(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-16
(45)【発行日】2023-08-24
(54)【発明の名称】溶融塩電解槽、溶融塩固化層の形成方法、金属の製造方法
(51)【国際特許分類】
C25C 7/04 20060101AFI20230817BHJP
C25C 3/04 20060101ALI20230817BHJP
C25C 7/00 20060101ALI20230817BHJP
C22B 26/22 20060101ALN20230817BHJP
【FI】
C25C7/04 302
C25C3/04
C25C7/00 302B
C22B26/22
(21)【出願番号】P 2019140347
(22)【出願日】2019-07-30
【審査請求日】2022-06-22
(73)【特許権者】
【識別番号】390007227
【氏名又は名称】東邦チタニウム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】秋元 文二
【審査官】▲辻▼ 弘輔
(56)【参考文献】
【文献】特開昭58-157983(JP,A)
【文献】実開昭61-168168(JP,U)
【文献】特公平03-002958(JP,B2)
【文献】特開2019-52335(JP,A)
【文献】国際公開第2007/034605(WO,A1)
【文献】特表昭55-500203(JP,A)
【文献】特開昭57-63687(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25C 3/04
C25C 7/00
C25C 7/04
C22B 26/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融塩浴で
塩化マグネシウムの電気分解を行う電解室と、該電解室と連通するメタル回収室とを備える溶融塩電解槽であって、
前記メタル回収室の金属を貯留する溶融金属貯留部は少なくともその一部に第1の壁を備え、
前記第1の壁の内表面上の少なくとも一部に溶融塩固化層を有
し、
前記メタル回収室の前記溶融金属貯留部の第1の壁以外の部分は、第2の壁を備え、
前記第1の壁の見かけ気孔率は、前記第2の壁の見かけ気孔率より低い、溶融塩電解槽。
【請求項2】
前記第1の壁の見かけ気孔率は、18%以下であり、
前記第2の壁の見かけ気孔率は、30%超である、請求項
1に記載の溶融塩電解槽。
【請求項3】
前記溶融金属貯留部の第1の壁の内部又は外表面上の一部に冷媒流路を有する、請求項1
又は2に記載の溶融塩電解槽。
【請求項4】
前記溶融塩固化層の平均厚さは、10mm以上である、請求項1~
3のいずれか一項に記載の溶融塩電解槽。
【請求項5】
前記溶融塩固化層は、NaClを含む、請求項1~
4のいずれか一項に記載の溶融塩電解槽。
【請求項6】
溶融塩浴で
塩化マグネシウムの電気分解を行う電解室と、該電解室と連通するメタル回収室とを備えた溶融塩電解槽を使用する溶融塩固化層の形成方法であって、
前記メタル回収室の金属を貯留する溶融金属貯留部の第1の壁の少なくとも一部を冷却することで、該第1の壁の内表面上の少なくとも一部に前記溶融塩を含有する溶融塩固化層を形成する形成工程を含
み、
前記メタル回収室の前記溶融金属貯留部の第1の壁以外の部分は、第2の壁を備え、
前記第1の壁の見かけ気孔率は、前記第2の壁の見かけ気孔率より低い、溶融塩固化層の形成方法。
【請求項7】
前記第1の壁の見かけ気孔率は、18%以下であり、
前記第2の壁の見かけ気孔率は、30%超である、請求項
6に記載の溶融塩固化層の形成方法。
【請求項8】
前記溶融塩浴は、NaClを40.0質量%以上含有し、
前記溶融塩固化層は、NaClを含む、請求項
6又は7に記載の溶融塩固化層の形成方法。
【請求項9】
請求項
6~
8のいずれか一項に記載の溶融塩固化層の形成方法により前記溶融塩固化層を形成する形成工程と、
前記形成工程後、前記溶融金属貯留部の第1の壁の少なくとも一部を冷却しつつ、前記
塩化マグネシウムを電気分解する電解工程とを含む、金属の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶融塩電解槽、溶融塩固化層の形成方法、及び金属の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
金属チタンの鋳塊等は、工業的にはクロール法によって製造されたスポンジチタンを使用して製造されている。そして、このクロール法を含むスポンジチタン製造プロセスは、塩化工程、還元分離工程、破砕工程及び電解工程の四工程に大別しうる。これらの工程の一つである電解工程は、四塩化チタンを金属マグネシウムで還元してスポンジチタンを製造する還元分離工程の副生成物である塩化マグネシウムを、溶融塩電解により分解して、金属マグネシウムを得る工程である。
