊維100本を選択し、各繊維の繊維径を直径0.1μmオーダーまで測定して、100本の繊維の平均繊維径を算出すると共に、平均繊維径の2.5倍以上の繊維径を有する熱可塑性樹脂繊維の本数を100で除して100を乗じた値である。
【0031】
平均繊維径の2.5倍以上の繊維径を有する熱可塑性樹脂繊維の割合が4%以上であると、比較的平均繊維径の大きい繊維がメルトブロー不織布中に存在することになり、メルトブロー不織布の繊維間の隙間が確保されて通気性が増大するとともに、耐圧縮性が向上する。
【0032】
平均繊維径が大きい熱可塑性樹脂繊維の割合の上限は特に限定されないが、いくつかの実施形態では、メルトブロー不織布の繊維の粗密によるムラの低減と、粒子捕集効率の点から、平均繊維径の5倍以上の繊維径を有する熱可塑性樹脂繊維の割合の上限は、メルトブロー不織布の繊維の粗密によるムラの低減と、粒子捕集効率の点から、20%以下であることが好ましい。なお、平均繊維径の5倍以上の繊維径を有する熱可塑性樹脂繊維の割合は、電子顕微鏡を用いて不織布の表面を撮影した写真から任意に繊維100本(n=100)を選び、選択した繊維の直径を測定し、繊維径が平均繊維径の5倍以上である繊維の本数/測定した繊維の全本数(n=100)×100で表される値とする。
本発明のメルトブロー不織布は好ましくは、メルトブロー不織布中の熱可塑性樹脂繊維のうちの、平均繊維径の0.75倍以下の繊維径を有する熱可塑性樹脂繊維の割合が46%以上である。
【0033】
メルトブロー不織布中の熱可塑性樹脂繊維のうちの、平均繊維径の0.75倍以下の繊維径を有する熱可塑性樹脂繊維の割合は、メルトブロー不織布の電子顕微鏡写真から任意に繊維100本を選択し、各繊維の繊維径を直径0.1μmオーダーまで測定して、100本の繊維の平均繊維径を算出すると共に、平均繊維径の0.75倍以下の繊維径を有する熱可塑性樹脂繊維の本数を100で除して100を乗じた値である。
【0034】
平均繊維径の0.75倍以下の繊維径を有する熱可塑性樹脂繊維の割合が46%以上であると、比較的平均繊維径の小さい繊維がメルトブロー不織布中に大きな割合で存在することになり、メルトブロー不織布の繊維の粗密によるムラが低減し、粒子捕集効率が良好となる。
【0035】
このような本発明のメルトブロー不織布は、繊維径の分布範囲が広く、かつ繊維の粗密によるムラが少ない。かかる不織布は圧力が加えられても厚みが減少しにくく、濾過対象の物質(以下、濾過対象の物質を単に「物質」と称する場合がある)の濾過後も通気度が減少しにくい。このため、かかる不織布を用いたフィルタは繊維構造を保持する能力が高く、高度な濾過性能及び長寿命化が期待される。
【0036】
本発明のメルトブロー不織布は、地合指数の平均繊維径に対する比が33未満である。地合指数の平均繊維径に対する比が33未満であると、繊維の粗密によるムラが少ないため地合いがより均一となり、安定した高い捕集能力が期待できる。 地合指数の平均繊維径に対する比が33以上であると、繊維の粗密によるムラが大きく、繊維間の隙間が大きい部分があるため粒子捕集効率が安定せず好ましくない。
【0037】
不織布の地合指数は、微細単位面積当たりの目付の指標であり、繊維配向の均一性を表す指数である。不織布の地合指数は、試料に透過光をあて、画像の濃淡の分布を用いて算出することができる。地合指数が小さいほど、均一性が高いことを示す。また、地合指数が小さいほど、不織布による物質の捕集能力が高い。具体的には、測定に透過式地合計(野村商事株式会社製FMT-M III)を用い、サンプルをセットしない状態で、光源点灯時/消灯時の透過光量をCCDカメラでそれぞれ測定する。続いてA4サイズにカットした不織布をセットした状態で同様に透過光量を測定し、平均透過率、平均吸光度、標準偏差を求める。地合指数は、標準偏差÷平均吸光度×1000で求めることができる。
【0038】
