(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-16
(45)【発行日】2023-08-24
(54)【発明の名称】ドアミラー
(51)【国際特許分類】
B60R 1/06 20060101AFI20230817BHJP
B60J 10/21 20160101ALI20230817BHJP
B60J 10/50 20160101ALI20230817BHJP
B60J 10/30 20160101ALI20230817BHJP
【FI】
B60R1/06 D
B60J10/21
B60J10/50
B60J10/30
(21)【出願番号】P 2019108363
(22)【出願日】2019-06-11
【審査請求日】2022-06-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000148689
【氏名又は名称】株式会社村上開明堂
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(74)【代理人】
【識別番号】100178847
【氏名又は名称】服部 映美
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【氏名又は名称】小林 淳一
(72)【発明者】
【氏名】村越 哲也
【審査官】神田 泰貴
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-039403(JP,A)
【文献】特開2009-269580(JP,A)
【文献】特開2006-021666(JP,A)
【文献】特開2019-099091(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 1/06 - 1/078
B60J 10/00 - 10/90
B60R 13/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドアの内部に固定される取付ブロック部、及び、前記ドアのアウタパネルに形成された開口から少なくとも一部が前記アウタパネルの外側に突出する支持ブロック部を有するミラーベースと、
前記ミラーベースにおける
前記開口から前記アウタパネルの外側に突出する部分を取り囲むベースカバーと、
基端が前記支持ブロック部に取り付けられていて先端が前記ベースカバーの開口部から外側に突出する支持軸と、
前記支持軸の先端に支持されていて前記支持軸に対して回転自在であるドアミラー本体と、
前記開口部の周縁において、前記ベースカバーと前記ドアミラー本体
との間の隙間を閉塞するシール部材と、を備え、
前記シール部材は、
前記ミラーベースと前記ベースカバーとに挟持された被固定部と、
前記開口部の内部を通って前記被固定部から前記ドアミラー本体側に延び、前記ドアミラー本体に摺動自在に当接する環状シール部と、を有することを特徴とするドアミラー。
【請求項2】
前記被固定部は、前記環状シール部に連設され、前記ベースカバーの前記開口部の周域に密接する環状のシール基部を有することを特徴とする請求項1に記載のドアミラー。
【請求項3】
前記ミラーベースは、端面が前記シール基部と当接する環状のボス部を有し、
前記被固定部は、前記シール基部
の外周面から径方向外側に向かって突出する係合片を有し、
前記ボス部の外周面の上端には、径方向外側に向かって下方傾斜した傾斜面が設けられ、
前記係合片には、径方向内側から外側に向かって下方傾斜し、かつ、前記傾斜面に当接する傾斜下面が設けられていることを特徴とする請求項2に記載のドアミラー。
【請求項4】
前記係合片は、前記シール基部の周方向に偶数個突設されるとともに、対を成すもの同士が、前記シール基部の径方向で対向する位置に配置されていることを特徴とする請求項3に記載のドアミラー。
【請求項5】
前記ベースカバーは、シール部材側に突出する係止突起を有し、
任意の前記係合片は、前記係止突起が嵌入される突起受容部を有することを特徴とする請求項4に記載のドアミラー。
【請求項6】
前記突起受容部は、前記係合片を貫通する貫通孔によって構成され、
前記ボス部は、前記貫通孔を貫通した前記係止突起の先端部が嵌入される凹部を有することを特徴とする請求項5に記載のドアミラー。
【請求項7】
