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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-16
(45)【発行日】2023-08-24
(54)【発明の名称】外壁構造及び建物
(51)【国際特許分類】
   E04F 13/08 20060101AFI20230817BHJP
   E04B 1/682 20060101ALI20230817BHJP
【FI】
E04F13/08 X
E04B1/682 A
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019128677
(22)【出願日】2019-07-10
(65)【公開番号】P2021014692
(43)【公開日】2021-02-12
【審査請求日】2022-03-28
(73)【特許権者】
【識別番号】303046244
【氏名又は名称】旭化成ホームズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100186015
【弁理士】
【氏名又は名称】小松 靖之
(72)【発明者】
【氏名】菊地 訓
【審査官】山口 敦司
(56)【参考文献】
【文献】実開平07-004661(JP,U)
【文献】実開平02-047304(JP,U)
【文献】特開平06-229056(JP,A)
【文献】特開2009-185565(JP,A)
【文献】特開2001-049830(JP,A)
【文献】特開2001-090236(JP,A)
【文献】特開2016-075112(JP,A)
【文献】実開昭57-91906(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04F 13/08
E04B 1/682
E04B 9/30
E04F 19/04
E04B 2/94
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
躯体に支持され、前記躯体の設置基準から屋外側表面までの距離が異なる第1パネル材及び第2パネル材を備える外壁構造であって、
隣接する前記第1パネル材同士の間、又は、隣接する前記第2パネル材同士の間、の目地部に打設されるシーリング、及び、隣接する前記第1パネル材と前記第2パネル材との間の目地部に打設されるシーリングは、前記躯体の前記設置基準から打設位置までの前記第1パネル材及び前記第2パネル材の厚さ方向の距離が略一定となるように構成されていることを特徴とする外壁構造。
【請求項2】
前記第1パネル材及び前記第2パネル材は厚さが異なり、前記第1パネル材及び前記第2パネル材の屋内側表面が同一平面上に位置するように配置されている、請求項1に記載の外壁構造。
【請求項3】
前記第1パネル材は前記第2パネル材より厚く、
前記第1パネル材及び前記第2パネル材の端面には、シーリングを打設するための凹部であるシーリングポケットが形成されており、
前記第1パネル材の前記シーリングポケットが前記第2パネル材の前記シーリングポケットより前記第1パネル材及び前記第2パネル材の厚さ方向に深いことを特徴とする、請求項2に記載の外壁構造。
【請求項4】
隣接する前記第1パネル材及び前記第2パネル材の間の目地部において、前記第1パネル材の前記シーリングポケットは、前記第2パネル材に向けて徐々に前記シーリングポケットの前記第1パネル材及び前記第2パネル材の厚さ方向の深さが大きくなるように底面が斜めに形成されている、請求項に記載の外壁構造。
【請求項5】
外壁から突出する外部床の前記外壁側の防水層の立上がり部の上端が、上下に隣接する前記第1パネル材及び前記第2パネル材の目地部に配置されている、請求項1~4の何れか一項に記載の外壁構造。
【請求項6】
外壁から突出する外部床の前記外壁側の防水層の立上がり部の上端が、前記第1パネル材又は前記第2パネル材の上下方向の中間部に配置されている、請求項1~4の何れか一項に記載の外壁構造。
【請求項7】
外壁から突出する軒天部が設けられる前記第1パネル材又は前記第2パネル材の表面に、軒天版を差し込み可能な欠き込みが設けられている、請求項1~の何れか一項に記載の外壁構造。
【請求項8】
外壁から突出する軒天部が設けられる部分に外壁の表面形状に対応する見切り材が配置されている、請求項1~の何れか一項に記載の外壁構造。