【0003】
例えば、特許文献1には、電解工程において金属マグネシウムを生成するため、陰極と、該陰極の内側に配置される陽極と、該陰極と該陽極の間に配置される1以上の複極と、が設置され、溶融塩が電気分解される電気分解室と、上部に該溶融塩の電気分解により生成する金属マグネシウムが保持されるマグネシウム保持部を有するメタル回収室と、からなる溶融塩電解槽が提案されている。
【0004】
また、電解工程においては、還元分離工程で生成するスポンジチタンの不純物濃度を低減するという観点から、電解工程においては不純物濃度が低い金属マグネシウムを生成することが要求されている。
【0005】
特許文献2には、不純物濃度が低い金属マグネシウムを生成することが可能な溶融塩電解槽として、「耐火レンガで構築されており、1対以上の電極が設置され、溶融塩が電気分解される電気分解室と、上部に該溶融塩の電気分解により生成する金属マグネシウムが保持されるマグネシウム保持部を有するメタル回収室と、からなる溶融塩電解槽であって、該電気分解室と該メタル回収室の上部は、隔壁により分離されており、該電気分解室と該メタル回収室の境界部の下部には、該メタル回収室から該電気分解室に該溶融塩が流入する溶融塩流入経路が形成されており、且つ、該電気分解室と該メタル回収室の境界部の、該溶融塩流入経路より上には、該電気分解室で生成した金属マグネシウムおよび溶融塩が該メタル回収室に流入する金属マグネシウム流入経路が形成されており、該マグネシウム保持部の壁面のうち、金属マグネシウムが接触する壁面の一部又は全部に、カーボン、窒化ケイ素又は炭化ケイ素からなる遮蔽部材が設置されている溶融塩電解槽」が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2012-149301号公報
【文献】特開2019-052334号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に開示されている溶融塩電解槽では、メタル回収室において塩化マグネシウムの電気分解で得られた溶融マグネシウムがレンガと接触することで、溶融マグネシウムがレンガに含有される酸化アルミニウムを還元して、溶融マグネシウムにアルミニウム等の不純物が混入すると考えられる。
【0008】
また、特許文献2に開示されている溶融塩電解槽では、マグネシウム保持部に相当する溶融金属貯留部の壁の内表面のうち、溶融マグネシウムが接触する壁の内表面の一部又は全部を、カーボン、窒化ケイ素又は炭化ケイ素からなる遮蔽部材で覆うこととしているが、レンガ表面からの不純物流出を防ぐには遮蔽部材の正確な配置が必要であり、施工の手間の観点から改善の余地がある。
【0009】
そこで、本発明は、一実施形態において、金属塩化物の電気分解で得られた溶融金属への不純物の混入を有効に抑制することが可能な溶融塩電解槽を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
すなわち、本発明は一側面において、溶融塩浴で溶融塩の電気分解を行う電解室と、該電解室と連通するメタル回収室とを備える溶融塩電解槽であって、前記メタル回収室の金属を貯留する溶融金属貯留部は少なくともその一部に第1の壁を備え、前記第1の壁の内表面上の少なくとも一部に前記溶融塩固化層を有する、溶融塩電解槽である。
【0011】
本発明に係る溶融塩電解槽の一実施形態においては、前記第1の壁の見かけ気孔率は、30%以下である。
【0012】
本発明に係る溶融塩電解槽の一実施形態においては、前記メタル回収室の前記溶融金属貯留部の第1の壁以外の部分は、第2の壁を備え、前記第1の壁の見かけ気孔率は、前記第2の壁の見かけ気孔率より低い。
【0013】
本発明に係る溶融塩電解槽の一実施形態においては、前記第1の壁の見かけ気孔率は、18%以下であり、前記第2の壁の見かけ気孔率は、30%超である。なお、第2の壁が例えば内側と外側で異なる見かけ気孔率となる場合、その外側が前記第2の壁の見かけ気孔率であることが好ましい。
【0014】
本発明に係る溶融塩電解槽の一実施形態においては、前記溶融金属貯留部の第1の壁の内部又は外表面上の一部に冷媒流路を有する。
【0015】
本発明に係る溶融塩電解槽の一実施形態においては、前記溶融塩固化層の平均厚さは、10mm以上である。
【0016】
本発明に係る溶融塩電解槽の一実施形態においては、前記溶融塩固化層は、NaClを含む。
【0017】
