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特許7333138シールド掘削機のローリング修正方法、シールド掘削機のローリング修正装置およびそれを用いたシールド掘削方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-16
(45)【発行日】2023-08-24
(54)【発明の名称】シールド掘削機のローリング修正方法、シールド掘削機のローリング修正装置およびそれを用いたシールド掘削方法
(51)【国際特許分類】
   E21D 9/06 20060101AFI20230817BHJP
   E21D 9/093 20060101ALI20230817BHJP
【FI】
E21D9/06 302G
E21D9/093 G
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020050247
(22)【出願日】2020-03-19
(65)【公開番号】P2021147928
(43)【公開日】2021-09-27
【審査請求日】2022-10-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000140292
【氏名又は名称】株式会社奥村組
(74)【代理人】
【識別番号】100101971
【弁理士】
【氏名又は名称】大畑 敏朗
(72)【発明者】
【氏名】森 竜生
(72)【発明者】
【氏名】今北 公宏
【審査官】石川 信也
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-248508(JP,A)
【文献】特開2001-020663(JP,A)
【文献】実開平01-090895(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21D 9/06
E21D 9/093
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)シールド掘削機の後端面に設置された複数個の推進ジャッキのロッドの端部に装着された複数個のスプレッダの先端面に取り付けられる部材であって、第1の面と、前記第1の面の裏面であり前記第1の面に対して前記シールド掘削機の周方向に沿って傾斜する第2の面とを備える複数個の第1の修正部材を準備する工程と、
(b)前記複数個のスプレッダの先端面に対向する位置に配置されたセグメント管の先端面に取り付けられる部材であって、第3の面と、前記第3の面の裏面であり前記第3の面に対して前記シールド掘削機の周方向に沿って傾斜するように形成された第4の面とを備える複数個の第2の修正部材を準備する工程と、
(c)前記シールド掘削機の先頭部に回転自在の状態で設置されたカッタ盤を回転させながら前記推進ジャッキのロッドを延伸させたときに前記シールド掘削機がローリングによって回転する方向とは逆方向に回転するように前記第1の修正部材の前記第2の面と前記第2の修正部材の前記第4の面とを互いに対向させた状態で、前記第1の修正部材の前記第1の面を前記スプレッダの先端面に沿うように対向させて前記第1の修正部材を前記スプレッダに着脱自在の状態で取り付け、前記第2の修正部材の前記第3の面を前記セグメント管の先端面に沿うように対向させて前記第2の修正部材を前記セグメント管に着脱自在の状態で取り付ける工程と、
(d)前記スプレッダの先端面と前記セグメント管の先端面との間に前記第1の修正部材と前記第2の修正部材とを介在させた状態で、前記カッタ盤を回転させながら前記複数個の推進ジャッキのロッドを延伸させて、前記第1の修正部材および前記第2の修正部材を介して前記ロッドを前記セグメント管に向かって押し付けて反力をとることで掘削孔を掘り進めながらローリング修正を実施する工程と、を有することを特徴とするシールド掘削機のローリング修正方法。
【請求項2】
前記(c)工程において、前記シールド掘削機の後端面の下側半分に配置された複数個の前記スプレッダのみに前記第1の修正部材を取り付け、前記セグメント管の先端面の下側半分において複数個の前記スプレッダに対向する位置のみに前記第2の修正部材を取り付けることを特徴とする請求項1記載のシールド掘削機のローリング修正方法。
【請求項3】
前記第1の修正部材と前記第2の修正部材とは構成が同一であることを特徴とする請求項1または2記載のシールド掘削機のローリング修正方法。
【請求項4】
シールド掘削機の後端面に設置された複数個の推進ジャッキのロッドの端部に装着された複数個のスプレッダの先端面に取り付けられる部材であって、第1の面と、前記第1の面の裏面であり前記第1の面に対して前記シールド掘削機の周方向に沿って傾斜するように形成された第2の面とを備える第1の修正部材と、
前記複数個のスプレッダの先端面に対向する位置に配置されたセグメント管の先端面に取り付けられる部材であって、第3の面と、前記第3の面の裏面であり前記第3の面に対して前記シールド掘削機の周方向に沿って傾斜するように形成された第4の面とを備える第2の修正部材と、
前記シールド掘削機の先頭部に回転自在の状態で設置されたカッタヘッドを回転させながら前記推進ジャッキのロッドを延伸させたときに前記シールド掘削機がローリングによって回転する方向とは逆方向に回転するように前記第1の修正部材の前記第2の面と前記第2の修正部材の前記第4の面とを互いに対向させた状態で、前記第1の修正部材の前記第1の面を前記スプレッダの先端面に沿うように対向させて前記第1の修正部材を前記スプレッダに着脱自在の状態で取り付ける第1の取付部材および前記第2の修正部材の前記第3の面を前記セグメント管の先端面に沿うように対向させて前記第2の修正部材を前記セグメント管に着脱自在の状態で取り付ける第2の取付部材と、を備えることを特徴とするシールド掘削機のローリング修正装置。
【請求項5】
前記第1の修正部材と前記第2の修正部材とは構成が同一であることを特徴とする請求項4記載のシールド掘削機のローリング修正装置。
【請求項6】