本発明のメルトブロー不織布の平均繊維径については、特に限定されないが、流体フィルタの用途および耐圧縮性の観点から、1~50μmであることが好ましい。いくつかの実施形態では、平均繊維径は1~40μmである。別のいくつかの実施形態では、平均繊維径は1~10μmである。
【0039】
本発明のメルトブロー不織布の目付については、特に限定されないが、平均目付の範囲は、好ましくは5~150g/m2であり、より好ましくは20~100g/m2であり、さらに好ましくは40~90g/m2である。強度の向上(強度が向上するとフィルタへの加工がしやすくなる)の観点、及びフィルタ化の際、剛性が高すぎないよう抑え、他材との密着性を向上してより均一な積層を行う観点(より均一な積層は効果的な濾過性能につながる)から、メルトブロー不織布の平均目付を上記範囲とすることが好ましい。目付けが好ましくは40g/m2以上、より好ましくは45g/m2以上であると、33未満の地合指数の平均繊維径に対する比の達成がより容易である。
【0040】
好ましいメルトブロー不織布のいくつかの実施形態では、平均繊維径が1~10μmの場合に、目付けが60g/m2以上である。好ましいメルトブロー不織布のいくつかの実施形態では、平均繊維径が1~5μmの場合に、目付けが60g/m2以上である。好ましいメルトブロー不織布のいくつかの実施形態では、平均繊維径が5~10μmの場合に、目付けが80g/m2以上である。
【0041】
本発明のメルトブロー不織布の厚みについては、特に限定されないが、一枚のメルトブロー不織布当たり、平均厚みで好ましくは0.01~10mmであり、より好ましくは0.1~5mmである。
【0042】
本発明のメルトブロー不織布の通気度については、特に限定されないが、100mm×100mmのメルトブロー不織布試験片に対して、JIS L1096に従ってフラジール型試験機により測定した値が、1~1700cm3/cm2/秒であることが好ましく、10~800cm3/cm2/秒がより好ましい。濾過時の圧力抵抗の上昇を抑え、かつ所定の強度の不織布を得る観点から、メルトブロー不織布の通気度を上記範囲とすることが好ましい。
【0043】
いくつかの実施形態では、熱可塑性樹脂繊維の平均繊維径が5μm以上であり、メルトブロー不織布の通気度が50cm3/cm2/秒以上である。別のいくつかの実施形態では、熱可塑性樹脂繊維の平均繊維径が5μm~50μmであり、メルトブロー不織布の通気度が50cm3/cm2/秒~400cm3/cm2/秒である。別のいくつかの実施形態では、熱可塑性樹脂繊維の平均繊維径が1μm以上、5μm未満であり、メルトブロー不織布の通気度が1~50cm3/cm2/秒である。
【0044】
本発明のメルトブロー不織布のショットについては、特に限定されないが、1m2のメルトブロー不織布に対して、直径0.5mm以上の透明斑(樹脂塊)が3個/m2以下、好ましくは1個/m2以下である。メルトブロー不織布中にショットが存在すると、ショット周辺部の最大孔径が大きくなり、濾過性能が低下する。
【0045】
本発明のメルトブロー不織布の破裂強度については、特に限定されないが、平均繊維径が1~5μmの場合、100kPa以上、より好ましくは150kPa以上、より好ましくは160kPa以上、より好ましくは170kPa以上であり、平均繊維径が5~50μmの場合、150kPa以上、より好ましくは190kPaである。メルトブロー不織布に繊維の粗密ムラがあると、フィルタとして使用した場合に濾過媒体の圧力耐性が低下し、破膜してしまう可能性がある。破裂強度の上限値は特に限定されないが、メルトブロー不織布の加工性低下が懸念されるため、通常、1000kPa以下であることが好ましく、500KPa以下であることがより好ましい。メルトブロー不織布の破裂強度は、JIS P8112:2008に準拠して、株式会社東洋精機製ミューレン破裂試験機M2-LDを用いて3回行った試験で測定した値の平均値とする。
【0046】
破裂強度は目付が高くなるほど向上するため、特に限定されないが、破裂強度/目付は2以上、より好ましくは2.2以上である。
【0047】
