IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ リケンテクノス株式会社の特許一覧

特許7333161エラストマー組成物、水架橋性エラストマー組成物、及びその製造方法
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-16
(45)【発行日】2023-08-24
(54)【発明の名称】エラストマー組成物、水架橋性エラストマー組成物、及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08L 23/12 20060101AFI20230817BHJP
   C08J 3/24 20060101ALI20230817BHJP
   C08K 5/14 20060101ALI20230817BHJP
   C08L 23/16 20060101ALI20230817BHJP
【FI】
C08L23/12
C08J3/24
C08K5/14
C08L23/16
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2017206290
(22)【出願日】2017-10-25
(65)【公開番号】P2019077801
(43)【公開日】2019-05-23
【審査請求日】2020-05-11
【審判番号】
【審判請求日】2021-10-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000250384
【氏名又は名称】リケンテクノス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【弁理士】
【氏名又は名称】反町 洋
(72)【発明者】
【氏名】山 本 晃 市
【合議体】
【審判長】近野 光知
【審判官】藤原 浩子
【審判官】瀧澤 佳世
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-145370(JP,A)
【文献】特開2016-74853(JP,A)
【文献】特開2003-183450(JP,A)
【文献】特開2003-335908(JP,A)
【文献】特開2012-117018(JP,A)
【文献】国際公開第2016/056635(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
C08J 3/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)(A)第1のプロピレン系樹脂 10~80質量部;
(B)エチレン・α-オレフィン系重合体(但し、前記(A)を除く。) 20~90質量部;
(E)架橋助剤 前記(A)及び(B)からなる組成物100質量部に対して0.1~6質量部;
(F)シランカップリング剤 前記(A)及び(B)からなる組成物100質量部に対して1~7質量部;及び
(G)無機フィラー 前記(A)及び(B)からなる組成物100質量部に対して0~50質量部の全量と、
(C)非芳香族系ゴム用軟化剤 前記(B)100質量部に対して60~150質量部のうち、0ないし全量と、
を溶融混練する工程;
(2)前記工程(1)で得られた組成物に、前記(D)有機過酸化物 前記(A)及び(B)からなる組成物100質量部に対して0.5~3質量部を添加して、動的に熱処理する工程;
(3)前記工程(2)で得られた組成物に、前記工程(1)で添加した(C)の残分を配合する工程;及び
(4)前記工程(3)において得られたエラストマー組成物100質量部に対して、前記(H)シラノール縮合触媒 0.005~0.3質量部を配合する工程;
を含む、水架橋性エラストマー組成物の製造方法。
【請求項2】
前記工程(3)において、前記工程(1)で添加した(C)の残分と、(I)第2のプロピレン系樹脂とを配合する、請求項1に記載の水架橋性エラストマー組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エラストマー組成物に関する。更に詳しくは、従来のプラスチック加工設備を使用して熱可塑性樹脂のように成形加工することができ、かつ、圧縮永久歪みが加硫ゴムのように非常に小さいエラストマー組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ゴム弾性を有する軟質材料であって、熱可塑性樹脂と同様の成形加工性を有するエラストマー組成物が、加硫ゴムを代替する材料として、自動車部品、家電部品、電線被覆、医療用部品、履物、及び雑貨などの分野で多用されている。また近年、より厳しい環境で使用される分野への適用が盛んに試みられており、圧縮永久歪みが加硫ゴムのように非常に小さいエラストマー組成物が求められている。この課題に対して、様々なエラストマー組成物が提案されているが、十分に満足できるレベルには達していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2002-322342号公報
【文献】特開2003-183450号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、従来のプラスチック加工設備を使用して熱可塑性樹脂のように成形加工することができ、圧縮永久歪みが加硫ゴムのように非常に小さく、耐油性が高く、かつ、外観も良好な成形物が得られるエラストマー組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、鋭意研究した結果、特定のエラストマー組成物により、上記課題を達成できることを見出した。
【0006】
すなわち、本発明は、
(A)第1のプロピレン系樹脂 10~80質量部;
(B)エチレン・α-オレフィン系共重合体 20~90質量部;
(C)非芳香族系ゴム用軟化剤 前記(B)100質量部に対して60~150質量部;
(D)有機過酸化物 前記(A)及び(B)からなる組成物100質量部に対して0.5~3質量部;
(E)架橋助剤 前記(A)及び(B)からなる組成物100質量部に対して0.1~6質量部;
(F)シランカップリング剤 前記(A)及び(B)からなる組成物100質量部に対して1~7質量部;及び
(G)無機フィラー 前記(A)及び(B)からなる組成物100質量部に対して0~50質量部;
を含むエラストマー組成物である。
【0007】
第2の発明は、
(1)前記(A)第1のプロピレン系樹脂、前記(B)エチレン・α-オレフィン系重合体、前記(E)架橋助剤、前記(F)シランカップリング剤、及び前記(G)無機フィラーの全量と、前記(C)非芳香族系ゴム軟化剤のうちの0ないし全量と、を溶融混練し、
(2)前記工程(1)で得られた組成物に、前記(D)有機過酸化物の全量を添加して、動的に熱処理し、
(3)前記工程(2)で得られた組成物に、前記工程(1)で添加した(C)の残分を配合して得られる、第1の発明に記載のエラストマー組成物である。
【0008】