(a)シールド掘削機のカッタ盤を回転させながら前記シールド掘削機の後端面に設置された複数個の推進ジャッキのロッドを延伸させて、前記ロッドの端部に装着された複数個のスプレッダの先端面を前記シールド掘削機の後方に設置されたセグメント管に押し付けて反力をとることで掘削孔を掘り進める工程と、
(b)第1の面と、前記第1の面の裏面であって前記第1の面に対して前記シールド掘削機の周方向に沿って傾斜する第2の面とを備える複数個の第1の修正部材を準備する工程と、
(c)第3の面と、前記第3の面の裏面であって前記第3の面に対して前記シールド掘削機の周方向に沿って傾斜する第4の面とを備える複数個の第2の修正部材を準備する工程と、
(d)前記カッタ盤を回転させながら前記推進ジャッキのロッドを延伸させたときに前記シールド掘削機がローリングによって回転する方向とは逆方向に回転するように前記第1の修正部材の前記第2の面と前記第2の修正部材の前記第4の面とを互いに対向させた状態で、前記第1の修正部材の前記第1の面を前記スプレッダの先端面に沿うように対向させて前記第1の修正部材を前記スプレッダに着脱自在の状態で取り付け、前記第2の修正部材の前記第3の面を前記セグメント管の先端面に沿うように対向させて前記第2の修正部材を前記セグメント管に着脱自在の状態で取り付ける工程と、
(e)前記スプレッダの先端面と前記セグメント管の先端面との間に前記第1の修正部材と前記第2の修正部材とを介在させた状態で、前記カッタ盤を回転させながら前記複数個の推進ジャッキのロッドを延伸させて、前記第1の修正部材および前記第2の修正部材を介して前記ロッドを前記セグメント管に向かって押し付けて反力をとることで前記掘削孔を掘り進めながらローリング修正を実施する工程と、を有することを特徴とするシールド掘削方法。
【請求項7】
前記(d)工程において、前記シールド掘削機の後端面の下側半分に配置された複数個の前記スプレッダのみに前記第1の修正部材を取り付け、前記セグメント管の先端面の下側半分において複数個の前記スプレッダに対向する位置のみに前記第2の修正部材を取り付けることを特徴とする請求項6記載のシールド掘削方法。
【請求項8】
前記(e)工程のローリング修正工程時における前記推進ジャッキの推力を、前記(a)工程の掘削工程時における前記推進ジャッキの推力より小さくすることを特徴とする請求項6または7記載のシールド掘削方法。
【請求項9】
前記第1の修正部材と前記第2の修正部材とは構成が同一であることを特徴とする請求項6~8のいずれか1項に記載のシールド掘削方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シールド掘削機のローリング修正方法、シールド掘削機のローリング修正装置およびそれを用いたシールド掘削方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
シールド工法は、シールド掘削機によって地盤を掘削することで掘削孔を形成するとともに、その掘削孔の内壁面にセグメント管と呼ばれる覆工部材を組み立てることでトンネルを構築する工法である。シールド掘削機による掘削作業では、シールド掘削機のカッタ盤を切羽面に押し付けながら回転させる一方、シールド掘削機のスキンプレートの後部内に正面視で周方向に沿って所定間隔毎に設置されている複数本のシールドジャッキをセグメント管の前端面に押し当てて反力をとることで推進するようにしている。しかし、この掘削作業に際して、シールド掘削機のスキンプレートにカッタ盤の回転方向とは反対方向の力が作用する結果、シールド掘削機のスキンプレートがカッタ盤の回転方向とは反対方向に回転してしまう、所謂ローリングが発生する場合がある。
【0003】
このようなローリングを修正する方法としては、例えば、ローリング発生時にカッタ盤を反対方向に回転させることでシールド掘削機のスキンプレートをローリング方向とは反対方向に回転させて元の状態に戻す方法や、シールドジャッキとそれを取り付けるリングガーダとの間にプレートを挟み込み、そのプレートの分だけシールド推進ジャッキをセグメントの先端面に対して斜めに配置し、その状態でセグメントの先端面に反力をとってシールド掘削機を推進させるとともにその推進力の一部をローリング方向とは反対方向に作用させることでローリング修正を行う方法がある。
【0004】
また、例えば、特許文献1には、トンネル周方向に沿って傾斜するテーパ面が形成されたライナ部材と、複数本のローラからなる転動部材が回転自在の状態でライナ部材のテーパ面の傾斜方向に沿って並んで軸支された円弧枠体とを、ライナ部材のテーパ面に上記複数本の転動部材を当てた状態で、セグメントと推進ジャッキとの間に配置し、推進ジャッキの推進力の一部をライナ部材のテーパ面の傾斜方向に作用させて円弧枠体をローリング修正方向に転動させることにより、シールド掘削機のローリング修正を行うことが開示されている。この構造では、ライナ部材のテーパ面の裏面側をセグメントの先端面に対向させ接触させた状態で配置し、推進ジャッキのスプレッダの先端面を円弧枠体の複数本の転動部材に対向させ接触させた状態で配置している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2001-20663号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記したカッタ盤を反対方向に回転させるローリング修正方法においては、掘削地盤の土質によってはスリップ等が発生してローリング修正が困難であり、ローリング修正作業の効率が低下する、という問題がある。また、ローリング修正時には、トンネルの掘削作業が中断されるので、トンネルの掘削作業の効率が低下する、という問題がある。
【0007】
また、上記したシールドジャッキを斜めに配置するローリング修正方法においては、全てのシールドジャッキを一度取り外す必要があるので、ローリング修正作業の効率が低下し、トンネルの掘削作業の効率が低下する、という問題がある。
【0008】
さらに、上記した特許文献1のローリング修正方法においては、円弧枠体をライナ部材のテーパ面に沿って配置させる関係上、円弧枠体が推進ジャッキのスプレッダの先端面に対して斜めに配置されるので、推進ジャッキを延伸させたときに円弧枠体側から推進ジャッキ側に予期しない余計な反力やモーメント力が加わる虞があり、その結果、シールド掘削機に破損や故障等が生じる虞がある。また、円弧枠体は複数本の転動部材を備えている関係上、構造が複雑であり、推進ジャッキの推力によって転動部材に回転不良が生じる虞がある。
