IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社新川の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-16
(45)【発行日】2023-08-24
(54)【発明の名称】ワイヤ構造及びワイヤ構造形成方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/00 20060101AFI20230817BHJP
【FI】
H01L23/00 C
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2022570777
(86)(22)【出願日】2020-12-21
(86)【国際出願番号】 JP2020047715
(87)【国際公開番号】W WO2022137288
(87)【国際公開日】2022-06-30
【審査請求日】2022-11-18
(73)【特許権者】
【識別番号】519294332
【氏名又は名称】株式会社新川
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】朴 善基
【審査官】井上 和俊
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-025076(JP,A)
【文献】特開昭50-030471(JP,A)
【文献】特開2008-235849(JP,A)
【文献】特開2004-247672(JP,A)
【文献】特開平10-294327(JP,A)
【文献】特開2011-108993(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の上に取付けられた電子部品に隣接して設けられたバンプ点の上に形成された柱状バンプと、
前記バンプ点との間に電子部品を挟むよう前記基板の上に配置されている第1ボンド点と、前記バンプ点よりも前記第1ボンド点と反対側に隣接して前記基板の上に配置された第2ボンド点との間で前記電子部品の上を跨ぐように前記基板の上にボンディングされたルーピングワイヤと、を備えるワイヤ構造であって、
前記ルーピングワイヤは、
先端が前記第2ボンド点で前記基板にボンディングされて前記基板から立ち上がる立ち上がり部と、
前記電子部品の上を跨ぐように延びるループ部と、
前記柱状バンプの上端に係合して前記ループ部と前記立ち上がり部とを接続するように屈曲する屈曲部と、を備え、
前記バンプ点と前記第2ボンド点とは共通のパッドの上に配置されており、
前記柱状バンプは、前記パッドの上に形成された圧着ボールと、前記圧着ボールの上に形成された複数段の折り重ね部とで構成される柱形状であり、上端に前記ループ部の延びる方向に延びる溝を有し、前記屈曲部は、前記溝に係合していること、
を特徴とするワイヤ構造。
【請求項3】
請求項1に記載のワイヤ構造であって、
前記屈曲部は、屈曲角度が60°~90°であること、
を特徴とするワイヤ構造。
【請求項4】
請求項1または3に記載のワイヤ構造であって、
前記柱状バンプの高さは、前記電子部品の高さと同等または前記電子部品の高さよりも高いこと、
を特徴とするワイヤ構造。
【請求項5】
ボンディングツールによって柱状バンプとルーピングワイヤとを備えるワイヤ構造を形成するワイヤ構造形成方法であって、
前記ボンディングツールによって基板の上のバンプ点にワイヤを複数回折り重ねて押圧し、柱状に形成して前記柱状バンプを形成する柱状バンプ形成工程と、
前記バンプ点との間に電子部品を挟むよう前記基板の上に配置されている第1ボンド点の上に、前記ボンディングツールによって前記ワイヤをボンディングする第1ボンディング工程と、
前記第1ボンディング工程の後、前記ボンディングツールを上昇させて前記ボンディングツールの先端から前記ワイヤを繰り出すとともに、前記ボンディングツールを横方向に移動させて少なくとも1のキンクを備えるキンクワイヤを構成するキンクワイヤ形成工程と、
前記キンクワイヤ形成工程の後、前記ボンディングツールを前記柱状バンプの上端に向かってルーピングさせて、前記第1ボンド点と前記柱状バンプの上端との間に前記電子部品を跨ぐループ部を形成するループ部形成工程と、
前記ループ部形成工程の後、前記キンクワイヤの側面を前記柱状バンプの上端に係合させて前記キンクワイヤを前記基板に向かって屈曲させて屈曲部を形成する屈曲部形成工程と、
前記屈曲部形成工程の後、前記バンプ点よりも前記第1ボンド点と反対側に隣接して前記基板の上に配置された第2ボンド点に前記ボンディングツールで前記キンクワイヤをボンディングし、前記第2ボンド点から立ち上がって前記屈曲部に接続する立ち上がり部を形成する立ち上がり部形成工程と、
を含むことを特徴とするワイヤ構造形成方法。
【請求項6】
請求項5に記載のワイヤ構造形成方法であって、
前記ボンディングツールは、前記ワイヤが挿通する貫通孔と、前記貫通孔の周囲に設けられた円環状のフェイス部とを備えるキャピラリであり、
前記柱状バンプ形成工程は、前記ワイヤの側面を折り重ねて最上段の折り重ね部を形成する際に、前記キャピラリの中心位置を前記ループ部の延びる方向に交差する方向にずらして前記フェイス部で前記ワイヤの側面を押圧し、前記柱状バンプの上端に前記ループ部の延びる方向に延びる溝を形成すること、
を特徴とするワイヤ構造形成方法。
【請求項7】
請求項6に記載のワイヤ構造形成方法であって、
前記屈曲部形成工程は、前記ボンディングツールによって前記キンクワイヤの側面を前記溝に係合させて前記キンクワイヤを前記基板に向かって屈曲させること、
を特徴とするワイヤ構造形成方法。
【請求項8】
請求項5から7のいずれか1項に記載のワイヤ構造形成方法であって、
前記第1ボンディング工程は、前記ワイヤを前記第1ボンド点にボールボンディングを行い、