メルトブロー不織布の細孔径は、繊維間の隙間であり、繊維径、繊維径分布、目付、厚み等によって調整することが可能であり、フィルタとして使用した場合、捕集したい物質の粒子径により好ましい細孔径は変わってくる。一般に、粒子捕集能力の観点からは、最大細孔径、最小細孔径、平均細孔径が小さいほど好ましく、フィルタ寿命の観点からは細孔径は大きい方が好ましい。細孔径(最大細孔径、最小細孔径、平均細孔径)はバブルポイント法(ASTM F316-86、JIS K3832)により測定する。平均細孔径は、粒子捕集能力、寿命の点で、5~50μmの範囲内にあることが好ましい。
【0048】
初期通水速度は、粒子等を含む濾液を濾過していない初期状態において、1時間中に単位面積当たりのメルトブロー不織布を通過できる純水の量を表す。この値は、メルトブロー不織布をアルコール置換後に、一定量の純水が自重によりメルトブロー不織布を通過する時間を測定することにより求められる。初期通水速度の速さは、フィルタとしての濾過速度の指標となり、初期通水速度が速いほど、フィルタの初期の濾過処理量が多くなる。本発明のメルトブロー不織布の初期通水数速度は、特に限定されないが、600mL/cm2/h以上であることが好ましく、650mL/cm2/h以上であることがより好ましく、680mL/cm2/h以上であることがより好ましい。本発明の実施形態のメルトブロー不織布は、目付けの高さの割に初期通水速度が高いが、これは繊維の粗密によるムラが少ないためと考えられる。
【0049】
通水速度半減堆積粒子量は、粒子等を含む濾液を濾過する過程において、通水速度が半減する時点でのメルトブロー不織布が捕集した粒子量であり、メルトブロー不織布の目詰まりの指標となる。一般に、フィルタは、通水量が一定レベルまで低減した場合に交換が必要となり、交換までの濾過量が多いほどフィルタ寿命が長いと評価することができる。堆積粒子量は40g/m2以上が好ましく、50g/m2以上がより好ましい。
【0050】
濾過効率評価(0-100%)は、メルトブロー不織布により粒子等を含む濾液を濾過した際に粒子を補集できる効率であり、高いほど好ましい。一般に、濾過効率は、濾過粒子径が小さくなるほど低下し、またメルトブロー不織布の平均細孔径が小さくなるほど向上する。
【0051】
本発明に係るフィルタ用のメルトブロー不織布を構成するポリマーは、メルトブロー可能な熱可塑性樹脂であれば、特に限定されない。メルトブロー不織布を構成するポリマーとしては、例えば、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等、好ましくはポリプロピレン等)、ポリエステル、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンサルファイド、ポリアミド等が挙げられる。これらの熱可塑性樹脂は、一種単独で又は二種以上を組み合わせて使用することができる。二種以上の熱可塑性樹脂を組み合わせて使用する場合、その配合比は限定されない。本発明において、ある熱可塑性樹脂を主体に構成されたメルトブロー不織布とは、当該熱可塑性樹脂を主成分として含むメルトブロー不織布といいかえることもできる。また、本発明において、ある熱可塑性樹脂を主体に構成されたメルトブロー不織布とは、主要な原料として熱可塑性樹脂を用いて得られたメルトブロー不織布を意味し、当該熱可塑性樹脂のみを用いて得られたメルトブロー不織布だけでなく、例えば、当該熱可塑性樹脂を原料の50質量%以上、70質量%以上、90質量%以上、95質量%以上、99質量%以上等の割合で用いて得られたメルトブロー不織布も含まれる。本発明におけるメルトブロー不織布においては、ポリオレフィン、ポリエステルが好ましく、ポリオレフィンが特に好ましい。
【0052】
