(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-16
(45)【発行日】2023-08-24
(54)【発明の名称】車両の制御方法及び車両の制御装置
(51)【国際特許分類】
B60W 30/182 20200101AFI20230817BHJP
B60W 30/14 20060101ALI20230817BHJP
B60W 30/12 20200101ALI20230817BHJP
【FI】
B60W30/182
B60W30/14
B60W30/12
(21)【出願番号】P 2019165677
(22)【出願日】2019-09-11
【審査請求日】2022-05-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】507308902
【氏名又は名称】ルノー エス.ア.エス.
【氏名又は名称原語表記】RENAULT S.A.S.
【住所又は居所原語表記】122-122 bis, avenue du General Leclerc, 92100 Boulogne-Billancourt, France
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】新井 貴久
【審査官】鶴江 陽介
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-113763(JP,A)
【文献】実開昭63-085533(JP,U)
【文献】特開2001-039181(JP,A)
【文献】特開平11-039600(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 30/00-60/00
G08G 1/00- 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
目標車速に車速を制御する定速走行制御を実行可能な車両の制御方法であって、
制御装置は、ドライバによって選択される運転モードとして、ノーマルモードとエコモードを有し、
前記ノーマルモードが選択された場合には、加速要求に応じて所定の第1加速度で車両を加速させ、
前記エコモードが選択された場合には、前記加速要求と同じ加速要求に対して前記第1加速度よりも小さな第2加速度で前記車両を加速させ、
前記ノーマルモードを選択中、前記車両が前記目標車速以下で走行しているとき、同一レーンに先行車がいる場合には前記車両を前記目標車速まで前記第1加速度で加速させ、同一レーンに先行車がいない場合には前記車両を所定時間前記第1加速度で加速させた後、前記目標車速まで前記第2加速度で加速させ
、
自車と先行車との車間距離が、自車の車速に応じた所定の車間距離未満である場合には、前記車両を加速させない、
ことを特徴とする車両の制御方法。
【請求項2】
請求項1に記載された車両の制御方法であって、
前記エコモードを選択中、前記車両が前記目標車速以下で走行しているときは、同一レーンに先行車がいるかいないかに関わらず前記車両を前記目標車速まで前記第2加速度で加速させる、
ことを特徴とする車両の制御方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載された車両の制御方法であって、
先行車を認識したときに、前記目標車速を上限として自車の車速に応じた車間距離を一定に保つようにして車速を制御する追従走行制御を実行可能とする、
ことを特徴とする車両の制御方法。
【請求項4】
目標車速に車速を制御する定速走行制御を実行可能な車両の制御装置であって、
ドライバによって選択される運転モードとして、ノーマルモードとエコモードを有し、
前記ノーマルモードが選択された場合には、加速要求に応じて所定の第1加速度で車両を加速させ、
前記エコモードが選択された場合には、前記加速要求と同じ加速要求に対して前記第1加速度よりも小さな第2加速度で前記車両を加速させ、
前記ノーマルモードを選択中、前記車両が前記目標車速以下で走行しているとき、同一レーンに先行車がいる場合には前記車両を前記目標車速まで前記第1加速度で加速させ、同一レーンに先行車がいない場合には前記車両を所定時間前記第1加速度で加速させた後、前記目標車速まで前記第2加速度で加速させ
、
自車と先行車との車間距離が、自車の車速に応じた所定の車間距離未満である場合には、前記車両を加速させない、
ことを特徴とする車両の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の制御方法及び車両の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ドライバが設定した目標車速に近づけるようにエンジン出力を調整する車両用定速走行装置が開示されている。