前記立ち上がり部形成工程は、前記第2ボンド点にステッチボンディングを行うこと、
を特徴とするワイヤ構造形成方法。
【請求項9】
請求項5から8のいずれか1項に記載のワイヤ構造形成方法であって、
前記柱状バンプ形成工程は、前記第1ボンド点と前記電子部品との間に配置された他のバンプ点に他の柱状バンプを更に形成し、
前記ループ部形成工程は、前記キンクワイヤ形成工程の後、前記ボンディングツールを前記柱状バンプの上端に向かってルーピングさせて、前記第1ボンド点と前記柱状バンプの上端との間に前記電子部品を跨ぐ前記ループ部を形成する際に、前記キンクワイヤの側面を前記他の柱状バンプの上端に係合させて前記キンクワイヤを前記電子部品の上方に向かって屈曲させて他の屈曲部を形成すること、
を特徴とするワイヤ構造形成方法。
【請求項10】
基板と、
前記基板の上に取付けられた電子部品と、
前記電子部品に隣接して設けられたバンプ点の上に形成された柱状バンプと、
前記バンプ点との間に電子部品を挟むよう前記基板の上に配置されている第1ボンド点と、前記バンプ点よりも前記第1ボンド点と反対側に隣接して前記基板の上に配置された第2ボンド点との間で前記電子部品の上を跨ぐように前記基板の上にボンディングされたルーピングワイヤと、を備える電子装置であって、
前記ルーピングワイヤは、
先端が前記第2ボンド点で前記基板にボンディングされて前記基板から立ち上がる立ち上がり部と、
前記電子部品の上を跨ぐように延びるループ部と、
前記柱状バンプの上端に係合して前記ループ部と前記立ち上がり部とを接続するように屈曲する屈曲部と、を備え、
前記バンプ点と前記第2ボンド点とは共通のパッドの上に配置されており、
前記柱状バンプは、前記パッドの上に形成された圧着ボールと、前記圧着ボールの上に形成された複数段の折り重ね部とで構成される柱形状であり、上端に前記ループ部の延びる方向に延びる溝を有し、前記屈曲部は、前記溝に係合していること、
を特徴とする電子装置。
【請求項11】
請求項10に記載の電子装置であって、
前記柱状バンプの高さは、前記電子部品の高さと同等または前記電子部品の高さよりも高いこと、
を特徴とする電子装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、柱状バンプと電子部品の上を跨ぐようにルーピングされたルーピングワイヤとを含むワイヤ構造の構成と、ワイヤ構造の形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ワイヤボンディングによって半導体チップ等の電子部品の上を跨ぐワイヤを形成し、電磁シールドを構成することが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載の方法で電子部品の上を跨ぐルーピングワイヤを形成する場合、ボンディングの始点側端は、ワイヤの先端を基板の上にボンディングした状態でワイヤを垂直に立ち上げ、大きな角度で横方向に曲げることができるので、ボンディングの始点を電子部品に近接して配置してもワイヤが電子部品に接触することはない。しかし、ボンディングの終点側は、ルーピングワイヤを基板に向けて屈曲させることが難しいため、ボンディングの終点は電子部品から離した位置にすることが必要であった(特許文献1の段落0013参照)。このため、特許文献1の方法で電子部品の上を跨ぐルーピングワイヤを形成する場合、広いルーピングワイヤの形成スペースが必要となり、電子装置が大型化してしまうという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2020-25076号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明は、少ないスペースで電子部品の磁気シールドが可能なワイヤ構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のワイヤ構造は、基板の上に取付けられた電子部品に隣接して設けられた柱状バンプと、電子部品の上を跨ぐように基板の上にボンディングされたルーピングワイヤと、を備えるワイヤ構造であって、ルーピングワイヤは、先端が柱状バンプの電子部品と反対側で基板にボンディングされて基板から立ち上がる立ち上がり部と、電子部品の上を跨ぐように延びるループ部と、柱状バンプの上端に係合してループ部と立ち上がり部とを接続するように屈曲する屈曲部と、を備えることを特徴とする。
【0007】
このように、屈曲部が柱状バンプの上端に係合して屈曲するので、屈曲部の屈曲角度を大きくすることができ、立ち上がり部を基板から垂直に近い角度で立ち上がらせることができる。これにより、電子部品に隣接した位置に立ち上がり部の先端をボンディングしても立ち上がり部の上部や屈曲部が電子部品に接触することを抑制でき、少ないスペースで電子部品の磁気シールドが可能なワイヤ構造を提供することができる。
【0008】
本発明のワイヤ構造において、柱状バンプは、上端にループ部の延びる方向に延びる溝を有し、屈曲部は、溝に係合してもよい。
【0009】
これにより、屈曲部を安定して柱状バンプの上端に係合させ、安定して大きな屈曲角度の屈曲部とすることができる
【0010】
本発明のワイヤ構造において、屈曲部は、屈曲角度が60°~90°でもよい。
【0011】
これにより、立ち上がり部を基板から垂直に近い角度で立ち上がらせることができ、コンパクトなワイヤ構造とすることができる。
【0012】
本発明のワイヤ構造において、柱状バンプの高さは、基板からループ部までの高さの50%以上でもよい。
【0013】
これにより、より確実に立ち上がり部、屈曲部が電子部品に接触することを抑制できる。
【0014】
