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特許7333246携帯型排水処理評価用前処理装置および排水処理評価方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-16
(45)【発行日】2023-08-24
(54)【発明の名称】携帯型排水処理評価用前処理装置および排水処理評価方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 21/01 20060101AFI20230817BHJP
   B01D 21/02 20060101ALI20230817BHJP
   B01D 21/24 20060101ALI20230817BHJP
   B01D 21/00 20060101ALI20230817BHJP
【FI】
B01D21/01 D
B01D21/02 D
B01D21/24 H
B01D21/00 D
B01D21/24 U
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019196431
(22)【出願日】2019-10-29
(65)【公開番号】P2021069967
(43)【公開日】2021-05-06
【審査請求日】2022-08-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000105567
【氏名又は名称】コスモ石油株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002538
【氏名又は名称】弁理士法人あしたば国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 勇人
【審査官】伊藤 真明
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-241045(JP,A)
【文献】特開2019-093351(JP,A)
【文献】特開2007-237014(JP,A)
【文献】特開2019-118855(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 21/00-21/34
C02F 1/52- 1/56
C02F 3/02- 3/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
携帯型排水処理評価用前処理装置であって、
活性汚泥処理装置で処理される有機物含有排水を流入させて凝集物および凝集物処理水に分離する内容量3~12Lの凝集槽と、
前記凝集槽の槽内に、外縁部の少なくとも一部に柔軟性樹脂からなる拡幅部が設けられた攪拌羽根と、
前記攪拌羽根を凝集槽の上下方向に位置調整可能な上下位置移動手段とを有し、
前記攪拌羽根の拡幅部が撹拌羽根の回転時に凝集槽の内壁に接触し得るように配置されている
ことを特徴とする携帯型排水処理評価用前処理装置。
【請求項2】
前記活性汚泥処理装置で処理される有機物含有排水が、活性汚泥処理装置で処理される有機物を含有する工業排水および生活排水から選ばれる一種以上である請求項1に記載の携帯型排水処理評価用前処理装置。
【請求項3】
前記攪拌羽根が攪拌プロペラである請求項1または請求項2に記載の携帯型排水処理評価用前処理装置。
【請求項4】
前記凝集槽と連通し当該凝集槽で処理された凝集物処理水を貯留する貯留室をさらに有するとともに、当該貯留室に貯留した凝集物処理水を排出する排出管を有し、
当該排出管の取水口が前記貯留室内に引き込まれるとともに前記貯留した凝集物処理水の水面近傍に位置するように上下移動可能に配置されている
請求項1~請求項3のいずれかに記載の携帯型排水処理評価用前処理装置。
【請求項5】
請求項1~請求項のいずれかに記載の携帯型排水処理評価用前処理装置を用いて活性汚泥処理装置で処理される有機物含有排水を排水処理することを特徴とする排水処理評価方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯型排水処理評価用前処理装置および排水処理評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、各種産業において、有機物を含む工業排水が活性汚泥法により処理されるようになっている(例えば、特許文献1(特開2002-210486号公報)参照)。