【0003】
特許文献1に記載された車両用定速走行装置は、加速度大、加速度中、加速度小の3段階の加速度を選択できる加速度選択スイッチを備えており、ドライバあるいは乗員がこのスイッチを押すことで目標加速度を設定変更することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
車両においては、燃費の向上が求められている。そこで、特許文献1に記載された車両用定速走行装置を搭載した車両において、例えば、加速度大のモードが選択されている場合に、加速度を小さくすることで燃費を向上するが考えられる。しかしながら、加速度を小さくすると、加速感が乏しくなってしまう。
【0006】
特に、特許文献1に記載の定速走行制御を実行している場合には、ドライバがアクセル操作を行わないため、加速感の乏しさをより感じやすくなり、ドライバの満足度が著しく低下するおそれがある。
【0007】
本発明は、このような技術的課題に鑑みてなされたもので、ドライバによって加速度を選択可能な車両において、加速感を損なうことを抑制しつつ、燃費の向上を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のある態様によれば、目標車速に車速を制御する定速走行制御を実行可能な車両は、ドライバによって選択される運転モードとして、ノーマルモードとエコモードを有する。この車両の制御方法では、ノーマルモードが選択された場合には、加速要求に応じて所定の第1加速度で車両を加速させ、エコモードが選択された場合には、同じ加速要求に対して第1加速度よりも小さな第2加速度で車両を加速させる。また、ノーマルモードを選択中、車両が目標車速以下で走行しているとき、同一レーンに先行車がいる場合には車両を目標車速まで第1加速度で加速させ、同一レーンに先行車がいない場合には車両を所定時間第1加速度で加速させた後、目標車速まで第2加速度で加速させ、自車と先行車との車間距離が、自車の車速に応じた所定の車間距離未満である場合には、車両を加速させない。
【発明の効果】
【0009】
この態様では、定速走行制御を実行可能な車両において、ノーマルモードを選択中、車両が目標車速以下で走行しているとき、同一レーンに先行車がいる場合には車両を第1加速度で加速させる。これにより、例えば、先行車が加速した場合に、先行車から引き離されてしまうことを防止できる。また、同一レーンに先行車がいない場合には車両を所定時間第1加速度で加速させた後、第2加速度で加速させる。これにより、燃費を向上させることができる。さらに、加速開始時に、車両を所定時間第1加速度で加速させることで、加速感を損なうことを抑制できるので、ドライバの満足度が低下することを防止できる。したがって、本実施形態によれば、加速感を損なうことを抑制しつつ、燃費の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係る制御装置を含む運転支援システムの概略構成図である。
【
図2】
図2は、本発明の実施形態に係る自動走行制御のフローチャートである。
【
図3】
図3は、本発明の実施形態に係る車線中央維持制御のフローチャートである。
【
図4】
図4は、本発明の実施形態に係る加速制御のフローチャートである。
【
図5】
図5は、本発明の実施形態に係る加速制御のタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面等を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。
【0012】
図1は、本実施形態による運転支援システム100の概略構成図である。
【0013】
図1に示すように、本実施形態に係る運転支援システム100は、外部センサ1と、ナビゲーションシステム3と、車載機器4と、提示装置5と、入力装置6と、アクチュエータ7と、制御装置としてのコントローラ8とを備える。運転支援システム100は、自動運転機能を有する車両(自車両)10に搭載される。
【0014】
外部センサ1は、自車両10の周辺情報である外部状況を検出する検出機器である。外部センサ1は、車外カメラ11を含む。外部センサ1は、例えば自車両10周辺の他車両、レーンマーカー、道路種別(自動車専用道路、一般道路等)などを検出する。なお、外部センサ1として、先行車との車間距離や方向を測定するためのミリ波レーダーなどを含んでいてもよい。
【0015】
