(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-16
(45)【発行日】2023-08-24
(54)【発明の名称】表示装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/336 20060101AFI20230817BHJP
H01L 29/786 20060101ALI20230817BHJP
G02F 1/1368 20060101ALI20230817BHJP
G09F 9/30 20060101ALI20230817BHJP
H10K 50/10 20230101ALI20230817BHJP
【FI】
H01L29/78 616L
G02F1/1368
G09F9/30 338
G09F9/30 365
H01L29/78 616A
H01L29/78 616V
H01L29/78 617N
H01L29/78 617S
H01L29/78 626B
H05B33/14 A
(21)【出願番号】P 2018040389
(22)【出願日】2018-03-07
【審査請求日】2021-02-22
(73)【特許権者】
【識別番号】502356528
【氏名又は名称】株式会社ジャパンディスプレイ
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】境 武志
(72)【発明者】
【氏名】渡壁 創
(72)【発明者】
【氏名】坂本 道昭
(72)【発明者】
【氏名】田中 幸生
【審査官】岩本 勉
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-275701(JP,A)
【文献】特開2002-190597(JP,A)
【文献】特開2002-353464(JP,A)
【文献】国際公開第2017/161626(WO,A1)
【文献】特開2003-017502(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/336
H01L 29/786
H10K 59/00
H10K 50/00
G02F 1/1368
G09F 9/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリシリコンによる半導体層を覆ってゲート絶縁膜が形成され、前記ゲート絶縁膜の上にゲート電極が形成された薄膜トランジスタ(TFT)を有する画素が複数形成された表示装置であって、
前記TFTを覆って層間絶縁膜が形成され、
前記半導体層は、チャネル、n+であるドレイン、n+であるソース、前記チャネルと前記ドレインの間、及び、前記チャネルと前記ソースの間に、ドープ量が前記ドレインおよび前記ソースよりも少ないn-であるLDD領域が形成され、
前記チャネルと前記ドレインの間に形成されるLDD領域の前記ゲート絶縁膜に接する側には、マイナス電荷が存在し、
前記表示装置は有機EL表示装置であり、前記TFTは直流駆動されることを特徴とする表示装置。
【請求項2】
ポリシリコンによる半導体層を覆ってゲート絶縁膜が形成され、前記ゲート絶縁膜の上にゲート電極が形成された薄膜トランジスタ(TFT)を有する画素が複数形成された表示装置であって、
前記TFTを覆って層間絶縁膜が形成され、
前記半導体層は、チャネル、n+であるドレイン、n+であるソース、前記チャネルと前記ドレインの間、及び、前記チャネルと前記ソースの間に、ドープ量が前記ドレインおよび前記ソースよりも少ないn-であるLDD領域が形成され、
前記チャネルと前記ドレインの間に形成されるLDD領域の前記ゲート絶縁膜に接する側には、マイナス電荷が存在し、
前記表示装置は有機EL表示装置であり、前記TFTは有機EL層に電流を供給する駆動TFTであることを特徴とする表示装置。
【請求項3】
ポリシリコンによる半導体層を覆ってゲート絶縁膜が形成され、前記ゲート絶縁膜の上にゲート電極が形成された薄膜トランジスタ(TFT)を有する画素が複数形成された表示装置であって、
前記TFTを覆って層間絶縁膜が形成され、
前記半導体層は、チャネル、n+であるドレイン、n+であるソース、前記チャネルと前記ドレインの間、及び、前記チャネルと前記ソースの間に、ドープ量が前記ドレインおよび前記ソースよりも少ないn-であるLDD領域が形成され、
前記チャネルと前記ドレインの間に形成されるLDD領域の前記ゲート絶縁膜に接する側には、マイナス電荷が存在し、
前記表示装置は液晶表示装置であり、前記TFTはスイッチングTFTであり、前記TFTの前記ドレインと前記ソースは定期的に入れ替わることを特徴とする表示装置。
【請求項4】
前記マイナス電荷は、前記ゲート絶縁膜内にも形成されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の表示装置。
【請求項5】
前記マイナス電荷は、前記ドレイン、前記ソース、前記ソースと前記チャネルの間のLDD領域の前記ゲート絶縁膜側にも形成されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の表示装置。
【請求項6】
前記マイナス電荷はボロン(B)をイオンインプランテーションによって形成したことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の表示装置。
【請求項7】
前記ボロン(B)の濃度は、前記ドレインにおけるn+の不純物濃度よりも少ないことを特徴とする
請求項6に記載の表示装置。
【請求項8】
前記ボロン(B)の濃度は、前記ドレイン側の前記LDD領域におけるn-の不純物濃度と同等乃至10倍程度であることを特徴とする
請求項6に記載の表示装置。
【請求項9】
前記ボロン(B)の濃度は、前記LDD領域の厚さ方向において、前記ゲート絶縁膜に近い面のほうが、反対側の面よりも大きいことを特徴とする