【0009】
本発明は、上述の技術的背景からなされたものであって、シールド掘削作業時に生じるローリングの修正作業の効率を向上させることのできる技術を提供することを目的とする。
【0010】
また、本発明は、シールド掘削作業の効率を向上させることのできる技術を提供することを目的とする。
【0011】
また、本発明は、ローリング修正作業時におけるシールド掘削機の破損や故障等を抑制または防止することのできる技術を提供することを目的とする。
【0012】
また、本発明は、シールド掘削機のローリング修正装置の構造を簡単化することのできる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の本発明のシールド掘削機のローリング修正方法は、(a)シールド掘削機の後端面に設置された複数個の推進ジャッキのロッドの端部に装着された複数個のスプレッダの先端面に取り付けられる部材であって、第1の面と、前記第1の面の裏面であり前記第1の面に対して前記シールド掘削機の周方向に沿って傾斜する第2の面とを備える複数個の第1の修正部材を準備する工程と、(b)前記複数個のスプレッダの先端面に対向する位置に配置されたセグメント管の先端面に取り付けられる部材であって、第3の面と、前記第3の面の裏面であり前記第3の面に対して前記シールド掘削機の周方向に沿って傾斜するように形成された第4の面とを備える複数個の第2の修正部材を準備する工程と、(c)前記シールド掘削機の先頭部に回転自在の状態で設置されたカッタ盤を回転させながら前記推進ジャッキのロッドを延伸させたときに前記シールド掘削機がローリングによって回転する方向とは逆方向に回転するように前記第1の修正部材の前記第2の面と前記第2の修正部材の前記第4の面とを互いに対向させた状態で、前記第1の修正部材の前記第1の面を前記スプレッダの先端面に沿うように対向させて前記第1の修正部材を前記スプレッダに着脱自在の状態で取り付け、前記第2の修正部材の前記第3の面を前記セグメント管の先端面に沿うように対向させて前記第2の修正部材を前記セグメント管に着脱自在の状態で取り付ける工程と、(d)前記スプレッダの先端面と前記セグメント管の先端面との間に前記第1の修正部材と前記第2の修正部材とを介在させた状態で、前記カッタ盤を回転させながら前記複数個の推進ジャッキのロッドを延伸させて、前記第1の修正部材および前記第2の修正部材を介して前記ロッドを前記セグメント管に向かって押し付けて反力をとることで掘削孔を掘り進めながらローリング修正を実施する工程と、を有することを特徴とする。
【0014】
請求項2に記載の本発明のシールド掘削機のローリング修正方法は、上記請求項1に記載の発明において、前記(c)工程において、前記シールド掘削機の後端面の下側半分に配置された複数個の前記スプレッダのみに前記第1の修正部材を取り付け、前記セグメント管の先端面の下側半分において複数個の前記スプレッダに対向する位置のみに前記第2の修正部材を取り付けることを特徴とする。
【0015】
請求項3に記載の本発明のシールド掘削機のローリング修正方法は、上記請求項1または2に記載の発明において、前記第1の修正部材と前記第2の修正部材とは構成が同一であることを特徴とする。
【0016】
請求項4に記載の本発明のシールド掘削機のローリング修正装置は、シールド掘削機の後端面に設置された複数個の推進ジャッキのロッドの端部に装着された複数個のスプレッダの先端面に取り付けられる部材であって、第1の面と、前記第1の面の裏面であり前記第1の面に対して前記シールド掘削機の周方向に沿って傾斜するように形成された第2の面とを備える第1の修正部材と、前記複数個のスプレッダの先端面に対向する位置に配置されたセグメント管の先端面に取り付けられる部材であって、第3の面と、前記第3の面の裏面であり前記第3の面に対して前記シールド掘削機の周方向に沿って傾斜するように形成された第4の面とを備える第2の修正部材と、前記シールド掘削機の先頭部に回転自在の状態で設置されたカッタヘッドを回転させながら前記推進ジャッキのロッドを延伸させたときに前記シールド掘削機がローリングによって回転する方向とは逆方向に回転するように前記第1の修正部材の前記第2の面と前記第2の修正部材の前記第4の面とを互いに対向させた状態で、前記第1の修正部材の前記第1の面を前記スプレッダの先端面に沿うように対向させて前記第1の修正部材を前記スプレッダに着脱自在の状態で取り付ける第1の取付部材および前記第2の修正部材の前記第3の面を前記セグメント管の先端面に沿うように対向させて前記第2の修正部材を前記セグメント管に着脱自在の状態で取り付ける第2の取付部材と、を備えることを特徴とする。
【0017】
請求項5に記載の本発明のシールド掘削機のローリング修正装置は、上記請求項4に記載の発明において、前記第1の修正部材と前記第2の修正部材とは構成が同一であることを特徴とする。
【0018】
請求項6に記載の本発明のシールド掘削方法は、(a)シールド掘削機のカッタ盤を回転させながら前記シールド掘削機の後端面に設置された複数個の推進ジャッキのロッドを延伸させて、前記ロッドの端部に装着された複数個のスプレッダの先端面を前記シールド掘削機の後方に設置されたセグメント管に押し付けて反力をとることで掘削孔を掘り進める工程と、(b)第1の面と、前記第1の面の裏面であって前記第1の面に対して前記シールド掘削機の周方向に沿って傾斜する第2の面とを備える複数個の第1の修正部材を準備する工程と、(c)第3の面と、前記第3の面の裏面であって前記第3の面に対して前記シールド掘削機の周方向に沿って傾斜する第4の面とを備える複数個の第2の修正部材を準備する工程と、(d)前記カッタ盤を回転させながら前記推進ジャッキのロッドを延伸させたときに前記シールド掘削機がローリングによって回転する方向とは逆方向に回転するように前記第1の修正部材の前記第2の面と前記第2の修正部材の前記第4の面とを互いに対向させた状態で、前記第1の修正部材の前記第1の面を前記スプレッダの先端面に沿うように対向させて前記第1の修正部材を前記スプレッダに着脱自在の状態で取り付け、前記第2の修正部材の前記第3の面を前記セグメント管の先端面に沿うように対向させて前記第2の修正部材を前記セグメント管に着脱自在の状態で取り付ける工程と、(e)前記スプレッダの先端面と前記セグメント管の先端面との間に前記第1の修正部材と前記第2の修正部材とを介在させた状態で、前記カッタ盤を回転させながら前記複数個の推進ジャッキのロッドを延伸させて、前記第1の修正部材および前記第2の修正部材を介して前記ロッドを前記セグメント管に向かって押し付けて反力をとることで前記掘削孔を掘り進めながらローリング修正を実施する工程と、を有することを特徴とする。