第3の発明は、前記工程(3)において、前記工程(1)で添加した(C)の残分と、(I)第2のプロピレン系樹脂とが配合される、第2の発明に記載のエラストマー組成物である。
【0009】
第4の発明は、表面の算術平均粗さRaが、0.5~4.0μmである、第1の発明~第3の発明に記載のエラストマー組成物である。
【0010】
第5の発明は、更に(H)シラノール縮合触媒を、第1の発明~第4の発明のいずれかに記載のエラストマー組成物100質量部に対して、0.005~0.3質量部含む、水架橋性エラストマー組成物である。
【0011】
第6の発明は、第1の発明~第4の発明のいずれかに記載のエラストマー組成物、または第5の発明に記載の水架橋性エラストマー組成物を含む成形物である。
【0012】
第7の発明は、
(1)(A)第1のプロピレン系樹脂 10~80質量部;
(B)エチレン・α-オレフィン系重合体 20~90質量部;
(E)架橋助剤 前記(A)及び(B)からなる組成物100質量部に対して0.1~6質量部;
(F)シランカップリング剤 前記(A)及び(B)からなる組成物100質量部に対して1~7質量部;及び
(G)無機フィラー 前記(A)及び(B)からなる組成物100質量部に対して0~50質量部の全量と、
前記(C)芳香族系ゴム用軟化剤 前記(B)100質量部に対して60~150質量部のうち、0ないし全量と、
を溶融混練する工程;
(2)前記工程(1)で得られた組成物に、前記(D)有機過酸化物 前記(A)及び(B)からなる組成物100質量部に対して0.2~3質量部を添加して、動的に熱処理する工程;
(3)前記工程(2)で得られた組成物に、前記工程(1)で添加した(C)の残分を配合する工程;
(4)前記工程(3)において得られたエラストマー組成物100質量部に対して、前記(H)シラノール縮合触媒 0.005~0.3質量部を配合する工程;
(5)前記工程(4)において前記(H)シラノール縮合触媒の配合されたエラストマー組成物を、成形物に成形する工程;及び
(6)前記工程(5)において成形された成形物を温水で処理する工程;
を含む成形物の製造方法である。
【0013】
第8の発明は、前記工程(3)において、前記工程(1)で添加した(C)の残分と、(I)第2のプロピレン系樹脂とを配合する、第7の発明に記載の成形物の製造方法である。
【発明の効果】
【0014】
本発明のエラストマー組成物は、従来のプラスチック加工設備を使用して熱可塑性樹脂のように成形加工することができ、かつ、圧縮永久歪みが加硫ゴムのように非常に小さく、耐油性に優れている。また、有機過酸化物を、押出機の中間位置にフィードすることにより、有機過酸化物を多量に入れた場合であっても架橋ブツ(架橋ゲル)の発生を抑制できることから、成形物の外表面が滑らかであり、外観が良好である。そのため加硫ゴムを代替する材料として、自動車用パッキンや建材用パッキンなどに好適に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本明細書において「樹脂」の用語は、2以上の樹脂を含む樹脂混合物や、樹脂以外の成分を含む樹脂組成物をも含む用語として使用する。数値範囲に係る「以上」の用語は、ある数値又はある数値超の意味で使用する。例えば、20%以上は、20%又は20%超を意味する。数値範囲に係る「以下」の用語は、ある数値又はある数値未満の意味で使用する。例えば、20%以下は、20%又は20%未満を意味する。更に数値範囲に係る「~」の記号は、ある数値、ある数値超かつ他のある数値未満、又は他のある数値の意味で使用する。ここで、他のある数値は、ある数値よりも大きい数値とする。例えば、10~90%は、10%、10%超かつ90%未満、又は90%を意味する。
【0016】
本発明のエラストマー組成物は、(A)第1のプロピレン系樹脂、(B)エチレン・α-オレフィン共重合体、(C)非芳香族系ゴム用軟化剤、(D)有機過酸化物、(E)架橋助剤、及び(F)シランカップリング剤を含む。本発明のエラストマー組成物は、好ましくは更に(G)無機フィラーを含む。本発明のエラストマー組成物について、温水による後処理、所謂水架橋処理を行う場合には、更に(H)シラノール縮合触媒を含むことが好ましい。なお本明細書では、エラストマー組成物であって、上記(H)シラノール縮合触媒を含むものは、「水架橋性エラストマー組成物」と呼ぶことがある。本発明のエラストマー組成物について、サイドフィードを行う場合には、更に(I)第2のプロピレン系樹脂を含むことが好ましい。以下、各成分について説明する。
【0017】
(A)第1のプロピレン系樹脂:
上記成分(A)はプロピレン系樹脂である。上記成分(A)は耐熱性、成形加工性に寄与する。
【0018】
上記プロピレン系樹脂は、プロピレンを主モノマーとする重合体であり、プロピレン単独重合体、プロピレンと他の少量のα-オレフィンコモノマーとのランダム共重合体、及びプロピレンとα-オレフィンコモノマーとのブロック共重合体をあげることができる。
【0019】
上記α-オレフィンコモノマーとしては、例えば、エチレン、1-ブテン、2-メチル-1-プロペン、1-ペンテン、2-メチル-1-ブテン、3-メチル-1-ブテン、1-ヘキセン、2-エチル-1-ブテン、2,3-ジメチル-1-ブテン、2-メチル-1-ペンテン、3-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、3,3-ジメチル-1-ブテン、1-ヘプテン、メチル-1-ヘキセン、ジメチル-1-ペンテン、エチル-1-ペンテン、トリメチル-1-ブテン、メチルエチル-1-ブテン、1-オクテン、メチル-1-ペンテン、エチル-1-ヘキセン、ジメチル-1-ヘキセン、プロピル-1-ヘプテン、メチルエチル-1-ヘプテン、トリメチル-1-ペンテン、プロピル-1-ペンテン、ジエチル-1-ブテン、1-ノネン、1-デセン、1-ウンデセン、及び1-ドデセンなどをあげることができる。これらの中で、エチレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテンが好ましく、エチレン、1-ブテン、及び1-ヘキセンがより好ましい。上記α-オレフィンコモノマーとしては、これらの1種又は2種以上の混合物を用いることができる。
【0020】
上記プロピレンと他の少量のα-オレフィンコモノマーとのランダム共重合体の具体例としては、例えば、プロピレン・エチレンランダム共重合体、プロピレン・1-ブテンランダム共重合体、プロピレン・1-ヘキセンランダム共重合体、プロピレン・1-オクテンランダム共重合体、プロピレン・エチレン・1-ブテンランダム共重合体、プロピレン・エチレン・1-ヘキセンランダム共重合体、及びプロピレン・エチレン・1-オクテンランダム共重合体などをあげることができる。これらの中で、プロピレン・エチレンランダム共重合体、プロピレン・1-ブテンランダム共重合体、プロピレン・1-ヘキセンランダム共重合体、プロピレン・エチレン・1-ブテンランダム共重合体、及びプロピレン・エチレン・1-ヘキセンランダム共重合体が好ましい。
【0021】