請求項6に記載の表示装置。
【請求項10】
ポリシリコンによる半導体層を覆ってゲート絶縁膜が形成され、前記ゲート絶縁膜の上にゲート電極が形成された薄膜トランジスタ(TFT)を有する画素が複数形成された表示装置であって、
前記TFTを覆って層間絶縁膜が形成され、
前記半導体層は、チャネル、n+であるドレイン、n+であるソース、前記チャネルと前記ドレインの間、及び、前記チャネルと前記ソースの間に、ドープ量が前記ドレインおよび前記ソースよりも少ないn-であるLDD領域が形成され、
前記チャネルと前記ドレインの間に形成されるLDD領域の上には、前記層間絶縁膜を介して、前記ソースと接続するソース電極から分岐した疑似ゲートが存在し、
前記表示装置は有機EL表示装置であり、前記TFTは有機EL層に電流を供給する駆動TFTであることを特徴とする表示装置。
【請求項11】
前記疑似ゲートは、前記ソース電極と同じ材料で同じ層に形成され、前記ソース電極と連続して形成されていることを特徴とする請求項10に記載の表示装置。
【請求項12】
前記疑似ゲートは、前記ゲート電極の前記LDD領域側端部と、平面で視てオーバーラップしていることを特徴とする請求項10に記載の表示装置。
【請求項13】
前記疑似ゲートは、前記半導体層の前記ソースとスルーホールを介して接続していることを特徴とする請求項10に記載の表示装置。
【請求項14】
ポリシリコンによる半導体層を覆ってゲート絶縁膜が形成され、前記ゲート絶縁膜の上にゲート電極が形成された薄膜トランジスタ(TFT)を有する画素が複数形成された表示装置であって、
前記TFTを覆って層間絶縁膜が形成され、
前記半導体層は、チャネル、n+であるドレイン、n+であるソース、前記チャネルと前記ドレインの間、及び、前記チャネルと前記ソースの間に、ドープ量が前記ドレインおよび前記ソースよりも少ないn-であるLDD領域が形成され、
前記ソースにはソース電極が接続し、前記ドレインにはドレイン電極が接続し、
前記チャネルと前記ドレインの間に形成されるLDD領域の上には、前記層間絶縁膜を介して、前記ソース電極とは独立に、疑似ゲートが存在し、前記疑似ゲートには、前記ドレインに印加される電圧よりも低い電圧が印加され、
前記表示装置は有機EL表示装置であり、前記疑似ゲートにカソード電圧が印加されることを特徴とする表示装置。
【請求項15】
前記疑似ゲートは、前記ソース電極及び前記ドレイン電極と同時に同じ材料で同じ層に形成されることを特徴とする請求項14に記載の表示装置。
【請求項16】
前記表示装置は有機EL表示装置であり、前記TFTは有機EL層に電流を供給する駆動TFTであることを特徴とする請求項14に記載の表示装置。
【請求項17】
ポリシリコンによる半導体層を覆ってゲート絶縁膜が形成され、前記ゲート絶縁膜の上にゲート電極が形成された薄膜トランジスタ(TFT)を有する画素が複数形成された表示装置であって、
前記TFTを覆って層間絶縁膜が形成され、
前記半導体層は、チャネル、n+であるドレイン、n+であるソース、前記チャネルと前記ドレインの間、及び、前記チャネルと前記ソースの間に、ドープ量が前記ドレインおよび前記ソースよりも少ないn-であるLDD領域が形成され、
前記ソースにはソース電極が接続し、前記ドレインにはドレイン電極が接続し、
前記チャネルと前記ドレインの間に形成されるLDD領域の上には、前記層間絶縁膜を介して、前記ソース電極とは独立に、疑似ゲートが存在し、前記疑似ゲートには、前記ドレインに印加される電圧よりも低い電圧が印加され、
前記表示装置は液晶表示装置であり、前記疑似ゲートにはコモン電圧が印加されることを特徴とする表示装置。
【請求項18】
前記疑似ゲートは、前記ソース電極及び前記ドレイン電極と同時に同じ材料で同じ層に形成されることを特徴とする請求項17に記載の表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は薄膜トランジスタおよび薄膜トランジスタを用いた、液晶表示装置あるいは有機EL表示装置等の表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
有機EL表示装置は画素毎にスイッチング素子としての第1のTFT(薄膜トランジスタ Thin Film Transistor 以後TFTという)を配置してデータ信号の取り込みを制御し、駆動素子としての第2のTFTによって発光素子への電流の制御をおこなっている。また、駆動回路をTFTによって構成する場合もある。
【0003】
液晶表示装置では画素毎にスイッチング素子としてTFTを配置し、データ信号の取り込みを制御している。また、駆動回路をTFTによって構成する場合もある。
【0004】
したがって、TFTのドレイン電圧とドレイン電流の関係は、有機EL表示装置や液晶表示装置の表示特性に対して直接影響を与える。
【0005】
特許文献1には、TFTのチャネル領域におけるエッジ部を高抵抗にすることによって、平面で視た場合のチャネルエッジを流れる電流を抑制し、Ids特性が不規則になることを防止する構成が記載されている。特許文献1では、特にId-Vgs特性において、スレッショルド電圧の、ばらつきを対策するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
TFTの動作において、Vds(ソース―ドレイン電圧、以後Vdという)が高くなると、チャネルとドレインとの境界で高電界となり、絶縁破壊を起こす。これを防止するために、チャネルとドレインの間にLDD(Lightly Doped Drain)領域を形成する。
【0008】
しかし、チャネル長が短くなる、あるいは、Vdがさらに高くなると、チャネルとLDD領域の間にホットキャリアが発生し、Vd-Id特性において、Vdの高電圧側において、電流が増加する現象が生ずる。これをKinkと称している。