前記シール基部は、前記環状シール部から離間した位置に、当該シール基部の周方向に沿って形成された環状突起を有し、
前記ベースカバーは、前記環状突起における前記ドアミラー本体側の面および前記環状突起の径方向外側の面と当接する変位規制部を有することを特徴とする請求項2から請求項6のいずれか1項に記載のドアミラー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のドアに設置されるドアミラーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両のドアミラーは、鏡体を含むドアミラー本体が、金属製のミラーベースを介してドアに取り付けられている。ミラーベースには、ドアミラー本体を略水平方向に回動可能に支持する支持軸が取り付けられている。また、ミラーベースのドアから外側に突出した部分は、ミラーベースの外側を覆う樹脂製のベースカバーによって覆われている。ベースカバーは、支持軸が上方に突出する開口部を有し、ベースカバーから上方に突出した支軸部にドアミラー本体が回動可能に取り付けられている。
【0003】
この種のドアミラーは、ドアミラー本体がミラーベースやベースカバーに対して回動する構造とされているため、ベースカバーとドアミラー本体との間には、両者の相対回動を許容するための隙間が設定されている。ところが、この隙間は車両の走行時に走行風が入り込むと、風切り音の発生を招く原因となり易い。この対策として、シール部材によって上記の隙間を埋めるようにしたドアミラーが案出されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
このドアミラーは、ベースカバーの支持軸の突出位置の周域上面にシール部材が取り付けられ、そのシール部材がドアミラー本体の下面に摺動自在に接触している。このドアミラーでは、ベースカバーとドアミラー本体の間の隙間が環状のシール部材によって埋められるため、走行時における風切り音の発生を抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記従来のドアミラーは、ドアミラー本体が回動操作されると、シール部材がドアミラー本体の下面に接触した状態のままドアミラー本体が回転方向に変位する。このため、ドアミラー本体とシール部材の接触抵抗が何等かの原因によって部分的に大きくなった場合等に、ドアミラー本体の作動を受けてシール部材がこじられ、浮き上がりや位置ずれを起こすことが懸念される。
【0007】
そこで本発明は、シール部材による風切り音の発生防止効果を長期にわたって安定して得ることができるドアミラーを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明に係るドアミラーは、以下の構成を採用した。
即ち、本発明に係るドアミラーは、ドアの内部に固定される取付ブロック部、及び、前記ドアのアウタパネルに形成された開口から少なくとも一部が前記アウタパネルの外側に突出する支持ブロック部を有するミラーベースと、前記ミラーベースにおける前記開口から前記アウタパネルの外側に突出する部分を取り囲むベースカバーと、基端が前記支持ブロック部に取り付けられていて先端が前記ベースカバーの開口部から外側に突出する支持軸と、前記支持軸の先端に支持されていて前記支持軸に対して回転自在であるドアミラー本体と、前記開口部の周縁において、前記ベースカバーと前記ドアミラー本体との間の隙間を閉塞するシール部材と、を備え、前記シール部材は、前記ミラーベースと前記ベースカバーとに挟持された被固定部と、前記開口部の内部を通って前記被固定部から前記ドアミラー本体側に延び、前記ドアミラー本体に摺動自在に当接する環状シール部と、を有することを特徴とする。
【0009】
前記被固定部は、前記環状シール部に連設され、前記ベースカバーの前記開口部の周域に密接する環状のシール基部を有する構成であっても良い。
【0010】
前記ミラーベースは、端面が前記シール基部と当接する環状のボス部を有し、前記被固定部は、前記シール基部の外周面から径方向外側に向かって突出する係合片を有し、前記ボス部の外周面の上端には、径方向外側に向かって下方傾斜した傾斜面が設けられ、前記係合片には、径方向内側から外側に向かって下方傾斜し、かつ、前記傾斜面に当接する傾斜下面が設けられるようにしても良い。
【0011】