前記ポリオレフィンとしては、プロピレン、エチレン、1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテン、4-メチル-1-ペンテン等のα-オレフィンの単独重合体、及びこれらのα-オレフィンの2種類以上のランダム又はブロック共重合体が挙げられ、ポリプロピレンが好ましい。本発明において不織布の原料としてポリプロピレンを用いる場合、そのメルトフローレート(MFR)は特に限定されないが、例えば、5~2,500g/10分のメルトフローレート(MFR)を有するポリプロピレンが好ましい。MFRが5g/10分未満のポリプロピレンを用いた場合、溶融混練温度及び吐出温度を比較的高くする必要があり、ポリプロピレン由来の炭化物が発生するおそれがある。またMFRが2,500g/10分を超えると、不織布の伸度が低下し脆くなってしまう。本発明において原料としてポリプロピレンを用いる場合、MFRが10~2,000g/10分が好ましく、15~100g/10分がより好ましい。ポリプロピレンのMFRは、JIS K7210に基づき荷重2.16kg、及び温度230℃で測定することができる。
【0053】
本発明において原料としてポリプロピレンを用いる場合、当該ポリプロピレンの重量平均分子量(Mw)は、特に限定されないが、1×104~5×105が好ましく、5×104~3×105がより好ましい。ポリプロピレンの分子量分布[重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)]も特に限定されないが、1.1~10が好ましく、1.5~8がより好ましく、2~6がさらに好ましい。
【0054】
本発明において原料としてポリプロピレンを用いる実施形態において、ポリプロピレンとしては、プロピレン単独重合体を用いてもよく、過半重合割合のプロピレンと他のα-オレフィン(例えば、エチレン、ブテン、ヘキセン、4-メチルペンテン、オクテン等)、不飽和カルボン酸又はその誘導体(例えば、アクリル酸、無水マレイン酸等)、芳香族ビニル単量体(例えば、スチレン等)等とのランダム、ブロック又はグラフト共重合体を用いてもよい。本発明において、これらのポリプロピレンを、単独で使用してもよく、複数種類のポリプロピレンの混合物として使用してもよく、ポリプロピレン以外の熱可塑性樹脂(例えば、ポリオレフィン等)との混合物として使用してもよい。
【0055】
本発明において原料としてポリエステルを用いる実施形態において、ポリエステルとしては、特に限定されないが、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート等が挙げられ、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等が好ましい。
【0056】
本発明において原料としてポリアミドを用いる実施形態において、ポリアミドとしては、特に限定されないが、例えば、ポリアミド3(ナイロン3)(登録商標)、ポリアミド4(ナイロン4)(登録商標)、ポリアミド6(ナイロン6)(登録商標)、ポリアミド6-6(ナイロン6-6)(登録商標)、ポリアミド12(ナイロン12)(登録商標)等が挙げられる。
【0057】
本発明において、上記熱可塑性樹脂には、本発明の効果が得られる範囲において、結晶核剤、艶消し剤、顔料、防カビ剤、抗菌剤、難燃剤、親水剤、光安定剤、流動性向上剤等を添加してもよい。
【0058】
次に、本発明の好ましい実施形態におけるメルトブロー不織布の製造方法を図面を参照して説明するが、当該製造方法は下記に限定されない。図1は、本発明のメルトブロー不織布の製造装置の一例を示す。この製造装置は、原料を投入するホッパー1aと、原料を溶融混練する押出機1bと、押出機1bから押出された溶融ポリマーを下流に送る定量ポンプ2と、溶融ポリマーを繊維状に水平方向に吐出するダイ3aと、ダイ3aから溶融ポリマーと一緒に排出される高温高速エアー用の温度調整ヒーター3bと、ダイ先端に取り付けられた紡糸ノズル3cと、ダイ3aの近傍に設けられた繊維捕集用のコレクタ4aと、コレクタ4a(及びコレクタ4aで捕集した繊維状の溶融ポリマー5a)を吸引するためのサクションブロワー4bと、ダイから吐出された繊維状の溶融ポリマー5aと、繊維状の溶融ポリマー5aがコレクタ4a上で冷却固化してなるメルトブロー不織布5bと、メルトブロー不織布5bを巻き取る巻取機6とからなる。