【0009】
しかし、このKinkは、高いVdで駆動するうちに、低下する。つまり、初期と動作中で特性が変動することになり、表示装置の表示品質の経時変化が生じてしまう。エージングによって、Kink電流を低減することができるが、一定以上の熱が加わると、また、Kink電流が回復するという現象を生ずる。Kink電流を抑制するために、チャネル抵抗を上げると、Vdが低い状態におけるドレイン電流も低下する。
【0010】
本発明の課題は、チャネル抵抗を大きくすることなく、Kink現象を抑制し、長期間動作後においても安定した品質の表示を行うことが出来る表示装置を実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は上記課題を克服するものであり、主な具体的な手段は次のとおりである。
【0012】
(1)ポリシリコンによる半導体層を覆ってゲート絶縁膜が形成され、前記ゲート絶縁膜の上にゲート電極が形成された薄膜トランジスタ(TFT)を有する画素が複数形成された表示装置であって、前記TFTを覆って層間絶縁膜が形成され、前記半導体層は、チャネル、n+であるドレイン、n+であるソース、前記チャネルと前記ドレインの間、及び、前記チャネルと前記ソースの間に、ドープ量が前記ドレインおよび前記ソースよりも少ないn-であるLDD領域が形成され、前記チャネルと前記ドレインの間に形成されるLDD領域の前記ゲート絶縁膜に接する側には、マイナス電荷が存在することを特徴とする表示装置。
【0013】
(2)ポリシリコンによる半導体層を覆ってゲート絶縁膜が形成され、前記ゲート絶縁膜の上にゲート電極が形成された薄膜トランジスタ(TFT)を有する画素が複数形成された表示装置であって、前記TFTを覆って層間絶縁膜が形成され、前記半導体層は、チャネル、n+であるドレイン、n+であるソース、前記チャネルと前記ドレインの間、及び、前記チャネルと前記ソースの間に、ドープ量が前記ドレインおよび前記ソースよりも少ないn-であるLDD領域が形成され、前記チャネルと前記ドレインの間に形成されるLDD領域の上には、前記層間絶縁膜を介して、前記ソースと接続するソース電極から分岐した疑似ゲートが存在することを特徴とする表示装置。
【0014】
(3)ポリシリコンによる半導体層を覆ってゲート絶縁膜が形成され、前記ゲート絶縁膜の上にゲート電極が形成された薄膜トランジスタ(TFT)を有する画素が複数形成された表示装置であって、前記TFTを覆って層間絶縁膜が形成され、前記半導体層は、チャネル、n+であるドレイン、n+であるソース、前記チャネルと前記ドレインの間、及び、前記チャネルと前記ソースの間に、ドープ量が前記ドレインおよび前記ソースよりも少ないn-であるLDD領域が形成され、前記ソースにはソース電極が接続し、前記ドレインにはドレイン電極が接続し、前記チャネルと前記ドレインの間に形成されるLDD領域の上には、前記層間絶縁膜を介して、前記ソース電極とは独立に、疑似ゲートが存在し、前記疑似ゲートには、前記ドレインに印加される電圧よりも低い電圧が印加されることを特徴とする表示装置。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図2】有機EL表示装置の画素部の等価回路である。
【
図3】有機EL表示装置の画素部のレイアウトである。
【
図4】有機EL表示装置の表示領域の断面図である。
【
図9】実施例1の
図8に続くプロセスを示す断面図である。
【
図10】実施例1の
図9に続くプロセスを示す断面図である。
【
図11】実施例1の
図10に続くプロセスを示す断面図である。
【
図12】実施例1の
図11に続くプロセスを示す断面図である。
【
図19】本発明を適用した液晶表示装置の画素部の平面図である。
【
図20】本発明を適用した他の例の液晶表示装置の画素部の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に実施例によって本発明を詳細に説明する。まず、有機EL表示装置を例にとって本発明を説明し、その後、液晶表示装置について本発明を説明する。TFTのドレインとソースは電流の向きによって定義される。液晶表示装置では、TFTに印加される電圧が一定周期で入れ替わるので、この周期によって、ドレインとソースが入れ替わる。一方、有機EL表示装置では、TFTのドレインとソース間には直流が印加される。本明細書では、有機EL表示装置のように直流で動作する場合は、低電圧側をソースと称し、高電圧側をドレインと称する。
【実施例1】
【0017】
図1は本発明が適用される有機EL表示装置の平面図である。
図1の有機EL表示装置は、表示領域10と端子領域30が存在している。表示領域10には横方向(x方向)に走査線11が延在し、縦方向(y方向)に配列している。また、映像信号線12が縦方向に延在して横方向に配列している。そして、電源線13が縦方向に延在し、横方向に配列している。走査線11と、映像信号線12または電源線13で囲まれた領域に画素14が形成されている。
【0018】
図1において、表示領域10以外の部分に端子領域30が形成され、端子領域30にはドライバIC31が搭載されている。映像信号はドライバIC31においてアレンジされ、表示領域10に供給される。また、端子領域30には、有機EL表示装置に電源や信号を供給するためのフレキシブル配線基板32が接続している。
【0019】
図1において、表示領域10の両側には走査線駆動回路20が形成されている。また、表示領域10の上側(y方向上側)には、電流供給領域21が形成されている。電流は端子領域30に接続しているフレキシブル配線基板31から電流バスラインに供給され、電流バスラインは、表示領域10の上側(y方向の上側)の電流供給領域21に配線される。そして、電流は、電流供給領域21から電源線13によって各画素14に供給される。表示領域10の下側に配線が集中することを回避するためである。