【請求項9】
請求項1~の何れか一項に記載の外壁構造を備えることを特徴とする建物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の外壁構造、及び当該外壁構造を備える建物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鉄骨造の軸組みを有する工業化住宅などの建物の外壁は、並べて隣接配置された複数の外壁パネルによって形成されている。軽量気泡コンクリート(ALC)パネル等の各外壁パネル同士の間には目地部が形成され、目地部には、雨水等の侵入を防ぐためにシーリングが施される。
【0003】
例えば、特許文献1には、同一平面上に隣接配置された一対の外壁パネル(パネル材)の間の目地部において、対向する一対の端面同士の間にシーリングを打設(充填)することにより形成されるシーリング部の構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-31617号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、通常、目地部におけるシーリングの打設位置は、外壁パネルの厚さによらず外表面(屋外側表面)から一定の距離となるように設定されている。また、一般的に1つの建物で用いられる複数の外壁パネルは、部材の共通化を図る観点等から、全て同一の厚さの外壁パネルが用いられている。
【0006】
しかしながら、例えば、意匠性を高めること等を意図して、厚さの異なる外壁パネルを並べて配置しようとした場合、厚さの異なる外壁パネル間の目地部には段差が形成されるため、当該段差部分のシーリングの施工は複雑になり、作業性が悪化する虞がある。また、段差によってシーリングの凹凸が目立ち、外観の意匠性が悪化したり、段差によってシーリング性能(防水性能)が低下したりする懸念もある。
【0007】
それゆえ、本発明は、複数の外壁パネルを備える外壁構造において、目地部のシーリング施工が容易であり、且つ、意匠性及びシーリング性能の低下も抑制可能な外壁構造及び建物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、本発明の外壁構造は、パネル材を支持する躯体の設置基準からパネル材の屋外側表面までの距離が異なる複数のパネル材を備える外壁構造であって、
隣接するパネル材間の目地部に打設されるシーリングは、前記パネル材を支持する躯体の設置基準から前記シーリングの打設位置までの前記パネル材の厚さ方向の距離が略一定となるように構成されていることを特徴とするものである。
【0009】
なお、本発明の外壁構造にあっては、前記複数のパネル材は厚さが異なり、各パネル材の屋内側表面が同一平面上に位置するように配置されていることが好ましい。
【0010】
また、本発明の外壁構造にあっては、外壁から突出する外部床の前記外壁側の防水層の立上がり部の上端が、上下に隣接する前記パネル材の目地部に配置されていることが好ましい。
【0011】
また、本発明の外壁構造にあっては、外壁から突出する外部床の前記外壁側の防水層の立上がり部の上端が、前記パネル材の上下方向の中間部に配置されていることが好ましい。
【0012】
また、本発明の外壁構造にあっては、外壁から突出する軒天部が設けられる前記パネル材の表面に、軒天版を差し込み可能な欠き込みが設けられていることが好ましい。
【0013】
また、本発明の外壁構造にあっては、外壁から突出する軒天部が設けられる部分に外壁の表面形状に対応する見切り材が配置されていることが好ましい。
【0014】
また、本発明の外壁構造にあっては、パネル材を支持する躯体の設置基準からパネル材の屋外側表面までの距離が異なる2枚のパネル材間の目地部において、前記距離が大きい一方のパネル材のシーリングポケットは、対向する他方のパネル材に向けて徐々にシーリングポケットの深さが大きくなるように底面が斜めに形成されていることが好ましい。
【0015】
また、本発明の建物は、上記の何れかの外壁構造を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、厚さの異なる複数の外壁パネルを備える外壁構造において、目地部のシーリング施工が容易であり、且つ、意匠性及びシーリング性能の低下も抑制可能な外壁構造及び建物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施形態としての建物の外壁構造を示す斜視図である。