また、本発明は別の側面において、溶融塩浴で溶融塩の電気分解を行う電解室と、該電解室と連通するメタル回収室とを備えた溶融塩電解槽を使用する溶融塩固化層の形成方法であって、前記メタル回収室の金属を貯留する溶融金属貯留部の第1の壁の少なくとも一部を冷却することで、該第1の壁の内表面上の少なくとも一部に前記溶融塩を含有する溶融塩固化層を形成する形成工程を含む、溶融塩固化層の形成方法である。
【0018】
本発明に係る溶融塩固化層の形成方法の一実施形態においては、前記第1の壁の見かけ気孔率は、30%以下である。
【0019】
本発明に係る溶融塩固化層の形成方法の一実施形態においては、前記メタル回収室の前記溶融金属貯留部の第1の壁以外の部分は、第2の壁を備え、前記第1の壁の見かけ気孔率は、前記第2の壁の見かけ気孔率より低い。
【0020】
本発明に係る溶融塩固化層の形成方法の一実施形態においては、前記第1の壁の見かけ気孔率は、18%以下であり、前記第2の壁の見かけ気孔率は、30%超である。なお、第2の壁が例えば内側と外側で異なる見かけ気孔率となる場合、その外側が前記第2の壁の見かけ気孔率であることが好ましい。
【0021】
本発明に係る溶融塩固化層の形成方法の一実施形態においては、前記溶融塩浴は、NaClを40.0質量%以上含有し、前記溶融塩固化層は、NaClを含む。
【0022】
また、本発明は別の側面において、上記いずれかの溶融塩固化層の形成方法により前記溶融塩固化層を形成する形成工程と、前記形成工程後、前記溶融金属貯留部の第1の壁の少なくとも一部を冷却しつつ、前記溶融塩を電気分解する電解工程とを含む、金属の製造方法である。
【発明の効果】
【0023】
本発明の一実施形態によれば、金属塩化物の電気分解で得られた溶融金属への不純物の混入を有効に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1A】本発明に係る溶融塩電解槽の一実施形態の内部構造を模式的に示す概略断面図である。
【
図2】本発明に係る溶融塩電解槽の別の実施形態の内部構造を模式的に示す概略断面図である。
【
図3】本発明に係る溶融塩電解槽の別の実施形態の内部構造を模式的に示す概略断面図である。
【
図4】本発明に係る溶融塩電解槽の別の実施形態の内部構造を模式的に示す概略断面図である。
【
図5】本発明に係る溶融塩電解槽の別の実施形態の内部構造を模式的に示す概略断面図である。
【
図6A】実施例1及び比較例1~2において使用する溶融塩電解槽の別の実施形態の内部構造を模式的に示す概略断面図である。
【
図7】比較例1において、電気分解後の溶融塩電解槽の第1の壁における浸食深さを説明するために模式的に示す部分拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の具体的な実施形態について詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲で種々の変更が可能である。また、本明細書において、「上方」は、例えば
図1A及び
図1Bに示すように、第1の壁10の底部側から上蓋20へ向かう方向を意味し、「下方」は、上蓋20から第1の壁10の底部側へ向かう方向を意味する。また、本明細書において、「溶融金属」は、金属塩化物を電解分解したことで得られた溶融状態の金属を意味する。更に、本明細書において、「溶融塩固化層」は、溶融塩が固体となった層(固体層とも称する。)を意味する。
【0026】
[1.概要]
一般的に、電解工程において、溶融塩浴には電気分解される塩化マグネシウム(MgCl2)以外に、支持塩として塩化ナトリウム(NaCl)、塩化カルシウム(CaCl2)、塩化カリウム(KCl)及び/又は、フッ化カルシウム(CaF2)等が含まれている。電解室とメタル回収室とを備える溶融塩電解槽を用いて該溶融塩浴で電気分解を行った場合、マグネシウム(Mg)は、メタル回収室のメタル貯留部に貯留される。
【0027】
本発明者は、電気分解後、その溶融塩電解槽内を確認したところ、溶融金属貯留部の内表面側の壁が浸食していることを確認した。内表面側の壁が浸食した理由としては、溶融金属貯留部が酸化アルミニウム(Al2O3)及び酸化ケイ素(SiO2)を含んで構成されているため、溶融マグネシウムが内表面側の壁と接触して酸化アルミニウムをアルミニウム(Al)に還元したことで、その壁が浸食されたと考えられる。このような場合、溶融マグネシウムには、酸化アルミニウムの還元で生じたアルミニウムが混入しうる。
【0028】
特許文献2に記載された技術のように、電解分解で得られた溶融マグネシウムを貯留する溶融金属貯留部の壁の内表面に、溶融マグネシウムが該壁と接触しないように遮蔽部材を覆っても、該遮蔽部材が正確な配置とならなければ、溶融マグネシウムが壁と遮蔽部材間に入り込み、当該壁が浸食されるおそれがある。
