(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-16
(45)【発行日】2023-08-24
(54)【発明の名称】プリント配線板の製造方法
(51)【国際特許分類】
H05K 3/42 20060101AFI20230817BHJP
H05K 3/00 20060101ALI20230817BHJP
【FI】
H05K3/42 620A
H05K3/00 K
H05K3/42 610C
(21)【出願番号】P 2019114541
(22)【出願日】2019-06-20
【審査請求日】2022-05-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000228833
【氏名又は名称】日本シイエムケイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】弁理士法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加藤 利和
【審査官】小林 大介
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-125472(JP,A)
【文献】特開2003-318519(JP,A)
【文献】特開2007-173276(JP,A)
【文献】特開平09-321432(JP,A)
【文献】特開2013-214681(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 3/00
H05K 3/40- 3/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビアホールとビアホール以外の貫通開口部とを備えたピース基板が複数面付けされたプリント配線板の製造方法であって、
ガラス繊維を含む絶縁基材の表裏両面に銅層を備えた絶縁基板にドライフィルムをラミネートする工程と、次いで、前記ドライフィルムを露光・現像し、ビアホール形成箇所及び貫通開口部形成箇所のドライフィルムを除去する工程と、次いで、前記ドライフィルム除去部分から露出した銅層をエッチングにて除去する工程と、次いで、前記絶縁基板の一方の面から、前記ビアホール形成箇所にレーザ加工にて非貫通穴を形成する工程と、次いで、ブラスト加工にて、前記非貫通穴を貫通させて
、前記工程にて非貫通穴の内壁に残存したガラス繊維の塊部を除去しつつビアホールを形成すると共に貫通開口部を形成する工程と、次いで、前記ドライフィルムを剥離後、全面にパネルめっきを施す工程と、次いで、前記絶縁基板にドライフィルムをラミネートする工程と、次いで、前記ドライフィルムを露光・現像し、配線回路形成箇所以外のドライフィルムを除去後、エッチングにて配線回路を形成する工程と、次いで、ドライフィルムを剥離する工程とを有することを特徴とするプリント配線板の製造方法。
【請求項2】
前記ブラスト加工を前記絶縁基板の他方の面から行う、請求項
1に記載のプリント配線板の製造方法。
【請求項3】
前記ピース基板間を繋ぐ連結部を、前記ブラスト加工にてビアホール及び貫通開口部と共に形成することを特徴とする請求項1
又は2に記載のプリント配線板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、小径のビアホールとビアホール以外の貫通開口部とを備えたピース基板が複数面付けされたプリント配線板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プリント配線板を製造する際、製造効率の観点から、複数のピース基板をシートに面付けし、さらに、当該シートをワークボードに複数面付けして製造している。開口形状が円形のビアホールと貫通開口部を有するプリント配線板を製造する場合は、当該ビアホール及び貫通開口部をブラスト加工により形成することが知られている(特許文献1)。
【0003】
ブラスト加工の利点としては、ワークボードに配置された複数のピース基板のビアホールと貫通開口部を一括で形成できることである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、比較的小型の製品において、貫通穴径が40μm以下のビアホールと貫通開口部とをブラスト加工により形成する場合には、下記に示す問題が発生していた。