図2図1の外壁構造における第1目地部を示す断面図である。
図3図1の外壁構造における第2目地部を示す断面図である。
図4図1の外壁構造における第3目地部を示す断面図である。
図5図1の外壁構造における外部床の一例を示す断面図である。
図6図1の外壁構造における外部床の他の例を示す断面図である。
図7図1の外壁構造における軒天部の一例を示す断面図である。
図8図1の外壁構造における軒天部の他の例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。図1は、本発明の外壁構造10を備える建物1を示した斜視図である。
【0019】
なお、建物1は、例えば、鉄骨造の軸組みを有する工業化住宅とすることができる。なお、工業化住宅としては例えば、鉄筋コンクリート造の基礎などの下部構造体と、柱や梁などの軸組部材で構成される軸組架構を有し、下部構造体の上方に設けられた上部構造体と、で構成される。なお、下部構造体は、地盤上に設置され、上部構造体を支持する。また、軸組架構を構成する軸組部材は、予め規格化(標準化)されたものとすることができ、その場合、予め工場にて製造された後、建築現場に搬入されて組み立てられる。
【0020】
建物1は、所定の平面モジュールに基づいて構築されている。平面モジュールとは、建築において設計上の基準となる基本寸法を意味し、建物1は、隣り合う柱の中心間距離などの平面寸法が平面モジュールの整数倍となるように構成されている。つまり、基礎の基礎梁、上部構造体の柱及び梁は、平面視において、この平面モジュールに等しいピッチで格子状に配された仮想基準線(以下、単に「基準線」と記載する。)上の所定位置に、各部材の中心位置が一致するように配置されている。なお、外壁構造10を構成するパネル材20、30を支持する躯体の設置基準は、基本的に上記平面モジュールに基づく躯体(パネル材を支持する構造部材)の基準線に一致する。
【0021】
建物1の外周壁を構成する本実施形態の外壁構造10は、図1に示すように、上下左右に並べて配置された矩形板状(パネル状)の複数のパネル材20、30(外壁パネル)を備えている。また、外壁構造10は、パネル材20、30を支持する躯体の設置基準Mからパネル材20、30の屋外側表面までの距離が異なる複数のパネル材20、30を備えている。本例では、複数のパネル材20、30は、厚さの異なる第1パネル材20及び第2パネル材30を有している。具体的に、本例の外壁構造10は、厚さの大きい第1パネル材20と、第1パネル材20よりも厚さが小さい第2パネル材30とを備えている。本例の第1パネル材20及び第2パネル材30としては、例えば、軽量気泡コンクリート(ALC)パネル、PCコンクリートパネル、及び押出成型セメント板などを用いることができるが、これに限定されない。なお、外壁構造10を構成するパネル材20、30は全て同じ厚さでもよい。このようにすることで、パネル材20、30の製造や施工管理が容易となる。その場合、パネル材20、30を支持する躯体の設置基準Mからパネル材20、30の屋内側表面までの距離が異なるように各パネル材20、30を配置することで、設置基準Mからパネル材20、30の屋外側表面までの距離も異なるように配置される。
【0022】
外壁構造10において、第1パネル材20及び第2パネル材30は、建物1の躯体を構成する梁等の構造部材に対して直接、または接続部材等を介して間接的に取付けられ、当該構造部材(躯体)に支持される。また、外壁構造10を構成する第1パネル材20及び第2パネル材30は、当該第1パネル材20及び第2パネル材30を支持する躯体の設置基準M(図5参照)からパネル材20、30の裏面20b、30b(屋内側表面)までの距離(パネル材20、30の厚さ方向の距離)が一定となるように配置されている。このように第1パネル材20及び第2パネル材30を躯体の設置基準Mから同一の距離に設置することで、躯体に対するパネル材20、30の取付け構造、パネル材20、30の室内側に配置される断熱材や内壁の納まりが複雑化し難くなる。
【0023】
