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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-16
(45)【発行日】2023-08-24
(54)【発明の名称】踏切しゃ断機およびしゃ断桿取付方法
(51)【国際特許分類】
   B61L 29/16 20060101AFI20230817BHJP
【FI】
B61L29/16
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020001130
(22)【出願日】2020-01-08
(65)【公開番号】P2021109482
(43)【公開日】2021-08-02
【審査請求日】2022-11-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000207470
【氏名又は名称】大同信号株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106345
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 香
(72)【発明者】
【氏名】宮地 雄也
(72)【発明者】
【氏名】岩井 浩一
【審査官】冨永 達朗
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-61972(JP,A)
【文献】特開平10-18247(JP,A)
【文献】特開2012-6553(JP,A)
【文献】特開2008-296728(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61L 29/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
主軸の軸回転を担うモータ及び補助ばねを内蔵した筐体と、前記主軸を介して前記筐体に外装されたしゃ断桿保持機構と、前記しゃ断桿保持機構に取り付けられる屈折式しゃ断桿の牽引部を繋ぎ止めるための係留部とを備えたウェイトレス式の踏切しゃ断機において、
当接部と着脱部とが形成された当接用具の前記着脱部を着脱しうる当接用具着脱部が前記筐体の外面に設けられており、前記しゃ断桿保持機構の回転状態を前記屈折式しゃ断桿の下降位置に強制してから前記着脱部を前記当接用具着脱部に装着すると前記しゃ断桿保持機構が前記屈折式しゃ断桿の下降位置から上昇側へ回転する動きが前記しゃ断桿保持機構と前記当接用具の前記当接部との当接によって規制されるようになっていることを特徴とする踏切しゃ断機。
【請求項2】
前記しゃ断桿保持機構の回転状態を前記屈折式しゃ断桿の上昇位置に強制してから前記着脱部を前記当接用具着脱部に装着すると前記しゃ断桿保持機構が前記屈折式しゃ断桿の上昇位置から下降側へ回転する動きが前記しゃ断桿保持機構と前記当接用具の前記当接部との当接によって規制されるようになっていることを特徴とする請求項1記載の踏切しゃ断機。
【請求項3】
請求項1又は請求項2の何れか一項に記載された踏切しゃ断機に対して前記屈折式しゃ断桿を取り付けるしゃ断桿取付方法であって、
前記しゃ断桿保持機構の回転状態を前記屈折式しゃ断桿の下降位置に強制するときには前記屈折式しゃ断桿の代わりに一時代用棒を用い、前記着脱部を前記当接用具着脱部に装着した後に前記一時代用棒の取り外しと前記屈折式しゃ断桿の取り付けとを行うことを特徴とするしゃ断桿取付方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、屈折式しゃ断桿を装備するのに適した踏切しゃ断機およびしゃ断桿取付方法に関し、詳しくは、屈折式しゃ断桿を取り付ける作業を遣りやすく改良した踏切しゃ断機およびしゃ断桿取付方法に関する。
【背景技術】
【0002】