【0029】
本発明者は、このような懸念を考慮し、溶融塩浴と接触する壁の内表面に、マグネシウムに溶解しにくい塩を配置(例えば析出により配置)させてAl汚染を抑制することを見出し、この塩として溶融塩浴に含まれる塩化ナトリウムに着目した。塩化マグネシウムとの混合下において、塩化ナトリウムは約600℃で析出固化しうる。更に冷却を進めると約480℃で塩化マグネシウムと塩化ナトリウムの混合塩も析出固化を始める場合もある。この塩化ナトリウム等の析出固化を利用すれば、溶融金属貯留部の壁の表面を析出し固化する塩の固化層で覆うことができると考えられる。
【0030】
本発明者は鋭意検討した結果、溶融金属貯留部の第1の壁の内表面上に溶融塩を含む溶融塩固化層を形成することで、第1の壁が電気分解で得られた溶融金属から遮蔽され、金属塩化物の電気分解で得られた溶融金属に不純物が混入する量を低減できるといった知見を得るに至った。
以下、各実施形態について、図面を用いて説明する。
【0031】
[2.溶融塩電解槽]
本発明に係る溶融塩電解槽1Aの一実施形態においては、
図1Aに示すように、第1の壁10と、上蓋20と、電解室30と、メタル回収室40とを備える。
図1Aの溶融塩電解槽1Aでは、電解室30、メタル回収室40が、図の横方向にそれぞれ並んで位置し、互いに連通している。
【0032】
(第1の壁)
溶融塩電解槽1Aにおける第1の壁10は、上側に上面開口部が形成された容器形状であり、例えば酸化アルミニウムを含む耐火レンガその他の適切な材料からなる。この第1の壁10からなる容器には、金属塩化物を含む溶融塩からなる溶融塩浴Mが貯留されている。また、電解室30の内部には、溶融塩浴の深さ方向(
図1A及び
図1Bでは上下方向)と平行な電解面を有する陽極31及び陰極32を含む電極が配置されている。
以下、溶融塩浴Mに塩化マグネシウムが含まれる場合を例として説明する。この場合、溶融塩浴Mに含まれる塩化マグネシウムの電気分解により、
図1Aに示すように、溶融金属として金属マグネシウム(Mg)が生成されるとともに、ガスとして塩素ガス(Cl
2)が発生する。溶融塩浴Mには、上記の塩化マグネシウムの他、支持塩として、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、塩化カリウム及び/又は、フッ化カルシウム等を含ませる場合がある。支持塩として使用される成分は、塩化マグネシウムより電気分解される電圧が高いものを使用することが好ましい。金属マグネシウムは、金属チタンを製造するクロール法における四塩化チタンの還元に、また塩素ガスは、チタン鉱石の塩化にそれぞれ用いることができる。この電気分解の原料とする塩化マグネシウムとしては、クロール法で副次的に生成されるものを使用可能である。
【0033】
第1の壁10を効率良く冷却することにより、第1の壁10の内表面11上に溶融塩固化層43を形成するという観点から、溶融塩固化層43を形成する第1の壁10の見かけ気孔率は30%以下であることが好ましく、18%以下であることがより好ましい。ただし、第1の壁10の見かけ気孔率は、下限側としては、典型的に1%以上であり、より典型的に2%以上である。
本明細書において、第1の壁10の見かけ気孔率については幾つかの求め方があるが、第1の壁10がレンガで形成されている場合、下記式(1)により求めることができる。ここで、レンガの嵩密度は、重量気孔率法により求める。
(見かけ気孔率)=100-{(レンガの嵩密度/レンガの真密度)×100}(%)・・・式(1)
また、本明細書において、第1の壁10の見かけ気孔率は、第1の壁10中に形成されている隙間の存在割合を示す指標であるが、後述する冷媒流路10aを隙間として考慮するものではない。
第1の壁10がレンガで構成され、レンガがX質量%のAl2O3とY(=100-X)質量%のSiO2とで構成されている場合、真密度については下記式(2)により求める。
(レンガの真密度)=(Al2O3の理論密度(g/cm3)×X+SiO2の理論密度(g/cm3)×Y)/100(g/cm3)・・・式(2)
Al2O3の理論密度:3.95g/cm3
SiO2の理論密度:2.65g/cm3
【0034】
第1の壁10を形成するレンガの材質は、上記見かけ気孔率の範囲内に調整するという観点から、例えばAl2O3が90~100質量%であり、SiO2が0~10質量%としてよい。
【0035】
上蓋20は、溶融塩浴Mが高温であることから溶融塩電解槽1Aの外部に対する断熱のため、或いは、塩素漏洩防止の目的で外部に対して溶融塩電解槽1A内を負圧にするため、第1の壁10の上面開口部を閉じている。
【0036】
(電解室)
