IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社リケンCKJVの特許一覧

<>
  • 特許-ろう付管継手及び管材の接合構造 図1
  • 特許-ろう付管継手及び管材の接合構造 図2
  • 特許-ろう付管継手及び管材の接合構造 図3
  • 特許-ろう付管継手及び管材の接合構造 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-16
(45)【発行日】2023-08-24
(54)【発明の名称】ろう付管継手及び管材の接合構造
(51)【国際特許分類】
   B23K 1/18 20060101AFI20230817BHJP
   B23K 35/14 20060101ALI20230817BHJP
   B23K 1/00 20060101ALI20230817BHJP
【FI】
B23K1/18 C
B23K35/14 Z
B23K1/00 330G
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2019130954
(22)【出願日】2019-07-16
(65)【公開番号】P2021013952
(43)【公開日】2021-02-12
【審査請求日】2022-04-20
(73)【特許権者】
【識別番号】513131383
【氏名又は名称】株式会社リケンCKJV
(74)【代理人】
【識別番号】100114074
【弁理士】
【氏名又は名称】大谷 嘉一
(72)【発明者】
【氏名】大橋 一善
(72)【発明者】
【氏名】高橋 宏幸
【審査官】松田 長親
(56)【参考文献】
【文献】実開昭49-107708(JP,U)
【文献】特表2017-536241(JP,A)
【文献】特開2018-176180(JP,A)
【文献】実開昭49-074522(JP,U)
【文献】特開2019-199935(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 1/00-3/08
B23K 31/02
B23K 33/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属製の管材の接合方法であって、一方の管材の端部に他方の管材の端部を挿入するための挿入部を有し、
前記挿入部は前記他方の管材が挿入された状態で当該挿入部の内周面であって、他方の管材の外周面に位置する部位にろう材を予めセットしておくための挿入部の端部から徐々に拡径した拡径部有し、
前記挿入部の内周面に有する拡径部予めろう材をセットし、
前記ろう材は側面に沿ってシームを有するフラックス入り線状ろう材を二重のリング状にしたものであり、
前記他方の管材の端部を前記ろう材の内側に挿入し、加熱すると、前記挿入部の端部と前記他方の管材との隙間からろう材が外部に向けて広がるように、にじみ出すことでろう付け接合することを特徴とする管材の接合方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管材をろう付けにて接合するための管継手及び接合構造に関する。
【背景技術】
【0002】
管材を用いて配管する技術分野においては、いろいろな接合構造が採用されている。
そのうちの1つとして例えば特許文献1には、ろう付けによる熱交換器アルミニウム管の接合方法が開示されている。
同公報に開示する接合構造は、アルミニウム管の端部に拡管部を設けて、この部分に他方の管を挿入するとともに、拡管部の端部に線ろう材を保持させ、バーナートーチにより加熱する技術である。
この場合に、拡管部の端部に線ろう材を保持させるのに予熱が必要であり、熟練した技術が要求されるとともに、ろう材が均一に浸透したか否かの確認が大変である。
【0003】
特許文献2には、第一配管の端部にはんだ接合材を嵌合しておき、このはんだ接合材の内側に沿って、第一配管の端部を摺動させながら第二配管に挿入する技術を開示するが、はんだ接合材を第一配管の端部に嵌合する作業が大変であるとともに、やはり、はんだの溶融浸透の確認が難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-80783号公報
【文献】特許第6338002号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、接合作業が容易で接合信頼性に優れたろう付管継手及び接合構造の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るろう付け管継手は、管材をろう付け接続するためのろう付管継手であって、管材の挿入部と前記挿入部の内周部にろう材が予めセットされており、前記ろう材は側面に沿ってシームを有するフラックス入り線状ろう材であることを特徴とする。
【0007】
本発明の対象となる管材は、ろう付けが可能であれば、その材質に制限はない。
例えば、アルミ管,銅管,SUS管等の金属管が対象になり、同種,異種を問わない。
【0008】
本発明に用いるフラックス入り線状ろう材は、内部にフラックスが充填されたものをいい、線状と表現したのはワイヤー状や帯状等、細長い状態のものをいい、断面形状は円形,長方形等、その形状に制限はない。
側面に沿ってシームを有するとは、内部にフラックスを包み込むように充填したろう材の側部に継ぎ部(シーム)を有し、このシームからもフラックスが溶け出すものをいう。
フラックス入り線状ろう材には、側面に継ぎ部を有しないシームレスのものがあるが、その場合には管継手の内側にプレセットすると、加熱時にろう材の端部からフラックスが溶け出すことになり、管材の外周面に均一に溶け出しにくくなるため、本発明ではシームありのろう材を用いた。
【0009】
