(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-16
(45)【発行日】2023-08-24
(54)【発明の名称】濁度計、及び濁度色度計
(51)【国際特許分類】
G01N 21/59 20060101AFI20230817BHJP
G01N 21/21 20060101ALI20230817BHJP
G01N 21/27 20060101ALI20230817BHJP
【FI】
G01N21/59 Z
G01N21/21 Z
G01N21/27 Z
(21)【出願番号】P 2019100026
(22)【出願日】2019-05-29
【審査請求日】2022-05-16
(73)【特許権者】
【識別番号】301078191
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテクソリューションズ
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】菅宮 岳
【審査官】三宅 克馬
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-120064(JP,A)
【文献】国際公開第2009/116633(WO,A1)
【文献】特開2001-221744(JP,A)
【文献】特開2016-206051(JP,A)
【文献】特開2000-214081(JP,A)
【文献】特開平04-351938(JP,A)
【文献】国際公開第2018/198693(WO,A1)
【文献】特開2013-96897(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00 - G01N 21/958
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
透過光方式の濁度計であって、
発光素子と、
前記発光素子の全方向性の光が入射される測定セルと、
前記測定セルを透過した光を受光する受光素子と、
前記測定セルと前記受光素子の間に設置された偏光板と、を備
え、
前記偏光板は、p偏光を透過する、
ことを特徴とする濁度計。
【請求項2】
請求項
1に記載の濁度計であって、
前記発光素子は、略660nmの光を発生するLEDである、
ことを特徴とする濁度計。
【請求項3】
透過光方式の濁度色度計であって、
第一、第二の発光素子と、
前記第一、第二の発光素子の全方向性の光が入射される測定セルと、
前記測定セルを透過した光をそれぞれ受光する第一、第二の受光素子と、
前記測定セルと前記第一、第二の受光素子の間の少なくとも一方に設置された偏光板と、を備
え、
前記偏光板は、p偏光を透過する、
ことを特徴とする濁度色度計。
【請求項4】
請求項
3に記載の濁度色度計であって、
前記第一、第二の発光素子は、それぞれ略660nm、略390nmの光を発生するLEDである、
ことを特徴とする濁度色度計。
【請求項5】
請求項
3に記載の濁度色度計であって、
前記第一、第二の発光素子は、第一、第二のLEDであり、
前記偏光板は、前記測定セルと前記第一、第二の受光素子との間にそれぞれ設置された第一、第二の偏光板である、
ことを特徴とする濁度色度計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、濁度計、及び濁度色度計に係り、特に透過光の光量をもとに光学的に濁度、色度を求める測定技術に関する。
【背景技術】
【0002】
浄水などの水処理プロセスでは、濁度、色度の測定及び管理は重要な項目となっており、濁度計、濁度色度計が用いられている。濁度計や濁度色度計の方式には、透過光方式、散乱光方式、表面散乱光方式、透過散乱光方式などがある。濁度計の指示値は、測定対象水の濁りの程度、色度計の指示値は色の程度(フミン質の含有量)で決まるが、測定対象水以外からの余分な光が指示値の精度に大きく影響する。
【0003】
このような余分な光で測定精度が低下するのを防止する先行技術として、特許文献1がある。特許文献1では、受光素子の前に光通過制限部材を設けることにより、散乱光の受光素子への入射を防止して、ノイズ低減を図る濁度計が開示されている。光通過制限部材は、遮光板に貫通孔を形成し、該貫通孔の中心部を透過光が通るようにして、余分な光である迷光の影響を少なくしている。また、特許文献2には濁度色度計の一構成例が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2006-317270号公報
【文献】特開2013-120064号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した先行技術にあっては、遮光板に貫通孔を形成し、貫通孔の中心部を透過光が通るようにして迷光の影響を少なくしているため、測定セル壁面からの反射光や、測定対象水内に発生し、測定セル壁面に付着した気泡からの乱反射光などの影響を排除することが難しかった。
【0006】
本発明の目的は、上記の課題を解決し、測定セル壁面からの反射光や気泡による乱反射光や迷光等を受光素子に入射させないようにすることが可能な透過光方式の濁度計、及び濁度色度計を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するため、本発明においては、透過光方式の濁度計であって、発光素子と、発光素子の光が入射される測定セルと、測定セルを透過した光を受光する受光素子と、測定セルと受光素子の間に設置された偏光板とを備える構成の濁度計を提供する。
【0008】
また、上記の目的を達成するため、本発明においては、透過光方式の濁度色度計であって、
第一、第二の発光素子と、第一、第二の発光素子の光が入射される測定セルと、測定セルを透過した光をそれぞれ受光する第一、第二の受光素子と、測定セルと前記第一、第二の受光素子の間の少なくとも一方に設置された偏光板と、を備える、
ことを特徴とする濁度色度計を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、測定セル壁面から反射光、気泡による乱反射光、迷光等を受光素子に入射させないようにできるので、ノイズを低減し、測定精度の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施例1に係る透過方式の濁度計の要部を示す図である。
【
図2】実施例1に係る濁度計の偏光板の機能を説明するための図である。
【