【0059】
図2(A)は、図1の装置におけるノズル3c部分の紡糸ノズルの配列を示す部分正面図である。また、図2(B)は、ノズル3cの部分斜視図である。さらに図2(C)は、当該図2(A)に示すノズル3cのX1-X1での断面図である。図2(A)に示す実施形態において、ダイ3aにおける紡糸ノズル3cのノズル孔3dは、孔径D1のノズル孔3d1と、2つのノズル孔3d1の間に設けられた、ノズル孔3d1の孔径D1よりも先端における孔径が小さいノズル孔3d2とからなる。図2(C)において、ノズル孔3d1の長さをL1、直径すなわち孔径をD1とすると、紡糸ノズル3cからの溶融ポリマーの吐出流量を均等にするために、紡糸ノズル孔3d1の長さL1と直径D1との比L1/D1は好ましくは3以上であり、より好ましくは6以上である。図2(C)の実施形態において、ノズル孔3d1の孔径D1は長さ方向に沿って一定である。吐出された前記ポリマーの繊維の絡まりを防止しつつ効率的にメルトブロー不織布を得るために、紡糸ノズル孔3dの密度は、1インチ当たり3~40個が好ましく、5~35個がより好ましい。
【0060】
2つのノズル孔3d1の間にはn個の列のノズル孔3d2を設けることができ、nは2~4の範囲であることが好ましい(図ではnは3である)。ノズル孔3dの中心間距離、いわゆるピッチ間隔は隣接する孔径同士3d1-3d2の間および3d2-3d2の間では等しい。
【0061】
小径のノズル孔3d2の長さL2は、大径のノズル孔3d1の長さL1と同一であってもよいし、異なっていてもよいが、同一であることが好ましい。小径のノズル孔3d2の孔径D2は、先端と基端で異なっており、先端の孔径D2dが基端の孔径D2pよりも小さくなるように構成されている。大径のノズル孔3d1の長さL1及び小径のノズル孔3d2の長さL2は好ましくはそれぞれ0.3~20mmであり、より好ましくは3~10mmである。
【0062】
ノズル孔3d1,3d2のD1,D2(D2d,D2p)は好ましくは、0.1~2.0mmであり、ノズル孔3d1の孔径D1のノズル3d2の先端の孔径D2dに対する比R(D1/D2d)は例えば1.3~2.0の範囲である。孔径比Rが1.3以上であると、繊維径分布が広がり、孔径比Rが2.0以下であると、孔径の大小差に基づく樹脂の吐出バランスが保たれ、安定した紡糸状態が得られる。例えば、ノズル孔3d1の孔径D1は、0.20~1.20mmであり、ノズル孔3d2の先端の孔径D2dは、0.10~0.80mmである。
【0063】
本願では、紡糸ノズル3cの小径のノズル孔3d2の径が小さくても樹脂が出にくくなることを防止又は抑制し、繊維径の分布範囲を広げるために、大径のノズル孔3d1の先端にかかる圧力と、小径のノズル孔3d2の先端にかかる圧力とを、従来よりも近づけている。流体力学の当業者に容易に理解されるように、このような圧力は、小径のノズル孔3d2の断面積を、ノズル孔3d2の長さ方向における先端よりも基端で増大するようノズル孔3d2を設計することにより満たされる。
【0064】
好ましくは、大径のノズル孔3d1の先端にかかる圧力と、小径のノズル孔3d2の先端にかかる圧力とが実質的に等しい。言い換えると、小径のノズル孔3d2の先端から吐出される溶融ポリマーの単位面積当たりの流量と、大径のノズル孔3d1の先端から吐出される溶融ポリマーの単位面積当たりの流量とが実質的に等しい。ここで、圧力が実質的に等しいとは、圧力が等しいか、又は比較する2つの圧力の差が±30%以内の範囲内であることを指す。
【0065】
いくつかの実施形態において、小径のノズル孔3d2は、長手方向において基端と先端の間で一段階又は複数段階で断面積が小さくなり、よってノズル孔3d2の孔径D2も基端の孔径D2pから先端の孔径D2dまで段階的に減少する。例えば、2段階の場合はL2=L21+L22となり、L21に対する孔径はD2pで一定、L22に対する孔径はD2dで一定となる。別のいくつかの実施形態において、小径のノズル孔3d2は、長手方向において基端と先端の間で連続的に断面積が小さくなり、よってノズル孔3d2の孔径D2も基端の孔径D2pから先端の孔径D2dまで連続的に減少する。後者の構成は、ノズル孔3d2を区画形成する壁を、基端から先端まで、または基端と先端の間の位置から先端まで、テーパ状に狭くすることにより達成することができる。