活性汚泥法は有機排水を好気的に生物処理する方法であり、例えば、標準活性汚泥法においては、活性汚泥処理槽のBOD-SS負荷(曝気槽内の単位MLSS量(kg)あたり1日に加えられる汚水中のBOD量)が0.2~0.4kgBOD/(kgMLSS・日)程度になるようにプロセス設計されている。
【0003】
上記活性汚泥法による排水処理方法としては、例えば、各種工場から排出される工業排水を一旦バッファタンクに集合した後、このバッファタンク中の工業排水に対し、油水分離処理、凝集処理(凝集沈殿処理または凝集浮上処理)等の一次処理を行い、次いで活性汚泥処理等の二次処理を行うことにより、工業排水中のフェノール、ベンゼン等の有機物や、窒素、リン等が排出基準以下になるように生物処理を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2002-210486号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記活性汚泥法による排水処理は、例えば各種排水の排出源となる製造プロセスの運転条件変更等に伴って、排水中の有機物や、窒素、リン等の量も変動することから、各種排出基準を満たす上で、排水処理設備の運転条件、特に活性汚泥処理装置の運転条件を適宜変更する必要がある。
上記活性汚泥処理装置の運転条件を決定するに際し、排水を直接活性汚泥処理装置に導入することは活性汚泥に与える負荷を必ずしも予測し得ないことから、活性汚泥処理装置を模して作製された据え付け型の評価装置に上記排水を導入して各種排水処理条件を決定することが考えられる。
【0006】
一方、評価対象となる排水処理プラントが評価装置の設置場所から遠方に位置している場合、上記排水処理プラントから排水や活性汚泥を評価装置の設置場所まで逐一持ち込んだ上で、各種規制値を満たすように試行錯誤的に排水処理条件を決定し、係る排水処理条件を排水処理プラントにフィードバックする必要があり、一旦決定した排水処理条件が必ずしも評価対象となる排水処理施設に適合したものになっていない場合には、再度評価装置を用いて排水処理条件を修正する必要がある。
この場合、評価対象となる排水処理プラントが例えば海外等の遠方に位置する場合には、排水処理プラントの排水処理条件を決定する迄に、排水処理プラントから評価装置の設置箇所まで排水や活性汚泥を移送したり、排水処理施設の操業者側と評価装置による評価側で煩雑な情報交換が必要となるばかりか、排水や活性汚泥自体の持ち出しまたは持ち込みが規制される場合や、排水や活性汚泥を評価装置迄移送するまでに変質する場合も想定されることから、必ずしも適切な評価を行い難かった。
【0007】
このような状況下、本発明者等は、排水処理施設に小型の活性汚泥処理設備を併設し、実際の排水処理プラントにおける活性汚泥処理装置と同様の条件で処理して処理水を得ることにより、短時間にかつ簡便に排水処理条件を評価し得ることを着想した。
【0008】
ところで、上記小型の活性汚泥処理設備は、恒久的な設備である必要はなく一時的な設備であれば足り、また、海外等への運搬の利便性を考慮すると、排水処理施設に持ち運び可能な携帯性を有するものが求められる。
一方、排水処理条件を適切に評価するためには、小型の活性汚泥処理設備とともに、前処理装置として凝集処理(凝集沈殿処理または凝集浮上処理)を行うための小型の凝集槽も求められる。
【0009】
しかしながら、本発明者等が検討したところ、処理対象となる排水が油分やSS(Suspended Solids;浮遊物質)等を含むものである場合、凝集槽に排水を流入して処理しようとすると、槽壁に浮遊物質の付着物が層状に生成することが判明した。実際の排水処理プラントにおいては、凝集槽のスケールが非常に大きいために上記槽壁への付着物の生成やその量は無視し得る程度のものであるが、凝集槽のサイズを携帯可能な程度まで小型化した場合には、槽壁へ生じる付着物の存在が無視し得なくなって、適切な凝集処理を行い難くなる。
この場合、小型の凝集槽設備の運転を停止して槽壁を清掃した後、再度運転する必要が生じることから、迅速かつ的確な排水処理評価を行い難くなる。