【0020】
図2は画素の構成を示す等価回路である。
図2において、走査線11、映像信号線12、電源線13で囲まれた領域に画素14が形成されている。
図2において、カソード線が横方向に延在しているが、これは等価回路上の表現であって、実際の製品では、カソードは表示領域全面に平面状に存在している。画素内には、有機EL層で形成される有機EL素子ELと、これを駆動する駆動TFT(T2)が直列に接続している。駆動TFT(T2)のゲートとドレインの間には蓄積容量Csが配置している。蓄積容量Csの電位にしたがって、駆動TFT(T2)から有機EL素子(EL)に電流が供給される。
【0021】
図2において、選択TFT(T1)のゲートに走査線11が接続し、走査線11のON、OFF信号にしたがって、T1が開閉される。T1がONになると、映像信号線12から映像信号が供給され、映像信号によって蓄積容量Csに電荷が蓄積され、蓄積容量Csの電位によって、駆動TFT(T2)が駆動され、有機EL素子(EL)に電流が流れる。
【0022】
図2において、選択TFT(T1)、駆動TFT(T2)のいずれのVd-Id特性が変動した場合でも、画像の再現性に問題を生ずる。特に、駆動TFTの特性変動は、画像の表示特性に直接影響する。
【0023】
図3は、
図2に対応する画素部の平面図である。
図3において、走査線11が横方向に延在し、映像信号線12と電源線13が縦方向に延在している。走査線11、映像信号線12、電源線13で囲まれた領域が画素になっている。あるいは、走査線11と映像信号線12とで囲まれた領域が画素になっているということも出来る。映像信号線12と接続する半導体層102が走査線11と交差する部分に選択TFT(T1)が形成されている。
【0024】
電源線13と接続する半導体層102が蓄積容量Csを構成する一方の電極と交差する部分において駆動TFT(T2)が形成される。蓄積容量Csの他方の電極、つまり、導電性が付与された半導体層はスルーホール130において、アノードと接続する。なお、カソードは各画素共通に表示領域全面に平面状に形成されているので、
図3では特に図示されていない。
【0025】
図4は、有機EL表示装置の表示領域の断面図である。
図4において、TFT基板100は、ガラスで形成される場合もあるし、ポリイミド等の樹脂で形成される場合もある。樹脂基板とする場合、TFT基板100の厚さを10μm乃至20μmとすることが出来るので、フレキシブル表示装置とすることが出来る。また、ガラス基板の場合も、厚さが0.2mm以下とすると、フレキシブルに湾曲させることが出来る。
【0026】
TFT基板100の上に下地膜101が形成されている。下地膜101は酸化シリコン(以後SiOという)膜と、窒化シリコン(以後SiNという)膜等の積層膜で形成され、TFT基板100からの不純物が半導体層102を汚染することを防止する。なお、水分等に対するバリア特性をより確実にするために、さらにAlOx膜が下地膜として形成される場合もある。
【0027】
下地膜101の上にTFT(Thin Film Transistor)を構成する半導体層102が形成される。半導体層102は当初はCVDによってa-Siを形成し、その後、エキシマレーザを照射してPoly-Siに変換したものである。以後、このようなポリシリコンをLTPS(Low Temperature Poly-Si)と呼ぶこともある。半導体層102を覆って、ゲート絶縁膜103が形成される。ゲート絶縁膜103は、TEOS(Tetraethyl Orthosilicate)を原料として、CVD(Chemical Vapor Deposition)によって形成したSiO膜である。
【0028】
ゲート絶縁膜103の上に、ゲート電極104が形成される。その後、ゲート電極104よりも若干面積の大きなマスクを用いてリン(P)をイオンインプランテーションすることによって、n+領域を形成する。すなわち、ドレイン1021及びソース1022を形成する。
【0029】
その後、ゲート電極をマスクにして、ドレイン1021あるいはソース1022よりも少ない量のリン(P)をイオンインプランテーションによってドープし、チャネルとソース1022あるいはドレイン1021との間にn-領域、すなわち、LDD領域を形成する。特に、チャネルとドレイン1021との境界における絶縁破壊を防止するためである。
【0030】
ゲート電極104を覆って層間絶縁膜105がSiN等によって形成される。層間絶縁膜105およびゲート絶縁膜104にスルーホール121、122を形成し、ドレイン電極106および、ソース電極107を接続する。ドレイン電極106およびソース電極107を覆って有機パッシベーション膜108が形成される。有機パッシベーション膜108の材料としては、ポリイミド、アクリル等が使用される。有機パッシベーション膜108は感光性の樹脂で形成される。感光性の樹脂は、露光された部分が現像液に溶解するものであり、レジストを用いずに、スルーホール等の形成を行うことが出来る。
【0031】
その後、有機パッシベーション膜108の上に反射電極109を形成する。反射電極109は、有機パッシベーション膜108に形成されたスルーホールを介してソース電極107と接続する。反射電極109は例えば、Al合金あるいはAgで形成される。
【0032】
反射電極109の上にはITO(Indium Tin Oxide)等でアノード110が形成されている。その後、アクリル等の有機材料によってバンク111が形成される。バンク111は、後で形成される有機EL膜112が段切れを生ずることを防止する、あるいは、画素間を区画する、等の役割を有している。バンク111に形成されたスルーホール内に有機EL層112を形成する。有機EL層112は、ホール注入層、ホール輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層等の複数層から形成される。