【0066】
孔径D2pのD1に対する比R2(D1/D2p)は例えば、0.3~0.95である。
【0067】
本発明のメルトブロー不織布は、ポリマーを溶融混練する工程、溶融ポリマーを紡糸ノズルから吐出し、別のノズルから加熱空気を噴出してポリマーの繊維を形成する工程を含む方法により製造することができる。前記で説明した装置を参照して説明すると、メルトブロー不織布を製造する場合、前記紡糸ノズル3cから吐出した繊維状の溶融ポリマー5aを空気ノズルから噴出する加熱空気により延伸し、必要な場合には追加のプロセスを行い、メルトブロー不織布を得ることが可能である。得られたメルトブロー不織布に対して、必要に応じて、カレンダー処理、帯電処理、親水化処理等を施しても良い。
【0068】
(1)溶融混練工程
前記ポリマーの溶融混練温度は(前記ポリマーの融点+50℃)~(前記ポリマーの融点+300℃)が好ましい。ポリプロピレンの場合、溶融混練温度は210~460℃が好ましく、230~420℃がより好ましい。
【0069】
(2)繊維形成工程
溶融ポリマーを多数の紡糸ノズル3cから吐出するとともに、ノズルから加熱空気を噴出し、前記ポリマーの繊維を形成する。ダイ3a及び加熱空気の温度は(前記ポリマーの融点)~(前記ポリマーの融点+200℃)とするのが好ましい。ポリプロピレンの場合、ダイ3a及び加熱空気の温度は160~360℃が好ましく、190~330℃がより好ましい。ポリマーが紡糸ノズル3cから吐出した直後に急速に固化してしまうことを抑制し、かつ形成されたポリマー繊維の融着を抑制して、繊維径のバラツキを抑える観点から、上記温度範囲が好ましい。
【0070】
ポリマー繊維を形成するために、紡糸ノズル3c当たりの溶融ポリマーの吐出量は0.1~2g/分/ホール以下が好ましく、0.5~1g/分/ホール以下がより好ましい。繊維化するのに十分な吐出圧力を得ることができ、かつ過剰な吐出圧力でノズルを破損することを避ける観点から、上記紡糸ノズル3c当たりの溶融ポリマーの吐出量は上記範囲が好ましい。
【0071】
紡糸ノズルの幅当たりの加熱空気の噴出量は5~50Nm3/分/mが好ましく、10~40Nm3/分/mがより好ましい。
【0072】
本発明のメルトブロー不織布は、繊維径の分布範囲が広く、かつ繊維の粗密によるムラが少ない。従って、本発明のメルトブロー不織布及びその積層体は、流体フィルタ用のフィルタ材として有用である。流体には気体及び液体が含まれる。本発明のメルトブロー不織布及びその積層体は特に、液体フィルタ用のフィルタ材として有用である。
【0073】
また、本発明は、当該積層体を備える流体用フィルタを提供する。本発明にかかるメルトブロー不織布は、上記性能を有するため、フィルタ材を構成するメルトブロー不織布として前記本発明のメルトブロー不織布のみを用いた場合であっても、繊維径の分布範囲が広く、かつ繊維ムラの少ない、従って物質の捕集能力が高く長寿命な流体用フィルタを得ることができる。一方、本発明の別の実施形態において、濾過の目的等に応じて、フィルタ材を構成するメルトブロー不織布として、本発明のメルトブロー不織布に、その他のメルトブロー不織布を組み合わせて用いてもよく、このようなメルトブロー不織布の組合せを含む積層体を備える液体フィルタも本発明の液体フィルタに包含される。従って、本発明において、「メルトブロー不織布を積層してなる液体フィルタ用の積層体」には、メルトブロー不織布のみを積層してなる液体フィルタ用の積層体だけでなく、積層体の少なくとも1層(好ましくは、積層体を構成するメルトブロー不織布の枚数の半分以上)にメルトブロー不織布を用いているものであれば、メルトブロー不織布以外のメルトブロー不織布を含む積層体も包含される。