本発明のワイヤ構造形成方法は、ボンディングツールによって柱状バンプとルーピングワイヤとを備えるワイヤ構造を形成するワイヤ構造形成方法であって、ボンディングツールによって基板の上のバンプ点にワイヤを複数回折り重ねて押圧し、柱状に形成して柱状バンプを形成する柱状バンプ形成工程と、バンプ点との間に電子部品を挟むよう基板の上に配置されている第1ボンド点の上に、ボンディングツールによってワイヤをボンディングする第1ボンディング工程と、第1ボンディング工程の後、ボンディングツールを上昇させてボンディングツールの先端からワイヤを繰り出すとともに、ボンディングツールを横方向に移動させて少なくとも1のキンクを備えるキンクワイヤを構成するキンクワイヤ形成工程と、キンクワイヤ形成工程の後、ボンディングツールを柱状バンプの上端に向かってルーピングさせて、第1ボンド点と柱状バンプの上端との間に電子部品を跨ぐループ部を形成するループ部形成工程と、ループ部形成工程の後、キンクワイヤの側面を柱状バンプの上端に係合させてキンクワイヤを基板に向かって屈曲させて屈曲部を形成する屈曲部形成工程と、屈曲部形成工程の後、バンプ点よりも第1ボンド点と反対側に隣接して基板の上に配置された第2ボンド点にボンディングツールでキンクワイヤをボンディングし、第2ボンド点から立ち上がって屈曲部に接続する立ち上がり部を形成する立ち上がり部形成工程と、を含むことを特徴とする。
【0015】
このように、柱状バンプを形成した後に、ボンディングツールを柱状バンプの上端までルーピングしてキンクワイヤの側面を柱状バンプの上端に係合させてキンクワイヤを屈曲させるので、屈曲角度の大きい屈曲部を形成し、立ち上がり部を基板から垂直に近い角度で立ち上がらせることができる。これにより、電子部品に隣接した位置に立ち上がり部の先端をボンディングしても立ち上がり部の上部や屈曲部が電子部品に接触することを抑制でき、少ないスペースで電子部品の磁気シールドが可能なワイヤ構造を形成することができる。
【0016】
本発明のワイヤ構造において、ボンディングツールは、ワイヤが挿通する貫通孔と、貫通孔の周囲に設けられた円環状のフェイス部とを備えるキャピラリであり、柱状バンプ形成工程は、ワイヤの側面を折り重ねて最上段の折り重ね部を形成する際に、キャピラリの中心位置をループ部の延びる方向に交差する方向にずらしてフェイス部でワイヤの側面を押圧し、柱状バンプの上端にループ部の延びる方向に延びる溝を形成してもよい。
【0017】
このように、キャピラリの中心位置をループ部の延びる方向に交差する方向にずらしてフェイス部でワイヤの側面を押圧することにより、簡便に柱状バンプの上端にループ部の延びる方向に延びる溝を形成することができる。
【0018】
本発明のワイヤ構造形成方法において、屈曲部形成工程は、ボンディングツールによってキンクワイヤの側面を溝に係合させてキンクワイヤを基板に向かって屈曲させてもよい。
【0019】
これにより、屈曲部を安定して柱状バンプの上端に係合させ、安定して大きな屈曲角度の屈曲部を形成することができる。
【0020】
本発明のワイヤ構造形成方法において、第1ボンディング工程は、ワイヤを第1ボンド点にボールボンディングを行い、立ち上がり部形成工程は、第2ボンド点にステッチボンディングを行ってもよい。
【0021】
本発明のワイヤ構造形成方法において、柱状バンプ形成工程は、第1ボンド点と電子部品との間に配置された他のバンプ点に他の柱状バンプを更に形成し、ループ部形成工程は、キンクワイヤ形成工程の後、ボンディングツールを柱状バンプの上端に向かってルーピングさせて、第1ボンド点と柱状バンプの上端との間に電子部品を跨ぐループ部を形成する際に、キンクワイヤの側面を他の柱状バンプの上端に係合させてキンクワイヤを電子部品の上方に向かって屈曲させて他の屈曲部を形成してもよい。
【0022】
これにより、第1ボンド点側のワイヤ構造を形成するスペースを少なくすることができ、より少ないスペースで電子部品の磁気シールドが可能なワイヤ構造を形成することができる。
【0023】
本発明の電子装置は、基板と、基板の上に取付けられた電子部品と、電子部品に隣接して設けられた柱状バンプと、電子部品の上を跨ぐように基板の上にボンディングされたルーピングワイヤと、を備える電子装置であって、
ルーピングワイヤは、先端が柱状バンプの電子部品と反対側で基板にボンディングされて基板から立ち上がる立ち上がり部と、電子部品の上を跨ぐように延びるループ部と、柱状バンプの上端に係合してループ部と立ち上がり部とを接続するように屈曲する屈曲部と、を備えることを特徴とする。
【0024】
これにより、電子装置を小型化することができる。
【0025】
本発明の電子装置において、柱状バンプは、上端にループ部の延びる方向に延びる溝を有し、屈曲部は、溝に係合してもよい。
【発明の効果】
【0026】
本発明は、少ないスペースで電子部品の磁気シールドが可能なワイヤ構造を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】実施形態のワイヤ構造を備える電子装置の平面図である。
図2】実施形態のワイヤ構造を備える電子装置の断面図であって、図1に示すA-A断面である。
図3図2に示すB部の詳細を示す立面図である。
図4】実施形態のワイヤ構造の柱状バンプを図3に示すD-Dから見た立面図である。
図5図2に示すC部の詳細を示す立面図である。
図6】実施形態のワイヤ構造を備える電子装置の製造に用いるワイヤボンディング装置の構成を示す立面図である。
図7図1に示すワイヤボンディング装置に取付けられるキャピラリの断面図である。
図8】第2パッドの上に柱状バンプの圧着ボールと折り重ね部とを形成する際のキャピラリの先端の動作を示す説明図である。
図9A図6に示すワイヤボンディング装置を用いて柱状バンプを形成する際のフリーエアボールの成形工程を示す図である。
図9B図6に示すワイヤボンディング装置を用いて柱状バンプを形成する際のボールボンディングを行って圧着ボールを形成した状態を示す図である。
図9C図9Bに示す状態からキャピラリを上昇させた状態を示す図である。