【0019】
請求項7に記載の本発明のシールド掘削方法は、上記請求項6に記載の発明において、前記(d)工程において、前記シールド掘削機の後端面の下側半分に配置された複数個の前記スプレッダのみに前記第1の修正部材を取り付け、前記セグメント管の先端面の下側半分において複数個の前記スプレッダに対向する位置のみに前記第2の修正部材を取り付けることを特徴とする。
【0020】
請求項8に記載の本発明のシールド掘削方法は、上記請求項6または7に記載の発明において、前記(e)工程のローリング修正工程時における前記推進ジャッキの推力を、前記(a)工程の掘削工程時における前記推進ジャッキの推力より小さくすることを特徴とする。
【0021】
請求項9に記載の本発明のシールド掘削方法は、上記請求項6~8のいずれか1項に記載の発明において、前記第1の修正部材と前記第2の修正部材とは構成が同一であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、シールド掘削作業時に生じるローリングの修正作業の効率を向上させることが可能になる。
【0023】
また、本発明によれば、シールド掘削作業の効率を向上させることが可能となる。
【0024】
また、本発明によれば、ローリング修正作業時におけるシールド掘削機の破損や故障等を抑制または防止することが可能となる。
【0025】
また、本発明によれば、シールド掘削機のローリング修正装置の構造を簡単化することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の一実施の形態で使用するシールド掘削機の内部を側面から透かして見た構成図である。
図2図1のシールド掘削機の後端面の正面図である。
図3図1のシールド掘削機で組立てられたセグメント管の先端面の正面図である。
図4図1のシールド掘削機の中心軸から外周側を見たときのローリング修正装置の平面図である。
図5図4のローリング修正装置を図4の左側から右側に向かって見たときの側面図である。
図6】(a)は図4のローリング修正装置を構成する修正部材の平面図、(b)は図6(a)の修正部材の平坦面の正面図、(c)は図6(b)の平坦面の裏側の傾斜面の正面図である。
図7図2のシールドジャッキの先端のスプレッダに取り付けられた一方の修正部材の配置例を示す正面図である。
図8図3のセグメント管に取り付けられた他方の修正部材の配置例を示す正面図である。
図9】(a)はシールド掘削作業時における地盤の要部断面図、(b)は図9(a)の後のシールド掘削作業時における地盤の要部断面図である。
図10】(a)は図9(b)のシールド掘削作業後のローリング修正作業の準備作業時における地盤の要部断面図、(b)は図10(a)の準備作業後のローリング修正作業時における地盤の要部断面図である。
図11図10(b)のローリング修正作業時においてシールド掘削機の中心軸から外周側を見たときのローリング修正装置の平面図である。
図12】(a),(b)はシールド掘削機のカッタ盤の回転方向と一対の修正部材の取付向きとを示した平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の一例としての実施の形態について、図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための図面において、同一の構成要素には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0028】
まず、本実施の形態で使用するシールド掘削機の一例について図1図3を参照して説明する。
【0029】
図1は本実施の形態で使用するシールド掘削機の内部を側面から透かして見た構成図、図2図1のシールド掘削機の後端面の正面図、図3図1のシールド掘削機で組立てられたセグメント管の先端面の正面図である。なお、図2および図3の符号X,Yは中心線を示している。
【0030】
図1に示すように、本実施の形態のシールド掘削機1は、例えば、カッタ盤2を切羽に押し当て回転させることにより地盤を掘削する際に、カッタ盤2の後方のスキンプレート3内に設けられた泥水室4に送泥管5を通じて泥水を圧送し、泥水室4内の泥水圧力を切羽の土圧および地下水圧に見合う圧力にして切羽の安定を図るとともに、泥水室4内に溜められた泥水を排泥管6によってトンネルの外部に排出しながら地山にトンネルを形成する泥水式シールド掘削機である。
【0031】
シールド掘削機1を構成するカッタ盤2は、切羽を掘削する正面円形状の掘削部材であり、スキンプレート3の前面にスキンプレート3の周方向に沿って正逆両方向に回転自在の状態で設置されている。このカッタ盤2は、例えば、スポークタイプが採用されており、その前面(切羽に対向する面)には、玉石等の破砕や地山の掘削を行う複数のビット2aおよびスクレーパツース2bが装着されている他、カッタ盤2の回転により掘削された土砂等を泥水室4内に取り込む貫通穴(図示せず)が形成されている。なお、カッタ盤2の外周面には、急曲線施工時の余掘りやシールド掘削機1の姿勢制御等を行うコピービット2cが装着されている。
【0032】