【0010】
従って、本発明によれば、槽壁への付着物層の形成を抑制しつつ簡便かつ迅速に排水処理条件を評価するための携帯型排水処理評価前処理装置および排水処理評価方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
このような状況下、本発明者等が鋭意検討したところ、携帯型排水処理評価用前処理装置であって、排水が流入する内容量3~12Lの凝集槽と、前記凝集槽の槽内に、外縁部の少なくとも一部に柔軟性樹脂からなる拡幅部が設けられた攪拌羽根と、前記攪拌羽根を凝集槽の上下方向に位置調整可能な上下位置移動手段とを有し、前記攪拌羽根の拡幅部が撹拌羽根の回転時に凝集槽の内壁に接触し得るように配置されている携帯型排水処理評価用前処理装置により上記技術課題を解決し得ることを見出し、本知見に基づいて本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち、本発明は、
(1)携帯型排水処理評価用前処理装置であって、
排水が流入する内容量3~12Lの凝集槽と、
前記凝集槽の槽内に、外縁部の少なくとも一部に柔軟性樹脂からなる拡幅部が設けられた攪拌羽根と、
前記攪拌羽根を凝集槽の上下方向に位置調整可能な上下位置移動手段とを有し、
前記攪拌羽根の拡幅部が撹拌羽根の回転時に凝集槽の内壁に接触し得るように配置されている
ことを特徴とする携帯型排水処理評価用前処理装置、
(2)前記攪拌羽根が攪拌プロペラである上記(1)に記載の携帯型排水処理評価用前処理装置、
(3)前記凝集槽と連通し当該凝集槽で処理された凝集物処理水を貯留する貯留室をさらに有するとともに、当該貯留室に貯留した凝集物処理水を排出する排出管を有し、
当該排出管の取水口が前記貯留室内に引き込まれるとともに前記貯留した凝集物処理水の水面近傍に位置するように上下移動可能に配置されている
上記(1)または(2)に記載の携帯型排水処理評価用前処理装置、および
(4)上記(1)~(3)のいずれかに記載の携帯型排水処理評価用前処理装置を用いて排水処理することを特徴とする排水処理評価方法
を提供するものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、凝集槽内に設けられた攪拌羽根が外縁部の少なくとも一部に柔軟性樹脂からなる拡幅部を有し、係る拡幅部が撹拌羽根の回転時に凝集槽の内壁に接触し得るように配置されるとともに、上記攪拌羽根が上下位置移動手段により凝集槽の上下方向に移動可能に配置されていることにより、槽壁に生成した付着物を除去しつつ好適に凝集処理を行うことが可能となる。
このため、本発明によれば、槽壁への付着物層の形成を抑制しつつ簡便かつ迅速に排水処理条件を評価するための携帯型排水処理評価前処理装置および排水処理評価方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明に係る携帯型排水処理評価用前処理装置の形態例を説明するための概略図(斜視図)である。
図2】本発明に係る携帯型排水処理評価用前処理装置の形態例を説明するための概略図(正面図)である。
図3】本発明に係る携帯用排水処理評価用前処理装置において、撹拌羽根の形態例を示す概略図である。
図4】本発明に係る携帯用排水処理評価用前処理装置において、撹拌羽根の形態例を示す概略図である。
図5】本発明に係る携帯用排水処理評価用前処理装置において、撹拌羽根の上下位置移動形態例を示す概略図である。
図6】本発明に係る携帯用排水処理評価用前処理装置において、撹拌羽根の上下位置移動形態例を示す概略図である。
図7】本発明に係る携帯型排水処理評価用前処理装置の他の形態例を説明するための概略図(斜視図)である。
図8】本発明に係る携帯型排水処理評価用前処理装置を用いた排水処理評価の実施形態例を説明するための概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明に係る携帯型排水処理評価用前処理装置は、排水が流入する内容量3~12Lの凝集槽と、前記凝集槽の槽内に、外縁部の少なくとも一部に柔軟性樹脂からなる拡幅部が設けられた攪拌羽根と、前記攪拌羽根を凝集槽の上下方向に位置調整可能な上下位置移動手段とを有し、前記攪拌羽根の拡幅部が撹拌羽根の回転時に凝集槽の内壁に接触し得るように配置されていることを特徴とするものである。