踏切しゃ断機には、しゃ断桿を片持ち状態で保持して約90゜揺動させることで、踏切しゃ断時にはしゃ断桿を下降させて略水平の横向きにし、踏切開放時にはしゃ断桿を上昇させて略垂直の縦向きにするものが多い。
また、そのような踏切しゃ断機に装備されるしゃ断桿には、単純な棒状の直桿式しゃ断桿が用いられることが多いが、踏切道の幅が広いときなどには、昇降に連れて屈伸する屈折式しゃ断桿が用いられることもある(例えば非特許文献1参照)。
【0003】
さらに、踏切しゃ断機の基本構成については、停電時などモータ作動不能時に安全のためしゃ断桿を自重で下降させる必要があるところ、長さや形状などの異なる各種のしゃ断桿に関して自重下降の調整がし易い「ウェイト式」が採用されることが多かった(例えば非特許文献1参照)。このタイプの踏切しゃ断機は、しゃ断桿とウェイトが主軸の両側に分かれてしゃ断桿保持機構(バーホルダ)に外装されていて、ウェイトの位置調整範囲が広いため、着脱対象のしゃ断桿が直桿式しゃ断桿であろうと屈折式しゃ断桿であろうと、ウェイト調整にて予めしゃ断桿保持機構をしゃ断桿下降時姿勢にしておくことで、作業し易く安全性も高い横向き姿勢にしゃ断桿を保ちながらしゃ断桿保持機構にしゃ断桿を着脱することができる。
【0004】
これに対し、近年は、モータの小形化や性能向上を利用して、例えば内装のモータに低トルクから高トルクまで安定動作しうるサーボモータを採用するといったことにより(例えば特許文献1~5参照)、重いウェイトの外装を不要にした「ウェイトレス式」の踏切しゃ断機が増えている。このタイプの踏切しゃ断機では、外装のウェイト式バランサーが省かれて、その代わりに、内装のボールねじ機構や(例えば特許文献1参照)、内装の下限ストッパと上限ストッパ(例えば特許文献2~4参照)、内装のカウンタバランス用バネと揺動部材(例えば特許文献5参照)などが導入されている。
【0005】
なお、下限ストッパはしゃ断桿の過剰な下降を阻止するがしゃ断桿の上昇は規制せず、上限ストッパはしゃ断桿の過剰な上昇を阻止するがしゃ断桿の下降は規制しない。
このようなウェイトレス式の踏切しゃ断機でも、しゃ断桿を着脱するときには、上述したウェイト式のときと同様に予めしゃ断桿保持機構をしゃ断桿下降時姿勢にしておくが、その遣り方が直桿式しゃ断桿と屈折式しゃ断桿とで一部が異なっている。
それらのしゃ断桿取付作業を、前提となる踏切しゃ断機の基本構造とともに説明する。
【0006】
直桿式しゃ断桿10を昇降させる踏切しゃ断機40は(図5(a)~(d)参照)、モータやモータ駆動回路および昇降制御回路などを内蔵した筐体41と、端部を突き出した水平状態で筐体41に装備されている主軸42と、主軸42の突出端部に装備されていて直桿式しゃ断桿10の根元を掴持しうるしゃ断桿保持機構44とを備えている。
そして、モータ駆動にて主軸42が90゜ほど双方向に軸回転することで、主軸42の突出端部の軸芯の位置を回転中心43としてしゃ断桿保持機構44が双方向回転し、このしゃ断桿保持機構44に片持ちされた直桿式しゃ断桿10が、回転中心43の片側で揺動・昇降するようになっている。
【0007】
このようなウェイトレス式の踏切しゃ断機40は、回転中心43がしゃ断桿保持機構44の重心から外れており(図5参照)、しゃ断桿保持機構44が直桿式しゃ断桿10を保持している場合は、直桿式しゃ断桿10の重量によって、しゃ断桿保持機構44の大部分が回転中心43の下方へ来るようになっている(図5(d)参照)。なお、図示は割愛したが、しゃ断桿保持機構44が直桿式しゃ断桿10を保持していない場合、自由状態のままでしゃ断桿保持機構44が回転中心43の下方へ来るわけではないが、人力でも比較的容易にしゃ断桿保持機構44を回転中心43の下方へ移動させることができるようになっている。
そのため、直桿式しゃ断桿10をしゃ断桿保持機構44に着脱させる作業は、自然に、直桿式しゃ断桿10を横向きにした状態で行われる(図5(d)参照)。