本発明においては、ろう材を管材の挿入部の内周部に予めセットしてあることで、接合するための他の管材の端部をこのろう付管継手挿入部に挿入すると、ろう付管継手の挿入部の内周面と挿入された他の管材の外周面との間に、フラックス入りろう材が位置することになり、この部分を加熱するだけでろう付けが可能になる点に特徴がある。
そこで、管材の挿入部はろう材を予めセットしておくための拡径部又はリング状の凹部を有するのが好ましい。
このようにすると、管継手の挿入部の内周面に沿ってろう材をリング状にセットしておくことが容易になる。
【0010】
本発明に係るこのような構造は、管材同士を直接接合する場合にも適用できる。
そこで本発明は、金属製の管材の接合構造であって、一方の管材の端部に他方の管材の端部を挿入するための挿入部を有し、前記挿入部の内周部にろう材が予めセットされており、前記ろう材は側面に沿ってシームを有するフラックス入り線状ろう材であり、前記他方の管材の端部を前記一方の管材の挿入部に挿入し、加熱することでろう付け接合されている形態も含まれる。
この場合に、挿入部は予めろう材をセットするための拡径部又はリング状の凹部を有するのが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明においては、接合するための他方の管材の端部を管継手又は一方の管材の端部に設けた挿入部に挿入して外部から加熱すると、フラックスがろう材のシームから接合面の全周にわたって溶け出すとともに、溶融されたろう材が毛細管現象により、接合部に沿って内部側から挿入部の外側に向けてしみ出してくるので、ろう接状況が均一であるか否かが容易に確認できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明に係るろう付管継手を用いた接合構造例を示す。(a)は管継手にろう材をセットする前、(b)はろう材を管継手の挿入部の内周面に予めセットした状態、(c)は加熱機を用いて加熱する状態、(d)はろう接が完了した状態を示す。
図2】ソケット型のろう付管継手の例を示す。(a)はろう材を予めセットしてある状態を示し、(b)は管材を管継手に挿入した状態、(c)はろう接が完了した状態を示す。
図3】(a),(b)はろう材の外観図、(c)は部分拡大図、(d)は(a)のA-A線断面図を示す。
図4】ろう接の状態の写真を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明に係るろう付管継手の構造例を以下図に基づいて説明するが、これに限定されるものではなく、管材同士の直接的な接合構造にも適用される。
【0014】
本発明に係るろう付管継手は、ろう付け接合に用いる管継手をいい、図1に示すように管継手11は金属製であり、接合する管材1の端部を挿入するための挿入部11aを有し、挿入部11aであって管継手11の内側に拡径部11bを形成してある。
ろう材12は、線状ろう材を所定の長さに切断し、図3に示すようにリング状にして使用する。
図3に示したろう材12は、図3(d)に(a)のA-A線断面図を示すように、長方形の断面形状であり、内部にフラックス12cが充填され、帯状のろう材の側面に沿って継ぎ部としてのシーム12aを有する。
本実施例では、図3(b)に示すようにリング状にして使用することから、突き合せ部12bに隙間ができることから、上下二重にして使用する例となっているが、一重でもよい。
また、ろう材の断面形状もこれに限定されるものではなく、円形状等であってもよい。
【0015】
図1(b)に示すように、リング状に曲げたろう材12を管継手11の挿入部11aの内側であって、拡径部11bの内周面に沿ってろう材12を拡径するように押し付けることで、予めセットしておくことができる。
図1(c)に示すように、管材1の端部を挿入部11aに挿入すると、管継手11の挿入部11aの内側であって、管材1の外周面に位置する部位にろう材12が全周にわたって配置されることになる。
本実施例では、管材1の先端部1aが突き当たるストッパー部11cを設けた例になっている。
この状態で、加熱機20を接合部の外周にわたって配置し、外部から所定の温度まで加熱すると、まず図3(d)に示すようにシーム12aから管材1の接合部全周にわたってフラックスが溶け出すとともに、ろう材が溶融し、図1(d)に示すように管継手11の内周面と管材1の外周面との間に拡散浸透し、管継手11の挿入端部11dと管材1との隙間から、ろう材が外部に向けて広がるように、にじみ出す。
この状態を図4の写真に示す。
図4の写真は、半割にして内部及び断面を観察したものである。
ろう材が均一に拡散し、接合されているのが確認できる。
【0016】
図1(c)に二点鎖線で示した加熱機20は、図示を省略したが半割状に開閉可能になっていて、内部に電気式のヒーター21を設けた例になっている。
加熱手段はバーナー等でもよいが、このように電気式の加熱機にすると、温度設定が容易である。
ろう材を溶融させるための加熱手段としては、従来から一般的に行われているバーナーによる火炎加熱でもよいが、より均一に加熱でき、加熱温度や加熱時間を管理するのが容易である点では、電熱コイル,シーズヒーター,高周波加熱等の電気制御式の加熱手段が好ましい。
【0017】
図2は、ソケット型のろう付管継手の例を示し、管継手11Aの両側に挿入部11aを有し、拡径部11bよりも奥側に縮径部11eを有し、この部分に管材1の先端部が突き当たる例になっている。
本発明に係るろう付管継手は、ソケット型に限定されるものではなく、エルボ型,チーズ型等、各種形状が採用され、段付型でもよい。
【符号の説明】
【0018】
11 管継手
11a 挿入部
11b 拡径部
12 ろう材
12a シーム
20 加熱機
21 ヒーター
図1
図2
図3
図4