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特許73331963次元頭部モデル作成システム、及び3次元頭部モデル作成方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-16
(45)【発行日】2023-08-24
(54)【発明の名称】3次元頭部モデル作成システム、及び3次元頭部モデル作成方法
(51)【国際特許分類】
   G01B 11/24 20060101AFI20230817BHJP
   G06T 7/55 20170101ALI20230817BHJP
   G06T 7/00 20170101ALI20230817BHJP
   A41G 3/00 20060101ALI20230817BHJP
【FI】
G01B11/24 K
G06T7/55
G06T7/00 660Z
A41G3/00 N
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019097368
(22)【出願日】2019-05-24
(65)【公開番号】P2020190060
(43)【公開日】2020-11-26
【審査請求日】2022-04-28
(73)【特許権者】
【識別番号】390023249
【氏名又は名称】国際航業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000126218
【氏名又は名称】株式会社アートネイチャー
(74)【代理人】
【識別番号】100158883
【弁理士】
【氏名又は名称】甲斐 哲平
(72)【発明者】
【氏名】村木 広和
(72)【発明者】
【氏名】山下 祐介
【審査官】國田 正久
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-003427(JP,A)
【文献】特開2011-113421(JP,A)
【文献】特表2016-507670(JP,A)
【文献】国際公開第2018/047687(WO,A1)
【文献】特開2012-191253(JP,A)
【文献】特開2009-239397(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 11/24
A41G 3/00
G06T 7/55
G06T 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
頭部の画像に基づいて頭部の3次元モデルを作成するシステムであって、
印字シートが頭部に密着した状態の画像である頭部画像を取得する画像取得手段と、
頭部全周を網羅するように複数方向から撮影された前記頭部画像に対して空間演算処理を行うことで、頭部の前記3次元モデルを作成するモデル作成手段と、を備え、
前記印字シートには、新聞や雑誌のように複数の文字が敷き詰められるように表示され、
前記モデル作成手段が用いる複数の前記頭部画像のうち一部の該頭部画像には、寸法が既値であるスケールが収められ、
前記モデル作成手段は、前記頭部画像どうしの重複部分に表示された2以上の文字からなる「文字群」を特徴点として隣接する前記頭部画像を接続していくことで、前記3次元モデルを作成する、
ことを特徴とする3次元頭部モデル作成システム。
【請求項2】
前記画像取得手段の姿勢を計測する姿勢計測手段と、
前記画像取得手段の水平撮影方向と、前回撮影時の該水平撮影方向と、の較差が角度閾値を上回るときに警告を通知する警告手段と、をさらに備え、
前記水平撮影方向は、前記画像取得手段の撮影方向を水平面に投影した方向である、
ことを特徴とする請求項1記載の3次元頭部モデル作成システム。
【請求項3】
前記画像取得手段の表示部に立体顔モデルを透過表示することによって、前記画像取得手段の撮影姿勢を案内する姿勢案内手段を、さらに備え、
前記姿勢案内手段は、前記画像取得手段で前記頭部画像を取得すると、前記立体顔モデルをあらかじめ定めた角度だけ鉛直軸周りに回転して透過表示させる、
ことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の3次元頭部モデル作成システム。
【請求項4】
対象者の頭部を撮影した複数の画像に基づいて、頭部の3次元モデルを作成する方法であって、
前記対象者が、頭部全体を覆うように、かつ頭部に密着するように、印字シートを頭部に装着する準備工程と、
前記対象者の周囲を移動しながら、前記印字シートが装着された頭部を撮影して、複数の頭部画像を取得する画像取得工程と、