【0008】
また、筐体41の側面のうちしゃ断桿保持機構44の近くには、当接用具着脱部46(第1当接用具着脱部)が設けられている(図5(d)参照)。当接用具着脱部46の典型例は、雌ねじである。そして、その当接用具着脱部46に当接用具30(一時保持金具)の端部の雄ねじをねじ込むと、棒状の当接用具30が筐体41の正面に立設状態で装着されるようになっている(図5(a)~(c)参照)。
このような当接用具30の装着は、直桿式しゃ断桿10を上昇位置に保持しておきたいときに、一時的に行われ、その状態では、しゃ断桿保持機構44の時計回り回転時に、しゃ断桿保持機構44の第1当接部44aが当接用具30に当接して、しゃ断桿保持機構44の時計回り回転ひいては直桿式しゃ断桿10の下降が一時的に規制される。
【0009】
一方(図6参照)、屈折式しゃ断桿20は、根元桿21と先端桿22と屈折継手23とワイヤーロープ24(牽引部)とを具備したものであり、根元桿21と先端桿22とが屈折継手23の所で折れ曲がるが、ワイヤーロープ24が屈折継手23と筐体41とに接続されているので、根元桿21が上昇して縦になっているときも(図6(a),(b)参照)、根元桿21が下降して横になっているときも(図6(c)参照)、昇降中で斜めになっているときも(図示せず)、先端桿22は概ね水平な状態を維持するようになっている。
【0010】
そのため、ウェイトレス式で屈折式しゃ断桿20を昇降させる踏切しゃ断機50は(図6参照)、多くの部材42,43,44,44aに加えて当接用具着脱部46までも踏切しゃ断機40と共通化可能であるが、踏切しゃ断機40には無かった係留部51(ステー)と補助ばね52を具備している。そのため、筐体41は大きくなることが多いが、以下の説明に不都合が無いので図では同じ符号「41」を付している。
そのうち、係留部51は、ワイヤーロープ24の一端部を筐体41に繋ぎ止めるためのものなので、例えばピンやボルトといった比較的ちいさな部品で足りる。そのため、上述の踏切しゃ断機40に係留部51が有っても、使用されないだけで、存在自体に不都合は無い。
【0011】
これに対し、補助ばね52は(図6参照)、上述したように常に横になっている先端桿22によって生じる比較的大きな回転モーメントがしゃ断桿保持機構44を時計回りに回転させようとするのを相殺することでモータ負荷のピークを低めに維持するためのものであり、直桿式しゃ断桿10を昇降させる踏切しゃ断機40には装備されない。また、補助ばね52は、筐体41に内蔵されていて、納入先や設置先での作業性向上のため、設置時には調整を行うことができない。
【0012】
そして、補助ばね52を実装し、屈折式しゃ断桿20をしゃ断桿保持機構44に取り付けた状態で屈折式しゃ断桿20を上昇させてモータ駆動を停止したときに(図6(a),(b)参照)、屈折式しゃ断桿20が一定時間で下降することが(図6(c)参照)、停電時の安全確保といった観点から、優先される。
そのため、屈折式しゃ断桿20をしゃ断桿保持機構44から外した状態でモータを停止させたときにしゃ断桿保持機構44が自重での回転モーメントにてしゃ断桿下降側の時計回りを行うというところまで補助ばね52で調整することはできない。
【0013】
そこで、ウェイトレス式の踏切しゃ断機50に屈折式しゃ断桿20を装着するときは、屈折式しゃ断桿20を組み立てたまま根元桿21を縦にして人手で保持するのが困難なうえ取付作業も遣りづらいことから、先ず屈折式しゃ断桿20から先端桿22を取り外して、根元桿21と屈折継手23とワイヤーロープ24との部分セットを筐体41に取り付ける。その際、ワイヤーロープ24を係留部51に繋ぐとともに、根元桿21を縦向きにしてしゃ断桿保持機構44に取り付け、それから根元桿21を作業者の人力で旋回させることで根元桿21を水平状態まで下降させてその状態を維持し、更に、他の作業者らが、横にして持った先端桿22の一端を屈折継手23に取り付ける、といった一連の作業が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【文献】特開2005-112151号公報