【0016】
以下、本発明に係る携帯型排水処理評価前処理装置について、適宜図面を参照しつつ説明するものとする。
【0017】
本発明に係る携帯型排水処理評価用前処理装置において、処理対象となる排水は、通常活性汚泥処理装置で処理される有機物含有排水であれば特に制限されない。
例えば、各種石油留分、潤滑油、有機溶剤、油脂、糖液、発酵液等の有機物を含有する工業排水、生活排水等から選ばれる一種以上であってもよいし、これ等の工業排水および生活排水等から選ばれる一種以上に油水分離処理を施したものであってもよい。
【0018】
図1および図2は、本発明に係る携帯型排水処理評価用前処理装置の形態例を説明するための概略図であり、図1が斜視図、図2が正面図に相当する。
【0019】
図1に示すように、本発明に係る携帯型排水処理評価用前処理装置10は、排水が流入する凝集槽11と、攪拌羽根12と、係る攪拌羽根12を凝集槽11の上下方向に上下移動可能に位置調整可能な上下位置移動手段14とを備えている。
【0020】
本発明に係る携帯型排水処理評価用前処理装置において、凝集槽は、その内容量が、3~12Lであるものであり、4~10Lであるものが好ましく、5~8Lであるものがより好ましい。
凝集槽の内容量が上記範囲内にあることにより、携帯性を有しつつも、実機(実際の排水処理プラントにおける凝集槽)と同様の条件下における凝集処理を省スペースで簡便に行うことができる。
【0021】
本発明に係る携帯型排水処理評価用前処理装置において、凝集槽の形態は特に制限されないが、通常その形態は、排水を流入して凝集処理する槽の内部形状が概略円筒形状を有することが好ましい。
凝集槽の内部形状が円筒形状である場合、そのサイズは、内径150~250mm、高さ100~500mm程度であることが好ましい。
凝集槽内のサイズが上記範囲内にあることにより、携帯性を有しつつも、実機と同様の条件下における活性汚泥処理を省スペースで簡便に行うことができる。
【0022】
凝集槽は、通常、処理対象となる排水の流入口および凝集処理後の排水の流出口を有している。
図1および図2に例示する凝集槽11においては、図に示す流入口Dinより排水が流入し、槽内で凝集処理された排水が流出口Doutより流出する。
【0023】
図1および図2に例示するように、本発明に係る携帯型排水処理評価用前処理装置において、凝集槽11は、概略円筒形状を有する槽の底部にテーパー状の仕切り板P3を設けることにより、垂直方向上部から下部に向かって内径が狭まるテーパー状の(逆円錐状の)底部Bを有していてもよい。
【0024】
凝集槽がテーパー状の底部を有することにより、凝集槽内で凝集、沈降した凝集物を凝集槽の最下部から容易に抜き出すことができる。
【0025】
本発明に係る携帯型排水処理評価用前処理装置において、凝集槽の側壁部や底部等は、所定の強度等を要するものであればその材質や厚み等は特に制限されず、透明または半透明な樹脂板等により構成されることが好ましく、透明または半透明な樹脂板等により構成されることにより、内部の観察が容易になるとともに軽量化を容易に図ることができる。
【0026】
本発明に係る携帯型排水処理評価用前処理装置は、攪拌羽根を有しており、係る攪拌羽根は、通常、(図1図2に例示するように)支持棒に支持された状態で凝集槽内に配置される。
本発明に係る携帯型排水処理評価用前処理装置は、上記攪拌羽根を回転させることにより、凝集槽内において処理対象となる排水と凝集剤(例えば、硫酸アルミニウム等の無機系の凝集剤や高分子凝集剤から選ばれる一種以上)とを好適に混合することができる。
【0027】
本発明に係る携帯型排水処理評価用前処理装置において、上記攪拌羽根には、外縁部の少なくとも一部に柔軟性樹脂からなる拡幅部が設けられている。
【0028】
本発明に係る携帯型排水処理評価用前処理装置において、上記撹拌羽根12の形状は特に制限されず、図3(a)および図3(b)に示すように、プロペラ状のもの(撹拌プロペラ)であってもよいし、図4に示すように、板状のものであってもよい。
本発明に係る携帯型排水処理評価用前処理装置において、上記撹拌羽根12の形状が板状である場合、撹拌羽根が配置される沈殿槽3の凝集槽の内部形状に対応した形状を有することが好ましく、例えば図1図2に例示するように凝集槽11の底部が先細りする逆円錐形状である場合には、(その垂直断面形状が三角形であるために)板状の撹拌羽根は、図4に示すように三角形状のものが好ましい。