上記プロピレンとα-オレフィンコモノマーとのブロック共重合体は、結晶性ポリプロピレン成分と、プロピレンとα-オレフィンコモノマーとの共重合ゴム成分とから構成される共重合体である。上記結晶性ポリプロピレン成分は、プロピレン単独重合体又はプロピレンと他の少量のα-オレフィンコモノマーとのランダム共重合体から構成される。
【0022】
上記成分(A)としては、耐熱性の観点から、プロピレン単独重合体、又はプロピレンとα-オレフィンコモノマーとのブロック共重合体であって結晶性ポリプロピレン成分がプロピレン単独重合体であるものが好ましい。
【0023】
上記成分(A)としては、これらの1種又は2種以上の混合物を用いることができる。
【0024】
上記成分(A)の株式会社パーキンエルマージャパンのDiamond DSC型示差走査熱量計を使用し、230℃で5分間保持し、10℃/分で-10℃まで冷却し、-10℃で5分間保持し、10℃/分で230℃まで昇温するプログラムで測定されるセカンド融解曲線(最後の昇温過程で測定される融解曲線)において、最も高い温度側に現れるピークのピークトップ融点は、耐熱性の観点から、好ましくは150℃以上、より好ましくは160℃以上であってよい。ピークトップ融点の上限は特にないが、ポリプロピレン系樹脂であるから、せいぜい167℃程度であろう。
【0025】
上記成分(A)の、JIS K 7210:1999に準拠し、230℃、21.18Nの条件で測定したメルトマスフローレートは、成形加工性、及び圧縮永久歪みの観点から、好ましくは0.1~1000g/10分、より好ましくは0.3~100g/10分であってよい。
【0026】
上記成分(A)の配合量は、下記成分(B)90~20質量部に対して、通常10~80質量部であり、成分(A)及び成分(B)の合計は、100質量部である。上記成分(A)の配合量は、成分(A)及び下記成分(B)からなる組成物100質量部に対して、柔軟性及び圧縮永久歪みの観点から、通常80質量部以下、好ましくは60質量部以下、より好ましくは50質量部以下である。一方、架橋ブツの発生を抑制し、機械物性、耐熱性、及び成形加工性を良好にする観点から、通常10質量部以上、好ましくは15質量部以上、より好ましくは20質量部以上である。なお、成分(A)及び下記成分(B)の配合量は、エラストマー組成物の用途に応じて適宜設定することができる。
【0027】
また、後記するように、本発明においては、各成分を溶融混練してエラストマー組成物を得る際に、溶融混練された組成物に、(I)第2のポリプロピレン系樹脂を配合してもよい。例えば二軸押出機等を用いて各成分の溶融混練を行う場合には、(I)第2のポリプロピレン系樹脂を押出機の後半部分からサイドフィードすることにより配合することができる。
【0028】
配合される(I)第2のポリプロピレン系樹脂としては、上記した成分(A)である第1のポリプロピレン系樹脂と同様のものを使用することができる。配合される(I)第2のポリプロピレン系樹脂の量は、成形物の使用用途によって適宜調整することができる。好ましい(I)第2のポリプロピレン系樹脂の配合量は、成分(A)第1のプロピレン系樹脂及び成分(B)エチレン・α-オレフィン系共重合体からなる組成物100質量部に対して、好ましくは5~150質量部であり、より好ましくは10~100質量部である。
【0029】
(B)エチレン・α-オレフィン共重合体:
上記成分(B)はエチレンとα-オレフィンを主体とする共重合体である。上記成分(B)は柔軟性を付与するとともに、圧縮永久歪みの向上(圧縮永久歪みを小さくすること)に寄与する。
【0030】
上記α-オレフィンとしては、例えば、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、2-メチル-1-プロペン、2-メチル-1-ブテン、3-メチル-1-ブテン、2-エチル-1-ブテン、2,3-ジメチル-1-ブテン、3-メチル-1-ペンテン、及び4-メチル-1-ペンテンなどをあげることができる。これらの中で、炭素数3~10のα-オレフィンが好ましい。上記α-オレフィンとしては、これらの1種又は2種以上の混合物を用いることができる。
【0031】
上記成分(B)は、エチレンとα-オレフィンの他に、これらと共重合可能なモノマーに由来する構造単位を含むものであってよい。
【0032】
上記共重合可能なモノマーとしては、例えば、非共役ジエン系モノマーなどをあげることができる。上記非共役ジエン系モノマーとしては、例えば、5-エチリデン-2-ノルボルネン(ENB)、1,4-ヘキサジエン、5-メチレン-2-ノルボルネン(MNB)、1,6-オクタジエン、5-メチル-1,4-ヘキサジエン、3,7-ジメチル-1,6-オクタジエン、1,3-シクロペンタジエン、1,4-シクロヘキサジエン、テトラヒドロインデン、メチルテトラヒドロインデン、ジシクロペンタジエン、5-イソプロピリデン-2-ノルボルネン、5-ビニル-ノルボルネン、ジシクロオクタジエン、メチレンノルボルネン、エチリデンノルボルネン、ノルボルナジエン、1,2-ブタジエン、及び1,4-ペンタジエンなどをあげることができる。上記共重合可能なモノマーとしては、これらの1種又は2種以上の混合物を用いることができる。
【0033】
上記成分(B)の具体例としては、例えば、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、エチレン・プロピレン共重合体ゴム、エチレン・プロピレン・非共役ジエン共重合体ゴム、エチレン・1-ブテン共重合体ゴム、エチレン・1-ブテン・非共役ジエン共重合体ゴム、エチレン・1-オクテン共重合体ゴム、エチレン・1-オクテン・非共役ジエン共重合体ゴム、エチレン・プロピレン・1-ブテン共重合体ゴム、及びエチレン・プロピレン・1-オクテン共重合体ゴムなどをあげることができる。これらの中で、柔軟性の点から、エチレン・1-オクテン共重合体ゴム、エチレン・プロピレン・非共役ジエン共重合体ゴム(EPDM)が好ましい。上記成分(B)としては、これらの1種又は2種以上の混合物を用いることができる。
【0034】
上記成分(B)中のエチレンに由来する構成単位の含有量は、エチレンと共重合されるα-オレフィン等の種類や分子構造(直鎖状であるか、長鎖分岐を有するかなど)にもよるが、好ましくは50~90質量%、より好ましくは60~85質量%であってよい。
【0035】
上記成分(B)のASTM D-1646に準拠し、温度125℃で測定したムーニー粘度ML1+4は、特に制限されないが、圧縮永久歪みの観点から、好ましくは10以上、より好ましくは20以上であってよい。一方、成形加工性の観点から、好ましくは250以下、より好ましくは150以下であってよい。
【0036】
上記成分(B)のJIS K 7112:1999に準拠して測定した密度は、好ましくは850~900Kg/m、より好ましくは855~890Kg/mであってよい。
【0037】
成分(B)の配合量は、上記したとおり、上記成分(A)と成分(B)との合計量が100質量部となるように、上記成分(A)の配合量に応じて適宜設定することができる。
【0038】
(C)非芳香族系ゴム用軟化剤:
上記成分(C)は非芳香族系ゴム用軟化剤である。上記成分(C)は、成形加工性、及び柔軟性を向上させる働きをする。
【0039】
上記非芳香族系ゴム用軟化剤は、非芳香族系の鉱物油(石油等に由来する炭化水素化合物)又は合成油(合成炭化水素化合物)であり、通常、常温では液状又はゲル状若しくはガム状である。ここで非芳香族系とは、鉱物油については、下記の区分において芳香族系に区分されない(芳香族炭素数が30%未満である)ことを意味する。合成油については、芳香族モノマーを使用していないことを意味する。
【0040】
ゴム用軟化剤として用いられる鉱物油は、パラフィン鎖、ナフテン環、及び芳香環の何れか1種以上の組み合わさった混合物であって、ナフテン環炭素数が30~45%のものはナフテン系、芳香族炭素数が30%以上のものは芳香族系と呼ばれ、ナフテン系にも芳香族系にも属さず、かつパラフィン鎖炭素数が全炭素数の50%以上を占めるものはパラフィン系と呼ばれて区別されている。
【0041】
上記成分(C)としては、例えば、直鎖状飽和炭化水素、分岐状飽和炭化水素、及びこれらの誘導体などのパラフィン系鉱物油;ナフテン系鉱物油;水素添加ポリイソブチレン、ポリイソブチレン、及びポリブテンなどの合成油;などをあげることができる。上記成分(C)の市販例としては、日本油脂株式会社のイソパラフィン系炭化水素油「NAソルベント(商品名)」、出光興産株式会社のn-パラフィン系プロセスオイル「ダイアナプロセスオイルPW-90(商品名)」及び「ダイアナプロセスオイルPW-380(商品名)」、出光石油化学株式会社の合成イソパラフィン系炭化水素「IP-ソルベント2835(商品名)」、及び三光化学工業株式会社n-パラフィン系プロセスオイル「ネオチオゾール(商品名)」などをあげることができる。これらの中で、相容性の観点から、パラフィン系鉱物油が好ましく、芳香族炭素数の少ないパラフィン系鉱物油がより好ましい。また取扱い性の観点から、室温で液状であるものが好ましい。上記成分(C)としては、これら1種以上を用いることができる。
【0042】
上記成分(C)は、耐熱性及び取扱い性の観点から、JIS K 2283:2000に準拠し測定された37.8℃における動的粘度が好ましくは20~1000cStであってよい。また取扱い性の観点から、JIS K 2269:1987に準拠し測定された流動点が好ましくは-25~-10℃であってよい。更に安全性の観点から、JIS K 2265:2007に準拠し測定された引火点(COC)が好ましくは170~300℃であってよい。
【0043】
上記成分(C)の配合量は、上記成分(B)100質量部に対して、通常60~150質量部、好ましくは70~140質量部、より好ましくは80~130質量部である。上記成分(C)の配合量は、上記成分(B)100質量部に対して、柔軟性の観点から、通常60質量部以上、好ましくは70質量部以上、より好ましくは80質量部以上である。一方、ブリードアウトの発生を抑制する観点から、通常150質量部以下、好ましくは140質量部以下、より好ましくは130質量部以下である。
【0044】
(D)有機過酸化物:
上記成分(D)は有機過酸化物である。上記成分(D)は、溶融混練時にラジカルを発生せしめ、そのラジカルが連鎖的に反応することにより、上記成分(B)を架橋せしめ、良好な(非常に小さい)圧縮永久歪みを実現させ、同時に成形物の耐油性も改善する働きをする。そのため、圧縮永久歪みや耐油性を改善するためには、有機過酸化物の配合量を増加させる必要がある。しかしながら、有機過酸化物の配合量を増やすと、成形物の表面に架橋ブツが発生したり成形性が悪化するため、従来技術では、表面が滑らかな成形物を得るためには、有機過酸化物の配合量を抑える必要があり、圧縮永久歪みや耐油性にも優れる成形物を得ることが困難であった。本発明においては、後記するように、上記成分(A)及び成分(B)、(E)架橋助剤、(F)シランカップリング剤、並びに、所望により(G)無機フィラーの各成分を混合し、これらの各成分が十分に溶融混練された状態で、成分(D)である有機過酸化物を配合する。そのため、各成分が十分に溶融混練しないうちに成分(B)と(D)有機過酸化物とが架橋反応してしまうのを防止でき、その結果、圧縮永久歪みが加硫ゴムのように非常に小さく、耐油性が高く、かつ、外観も良好な成形物を得ることができる。
【0045】
上記成分(D)としては、例えば、ジクミルパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ジ-(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキシン-3、1,3-ビス(t-ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、n-ブチル-4,4-ビス(t-ブチルパーオキシ)バレレート、ベンゾイルパーオキサイド、p-クロロベンゾイルパーオキサイド、2,4-ジクロロベンゾイルパーオキサイド、t-ブチルパーオキシベンゾエート、t-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、ジアセチルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、及びt-ブチルクミルパーオキサイドなどをあげることができる。上記成分(D)としては、これらの1種以上を用いることができる。
【0046】
上記成分(D)としては、これらの中で、組成物の臭気性、着色性、及びスコーチ安全性の観点から、2,5-ジメチル-2,5-ジ-(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、及びジクミルパーオキサイドが好ましい。
【0047】
上記成分(D)の市販品としては、例えば、日本油脂株式会社の「パーヘキサ 25B(商品名)」、及び「パークミル D(商品名)」などをあげることができる。
【0048】
上記成分(D)の配合量は、上記成分(A)と(B)の合計(言い換えると、上記成分(A)と(B)からなる組成物。)100質量部に対して、通常0.5~3質量部、好ましくは0.6~2.5質量部、より好ましくは0.7~2質量部である。上記成分(D)の配合量は、上記成分(A)と(B)の合計100質量部に対して、十分に架橋させ圧縮永久歪を小さくし、耐油性を向上させる観点から、通常0.5質量部以上、好ましくは0.6質量部以上、より好ましくは0.7質量部以上である。一方、ブツ(架橋ゲル)の発生を抑制する観点から、通常3質量部以下、好ましくは2.5質量部以下、より好ましくは2質量部以下である。
【0049】
(E)架橋助剤:
上記成分(E)は、架橋助剤である。上記成分(E)は、上記成分(D)による架橋反応を均一に、かつ効率的にする働きをする。
【0050】