【文献】特開2006-069333号公報
【文献】特開1012-166578号公報
【文献】特開2014-091418号公報
【文献】特開2018-043538号公報
【非特許文献】
【0015】
【文献】鉄道技術者のための電気概論 信号シリーズ8「踏切保安装置」社団法人 日本鉄道電気技術協会 平成9年10月30日 4版発行 p.24-31
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
このように、踏切しゃ断機50への屈折式しゃ断桿20の装着に際しては、屈折式しゃ断桿20からの先端桿22取り外しと、根元桿21及びワイヤーロープ24の装着と、根元桿21の旋回下降と、屈折式しゃ断桿20への先端桿22取り付けとが、行われる。
しかしながら、このような踏切しゃ断機50に対する屈折式しゃ断桿20の取付作業は、筐体41に内蔵された補助ばね52を着脱して行う作業ほど厄介ではないけれども、踏切しゃ断機40に対する直桿式しゃ断桿10の取付作業などに比べると、手順が繁雑で面倒なうえ、屈折式しゃ断桿20の組立とワイヤーロープ24の係留は根元桿21の跳ね上がりを押さえながら行うので作業性も良くない。
そこで、踏切しゃ断機に屈折式しゃ断桿を着脱する作業が楽に行えるように踏切しゃ断機やしゃ断桿取付方法を改良することが技術的な課題となる。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の踏切しゃ断機は(解決手段1)、このような技術課題を解決するために創案されたものであり、
主軸の軸回転を担うモータ及び補助ばねを内蔵した筐体と、前記主軸を介して前記筐体に外装されたしゃ断桿保持機構と、前記しゃ断桿保持機構に取り付けられる屈折式しゃ断桿の牽引部(ワイヤーロープ)を繋ぎ止めるための係留部(ステー)とを備えたウェイトレス式の踏切しゃ断機において、
当接部と着脱部とが形成された当接用具の前記着脱部を着脱しうる当接用具着脱部が前記筐体の外面に設けられており、前記しゃ断桿保持機構の回転状態を前記屈折式しゃ断桿の下降位置に強制してから前記着脱部を前記当接用具着脱部に装着すると前記しゃ断桿保持機構が前記屈折式しゃ断桿の下降位置から上昇側へ回転する動きが前記しゃ断桿保持機構と前記当接用具の前記当接部との当接によって規制されるようになっていることを特徴とする。なお、上記の当接用具着脱部は、既述した当接用具着脱部46が第1当接用具着脱部として別に存在していなければ、単に当接用具着脱部であるが、既述の当接用具着脱部46が第1当接用具着脱部として別に存在している場合、第2当接用具着脱部に該当する。
【0018】
また、本発明の踏切しゃ断機は(解決手段2)、上記解決手段1の踏切しゃ断機であって、
前記しゃ断桿保持機構の回転状態を前記屈折式しゃ断桿の上昇位置に強制してから前記着脱部を前記当接用具着脱部に装着すると前記しゃ断桿保持機構が前記屈折式しゃ断桿の上昇位置から下降側へ回転する動きが前記しゃ断桿保持機構と前記当接用具の前記当接部との当接によって規制されるようになっていることを特徴とする。
この解決手段2の当接用具着脱部は、上記の解決手段1の当接用具着脱部であると同時に、既述した当接用具着脱部46にも該当するものであり、当接用具着脱部46とは別に存在するものではなく、既述した当接用具着脱部46の第1当接用具着脱部と上記の解決手段1の第2当接用具着脱部とを兼ねる共用着脱部に該当する。
【0019】
また、本発明のしゃ断桿取付方法は(解決手段3)、上記解決手段1,2の踏切しゃ断機に対して前記屈折式しゃ断桿を取り付けるしゃ断桿取付方法であって、