前記係合片は、前記シール基部の周方向に偶数個突設されるとともに、対を成すもの同士が、前記シール基部の径方向で対向する位置に配置されるようにしても良い。
【0012】
前記ベースカバーは、シール部材側に突出する係止突起を有し、任意の前記係合片は、前記係止突起が嵌入される突起受容部を有する構成としても良い。
【0013】
前記突起受容部は、前記係合片を貫通する貫通孔によって構成され、前記ボス部は、前記貫通孔を貫通した前記係止突起の先端部が嵌入される凹部を有する構成としても良い。
【0014】
前記シール基部は、前記環状シール部から離間した位置に、当該シール基部の周方向に沿って形成された環状突起を有し、前記ベースカバーは、前記環状突起における前記ドアミラー本体側の面および前記環状突起の径方向外側の面と当接する変位規制部を有する構成としても良い。
【発明の効果】
【0015】
本発明では、シール部材の被固定部が剛体であるミラーベースとベースカバーとに挟持されるため、ドアミラー本体の回転に伴って環状シール部に外力が加わることがあっても、シール部材の浮き上がりや位置ずれを抑制することができる。したがって、本発明を採用した場合には、シール部材による風切り音の発生防止効果を長期にわたって安定して得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】実施形態のドアミラーをフロントドアの外側から見た斜視図である。
【
図2】実施形態のドアミラーをフロントドアの内側から見た斜視図である。
【
図3】実施形態のドアミラーのミラーベースとシール部材の斜視図である。
【
図4】実施形態のドアミラーのベースカバーを取り去った斜視図である。
【
図5】実施形態のドアミラーのベースカバーを外側上方から見た斜視図である。
【
図7】実施形態のドアミラーの
図4のVII-VII断面に対応するシール部材の取付部の断面図である。
【
図8】実施形態のドアミラーの
図4のVIII-VIII断面に対応するシール部材の取付部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下のドアミラーの説明において、上下や前後等の向きはドアミラーが車両に取り付けられたときの向きを意味するものとする。また、図面には、車両の上方を指す矢印UPと、車両の前方を指す矢印FRと、車両の後方から前方を見たときの左側方を指す矢印LHが記されている。
【0018】
図1は、ドアミラー10が取り付けられた左側のフロントドア1を車両の左斜め前方かつ上方から見た図であり、
図2は、同フロントドア1を車両の右斜め後方かつ上方から見た図である。
図2に示すフロントドア1は、アウタパネル1oのみが示されている。アウタパネル1oの内側には、実際には、図示しないドアインナパネルやドアトリム等が取り付けられている。
ドアミラー10は、鏡体11を含むドアミラー本体12と、ドアミラー本体12を略水平方向に回動可能に支持する支持軸35(
図3,
図4参照)と、支持軸35を支持するとともに、支持軸35およびドアミラー本体12をフロントドア1に連結する金属製のミラーベース13と、ミラーベース13の一部(フロントドア1よりも車室外側、つまり左側方に位置される部位)の外周面を取り囲む樹脂製のベースカバー14と、ベースカバー14とドアミラー本体12の間の隙間を閉塞するシール部材40(
図3,
図4参照)と、を備えている。
【0019】
ドアミラー本体12は、車両後方に向けて開口したミラー開口部15aを有するミラーハウジング15と、ミラー開口部15aの内側に設置されて、車両後方を乗員側に向けて映す鏡体11と、を備えている。ミラーハウジング15の内部には、鏡体11支持機構(図示せず)が配置されている。
【0020】
図3は、ミラーベース13を車両の左斜め前方かつ上方から見た図であり、
図4は、ベースカバー14を取り去ったドアミラー10を車両の左斜め前方かつ上方から見た図である。なお、
図3では、後述する支持軸35が仮想線で示されている。
図3,
図4に示すように、ミラーベース13は、ドアミラー本体12の下方に配置されて、支持軸35を介してドアミラー本体12を支持する支持ブロック部13Aと、支持ブロック部13Aの車室側の端部から下方に屈曲して延びる取付ブロック部13Bと、を備えている。支持ブロック部13Aは、上下方向が板厚方向となる板状に形成されている。一方、取付ブロック部13Bは、車幅方向が板厚方向となる板状に形成されている。
【0021】