上記成分(E)は、重合性官能基を1分子中に2以上有するモノマーであり、典型的には、例えば、ジビニルベンゼン、及びトリアリルシアヌレートなどの多官能性ビニルモノマー;エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、及びアリル(メタ)アクリレートなどの多官能性(メタ)アクリレートモノマー;などであってよい。本明細書において、(メタ)アクリレートはメタクリレート又はアクリレートの意味である。上記成分(E)としては、これらの1種以上を用いることができる。
【0051】
上記成分(E)の配合量は、上記成分(A)と(B)の合計100質量部に対して、通常0.1~6質量部、好ましくは0.3~5質量部、より好ましくは0.5~4質量部であってよい。上記成分(E)の配合量は、上記成分(E)の使用効果を得る観点から、通常0.1質量部以上、好ましくは0.3質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上であってよい。一方、架橋度を適度な範囲に制御する観点から、通常6質量部以下、好ましくは5質量部以下、より好ましくは4質量部以下であってよい。
【0052】
(F)シランカップリング剤:
成分(F)はシランカップリング剤である。シランカップリング剤は、加水分解性基(例えば、メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基;アセトキシ基等のアシルオキシ基;クロロ基等のハロゲン基など)、及び有機官能基(例えば、アミノ基、ビニル基、エポキシ基、メタクリロキシ基、アクリロキシ基、イソシアネート基など)の少なくとも2種類の異なる反応性基を有するシラン化合物である。上記成分(F)は、上記成分(B)を架橋せしめ、良好な圧縮永久歪みを実現させる働きをする。また上記成分(F)は、上記成分(B)にグラフトし、温水による後処理、所謂水架橋処理の際の架橋点を形成する働きをする。
【0053】
上記成分(F)としては、例えば、ビニル系シランカップリング剤(ビニル基と加水分解性基を有するシラン化合物)、メタクリル系シランカップリング剤(メタクリロキシ基と加水分解性基を有するシラン化合物)、アクリル系シランカップリング剤(アクリロキシ基と加水分解性基を有するシラン化合物)、エポキシ系シランカップリング剤(エポキシ基と加水分解性基を有するシラン化合物)、アミノ系シランカップリング剤(アミノ基と加水分解性基を有するシラン化合物)、及びメルカプト系シランカップリング剤(メルカプト基と加水分解性基を有するシラン化合物)などをあげることができる。上記成分(F)としては、これらの1種以上を用いることができる。上記成分(F)としては、これらの中で、耐加熱変形性の観点から、ビニル系シランカップリング剤が好ましい。
【0054】
上記ビニル系シランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(βメトキシエトキシ)シラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニル-トリス(n-ブトキシ)シラン、ビニル-トリス(n-ペントキシ)シラン、ビニル-トリス(n-ヘキソキシ)シラン、ビニル-トリス(n-ヘプトキシ)シラン、ビニル-トリス(n-オクトキシ)シラン、ビニル-トリス(n-ドデシルオキソ)シラン、ビニル-ビス(n-ブトキシ)メチルシラン、ビニル-ビス(n-ペントキシ)メチルシラン、ビニル-ビス(n-ヘキソキシ)メチルシラン、ビニル-(n-ブトキシ)ジメチルシラン、及びビニル-(n-ペントキシ)ジメチルシランなどをあげることができる。
【0055】
上記成分(F)の配合量は、上記成分(A)と(B)の合計100質量部に対して、通常1~7質量部、好ましくは1.5~6.5質量部、より好ましくは2~6質量部である。上記成分(F)の配合量は、上記成分(A)と(B)の合計100質量部に対して、十分に架橋させ圧縮永久歪を小さくする観点から、通常1質量部以上、好ましくは1.5質量部以上、より好ましくは2質量部以上である。一方、配合量とその効果のバランス(効率)の観点から、通常7質量部以下、好ましくは6.5質量部以下、より好ましくは6質量部以下であってよい。
【0056】
(G)無機フィラー:
上記成分(G)は無機フィラーである。上記成分(G)は任意成分である。上記成分(A)、及び上記成分(B)は通常ペレット状のものが市販されている。上記成分(C)、上記成分(D)、上記成分(E)、及び上記成分(F)はしばしば常温で液状である。そのため本発明のエラストマー組成物を生産する際には、ペレット状成分と液状成分との分離・不均一化を抑制・防止するため、液状成分は液体添加装置を使用して溶融混練装置に投入するのが通常であるところ、上記成分(G)を用いることにより、液状成分の一部又は全部を、液体添加装置を使用せず、ペレット状成分と共に溶融混練装置に投入することが可能になる。
【0057】
上記成分(G)としては、特に限定されず、任意の無機フィラーを用いることができる。上記成分(G)としては、例えば、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、硫酸バリウム、タルク、マイカ、及びクレーなどをあげることができる。これらの中で、ペレット状成分と液状成分との分離・不均一化を抑制・防止する効果の観点から、炭酸カルシウム、タルク、及び水酸化マグネシウムが好ましい。上記成分(G)としては、これらの1種以上を用いることができる。
【0058】
上記成分(G)の配合量は、任意成分であるから特に制限されないが、上記成分(A)と(B)の合計100質量部に対して、通常0~50質量部、好ましくは1~40質量部、より好ましくは2~30質量部であってよい。上記成分(G)の配合量は、上記成分(G)の使用効果を得る観点から、好ましくは1質量部以上、より好ましくは2質量部以上であってよい。一方、圧縮永久歪、及び機械強度の観点から、通常50質量部以下、好ましくは40質量部以下、より好ましくは30質量部以下であってよい。
【0059】
(H)シラノール縮合触媒:
上記成分(H)はシラノール縮合触媒である。上記成分(H)は温水による後処理、所謂水架橋処理の際に、上記成分(F)が上記成分(B)にグラフトすることにより形成された架橋点の架橋(シラノール間の脱水縮合反応)を促進・触媒し、圧縮永久歪を向上(小さく)せしめ、耐油性を向上させる働きをする。
【0060】
上記成分(H)としては、特に限定されず、任意のシラノール縮合触媒を用いることができる。上記成分(H)としては、例えば、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジオレエート、酢酸第一錫、ナフテン酸鉛、ナフテン酸コバルト、カプリル酸亜鉛、2-エチルヘキサン酸鉄、チタン酸エステル、チタン酸テトラブチルエステル、チタン酸テトラノニルエステル、ビス(アセチルアセトニトリル)ジイソプロピルチタン・エチルアミン錯体、ヘキシルアミン錯体、ジブチルアミン錯体、及びピリジン錯体などをあげることができる。上記成分(H)としてはこれらの1種以上を用いることができる。
【0061】