電解室30は、溶融塩浴M中の金属塩化物を電気分解して、該電気分解により溶融金属を生成する機能を持つ。例えば、塩化マグネシウムの電気分解では、溶融マグネシウムの他、塩素ガスが生成する。電解室30は、電極とガス回収口21とを有する。
【0037】
(電極)
電極は、少なくとも、電源に接続された陽極31及び陰極32を有する。これらの陽極31及び陰極32では、陽極31の溶融塩浴M中に浸漬した表面で酸化反応により塩素等のガスが生じるとともに、陰極32の溶融塩浴M中に浸漬した表面で還元反応により金属マグネシウム等の溶融金属が生成される。
【0038】
電極は、少なくとも陽極31及び陰極32を有するものであれば、溶融塩浴M中の金属塩化物の電気分解を行うことができる。更に、電解室30は、電気分解の生産効率を向上させるという観点から、電極を複数対有してもよい。また、電極は、電気分解の生成効率向上等の観点より、
図1Bに示すように、陽極31と陰極32との間に、陽極31及び陰極32間への電圧の印加によって分極する一枚以上のバイポーラ電極33a、33bをさらに有することが好ましい。この例では、バイポーラ電極33a、33bは二枚としているがバイポーラ電極の数は適宜調整可能である。但し、このようなバイポーラ電極33a、33bは必ずしも必要ではない。なお、陽極31とバイポーラ電極33a、陰極32とバイポーラ電極33b、バイポーラ電極33aと33bの極間距離はそれぞれ、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0039】
(メタル回収室)
メタル回収室40は、電解室30において電気分解により生成した溶融金属を回収する機能を持つ。メタル回収室40は、電解室30と連通しており、溶融金属貯留部41と溶融塩及び溶融金属の給排口22とを有する。そして、メタル回収室40と、電解室30とを区画するため、メタル回収室40と電解室30との間には第1の隔壁45が設けられている。
図1Aに示す実施形態では、該第1の隔壁45も溶融金属貯留部41を区画する。よって、該第1の隔壁45は先述した第1の壁10としてよい。
【0040】
(溶融金属貯留部)
溶融金属貯留部41は、電解室30で金属塩化物を電気分解して得られた溶融金属で形成された金属層42を貯留する機能を持つ。金属層42はメタル回収室40の浴面MS側に形成されるので、メタル回収室40において浴面MSは、電気分解で生成した溶融金属によって形成されうる。本発明の一実施形態においては、溶融金属貯留部41における第1の壁10の内表面11上に、溶融塩固化層43を有する。溶融金属貯留部41は、少なくともその一部に第1の壁10を備えてよいし、その全周が第1の壁10からなるものとしてよい。
【0041】
(溶融塩固化層)
溶融塩固化層43は、溶融金属と第1の壁10とを物理的に遮蔽するという機能を持つ。本発明の一実施形態では、メタル回収室40の溶融金属貯留部41は、周囲を囲む側壁としての第1の壁10のうち、該第1の壁10の内表面11上の少なくとも一部に溶融塩固化層43を形成されていれば、溶融金属に混入する不純物量を低減できる。溶融塩固化層43の平均厚さは、当該溶融塩固化層が安定的に形成され溶融金属を物理的に遮蔽するという観点から、下限側としては10mm以上であることが好ましく、20mm以上であることがより好ましい。ただし、溶融塩固化層43の平均厚さは、上限側としては、メタル回収室の容積を確保する観点と溶融塩固化層43の厚さを制御する観点等から、典型的に100mm以下であり、より典型的に50mm以下である。本明細書において、溶融塩固化層43の平均厚さは、所定の間隔で選択した9点の厚さの平均値を意味する。すなわち、溶融金属貯留部41の上面視(上蓋20側からの視野)により確認される溶融塩固化層43の全長を把握し、該全長を5等分してその内側3点を測定対象とする。さらに、各測定対象について溶融塩固化層43を正面視により高さ方向に全長を5等分し、その内側3点を測定対象とする。このようにして9点について溶融塩固化層43の厚さを測定し、その数値の平均値を溶融塩固化層43の平均厚さとする。
【0042】
また、溶融塩固化層43は溶融塩浴Mの冷却により形成できるため、溶融塩浴Mに含まれる成分のうち融点の高い成分が溶融塩固化層43の主たる成分となりうる。上記支持塩の中では塩化ナトリウムが最も析出しやすいので、当該溶融塩固化層43は、塩化ナトリウムを主成分とし、50質量%以上含むこととしてよい。当該溶融塩固化層43の塩化ナトリウムの含有量は、上限値については特に規定されない。
【0043】
(溶融塩循環路)