図9D図9Cに示す状態からキャピラリを右側に横移動させた状態を示す図である。
図9E図9Dに示す状態からキャピラリを上昇させた状態を示す図である。
図9F図9Eに示す状態からキャピラリを左側に横移動させ、右側のフェイス部をボールネックの直上に位置させた状態を示す図である。
図9G】キャピラリの右側のフェイス部でボールネックの上にワイヤの側面を押し付けて押し潰し部を形成した状態を示す図である。
図9H図9Gの状態からキャピラリを上昇させた状態を示す図である。
図9I図9Hに示す状態からキャピラリを右側に横移動させ、左側のフェイス部を押し潰し部の直上に位置させた状態を示す図である。
図9J】キャピラリの左側のフェイス部で押し潰し部の上にワイヤの側面を押し付けて折り重ね部を形成した状態を示す図である。
図9K図9Jに示す状態の後、キャピラリを上昇させて図9H図9Jに示すようにワイヤの側面を左右から交互に複数回折り重ねて柱状に形成し、上端にキャピラリの左側のフェイス部でワイヤの側面を押し付けて前後方向に延びる溝を有する柱状バンプを形成した状態を示す立面図である。
図9L図9Kの状態からワイヤクランパとキャピラリとを上昇させ、キャピラリの先端からワイヤテールを延出させた後、ワイヤクランパを閉とした状態でクランパとキャピラリとを更に上昇させてワイヤテールを柱状バンプから分離した状態を示す図である。
図10】第1パッドの上に形成した圧着ボールの上にキンクワイヤを形成する場合のキャピラリの先端の移動を示す説明図である。
図11A】第1パッドの上に形成した圧着ボールとキンクワイヤとを示す立面図である。
図11B図11Aの状態からキャピラリの先端を柱状バンプに向かってルーピングさせて、第1立ち上がり部とループ部とを形成した状態を示す図である。
図11C図11BのE部の詳細図を示す立面図である。
図11D図11B図11Cに示す状態からキャピラリの先端を第2ボンド点に向かって下向きに円弧状に移動させて屈曲部を形成している状態を示す立面図である。
図11E図11Dの状態からキャピラリの先端を下降させて第2パッドの上にステッチボンディングし、屈曲部と第2立ち上がり部とステッチボンド部とを形成した状態を示す立面図である。
図11F図11EのF部の詳細を示す立面図である。
図12】他の実施形態のワイヤ構造の第1立ち上がり部を示す立面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面を参照しながら実施形態の電子装置30について説明する。図1、2に示すように、電子装置30は、基板31と、基板31の上に取付けられた第1~第4電子部品32a~32dと、柱状バンプ45と、ルーピングワイヤ50とを備えている。柱状バンプ45とルーピングワイヤ50とは実施形態のワイヤ構造50Aを構成する。
【0029】
基板31の中央には、第1電子部品32aが取付けられている。第1電子部品32aは、例えば、半導体チップ或いはICでもよい。また、第1電子部品32aの両側には第2、第3電子部品32b,32cが取付けられている。第2、第3電子部品32b,32cは、例えば、コンデンサ或いはインダクタであってもよい。また、第4電子部品32dが取付けられている。第4電子部品32dは、例えば、抵抗等でもよい。
【0030】
第1~第4電子部品32a~32dの周囲の基板31の表面には、金属製の第1パッド33と、第2パッド34と、左側パッド35と、右側パッド36とが設けられている。第1パッド33には、ルーピングワイヤ50の第1ボンド点P1が配置されている。また、第2パッド34には、ルーピングワイヤ50の第2ボンド点P2と柱状バンプ45を形成するバンプ点Pbとが配置されている。第2ボンド点P2は、バンプ点Pbより第1ボンド点P1或いは第2電子部品32bと反対側に配置されている。また、バンプ点Pbと第1ボンド点P1とは間に第1~第4電子部品32a~32dを挟むよう基板31の上に配置されている。
【0031】
尚、以下の説明では、第1ボンド点P1から第2ボンド点P2に向かう方向を前方、第1ボンド点P1から第2ボンド点P2と反対側に向かう方向を後方、前方に向かって左側を左側、前方に向かって右側を右側として説明する。また、第1ボンド点P1と第2ボンド点P2の延びる方向を前後方向、これに直角方向を左右方向として説明する。また、各図に示す符号「F」は前方、符号「R」は後方、符号「LH」は左側、符号「RH」は右側を示す。
【0032】
図2、3に示すように、第2パッド34の上の第3電子部品32bの側(後側)に配置されたバンプ点Pbには、柱状バンプ45が形成されている。柱状バンプ45は、第3電子部品32bに隣接するように形成された柱形状のバンプである。
【0033】
図3、4に示すように柱状バンプ45は、圧着ボール41と、複数の折り重ね部44とを含んでいる。図4に示すように、柱状バンプ45は、第2パッド34の上に形成された圧着ボール41の上にワイヤ16の側面を左右から複数回交互に折り重ねて折り重ね部44を複数段に形成して柱状にしたものである。柱状バンプ45の上端には、前後方向に延びる溝48が形成されている。ルーピングワイヤ50は、前後方向に延びるように基板31の第1ボンド点P1と第2ボンド点P2とにボンディングされているので、溝48は、ルーピングワイヤ50の延びる方向に延びている。尚、図3、4では、柱状バンプ45の高さは、隣接する第2電子部品32bの高さと略同等の高さとなっているが、これよりも低くして、例えば、隣接する第2電子部品32bの高さの50%程度の高さとしてもよい。また、隣接する第2電子部品32bの高さよりも高くしてもよい。
【0034】
図2に戻って、ルーピングワイヤ50は、第1~第3電子部品32a~32cの上を跨ぐように、第1パッド33の第1ボンド点P1と、第2パッド34の第2ボンド点P2とにボンディングされている。ルーピングワイヤ50は、前後方向に延びて、圧着ボール51と、第1立ち上がり部53と、第2立ち上がり部54と、ループ部55と、屈曲部56と、ステッチボンド部57とを含んでいる。