【0033】
その後、陰極113を透明導電膜である、ITO、IZO(Indium Zinc Oxide)、AZO(Antimony Zinc Oxide)等のいずれかによって形成する。陰極113は表示領域全面に共通に形成される。陰極113は金属薄膜によって形成される場合もある。光透過率と電気抵抗の兼ね合いで決められる。
【0034】
陰極113を覆って、SiN、SiO等によって保護膜114がCVD等によって形成される。バリア特性をより確実にするために、さらに、AlOx膜が形成される場合もある。AlOx膜はスパッタリングによって形成される。つまり、保護膜は、SiN、SiO、AlOxの積層膜で形成される場合もある。
【0035】
図4において、円偏光板116が粘着材115を介して、保護膜114の上に貼り付けられる。有機EL表示装置は、反射電極109を有しているので、外光が反射し、画面が視づらくなる。円偏光板116は、外光の反射を抑制して、視認性を向上する。
【0036】
図5は、Kink現象を示すグラフである。
図5のグラフにおいて、横軸はドレイン電圧(Vd)、縦軸はドレイン電流(Id)である。測定回路、及び定義は、グラフの下に示す等価回路のとおりである。
【0037】
図5において、ドレイン電圧(Vd)を上げるとともに、ドレイン電流(Id)は増加する。
図5において、2,5V程度からVd-Id特性はなだらかな傾斜をとるようになる。
図5において、Vdが9Vを過ぎたころから、normal曲線とKink現象を含む曲線とに分かれる。
【0038】
Kink現象は、チャネルとドレインとの間の高電界によってホットキャリアが生成され、このホットキャリアの影響によって、電流が増大する現象である。Kink現象が製品寿命期間に安定して存在すればよいが、長時間動作中に徐々に電流が減少し、normal曲線に近づく。
【0039】
製品完成後、エージングを行うことによって、Kink現象を小さくすることができるが、製品がある温度以上に加熱されると、Kink現象が再び現れるという現象が生ずる。すなわち、Kink現象があると、Vd-Id特性が安定しなくなる。画像の調整は、製品出荷前に行われるので、寿命期間中にVd-Id特性が変化すれば、画像の再現性が悪くなり、画質の劣化をもたらす。
【0040】
Kink現象を抑制するために、チャネル抵抗を大きくすると、Vdが低い場合の電流を小さくしてしまい、動作スピードを劣化させる。このように、従来は、Kink現象によって、製品寿命期間中に安定した画像再現性を得ることが困難であった。
【0041】
本発明は、Kink現象を抑制して、長時間、画像を安定して再現することが出来る構成を与えるものである。
図6は本発明の原理を示すTFT部分の断面図である。
図6において下地膜の上にLTPSによる半導体層102が形成されている。半導体層102を覆ってゲート絶縁膜103が形成され、その上にゲート電極104が形成されている。ゲート電極104を覆って層間絶縁膜105が形成されている。
【0042】
図6は、構成をわかり易くするために、NTS(Not To Scale)となっている。
図6において、半導体層102は例えば50nm、ゲート絶縁膜103は例えば100nmである。
【0043】
図6において、半導体層102のゲート電極104に対応する部分にチャネル102が形成されている。チャネル102の両側が、例えばリン(P)が軽くドープされ、n-で形成されたLDD領域となっている。
図6において、左側がソース1022、右側がドレイン1021となっている。以後ドレイン側のLDD領域をLDD領域1と言い、ソース側のLDD領域をLDD領域2という。
【0044】
TFTを動作させると、半導体層102のチャネル2とドレイン側のLDD領域、すなわち、LDD領域1との間に矢印に示すような高電界が形成され、この部分において、ホットキャリアが発生し、Kink現象を引き起こす。本発明は、LDD領域1の上側に、
図6にマイナスで示すような、固定のマイナス電荷を形成し、LDD領域1側が高電界になることを抑え、Kink現象を抑制している。
【0045】
本発明の特徴は、ゲート電極14の下側ではなく、LDD領域1の上部にマイナス電荷を形成することによって、ホットキャリア発生を抑制していることである。すなわち、LDD領域1の表面にマイナス電荷を形成することによって、高電界を直接抑制するものである。以下に示す実施例1(本実施例)乃至実施例3は、
図6に示すのと同様な効果を示す具体的構成を説明するものである。
【0046】
図7は、本発明の実施例1の構成を示す断面図である。
図7の基本構成は
図6で説明したのと同じである。
図7では、チャネル部分を除く半導体層102の上面付近に、表面層1025を形成している。表面層1025には例えば、ボロン(B)がイオンインプランテーションによって打ち込まれている。ボロン(B)をチャネルを除く半導体層102の表面にイオンインプランテーションによって打ち込むと、ボロン(B)は半導体層102に対してホールを供給するので、自身は固定のマイナス電荷になる。表面層1025は半導体層102の、チャネルを除く全域に形成されているが、効果を発揮するのは、ドレイン1021側のLDD領域、すなわち、LDD領域1の表面部分である。表面層1025は半導体層102表面から5nm程度の範囲に形成され、そのアクセプタイオン濃度はLDD領域1領域のドナーイオン濃度と同等乃至10倍程度が望ましく、ドレイン層1021表面上に形成された表面層1025が抵抗成分となり得る場合でも、ドレインコンタクトホール形成時のドライエッチングにて表面層1025が除去されて抵抗成分とはならない。
【0047】