車外カメラ11は、自車両10の周辺状況を撮像する撮像機器である。車外カメラ11は、例えば、自車両10のフロント、リア、左右ドアの車室外側に設けられるアラウンドビューモニタカメラ、フロントガラスの車室内側または外側に設けられるフロントカメラ、及び自車両10の後方に設置されるリアカメラなどである。
【0016】
外部センサ1は、取得した自車両10の周辺情報(撮像情報)をコントローラ8へ出力する。
【0017】
ナビゲーションシステム3は、ドライバ等によって地図上に設定された目的地までの案内をドライバに対して行う装置である。ナビゲーションシステム3は、自車位置検出装置31、ディスプレイ32、スピーカ33などを含む。
【0018】
自車位置検出装置31は自車両10の位置情報を取得するための装置であり、GPS受信機(GNSS)311、ジャイロセンサ312、及び車速センサ313などを含む。GPS受信機311は、GPS衛星から送信される信号(GPSデータ)を周期的に受信する。ジャイロセンサ312は自車両10の方位を検出する。車速センサ313は自車両10の車速を検出する。
【0019】
自車位置検出装置31は、受信されたGPSデータと、検出された自車両10の方位及び車速とを自車両10の位置情報としてコントローラ8へ出力する。コントローラ8は、受信した自車両10の位置情報から自車両10の正確な現在位置、車速及び進行方位を常時把握する。また、コントローラ8は、自車両10の現在位置及び進行方位と図示しない地図データベースの地図情報とに基づいて、自車両10の目的地までの目標ルートを算出する。算出した目標ルートは、ナビゲーション情報としてディスプレイ32及びスピーカ33に送信される。
【0020】
ディスプレイ32及びスピーカ33は、ドライバに対して目標ルート情報の報知を行う機器である。ディスプレイ32は、コントローラ8からのナビゲーション情報に基づき、目標ルート情報を表示する。スピーカ33は、コントローラ8からのナビゲーション情報に基づき、目標ルート情報を音声出力する。
【0021】
なお、ナビゲーションシステム3は、自車両10と通信可能な情報処理センターなどの車両外部の施設のコンピュータに記憶された情報を用いてもよい。例えば、ナビゲーションシステム3は、施設のコンピュータから通信を介して道路の混雑を示す渋滞情報、道路の制限速度情報をナビゲーション情報として取得してもよい。また、ナビゲーションシステム3が実行する処理を、自車両10に搭載されるコンピュータと、車両外部のコンピュータとで分散して実行する構成をとっても良い。
【0022】
車載機器4は、自車両10に搭載された各種機器であり、ドライバの操作により動作する。車載機器4は、ステアリングホイール(ハンドル)41、アクセルペダル42、ブレーキペダル43等を含む。これらの車載機器4がドライバにより操作された場合、その操作情報はコントローラ8に出力される。コントローラ8は車載機器4からの操作情報を受信すると、後述するアクチュエータ7に操作情報に基づく指令を送信し、アクチュエータ7はコントローラ8からの指令に基づき自車両10の走行制御を実行する。
【0023】
また、車載機器4は、さらに方向指示器(ウィンカ)44、オーディオ装置、エアーコンディショナー、ハンズフリースイッチ、パワーウィンドウ、ワイパ、ライト、クラクションなどの機器を含む。これらの機器がドライバにより操作された場合、その操作情報はコントローラ8に出力される。
【0024】
提示装置5は、後述するコントローラ8の制御に基づく各種報知情報をドライバに報知するための装置である。提示装置5は、メータディスプレイ51、スピーカ52などを含む。
【0025】
メータディスプレイ51はメータ部に組み込まれた表示装置であり、ドライバに対する各種報知情報を表示する。報知情報は、車両の走行状態情報及び警告情報を含む。車両の走行状態情報としては、例えば自車両10の車速、燃費及び航続可能距離や、自動運転制御のON/OFF、運転制御モードの種類、制限速度標識、自車両10の周辺の他車両の状況、自車両10周辺のレーン情報等が表示される。警告情報としては、例えばハンズオン警報、接近警報等が表示される。ハンズオン警報は、後述する自動運転制御中ドライバがハンドルから手を離していることが検出された場合に表示される。接近警報は、前方の他車両に衝突する恐れがあると判断された場合に表示される。
【0026】
スピーカ52は、ドライバに対する各種報知情報を音声出力する報知装置である。スピーカ52は、例えば自動運転走行時における各種警告情報をドライバに対し、音声により報知する。
【0027】