すなわち、ワークボードに配置された複数のピース基板に穴あけ加工を行う場合、先ず銅層をウインドエッチングする為の開口部にドライフィルムをラミネートし、次いで当該ドライフィルムを露光・現像した後、開口部分の銅層をエッチングにより除去することで開口部を形成し、当該開口部にブラスト処理によりビアホールの貫通穴と貫通開口部を同時に設ける。ところが、例えば、複数のピース基板が1シートに1万ピース面付けされ、さらに、当該シートが6面付けされたワークボードにおいて穴あけ加工を行うと、6万ピースのピース基板に、穴径が40μm以下のビアホールの貫通穴を6万穴あける必要がある。穴径が40μm以下のビアホールの貫通穴が6万穴もあると、6面付けのシートの中には銅層がエッチングされていない穴が1箇所、2箇所くらい出てしまうことがある。また、銅層がエッチングされて開口部が形成されても、ドライフィルムなどのカスが穴に詰まり貫通しない穴が数穴見受けられることがある。6面のうち全てのビアホールが貫通しているシートは3~4シート程度であった。
【0006】
また、ブラスト加工時の砥粒は粒径が大きいほど切削力は上がるが、穴径以上の砥粒は使えないため、仮に40μmの穴をあける場合は平均10μm程度の砥粒が使用される。ただ、平均10μmの砥粒には20μmを越えるものも含まれているため砥粒詰まりが発生し、貫通しない穴が見受けられる場合があった。砥粒を更に小さくすると、ビアホール以外の開口部分を貫通させるのに時間が掛かり、ブラストを当てる時間も長くなるため、マスク(ドライフィルム)の耐久性にも問題が発生する可能性があった。
【0007】
一般的な穴加工法としてはドリル加工や金型加工があるが小径穴に対応できない。また、レーザ加工は、穴内壁ガラス繊維の溶融による穴壁面の凹凸ができるという問題があった。
【0008】
本発明は、上記の如き従来の問題と実状に鑑みてなされたものであり、穴径が40μm以下と小径のビアホールの加工精度に優れたプリント配線板を得ることができる方法を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記の課題を解決すべく種々研究を重ねた結果、レーザ加工にてビアホールを形成するための非貫通穴又は貫通穴を形成した後に、ブラスト加工にてビアホールと貫通開口部とを形成すれば、極めて良い結果が得られることを見い出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、ビアホールとビアホール以外の貫通開口部とを備えたピース基板が複数面付けされたプリント配線板の製造方法であって、ガラス繊維を含む絶縁基材の表裏両面に銅層を備えた絶縁基板にドライフィルムをラミネートする工程と、次いで、前記ドライフィルムを露光・現像し、ビアホール形成箇所及び貫通開口部形成箇所のドライフィルムを除去する工程と、次いで、前記ドライフィルム除去部分から露出した銅層をエッチングにて除去する工程と、次いで、前記絶縁基板の一方の面から、前記ビアホール形成箇所にレーザ加工にて非貫通穴を形成する工程と、次いで、ブラスト加工にて、前記非貫通穴を貫通させて、前記工程にて非貫通穴の内壁に残存したガラス繊維の塊部を除去しつつビアホールを形成すると共に貫通開口部を形成する工程と、次いで、前記ドライフィルムを剥離後、全面にパネルめっきを施す工程と、次いで、前記絶縁基板にドライフィルムをラミネートする工程と、次いで、前記ドライフィルムを露光・現像し、配線回路形成箇所以外のドライフィルムを除去後、エッチングにて配線回路を形成する工程と、次いで、ドライフィルムを剥離する工程とを有することを特徴とするプリント配線板の製造方法により上記課題を解決したものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明のプリント配線板の製造方法によれば、レーザ加工にてビアホールを形成するための非貫通穴又は貫通穴を形成した後に、ブラスト加工にてビアホールと貫通開口部とを形成するため、穴径が40μm以下と小径のビアホールであっても加工精度を高めることができる。また、レーザ加工の際に非貫通穴又は貫通穴の内壁にガラス繊維の塊部が発生しても前記ブラスト加工にてクリーニングされるので、安定しためっきを形成することが可能となり、貫通めっきスルーホールの接続信頼性を高めることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係るプリント配線板の製造例を示す概略断面工程図である。