前記画像取得工程で取得した複数の前記頭部画像に対して空間演算処理を行うことで、前記対象者の頭部の前記3次元モデルを作成するモデル作成工程と、を備え、
前記印字シートには、新聞や雑誌のように複数の文字が敷き詰められるように表示され、
前記モデル作成工程では、前記頭部画像どうしの重複部分に表示された2以上の文字からなる「文字群」を特徴点として隣接する前記頭部画像を接続していくことで、前記3次元モデルを作成する、
ことを特徴とする3次元頭部モデル作成方法。
【請求項5】
前記準備工程では、前記対象者が、新聞紙面が印字された前記印字シートを頭部に装着する、
ことを特徴とする請求項4記載の3次元頭部モデル作成方法。
【請求項6】
前記準備工程では、前記対象者が、前記印字シートで形成された帽子を被る、
ことを特徴とする請求項4又は請求項5記載の3次元頭部モデル作成方法。
【請求項7】
前記準備工程では、前記対象者が、前記印字シートの頭部への装着に加え、前記印字シートで形成された前掛け又はケープを着用し、
前記画像取得工程では、前記前掛け又は前記ケープを着用した状態の前記頭部画像を取得する、
ことを特徴とする請求項4乃至請求項6のいずれかに記載の3次元頭部モデル作成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、複数の画像から頭部の3次元モデルを作成する技術であり、より具体的には、複数の文字が表示された印字シートを利用することによって頭部の3次元モデルを作成する3次元頭部モデル作成システムと、これを用いた3次元頭部モデル作成方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的にオーダーメードのかつらは、型取り、かつらベースの形成、そして擬毛の植設といった工程を経て製造される。このうち型取りの工程は、かつらの使い心地を決定する極めて重要な工程であり、さらに型取りのために実施される頭部計測の精度がかつらの良否を決定づけるとも言える。
【0003】
型取りのための頭部計測は、対象者(依頼者)の頭部形状を再現するために行われる計測であり、従来、熱した樹脂状のものを直接対象者の頭部に載せ、これを硬化させた型枠を取得することで頭部形状を再現していた。あるいは、レーザ計測装置を利用して対象者の頭部を計測する者もいた。
【0004】
しかしながら、熱した樹脂状のものを利用する手法では、対象者に負担がかかるうえ製作者によって型枠の精度が異なるといった問題があり、一方のレーザ計測による手法では、レーザ計測装置が著しく高価であるが故に導入や入れ替え(リプレース)が難しいといった問題があった。
【0005】
そのため、レーザ計測装置を用いることなく、しかも対象者に負担をかけることがない計測手法の実現が、これまで切望されていた。そこで特許文献1では、画像を用いて対象者の頭部形状を再現する技術について提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2016-003427号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1で開示される技術は、対象者の頭部に多数の特徴点を貼り付けたうえで複数の画像を取得し、これらの画像から頭部の3次元モデルを作成するものであり、レーザ計測装置など高価な装置を必要としない。しかしながら、頭部に多数の特徴点を貼り付ける手間がかかるうえ、対象者によっては特徴点の貼り付けを拒むこともある
【0008】
本願発明の課題は、従来の問題を解決することであり、すなわち、高価な装置を用いることなく、しかも対象者に負担をかけることがなく、さらに従来技術に比して高精度かつ容易に頭部の3次元モデルを作成することができる3次元頭部モデル作成システムと、これを用いた3次元頭部モデル作成方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願発明は、複数の文字が表示された印字シートで対象者の頭部を覆い、その状態で撮影した頭部の画像を用いて3次元モデルを作成する、という点に着目したものであり、従来にはなかった発想に基づいてなされた発明である。
【0010】
本願発明の3次元頭部モデル作成システムは、複数の文字が表示された印字シートで覆われた頭部の画像に基づいて、頭部の3次元モデルを作成するシステムであって、画像取得手段とモデル作成手段を備えたものである。このうち画像取得手段は、頭部画像(印字シートが頭部に密着した状態の画像)を取得する手段であり、モデル作成手段は、頭部全周を網羅するように複数方向から撮影された頭部画像に対して空間演算処理を行うことで頭部の3次元モデルを作成する手段である。なお、モデル作成手段が用いる複数の頭部画像のうち一部の頭部画像には、寸法が既値であるスケールが収められる。