前記しゃ断桿保持機構の回転状態を前記屈折式しゃ断桿の下降位置に強制するときには前記屈折式しゃ断桿の代わりに一時代用棒を用い、前記着脱部を前記当接用具着脱部に装着した後に前記一時代用棒の取り外しと前記屈折式しゃ断桿の取り付けとを行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
このような本発明の踏切しゃ断機にあっては(解決手段1)、当接用具を着脱しうる筐体の外面に当接用具着脱部を設けたことにより、筐体の外面に当接用具を着脱することができるようになっている。しかも、それに加えて、当接用具着脱部の設置箇所と当接用具の当接部との関係について、しゃ断桿保持機構の回転状態をしゃ断桿の下降位置に強制してから当接用具を装着するとしゃ断桿保持機構と当接用具との当接によってしゃ断桿保持機構の上昇方向回転が規制されるという条件を課したことにより、しゃ断桿保持機構を下降位置に強制するときは人力等の外力を作用させるとしても、当接用具の装着後は外力が無くてもしゃ断桿保持機構が下降状態を維持するので、屈折式しゃ断桿から先端桿を取り外すことなく組み上がった状態のまま横向き姿勢でしゃ断桿保持機構に取り付けることができる。
【0021】
屈折式しゃ断桿の取り外しは、屈折式しゃ断桿を下降させてから当接用具を筐体に取り付けると、しゃ断桿保持機構の回転が規制されるので、やはり屈折式しゃ断桿から先端桿を取り外すことなく組み上がった状態のまま横向き姿勢でしゃ断桿保持機構から外すことができる。その後は、屈折式しゃ断桿を別のものに交換するのであれば、そのまま付け替え作業を行うことができる。また、当接用具の取り外しは、しゃ断桿保持機構を下降位置に強制する等のことでしゃ断桿保持機構と当接用具との当接状態を緩和してから行えば、楽にできる。
したがって、この発明によれば、踏切しゃ断機に屈折式しゃ断桿を着脱する作業が楽に行える踏切しゃ断機を実現することができる。
【0022】
また、本発明の踏切しゃ断機にあっては(解決手段2)、一つの当接用具の当接用具着脱部への装着によるしゃ断桿保持機構の回転規制が屈折式しゃ断桿の下降位置から上昇側への回転だけでなく屈折式しゃ断桿の上昇位置から下降側への回転にも掛かるようにしたことにより、双方向の回転規制に一つの当接用具と一つの当接用具着脱部とを共用することが可能になる。
そのため、屈折式しゃ断桿の上昇位置から下降側への回転を規制するために当接用具着脱部が既に設けられていた既存の踏切しゃ断機のような場合、筐体に追加工を施さなくても、それより容易なしゃ断桿保持機構への追加工などで済ますことができる。
したがって、踏切しゃ断機に屈折式しゃ断桿を着脱する作業が楽に行える踏切しゃ断機を比較的簡便に実現することができる。
【0023】
また、本発明のしゃ断桿取付方法にあっては(解決手段3)、しゃ断桿保持機構の回転状態をしゃ断桿の下降位置に強制してから当接用具を装着するとしゃ断桿保持機構と当接用具との当接によってしゃ断桿保持機構の上昇方向回転が規制されるようになっている踏切しゃ断機について、そのしゃ断桿保持機構の回転状態を屈折式しゃ断桿の下降位置に強制するときには、屈折式しゃ断桿そのものやその部品を使うのでなく、その代わりに、一時だけ、根元桿に代えてしゃ断桿保持機構に取り付けることが可能な代用棒を用いるようにしたことにより、根元桿の単独使用のために屈折式しゃ断桿から先端桿を取り外すといったことが不要になるばかりか、位置強制用の外力を例え人力だけで賄うような場合でも代用棒の形状や材質を作業に適したものにしておくといったことで容易に位置強制を実行することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の実施例1について、踏切しゃ断機の構造を示し、(a)が踏切しゃ断機の正面図、(b)が当接用具の側面図、(c)が踏切しゃ断機および当接用具の右側面図である。
図2】踏切しゃ断機に係るしゃ断桿取付方法を示し、(a)~(c)何れも踏切しゃ断機の正面図である。