電解室30は、溶融塩循環路50を介してメタル回収室40と連通されている。溶融塩循環路50は、溶融塩電解槽1Aの底部側に設けられ、第2の隔壁55により形成されている。第2の隔壁55は第1の隔壁45より溶融塩電解槽1Aの底部側に設けられる。溶融塩電解槽1Aでは、第2の隔壁55は、溶融塩循環路50のみならず、電気分解により生成した溶融金属のメタル回収室40への流入路をも区画している。
【0044】
本発明に係る溶融塩電解槽1Bの実施形態においては、
図2に示すように、メタル回収室40の溶融金属貯留部41は、第1の壁10を備え、メタル回収室40の溶融金属貯留部41の第1の壁以外の部分は、第2の壁15を備える。すなわち、第1の隔壁45は第1の壁10としてよい。そして、溶融金属貯留部41を外側から冷却するに際し、第1の壁10の内表面11上に溶融塩固化層43を効率よく形成するという観点から、第1の壁10の見かけ気孔率は第2の壁15の見かけ気孔率より低いことが好ましい。空気は断熱性が高いため、冷却すべき部位は見かけ気孔率を低くする。該溶融金属貯留部41における第1の壁10の内表面11上の少なくとも一部に溶融塩固化層43を形成されていれば、溶融金属に混入する不純物量を低減できる。
【0045】
(第2の壁)
第2の壁15の見かけ気孔率の下限側としては、30%超であることが好ましい。ただし、第2の壁15の見かけ気孔率は、上限側としては、典型的に80%以下であり、より典型的に75%以下である。当該第2の壁15が溶融塩電解槽1Bの外側と内側とで異なる材質の壁として構成されている場合、当該第2の壁15の外側の壁の見かけ気孔率が上記範囲内であればよい。
なお、本明細書において、第2の壁15の見かけ気孔率は、第2の壁15中に形成されている隙間の存在割合を示す指標である。
第2の壁15を形成するレンガの材質は、上記見かけ気孔率に調整するという観点から、例えばAl2O3が10~30質量%であり、SiO2が70~90質量%であってよい。
【0046】
第2の壁がレンガで構成され、レンガがX質量%のAl2O3とY(=100-X)質量%のSiO2とで構成されている場合、真密度については上記式(2)により求める。
【0047】
また、本発明に係る溶融塩電解槽1Cの実施形態においては、
図3に示すように、溶融金属貯留部41の第1の壁10の内部の一部に、第1の壁10を冷やすための冷媒を流す冷媒流路10aを有する。一方、本発明に係る溶融塩電解槽1Dの実施形態においては、
図4に示すように、少なくとも溶融金属貯留部41の第1の壁10の外表面12上の一部に、冷却部44を設け、その冷却部44は内部に第1の壁10を冷やすための冷媒を流す冷媒流路44aを有する。
【0048】
更に、本発明に係る溶融塩電解槽1Eの実施形態においては、
図5に示すように、第1の隔壁45の内部に第1の隔壁45を冷やすための冷媒を流す冷媒流路45aを有する。本発明に係る溶融塩電解槽1Eの実施形態では、第1の隔壁45を冷却することにより、溶融塩固化層43側であって第1の隔壁45の主表面46上に溶融塩固化層43が形成される。
【0049】
[2.溶融塩固化層の形成方法]
本発明に係る溶融塩固化層43の形成方法の一実施形態においては、溶融塩浴Mで溶融塩の電気分解を行う電解室30と、該電解室30と連通するメタル回収室40とを備えた溶融塩電解槽1A~1Eを使用する。そして、本発明の一実施形態においては、溶融塩固化層43を形成する形成工程を含む。なお、上述した溶融塩電解槽と重複する説明は割愛する。
【0050】
(形成工程)
形成工程では、溶融金属貯留部41の第1の壁10少なくとも一部を冷却することで、該第1の壁10の内表面11上の少なくとも一部に溶融塩を含有する溶融塩固化層43を形成する。溶融塩固化層43は高温にさらされると溶融塩浴Mに溶解することがあるため、溶融塩固化層の安定的な形成のため連続的な冷却を要求されることもある。
【0051】
形成工程においては、第1の壁10の溶融塩固化層43を形成する部位である、例えばレンガ内表面11付近の溶融塩浴Mの温度は適宜調整すれば良い。例えば、溶融塩浴の組成を鑑みて冷却強度を適宜調整して溶融塩浴Mの温度を調整可能である。第1の壁10の内表面11付近の溶融塩浴Mの温度は、例えば、600℃以下に制御することが好ましく、580℃以下に制御することがより好ましい。このとき、第1の壁10の内表面11付近の溶融塩浴Mの温度は、熱電対等を利用して測定してよい。
【0052】
形成工程においては、溶融塩固化層43を形成する部位に対応する第1の壁10を冷却することで、第1の壁10の内表面11上に効率よく溶融塩固化層43を形成するという観点から、風冷すればよい。第1の壁の外表面に温度計を設置し温度を確認しながら適宜風冷強度を制御すればよい。
【0053】
図3及び
図4に示す溶融塩電解槽1C、1Dにおいては、冷媒を冷媒流路10a、44aに流すことで、溶融塩固化層43を形成することが好ましい。なお、冷媒としては公知のものを適宜使用すればよい。冷却の形態としては、例えば風冷、水冷等がある。