支持ブロック部13Aの上面には、円環状のボス部9が突設され、そのボス部9の内側部分に支持軸35が取り付けられている。支持軸35は、ボス部9の内側から上方に突出し、上端部がドアミラー本体12のミラーハウジング15内に挿入されている。支持軸35のミラーハウジング15内に配置された部分には、外歯を有する図示しないリングギヤが一体に取り付けられている。
【0022】
ドアミラー本体12のミラーハウジング15の内部には、ドアミラー本体12を格納状態(鏡体11がフロントドア1側に対向する状態)と展開状態(鏡体11が車両後方を向く状態)に切り換える(回動変位させる)ための図示しない電動格納機構が設けられている。電動格納機構は、支持軸35上のリングギヤとかみ合うギヤ部と、そのギヤ部を回転させるモータを有する。電動格納機構は、モータの駆動によってドアミラー本体12を支持軸35の回りに(略水平方向に)回転させる。
図3中の軸線o1は、支持軸35に回動可能に支持されたドアミラー本体12の回動軸線である。
【0023】
取付ブロック部13Bは、フロントドア1(アウタパネル1o)における車両の車室外側を向く面に設けられた開口部(図示せず)に挿入されている。開口部に挿入された取付ブロック部13Bは、フロントドア1の内部におい、図示しないドアインナパネルや補強部材等のドア内の部材にボルト締結される。
図3,
図4中の符号17a,17b,17cは、取付ブロック部13Bをドア内の部材にボルト締結する際に図示しないボルトが挿入されるボルト挿通孔である。取付ブロック部13Bは、上下方向に離間した複数個所でボルトによってドア内の部材に結合される。
なお、
図4中の符号18は、支持ブロック部13Aの下方と取付ブロック部13Bの上方部分とを取り囲むように配置され、ベースカバー14とフロントドア1(アウタパネル1o)の間を密閉するベースパッキンである。
【0024】
図5は、ベースカバー14を車両の左斜め後方かつ上方から見た図である。
図5に示すように、ベースカバー14は、支持ブロック部13Aにおけるドアミラー本体12と上下方向で重なる領域を取り囲むカバー主部14aを有する。より詳しくは、カバー主部14aは、ドアミラー本体12の下方において、支持ブロック部13Aの前方側の端部とフロントドア1側の一部を除く周域を取り囲んでいる。カバー主部14aには、ドアミラー本体12の下面と対向する平坦な上壁14a-uが設けられている。上壁14a-uには円形状の開口部8が形成されている。上壁14a-uの開口部8には、支持ブロック部13Aのボス部9から上方に突出した支持軸35が挿入される。したがって、支持軸35の上部は、ベースカバー14の開口部8を通して上方に突出している。
【0025】
また、ベースカバー14は、カバー主部14aから車両前方側に向かって延びる走行風ガイド部14bを有している。走行風ガイド部14bは、カバー主部14aから車両前方に向かって、車両の車幅方向(左右方向)の幅が緩やかに縮小して尖った形状に形成された前端部14b-eを有する。
【0026】
ベースカバー14のカバー主部14aと走行風ガイド部14bとは、アッパカバー14Uと、ロアカバー14Lと、によって構成されている。アッパカバー14Uと、ロアカバー14Lは、上下方向の略中央の突合せ部Pで上下に分割されている。突合せ部Pは、全体がほぼ略水平(ドアミラー本体12の回動軸線o1と略直交する方向)に延びている。また、アッパカバー14Uには、カバー主部14aの上壁14a-uが設けられている。アッパカバー14Uとロアカバー14Lとは、スナップフィット構造やビス止め等によって相互に固定されている。また、アッパカバー14Uおよびロアカバー14Lは、ミラーベース13に対し適宜ビス止め等によって固定されている。
【0027】
図3,
図4に示すように、ミラーベース13の円環状のボス部9の上面側には、円環状のシール部材40が取り付けられている。シール部材40は、ドアミラー10が組み立てられた状態では、ベースカバー14の開口部8の上方側の周縁において、ベースカバー14の上壁14a-uとミラーハウジング15の下面との隙間を環状に閉塞する。シール部材40は、後に詳述ように、ミラーベース13の円環状のボス部9と、ベースカバー14の開口部8の周縁部とに挟み込まれた状態で、ミラーベース13とベースカバー14とに支持されている。
【0028】
図6は、シール部材40を拡大して示した斜視図である。また、