【0029】
本発明に係る携帯型排水処理評価用前処理装置において、凝集槽内に配置される撹拌羽根は、外縁部の少なくとも一部に柔軟性樹脂からなる拡幅部が設けられ、当該拡幅部が撹拌羽根の回転時に凝集槽の内壁に接触し得るように配置されている。
【0030】
本発明に係る携帯型排水処理評価用前処理装置において、撹拌羽根の外縁部に設けられる拡幅部の形態は、当該拡幅部が撹拌羽根の回転時に沈殿槽の内壁に接触し得るものであれば特に制限されず、拡幅部の固定方法も、チューブ状の柔軟性樹脂を羽根に差し込み固定する方法であってもよいし、柔軟性樹脂を羽根に貼り付け固定する方法であってもよいし、撹拌羽根の製造時に一体成形してなるものであってもよい。
例えば、図3(a)に例示するように、プロペラ状の羽根の先端部に柔軟性樹脂からなるチューブ状の樹脂を差し込み固定することにより、撹拌羽根12の外縁部を拡幅した拡幅部Rであってもよいし、さらに、図3(b)に示すように、プロペラ状の羽根の先端部に、先端部を適宜切り出し加工した柔軟性樹脂からなるチューブ状の樹脂を差し込み固定することにより、撹拌羽根12の外縁部を拡幅した拡幅部Rであってもよい。
また、例えば、図4に例示するように、板状の攪拌羽根12の側部(配置時に凝集槽の側壁に対向する傾斜部)の先端に、柔軟性樹脂を切り出した短冊状物を貼り付け固定することにより、撹拌羽根の外縁部を拡幅した拡幅部Rであってもよい。
【0031】
本発明に係る携帯型排水処理評価用前処理装置において、撹拌羽根の外縁部に設けられる拡幅部とは、撹拌羽根の回転時に沈殿槽の内壁に接触し得る部分を意味する。通常、撹拌羽根は使用時に凝集槽の壁部に接触しないものが選択され配置されており、本発明に係る携帯型排水処理評価用前処理装置においても、撹拌羽根の本体(基体)部分は、凝集槽の内壁に接触することなく回転し、凝集槽内に流入する排水を撹拌するが、撹拌羽根に設けた拡幅部のみが撹拌羽根の回転時に凝集槽の内壁に接触する。
撹拌羽根は、通常、回転軸を中心にして左右対称の形状を有しているが、本発明に係る携帯型排水処理評価用前処理装置において、撹拌羽根の外縁部に拡幅部が設けられることにより、必ずしも上記対称形状を有さなくてもよい。
【0032】
本発明に係る携帯型排水処理評価用前処理装置において、撹拌羽根の外縁部に設けられる拡幅部を構成する柔軟性樹脂とは、撹拌羽根が回転して沈殿槽の内壁に接触した際に可撓性を有するものを意味し、特に限定されないが、例えば、ポリエチレン、エチレンプロピレンゴム等のポリオレフィン類、ブタジエンゴムやエチレンプロピレンゴム又はアクリルゴムに(メタ)アクリル系ポリマー鎖等がグラフトされたグラフトゴム、ウレタン系ゴム、熱可塑性ポリウレタン、アクリル系ゴム、アクリル系熱可塑性ポリマー、シロキサン系熱可塑性ポリマー、シリコン樹脂等から選ばれる一種以上が挙げられる。
【0033】
図1および図2に例示するように、攪拌羽根12は、支持棒13に固定された状態で凝集槽11内に配置されるとともに、支持棒13には、撹拌装置(回転装置)16が配置され、支持棒13を介して所望の回転速度で撹拌羽根12を回転させて、凝集槽11内を撹拌することができる。
【0034】
本発明に係る携帯型排水処理評価用前処理装置は、上記攪拌羽根を凝集槽の上下方向(凝集槽の高さ方向)に位置調整可能な上下位置移動手段を有している。
【0035】
本発明に係る携帯型排水処理評価用前処理装置において、上記攪拌羽根の上下位置移動手段の構造および形状は、特に制限されない。
【0036】
図5は、図1および図2に例示する携帯型排水処理評価用前処理装置の形態例における上下位置移動手段14において、攪拌羽根12の上下位置移動方法(上下位置の変更方法)を説明するための図である。
図5に示す上下位置移動手段14は、凝集槽11の頂部を横切るように設けられたコの字状の板材からなる架橋部材M1を有し、係る架橋部材M1は、凝集槽11に隣接する側部において、ネジC、Cにより凝集槽の側壁に固定されている。また、図5に示す上下位置移動手段14は、架橋部材M1上に立設された一対のボルトM3、M3と、架橋部材M1上部を横切るように設けられ、支持棒13および一対のボルトM1、M1を貫通させた状態で支持棒13に固定された板状の位置決め部材M2とを有している。