本例において、第1パネル材20の裏面20b(屋内側表面)と、第2パネル材30の裏面30b(屋内側表面)とは、同一平面上に位置している。そのため、上下又は左右に第1パネル材20と第2パネル材30とが並べて隣接配置されている場合、第1パネル材20の外表面20a(屋外側表面)は、第2パネル材30の外表面30a(屋外側表面)よりも厚さ方向外側に突出して配置される。すなわち、第1パネル材20と第2パネル材30との間の厚さの差の分だけ、第1パネル材20の外表面20aが厚さ方向外側に位置している。
【0024】
なお、第1パネル材20及び第2パネル材30の躯体への取付け方法は特に限定されない。第1パネル材20及び第2パネル材30は、例えば梁等の構造部材に固定された接続金物を介して間接的に躯体に固定され、支持される構成とすることができる。
【0025】
外壁構造10において、上下、左右に隣接する2枚のパネル材20、30の間には目地部40が形成され、当該目地部40には、パネル材20、30間の隙間を埋めるためのシーリング50が打設される。
【0026】
ここで、厚さの異なる第1パネル材20及び第2パネル材30が混在する本例の外壁構造10の場合、目地部40として、第1パネル材20同士が上下または左右に隣接配置される第1目地部41と、第2パネル材30同士が隣接配置される第2目地部42と、第1パネル材20と第2パネル材30が隣接配置される第3目地部43とを含むこととなる。
【0027】
図2は、第1目地部41を拡大して示す断面図であり、図3は、第2目地部42を拡大して示す断面図であり、図4は、第3目地部43を拡大して示す断面図である。
【0028】
本実施形態において、第1目地部41、第2目地部42及び第3目地部43の何れの領域においても、シーリング50は、上記パネル材20、30を支持する躯体の設置基準Mからシーリング50の打設位置までの厚さ方向の距離が、略一定となるように構成されている。すなわち、外壁構造10においては、パネル材20、30の厚さによらず、目地部40の何れの領域においてもシーリング50の打設位置がパネル厚さ方向において上記設置基準Mから略一定となっている。ここで、「略一定」とは、パネル材20、30を支持する躯体の設置基準Mからシーリング50の打設位置までの厚さ方向の距離が完全に同一である場合に限定されず、外壁構造1を構成するパネル材20、30のうち、厚さ寸法が最も小さいパネル材30の厚さ寸法の10%以下、且つ10mm以下の差違を含むことを意味している。なお、当該差違は、好適には、5%以下、且つ5mm以下であることが好ましく、さらに好適には1%以下、且つ1mm以下であることが望ましい。
【0029】
第1パネル材20の上下左右の端面20c(小口面)には、シーリング50を打設するための凹部であるシーリングポケット21が形成されている。なお、本例において、第1パネル材20のシーリングポケット21の形状は、上下左右の全ての端面20cで同一であるが、これに限られず、シーリングポケット21の形状は適宜変更可能である。
【0030】
同様に、第2パネル材30の上下左右の端面30cには、シーリングポケット31が形成されている。本例において、第2パネル材30のシーリングポケット31の形状は、上下左右の全ての端面30cで同一である。なお、第2パネル材30のシーリングポケット31の形状は、第1パネル材20のシーリングポケット21の形状とは異なっている。
【0031】
第1パネル材20及び第2パネル材30の各シーリングポケット21、31は、上下左右の各端面20c、30cの長手方向に沿って直線的に延在しており、各シーリングポケット21、31の横断面(当該長手方向に垂直な断面)は各端面20c、30cの長手方向の全体にわたって一定である。また、各シーリングポケット21、31は、各パネル材20、30の外表面20a、30a及び端面20c、30cに開口する切欠き状の凹部で構成されている。
【0032】
シーリングポケット21、31は、パネル材20、30の外表面20a、30aから裏面20b、30b側に向けて延在し、厚さ方向の中間部で終端している。
【0033】