入力装置6は、ドライバにより操作されるスイッチであり、例えばステアリング上のドライバが操作しやすい位置やディスプレイ32上、あるいはインストルメントパネル等に設けられる。入力装置6は、メインスイッチ61、セット/コーストスイッチ62、リジューム/アクセラレートスイッチ63、キャンセルスイッチ64、車間調整スイッチ65、操舵制御スイッチ66、エコモードスイッチ67等を含む。
【0028】
メインスイッチ61は、運転支援システム100の電源のON/OFFを切り替える切替スイッチである。
【0029】
セット/コーストスイッチ62は、自動運転制御の開始及び目標車速を減少させるためのスイッチである。
【0030】
リジューム/アクセラレートスイッチ63は、自動運転制御が解除された後、解除前の目標車速で作動を再開するリジューム操作と、目標車速を上昇させるアクセラレート操作を兼ねたスイッチである。
【0031】
キャンセルスイッチ64は、自動運転制御や操舵制御等の自動運転に関する各種制御の作動を解除するスイッチである。
【0032】
車間調整スイッチ65は、自動運転制御作動中において、先行車までの車間距離L(後述する所定値Ln)を変更するためのスイッチである。
【0033】
操舵制御スイッチ66は、例えばナビゲーションシステム3におけるディスプレイ32の画面上のタッチパネルであり、操舵制御機能のON/OFFを切り替える切替スイッチである。
【0034】
エコモードスイッチ67は、低燃費走行を実現するためのエコモードを選択するためのスイッチであり、例えば、インストルメントパネルに設けられる。エコモードでは、エンジン及び変速機の制御を変化させ、ノーマルモード(エコモードスイッチ67がONになっていないときの運転モード)に比べて、加速度を小さくする。なお、コントローラ8には、ノーマルモード及びエコモードにおける加速要求と加速度との関係を示すマップ(図示せず)が予め記憶されている。コントローラ8は、加速要求があると、記憶されたマップを参照して、加速要求に応じた加速度で、自車両10を加速させる。なお、エコモードスイッチ67に代えて、ノーマルモードとエコモードをドライバが選択できるスイッチを備えていてもよい。
【0035】
入力装置6は、ドライバの手操作による入力が可能なプッシュ式スイッチやディスプレイ画面上に配置されたタッチパネルのほか、ダイヤルスイッチ、あるいはドライバの音声による入力が可能なマイクなどの装置であってもよい。
【0036】
入力装置6に入力された情報(入力情報)は、コントローラ8に出力される。
【0037】
アクチュエータ7は、コントローラ8からの指令に基づいて自車両10の走行制御を実行する装置である。アクチュエータ7は、駆動アクチュエータ71、ブレーキアクチュエータ72、及びステアリングアクチュエータ73等を含む。
【0038】
駆動アクチュエータ71は、自車両10の駆動力を調節するための装置である。
【0039】
自車両10が走行駆動源としてのエンジンを搭載している内燃機関自動車である場合には、駆動アクチュエータ71はエンジンに対する空気の供給量(スロットル開度)を調節するスロットルアクチュエータ及びエンジンに対する燃料供給量(燃料噴射量)を調節する燃料噴射弁などで構成される。
【0040】
一方、自車両10が走行駆動源としてのモータを搭載しているハイブリッド車両または電気自動車である場合には、駆動アクチュエータ71はモータに供給する電力を調節可能な回路(インバータ及びコンバータなど)等で構成される。
【0041】
ブレーキアクチュエータ72は、コントローラ8からの指令に応じてブレーキシステムを操作し、自車両10の車輪へ付与する制動力を調節する装置である。ブレーキアクチュエータ72は、油圧ブレーキまたは回生ブレーキ等で構成される。
【0042】
ステアリングアクチュエータ73は、電動パワーステアリングシステムのうちステアリングトルクを制御するアシストモータ等で構成される。コントローラ8によりステアリングアクチュエータ73の動作を制御して、車輪の舵角を制御することで、自車両10の操舵制御を実行する。
【0043】
コントローラ8は、中央演算装置(CPU)、読み出し専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RΑM)及び入出力インタフェース(I/Oインタフェース)を備えたコンピュータで構成される。コントローラ8は特定のプログラムを実行することにより、本実施形態の自動運転制御(運転支援制御)を実現するための処理を実行する。例えば、コントローラ8は、以下で説明する車速制御、操舵制御、各種警報の報知動作の制御などを実行する。なお、コントローラ8は、一つのコンピュータで構成しても良いし、複数のコンピュータで構成しても良い。