【0035】
図5に示すように、圧着ボール51は、フリーエアボール40を第1パッド33の上にボンディングした円板状の部分である。第1立ち上がり部53は、圧着ボール51の上から上方向に延びた後、前方に屈曲して第3電子部品32cの上側の近傍まで延びる部分である。
【0036】
図2に示すように、ループ部55は、第1立ち上がり部53に接続され、第1~第4電子部品32a~32dの上を跨ぐように前後方向に延びる部分である。
【0037】
図3に示すように、第2立ち上がり部54は第2パッド34の上にステッチボンドされたステッチボンド部57から斜め上方向に立ち上がる部分である。屈曲部56は、柱状バンプ45の上端に形成された前後方向に延びる溝48に係合してループ部55と第2立ち上がり部54とを接続するように屈曲する部分である。図3に示すように屈曲部56の屈曲角度θは、例えば、60°から90°の間でもよい。
【0038】
以上の様に構成された電子装置30は、ルーピングワイヤ50の屈曲部56が柱状バンプ45の上端に設けた溝48に係合して屈曲するので、屈曲部56の屈曲角度θを大きくすることができる。これにより、第2立ち上がり部54を基板31の第2パッド34から垂直に近い角度で立ち上がらせることができる。このため、第2電子部品32aに隣接した位置に第2立ち上がり部54の先端をステッチボンディングしても第2立ち上がり部54の上部や屈曲部56が隣接する第2電子部品32bに接触することを抑制でき、少ないスペースで第1~第4電子部品32a~32dの磁気シールドを行うことができる。
【0039】
以上説明した実施形態の電子装置30では、ルーピングワイヤ50を第1パッド33と第2パッド34の上にボンディングし、ルーピングワイヤ50が前後方向に延びて第1~第4電子部品32a~32dの上を跨ぐこととして説明したが、これに限らない。例えば、左側パッド35と右側パッド36との上に左右方向に延びるようにルーピングワイヤ50をボンディングするようにしてもよい。また、第1パッド33と左側パッド35又は右側パッド36との間に斜め方向に延びるようにルーピングワイヤ50をボンディングするようにしてもよい。
【0040】
次に、図6から図11Cを参照しながら、電子装置30に取付けられているワイヤ構造50Aの形成方法について説明する。最初に、ワイヤボンディング装置100について説明する。ワイヤボンディング装置100は、電子装置30の製造装置である。
【0041】
図6に示すように、ワイヤボンディング装置100は、ベース10と、XYテーブル11と、ボンディングヘッド12と、Z方向モータ13と、ボンディングアーム14と、超音波ホーン15と、ワイヤボンディングツールであるキャピラリ20と、ワイヤクランパ17と、放電電極18と、ボンディングステージ19と、制御部60とを備えている。なお、以下の説明では、ボンディングアーム14又は超音波ホーン15の延びる方向をX方向、水平面でX方向と直角方向をY方向、上下方向をZ方向として説明する。
【0042】
XYテーブル11は、ベース10の上に取付けられて上側に搭載されるものをXY方向に移動させる。
【0043】
ボンディングヘッド12は、XYテーブル11の上に取付けられてXYテーブル11によってXY方向に移動する。ボンディングヘッド12の中には、Z方向モータ13とZ方向モータ13によって駆動されるボンディングアーム14とが格納されている。Z方向モータ13は、固定子13bを備えている。ボンディングアーム14は、根元部14aがZ方向モータ13の固定子13bに対向し、Z方向モータ13のシャフト13aの周りに回転自在に取付けられる回転子となっている。
【0044】
ボンディングアーム14のX方向の先端には超音波ホーン15が取付けられており、超音波ホーン15の先端にはキャピラリ20が取付けられている。超音波ホーン15は、図示しない超音波振動子の振動により先端に取付けられたキャピラリ20を超音波加振する。キャピラリ20は後で図7を参照して説明するように内部に上下方向に貫通する貫通孔21が設けられており、貫通孔21にはワイヤ16が挿通されている。ワイヤ16は、図示しないワイヤスプール等のワイヤ供給から供給されている。
【0045】
また、超音波ホーン15の先端の上側には、ワイヤクランパ17が設けられている。ワイヤクランパ17は開閉してワイヤ16の把持、開放を行う。
【0046】
ボンディングステージ19の上側には放電電極18が設けられている。放電電極18は、ベース10に設けられた図示しないフレームに取付けられても良い。放電電極18は、キャピラリ20に挿通してキャピラリ20の先端25から延出したワイヤ16との間で放電を行い、ワイヤ16を溶融させてフリーエアボール40を形成する。
【0047】
ボンディングステージ19は、上面に第1~第4電子部品32a~32dが取付けられた基板31を吸着固定するとともに、図示しないヒータによって基板31を加熱する。
【0048】
ボンディングヘッド12のZ方向モータ13の固定子13bの電磁力によって回転子を構成するボンディングアーム14の根元部14aが図6中の矢印71に示す様に回転すると、超音波ホーン15の先端に取付けられたキャピラリ20は矢印72に示す様にZ方向に移動する。また、ボンディングステージ19はXYテーブル11によってXY方向に移動する。従って、キャピラリ20は、XYテーブル11とZ方向モータ13によってXYZ方向に移動する。また、ワイヤクランパ17は、キャピラリ20と共にXYZ方向に移動する。従って、XYテーブル11とZ方向モータ13とはキャピラリ20とワイヤクランパ17とをXYZ方向に移動させる移動機構11aを構成する。
【0049】