【0074】
以上、本発明のメルトブロー不織布及びその製造方法を好ましい実施形態を挙げて説明したが、本発明は、上記特定の実施形態に限定されない。
【0075】
以下の実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
【実施例
【0076】
1.メルトブロー不織布の製造
実施例1
メルトブロー製造装置の原料ホッパーにMFR40のホモポリプロピレン樹脂(重量平均分子量1.7×105。以下の実施例、比較例でも同じ)を投入し、溶融混練温度を375℃とした。ダイとコレクタの間隔250mmで、290℃の加熱圧縮空気13Nm3/min/mと共に、図2に示すノズル(3d1:3d2=1:3、D1=0.6mm、D2d=0.4mm、D2p=0.8mm、L1=L2=8.0mm、以下の実施例でも同じ)より樹脂を大気中に吐出し、吸引量394Nm3/min/mのコレクタ上に繊維状の樹脂を連続的に捕集させ、コレクタの回転速度を適当に調節して、目付61g/m2、厚みが0.91mm、通気度12cm3/cm2/s、繊維径1.9μm、地合指数46のメルトブロー不織布を得た。
【0077】
実施例2
メルトブロー製造装置の原料ホッパーにMFR40のホモポリプロピレン樹脂を投入し、溶融混練温度を375℃とした。ダイとコレクタの間隔300mmで、290℃の加熱圧縮空気15Nm3/min/mと共に、実施例1と同じノズルより樹脂を大気中に吐出し、吸引量217Nm3/min/mのコレクタ上に繊維状の樹脂を連続的に捕集させ、コレクタの回転速度を適当に調節して、目付82g/m2、厚みが1.33mm、通気度18cm3/cm2/s、繊維径2.5μm、地合指数53のメルトブロー不織布を得た。
【0078】
実施例3
メルトブロー製造装置の原料ホッパーにMFR40のホモポリプロピレン樹脂を投入し、溶融混練温度を365℃とした。ダイとコレクタの間隔500mmで、290℃の加熱圧縮空気22Nm3/min/mと共に、実施例1と同じノズルより樹脂を大気中に吐出し、吸引量197Nm3/min/mのコレクタ上に繊維状の樹脂を連続的に捕集させ、コレクタの回転速度を適当に調節して、目付82g/m2、厚みが1.13mm、通気度65cm3/cm2/s、繊維径6.5μm、地合指数117のメルトブロー不織布を得た。
【0079】
比較例1
メルトブロー製造装置の原料ホッパーにMFR40のホモポリプロピレン樹脂を投入し、溶融混練温度を414℃とした。ダイとコレクタの間隔200mmで、290℃の加熱圧縮空気29Nm3/min/mと共に、単一孔径ノズル(D=0.4mm、L=4.0mm)より樹脂を大気中に吐出し、吸引量327Nm3/min/mのコレクタ上に繊維状の樹脂を連続的に捕集させ、コレクタの回転速度を適当に調節して、目付60g/m2、厚みが1.10mm、通気度10ccm3/cm2/s、繊維径1.6μm、地合指数61のメルトブロー不織布を得た。
【0080】
比較例2
メルトブロー製造装置の原料ホッパーにMFR40のホモポリプロピレン樹脂を投入し、溶融混練温度を408℃とした。ダイとコレクタの間隔160mmで、290℃の加熱圧縮空気29Nm3/min/mと共に、異孔径ノズル(3d1:3d2=1:3、D1=0.6mm、D2=0.4mm、L1=L2=6.0mm)より樹脂を大気中に吐出し、吸引量327Nm3/min/mのコレクタ上に繊維状の樹脂を連続的に捕集させ、コレクタの回転速度を適当に調節して、目付60g/m2、厚みが1.01mm、通気度12cm3/cm2/s、繊維径1.3μm、地合指数57のメルトブロー不織布を得た。
【0081】
各種物性値の測定及び評価
次に、得られた実施例1-3、比較例1-2のメルトブロー不織布の各物性値を下記のように測定、算出した。結果を表1に示す。
(1)平均目付
平均目付は、100mm×100mmの10枚のメルトブロー不織布試験片に対して、温度23℃及び湿度50%における水分平衡状態の質量(g)を測定し、平均することにより求めた。