図3】踏切しゃ断機に係るしゃ断桿取付方法を示し、(a)~(b)何れも踏切しゃ断機およびしゃ断桿の正面図である。
図4】本発明の実施例2について、踏切しゃ断機の構造とそれへのしゃ断桿取付方法とを示し、(a)が踏切しゃ断機の正面図、(b)がしゃ断桿保持機構の拡大正面図、(c)と(d)が踏切しゃ断機の正面図である。
図5】従来の踏切しゃ断機に係る構造としゃ断桿取付方法とを示し、(a)が踏切しゃ断機の右側面図、(b)が踏切しゃ断機の正面図、(c)がしゃ断桿保持機構の拡大正面図、(d)が踏切しゃ断機の正面図である。
図6】屈折式のしゃ断桿を取り付けた従来の踏切しゃ断機を示し、(a)が正面図、(b)~(c)が何れも正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
このような本発明の踏切しゃ断機およびしゃ断桿取付方法について、これを実施するための具体的な形態を、以下の実施例1~2により説明する。
図1~3に示した実施例1は、上述した解決手段1,3(出願当初の請求項1,3)を具現化したものであり、図4に示した実施例2は、上述した解決手段2,3(出願当初の請求項2,3)を具現化したものである。
【0026】
なお、それらの図示に際しては、簡明化等のため、電動モータ等の駆動源や,モータドライバ等の電気回路,コントローラ等の電子回路などの筐体内蔵物については図示を割愛し、発明の説明に必要なものや関連するものを中心に図示した。
また、それらの図示に際し従来と同様の構成要素には同一の符号を付して示したので、重複する再度の説明は割愛し、以下、従来との相違点を中心に説明する。
【実施例1】
【0027】
本発明の踏切しゃ断機およびしゃ断桿取付方法の実施例1について、その具体的な構成を、図面を引用して説明する。図1は、(a)が踏切しゃ断機60の正面図、(b)が当接用具30の側面図、(c)が踏切しゃ断機60及び当接用具30の右側面図である。
【0028】
この踏切しゃ断機60が既述の踏切しゃ断機50と相違するのは、既述の当接用具着脱部46(第1当接用具着脱部)と同様の当接用具着脱部66(第2当接用具着脱部)が筐体41の外面のうち当接用具着脱部46から横に少し離れた所に設けられていることである(図1(a)参照)。
当接用具着脱部66も、当接用具着脱部46と同じ雌ねじで形成されており(図1(a)参照)、当接用具着脱部46と同じく(図1(b),(c)参照)、当接用具30のうち端部の着脱部32を当接用具着脱部66にねじ込むと、当接用具30のうち棒状の当接部31が筐体41の正面に立設状態で装着されるようになっている。
【0029】
筐体41の前面における当接用具着脱部66の位置は(図1(a),(c)参照)、屈折式しゃ断桿20の下降位置から上昇側へ回転させようとする付勢力がしゃ断桿保持機構44に働くことを前提として、その付勢力に抗する反力を当接用具30に出させることができる部位から選定される。その付勢力は、既述したように、補助ばね52の弾撥力に起因して生じ、主軸42を介してしゃ断桿保持機構44に伝達され、しゃ断桿保持機構44に屈折式しゃ断桿20を取り付けていないと、屈折式しゃ断桿20の下降位置から上昇側へしゃ断桿保持機構44を回転させようとする。
【0030】
そのため、屈折式しゃ断桿20を下降させたときの回転状態にしゃ断桿保持機構44がなっているときに、当接用具30を当接用具着脱部66に装着してからしゃ断桿保持機構44の拘束を解くと、上記の付勢力によってしゃ断桿保持機構44の第2当接部44bが当接用具30の当接部31に当接させられるが、そのようなしゃ断桿保持機構44と当接用具30との当接で生じる反力によって、しゃ断桿保持機構44を屈折式しゃ断桿20の下降位置から上昇側へ回転させる動きが、規制されるようになっている。
【0031】
この実施例1の踏切しゃ断機60に屈折式しゃ断桿20を取り付けるしゃ断桿取付方法について、図面を引用して説明する。図2(a),(b),(c)と、図3(a),(b)は、何れも、踏切しゃ断機60の正面図である。