XYテーブル11と、Z方向モータ13と、ワイヤクランパ17と、放電電極18と、ボンディングステージ19とは制御部60に接続されており、制御部60の指令に基づいて動作する。制御部60は、XYテーブル11とZ方向モータ13とで構成される移動機構11aにより、キャピラリ20のXYZ方向の位置を調整するとともに、ワイヤクランパ17の開閉、放電電極18の駆動、ボンディングステージ19の加熱制御を行う。
【0050】
制御部60は、内部に情報処理を行うプロセッサであるCPU61と、動作プログラムや動作データ等を格納するメモリ62とを含むコンピュータである。
【0051】
次に図7を参照しながらキャピラリ20の構造について説明する。図7は、キャピラリ20の先端部の一例を示す図である。キャピラリ20には、中心位置を通る中心線24の方向に貫通する貫通孔21が形成されている。この貫通孔21の中にはワイヤ16が挿通される。したがって、貫通孔21の内径d1は、ワイヤ16の外径d2よりも大きい(d1>d2)。貫通孔21の下端は、円錐状に広がっている。この円錐状に広がるテーパー部は、チャンファー部22と呼ばれる。また、この円錐状の空間のうち最大の直径(すなわち最下端の直径)は、チャンファー径d3と呼ばれる。
【0052】
キャピラリ20の下端面は、図6に示すフリーエアボール40を押圧する円環状のフェイス部23となる。このフェイス部23は、フラットな水平面でもよいし、外側に近づくにつれ上方にすすむような傾斜面でもよい。フェイス部23の幅、すなわち、チャンファー部22とキャピラリ20の下端の外周との距離を、「フェイス幅W」と呼ぶ。フェイス幅Wは、チャンファー径d3とキャピラリ20の外周径d4により、W=(d4-d3)/2で計算される。また、以下の説明では、キャピラリ20の下端の中心線24の上の点をキャピラリ20の先端25という。
【0053】
図7中に一点鎖線で示す様に、キャピラリ20の先端25を高さh1の点aまで下降させて図6に示すフリーエアボール40を第2パッド34の上に押圧すると、フリーエアボール40はフェイス部23で押圧されて扁平化して直径d5で厚みhbの扁平円柱状の圧着ボール41が形成される。また、フリーエアボール40を形成する金属の一部は、チャンファー部22から貫通孔21に入り込み、圧着ボール41の上側に接続されるボールネック42が形成される。
【0054】
次に、図8から図9Lを参照して第2パッド34の上に柱状バンプ45を形成する柱状バンプ形成工程について説明する。
【0055】
制御部60のプロセッサであるCPU61は、まず、ワイヤクランパ17を開放して、XYテーブル11およびZ方向モータ13を駆動制御して、キャピラリ20の先端25を放電電極18の近傍に移動させる。そして、CPU61は、放電電極18とキャピラリ20の先端25から延出したワイヤテールとの間で放電を発生させ、図9Aに示すように、キャピラリ20の先端25から延出したワイヤ16をフリーエアボール40に成形する。
【0056】
そして、CPU61は、図8図9Aに示す様に、XYテーブル11およびZ方向モータ13を駆動制御して、キャピラリ20の中心線24のXY座標を第2パッド34の上のバンプ点Pbの中心線38のXY座標に合わせる。そして、CPU61は、図8図9Bに示す矢印81の様にキャピラリ20の先端25をバンプ点Pbに向かって点aまで下降させ、図9Bに示す様に、キャピラリ20のフェイス部23でフリーエアボール40を第2パッド34の上に押圧するボールボンディングを行う。
【0057】
キャピラリ20がフリーエアボール40を第2パッド34の上に押圧すると、先に図2を参照して説明したように、フェイス部23とチャンファー部22とは、フリーエアボール40を圧着ボール41とボールネック42とに成形する。
【0058】
次には、CPU61は、図8図9Cに示すように、XYテーブル11およびZ方向モータ13を駆動制御して、図8図9Cに示す矢印82の様にキャピラリ20の先端25を点bまで上昇させる。次に、CPU61は、図8図9Dに示す矢印83の様にキャピラリ20の先端25を点cまで右側に向かって横方向に移動させる。そして、CPU61は、図8図9Eに示す矢印84の様に、キャピラリ20の先端25を点dまで上昇させる。その後、CPU61は、図8図9F中に示す矢印85の様に、キャピラリ20の右側のフェイス部23のフェイス幅方向の中心がバンプ点Pbの中心線38のXY座標となる位置までキャピラリ20を左側に横移動させる。
【0059】
矢印82~85に示すように、キャピラリ20の先端25を上昇させた後右側へ横移動させ、その後、再度、キャピラリ20を上昇させた後左側に移動させることにより、図9Fに示すように、ボールネック42の上側のワイヤ16がボールネック42の上で右側と左側とに折り返されたような形状になる。
【0060】
そして、CPU61は、XYテーブル11およびZ方向モータ13を駆動制御して、図8図9Gに示す矢印86の様にキャピラリ20の先端25を点fまで下降させて、ボールネック42の上で右側と左側とに折り返されたワイヤ16の側面をボールネック42の上に押圧して押し潰し、押し潰し部43を形成する。
【0061】
その後、CPU61は、図8図9Hに示す矢印87の様にキャピラリ20の先端25を点gまで上昇させた後、図8図9Iに示す矢印88の様にキャピラリ20の左側のフェイス部23のフェイス幅方向の中心がバンプ点Pbの中心線38のXY座標となる位置までキャピラリ20を右側に横移動させる。
【0062】
このようなキャピラリ20の上昇と右側への横移動により、図9Hに示す押し潰し部43の左側から上方向に立ち上がったワイヤ16は、押し潰し部43の上側に折り重ねられる。
【0063】
そして、CPU61は、XYテーブル11およびZ方向モータ13を駆動制御して、図8図9Jに示す矢印89に示すように、キャピラリ20の先端25を点iまで下降させ、押し潰し部43の上にワイヤ16の側面を押圧して折り重ね部44を形成する。
【0064】