【
図2】
図1に引き続く、本発明の第1の実施形態に係るプリント配線板の製造例を示す概略断面工程図である。
【
図3】
図2に引き続く、本発明の第1の実施形態に係るプリント配線板の製造例を示す概略断面工程図である。
【
図4】本発明の第2の実施形態に係るプリント配線板の製造例を示す概略断面工程図である。
【
図5】本発明で得られたプリント配線板を説明するための概略平面図であり、(a)は、隣接するピース基板が当該ピース基板間を繋ぐ連結部で連結された状態を示したものであり、(b)は、複数のピース基板が面付けされたシート基板を示したものであり、(c)は、当該シート基板が6面付けされたワークボードを示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下本発明の実施の形態を図面と共に説明する。
【0014】
図1~
図3を用いて本発明の第1の実施の形態に係るプリント配線板の製造方法について説明する。
【0015】
先ず、絶縁基材20の両面に銅箔21を備えた銅張絶縁基板22にドライフィルム23をラミネートする(
図1(a))。絶縁基材20の板厚は40μm、銅箔の厚みは12μm程度であるが、ハーフエッチング工程により、銅箔12μmから6μm程度に薄箔化することで、後工程での銅箔開口直径40μm以下が形成し易くなり、かつさらに後工程での回路幅10μm程度のファインパターンも形成し易くなる。また、ドライフィルム23の膜厚は、15μmから50μm程度であるが、厚みが厚い方が後工程でブラスト加工のマスクとして兼用する際の耐性は高いが、一方で小径の開口部を形成するのが難しくなる。そのため、ドライフィルム23の膜厚は30μm程度のものが適宜使用される。
また、一般的に千ピースを越える集合基板の場合、かなりの合わせ精度が求められるためデジタル露光機対応のドライフィルムを使用することが望ましい。
【0016】
次いで、当該ドライフィルム23を露光・現像して、ビアホール形成箇所24及び貫通開口部形成箇所25のドライフィルムを除去する(
図1(b))。次に、当該ドライフィルム除去部分から露出した銅箔21をエッチングすることにより除去する(
図1(c))。
【0017】
次いで、前記絶縁基板22a(絶縁基材と銅箔を含む)の一方の面から、ドライフィルム23と銅箔21をマスクとして、当該ビアホール形成箇所24にレーザ加工26にて絶縁基材20の途中まで非貫通穴27を形成する(
図1(d))。
ここでレーザ加工機は、UVレーザ、エキシマレーザ、炭酸ガスレーザの何れかが好適に使用される。レーザ加工26は、穴径が40μm以下と小径の非貫通穴27を形成する上で非常に有効な加工方法である。また、本工程で、非貫通穴27とすることによって、基板を設置したテーブルにダメージを与えることを避けることができる。
本工程では、当該レーザ加工26時に発生する熱により、非貫通穴27の内壁に露出した絶縁基材20に含まれるガラス繊維が溶融するため、当該ガラス繊維の塊部29が非貫通穴27の内壁に残存する。
【0018】
次いで、ブラスト加工30にて当該非貫通穴27を貫通させてビアホール12を形成すると共に貫通開口部13を形成する(
図2(e))。ブラスト加工30を行うと、非貫通穴27の内壁がクリーニングされるので、前工程にて非貫通穴27の内壁に残存したガラス繊維の塊部29が除去される。そのため、後工程で銅めっきを凹凸無く付与することが可能となる。また、ビアホールの接続信頼性が高まる。
当該ブラスト加工30は、前記レーザ加工26を行った面と反対の面、すなわち前記絶縁基板22a(絶縁基材と銅箔を含む)の他方の面から行うことが望ましい。その理由としては、レーザ加工26による非貫通穴27の形成でマスクとして使用しているドライフィルム23に損傷がある場合、マスクとしての機能が低下し、穴径が拡大する恐れがあるのでこれを避けるためである。また、前記絶縁基板22の他方の面からブラスト加工30を行なうことによって、穴の形状がテーパー形状になるのを抑制することもできる。しかし、ドライフィルム23に損傷が無ければ、レーザ加工26を行う面と同じ面からブラスト加工30を施しても構わない。ただしこの場合、穴の形状はレーザ加工26とブラスト加工30を行なった面は、反対面より穴径が大きいテーパー形状となる。