【0032】
屈折式しゃ断桿20を取り付けていない踏切しゃ断機60では(図2(a)参照)、回転中心43の回転モーメントに関して補助ばね52の付勢力によるモーメントがしゃ断桿保持機構44の重量によるモーメントを凌駕しているので、しゃ断桿保持機構44の回転状態が屈折式しゃ断桿20のほぼ上昇位置になっている。
この状態のままでは(図2(a)参照)、屈折式しゃ断桿20を取り付けづらいので、先ずはしゃ断桿保持機構44の回転状態を変えるために一時代用棒21aをしゃ断桿保持機構44に取り付ける(図2(b)参照)。一時代用棒21aは、一端部をしゃ断桿保持機構44に取り付けることができれば、単純な丸棒でも良い。
【0033】
一時代用棒21aをしゃ断桿保持機構44に取り付ける作業は(図2(b)参照)、一時代用棒21aを縦にして、その下端部をしゃ断桿保持機構44に保持させる、というものであるが、一時代用棒21aは、先端桿22抜きの屈折式しゃ断桿20より軽いうえ形状が単純なため、縦にするのが容易であり、縦にしても先端桿22抜きの屈折式しゃ断桿20より遙かに安定しやすいので、一時代用棒21aをしゃ断桿保持機構44に取り付ける作業は、楽に而も安全に進めることができる。
【0034】
一時代用棒21aの取り付けが済んだら、作業者の人力で一時代用棒21aを旋回させる等のことで、一時代用棒21aをほぼ水平な状態になるまで下降させ、それから、当接用具30の着脱部32を筐体41の当接用具着脱部66にねじ込んで当接用具30を筐体41に装着する(図2(c)参照)。そして、一時代用棒21aから作業者が離れると、しゃ断桿保持機構44が屈折式しゃ断桿20の下降位置から上昇側へ僅かに回転するが、直ぐにしゃ断桿保持機構44の第2当接部44bが当接用具30の当接部31に当接し、その当接によってしゃ断桿保持機構44の更なる回転運動が規制されて止まるため、しゃ断桿保持機構44は一時代用棒21aをほぼ水平に保持する姿勢・回転状態を維持し続ける。
【0035】
その状態で(図2(c)参照)、一時利用の代用棒21aをしゃ断桿保持機構44から取り外すが、一時代用棒21aが横向きになっているので、取り外し作業は楽に行える。
それから(図3(a)参照)、しゃ断桿保持機構44に屈折式しゃ断桿20を取り付けるが、しゃ断桿保持機構44の回転状態が下降側になっているので、その取り付け作業は、自然に、屈折式しゃ断桿20から先端桿22を取り外すことなく組み上がった状態のまま横向きにして行われる。
【0036】
そして(図3(b)参照)、屈折式しゃ断桿20の根元桿21の自由端をしゃ断桿保持機構44に取り付けるとともに、屈折式しゃ断桿20のワイヤーロープ24(牽引部)の自由端を係留部51(係留部)に取り付けると、屈折式しゃ断桿20の重量による下降側の回転モーメントが補助ばね52の力による上昇側の回転モーメントを少し上回るため、屈折式しゃ断桿20が僅かに下降してから下限位置で停止し、当接用具30としゃ断桿保持機構44との当接状態が緩むので、当接用具30を筐体41の当接用具着脱部66から楽に取り外すことができる(図3(b)参照)。
【0037】
このように、踏切しゃ断機60にあっては、一時代用棒21aをしゃ断桿保持機構44に着脱するとともに、当接用具30を当接用具着脱部66に着脱することで、屈折式しゃ断桿20を分解することなく横向きにした状態で楽に取り付けることができる。
なお、屈折式しゃ断桿20を踏切しゃ断機60から取り外すときには、上述した取り付け作業の手順とは逆順の作業を行えば良く、繰り返しとなる煩雑な説明は割愛するが、やはり屈折式しゃ断桿20から先端桿22を取り外すことなく横向きにした状態で楽に取り外すことができる。
【実施例2】
【0038】