【0011】
本願発明の3次元頭部モデル作成システムは、姿勢計測手段と警告手段をさらに備えたものとすることもできる。この姿勢計測手段は、画像取得手段の姿勢を計測する手段であり、警告手段は、今回撮影時と前回撮影時の水平撮影方向の較差が角度閾値を上回るときに警告を通知する手段である。ここで水平撮影方向は、画像取得手段の撮影方向を水平面に投影した方向である。
【0012】
本願発明の3次元頭部モデル作成システムは、姿勢案内手段をさらに備えたものとすることもできる。この姿勢案内手段は、画像取得手段の表示部に立体顔モデルを透過表示することによって、画像取得手段の撮影姿勢を案内する手段である。また姿勢案内手段は、画像取得手段で頭部画像を取得すると、立体顔モデルをあらかじめ定めた角度だけ鉛直軸周りに回転して透過表示させる。この場合、立体顔モデルの方向と頭部の向きとを合わせるように画像取得手段の姿勢を決定して撮影していくと、複数の頭部画像によって頭部全周を網羅することができる。
【0013】
本願発明の3次元頭部モデル作成方法は、複数の文字が表示された印字シートで覆われた対象者の頭部を撮影した複数の画像に基づいて、頭部の3次元モデルを作成する方法であって、準備工程と画像取得工程、モデル作成工程を備えた方法である。このうち準備工程では、対象者が頭部全体を覆うように、かつ頭部に密着するように印字シートを頭部に装着する。また画像取得工程では、対象者の周囲を移動しながら印字シートが装着された頭部を撮影して複数の頭部画像を取得し、モデル作成工程では、画像取得工程で取得した複数の頭部画像に対して空間演算処理を行うことで対象者の頭部の3次元モデルを作成する。なお画像取得工程では、取得する複数の頭部画像のうち一部の頭部画像に、寸法が既値であるスケールが収められるように撮影する。
【0014】
本願発明の3次元頭部モデル作成方法は、準備工程において、新聞紙面が印字された印字シートを頭部に装着する方法とすることもできる。
【0015】
本願発明の3次元頭部モデル作成方法は、準備工程において、印字シートで形成された帽子を被る方法とすることもできる。
【0016】
本願発明の3次元頭部モデル作成方法は、準備工程において、印字シートの頭部装着に加え、印字シートで形成された前掛け(あるいはケープ)を着用する方法とすることもできる。
【発明の効果】
【0017】
本願発明の3次元頭部モデル作成システム、及び3次元頭部モデル作成方法には、次のような効果がある。
(1)レーザ計測装置など高価な装置を必要とすることなくカメラなど(画像取得手段)を用いるだけであり、安価かつ容易に3次元モデルを作成することができる。
(2)印字シートを頭部に装着するだけであり、対象者にかかる負担を従来に比して大幅に低減することができる。
(3)印字シートに表示された文字等が特徴点として利用できることから、従来に比して高い精度で3次元モデルを作成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】(a)は画像取得手段を用いて頭部全周を網羅するように複数方向から撮影する状況を示すモデル図、(b)は印字シートで形成されたキャップ(帽子)が頭部に密着した状況を示す写真図。
図2】本願発明の3次元頭部モデル作成システムの主な構成を示すブロック図。
図3】本願発明の3次元頭部モデル作成システムの主な処理の流れを示すフロー図。
図4】帽子型印字シートを示す写真図。
図5】(a)は帽子型印字シートを被った対象者を背後から撮影した写真図、(b)は帽子型印字シートを被った対象者を斜め前方から撮影した写真図。
図6】スケールの一例を示すモデル図。
図7】(a)は英字新聞の紙面が印字されたエプロン型印字シートを示す写真図、(b)はエプロン型印字シートを装着した対象者を前方から撮影した写真図。
図8】連続する2回の撮影に係る水平撮影方向によって求められる方向較差を説明するモデル図。
図9】スマートフォンの液晶ディスプレイに透過表示された立体顔モデルを示す写真図。
図10】本願発明の3次元頭部モデル作成方法の主な工程を示すフロー図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本願発明の3次元頭部モデル作成システム、及び3次元頭部モデル作成方法の一例を、図に基づいて説明する。
【0020】
1.全体概要