次に、CPU61は、XYテーブル11およびZ方向モータ13を駆動制御して、キャピラリ20を上昇させて、図9H図9Jに示すようにワイヤ16の側面を左右から交互に折り重ねて折り重ね部44を複数段に成形し、柱状バンプ45を形成する。そして、CPU61は、キャピラリ20の左側のフェイス部23のフェイス幅方向の中心がバンプ点Pbの中心線38のXY座標となる位置までキャピラリ20を移動させ、図9Kに示す矢印90のように、キャピラリ20の先端25を点jまで下降させ、折り重ね部44の上にワイヤ16の側面を押圧して最上段の折り重ね部44を形成する。この押圧によって最上段の折り重ね部44の上面には、フェイス部23によって前後方向に延びる溝48が形成される。この際、最上段の折り重ね部44とキャピラリ20の貫通孔21の中に入っているワイヤ16とは、細い接続部46でつながっている。
【0065】
次に、CPU61は、XYテーブル11およびZ方向モータ13を駆動制御して、図9Lに示す矢印91のようにキャピラリ20を上昇させてキャピラリ20の先端25からワイヤテール47を延出させる。その後、CPU61は、ワイヤクランパ17を閉としてワイヤクランパ17とキャピラリ20とを更に上昇させることによりワイヤ供給に接続されているワイヤテール47の下端と接続部46とを切断する。これにより、図9Lに示すように、第2パッド34の上に柱状バンプ45が形成される。
【0066】
以上説明したように、キャピラリ20の上昇と左右方向の移動と下降による押圧とを繰り返して実行することによりワイヤ16の側面を左右から交互に折り重ねて折り重ね部44を複数段に成形し、柱状バンプ45を形成することができる。また、最上段の折り重ね部44を成形する際には、キャピラリ20の中心線24の位置をキャピラリ20の左側のフェイス部23のフェイス幅方向の中心がバンプ点Pbの中心線38のXY座標となるように、柱状バンプ45の中心線38の位置よりも右側にずらしてワイヤ16の側面を押圧する。つまり、キャピラリ20の中心線24の位置を柱状バンプ45の中心線38の位置よりもループ部55の延びる方向である前後方向に交差する左右方向にずらしてフェイス部23でワイヤ16の側面を押圧する。これにより、柱状バンプ45の上端に前後方向に延びる溝48を形成することができる。
【0067】
次に図10から図11Cを参照してルーピングワイヤ50を形成する工程について説明する。
【0068】
制御部60のCPU61は、XYテーブル11およびZ方向モータ13を駆動制御して、先に図9A図9Bを参照して説明したように、ワイヤ16の先端にフリーエアボール40を形成し、図11Aに示すように、キャピラリ20を第1パッド33の上に下降させて第1パッド33の上に圧着ボール51を形成する(第1ボンディング工程)。
【0069】
次に、CPU61は、XYテーブル11およびZ方向モータ13を駆動制御して、図10の矢印92a~矢印92kに示すように、第1ボンド点P1から各点S1~S12を通るように、キャピラリ20の上昇と前後方向の移動とを繰り返して行い、図11Aに示すような第1キンク52a、第2キンク52b、第3キンク52cを有するキンクワイヤ52を形成する(キンクワイヤ形成工程)。
【0070】
次に、CPU61は、図11Bの矢印93に示すようにキャピラリ20の先端25を柱状バンプ45の上端に向かってルーピングさせて、第1ボンド点P1と柱状バンプ45の上端との間に第1~第3電子部品32a~32cを跨ぐルーピングワイヤ50のループ部55を形成する(ループ部形成工程)。この際、キンクワイヤ52の第1キンク52aと第2キンク52bを含む部分は、図5図11Bに示すように第1パッド33の上の圧着ボール51の上から立ち上がって第3電子部品32cの上側に向かうルーピングワイヤ50の第1立ち上がり部53に成形される。また、図11Cに示す様に、キンクワイヤ52の側面が柱状バンプ45の上端に接してルーピングワイヤ50のループ部55が形成された際、キャピラリ20の先端25とキンクワイヤ52の先端部分は、柱状バンプ45よりも前方に位置している。
【0071】
次に、CPU61は、XYテーブル11およびZ方向モータ13を駆動制御して、図11Dの矢印94に示すように、キャピラリ20の先端25を第2ボンド点P2に向かって下方向に円弧状に移動させる。これにより、キャピラリ20の先端25は、キンクワイヤ52の側面を柱状バンプ45の上端の溝48に係合させると共に、キンクワイヤ52の溝48に係合している部分の前方側を基板31の第2パッド34に向かって屈曲させて、ルーピングワイヤ50の屈曲部56を形成する(屈曲部形成工程)。
【0072】
次にCPU61は、XYテーブル11およびZ方向モータ13を駆動制御して、図11E図11Fの矢印94に示すように、キャピラリ20の先端25を第2ボンド点P2に向かって更に下方向に円弧状に移動させた後、図11E図11Fの矢印95に示すように、キャピラリ20の先端25を第2ボンド点P2に向かって下降させてキンクワイヤ52の先端部を第2パッド34の上の第2ボンド点P2の上にステッチボンディングする。これにより、第2パッド34の上にルーピングワイヤ50のステッチボンド部57と、ステッチボンド部57から立ち上がって屈曲部56に接続するルーピングワイヤ50の第2立ち上がり部54が形成される(立ち上がり部形成工程)。
【0073】
この後、CPU61は、ワイヤクランパ17を閉としてワイヤクランパ17とキャピラリ20とを上昇させることによりワイヤ供給に接続されているワイヤ16とステッチボンド部57とを切断する。これにより、ルーピングワイヤ50の形成が完了する。
【0074】