図2、4に示すように、第1パネル材20のシーリングポケット21は、斜めに傾斜する底面21aを有し、対向するパネル材20、30に向けて徐々にシーリングポケット21の深さが大きくなるように構成されている。このような構成により、図4に示すように厚さの小さい第2パネル材30と隣接配置される場合であっても、シーリング50の厚さを十分に確保することができる。これにより、厚さの異なるパネル材20、30の間の目地部43においても、シーリング性能の低下をより確実に抑制することができる。なお、第2パネル材30のシーリングポケット31の底面31aは、第2パネル材30の外表面30a及び裏面30bと平行である。各シーリングポケット21の形状が、図示例に限られず、適宜変更可能である。
【0034】
図4に示すように、第1パネル材20の外表面20aからのシーリングポケット21の底面21aの最深部21bまでの距離(深さ)D1は、第2パネル材30の外表面30aからシーリングポケット31の最深部31bまでの距離(深さ)D2よりも大きくなっている。
【0035】
図5、6はそれぞれ、例えばベランダやルーフバルコニー等のように外壁から突出する外部床60の接続部の一例を示している。外部床60は、外壁構造10におけるパネル材20、30の外表面20a、30aよりも屋外側に突出し、水平方向に延在している。
【0036】
図5に示す外部床60は、ALCパネル等からなる床パネル材61と、床パネル材61の上面に重ねて配置されたパネル材62と、パネル材62の上部(外部床60の最外層)に設けられた防水層63とを有している。
【0037】
防水層63は、略平坦な底部63aと、底部63aの外縁部から上方に突出する立上がり部63bと、を備える。本例において、防水層63の外壁側(パネル材20、30側)の立上がり部63bの上端63cは、上下に隣接する厚さの大きい第1パネル材20と厚さの小さい第2パネル材30との間の目地部40(第3目地部43)に配置されている。目地部40には、立上がり部63bの上端63cを覆うようにシーリング50が打設される。
【0038】
ここで、図5において、躯体を構成する梁64の設置基準Mから、目地部40(第1目地部41、第2目地部42及び第3目地部43)におけるシーリング50の打設位置までの距離L1(パネル材20、30の厚さ方向の距離)は、パネル材20、30の厚さに関わらず略一定である。
【0039】
第1パネル材20は、梁64の上面に固定された接続部材65に取付けられている。本例の接続部材65は、水平板部65aと垂直板部65bとを有する。第1パネル材20は、接続部材65の水平板部65aの上面に載置されることで下方から支持され、第1パネル材20の裏面20bに当接する垂直板部65bによって屋内側から支持される。
【0040】
本例の第2パネル材30は、防水下地材として機能する。第2パネル材30は、床パネル材61の上面に載置され、接続部材66を介して梁64に接続されている。なお、接続部材65、66は、例えば金属製の板を折り曲げたり、溶接等により接合したりすることにより形成された部材とすることができるが、これに限られない。また、パネル材20、30は、梁64に直接取り付けてもよい。
【0041】
なお、特に限定されるものではないが、防水層63は例えば、曲げ加工等により形成された金属製の板材としての防水鋼板と、防水鋼板の形状に沿って、表面に貼り付けられた防水シートとで形成することができる。
【0042】
本例では、防水層63の外壁側の立上がり部63bの上端63cを構成する防水鋼板の端部が、第1パネル材20と第2パネル材30との間の第3目地部43の目地底に向けて織り込まれるように配置され、当該上端63cを屋外側から覆うように、第3目地部43にシーリング50が打設される。
【0043】
図5に示すように、防水層63の立上がり部63bの上端63cが、上下に隣接するパネル材20、30間の目地部40に配置されていることにより、パネル材20、30の厚さの違いが防水層63の立上がり部63bの上端63cの位置に影響しない。これにより、防水層63を構成する部材が複雑な形状とならず、簡潔な形状にすることができ、且つ、施工性も向上させることができる。また、防水層63の立上がり部63bの上端63cを配置するためにパネル材20、30の外表面20a、30aを切削して彫り込む必要がないので、施工がさらに容易となる。
【0044】
図6に示す外部床70は、ALCパネル等からなる床パネル材71と、床パネル材71の上面に重ねて配置されたパネル材72と、パネル材72の上部(外部床70の最外層)に設けられた防水層73とを有している。本例の床パネル材71は、第2パネル材30の外表面30aに突き当てるように配置されているが、これに限られず、例えば図5に示す床パネル材61のように、パネル材20、30の下面(下向きの端面20c、30c)に下方から当接させるように配置してもよい。