【0044】
コントローラ8は、外部センサ1、ナビゲーションシステム3、車載機器4、提示装置5及び入力装置6との間で各種信号を通信可能に構成される。コントローラ8は、外部センサ1及びナビゲーションシステム3において取得された各種の情報、並びに車載機器4からの操作情報及び入力装置6からの入力情報を受信する。コントローラ8は、これらの情報を自車両10の走行情報として取得し、走行情報に基づき適宜アクチュエータ7を操作して、本実施形態の運転支援制御を実行するようにプログラムされている。
【0045】
以下、本実施形態による運転支援システム100が備える自動運転制御(運転支援制御)について説明する。
【0046】
運転支援システム100が実行する自動運転制御には、車速制御機能及び操舵制御機能が含まれる。
【0047】
車速制御機能は、例えば、車両の走行速度がドライバによって設定された目標車速になるように車速を制御する機能である。車速制御において、前方に他車両がいない場合には、コントローラ8は、目標車速に車速を制御する定速走行制御を実行する。一方、前方に先行車を認識した場合には、コントローラ8は、目標車速を上限として自車両10の車速に応じた車間距離Lを一定に保つようにして車速及び操舵を制御する追従走行制御を実行する。
【0048】
なお、車速制御機能は、例えば、ナビゲーションシステム3の地図データベースに道路の制限速度情報が含まれている場合には、自車両10が走行している道路の制限速度の情報を取得し、法定速度を自動的に目標車速として設定する機能を含むようにしてもよい。
【0049】
図2は、本実施形態の車速制御の流れを示すフローチャートである。以下の車速制御はいずれもコントローラ8により繰り返し実行される。
【0050】
以下で説明する車速制御中、ドライバはセット/コーストスイッチ62またはリジューム/アクセラレートスイッチ63を操作することで、いつでも目標車速を変更することができる。また、ドライバはメインスイッチ61をOFFに切り替えること、またはキャンセルスイッチ64を押すこと、或いはブレーキペダル43を踏むことなどにより、いつでも車速制御を中止させることができる。
【0051】
車速制御は、運転支援システム100が作動している際に行われる制御である。入力装置6のメインスイッチ61がONに切り替えられると、運転支援システム100の開始指令がコントローラ8に対して送信される。コントローラ8は、開始指令を受信すると、運転支援システム100を起動する。
【0052】
運転支援システム100の作動中に、ドライバによりセット/コーストスイッチ62が押されると、車速制御の開始指令がコントローラ8に対して送信される。コントローラ8は、車速制御の開始指令を受信すると、車速制御を開始する。
【0053】
ステップS1において、コントローラ8は、セット/コーストスイッチ62が押されて車速制御が開始された際の車速を目標車速として設定する。具体的には、ドライバがアクセルペダル42を踏んで所望の車速になったときにセット/コーストスイッチ62を押すことにより、目標車速が設定される。
【0054】
ステップS1において目標車速が設定されると、ステップS2において、コントローラ8は、自車両10の車速が設定された目標車速になるようにアクチュエータ7を制御する。
【0055】
次に、ステップS3において、コントローラ8は、外部センサ1により取得された自車両10の周辺情報に基づき、自車両10の前方に他車両(先行車)がいないかを判定する。具体的には、コントローラ8は、車外カメラ11によって撮像された自車両10の前方の画像に基づいて、同一レーン上で自車両10の車速に応じて予め決定された車間距離内に他車両(先行車)がいないかを判定する。
【0056】
ステップS3において、自車両10の前方に他車両がいないと判定すると、ステップS4において、コントローラ8は、定速走行制御を実行する。具体的には、コントローラ8は、自車両10の車速を設定されている目標車速になるようにアクチュエータ7を制御する。なお、自車両10の車速が設定されている目標車速に達している場合には、その車速を目標車速に維持するようにアクチュエータ7を制御する。
【0057】
一方、ステップS3において、自車両10の前方に他車両がいると判定すると、コントローラ8は、ステップS5の処理に移行する。ステップS5において、コントローラ8は、追従走行制御を実行する。具体的には、コントローラ8は、設定されている目標車速を上限速度として、同一レーンを走行する先行車との車間距離Lを一定に保つような車速になるようにアクチュエータ7を制御する。
【0058】