【0054】
溶融塩浴Mは、電気抵抗を下げるという観点と溶融塩固化層43を効率よく形成するという観点から、NaClを40.0質量%以上含有していることが好ましい。溶融塩浴におけるNaClの含有量は60.0質量%以下としてよい。
該溶融塩浴は、CaCl2を15.0質量%以上含有すればよく、20.0質量%以上含有すればよりよい。
該溶融塩浴は、MgCl2を10.0質量%以上含有すればよく、13.0質量%以上含有すればよりよい。一方、該溶融塩浴は、MgCl2を30.0質量%以下含有すればよく、25.0質量%以下含有すればよりよい。
該溶融塩浴は、MgF2を0.3質量%以上含有すればよく、1.0質量%以上含有すればよりよい。
【0055】
[3.金属の製造方法]
本発明に係る金属の製造方法の一実施形態においては、先述した溶融塩固化層43の形成方法により溶融塩固化層43を形成する形成工程と、電解工程とを含む。そうすることで、本発明の一実施形態においては、金属塩化物の電気分解で得られた溶融金属にメタル回収室40を形成するレンガ成分に由来する不純物が混入する量を低減することができる。
【0056】
(電解工程)
電解工程では、該形成工程後、溶融金属貯留部41の第1の壁10の少なくとも一部を冷却しつつ、溶融塩を電気分解する。このとき、本発明の一実施形態では、溶融金属貯留部41の第1の壁10の溶融塩固化層43を形成する部位のレンガ内表面11付近の溶融塩の温度を600℃以下に調整することで、電解中であったとしても、形成された溶融塩固化層43を維持することができる。本発明の一実施形態では、例えば、連続的な冷却の実施により溶融塩固化層43を持続的に維持し、電気分解で得られた金属マグネシウムとレンガとの接触を抑制することができ、その結果、金属マグネシウムにレンガ由来の不純物であるAlの混入量を低減することができる。
【0057】
溶融塩浴Mの流動は、
図1Aに示す矢印Aのように起こる。すなわち、溶融塩が、電解室30から第1の隔壁45の下側を通ってメタル回収室40に流動し、メタル回収室40から第2の隔壁55の下側に配置された溶融塩循環路50を経て電解室30に流動する。電解室30では、溶融塩浴中の金属塩化物が電気分解されて、電解室30で溶融金属が生成される。そして、この溶融金属は、メタル回収室40に流入する。その後、溶融塩浴Mに対する比重の小さい溶融金属は、メタル回収室40の溶融金属貯留部41に浮上してそこに溜まる。メタル回収室40で浮上した溶融金属は、金属層42を形成し、給排口22に回収用のパイプ等を挿通して回収することができる。以上より、本発明の一実施形態においては、溶融塩から溶融金属を製造することができる。
【0058】
また、電解工程では、電気分解により消費した金属塩化物量分の溶融塩を適宜補給する観点から、溶融塩電解槽内のメタル回収室40に溶融塩を供給する工程を更に含んでもよい。すなわち、本発明の一実施形態においては、給排口22を介してメタル回収室40に溶融塩を供給してよい。給排口22を介してメタル回収室40に溶融塩を供給する場合、メタル回収室40で浴面MS付近に浮上した回収対象である溶融金属がほとんど存在しない状態のときに、溶融塩を供給することが好ましい。この理由としては、回収対象である溶融金属が所定量存在しているときには、溶融塩を供給するとその影響により溶融塩浴Mが流動し回収対象である溶融金属が溶融塩浴M中に撹拌されてしまうといったことが挙げられる。このとき、溶融塩を供給する方法は特に限定されず比較的多量の溶融塩を間欠的に供給する間欠式や、溶融塩を連続的に供給する連続式を採用できる。
【0059】
溶融塩電解槽の操業を継続すると、溶融塩浴M中の電気分解される金属塩化物量が低下していく。よって、適宜のタイミングで電気分解の対象となる金属塩化物を溶融塩浴Mに補給する。その際、溶融塩電解槽内に補給する補給用溶融塩中の前記金属塩化物濃度は、溶融塩浴Mにおける前記金属塩化物の濃度回復の観点から、90質量%以上がよく、95質量%以上がよりよく、99質量%以上が更によい。すなわち、補給する補給用溶融塩浴は実質的に前記電気分解の対象となる金属塩化物のみの組成としてよい。
【0060】
電解工程では、可能な限りガス回収口21から電気分解により発生する塩素ガスを回収すればよい。
【実施例】
【0061】
以下、本発明の内容を実施例によって更に具体的に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。
【0062】
[実施例1]
実施例1では、