【0045】
図6に示すように、外壁を構成する第1パネル材20は、梁74の上面に固定された接続部材75に取付けられている。なお、図6に示す第2パネル材30に代えて第2パネル材30よりも厚さの大きい第1パネル材20を用いてもよい。その場合、第1パネル材20の外表面20aに設ける凹部32の彫り込み深さD3(外表面20aからの深さ)は、厚さが大きい分だけ第2パネル材30よりも大きくなる。
【0046】
防水層73は、底部73aと、底部73aの外縁部から上方に突出する立上がり部73bと、を備える。本例において、外壁側(パネル材20、30側)の立上がり部73bの上端73cは、第2パネル材30の上下方向の中間部に配置されている。具体的に、立上がり部73bの上端73cは、第2パネル材30の外表面30aに形成された水平方向の凹部32(溝)に配置され、当該凹部32には、立上がり部73bの上端73cを覆うようにシーリング50が打設されている。第2パネル材30の外表面30aから凹部32までの彫り込み深さD3は、第2パネル材30のシーリングポケット31の深さD2と同様である。なお、第1パネル材20の外表面20aに凹部32を形成する場合、外表面20aからの彫り込み深さD3は、第1パネル材20のシーリングポケット21の深さD1と同様となる。
【0047】
ここで、図6において、躯体を構成する梁74の設置基準Mから、立上がり部73bの上端73cを配置した凹部32のシーリング50の打設位置までのパネル材20、30の厚さ方向の距離L2は、パネル材20、30の厚さによらず略一定である。また、当該距離L2は、各パネル材20、30間の目地部40(第1目地部41、第2目地部42及び第3目地部43)におけるシーリング50の打設位置までの距離L1と同様である。
【0048】
このように、本例では、パネル材20、30の厚さ方向において、防水層73の立上がり部73bの上端73cを配置する凹部32のシーリング50の打設位置を、パネル材20、30間の目地部40の打設位置に合わせている。このような構成により、各シーリング50間に段差がなくなるため、防水層73の立上がり部73bを構成する部材の形状を簡潔にすることができる。また、各シーリング50間に段差がなくなり、立上がり部73bを構成する部材の形状が簡潔になることで、シーリング打設面の出入りがなくなり施工性が向上する。
【0049】
図7、8はそれぞれ、外壁から突出する軒天部80、90の一例を示している。軒天部80、90は、外壁構造10におけるパネル材20、30の外表面20a、30aよりも屋外側に突出し、水平方向に延在している。
【0050】
図7に示す軒天部80は、躯体を構成する梁84に接続部材85を介して接続された軒天版81を備えている。また、軒天部80が設けられる第1パネル材20の外表面20aには、軒天版81を差し込み可能な欠き込み23が設けられている。欠き込み23の深さD4は、パネル材20、30の厚さによらず、パネル材20、30間の目地部40のシーリング50の打設面に合わせて形成されている。すなわち、躯体を構成する梁84の設置基準Mから、欠き込み23の底面23aまでのパネル材20、30の厚さ方向の距離L3は、パネル材20、30の厚さによらず略一定である。また、当該距離L3は、各パネル材20、30間の目地部40(第1目地部41、第2目地部42及び第3目地部43)におけるシーリング50の打設位置までの距離L1と略一定である。
【0051】
本例にあっては、欠き込み23に差し込むように軒天版81を配置することで、軒天部80の壁見切り部と外壁の隙間(第1パネル材20の外表面20aと軒天版81との間の水平方向の隙間)を無くし、軒天部80の部材を簡潔にして意匠性を向上させ、且つ、軒天部80の施工性を向上させることができる。
【0052】
また、軒天部80において、第1パネル材20の外表面20aに欠き込み23を設けることで、第1パネル材20の左右に厚さの小さい第2パネル材30が隣接配置されている場合でも、軒天版81の端部の形状は直線で納めることができる。そのため、軒天版81の形状を簡潔にして意匠性を向上させ、且つ、施工性を向上させることができる。
【0053】
図8に示す軒天部90は、パネル材20、30の外表面20a、30aに欠き込み23を設けない場合を示している。軒天部90は、躯体を構成する梁94に接続部材95を介して接続された軒天版91を備えている。