図7は、
図4のVII-VII断面に対応するシール部材40の取付部の断面図であり、
図8は、
図4のVIII-VIII断面に対応するシール部材40の取付部の断面図である。
シール部材40は、ミラーベース13のボス部9の上面に重ねて載置される円環状のシール基部40aと、シール基部40aの外周面から径方向外側に向かって突出する6つの係合片40bと、シール基部40aの内周縁部から上方に延び、ドアミラー本体12のミラーハウジング15の下面に摺動自在に当接する環状シール部40cと、を備えている。シール基部40aは、ベースカバー14に対して、開口部8の下面側の周縁部(後に詳述する段部48)に環状に密接する。また、環状シール部40cは、ドアミラー10に組付けられた状態において、ベースカバー14の開口部8の内部(開口部8の周縁部に囲まれた領域)を通ってドアミラー本体12側に延び、支持軸35の周域において、ミラーハウジング15の下面に摺動自在に当接する。
本実施形態では、円環状のシール基部40aと複数の係合片40bとが、ミラーベース13とベースカバー14とに挟持固定される被固定部を構成している。
【0029】
本実施形態の場合、シール基部40aの外周上には、6つの係合片40bが突設されている。6つの係合片40bは、シール基部40aの外周上に等間隔には配置されていないが、対を成すもの同士が、シール基部40aの径方向で相互に対向する位置に配置されている。
なお、6つの係合片40bは、シール基部40aの円周上において点対称となるように配置されている。また、6つの係合片40bは、シール基部40aの径方向を通る特定の直線Sに対して線対称となるように配置されている。なお、
図6中の符号o2は、円環状のシール基部40aの中心軸線である。したがって、特定の直線Sを間に挟む両側が車両の左右と合致するようにシール部材40を組付けられるようにすれば、対称形状の左右のドアミラー10で同仕様のシール部材40をそのまま使用することができる。つまり、車両左右のドアミラー10において、シール部材40の各係合片40bと周囲の部材との干渉を同様に回避することができる。
【0030】
また、ミラーベース13のボス部9の外周面の上端には、径方向外側に向かって下方傾斜した傾斜面13aがボス部9の外周に亘って環状に形成されている。
シール部材40の各係合片40bは、
図7,
図8に示すように、径方向の断面が略三角形状(楔状)の断面形状に形成されている。具体的には、係合片40bは、平坦な上面40buと径方向内側から外側に向かって下方傾斜する傾斜下面40blとを有し、上面40buと傾斜下面40blの間の上下幅が径方向内側から外側に向かって漸増している。各係合片40bは、傾斜下面40blをボス部9の傾斜面13aに当接(係合)させることにより、ボス部9に対するシール部材40の径方向の位置ずれを規制する。
【0031】
また、シール部材40の6つの係合片40bのうちの、ドアミラー10を車両に取り付けた状態で、車幅方向内側に位置される一つの係合片40bと車幅方向外側に位置される他の一つの係合片40bには、係合片40bを上下方向に貫通する貫通孔42が形成されている。貫通孔42は、シール基部40aの径方向で相互に対向する位置に配置された対を成す係合片40bに形成されている。なお、各貫通孔42は、一部が環状シール部40cに跨って形成されている。
【0032】
本実施形態では、貫通孔42が突起受容部を構成している。各貫通孔42には、ベースカバー14の上壁14a-uのうちの、開口部8の周縁部から下方に(シール部材側に)突出する係止突起43が嵌入される。つまり、ベースカバー14の開口部8の周縁部には、シール部材40側の二つの貫通孔42に対応する二つの係止突起43が突設されている。各係止突起43は、対応する貫通孔42を上方から下方に向かって貫通する。
【0033】
ミラーベース13のボス部9の外周縁部の上面側には、下方に向かって窪む二つの凹部44が形成されている。二つの凹部44は、ベースカバー14の二つの係止突起43の突設位置に対応する位置に形成されている。各凹部44には、シール部材40の対応する貫通孔42を貫通した係止突起43の先端部が嵌入される。これにより、シール部材40は、ミラーベース13とベースカバー14に対して周方向に(中心軸線o2回りに)位置決めされる。