ちなみに、図示しないが、本工程のブラスト加工30にて、ビアホール12及び貫通開口部13と共に、各ピース基板に部品を実装した後の分割作業を容易にするための貫通開口部14を、隣接するピース基板間を繋ぐための連結部11(
図5(a)の概略平面図参照)を残して形成する。
【0019】
次いで、ドライフィルム23を剥離後(
図2(f))、全面にパネルめっき31(無電解・電解めっき)を施す(
図2(g))。次いで、前記絶縁基板22b(絶縁基材と銅箔及びパネルめっきを含む)にドライフィルム23をラミネートし(
図3(h))、当該ドライフィルム23を露光・現像して、配線回路形成箇所32以外のドライフィルム23を除去後(
図3(i))、当該配線回路形成箇所32以外の銅箔及びめっきをエッチングすることにより配線回路33を形成する(
図3(j))。
次いで、ドライフィルム23を剥離して、
図3(k)のプリント配線板を得る。
【0020】
続いて、
図4を用いて本発明の第2の実施の形態に係るプリント配線板の製造方法について説明する。
第1の実施の形態に係るプリント配線板の製造方法と異なるところは、
図4(l)に示すように、前記絶縁基板22a(絶縁基材と銅箔を含む)の一方の面から、ドライフィルム23と銅箔21をマスクとして、ビアホール形成箇所24にレーザ加工26にて絶縁基材20を貫通する貫通穴28を形成することである。本工程でも、当該レーザ加工26時に発生する熱により、貫通穴28の内壁に露出した絶縁基材20に含まれるガラス繊維が溶融するため、当該ガラス繊維の塊部29が貫通穴28の内壁に残存し、凹凸が形成される。
【0021】
次いで、
図4(m)に示すように、前記貫通穴28及び貫通開口部形成箇所25にブラスト加工30をしてビアホール12を形成すると共に貫通開口部13を形成する。ブラスト加工30を行うと、貫通穴28の内壁がクリーニングされるので、前工程にて貫通穴28の内壁に残存したガラス繊維の塊部29が除去される。そのため、後工程で銅めっきを凹凸無く付与することが可能となる。また、ビアホールの接続信頼性が高まる。
本工程においても、ブラスト加工30は、前記レーザ加工26を行った面と反対の面、すなわち前記絶縁基板22の他方の面から行うことが望ましい。その理由としては、前記と同様である。
また、図示しないが、本工程のブラスト加工30においても、ビアホール12及び貫通開口部13と共に、各ピース基板に部品を実装した後の分割作業を容易にするための貫通開口部14を、隣接するピース基板間を繋ぐための連結部11(
図5(a)の概略平面図参照)を残して形成する。
【0022】
次いで、ドライフィルム23を剥離後(
図4(n))、全面にパネルめっき31(無電解・電解めっき)を施すが、この後の工程は、前記
図2(g)から
図3(k)と同じである。
【0023】
続いて、
図5を用いて本発明の製造方法で得られるプリント配線板100について説明する。
図5は、プリント配線板100を上から見た場合の概略平面図を示したものであり、(a)は、隣接するピース基板10が当該ピース基板間を繋ぐ連結部11で連結された状態を示している。当該ピース基板10には、内壁に銅めっきが施された小径のビアホール12が形成され、当該ビアホール12の他に、貫通開口部13が形成されている。また、当該連結部11同士の間には、各ピース基板10に部品を実装した後の分割作業を容易にするための貫通開口部14形成されている。部品を実装した後に各ピース基板10に分割するには、連結部11を除去することによって容易に各ピース基板10に分割することができる。当該ピース基板10は、
図5(b)に示すように、シート基板110に複数面付けされ、また、当該シート基板110は、ワークボード120に6面付けされている。
【符号の説明】
【0024】
10:ピース基板
11:連結部
12:ビアホール
13:貫通開口部
14:各ピース基板への分割作業を容易にするための貫通開口部
20:絶縁基材
21:銅箔
22:銅張絶縁基板
22a:絶縁基板(絶縁基材に銅箔を含む)
22b:絶縁基材(絶縁基材に銅箔とパネルめっきを含む)
23:ドライフィルム
24:ビアホール形成箇所
25:貫通開口部形成箇所
26:レーザ加工
27:非貫通穴
28:貫通穴
29:ガラス繊維の塊部
30:ブラスト加工
31:パネルめっき(無電解・電解めっき)
32:配線回路形成箇所
33:配線回路
34:絶縁基板
100:プリント配線板
110:シート基板
120:シート基板を6面付けしたワークボード