本願発明は、スマートフォンなどの画像取得手段101を用いて対象者の頭部を撮影した画像(以下、「頭部画像」という。)に基づいて、頭部の3次元モデル(以下、「頭部3Dモデル」という。)を作成することをひとつの特徴としている。頭部3Dモデルを作成するためには、図1(a)に示すように、頭部全周を網羅するよう複数方向から撮影された頭部画像が利用される。
【0021】
頭部画像を取得するにあたっては、図1(b)に示すように、「印字シート200」が頭部に密着した状態で撮影される。この印字シートは、新聞紙面など多数の印字されたシート状のものであり、例えば図1(b)のように文字が印字されたキャップ(帽子)などを利用することができる。
【0022】
2.3次元頭部モデル作成システム
本願発明の3次元頭部モデル作成システムについて、図を参照しながら詳しく説明する。なお、本願発明の3次元頭部モデル作成方法は、本願発明の3次元頭部モデル作成システムを用いて頭部3Dモデルを作成する方法であり、したがってまずは本願発明の3次元頭部モデル作成システムについて説明し、その後に本願発明の3次元頭部モデル作成方法について説明することとする。
【0023】
図2は、本願発明の3次元頭部モデル作成システム100の主な構成を示すブロック図である。この図に示すように3次元頭部モデル作成システム100は、画像取得手段101とモデル作成手段102、姿勢計測手段103を含んで構成され、さらに警告手段104や姿勢案内手段105、頭部画像記憶手段106、ディスプレイやプリンタといった出力手段107などを含んで構成することもできる。
【0024】
3次元頭部モデル作成システム100を構成する画像取得手段101は、デジタルカメラやデジタルビデオカメラなどを利用することができ、特にスマートフォンやタブレット型コンピュータといった携帯端末を利用するとよい。また、モデル作成手段102と警告手段104、姿勢案内手段105は、専用のものとして製造することもできるし、汎用的なコンピュータ装置を利用することもできる。このコンピュータ装置は、パーソナルコンピュータ(PC)や、iPad(登録商標)といったタブレット型PC、スマートフォンを含む携帯端末などによって構成することができる。コンピュータ装置は、CPU等のプロセッサ、ROMやRAMといったメモリを具備しており、さらにマウスやキーボード等の入力手段やディスプレイを含むものもある。姿勢計測手段103は、画像取得手段101の撮影姿勢を計測するセンサであり、角速度センサや地磁気センサなどを利用することができる。なお、スマートフォンやタブレット型コンピュータといった携帯端末を利用すれば、3次元頭部モデル作成システム100を構成する画像取得手段101とモデル作成手段102、姿勢計測手段103、警告手段104、姿勢案内手段105を1つの携帯端末に備えることができて好適となる。
【0025】
頭部画像記憶手段106は、汎用的コンピュータ(例えば、スマートフォンやタブレット型コンピュータなど)の記憶装置を利用することもできるし、そのほかデータベースサーバに構築することもできる。データベースサーバに構築する場合、ローカルなネットワーク(LAN:Local Area Network)に置くこともできるし、インターネット経由(つまり無線通信)で保存するクラウドサーバとすることもできる。
【0026】
以下、図3を参照しながら3次元頭部モデル作成システム100の主な処理について詳しく説明する。図3は、本願発明の3次元頭部モデル作成システム100の主な処理の流れを示すフロー図である。なおこれらのフロー図では、中央の列に実施する行為を示し、左列にはその行為に必要なものを、右列にはその行為から生ずるものを示している。
【0027】
3次元頭部モデル作成システム100は、既述したとおり対象者の頭部を撮影した複数の頭部画像に基づいて頭部3Dモデルを作成する。そしてこの頭部画像は、印字シート200が対象者の頭部を覆うように、しかも印字シート200が頭部に密着した状態で撮影されたものである。また印字シート200は、多数の文字(例えば、新聞紙面や雑誌記事など)が印字されたシート状のものであり、タオルや紙に印字したものを印字シート200として利用したり、テープや包帯に印字したものを印字シート200として利用したりすることができる。
【0028】
特に頭部への密着性を考慮すると、図4に示すように帽子の表面に文字が印字された印字シート200(以下、「帽子型印字シート200C」という。)を利用するとよい。この帽子型印字シート200Cは、人が被ることができるものであり、いわゆるニット帽やメッシュ帽のように弾力性かつ伸縮性を有するものである。そのため、図5(a)や図5(b)に示すように対象者が帽子型印字シート200Cを被ると、その頭部形状に柔軟に適合(フィット)し、すなわち適切に密着するわけである。