【0054】
本例の場合、特にパネル材20、30間の目地部40において、軒天版91の端部と目地部40のシーリング50の打設面との間には隙間が形成され易いため、当該隙間を埋める見切り材(化粧部材)を配置することが好ましい。すなわち、外壁から突出する軒天部90が設けられる部分に外壁の表面形状に対応する見切り材が配置されていることが好ましい。これによれば、軒天部90におけるパネル材20、30の外表面20a、30aの形状に応じた凹凸及び軒天版91との間の隙間を目立ち難くすることができ、意匠性を高めることができる。
【0055】
以上の通り、本実施形態の外壁構造10にあっては、パネル材20、30の厚さによらず、設置基準Mから略一定の厚さ方向の距離に目地部40のシーリング50が打設される構成としている。このように、パネル材20、30の厚さによらずシーリング50の打設位置が揃っていることにより、目地部40のシーリング50の施工(打設)が容易となり、作業性が向上する。また、異なる厚さのパネル材20、30間でもシーリング50の打設面に段差が形成されないため、外観の意匠性の悪化、及びシーリング性能(防水性能)の低下を抑制することができる。さらに、シーリング50の打設面に段差が形成されないため、シーリング50の打設量を抑えてコストを低減しつつ、シーリング性能を確保することが可能となる。
【0056】
また、本実施形態の外壁構造10にあっては、図4に示すように、第1パネル材20の外表面20aが第2パネル材30の外表面30aよりも突出することで、第1パネル材20における第2パネル材30側を向く端面20c(小口面)のうち、突出する部分(露出部20d)が外部に露出することとなる(図4参照)。このように第1パネル材20の端面20cのうちの一部(露出部20d)を突出させて外部から視認可能とすることで、第1パネル材20の厚みが表現され、外壁構造10に重厚感、高級感を持たせ、意匠上を高めることができる。
【0057】
このように、本実施形態の外壁構造10によれば、厚さの異なるパネル材20、30を並べて配置することによって意匠上を高めるとともに、目地部40のシーリング50の施工を容易にし、且つ、意匠性及びシーリング性能の低下も抑制することができる。
【0058】
本発明に係る入隅壁構造は、上述した実施形態の構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲で記載された内容を逸脱しない範囲で、様々な構成により実現することが可能である。例えば、上記実施形態では厚さの異なる2種類のパネル材20、30を備える外壁構造10について説明したが、厚さの異なる3種類以上のパネル材を備える構成としてもよい。また、上記実施形態では、パネル材20、30の裏面20b、30bが全て同一平面上に配置される場合について説明したが、躯体の設置基準Mからシーリングの打設位置までの距離が略一定となるように配置されていれば、これに限られず、各パネル材20、30の裏面20b、30b位置がパネル材20、30の厚さ方向にずれていてもよい。
【符号の説明】
【0059】
1:建物
10:外壁構造
20:第1パネル材
20a:外表面
20b:裏面(屋内側表面)
20c:端面
20d:露出部
21:シーリングポケット
21a:底面
21b:最深部
23:欠き込み
23a:欠き込みの底面
30:第2パネル材
31:シーリングポケット
31a:底面
31b:最深部
32:凹部(溝)
40:目地部
41:第1目地部
42:第2目地部
43:第3目地部
50:シーリング
60:外部床
61:床パネル材
62:パネル材
63:防水層
63a:底部
63b:立上がり部
63c:上端
64:梁(躯体)
65、66:接続部材
65a:水平板部
65b:垂直板部
70:外部床
71:床パネル材
72:パネル材
73:防水層
73a:底部
73b:立上がり部
73c:上端
74:梁(躯体)
75:接続部材
80:軒天部
81:軒天版
84:梁(躯体)
85:接続部材
90:軒天部
91:軒天版
94:梁(躯体)
95:接続部材
D1、D2:シーリングポケットの深さ
D3:凹部の深さ
M:設置基準
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8