上記位置決め部材M2は、支持棒13が回転自在に回転し得るようにこれを挿通するとともに、ボルトM3、M3に対してナットn、nにより上下位置を任意に決定し得るように固定されている。
【0037】
図5に例示する携帯型排水処理評価用前処理装置10においては、図5の左図に示す状態で一対のボルトM3、M3に各々設けたナットn、nを緩めた上で、図5の右図に示すように支持棒13を引き上げ、次いで一対のボルトM3、M3に各々設けたナットn、nを締めることにより、攪拌羽根12を凝集槽11の上部方向に位置調整する(上部方向に位置変更する)ことができる。
また、上記とは逆に、図5に例示する携帯型排水処理評価用前処理装置10において、図5の右図に示す状態で一対のボルトM3、M3に各々設けたナットn、nを緩めた上で、図5の左図に示すように支持棒13を引き下げ、次いで一対のボルトM3、M3に各々設けたナットn、nを締めることにより、攪拌羽根12を凝集槽11の下部方向に位置調整する(下部方向に位置変更する)ことができる。
【0038】
図6は、図5に例示した携帯型排水処理評価用前処理装置の形態例とは別の形態例における上下位置移動手段14において、攪拌羽根12の上下移動方法を説明するための図である。
【0039】
図6に示す上下位置移動手段14は、凝集槽11の頂部を横切るように設けられたコの字状の板材からなる架橋部材M1を有する点において、図5に示す上下位置移動手段14と共通し、図6に示す架橋部材M1は、凝集槽11に隣接する側部において、ネジC、Cで凝集槽11の側壁に固定されている点で図5に示す架橋部材M1と共通している。
【0040】
一方、図6に示す上下位置移動手段14は、位置決め部材M2および一対のボルトM3、M3を有さない。また、図6に示す架橋部材M1は、支持棒13が回転自在に回転し得るようにこれを挿通するとともに、図5に示す架橋部材M1に比較して、凝集槽11に隣接する側部の長さが凝集槽の上下方向(凝集槽の高さ方向)に沿って長く設けられており、ネジC,Cを固定するネジ穴も、凝集槽の上下方向(凝集槽の高さ方向)に複数設けられている。
【0041】
図6に例示する携帯型排水処理評価用前処理装置10においては、図6の左図に示す状態で一対のネジC、Cを緩めた上で、図6の右図に示すように支持棒13とともに架橋部材M1を引き上げ、次いで一対のネジC、Cを締めることにより、攪拌羽根12を凝集槽11の上部方向に位置調整する(上部方向に位置変更する)ことができる。
また、上記とは逆に、図6に例示する携帯型排水処理評価用前処理装置10において、図6の右図に示す状態で一対のネジC,Cを緩めた上で、図6の左図に示すように支持棒13とともに架橋部材M1を引き下げ、次いで一対のネジC、Cを締めることにより、攪拌羽根12を凝集槽11の下部方向に位置調整する(下部方向に位置変更する)ことができる。
【0042】
上述したように、凝集槽を携帯可能な程度に小型化した場合、上記凝集槽の側壁に浮遊性の付着物が層状に形成され、この付着物の生成により槽内での凝集処理が適切に行い難くなるが、本発明に係る携帯型排水処理評価用前処理装置においては、凝集槽内に設けられた攪拌羽根が外縁部の少なくとも一部に柔軟性樹脂からなる拡幅部を有し、係る拡幅部が撹拌羽根の回転時に凝集槽の内壁に接触し得るように配置されるとともに、上記攪拌羽根が上下位置移動手段により凝集槽の上下方向に移動可能に配置されていることにより、槽壁に生成した付着物を除去しつつ好適に凝集処理を行うことが可能となる。
また、本発明によれば、攪拌羽根を凝集槽の上下方向に位置調整可能な上下位置移動手段を有することにより、凝集槽内で使用する凝集剤の量および種類や、処理対象となる排水の量または種類に応じて、攪拌羽根の上下位置(凝集槽の高さ方向における位置)を変更して、最適な攪拌処理を行うことができる。
【0043】
本発明に係る携帯型排水処理評価用前処理装置は、上記凝集槽と連通し当該凝集槽で処理された凝集物処理水を貯留する貯留室および上記貯留室内に引き込まれ取水口が凝集物処理水の水面近傍に位置するように上下移動可能に配置された排出管をさらに有するものであってもよい。
【0044】