表面層1025の形成によって、チャネルとLDD領域1との境界に形成される高電界を緩和し、ホットキャリアの生成を抑制している。つまり、表面層1025の効果は特に、ドレイン電圧Vdが大きい場合に効果があるものであり、ドレインIdが低い場合には影響はほとんどない。したがって、Kink現象のみを対策することが出来る。
【0048】
図8乃至
図11に
図7の構成を実現するプロセスを説明する。
図8は、下地膜101の上にLTPSによる半導体層102を形成した状態を示す断面図である。LTPSはまず、a-SiをCVDによって形成し、このa-Siにエキシマレーザを照射することによってpoly-Siに変換する。その後、LTPSである半導体層102をフォトリソグラフィによってパターニングしたものである。半導体層102の膜厚は例えば50nmである。
【0049】
次に、
図9に示すように、半導体層102を覆ってゲート絶縁膜103をCVDによって形成する。このゲート絶縁膜103は、TEOSを原料としたSiO膜である。ゲート絶縁膜103の膜厚は例えば100nmである。ゲート絶縁膜103の上にゲート電極104をMo、あるいはTi等の金属、または、MoW等の合金によって形成する。ゲート電極104は走査線11と同時に形成されるが、抵抗を小さくしたい場合は、AlをTi等でサンドイッチした構成が使用される。
【0050】
その後、
図10に示すように、マスク500を用いて例えば、リン(P)をイオンインプランテーションによって注入し、半導体層102にドレイン1021およびソース1022を形成する。リン(P)は、例えば10
15/cm
2乃至10
16/cm
2程度の量、ドーピングされ、n+層によるドレイン1021及びソース1022を形成する。
【0051】
その後、
図11に示すように、ゲート電極104をマスクにして、例えばリン(P)をイオンインプランテーションによって、n+領域よりも少ない量注入し、n+層1021、1022とチャネル層102との間にLDD領域を形成する。LDD領域のドーピング量は、例えば、10
12/cm
2より大きく10
15/cm
2より小さい。
【0052】
その後、
図12に示すように、ゲート電極104をマスクにして、ボロン(B)をイオンインプランテーションによって打ち込む。これが本実施例の特徴である。この時、ボロン(B)のイオンインプランテーションにおけるエネルギーはリンの打ち込みエネルギーよりも小さくし、ボロン(B)が半導体層の表面にのみ分布するようにする。
【0053】
ボロン(B)の打ち込み量は、例えば、1012/cm2乃至1014/cm2というように広い範囲で調整することが出来る。また、ボロン(B)のLDD領域内での濃度は、LDD領域のn-を与える不純物濃度よりも少ないことが望ましい。具体的には、LDD領域におけるボロン(B)の濃度はリン(P)の濃度よりも少ない。
【0054】
しかし、LDD領域のゲート絶縁膜103側、すなわち、表面層1025においては、ボロン(B)のドープ量がリン(P)のドープ量を上回る場合がある。すなわち、表面層1025はp型になっている場合がある。このような不純物の分布は、イオンインプランテーションのエネルギーとイオン打ち込み時間を制御することによって実現できる。
【0055】
ボロン(B)は、半導体層102にホールを供給するので、自身はマイナス電荷となり、
図6に示すような構成となる。
図12において、チャネル部分以外の半導体層102の厚さ方向におけるボロン(B)の密度分布は、ゲート絶縁膜103との界面から徐々に低下するように分布する。つまり、ボロン(B)の濃度は、下地膜101側の面よりもゲート絶縁膜103側の面で大きい。
図12における深さd1は、ボロン(B)が特に多く分布する領域を模式的に記載したものである。
【0056】
なお、このような構成においては、ボロン(B)は、ゲート絶縁膜103にも存在することになる。つまり、イオンインプランテーションされたボロン(B)はある程度密度分布を持つために、LDD領域の表面を狙っても、LDD領域表面の厚さ方向上下に分布する。しかし、ボロン(B)がゲート絶縁膜103に存在しても、TFT特性には影響を与えない。
【0057】
ボロン(B)は、半導体層102の表面全域に打ち込まれるが、LDD領域以外の部分では、TFTの特性には影響を与えない。つまり、n+領域では、ボロン(B)のドーピング量に比べて桁違いの量のリン(P)がドープされているので、n+層の表面にボロン(B)が存在していても、導電性に対する影響は殆ど無い。
【0058】
以上のように、本実施例によれば、イオンインプランテーションにおいて、LDD領域のためのリン(P)の打ち込みのあと、リン(P)の打ち込みとはイオンインエネルギーを変えて、ボロン(B)を打ち込むだけで、Kink現象を軽減することが出来る。
【実施例2】
【0059】
図13は、本発明の実施例2を示す断面図である。
図13はTFT部分の拡大断面図である。
図13において、層間絶縁膜105を形成するまでは、
図6で説明したのと同じである。
図13において、層間絶縁膜105とゲート絶縁膜103に対し、ドレイン1021側にスルーホール121を形成してドレイン電極106を接続し、ソース1022側にスルーホール122を形成してソース電極107を接続する。
【0060】
本発明の特徴は、ソース電極107を分岐させ、ドレイン1021側のLDD領域、すなわち、LDD領域1の上に、層間絶縁膜105を挟んで、延在させていることである。本明細書では、これを疑似ゲート1071と呼ぶ。ソース電極107の電位は、ドレイン電極106の電位よりも低いので、LDD領域層のゲート絶縁膜103に近い側において、マイナス電荷を配置したのと同じ効果を得ることが出来る。したがって、Kink現象を軽減することが出来る。
【0061】
図13において、疑似ゲート107はゲート電極104の上を延在しているが、これは、わかり易くするための模式図である。ソース電極107とゲート電極104が平面で重複すると、ゲートとソースの間の容量Cgsが大きくなり、ゲート電圧の飛び込みが大きくなる等お弊害を生ずる。