ステップS4またはステップS5における処理を実行した後、コントローラ8は、再びステップS1に戻る。
【0059】
なお、コントローラ8は、車速制御の実行の有無、目標車速等の情報を提示装置5のメータディスプレイ51に表示する。また、例えば目標車速が変更された場合等には、メータディスプレイ51に文字表示をすることやスピーカ52による音声によりドライバに対し報知するように設定してもよい。
【0060】
次に操舵制御機能について説明する。本実施形態の操舵制御機能には、車線中央維持(レーンキープ)支援機能が含まれる。
【0061】
車線中央維持支援機能は、自車両10が車線の中央付近を走行するようにステアリングを制御し、ドライバのハンドル操作を支援する機能である。車線中央維持制御は、車速制御が実行されている状態において、ナビゲーションシステム3のタッチパネル式の操舵制御スイッチ66がONに切り替えられることで開始される。車線中央維持制御は、ドライバがハンドルに手を添えた状態で開始される。車線中央維持制御は、ドライバがハンドルに手を離すなどした場合には中断される。ドライバが再びハンドルに手を添えたことが検出された場合には、車線中央維持制御は復活する。なお、所定の条件が満たされるとドライバがハンドルから手を離すことができる機能(ハンズオフモード)を備えるようにしてもよい。
【0062】
図3は、本実施形態の車線中央維持制御を示すフローチャートである。以下の車線中央維持制御はコントローラ8により繰り返し実行される。
【0063】
なお、以下で説明する車線中央維持制御中、ドライバは操舵制御スイッチ66をOFFにすることで、車線中央維持制御をいつでも中止することができる。また、ドライバはメインスイッチ61をOFFに切り替えること、またはキャンセルスイッチ64を押すこと、或いはブレーキペダル43を踏むこと等により、いつでも車線中央維持制御を中止させることができる。
【0064】
車速制御機能の作動中に、ドライバにより操舵制御スイッチ66がONに切り替えられると、車線中央維持制御の開始指令がコントローラ8に対して送信される。コントローラ8は、開始指令を受信すると、車線中央維持制御を開始する。
【0065】
車線中央維持制御が開始されると、コントローラ8は、操舵制御が作動したことを提示装置5のメータディスプレイ51に表示する。
【0066】
続いてステップS11において、コントローラ8は、自車両10の走行情報を取得し、取得した走行情報に基づき、車線中央維持支援機能作動条件を満たしているか否かを判定する。
【0067】
車線中央維持支援機能作動条件を満たしている場合、コントローラ8は、ステップS12において車線中央維持支援機能を作動させる。一方、車線中央維持支援機能作動条件を満たしていない場合、コントローラ8は、車線中央維持支援機能を作動させない。
【0068】
ステップS12において、車線中央維持支援機能を作動させ、自車両10が車線の中央を走行するようにステアリングアクチュエータ73の動作を制御する。また、コントローラ8は、提示装置5のメータディスプレイ51に、ドライバに対しハンドルに手を添えた状態を維持するよう報知する。
【0069】
次に、本実施形態における自動運転制御実行時における自車両10の加速制御について説明する。
【0070】
近年、車両10の燃費の向上が求められている。そこで、例えば、ノーマルモードが選択されている場合に、燃費の向上を目的として加速度を小さくすることが考えられる。しかしながら、加速度を小さくすると、例えば、自動運転制御を実行中、目標車速まで加速する場合に加速感が乏しくなってドライバの満足度が低下するおそれがある。特に、加速度を小さくすると、自動運転制御を実行中、先行車が加速した場合に先行車から引き離されてしまいドライバの満足度が著しく低下するおそれがある。
【0071】
ドライバが感じる加速感は、加速の初期段階が最も影響する。そこで、本実施形態では状況に応じて加速度を変化させる加速制御を実行する。以下に
図4及び
図5を参照しながら、本実施形態の加速制御について説明する。
【0072】
まず、ステップS21において、コントローラ8は、自動運転制御実行中で、自車両10の車速が目標車速未満かを判定する。自動運転制御が実行されていない、あるいは、自動運転制御が実行中であっても、自車両10の車速が目標車速以上であれば、加速制御は行われない。これに対し、自動運転制御実行中で、自車両10の車速が目標車速未満であれば、コントローラ8は、ステップS22の処理に移行する。
【0073】