上記成分(H)の配合量は、任意成分であるから特に制限されないが、本発明のエラストマー組成物100質量部に対して、通常0.005~0.3質量部、好ましくは0.008~0.2質量部であってよい。上記成分(H)の配合量は、上記成分(H)の使用効果を得る観点から、通常0.005質量部以上、好ましくは0.008質量部以上であってよい。一方、配合量とその効果のバランス(効率)の観点から、通常0.3質量部以下、好ましくは0.2質量部以下であってよい。
【0062】
本発明のエラストマー組成物には、本発明の目的に反しない限度において、所望により、上記成分(A)及び上記成分条(B)以外の熱可塑性樹脂、上記成分(C)以外の軟化剤又は可塑剤、顔料、有機フィラー、滑剤、酸化防止剤、熱安定剤、耐候性安定剤、離型剤、帯電防止剤、金属不活性剤、及び界面活性剤などの添加剤を更に含ませることができる。
【0063】
エラストマー組成物の製造方法:
本発明のエラストマー組成物は、上記成分(A)、(B)、(E)、(F)、(G)の全量、上記成分(C)の0~全量、及び所望により用いる任意成分を、任意の溶融混練機を使用して溶融混練し、前記各成分が十分に混合された状態にある組成物中に、上記成分(D)の全量を添加して動的に熱処理を行い、続いて、動的に熱処理された混合物に、成分(C)の残分を配合することにより得ることができる。なお、成分(C)の全量を添加した組成物中に成分(D)を添加した場合には、動的に熱処理された混合物に成分(C)の残量を配合する必要がないことは言うまでもない。本発明においては、上記のようにして有機過酸化物である成分(D)を配合するため、成分(A)である第1のプロピレン系樹脂と成分(B)であるエチレン・α-オレフィン系共重合体とを十分に溶融混練しないうちに成分(B)と(D)有機過酸化物とが架橋反応してしまうのを防止でき、その結果、圧縮永久歪みが加硫ゴムのように非常に小さく、耐油性が高く、かつ、外観も良好な成形物を得ることができる。なお、本発明において、溶融混練、及び動的に熱処理を行うには、例えば、単軸押出機、二軸押出機、ロール、ミキサー、各種のニーダー、及びこれらを組み合わせた装置等を適宜使用できる。また、「動的に熱処理」とは、上記成分(D)有機過酸化物の分解が有意に起こる温度条件において、溶融混練することを意味する。
【0064】
成分(A)、(B)、(E)、(F)、(G)の全量、上記成分(C)の0~全量、及び所望により用いる任意成分を溶融混練する際の温度は、使用する成分の種類及び各成分の配合量により適宜調整できるが、概ね170~290℃であることが好ましく、190~250℃であることが好ましい。溶融温度を上記範囲内とすることにより、各成分が熱によって変性ないし分解するのを抑制しながら、未溶融物のない均一な溶融混合物とすることができる。
【0065】
また、成分(D)である有機過酸化物を配合する際の温度、即ち、動的に熱処理する際の温度は、通常上記成分(D)の1分間半減期温度以上の温度、好ましくは上記成分(D)の1分間半減期温度よりも5℃高い温度以上の温度であってよい。上記溶融混練の時間条件は、通常20秒間以上、好ましくは30秒間以上であってよい。
【0066】
なお、成分(A)、(B)、(E)、(F)、(G)及び(C)を混合して溶融混練する際の成分(C)の配合量は、0~全量(成分(B)100質量部に対して60~150質量部)であってよく、特に制限されるものではない。例えば、最初に各成分を溶融混練する際に成分(C)を全量配合してもよいし、最初の溶融混練時には成分(C)を配合せず、成分(D)を配合して動的に熱処理した後に、成分(C)の全量を配合してもよい。
【0067】
成分(D)の配合は、任意の手段により、上記したような溶融混練装置の投入ゾーンから吐出ゾーンの任意の中間位置で成分(D)をフィードすることにより行うことができるが、成分(A)、(B)、(E)、(F)、(G)の各成分が十分に溶融混練されている状態であれば、フィードする位置は任意であってよい。また、成分(D)の配合後に成分(C)を配合する場合、成分(D)を配合する位置よりも、吐出側の位置で成分(C)を配合する必要がある。
【0068】
上記のようにして得られるエラストマー組成物は、成分(D)の有機過酸化物が(A)及び(B)からなる組成物100質量部に対して0.5~3質量部の割合で含まれるものであるにもかかわらず外観も良好となる。例えば、押出成形機を用いて得られたエラストマー組成物(成形物)の表面は、JIS B 0601:1994に準拠して測定される算術平均粗さRaが0.5~4μmである。一方、成分(A)、(B)、(E)、(F)、(G)、及び(C)を溶融混練する際に成分(D)も配合した場合は、得られるエラストマー組成物の算術平均粗さRaは7μm以上となってしまう。このように、本発明においては、有機過酸化物の多くして、圧縮永久歪みや耐油性を改善しながら、外観も良好な成形物を得ることができる。
【0069】
水架橋性エラストマー組成物
本発明の水架橋性エラストマー組成物は、本発明のエラストマー組成物に成分(H)であるシラノール縮合触媒を配合することにより得ることができる。上記成分(H)は、シラノール縮合触媒を単体でそのまま配合してもよく、任意の樹脂と共に溶融混練した組成物、所謂マスターバッチとして配合してもよい。上記成分(H)は、取扱性の観点から、マスターバッチとして配合することが好ましい。上記マスターバッチに用いる任意の樹脂としては、特に制限されないが、本発明のエラストマー組成物との混和性の観点から、エチレン・α-オレフィン共重合体、プロピレン系樹脂などが好ましい。上記マスターバッチには、本発明の目的に反しない限度において、所望により、軟化剤、可塑剤、顔料、有機フィラー、滑剤、酸化防止剤、熱安定剤、耐候性安定剤、離型剤、帯電防止剤、金属不活性剤、及び界面活性剤などの添加剤を更に含ませることができる。
【0070】
本発明の成形物は、本発明の水架橋性エラストマー組成物を用い、任意の成形機を使用して、任意の形状に成形した後、温水による後処理、所謂水架橋処理を行うことにより得ることができる。上記水架橋処理の温度条件は、通常常温(20℃)~150℃、好ましくは50~90℃であってよい。上記水架橋処理の時間条件は、通常10秒~1週間、好ましくは1分~3日間であってよい。また加圧下に水と接触させることもできる。更に成形物の濡れをよくするため、水は湿潤剤ないし界面活性剤、水溶性有機溶剤その他の添加剤を含むものであってよい。水は、液体の水に限定されず、気体(水蒸気や空気中の水分)などの状態であってもよい。上記成形機としては、例えば、押出成形機、射出成形機、及びブロー成形機などをあげることができる。
【実施例
【0071】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0072】
使用した原材料
【0073】
(A)第1のプロピレン系樹脂:
(A-1)日本ポリプロ株式会社のポリプロピレンホモポリマー「ノバテックEA9(商品名)」、メルトマスフローレート(温度230℃、荷重21.18N)0.5g/10分。
(A-2)サンアロマー株式会社のポリプロピレンホモポリマー「VS200A(商品名)」メルトマスフローレート(温度230℃、荷重21.18N)0.5g/10分。