カッタ盤2の後方に位置するスキンプレート3は、例えば円筒状の鋼製板により形成された前胴プレート3aおよび後胴プレート3bで構成されている。前胴プレート3aと後胴プレート3bとは、後胴プレート3bの先端側の球面軸受部が前胴プレート3aの後端側の内周面に接した状態で入り込むことで係合されている。前胴プレート3aの前面側において、その前面からスキンプレート3の内方に後退した位置には、スキンプレート3内を切羽側と機内側とに分ける隔壁7が設置されている。このスキンプレート3の切羽側、すなわち、上記カッタ盤2と隔壁7との間に、上記泥水室4が設けられている。泥水室4は、カッタ盤2の回転により掘削された土砂等を取り込み、送泥管5を通じて供給された泥水と混合する空間(チャンバ)である。
【0033】
一方、スキンプレート3の機内には、送泥管5と、排泥管6と、カッタ駆動体10と、複数本の中折れジャッキ11と、複数本のシールドジャッキ(推進ジャッキ)12と、エレクタ13とが設置されている。なお、スキンプレート3を構成する後胴プレート3bの後端部の内周面には、テールブラシ3cが設けられている。テールブラシ3cは、例えば鋼製のワイヤや発泡ウレタンなどで構成されており、シールド掘削機1の進行方向に対して間隔を開けて環状に、例えば、2本設けられている。テールブラシ3cは、セグメント管STの外周面と接触するような長さで掘削孔の中心軸に向かって延びており、このようなテールブラシ3cにより、スキンプレート3の内周面とセグメント管STの外周面との間にシール室が形成されている。
【0034】
スキンプレート3の機内に設置された送泥管5は、泥水室4内に泥水を供給する配管であり、例えば、鋼材により形成されている。送泥管5の先端部(放泥口)は、隔壁7の正面内上部を貫通して泥水室4に達している。これにより、送泥管5を通じて圧送された泥水は、シールド掘削機1の正面内上部から泥水室4内に供給される。一方、送泥管5の後端部は、トンネル(掘削孔)の抗口に向かって延び、途中で所定の間隔毎に配置された複数の送泥ポンプ(図示せず)を介してトンネルの外部の泥水層(図示せず)に接続されている。なお、泥水槽は、トンネルの外部の泥水処理装置(図示せず)に接続されている。
【0035】
排泥管6は、泥水室4内の排泥水(掘削土砂と泥水との混合泥水)をトンネルの外部に排出する配管であり、例えば、鋼材により形成されている。排泥管6の先端部(吸泥口)は、隔壁7の正面内下部を貫通して泥水室4に達している。これにより、泥水室4内の排泥水は、シールド掘削機1の正面内下部から排出される。一方、排泥管6の後端部は、トンネルの抗口に向かって延び、途中で所定の間隔毎に配置された複数の排泥ポンプ(図1には図示せず)を介してトンネルの外部の上記泥水処理装置に接続されている。すなわち、泥水室4内の排泥水は、排泥管6を通じてトンネルの外部の泥水処理装置に送られ、そこで土砂と泥水とに分離され比重や粘性等が調整された後、泥水槽に送られて再び送泥管5を通じて泥水室4へ送られる。
【0036】
カッタ駆動体10は、カッタ盤2を正逆両方向に回転させるための駆動源である。中折れジャッキ11は、前胴プレート3aと後胴プレート3bとを連結するとともに、シールド掘削機1の推進方向を修正する機器であり、前胴プレート3aの外周より内側のシールド掘削機1の後端面内において前胴プレート3aの近傍に、前胴プレート3aの外周に沿って所定の間隔毎に並んで配置されている。
【0037】
シールドジャッキ12は、スキンプレート3の後方のトンネルの内周に敷設されたセグメント管STに反力をとり、セグメント管STを後方に向けて押圧することで、シールド掘削機1を前進させるための推進力を発生させる機器であり、図2に示すように、前胴プレート3aの外周より内側のシールド掘削機1の後端面内の前胴プレート3aの近傍において、中折れジャッキ11の隣接間に配置されるように、前胴プレート3aの外周に沿って所定の間隔毎に並んで配置されている。なお、図1に示すように、セグメント管STは、掘削孔の内周に沿って敷設された複数のセグメントSで構成されている。各セグメントSは、例えば、鋼製セグメントで構成されている。
【0038】
図1および図2に示すように、各シールドジャッキ12のロッド12rの先端面(セグメント管STの先端面に対向する面)には、シールドジャッキ12のロッド12rの位置とセグメント管STの位置とを合わせるためのブロック12aを介してスプレッダ12sが取り付けられている。図2に示すように、スプレッダ12sの先端の板面(セグメント管STの先端面に対向する面)は、シールドジャッキ12のロッド12rの先端面やブロック12aの先端面よりも前胴プレート3aの周方向に沿って長い正面視で略円弧状に形成されている。
【0039】
図1に示すように、エレクタ13は、前胴プレート3aの後端部付近において複数のセグメントSを把持し、掘削孔の内周に沿って環状に配置することで、セグメント管ST(図1および図3参照)を組み立てる装置であり、図1に示すように、エレクタリング部13rと、エレクタ駆動体13mと、セグメント把持部13hと、支持体13sとを有している。エレクタリング部13rは、切羽面内に沿って正逆両方向に旋回自在の状態でスキンプレート3内に設置されている。エレクタ駆動体13mは、エレクタリング部13rを旋回させるための駆動部であり、例えば、油圧モータで構成されている。セグメント把持部13hは、セグメントSを把持するための機構部であり、支持体13s上に支持されている。支持体13sは、エレクタリング部13rと機械的に接続されており、切羽面内に沿って正逆両方向に旋回自在の状態で設置されている。そして、これにより、セグメント把持部13hも切羽面内に沿って正逆両方向に旋回自在の状態で設置されている。また、セグメント把持部13hは、旋回動作の他に、前後両方向(シールド掘削機1の軸方向)および径方向(シールド掘削機1の中心軸から外方に離間する径方向およびシールド掘削機1の外方から中心軸に接近する径方向)に移動自在になっている。
【0040】
ところで、このようなシールド掘削機1を用いて掘削作業をすると、前胴プレート3aおよび後胴プレート3bがカッタ盤2の回転方向とは反対方向に回転してしまう、所謂ローリングが生じてしまう。そこで、本実施の形態においては、以下のようなローリング修正装置を用いてローリングを修正する。以下、本実施の形態のローリング修正装置の一例について図4図8を参照して説明する。
【0041】