ステップS22において、コントローラ8は、運転モードがノーマルモードであるかを判定する。運転モードがノーマルモード、即ち、エコモードが選択されていない場合には、コントローラ8は、ステップS23の処理に移行する。一方、運転モードがノーマルモードではない、即ち、エコモードが選択されている場合には、コントローラ8は、ステップS28の処理に移行する。
【0074】
ステップS23において、コントローラ8は、先行車がいないかを判定する。具体的には、車外カメラ11によって撮像された自車両10の前方の画像に基づいて、同一レーン上に他車両(先行車)がいないかを判定する。先行車がいない場合には、コントローラ8は、ステップS24に処理を進める。一方、先行車を検知した場合には、コントローラ8は、ステップS26に処理を進める。
【0075】
ステップS24において、コントローラ8は、自車両10を第1加速度α1で所定時間T1加速させる。具体的には、コントローラ8は、目標車速と現在の車速との差に基づいて、目標とする加速度を決定する。このとき、運転モードとしてノーマルモードが選択されているので、コントローラ8は、ノーマルモードにおける加速度マップを参照し、ノーマルモードにおける加速度(第1加速度α1)で自車両10を所定時間T1加速させる。
【0076】
ステップS25において、コントローラ8は、自車両10を第2加速度α2で加速させる。具体的には、コントローラ8は、加速開始から所定時間T1経過後、第1加速度α1より小さな第2加速度α2で自車両10を目標車速まで加速させる。第2加速度α2は、本実施形態では、エコモードにおける加速度である。なお、コントローラ8は、エコモードにおける加速度マップを参照し、エコモードにおける加速度(第2加速度α2)を求める。
【0077】
次いで、ステップS23において先行車を検知したと判定した場合のフロー(ステップS26以下のフロー)について説明する。
【0078】
ステップS26において、コントローラ8は、車間距離Lが所定値Lnより大きいかを判定する。具体的には、コントローラ8は、車外カメラ11によって撮像された自車両10の前方の画像に基づいて、同一レーン上に存在する他車両(先行車)との車間距離Lが所定値Lnより大きいかを判定する。所定値Lnは、車速に応じて予め定められた車間距離である。所定値Lnは、先行車との衝突を防止できるような距離に設定される。なお、上述のように、所定値Lnは、車間調整スイッチ65によっても変更することができる。
【0079】
コントローラ8は、車間距離Lが所定値Lnより大きければ、ステップS27に処理を進める。一方、車間距離Lが所定値Ln以下であれば、自車両10を加速させることができないので、処理をステップS21に戻す。
【0080】
ステップS27において、コントローラ8は、自車両10を第1加速度α1で目標車速まで加速させる。
【0081】
次いで、ステップS22において運転モードがノーマルモードではない、つまりエコモードであると判定した場合のフロー(ステップS28以下のフロー)について説明する。
【0082】
ステップS28において、コントローラ8は、車間距離Lが所定値Lnより大きいかを判定する。ステップS28における判定方法はステップS26と同じであるので、説明を省略する。
【0083】
コントローラ8は、車間距離Lが所定値Lnより大きければ、ステップS29に処理を進める。一方、車間距離Lが所定値Ln以下であれば、自車両10を加速させることができないので、処理をステップS21に戻す。
【0084】
ステップS29において、コントローラ8は、自車両10を第2加速度α2で目標車速まで加速させる。
【0085】
このように、本実施形態の加速制御では、ノーマルモードを選択中、同一レーンに先行車がいない場合には、加速の初期段階は高い加速度で加速し、その後は低い加速度で加速する。具体的には、自車両10を所定時間T1第1加速度α1で加速させた後、第1加速度α1より小さな第2加速度α2で加速させる。これにより、ドライバの要求する加速感を提供することができるのでドライバの満足度が低下することを防止できる。さらに、燃費の向上を図ることができる。
【0086】
また、本実施形態の加速制御では、ノーマルモードを選択中、自車両10が目標車速以下で走行しているとき、同一レーンに先行車がいる場合には、自車両10を第1加速度α1で加速させる。これにより、先行車が加速した場合に、先行車から引き離されてしまうことを防止できる。
【0087】
次に、
図5に示すタイムチャートを参照しながら、本実施形態の加速制御、ノーマルモードにおける加速制御、及びエコモードにおける加速制御の特性について説明する。なお、
図5は、例えば、自動運転制御中に、先行車が減速し、その後、先行車が加速した場合の特性の一例を示している。