(A-3)サンアロマー株式会社のポリプロピレンホモポリマー「PM900A(商品名)」メルトマスフローレート(温度230℃、荷重21.18N)30g/10分。
【0074】
(B)エチレン・α-オレフィン共重合体:
(B-1)KUMHO社のエチレン・α-オレフィン・ジエン共重合体「KEP570P(商品名)」、エチレンに由来する構成単位の含有量70質量%。ムーニー粘度ML1+4(125℃)53、ENB含有量4.5質量%。
【0075】
(C)非芳香族系ゴム用軟化剤:
(C-1)出光興産株式会社のパラフィン系鉱物油「ダイアナプロセスオイルPW100(商品名)」、動的粘度100cSt(40℃)、流動点-12℃、引火点260℃。
【0076】
(D)有機過酸化物:
(D-1)日油株式会社の2,5-ジメチル-2,5-ジ-(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン「パーヘキサ25B(商品名)」。1分半減期温度 179.8℃。
(D-2)日油株式会社の2,5-ジメチル-2,5-ジ-(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン混合物「パーヘキサ25B-36(商品名)」。上記(D-1)36質量%を上記(C-1)64質量%で希釈した混合物。
【0077】
(E)架橋助剤:
(E-1)新日鉄住金化学株式会社のジビニルベンゼン「DVB-570(商品名)」。
【0078】
(F)シランカップリング剤:
(F-1)信越化学工業株式会社のビニルトリメトキシシラン「KBM-1003(商品名)」。
【0079】
(G)無機フィラー:
(G-1)日東粉化工業株式会社の炭酸カルシウム「NS400(商品名)」。
【0080】
(H)シラノール縮合触媒:
(H-1)日東化成工業株式会社のジオクチルスズジラウレート「ネオスタンU-810(商品名)」。
【0081】
(I)第2のプロピレン系樹脂
(I-1)日本ポリプロ株式会社のポリプロピレンホモポリマー「ノバテックEA9(商品名)」、メルトマスフローレート(温度230℃、荷重21.18N)0.5g/10分。
【0082】
(J)任意成分:
(J-1)BASF社のヒンダードフェノール系酸化防止剤「IRGANOX1010(商品名)」。
(J-2)BASF社の燐系酸化防止剤「IRGAFOS168(商品名)」。
(J-3)住化カラー株式会社製 カーボンブラックマスターバッチ「PEM-8080(商品名)」。
【0083】
例1A
(1)エラストマー組成物の製造:
上記成分(A-1)21.43質量部、上記成分(A-3)9.52質量部、上記成分(B-1)69.05質量部からなる組成物100質量部に対して、上記成分(C-1)69.05質量部、上記成分(D-2)2.79質量部、上記成分(E-1)2.00質量部、上記成分(F-1)3.00質量部、上記成分(G-1)28.57質量部、上記成分(I-1)69.05質量部、上記成分(J-1)0.24質量部、上記成分(J-2)0.12質量部、及び上記成分(J-3)4.92質量部を用いてエラストマー組成物を製造した。同方向回転二軸押出機を使用し、上記成分(D-2)、(C-1)及び(I-1)以外の成分は、ブレンダーを使用してドライブレンドした後、押出機のスクリュウ根元の位置にフィードし、上記成分(D-2)は液体添加装置を使用し、押出機バレル全長の約1/4の位置でフィードし、その後、上記成分(C-1)は液体添加装置を使用し、押出機バレル全長の約1/2の位置でフィードし、更にその後、上記成分(I-1)を押出機バレル全長の約3/4の位置でサイドフィードし、ダイス設定温度200℃の条件で溶融混練してエラストマー組成物を得た。
【0084】
(2)シラノール触媒マスターバッチの製造:
上記成分(A-2)14質量%、上記成分(A-3)5質量%、上記成分(B-1)44質量%、上記成分(C-1)37質量%からなる組成物100質量部に対して、上記成分(D-1)0.15質量部、上記成分(E-1)0.3質量部、上記成分(H-1)0.5質量部、上記成分(J-1)0.1質量部、上記成分(J-2)0.05質量部、上記成分(G-1)16質量部、及び上記成分(J-3)2.022質量部を用いてシラノール触媒マスターバッチを作成した。同方向回転二軸押出機を使用し、上記成分(C-1)以外の成分は、ブレンダーを使用してドライブレンドした後、押出機のスクリュウ根元の位置にフィードし、上記成分(C-1)を液体添加装置を使用し、押出機バレル全長の約1/2の位置でサイドフィードし、ダイス温度200℃の条件で溶融混練してシラノール触媒マスターバッチを得た。
【0085】
(3)水架橋性エラストマー組成物の製造:
上記工程(1)で得たエラストマー組成物100質量と上記工程(2)で得たシラノール触媒マスターバッチ5質量部(上記成分(H-1)換算0.01999質量部)を、ブレンダーを使用してドライブレンドし、水架橋性エラストマー組成物を得た。
【0086】
(4)成形物の製造:
上記工程(3)で得た水架橋性エラストマー組成物を用い、射出成形機を使用し、厚さ2mm、縦130mm、横130mmの平板を、射出樹脂温度200℃の条件で作成した。
(4-1)引張試験又は耐油試験用試験片採取用の成形物:
上記で得た平板を温度80℃の温水中に48時間浸漬し、引張試験又は耐油試験用試験片採取用の成形物を得た。
(4-2)圧縮永久歪又は硬度用試験片採取用の成形物:
上記で得た平板を4枚重ね、温度200℃でプレス成形することにより、厚さ6.3mm、縦160mm、横130mmの平板を作成し、更にこれを温度80℃の温水中に48時間浸漬し、圧縮永久歪又は硬度用試験片採取用の成形物を得た。
(4-3)外観評価用試験片採取用の成形物:
口径20mmの単軸押出機に厚さ1mm×幅25mmのスリットを有するダイスを取り付け、スクリュー回転数30rpm、押出温度220℃で押出し、片面を金属ロールに接触させ、反対の面は空冷により、約1mm厚の押出シートを作成し、外観評価用試験片採取用の成形物を得た。
【0087】
下記試験(1)~(5)を行った。結果を表1に示す。
なお、表中の上記成分(A)及び(B)の配合量は、上記成分(A)及び(B)からなる組成物100質量部に対する値である。
表中の組成物Pは、上記成分(A)及び(B)からなる組成物を意味する。
表中の上記成分(C)~(G)、及び上記成分(I)~(J)の配合量は、組成物P(上記成分(A)及び(B)からなる組成物)100質量部に対する値である。
表中の上記成分(C)の配合量は、上記成分(A)及び(B)からなる組成物100質量部に対する値と伴に、上記成分(B)100質量部に対する値も併記した。
上記成分(D-2)を使用した場合、上記成分(D-1)としての換算量も併記した。また、成分(D-2)に含まれる成分(C-1)は成分(C)の量としては含めていない。
表中の組成物Qは、エラストマー組成物を意味する。表中の組成物Rは、水架橋性エラストマー組成物を意味する。
表中のMBは、シラノール触媒マスターバッチを意味する。表中のMBの配合量は、エラストマー組成物100質量部に対する値である。このときMB中の上記成分(H)以外の成分をエラストマー組成物に含めずに算出している。