【0029】
頭部3Dモデルを作成するために用いられる複数の頭部画像の中には、図5(b)に示すようにスケール300が収められた(撮影された)頭部画像を含める必要がある。このスケール300は、あらかじめ主要な寸法が既値とされているものであり、たとえば図6に示すように四隅にそれぞれ異なるマークを配置したカード状のものを利用することができる。この図に示すスケール300の場合、長辺の長さと短辺の長さ(あるいはいずれか一方)や、対角線の長さなどを既値とするとよい。
【0030】
頭部画像は、印字シート200が対象者の頭部に装着された(例えば、帽子型印字シート200Cを被った)状態で撮影されたものと説明したが、頭部への印字シート200の装着に加え、前掛けやケープ、エプロンなどの表面に文字が印字された印字シート200(以下、「エプロン型印字シート200A」という。)をさらに装着した状態で撮影されたものとすることもできる。図7(a)に英字新聞の紙面が印字されたエプロン型印字シート200Aを示し、図7(b)にこのエプロン型印字シート200Aを装着した対象者を示す。後述するように、モデル作成手段102が頭部3Dモデルを作成する際には、印字シート200に表示されている文字(あるいは文字群)を特徴点として複数の頭部画像を接続していくことから、帽子型印字シート200Cに加えエプロン型印字シート200Aが画像に含まれると、より適当な特徴点を抽出しやすくなるわけである。
【0031】
対象者の頭部に印字シート200(例えば、帽子型印字シート200C)が装着され(あるいは、さらにエプロン型印字シート200Aが装着され)、適当な位置にスケール300が配置されると、撮影者が頭部画像を取得していく。具体的には、画像取得手段101を構え、すなわち撮影者が画像取得手段101を所定の位置と姿勢に配置し(図3のStep10)、頭部画像を取得する(図3のStep40)。なお撮影者が画像取得手段101を所定の姿勢に配置すると、姿勢計測手段103によって画像取得手段101の水平撮影方向が計測される(図3のStep20)。ここで水平撮影方向とは、画像取得手段101の撮影方向を水平面に投影した方向である。
【0032】
最初(1枚目)の頭部画像を取得すると、撮影者は前回(1枚目)とは異なる姿勢となるように画像取得手段101を所定の位置と姿勢に配置する。そして姿勢計測手段103によって画像取得手段101の水平撮影方向が計測され、今回(2回目)の水平撮影方向と前回(1回目)の水平撮影方向とからなる挟角(以下、図8に示すように「方向較差」という。)を評価する(図3のStep30)。すなわち、方向較差があらかじめ定めた「角度閾値」を下回るとき(図3のStep30のYes)は次の処理に進み、方向較差が角度閾値を上回るとき(図3のStep30のNo)は警告手段104によって警告が通知される。
【0033】
モデル作成手段102が頭部3Dモデルを作成するため複数の頭部画像を接続していくには、頭部画像どうしがある程度重複(ラップ)している必要がある。すなわち、連続する2回の撮影による方向較差が過度に大きくなると、頭部画像どうしが適度に重複せず、結果的に適切な頭部3Dモデルを作成することができない。そこで、あらかじめ角度閾値を設定しておき、後続の撮影時の水平撮影方向が不適である(つまり、方向較差が角度閾値を上回る)とき、警告手段104が警告を通知することで適切な水平撮影方向に修正するよう促すわけである。なお、角度閾値の大きさは、状況に応じて適宜設定することができる。例えば図8では、角度閾値を15°として設定しており、さらに方向較差も角度閾値(つまり15°)を保って24方向から撮影している。もちろんこれに限らず、角度閾値を22.5°として16方向から撮影するなど、状況に応じて種々の角度閾値と方向較差で撮影することができる。
【0034】
適当な方向較差をもって撮影していくには、図9に示す姿勢案内手段を利用することもできる。この図に示すように姿勢案内手段は、スマートフォンなどの画像取得手段101の表示部(液晶ディスプレイなど)に、立体顔モデルFMを透過表示する手段である。またこの姿勢案内手段は、画像取得手段101で撮影するたびに、あらかじめ定めた角度(以下、「単位回転角度」という。)だけ立体顔モデルFMを鉛直軸周りに回転して透過表示させる。
【0035】