まず、図4図1のシールド掘削機の中心軸から外周側を見たときのローリング修正装置の平面図、図5図4のローリング修正装置を図4の左側から右側に向かって見たときの側面図、図6(a)は図4のローリング修正装置を構成する修正部材の平面図、図6(b)は図6(a)の修正部材の平坦面の正面図、図6(c)は図6(b)の平坦面の裏側の傾斜面の正面図である。
【0042】
図4および図5に示すように、本実施の形態のローリング修正装置15は、シールド掘削作業時に生じたローリングを修正するための装置であり、一対の修正部材15A,15Bと、一方の修正部材(第1の修正部材)15Aをスプレッダ12sに取り付ける取付金具(第1の取付部材)15Cと、他方の修正部材(第2の修正部材)15Bをセグメント管STに着脱自在の状態で取り付ける取付金具(第2の取付部材)15Dとを備えている。
【0043】
本実施の形態においては、一対の修正部材15A,15Bが互いに同一構成とされている。一対の修正部材15A,15Bを互いに異なる構成としても良いが、同一構成とすることにより、一対の修正部材15A,15Bの製造を容易にすることができ、一対の修正部材15A,15Bのコストを下げることができるので、ローリング修正装置15のコストを下げることができる。また、取付金具15C,15Dも同一の理由から互いに同一構成とされている。
【0044】
図4および図5に示すように、修正部材15A,15Bは、それぞれ互いに対向するように配置された金属製の2枚の正面板15A1,15A2,15B1,15B2と、それらの長手方向両端面に接合された金属製の2枚の側面板15A3,15A4,15B3,15B4と、修正部材15A,15Bの底面に設けられた金属製の底面板15A5,15B5と、底面板15A5,15B5に固定された状態で2枚の正面板15A1,15A2間(正面板15B1,15B2間)を架け渡すように設けられた正面視でT字状の金属製の2個の補強板15A6,15B6とを備えている。
【0045】
図4および図6(b),(c)に示すように、修正部材15A,15Bの2枚の正面板15A1,15A2,15B1,15B2の正面形状は、上記したスプレッダ12sの先端面の平面形状に合わせるように弧状に形成されている。2枚の正面板15A1,15A2,15B1,15B2のうち、一方の正面板15A1の正面(第1の面)および正面板15B1の正面(第3の面)が平坦になるように配置されている。これに対して、その裏側の他方の正面板15A2の正面(第2の面)および正面板15B2の正面(第4の面)は、一方の正面板15A1,15B1の正面に対して修正部材15A,15Bの長手方向に沿って傾斜するように配置されている。すなわち、図4および図6(a)に示すように、修正部材15A,15Bは、その長手方向に沿って次第に厚さが薄くなるように形成されている。なお、一対の修正部材15A,15Bの各々の正面板15A2,15B2の正面(傾斜面)の傾斜角度は、例えば、2°程度である。また、一対の修正部材15A,15Bの長手方向の寸法は、例えば、630mm程度、修正部材15A,15Bにおいて相対的に厚い側の寸法(側面板15A3,15B3の幅)は、例えば、138mm程度、修正部材15A,15Bにおいて相対的に薄い側の寸法(側面板15A4,15B4の幅)は、例えば、116mm程度である。
【0046】
また、図4および図6に示すように、修正部材15A,15Bの正面板15A1,15A2,15B1,15B2において、長手方向両端の上部側には、取付用の凸部15A7,15B7が形成されている。この凸部15A7,15B7は修正部材15A,15Bをそれぞれスプレッダ12sおよびセグメント管STに取り付けるときに取付金具15C,15Dが取り付けられる部分である。
【0047】
また、正面板15A1,15A2,15B1,15B2の正面内において同じ位置には、正面板15A1,15A2,15B1,15B2を貫通する3個の貫通孔15A8,15B8が穿孔されている。3個の貫通孔15A8,15B8のうちの1つは正面板15A1,15A2,15B1,15B2の長手方向中央に穿孔され、残りの2つは中央の貫通孔15A8,15B8から等しい距離に穿孔されている。この貫通孔15A8,15B8は、例えば、修正部材15A,15Bを運んだり、所定の箇所に配置したりするときに、修正部材15A,15Bを保持するのに使用される。
【0048】
このように本実施の形態のローリング修正装置15においては、構造が簡単な上、ローラ等を含まないので外力に対して高い強度を備えている。したがって、ローリング修正装置15のコストを下げることができる上、長期間使用することができる。
【0049】
ローリングの修正に際しては、図4および図5に示すように、一方の修正部材15Aは、その正面板15A1の正面をシールドジャッキ12のスプレッダ12sの先端面に向けた状態でスプレッダ12spに着脱自在の状態で取り付けられ、他方の修正部材15Bは、その正面板15B1の正面をセグメントSの先端面に向けた状態でセグメントSに着脱自在の状態で取り付けられる。そして、図4に示すように、これらの一対の修正部材15A,15Bは、シールド掘削機1のカッタ盤2を回転させながらシールドジャッキ12のロッド12rを延伸させたときに、シールド掘削機1がローリングによって回転する方向とは逆方向に回転するように、修正部材15A,15Bの正面板15A2,15B2の正面(傾斜面)を互いに対向させた状態で配置される。なお、図4の矢印Rc1はカッタ盤2の回転方向を示し、矢印Rr1はローリングが生じる回転方向を示している。
【0050】
次に、図7図2のシールドジャッキの先端のスプレッダに取り付けられた一方の修正部材の配置例を示す正面図、図8図3のセグメント管に取り付けられた他方の修正部材の配置例を示す正面図である。なお、図7および図8は正面図であるが、図面を見易くするため一対の修正部材15A,15Bにハッチングを付した。
【0051】