したがって、実際のレイアウトでは、疑似ゲート1071への分岐配線とゲート電極104の重複はできるだけ小さくなるようにレイアウトする。
【0062】
図14は、このようなレイアウトの例である。
図14の基本的な構成は
図3で説明したとおりである。
図14において、駆動TFTを構成する半導体層102は、n+にドープされた広い部分において、ソース電極を構成している。つまり、点線で示すように、蓄積容量Csの一方の電極を構成している。このように、蓄積容量Csを構成する一方の電極としてのn+層は、
図13におけるソース電極107に対応する。
【0063】
図14では、このソース電極を構成するn+半導体層を一部分岐させ、スルーホール1072を介して疑似ゲート1071と接続し、駆動TFTのLDD領域1の上方に延在させている。なお、疑似ゲート1071は、ソース電極107あるいはドレイン電極106と同じ層に形成される。このような構成であれば、ゲート電極104とのオーバーラップは最小限に抑えることが出来る。LDD領域の幅は例えば、1μm程度であるから、疑似ゲート107の幅はわずかでよい。疑似ゲート107がゲート電極104とオーバーラップする量は、疑似ゲート107の加工が可能な範囲で狭い幅に抑えればよい。なお、疑似ゲート107とゲート電極104を平面で視てオーバーラップするのは、疑似ゲート107の端部とゲート電極104の端部を完全に一致させるような加工が困難だからである。
【実施例3】
【0064】
図15は、本発明の実施例3を示す断面図である。
図15はTFTの拡大断面図である。
図15において、層間絶縁膜105とゲート絶縁膜103に対し、ドレイン1021側にスルーホール121を形成してドレイン電極106を接続し、ソース1022側にスルーホール122を形成してソース電極107を接続するまでは、
図13と同じである。しかし、
図15では、
図13と異なりソース電極107は分岐していない。
【0065】
図15において、疑似ゲート1061はソース電極107と独立してLDD領域1の上に配置している。
図15の構成では、任意の電圧を疑似ゲート1061に印加することが可能である。例えばカソード電圧を印加することが出来る。疑似ゲート1061への印加電圧は、疑似ゲート1061の効果に大きな影響を与えるので、
図15の構成は、
図13の構成に比べてより自由度がある。
【0066】
図16は
図15の構成を実現する、画素部の平面図の例である。
図16の基本的な構成は
図3で説明したとおりである。なお、
図14と同様に、蓄積容量Csを構成する一方の電極としてのn+層は、
図15におけるソース電極107に対応する。
【0067】
図16において、駆動TFTのLDD領域の上に、疑似ゲート1061が形成されている。疑似ゲート1061は映像信号線12、ソース電極107、あるいは、ドレイン電極106と同じ層に形成されている。疑似ゲートは1061、ゲート電極104と近接して形成されるので、加工上の要請から、一部がゲート電極104とオーバーラップするが、分岐線がオーバーラップしないので、ゲート電極104とのオーバーラップの量は実施例2の場合よりも小さくてすむ。
【0068】
図16において、疑似ゲート1061には、スルーホール1062を介して電圧が印加される。疑似ゲート1061に印加される電圧は、ドレイン電極106の電圧よりも低い範囲で任意の電圧とすることが出来る。電圧は、例えば、表示領域全面に形成されるカソード113と同じ電位でもよいし、走査線11と平行に別途配線を形成してもよいし、電源線13あるいは映像信号線12と平行に別途配線してもよい。
【0069】
LDD領域の幅は1μm程度であるから、疑似ゲート1061の幅は、加工可能な範囲におけるわずかな幅でよい。
図16の構成によれば、ゲート電極104とソース電極107との間の浮遊容量を殆ど増大させることなく、Kink現象を抑えることが出来る。
【実施例4】
【0070】
本発明は、液晶表示装置にも適用することが出来る。液晶表示装置は各画素にスイッチングTFTが存在する。LTPSでTFTを構成した場合の、ホットキャリアによるKink現象は液晶表示装置についても同様である。
図17は液晶表示装置の平面図である。
図17において、TFT基板100と対向基板200がシール材40によって接着し、TFT基板100と対向基板200の間に液晶層が挟持されている。
【0071】
表示領域10には走査線11が横方向に延在し、縦方向に配列している。また、映像信号線12が縦方向に延在し、横方向に配列している。走査線11と映像信号線12で囲まれた領域に画素14が形成されている。画素14内には、スイッチングTFTと保持容量SCが形成され、保持容量の一端はコモン電圧VCに接続している。
【0072】
TFT基板100が対向基板200と重なっていない部分は端子領域30となっている。端子領域30には、映像信号線12を駆動するドライバIC31が搭載され、液晶表示装置に信号や電源を供給するためのフレキシブル配線基板32が接続している。
【0073】
図18は、液晶表示装置の表示領域10の断面図である。
図18において、有機パッシベーション膜108を形成するまでは、有機EL表示装置の断面図を示す
図4と同じである。
図18において、有機パッシベーション膜108の上にコモン電極150が形成され、コモン電極150の上に容量絶縁膜151が形成され、その上に画素電極152が形成されている。画素電極152の形状の例は
図19に示す。画素電極152とコモン電極150の間に容量絶縁膜151を挟んで保持容量SCが形成される。画素電極152は、有機パッシベーション膜108に形成されたスルーホールを介してソース電極107と接続している。画素電極152を覆って配向膜153が形成されている。
【0074】