図7は、本発明に係る携帯型排水処理評価用前処理装置において、上記貯留室および排出管を有する形態例について説明するための概略図(斜視図)である。
図7に示す例において、携帯型排水処理評価用前処理装置10は、凝集槽11とともに、当該凝集槽11と連通し当該凝集槽11で処理された凝集物処理水を貯留する貯留室15をさらに有している。
【0045】
本発明に係る携帯型排水処理評価用前処理装置において、貯留室15の形態は特に制限されないが、通常その形態は概略箱形状である。
本発明に係る携帯型排水処理評価用前処理装置において、貯留室は、その内容量が、
0.5~10Lであるものであるものが好ましく、1.0~8Lであるものがより好ましく、2~5Lであるものがさらに好ましく、1~5Lであるものが一層好ましい。
貯留室の形状が箱型である場合、その外形のサイズは、縦100~200mm、横100~200mm、高さ150~250mm程度であることが好ましい。貯留室のサイズが上記範囲内にあることにより、携帯性を有しつつも、実機(実際の排水処理プラントで使用される凝集槽)と同様の条件下における凝集処理を省スペースで簡便に行うことができる。
本発明に係る携帯型排水処理評価用前処理装置において、貯留室の側壁、天井板、床板
等も、所定の強度等を要するものであればその材質や厚み等は特に制限されず、透明または半透明な樹脂板等により構成されることが好ましく、透明または半透明な樹脂板等により構成されることにより、内部の観察が容易になるとともに軽量化を容易に図ることができる。
【0046】
図7に示す例において、凝集槽11および貯留室15間には、凝集物処理水(凝集槽で処理した処理水)が相互に流通可能な状態になるように貫通孔Pが設けられている。
【0047】
また、図7に示す例においては、貯留室15に貯留した凝集物処理水を排出する排出管Tを有し、当該排出管Tの取水口が貯留室内に引き込まれるとともに貯留した凝集物処理水の水面近傍に位置するように上下移動可能に配置されている。
上記排出管Tの取水口を凝集物処理水の水面近傍に位置するように上下移動する手段は特に制限されず、例えば、図7に示すように、排出管Tが、外管内に内管が同軸二重円筒状に収容された構造を有するとともに、(図示しない)調整つまみによって排出管Tの取水口の位置を上下させて凝集物処理水の水面WS近傍に位置し得るように設計されているものを挙げることができる。
【0048】
図7に例示するように、本発明に係る携帯型排水処理評価用前処理装置が、凝集槽11とともに貯留室15を有し、かかる貯留室15が凝集槽11で処理された凝集物処理水を排出するための排出管Tを内部に有し、当該排出管Tの取水口が凝集物処理水の水面WS近傍に位置するように上下移動可能に配置されていることにより、凝集槽11で槽壁から掻き取られた付着物や凝集槽内で(凝集剤の添加により)生成した凝集物の流出を容易に抑制することができる。
このように付着物や凝集物の含有割合が低い上澄液のみを凝集物処理水として流出口Doutから排出することにより、後続する装置(例えば、携帯型の活性汚泥処理槽)の負荷を容易に低減することができる。
また、図7に例示するように、本発明に係る携帯型排水処理評価用前処理装置が、凝集槽11とともに貯留室15を有し、かかる貯留室15が凝集槽11で処理された凝集物処理水を排出するための排出管Tを内部に有し、当該排出管Tの取水口が凝集物処理水の水面WS近傍に位置するように上下移動可能に配置されていることにより、評価対象となる実機(実際の排水処理プラントで使用される凝集槽)に応じて凝集槽の処理容量を容易に調整することができる。
【0049】
図8は、本発明に係る携帯型排水処理評価用前処理装置を用いた排水処理評価の実施形態例を説明するための図である。
図8は、本発明の一実施形態に係る携帯型排水処理評価用前処理装置10と、携帯型活性汚泥処理槽20とを組み合わせた携帯用排水処理評価装置を示している。
【0050】
携帯型活性汚泥処理槽20としては、携帯型活性汚泥処理槽20の底部から上部方向に酸素含有気体を流入させる流入ノズルNを有するものが好ましく、流入ノズルNから活性汚泥処理槽内に流入する酸素含有気体としては、酸素または空気を挙げることができる。
【0051】