図7に示すように、本実施の形態においては、一方の修正部材15Aが、シールド掘削機1の後端面の下側半分に配置された複数個のスプレッダ12sのみに取り付けられている。複数の修正部材15Aの正面(傾斜面)の傾斜の向きは同じである。また、一方の修正部材15Aは、スプレッダ12sの先端部の円弧状の板面内に収まるように配置されている。一方、図8に示すように、他方の修正部材15Bは、修正部材15Aに対向するように配置されている。すなわち、他方の修正部材15Bは、セグメント管STの先端面の下側半分のみに取り付けられている。複数の修正部材15Bの正面(傾斜面)の傾斜の向きは同じである。
【0052】
このように本実施の形態においては、一対の修正部材15A,15Bをシールド掘削機1の後端面の下側半分のみに取り付けることにより、修正部材15A,15Bの落下の虞を回避することができる。ただし、修正部材15A,15Bをシールド掘削機1の後端面内の全てのスプレッダ12sに取り付けることもできるし、シールド掘削機1の後端面内において左右のいずれか半分の複数のスプレッダ12sのみに取り付けることもできる。また、図7および図8においては、修正部材15A,15Bを4個ずつ配置している場合を例示しているが、これに限定されるものではなく、例えば、修正部材15A,15Bを5個~7個ずつ配置することもできる。
【0053】
また、図7および図8に示すように、修正部材15A,15Bは、それぞれ平面視で左右対称になるように配置されている。これにより、ローリング修正の安定性を向上させることができる。同様の観点から複数の修正部材15Aを、シールド掘削機1の後端面内において点対称になるように配置し、それに合わせて複数の修正部材15Bをセグメント管STの先端面内において点対称に配置しても良い。また、本実施の形態においては複数の修正部材15A,15Bの各々を互いに隣接して配置しているが、これに限定されるものではなく、例えば、互いに隣接させずに1つ置きに配置することもできる。
【0054】
次に、本実施の形態のシールド掘削方法およびローリング修正方法の一例について図9図12を参照して説明する。
【0055】
まず、図9(a)はシールド掘削作業時における地盤の要部断面図、図9(b)は図9(a)の後のシールド掘削作業時における地盤の要部断面図、図10(a)は図9(b)のシールド掘削作業後のローリング修正作業の準備作業時における地盤の要部断面図、図10(b)は図10(a)の準備作業後のローリング修正作業時における地盤の要部断面図、図11図10(b)のローリング修正作業時においてシールド掘削機の中心軸から外周側を見たときのローリング修正装置の平面図である。なお、図9および図10においては図面を見易くするためシールド掘削機1の構成を簡略化して示した。また、図10においては図面を見易くするため取付金具15C,15Dの図示を省略した。
【0056】
まず、図9(a)に示すように、シールド掘削機1で掘削孔を掘り進めた後、シールド掘削機1のシールドジャッキ12のロッド12rを縮めて、シールド掘削機1の後方にエレクタ13(図1参照)によってセグメント管STを組み立てる。続いて、図9(b)に示すように、シールド掘削機1のカッタ盤2を回転させながら、シールド掘削機1のシールドジャッキ12のロッド12rを延伸させて推力Fp1でセグメント管STの軸方向の先端面に押し付けることで反力を取って掘削孔Hを掘り進める。
【0057】
次いで、図10(a)に示すように、シールド掘削機1を停止し、シールド掘削機1のシールドジャッキ12のロッド12rを縮めて、シールド掘削機1の後方にエレクタ13(図1参照)によってセグメント管STを組み立てた後、複数本のシールドジャッキ12のスプレッダ12sの先端面に修正部材15Aを着脱自在の状態で取り付け、これに対向するセグメント管STに修正部材15Bを着脱自在の状態で取り付ける。このときの一対の修正部材15A,15Bの取付状態は図4図7および図8で示したとおりである。
【0058】
このように本実施の形態においては、ローリングの修正に際してシールドジャッキ12の取り外し作業やシールドジャッキ12の傾斜角度の設定作業が不要であり、シールドジャッキ12およびセグメント管STに一対の修正部材15A,15Bを単に取り付けるだけで良い。しかも、一対の修正部材15A,15Bを容易に取り付けることができる。したがって、ローリング修正作業の効率を向上させることができ、シールド掘削作業の効率を向上させることができる。
【0059】
続いて、図10(b)に示すように、シールド掘削機1のカッタ盤2を回転させながら、シールド掘削機1のシールドジャッキ12のロッド12rを延伸させて推力Fp2でセグメント管STの軸方向の先端面に押し付けることで反力を取って掘削孔Hを掘り進める。このとき、一対の修正部材15A,15Bが取り付けられている箇所では、図10(b)および図11に示すように、シールドジャッキ12のスプレッダ12sとセグメント管STとの間に一対の修正部材15A,15Bが各々の傾斜面同士を接触させた状態で介在され、シールドジャッキ11からの推力Fp2が一対の修正部材15A,15Bを介してセグメント管STに付与される。
【0060】
このようにすると、図11に示すように、シールド掘削機1に対して、ローリングの回転方向Rr1とは真逆の方向に横力Fm1が作用する。すなわち、シールドジャッキ12のスプレッダ12sに取り付けられた一方の修正部材15Aが、他方の修正部材15Bの下り傾斜面に沿って滑るように移動する。これにより、シールド掘削機1が機軸を中心として横力Fm1の方向に回動することによりローリングを修正することができる。
【0061】
このように、本実施の形態においては、シールド掘削作業を進めながら同時にシールド掘削機1のローリングを修正することができるので、シールド掘削作業の効率を向上させることができる。
【0062】
また、シールドジャッキ12のスプレッダ12sの先端面に対向する修正部材15Aの正面が平坦になっており、シールドジャッキ12のロッド12rを延伸させたときにスプレッダ12sの先端面が修正部材15Aの正面に対してほぼ平行な状態で当たるので、一対の修正部材15A,15B側からシールドジャッキ12側に余計な反力やモーメント力が加わることもない。したがって、シールド掘削機1の破損や故障等を抑制または防止することができる。また、ローリング修正の安定性を向上させることができる。
【0063】