本発明の踏切しゃ断機の実施例2について、その具体的な構成を、図面を引用して説明する。図4は、(a)が踏切しゃ断機70の正面図、(b)がしゃ断桿保持機構74の拡大正面図、(c)と(d)が踏切しゃ断機70の正面図である。
【0039】
この踏切しゃ断機70が上述した実施例1の踏切しゃ断機60と相違するのは(図4(a),(b)参照)、筐体41から当接用具着脱部66が無くなっている点と、しゃ断桿保持機構44に代わってしゃ断桿保持機構74が導入されている点である。
ただし、当接用具30の着脱先である当接用具着脱部46は、筐体41の同じ部位に設けられていて(図4(a),(b)参照)、第1当接用具着脱部と第2当接用具着脱部とを兼ねる共用着脱部になっている。
そして、しゃ断桿保持機構74の回転状態が屈折式しゃ断桿20の上昇位置になっているときに当接用具30を当接用具着脱部46(共用着脱部)に装着すると(図4(c)参照)、しゃ断桿保持機構74の第1当接部44aが当接用具30に当接して、しゃ断桿保持機構74の下降が規制されるようになっている。
【0040】
しゃ断桿保持機構74が上述のしゃ断桿保持機構44と相違するのは、しゃ断桿保持機構74の一部に第2当接部75が形成されていることである(図4(b)参照)。
そして、しゃ断桿保持機構74の回転状態を屈折式しゃ断桿20の下降位置に強制してから当接用具30を当接用具着脱部46(共用着脱部)に装着すると(図4(d)参照)、しゃ断桿保持機構74の第2当接部75が当接用具30に当接することで、しゃ断桿保持機構74が屈折式しゃ断桿20(図4(d)では一時代用棒21a)の下降位置から上昇側へ回転する動きが規制されるようになっている。
【0041】
このような踏切しゃ断機70に屈折式しゃ断桿20を取り付けるしゃ断桿取付方法は、当接用具30の装着先が当接用具着脱部66でなく当接用具着脱部46になっていること以外、踏切しゃ断機60に屈折式しゃ断桿20を取り付ける作業について上述したのと同じで良いので、繰り返しとなる煩雑な詳細説明は割愛するが(図4(d)参照)、一時代用棒21aをしゃ断桿保持機構44に着脱するとともに、当接用具30を当接用具着脱部46に着脱することで、屈折式しゃ断桿20から先端桿22を取り外すことなく横向きにした状態で楽に取り付けることができる。
屈折式しゃ断桿20を踏切しゃ断機60から取り外すのも、作業を逆順にすることで、屈折式しゃ断桿20を分解することなく横向きにした状態で楽に行うことができる。
【0042】
[その他]
上記の実施例では、当接用具30として当接部31が直棒に近い単純なものを図示したが、補助ばね52によるしゃ断桿保持機構44の回転力はしゃ断桿保持機構44の自重による回転力より大きいので、当接用具30が当接部31と着脱部32との境の狭隘部分で曲がってしまうといった不所望な事態を未然に且つ簡便に防止するには、当接部31のうち着脱部32寄り端部に鍔状の大径部を形成しておくと良い。その大径部の厚みは、しゃ断桿保持機構44との干渉を回避することができる程度に薄くするのが良い。
また、上記実施例1,2では筐体41における当接用具着脱部46の形成位置が同じであったが、それらの位置が同じである必要はなく、異なっていても良い。
【符号の説明】
【0043】
10…直桿式しゃ断桿(しゃ断桿)、20…屈折式しゃ断桿(しゃ断桿)、
21…根元桿、21a…一時代用棒、22…先端桿、
23…屈折継手、24…ワイヤーロープ(牽引部)、
30…当接用具(一時保持金具)、31…当接部、32…着脱部、
40…踏切しゃ断機、41…筐体、42…主軸、43…回転中心(軸心端)、
44…しゃ断桿保持機構(バーホルダ)、44a…第1当接部、
44b…第2当接部、46…当接用具着脱部(第1当接用具着脱部,共用着脱部)、
50…踏切しゃ断機、51…係留部(ステー)、52…補助ばね、
60…踏切しゃ断機、66…当接用具着脱部(第2当接用具着脱部)、
70…踏切しゃ断機、74…しゃ断桿保持機構(バーホルダ)、75…第2当接部
図1
図2
図3
図4
図5
図6