(2)厚み
100mm×100mmのメルトブロー不織布試験片に対して、直径2.5cm、荷重7g/cm2の測定子を付けたリニアゲージにより試験片の重心に当たる中央部分の厚みを測定し、10枚の測定値を平均することにより求めた。
(3)通気度
通気度は100mm×100mmの10枚のメルトブロー不織布試験片に対して、JIS L1096に従ってフラジール型試験機により測定し、平均することにより求めた。
(4)平均繊維径
平均繊維径は、電子顕微鏡写真にて1画像当たり25本程度の繊維が入る倍率にて、4枚の画像を撮影し、合計100本の繊維を、直径0.1μmオーダーまで繊維径を測定し、それらを平均して求めた。
繊維径割合は、繊維総数に対する特定の繊維径を有する繊維の数の割合をパーセントで示したものである。
【0082】
(5)地合指数
地合指数は、A4サイズの3枚のメルトブロー不織布試験片に対して、地合計(野村商事製FMT-M III)を用いて測定し、平均することにより求めた。
(6)ショット
ショットは、1m2のメルトブロー不織布試験片に対して、目視にて直径0.5mm以上の透明班の形成の有無によりフィルム化の有無を判定した。
(7)破裂強度
破裂強度は、JIS P8112:2008「紙―破裂強さ試験方法」に準拠し、株式会社東洋精機製ミューレン破裂試験機M2-LDを用いて3回行った試験で測定した値の平均値とした。
(8)最大細孔径、最小細孔径及び平均細孔径の測定方法
最大細孔径、最小細孔径及び平均細孔径は、以下に示すバブルポイント法(ASTM F316-86、JIS K3832)に基づき、自動細孔径分布測定器(型式「CFP-1200AX」、ポーラス・マテリアルズ社製)を用いて測定した。測定の際、試液(GALWICK又はSILWICK)で濡らしたメルトブロー不織布試験片をセットし、一方の面にかける空気圧を徐々に増大させた。
【0083】
(9)初期通水速度及び通水速度半減堆積粒子量評価
初期通水速度及び通水速度半減堆積粒子量は、以下に示す方法で測定した。
1.直径47mmサイズにカットしたメルトブロー不織布試験片の重量(mg)を測定した。
2.試験片をイソプロパノールに浸漬させた後、試験片の濾液通過部分を直径43mmとして純水400mLを自重により通過させ、試験片に含まれるイソプロパノールを水で置換した。
3.純水100mLを試験片に投入し、この純水が自重により試験片を通過する時間を測定した。単位面積、単位時間当たりの通水量を初期通水速度(mL/cm2/h)とした。
4.次に10mgのJIS7種粉体(関東ローム、焼成品)を添加した純水100mLを試験片に通過させた。
5.4の終了後、上流側から試験片に5kPaの圧力をかけた。
6.純水100mLを試験片に投入し、この水が自重により通過する時間を測定し、通水速度を算出した。
7.3で測定した初期通水速度が半減するまで、4~6を繰り返し実施した。
8.その後、試験片を温度23℃及び湿度50%下で24時間自然乾燥し、重量を測定した。1で測定した重量との差を試験片に堆積した粒子量(mg)とし、単位面積当たりの粒子を通水速度半減 堆積粒子量(g/m2)とした。
【0084】
(10)濾過効率評価:JIS7種粉体を純水で濃度200ppmに調製した試験液200mLを、試験片(試験液通過部分の直径43mm)で濾過した。試験液及び採取した濾液について装置(HIAC 8011+)を用いて粒子数を測定し、濾過効率評価を実施した。
表1に示されるように、本発明によるメルトブロー不織布は、繊維径分布が広く、細繊維と太繊維が均一に分散し、繊維ムラが少ない。またショットもなく外観も良好である。このようなメルトブロー不織布はフィルタとして使用した場合、高い粒子捕集性能、及び長寿命を期待することができる。
また、図3に示すように、実施例1のメルトブロー不織布の濾過効率は、大きな粒子だけではなく比較的小さな粒子に対しても高い濾過効率を示し、比較例1及び2のメルトブロー不織布よりも濾過効率が優れていた。
【0085】
【表1】
図1
図2
図3