この場合、撮影者は、対象者の頭部(特に顔)の向きと立体顔モデルFMの向きを合わせたうえで撮影するとよい。単位回転角度を角度閾値以下に設定しておけば、適当な方向較差をもって撮影していくことができるわけである。さらに姿勢案内手段は、頭部全周を網羅するよう複数方向から(つまり、図8に示すように360°方向から)撮影できたとき、その旨(全周撮影の完了)を通知する機能を備えることもできる。例えば、所定の撮影回数(例えば、360°を単位回転角度で除した値)がカウントされたとき、あるいは姿勢計測手段103によって計測された結果に基づいて、「全周撮影完了」を通知することができる。
【0036】
対象者の周囲を移動しながら、つまり適当な方向較差を保ちつつ水平撮影方向を変えながら、頭部全周を網羅するように頭部画像を順次取得していく。そして、撮影者自身の判断によって、あるいは姿勢案内手段による「全周撮影完了」の通知によって、頭部全周を網羅できたとき頭部画像の取得を終了する(図3のStep50のYes)。取得された頭部画像は、頭部画像記憶手段106に記憶される。
【0037】
対象者の頭部全周を網羅する頭部画像が取得できると、モデル作成手段102によって当該対象者の頭部3Dモデルが作成される(図3のStep60)。具体的には、モデル作成手段102が頭部画像記憶手段106から複数の頭部画像を読み出し、ステレオペア画像によるバンドル調整や、SfM(Structure from Motion)といった写真測量技術を利用して頭部3Dモデルを作成する。このとき、適当な方向較差を保ちつつ撮影したことから隣り合う頭部画像は適切に一部重複(ラップ)しており、そしてその重複部分に表示された「文字(あるいは文字群)」が特徴点として好適に利用されるわけである。もちろん特徴点として利用される「文字(あるいは文字群)」は、帽子型印字シート200Cやエプロン型印字シート200Aといった印字シート200に表示されたものである。
【0038】
対象者の頭部3Dモデルが作成されると、ディスプレイやプリンタといった出力手段107によって頭部3Dモデルが出力される。特に、3Dプリンタによって頭部3Dモデルを出力すると、かつらベースを作成する際に有効に活用することができる。
【0039】
3.3次元頭部モデル作成方法
次に、本願発明の3次元頭部モデル作成方法ついて図を参照しながら説明する。なお、本願発明の3次元頭部モデル作成方法は、ここまで説明した3次元頭部モデル作成システム100を使用して頭部3Dモデルを作成する方法であり、したがって3次元頭部モデル作成システム100で説明した内容と重複する説明は避け、本願発明の3次元頭部モデル作成方法に特有の内容のみ説明することとする。すなわち、ここに記載されていない内容は、「2.3次元頭部モデル作成システム」で説明したものと同様である。
【0040】
図10は、本願発明の3次元頭部モデル作成方法の主な工程を示すフロー図である。この図に示すように、まず対象者が印字シート200を装着するとともに、適当な位置にスケール300を配置する「準備工程」を行う(Step201)。既述したとおり対象者は、帽子型印字シート200Cを被ることで印字シート200を装着することができ、さらに加えてエプロン型印字シート200Aを装着してもよい。
【0041】
準備が整うと、撮影者が頭部画像を取得していく(Step202)。より詳しくは、対象者の周囲を移動しながら(適当な方向較差を保ちつつ水平撮影方向を変えながら)、頭部全周を網羅するまで頭部画像を順次取得していく。そしてモデル作成手段102が、頭部画像記憶手段106から複数の頭部画像を読み出すとともに、これら頭部画像を用いて対象者の頭部3Dモデルを作成する(Step203)。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本願発明の3次元頭部モデル作成システム、及び3次元頭部モデル作成方法は、頭部全体を覆うかつらや部分的に覆う部分かつら、ウィッグなどに利用できるほか、帽子やヘルメットのサイズを把握する場合などにも利用することができる。
【符号の説明】
【0043】
100 3次元頭部モデル作成システム
101 (3次元頭部モデル作成システムの)画像取得手段
102 (3次元頭部モデル作成システムの)モデル作成手段
103 (3次元頭部モデル作成システムの)姿勢計測手段
104 (3次元頭部モデル作成システムの)警告手段
105 (3次元頭部モデル作成システムの)姿勢案内手段
106 (3次元頭部モデル作成システムの)頭部画像記憶手段
107 (3次元頭部モデル作成システムの)出力手段
200 印字シート
200A エプロン型印字シート
200C 帽子型印字シート
300 スケール
FM 立体顔モデル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10