表中の上記成分(H)の値は、MBの配合量から算出した、エラストマー組成物100質量部に対する上記成分(H)の配合量である。このときMB中の上記成分(H)以外の成分をエラストマー組成物に含めずに算出したのが「H-1」の欄であり、含めて算出したのが「H-1換算」の欄である。
【0088】
(1)圧縮永久歪み:
JIS K6262:2013に準拠し、上記(4-2)で得た成形物を用い、圧縮率25%、小形試験片、温度70℃又は120℃、22時間、及びA法の条件で圧縮永久歪みを測定した。
【0089】
(2)硬度:
JIS K6253-3:2012に準拠して、上記(4-2)で得た成形物を用い、ショアAの硬さ(15秒値)を測定した。
【0090】
(3)引張試験:
JIS K6251:2010に準拠し、上記(4-1)で得た成形物から打抜いたダンベル状3号形試験片を用い、引張速度500mm/分の条件で測定した。
【0091】
(4)耐油性試験:
JIS K6258:2003に準拠し、上記(4-1)で得た成形物から採取した試験片を用い、温度120℃のIRM#903オイルに22時間浸漬した後の体積膨潤率を測定した。
【0092】
(5)外観評価
JIS B0601:1994に準拠し、上記(4-3)で得た成形物の表面(空冷面)の算術平均粗さRaを測定した。また、表面状態(空冷面)を目視で評価した。
【0093】
例1B
上記成分(A-1)21.43質量部、上記成分(A-3)9.52質量部、上記成分(B-1)69.05質量部からなる組成物100質量部に対して、上記成分(C-1)69.05質量部、上記成分(D-2)2.79質量部、 上記成分(E-1)2.00質量部、上記成分(F-1)3.00質量部、上記成分(G-1)28.57質量部、上記成分(I-1)69.05質量部、上記成分(J-1)0.24質量部、上記成分(J-2)0.12質量部、及び上記成分(J-3)4.92質量部を用いてエラストマー組成物を製造した。同方向回転二軸押出機を使用し、上記成分(C-1)69.05質量部のうちの61.90質量部、(D-2)及び(I-1)以外の成分は、ブレンダーを使用してドライブレンドした後、押出機のスクリュウ根元の位置にフィードし、上記成分(D-2)は液体添加装置を使用し、押出機バレル全長の約1/4の位置でフィードし、その後、上記成分(C-1)61.90質量部を液体添加装置を使用し、押出機バレル全長の約1/2の位置でフィードし、更にその後、上記成分(I-1)を押出機バレル全長の約3/4の位置でサイドフィードし、ダイス設定温度200℃の条件で溶融混練してエラストマー組成物を得た。それ以外は、例1Aと同様に行った。結果を表1に示す。
【0094】
例2~8
エラストマー組成物の成分を表1~2の何れか1に示すように変更したこと以外は、例1Aと同様に行った。結果を表1~2の何れか1に示す。
【0095】
例9
エラストマー組成物の成分を表2に示すように変更し、サイドフィードとして、上記成分(I)を添加しないこと以外は、例1Aと同様に行った。結果を表2に示す。
【0096】
例10~14
(1’)上記成分(A-1)21.43質量部、上記成分(A-3)9.52質量部、上記成分(B-1)69.05質量部からなる組成物100質量部に対して、上記成分(C-1)69.5質量部、上記成分(D-2)2.79質量部、上記成分(E-1)2.0質量部、上記成分(F-1)3.0質量部、上記成分(G-1)28.57質量部、上記成分(I-1)69.05質量部、上記成分(J-1)0.24質量部、上記成分(J-2)0.12質量部、及び上記成分(J-3)4.92質量部を用いてエラストマー組成物を製造した。同方向回転二軸押出機を使用し、上記成分(C-1)、上記成分(D-2)、及び上記成分(I-1)以外の成分は、ブレンダーを使用してドライブレンドした後、押出機のスクリュウ根元の位置にフィードし、上記成分(D-1)は液体添加装置を使用し、押出機バレル全長の約1/4の位置でフィードし、その後、上記成分(C-1)は液体添加装置を使用し、押出機バレル全長の約1/2の位置でフィードし、更にその後、上記成分(I-1)を押出機バレル全長の約3/4の位置でサイドフィードし、ダイス設定温度200℃の条件で溶融混練してエラストマー組成物を得た。
(2’)上記(1’)で得たエラストマー組成物を用い、射出成形機を使用し、厚さ2mm、縦130mm、横130mmの平板を、射出樹脂温度200℃の条件で作成した。
(3’)
(3’-1)引張試験又は耐油試験用試験片採取用の成形物:
上記(2’)で得た平板を温度80℃の温水中に48時間浸漬し、引張試験又は耐油試験用試験片採取用の成形物を得た。
(3’-2)圧縮永久歪又は硬度用試験片採取用の成形物:
上記(2’)で得た平板を4枚重ね、温度200℃でプレス成形することにより、厚さ6.3mm、縦160mm、横130mmの平板を作成し、更にこれを温度80℃の温水中に48時間浸漬し、圧縮永久歪又は硬度用試験片採取用の成形物を得た。
(3’-3)外観評価用試験片採取用の成形物:
口径20mmの単軸押出機に厚さ1mm×幅25mmのスリットを有するダイスを取り付け、スクリュー回転数30rpm、押出温度220℃で押出し、片面を金属ロールに接触させ、反対の面は空冷により、約1mm厚の押出シートを作成し、外観評価用試験片採取用の成形物を得た。
【0097】
上記試験(1)~(5)と同様の試験を行った。結果を表2~3の何れか1に示す。
【0098】
例15~21
エラストマー組成物の成分を表3~4の何れか1に示すように変更し、温水への浸漬処理を行わないこと以外は、例10~14と同様に行った。結果を表3~4の何れか1に示す。
【0099】
例22(比較例)
エラストマー組成物の成分を表4に示すように変更し、上記成分(D-2)をサイドフィードする代わりに上記成分(D-1)をメインで一括フィードすること以外は、例1Aと同様に行った。結果を表4に示す。
【0100】
例23(参考例)
エラストマー組成物として、エクソンモービル社製のオレフィン系熱可塑性エラストマー組成物「サントプレーン101-73(商品名)」を用いて成形物を製造し、各種試験を実施した。結果を表4に示す。
【0101】
例24(参考例)
エラストマー組成物として、エクソンモービル社製のオレフィン系熱可塑性エラストマー組成物「サントプレーン101-87(商品名)」を用いたこと以外は、例23と同様に行った。結果を表4に示す。
【0102】
例25(比較例)
例2の上記成分(D-2)及び(E-1)の配合量を表4に示すように変更した以外は例2と同様に行った。結果を表4に示す。
【0103】
【表1】
【0104】
【表2】
【0105】
【表3】
【0106】
【表4】
【0107】
本発明のエラストマー組成物は、従来のプラスチック加工設備を使用して熱可塑性樹脂のように成形加工することができ、かつ、圧縮永久歪みが加硫ゴムのように非常に小さく、耐油性が高く、かつ、外観も良好な成形物が得られる。そのため加硫ゴムを代替する材料として、自動車用パッキンや建材用パッキンなどに好適に用いることができる。