なお、本実施形態では、係合片40bの貫通孔42が突起受容部を構成しているが、係合片40bの上面に凹部を形成し、その凹部を、係止突起43が嵌入される突起受容部としても良い。この場合、ベースカバー14側の係止突起43が単独でシール部材40の周方向の位置ずれを規制する。
【0034】
また、シール部材40のうちの、環状のシール基部40aの外周縁部には、上方側に向かって突出し、かつシール基部40aの周方向に沿って延びる環状突起47が形成されている。環状突起47は、シール基部40aの内周縁部に突設された環状シール部40cに対して、シール基部40aの径方向外側に所定距離離間した位置に突設されている。
【0035】
一方、ベースカバー14の開口部8の下面側の内周縁部には、内周側と下方側に開口する環状の段部48が形成されている。この段部48には、ミラーベース13のボス部9上に配置されたシール部材40の環状突起47が嵌合される。ベースカバー14は、環状突起47におけるドアミラー本体12側の面および環状突起47の径方向外側の面と当接する。具体的には、環状の段部48は、内周壁48aと上部底壁48bと、を有し、これらの内周壁48aと上部底壁48bとがシール部材40の環状突起47に当接する。シール部材40は、これによりベースカバー14に対して径方向と上下方向(軸方向)の変位を規制される。
本実施形態では、段部48の内周壁48aと上部底壁48bとが、ベースカバー14の変位規制部を構成している。
【0036】
また、シール部材40の環状シール部40cは、環状のシール基部40aの内周縁部から一定の内外径のまま上方に延びた後に、径方向外側に拡径しつつ上方に向かって延びている。以下、環状シール部40cのうちの一定の内外径のまま上方に延びる部分を基部領域40c-1と呼び、径方向外側に拡径しつつ上方に向かって延びる部分を拡径領域40c-2と呼ぶ。環状シール部40cの拡径領域40c-2は、基部領域40c-1に比較して薄肉に形成されている。また、拡径領域40c-2は、シール部材40がドアミラー10に組付けられた状態において、ベースカバー14の開口部8の内側領域からベースカバー14の上壁14a-uの上方に突出する。上壁14a-uよりも上方に突出した拡径領域40c-2の外側の端縁は、ドアミラー本体12のミラーハウジング15の下面に摺動自在に密接する。
【0037】
シール部材40は、例えば、以下のようにしてミラーベース13とベースカバー14(アッパカバー14U)に組み付けることができる。
【0038】
最初に、シール部材40をベースカバー14の開口部8の周縁に下方側から位置合わせし、シール基部40aの環状突起47をベースカバー14の段部48に嵌入するとともに、ベースカバー14側の二つの係止突起43を対応する係合片40bの貫通孔42に嵌入する。こうして、係止突起43を貫通孔42に嵌入することにより、シール部材40をベースカバー14に対して周方向で位置決めすることができるとともに、シール部材40をベースカバー14に仮止めすることができる。
【0039】
次に、この状態からミラーベース13のボス部9に対して、ベースカバー14に係止されたシール部材40を位置合わせし、シール基部40aをボス部9の端面に重ね合わせる。このとき、シール基部40aに突設され複数の係合片40bの傾斜下面40blをボス部9の外周の傾斜面13aに当接させるとともに、一部の係合片40bを下方に貫通したベースカバー14側の係止突起43の下端をボス部9上の対応する凹部44に嵌入する。こうして、係合片40bの傾斜下面40blがボス部9の傾斜面13aに当接すると、シール部材40がボス部9に対して径方向に位置決めされ、係止突起43が凹部44に嵌入されると、シール部材40がボス部9に対して周方向で位置決めされる。
【0040】
この後、ベースカバー14がミラーベース13にビス止め等によって固定されると、ベースカバー14(アッパカバー14U)の上壁14a-uが、シール部材40のシール基部40aと係合片40bとをボス部9の上面に押し付けるようになる。この結果、シール部材40のシール基部40aと係合片40bとは、ミラーベース13とベースカバー14とによって挟持固定される。
【0041】
<実施形態の効果>
以上のように、本実施形態のドアミラー10では、シール部材40の環状シール部40cが、ベースカバー14の開口部8を通してドアミラー本体12の側に延び、ドアミラー本体12のミラーハウジング15の下面に摺動自在に当接している。このため、シール部材40は、ベースカバー14とミラーハウジング15(ドアミラー本体12)の間の隙間を閉塞し、車両走行時にベースカバー14とドアミラー本体12の隙間に走行風が進入して、風切り音が発生するのを抑制することができる。