図18において、液晶層300を挟んで対向基板200が配置している。対向基板200には、カラーフィルタ201とブラックマトリクス202が形成され、これらを覆ってオーバーコート膜203が形成されている。オーバーコート膜203を覆って配向膜204が形成されている。
図18において、画素電極152とコモン電極150の間に電圧が印加されると、矢印のような電気力線が発生し、液晶分子301を回転させて、画素毎に液晶層300の透過率を変化させ、画像を形成する。
【0075】
液晶表示装置では、液晶材料が電気分解することを避けるために、TFTのドレイン1021とソース1022が一定時間ごと、例えば、走査期間ごとに反転する。極性が反転してもホットキャリアの問題は同じである。したがって、実施例1で説明した構成、すなわち、ボロン(B)等をドーピングすることによって、LDD領域の上側にマイナス電荷を形成して、Kink現象を抑える構成は、液晶表示装置においてもそのまま適用することが出来る。
【0076】
実施例2及び3の構成を液晶表示装置に適用するには、液晶表示装置の平面構成に合わせて若干修正をすればよい。
図19は実施例2を液晶表示装置に適用する場合の平面図の例である。
図19は、IPS(In Plane Switching)方式の液晶表示装置の画素部の平面図である。
【0077】
図19において、走査線11が横方向に延在して縦方向に配列し、映像信号線12が縦方向に延在して横方向に配列している。走査線11と映像信号線12で囲まれた領域に画素電極152が存在している。半導体層102は映像信号線12とスルーホール121で接続し、映像信号線12の下を延在し、走査線11の下を通過する。この時、第1のTFTが形成される。その後、半導体層102は屈曲して再び走査線11の下を通過し、この時第2のTFTが形成される。
【0078】
半導体層102はスルーホール122においてソース電極107と接続する。ソース電極107はスルーホール130において画素電極152と接続する。ソース電極107は映像信号線12と同じ層に形成されている。ソース電極107は分岐して、第2のTFTのドレイン側LDD領域の上に延在して、疑似ゲート1071を構成する。
【0079】
疑似ゲート1071には、層間絶縁膜105を挟んでソース電極と同じ電圧が印加されるので、実施例2で説明したように、Kink現象を抑制する。
図19の構成では、疑似ゲート1071は層間絶縁膜105を挟んで走査線11(ゲート電極104)と交差するが、疑似ゲート1071の幅は加工可能な範囲で狭くしてよいので、ゲート電極104とソース電極107間の容量の増大は小さく抑え込むことが出来る。
【0080】
すなわち、LDD領域の幅はせいぜい1μm程度であるから、疑似ゲート1071の幅は狭くてよい。また、疑似ゲート1071には、電流が流れるわけではないので、幅を大きくする必要もないからである。
図19の構成は、ソース電極107の形状を変えるだけであるので、本発明を実施するためにプロセス負荷が増大するわけではない。
【0081】
図20は、実施例3の構成を液晶表示装置に適用する場合の液晶表示装置の画素部の平面図である。基本的な画素構成は
図19で説明したとおりである。
図20が
図19と異なる点は、疑似ゲート1061がソース電極107とは独立に形成されている点である。そして、疑似ゲート1061には、スルーホール123を介して、他の配線から電位を供給する。
【0082】
疑似ゲート1061には第2のTFTのドレイン領域に印加される電圧よりも低い任意の電圧を印加する。液晶表示装置では、TFTのドレイン電極とソース電極は定期的に入れ替わるので、
図20では、ゲート電極104(走査線11)を挟んで両側に疑似ゲート1061が形成されている。そして、2つの疑似ゲート1061が定期的に交替してホットキャリアの発生を抑制することになる。
【0083】
LDD領域の幅はせいぜい1μmなので、疑似ゲート1061の幅は非常に小さくてよい。しかし、スルーホール123を介して疑似ゲート1061に電圧が供給される場合は、スルーホール123の径が大きくなりがちである。
図20では、2つの疑似ゲートの各々にスルーホール123が形成されているが、このスルーホール123は一つにまとめることも出来る。
【0084】
有機EL表示装置に戻り、有機EL表示装置では、少なくとも2個のTFTが使用されるが、これらの内、有機EL層に電流を供給する駆動トランジスタでは、Kinkの影響がより深刻である。したがって、有機EL表示装置において、駆動TFTに実施例1乃至3で説明した本発明の構成を適用するだけでも効果を上げることが出来る。
【符号の説明】
【0085】
10…表示領域、 11…走査線、 12…映像信号線、 13…電源線、 14…画素、 15…カソード線、 20…走査線駆動回路、 21…電流供給領域、 30…端子領域、 31…ドライバIC、 32…フレキシブル配線基板、 40…シール材、 100…TFT基板、 101…下地膜、 102…半導体層、 103…ゲート絶縁膜、 104…ゲート電極、 105…層間絶縁膜、 106…ドレイン電極、 107…ソース電極、 108…有機パッシベーション膜、 109…反射電極、 110…アノード、 111…バンク、 112…有機EL層、 113…カソード、 114…保護膜、 115…粘着材、 116…円偏光板、 121…スルーホール、 122…スルーホール、 123…スルーホール、 130…スルーホール、 150…コモン電極、 151…容量絶縁膜、 152…画素電極、 153…配向膜、 200…対向基板、 201…カラーフィルタ、 202…ブラックマトリクス、 203…オーバーコート膜、 204…配向膜、 300…液晶層、 301…液晶分子、 500…露光マスク、 1061…疑似ゲート、 1071…疑似ゲート、 T1…スイッチングTFT、 T2…駆動TFT、 Cs…保持容量、 EL…有機EL素子