図6Aに示すように、第1の壁10と、第2の壁15と、上蓋20と、電解室30と、溶融金属貯留部41を有するメタル回収室40と、第1の隔壁45と、溶融塩循環路50と、第2の隔壁55とを備えた溶融塩電解槽100を組み立てた。なお、第1の壁10は見かけ気孔率2%、Al
2O
3含有量93質量%以上のレンガで構成した。また、第2の壁15は外側を見かけ気孔率55~75%、Al
2O
3含有量13~30質量%である断熱レンガと内側を見かけ気孔率2%、Al
2O
3含有量93質量%以上のレンガとする複数種のレンガからなるものとした。第1の隔壁45と、溶融塩循環路50と、第2の隔壁55とは前記断熱レンガでいずれも構成した。上蓋20の材質は蓋裏にキャスタブル耐火物の層を施工した炭素鋼を使用した。この溶融塩電解槽100は、メタル回収室40が1m
3であるものを用いた。また、
図6Bに示すように、電解室30においては、単位電気分解セルを2つ作製するため、陽極31と陰極32とバイポーラ電極33a、33bをそれぞれ配置した。陽極31の材質は黒鉛とし、陰極32の材質は鉄(炭素鋼)とした。バイポーラ電極の材質は黒鉛とした。陽極31と陰極32間のバイポーラ電極の枚数を2枚とした。なお、本明細書において、単位電気分解セルは、破線DLに示すように、1つの陽極31と、その陽極31の両主表面(電解面)に対向して存在する陰極32と、その陽極31と陰極32との間の2枚のバイポーラ電極33a、33bとで構成する電極群を意味する。風冷は第1の壁10の外側より行った。即ち溶融金属貯留部41の上面視において3方向から冷却を実施した。
<試験条件>
溶融塩組成:MgCl
220質量%、CaCl
230質量%、NaCl49質量%、MgF
21質量%
溶融塩浴温度:平均700℃
第1の壁の溶融塩固化層43を形成する部位の内表面付近の溶融塩浴温度:平均580℃
冷風:1m
2当たり20m
3/min(常時冷却)
第1の壁の厚さ:400mm
【0063】
電解の開始前に、上記冷却条件により第1の壁10を冷却することで、第1の壁10の内表面11上にNaClを含む溶融塩固化層43を形成した。その後、冷却条件を保持しつつ、電圧を印加して、電解を開始した。1か月経過した後、電解を停止した。
【0064】
[比較例1]
比較例1では、溶融金属貯留部41の第1の壁10を冷却しなかった点以外、実施例1と同様に電解を実施した。そのため、溶融金属貯留部41の第1の壁10の内表面11上には、溶融塩固化層43が形成されていなかった。
【0065】
<溶融塩固化層の成分確認>
電解停止後溶融塩電解槽100から速やかに溶融塩浴を抜き出し、溶融塩電解槽100内に残った溶融塩固化層43から分析サンプルを取り出し、化学分析により溶融塩固化層43の組成を求めた。その結果、溶融塩固化層43を形成する部位内表面の温度によりNaCl含有量が変わるものの溶融塩浴に含まれる溶融塩が固化して形成されたものであることを確認した。なお、NaCl量は80質量%以上であった。
【0066】
<溶融塩固化層の厚さ>
実施例1については、上述の方法により溶融塩固化層43の厚さを9点計測し、その平均値を求めた。その結果、溶融塩固化層43の厚さは25mmであった。一方、比較例1では、溶融塩固化層43は形成されていなかった。
【0067】
<浸食度合い>
比較例1では、
図7に示すように、第1の壁10の断面において、第1の壁10の外表面12の線と平行であって第1の壁10の内表面11の接線Tから、第1の壁10の厚さ方向に沿って浸食面11aまでの深さDを10か所測定した。その複数の深さDの中で、深さDの最大値を浸食深さとした。実施例1の深さDも、比較例1と同様に求めた。そして、比較例1の浸食深さを基準値である1.0として、実施例1について相対的に浸食度合いを求めた結果、実施例1の浸食深さは0.1であった。
【0068】
(実施例による考察)
実施例1では、比較例1と比べ、浸食度合いが非常に低かった。この理由としては、実施例1では、溶融金属貯留部41の第1の壁10の内表面11上に溶融塩固化層43が形成されていたために、溶融マグネシウムが第1の壁10と接触していなかったことが挙げられる。実施例1ではレンガの浸食度合いが小さいため、金属マグネシウムへのアルミニウム移行量の抑制を実現できる。
【符号の説明】
【0069】
1A~1E、100 溶融塩電解槽
10 第1の壁
10a、44a、45a 冷媒流路
11 内表面
11a 浸食面
12 外表面
15 第2の壁
20 上蓋
21 ガス回収口
22 給排口
30 電解室
31 陽極
32 陰極
33a、33b バイポーラ電極
40 メタル回収室
41 溶融金属貯留部
42 金属層
43 溶融塩固化層
44 冷却部
45 第1の隔壁
46 主表面
50 溶融塩循環路
55 第2の隔壁
D 深さ
M 溶融塩浴
MS 浴面
T 接線