図5において、実線は、本実施形態の加速制御に基づく特性を示しており、点線は、エコモードにおける加速制御の特性を示しており、一点鎖線は、ノーマルモードにおける加速制御の特性を示している。
【0088】
時刻t1において、先行車との車間距離Lが所定値Ln以上になると、コントローラ8は、設定された目標車速に応じた第1加速度α1で自車両10を加速させる。そして、所定時間T1が経過すると(時刻t2)、コントローラ8は、設定された目標車速に応じた第2加速度α2で自車両10を加速させる。
【0089】
このとき、
図5に示すように、本実施形態の加速制御によれば、ノーマルモードにおける加速制御での目標速度への到達時間(時刻t3)に比べ、目標速度への到達時間(時刻t4)が遅くなるものの、燃料消費量を大幅に削減することができる。また、本実施形態の加速制御によれば、エコモードにおける加速制御での目標速度への到達時間(時刻t5)に比べ、目標速度への到達時間を早くできるとともに、燃料消費量の増加を極力抑制できる。
【0090】
なお、本実施形態の加速制御では、エコモードを選択されている場合には、自車両10を常に第2加速度α2で加速させる。
【0091】
このように、本実施形態の加速制御では、ノーマルモードを選択中、同一レーンに先行車がいない場合には、自車両10を所定時間T1第1加速度α1で加速させた後、第1加速度α1より小さな第2加速度α2で加速させるので、加速感を損なうことを抑制しつつ、ドライバの満足度が低下することを防止できる。
【0092】
以上のように構成された本発明の実施形態の構成、作用、及び効果をまとめて説明する。
【0093】
コントローラ8は、ドライバによって選択される運転モードとして、ノーマルモードとエコモードを有し、ノーマルモードが選択された場合には、加速要求に応じて第1加速度α1で自車両10を加速させ、エコモードが選択された場合には、同じ加速要求に対して第1加速度α1よりも小さな第2加速度α2で自車両10を加速させ、ノーマルモードを選択中、自車両10が目標車速以下で走行しているとき、同一レーンに先行車がいる場合には自車両10を第1加速度α1で加速させ、同一レーンに先行車がいない場合には自車両10を所定時間T1第1加速度α1で加速させた後、目標車速まで第2加速度α2で加速させる。
【0094】
ノーマルモードを選択中、同一レーンに先行車がいない場合には、自車両10を所定時間T1第1加速度α1で加速させた後、第1加速度α1より小さな第2加速度α2で加速させる。これにより、燃費を向上させることができる。さらに、加速開始時に、自車両10を所定時間T1第1加速度α1で加速させることで、加速感を損なうことを抑制できるので、ドライバの満足度が低下することを防止できる。
【0095】
また、ノーマルモードを選択中、自車両10が目標車速以下で走行しているとき、同一レーンに先行車がいる場合には、自車両10を第1加速度α1で目標車速まで加速させる。これにより、先行車が加速した場合に、先行車から引き離されてしまうことを防止できる。
【0096】
コントローラ8は、エコモードを選択中、自車両10が目標車速以下で走行しているときは、同一レーンに先行車がいるかいないかに関わらず自車両10を目標車速まで第2加速度α2で加速させる。
【0097】
ドライバは、加速感よりも燃費の向上を意図してエコモードを選択しているので、エコモード選択中は、どのような状況においても自車両10を第2加速度α2で加速させる。これにより、ドライバの意図に沿った制御を行うことができる。
【0098】
コントローラ8は、自車両10と先行車との車間距離Lが所定の車間距離Ln未満である場合には、自車両10を加速しない。
【0099】
これにより、先行車との衝突を防止することができる。
【0100】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したものに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【0101】
上記実施形態では、第2加速度α2は、エコモードにおける加速度として説明したが、第2加速度α2は、第1加速度α1よりも小さければ、エコモードにおける加速度と異なっていてもよい。
【0102】
また、上記実施形態では、自動運転制御が、定速走行制御と追従走行制御を有する場合を例に説明したが、本実施形態の加速制御は、自動運転制御として定速走行制御のみを行う車両にも適用することができる。
【符号の説明】
【0103】
100 運転支援システム
10 車両(自車両)
8 コントローラ (制御装置)
67 エコモードスイッチ