また、本実施の形態においては、ローリング修正時のシールドジャッキ12の推力Fp2を、ローリング修正装置15を取り付けないときの掘削作業時のシールドジャッキ12の推力Fp1(図9(b)参照)より小さくする。これにより、ローリング修正装置15の一対の修正部材15A,15Bに過剰な推力が加わるのを回避することができるので、一対の修正部材15A,15Bの破損等を抑制または防止することができる。また、セグメント管ST側にも修正部材15Bを取り付けるので、ローリング修正装置15の装着領域でのセグメント管STの破損等を防止することができる。
【0064】
なお、ローリング修正装置15(一対の修正部材15A,15B)が取り付けられていない箇所では、シールドジャッキ12のスプレッダ12sの先端面がセグメント管STの先端面に直接当たり、シールドジャッキ12からの推力Fp2がセグメント管STに付与されるが、ローリングの修正を妨げることはない。
【0065】
次いで、シールド掘削機1を停止し、シールド掘削機1のシールドジャッキ12のロッド12rを縮めて、一対の修正部材15A,15Bを取り外す。このとき本実施の形態においては、一対の修正部材15A,15Bを容易に取り外すことができるので、ローリング修正作業の効率を向上させることができ、シールド掘削作業の効率を向上させることができる。続いて、図9(a)と同様に、シールド掘削機1の後方にエレクタ13(図1参照)によってセグメント管STを組み立てる。その後、図9(b)と同様にシールド掘削作業を実施する。以上のような作業を繰り返すことでローリングを修正しながら掘削孔を削孔する。
【0066】
次に、図12(a),(b)はシールド掘削機のカッタ盤の回転方向と一対の修正部材の取付向きとを示した平面図である。なお、図12においては図面を見易くするため、一対の修正部材15A,15Bの対向面の傾斜角度を大きく示すとともに、取付金具を省略した。
【0067】
図12(a)は、上記図11で説明したのと同様に、図1に示したシールド掘削機1のカッタ盤2が回転方向Rc1(カッタ盤2を切羽側から見て時計回りの方向)に回転し、その反対の回転方向Rr1にローリングが生じる場合の一対の修正部材15A,15Bの配置を示している。この場合は、一対の修正部材15A,15Bの対向面が図12の右から左に下がるように一対の修正部材15A,15Bを互いに対向させる。
【0068】
この状態でシールドジャッキ12(図11参照)から一対の修正部材15A,15Bに推力Fp2が付与されると、一方の修正部材15Aが、横力Fm1を受けて他方の修正部材15Bの傾斜面に沿って滑り、ローリングの回転方向Rr1とは真逆の図12の左方向に移動することでローリングを修正することができる。
【0069】
一方、図12(b)は、図1に示したシールド掘削機1のカッタ盤が図12(a)とは真逆の回転方向Rc2(カッタ盤2を切羽側から見て反時計回りの方向)に回転し、その反対の回転方向Rr2(図12(a)の回転方向Rr1とは真逆)にローリングが生じる場合の一対の修正部材15A,15Bの配置を示している。この場合は、一対の修正部材15A,15Bの対向面が図12の左から右に下がるように一対の修正部材15A,15Bを互いに対向させる。すなわち、一方の修正部材15Aは、その正面板15A2(図6等参照)の正面(第1の面)がスプレッダ12sの先端面に対向した状態でスプレッダ12sに着脱自在の状態で取り付けられ、他方の修正部材15Bは、その正面板15B2(図6等参照)の正面(第3の面)がセグメント管STの先端面に対向した状態でセグメント管STに着脱自在の状態で取り付けられる。したがって、一方の修正部材15Aの正面板15A1(図6等参照)の正面(第2の面)と、他方の修正部材15Bの正面板15B1(図6等参照)の正面(第4の面)とが対向した状態で接するようになる。
【0070】
この状態でシールドジャッキ12(図11参照)から一対の修正部材15A,15Bに推力Fp2が付与されると、一方の修正部材15Aが、横力Fm1とは真逆の横力Fm2を受けて他方の修正部材15Bの傾斜面に沿って滑り、ローリングの回転方向Rr2とは真逆の図12の右方向に移動することでローリングを修正することができる。
【0071】
以上本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本明細書で開示された実施の形態はすべての点で例示であって、開示された技術に限定されるものではない。すなわち、本発明の技術的な範囲は、前記の実施の形態における説明に基づいて制限的に解釈されるものでなく、あくまでも特許請求の範囲の記載に従って解釈されるべきであり、特許請求の範囲の記載技術と均等な技術および特許請求の範囲の要旨を逸脱しない限りにおけるすべての変更が含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0072】
以上の説明では、本発明を泥水圧式のシールド掘削機に適用した場合について説明したが、これに限定されるものではなく、泥土圧式のシールド掘削機等、他のシールド掘削機にも適用することができる。また、カッタ盤はスポーク型に限定されるものではなく、面板型にも適用することができる。
【符号の説明】
【0073】
1 シールド掘削機
2 カッタ盤
2a ビット
2b スクレーパツース
2c コピービット
3 スキンプレート
3a 前胴プレート
3b 後胴プレート
3c テールブラシ
4 泥水室
5 送泥管
6 排泥管
7 隔壁
10 カッタ駆動体
11 中折れジャッキ
12 シールドジャッキ
12r ロッド
12a ブロック
12s スプレッダ
13 エレクタ
13r エレクタリング部
13m エレクタ駆動体
13h セグメント把持部
13s 支持体
15 ローリング修正装置
15A,15B 修正部材
15A1,15A2,15B1,15B2 正面板
15A3,15A4,15B3,15B4 側面板
15A5,15B5 底面板
15A6,15B6 補強板
15A7,15B7 凸部
15A8,15B8 貫通孔
15C 取付金具
15D 取付金具
S セグメント
ST セグメント管
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12