以上説明したように、柱状バンプ45を形成した後に、キンクワイヤ52を柱状バンプ45の上端までルーピングしてキンクワイヤ52の側面を柱状バンプ45の上端の溝48に係合させてキンクワイヤ52を屈曲させるので、屈曲角度θの大きい屈曲部56を形成でき、第2立ち上がり部54を基板31の第2パッド34から垂直に近い角度で立ち上がらせることができる。これにより、第2電子部品32bに隣接した位置に第2立ち上がり部54の先端をボンディングしても第2立ち上がり部54の上部や屈曲部56が第2電子部品32bに接触することを抑制でき、少ないスペースで第1~第4電子部品32a~32dの磁気シールドが可能なワイヤ構造50Aを形成することができる。
【0075】
次に図12を参照して他の実施形態のワイヤ構造50Bについて説明する。図12に示すように、ワイヤ構造50Bは、柱状バンプ45aと、ルーピングワイヤ50aとで構成されている。
【0076】
柱状バンプ45aは、第1パッド33の上の第1ボンド点P1よりも第2ボンド点P2の側に配置したバンプ点Pb1の上に形成されている。柱状バンプ45aは、先に図1から図9Lを参照して説明した柱状バンプ45と同様、圧着ボール41と複数段の折り重ね部44とを備え、上端には前後方向に延びる溝48が設けられている。
【0077】
ルーピングワイヤ50aは、先に図1から図9Lを参照して説明したルーピングワイヤ50と同様、第1~第4電子部品32a~32dの上を跨ぐように基板31の上にボンディングされて第1パッド33と第2パッド34とを接続する。ルーピングワイヤ50aは、第1パッド33の側が、圧着ボール51aと、第1立ち上がり部53aと、屈曲部56aと、ループ部55aとで構成されている点がルーピングワイヤ50aと異なっている。その他の構成は、先に説明したルーピングワイヤ50aと同一である。
【0078】
図12に示すように、第1立ち上がり部53aは、第1パッド33の上の圧着ボール51aから斜め上方向に立ち上がる部分である。屈曲部56aは、第1立ち上がり部53aに接続され、柱状バンプ45の上端で立ち上がり方向から第3電子部品32cの上方に向かって屈曲する部分である。屈曲部56aの屈曲角度θ2は、例えば、60°~90°の間にしてもよい。ループ部55aは、屈曲部56aに接続されて柱状バンプ45aの上端で垂直方向から第1~第3電子部品32a~32cを跨いで第2ボンド点P2に延びる部分である。
【0079】
図12に示すワイヤ構造50Bを形成する場合、最初に第1パッド33、第2パッド34のバンプ点Pb、Pb1の上に先に図9A図9Lを参照したと同様の方法で柱状バンプ45、45aを形成する(柱状バンプ生成工程)。
【0080】
次に図11Aを参照して説明したと同様、第1ボンド点P1にボールボンディングを行い、圧着ボール51を形成する(第1ボンディング工程)。そして、キャピラリ20を上昇させてキャピラリ20の先端25からワイヤ16を繰り出すとともに、キャピラリ20を横方向に移動させてキンクワイヤ52を形成する(キンクワイヤ形成工程)。この際、図11Aに示す第1キンク52aの曲がり角度は、ワイヤ構造50Aを形成する場合よりも少なくするか、第1キンク52aを形成せず、第2、3キンク52b、52cのみを形成するようにする。
【0081】
そして、図12の矢印96に示すように、キャピラリ20を第2パッド34の上に形成された柱状バンプ45の上端に向かってルーピングさせていく。この際、キンクワイヤ52の側面は第1パッド33の上に形成した柱状バンプ45aの上端の溝48に係合して、キンクワイヤ52は第3電子部品32cの上方に向かって屈曲角度θ2だけ屈曲して屈曲部56aが形成される。また、屈曲部56aに接続して第2ボンド点P2に向かって延びるループ部55aが形成される。このように、屈曲部56aは、柱状バンプ45aの上端に係合してループ部55aと第1立ち上がり部53aとを接続するように屈曲する部分である。
【0082】
ループ部55aの側面が第2パッド34の上に形成された柱状バンプ45の上に接した後は、図11B図11Fを参照して説明したと同様、屈曲部生成工程と、立ち上がり部形成工程とを実行してルーピングワイヤ50aを形成する。
【0083】
図12に示すワイヤ構造50Bは、第1パッド33の側に配置されている第3電子部品32cに隣接した位置にルーピングワイヤ50aの圧着ボール51aをボンディングしても第1立ち上がり部53aの上部や屈曲部56aが第3電子部品32cに接触することを抑制でき、第1パッド33の側のルーピングワイヤ50aの形成スペースを小さくできる。これにより、より少ないスペースで第1~第4電子部品32a~32dの磁気シールドが可能となる。
【符号の説明】
【0084】
10 ベース、11 XYテーブル、11a 移動機構、12 ボンディングヘッド、13 Z方向モータ、13a シャフト、13b 固定子、14 ボンディングアーム、14a 根元部、15 超音波ホーン、16 ワイヤ、17 ワイヤクランパ、18 放電電極、19 ボンディングステージ、20 キャピラリ、21 貫通孔、22 チャンファー部、23 フェイス部、24、38 中心線、25 先端、30 電子装置、31 基板、32a 第1電子部品、32b 第2電子部品、32c 第3電子部品、32d 第4電子部品、33 第1パッド、34 第2パッド、35 左側パッド、36 右側パッド、40 フリーエアボール、41、51 圧着ボール、42 ボールネック、43 押し潰し部、44 折り重ね部、45、45a 柱状バンプ、46 接続部、47 ワイヤテール、48 溝、50、50a ルーピングワイヤ、50A、50B ワイヤ構造、52 キンクワイヤ、52a~52c 第1~第3キンク、53、53a 第1立ち上がり部、54 第2立ち上がり部、55、55a ループ部、56、56a 屈曲部、57 ステッチボンド部、60 制御部、61 CPU、62 メモリ、100 ワイヤボンディング装置。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図9C
図9D
図9E
図9F
図9G
図9H
図9I
図9J
図9K
図9L
図10
図11A
図11B
図11C
図11D
図11E
図11F
図12