図3】実施例2に係る濁度色度計の一構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明を実施するための各種の形態を図面に従い順次説明する。複数の図面で共通する数番は同一物を示している。なお、実施の形態の説明において、濁度計が濁度を測定する対象として、水を例示するが、水に限定されず他の液体にも適用可能である。
【実施例1】
【0012】
実施例1は、偏光板を用いた透過光方式の濁度計の実施例である。すなわち、透過光方式の濁度計であって、発光素子と、発光素子の光が入射される測定セルと、測定セルを透過した光を受光する受光素子と、測定セルと受光素子の間に設置された偏光板と、を備える構成の濁度計の実施例である。
【0013】
図1に実施例1の透過光方式の濁度計の概略構成を示した。同図に示すように、本実施例の透過光方式の濁度計の要部は、測定対象水が入れられる測定セル100、測定セル100に入射する光を発生するLED(Light Emitting Diode)などの発光素子101、測定セルを透過した光を受光する受光素子102、測定セル100の出射側、すなわち測定セル100と受光素子102の間に設置された偏光板103から構成される。
【0014】
このような濁度計においては、測定時に、測定セル100の内壁には測定対象水の溶存空気量、水温、および圧力によって気泡104が付着することがある。そのため、受光素子102には、発光素子101から測定セル100に入射し、測定対象水を透過した光105に加え、測定セル100の壁面に付着した気泡104で反射された反射光106や、測定セル100の内壁で反射された反射光107が入射する可能性がある。このような反射光106、107、更にその他の迷光が受光素子102に入射した場合、測定対象水以外からの余分な光がその指示値に大きく影響し、測定精度が低下してしまう。これを防止するため、本実施例の構成においては、測定セル100と受光素子102の間に偏光板103を設置している。偏光板103は、例えば、p偏光等の一方向性の偏光を透過させる機能を持つため、例えば、s偏光などの特定方向に振動する、気泡などからの反射光成分を除去することができる。
【0015】
図2は、このような偏光板103の機能を説明するための図である。同図に示すように、光源であるLEDなどの発光素子101から入射される、例えば略660nm、すなわち660nm付近の波長の光は、全方向性の光であるのに対し、気泡104で乱反射される反射光106や、測定セル100の壁面で反射される反射光107は、s偏光108が主体となる。そのため、s偏光を通過させず、p偏光を通過させる偏光板103を測定セル100の出射側に設置することにより、気泡104などからの反射光をカットすることができ、濁度計の測定精度の低下を防止することが可能となる。本発明者等による実験によれば、受光素子102の出力に基づく濁度計の指示値のS/N比を約6倍改善することができた。
【0016】
以上説明したように実施例1の濁度計、すなわち、測定セルの出射側に偏光板を設けた透過光方式による濁度計によれば、気泡による乱反射光、測定セル壁面からの反射光、及び迷光等を受光素子に入射しないようにして、測定ノイズ低減を図り、測定精度の向上を図ることが可能となる。
【実施例2】
【0017】
実施例1として、偏光板を設置した透過光方式の濁度計の実施例を説明したが、実施例2は透過光方式の濁度色度計の実施例である。すなわち、第一、第二の発光素子と、第一、第二の発光素子の光が入射される測定セルと、測定セルを透過した光をそれぞれ受光する第一、第二の受光素子と、測定セルと第一、第二の受光素子の間に設置された偏光板を備える構成の透過光方式の濁度色度計の実施例である。これにより、濁度計のみならず、色度計の指示値のS/N比を改善することにより、好適な濁度色度計を提供することができる。
【0018】
図3に実施例2の濁度色度計の一構成例を示した。
図1、
図2と共通する数番は同一物を示している。本実施例の濁度色度計では、実施例1の測定セルに対応する測定領域を備えた配管109を流れる測定対象水の濁度及び色度を、ガラス窓108を介して測定する。そのため、濁度計として用いる発光素子101a、受光素子102a、偏光板103aに加え、色度計として用いる発光素子101b、受光素子102b、偏光板103bが追加されている。色度計として用いる発光素子101bは、例えば略390nm、すなわち390nm付近の波長の光を発光する。
【0019】
受光素子102a、102bの出力は処理装置110の検出回路111に入力され、デジタル信号に変換され、コントローラ112に送られる。コントローラ112は、例えば中央処理部(CPU)やメモリから構成され、入力されるデジタル信号の処理・蓄積を行うプログラムや、発光素子101a、101bそれぞれの発光のタイミングを制御するプログラムが動作する。出力装置113は、コントローラ112から受け取った測定対象水の濁度や色度の情報を出力する。
【0020】
本実施例によれば、透過光方式による濁度色度計において、測定対象水内に発生する気泡によるばらつき影響低減を図った濁度色度計を提供することができる。すなわち、濁度色度計で、配管109の測定セル相当部分に付着した気泡などで、反射したランダム方向への自然光によるばらつきの影響を低減することができる。
【0021】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明のより良い理解のために詳細に説明したのであり、必ずしも説明の全ての構成を備えるものに限定されるものではない。例えば、実施例2の構成において、偏光板103bを省略することにより、実施例1同様、濁度計の指示値のS/N比を改善を図った濁度色度計を提供することができる。
【0022】
更に、上述した各構成、機能、処理回路、コントローラは、それらの一部又は全部を実現するCPU用のプログラムを作成する例を中心に説明したが、それらの一部又は全部を例えば集積回路で設計する等によりハードウェアで実現しても良いことは言うまでもない。すなわち、コントローラの全部または一部の機能は、プログラムに代え、例えば、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)などの集積回路などにより実現してもよい。
【符号の説明】
【0023】
100 測定セル
101、101a、101b 発光素子
102、102a、102b 受光素子
103、103a、103b 偏光板
104 気泡
105 透過光
106、107 反射光
108 ガラス窓
109 配管
110 処理回路
111 検出回路
112 コントローラ
113 出力装置