【0042】
また、本実施形態のドアミラー10は、シール部材40の被固定部(シール基部40aおよび係合片40b)が剛体であるミラーベース13とベースカバー14とに挟持されることから、ドアミラー本体12の回転に伴って環状シール部40cに外力が加わることがあっても、シール部材40の浮き上がりや位置ずれを抑制することができる。
したがって、本実施形態のドアミラー10を採用した場合には、シール部材40による風切り音の発生防止効果を長期にわたって安定して得ることができる。
【0043】
さらに、本実施形態のドアミラー10では、被固定部である環状のシール基部40aが環状シール部40cに連設され、そのシール基部40aがベースカバー14の開口部8の周域に環状に密接している。このため、環状シール部40cに当たった走行風が、ベースカバー14の開口部8と環状シール部40cの隙間を通ってベースカバー14の内側に進入するのをシール基部40aによって規制することができる。したがって、本構成を採用した場合には、走行時における風切り音の発生をより抑制することができる。
【0044】
また、本実施形態のドアミラー10では、シール部材40の環状のシール基部40aに係合片40bが突設され、その係合片40bが、ミラーベース13のボス部9の外周面に係合されている。このため、本構成を採用した場合には、ミラーベース13に対するシール基部40aの径方向の位置ずれを防止することができる。
【0045】
さらに、本実施形態のドアミラー10の場合、環状のシール基部40aに係合片40bが偶数個突設され、対を成す係合片40bがシール基部40aの周上の径方向で対向する位置に配置されている。このため、シール基部40aの径方向の位置ずれを、各対を成す係合片40bによって効率良く抑制することができる。また、本構成では、シール基部の外周部に環状に係合片を設ける場合に比較し、係合片40bの占有するベースカバー14上のスペースを小さくすることができるうえ、シール部材40全体の容積を小さくして部材コストを削減することができる。さらに、シール部材40をボス部9に装着する際の抵抗を小さくすることができるため、シール部材40の装着作業性も良好になる。
【0046】
また、本実施形態のドアミラー10では、ベースカバー14に突設された係止突起43が、シール部材40の係合片40bに突起受容部として設けられた貫通孔42に挿入されている。このため、本構成を採用した場合には、ベースカバー14に対するシール部材40の周方向の位置ずれを規制することができる。
【0047】
特に、本実施形態のドアミラー10は、シール部材40の係合片40bに、上下方向に貫通する貫通孔42が形成され、貫通孔42を貫通したベースカバー14側の係止突起43の先端が、ボス部9上の凹部44に嵌入されている。このため、係止突起43の上下がベースカバー14側とミラーベース13側(ボス部9側)とに両持ちで支持される。したがって、本構成を採用した場合には、シール部材40の周方向の位置ずれを高い剛性をもって規制でき、シール部材40を所望の設置位置に長期にわたって維持することができる。
【0048】
また、本実施形態のドアミラー10では、シール部材40のシール基部40a上の、環状シール部40cから径方向外側に離間した位置に、環状突起47が突設され、その環状突起47がベースカバー14側の段部48に嵌合されて、段部48の内周壁48aと上部底壁48bとによって径方向と上下方向(軸方向)の変位を規制されている。したがって、この構成を採用した場合には、シール部材40の径方向と上下方向の位置ずれも効率良く規制することができる。
【0049】
なお、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更が可能である。
【符号の説明】
【0050】
8…開口部
10…ドアミラー
11…鏡体
12…ドアミラー本体
13…ミラーベース
14…ベースカバー
35…支持軸
40…シール部材
40a…シール基部(被固定部)
40b…係合片(被固定部)
40c…環状シール部
42…貫通孔(突起受容部)
43…係止突起
44…凹部
47…環状突起
48a…内周壁(変位規制部)
48b…上部底壁(変位規制部)