図8に例示するように、携帯型活性汚泥処理槽20は、活性汚泥処理された活性汚泥処理水を排出する排出管tを有しており、係る排出管tは、上述した貯留室内に配置される排出管Tと同様に、その取水口が携帯型活性汚泥処理槽20内に引き込まれるとともに活性汚泥処理水の水面近傍に位置するように上下移動可能に配置されているものが好ましい。
【0052】
図8に示す例において、排出管tとしては、上記排出管Tと同様のものを挙げることができる。
【0053】
図8に例示するように、本発明に係る携帯型排水処理評価用前処理装置が、携帯型活性汚泥処理槽20で処理された活性汚泥処理水を排出するための排出管tを有し、当該排出管tの取水口が活性汚泥処理水の水面近傍に位置するように上下移動可能に配置されていることにより、携帯型活性汚泥処理槽20により活性汚泥処理された、活性汚泥の含有割が低い上澄液のみを活性汚泥処理水として排出することができる。
【0054】
本発明に係る携帯型排水処理評価用前処理装置は、小型の凝集槽を必須とし、さらに小型の活性汚泥処理槽等や、必要に応じて撹拌装置やポンプ、ホース等の導管等の任意の付属品を組み合わせた携帯型排水処理評価処理装置として使用することにより、装置全体の小型化、軽量化を図りつつ、容易に組み立て、分解できるものであるので、例えば旅行用のスーツケース内に収容する等して容易に運搬し、使用することができる。
【0055】
本発明に係る携帯型排水処理評価用前処理装置を使用する場合、実機(実際の排水処理プラントで使用される凝集槽)と同様の排水を採用し、実機に対応する条件下で排水処理が行われる。
本発明に係る携帯型排水処理評価用前処理装置において、凝集槽に対する排水の供給量は、5~50mL/分間であることが好ましく、上記凝集槽とともに携帯型の活性汚泥処理槽を用いる場合は、携帯型の活性汚泥処理槽に対する排水の供給量は、5~30mL/分間であることが好ましい。
【0056】
上記小型の活性汚泥処理槽から得られる処理水は、公知の方法により、例えば、生物化学的酸素要求量(Biochemical oxygen demand:BOD)、化学的酸素要求量(Chemical Oxygen Demand:COD)、全有機炭素(Total Organic Carbon:TOC)、全窒素濃度、全リン濃度、懸濁物濃度等が測定され、各種規制値を満たし得るか否かが評価される。
【0057】
上記評価の結果、評価対象となる排水処理プラントが設置された地域における規制値を満たさない項目が検出された場合は、さらに排水処理条件を変更した上で、本発明に係る携帯型排水処理評価用前処理装置を用いた排水処理を行い、再度各種検査項目について評価を行って、全ての規制値を満たすまで繰り返し排水処理を行えばよい。
【0058】
本発明によれば、槽壁への付着物層の形成を抑制しつつ簡便かつ迅速に排水処理条件を評価するための携帯型排水処理評価前処理装置を提供することができる。
【0059】
次に、本発明に係る排水処理評価方法について説明する。
本発明に係る排水処理評価方法は、本発明に係る携帯型排水処理評価用前処理装置を用いて排水処理することを特徴とするものである。
本発明に係る携帯型排水処理評価用前処理装置を用いて処理水を得るための排水処理の詳細は、上述したとおりである。
本発明に係る携帯型排水処理評価用前処理装置は、上述したように、適宜携帯型の活性汚泥処理槽を併用することができ、得られた処理水は、適宜、一以上の組成評価または物性評価に供される。
得られた処理水の組成評価または物性評価としては、公知の評価項目を挙げることができ、例えば、生物化学的酸素要求量(Biochemical oxygen demand:BOD)、化学的酸素要求量(Chemical Oxygen Demand:COD)、全有機炭素(Total Organic Carbon:TOC)、全窒素濃度、全リン濃度、懸濁物濃度等から選ばれる一種以上を挙げることができる。
これ等の評価項目は、各種評価項目に対応する公知の測定方法により測定すればよい。
【0060】
上記各種評価項目における評価値(組成値または物性値)が、排水処理プラントの設置地域における規制を満たさない場合には、再度本発明に係る携帯型排水処理評価用前処理装置を用い、排水処理条件を変更した上で排水処理する操作を適宜繰り返すことにより、最適な排水処理条件を決定することができる。
【0061】
本発明によれば、本発明に係る携帯型排水処理評価用前処理装置を用いていることから、槽壁への付着物層の形成を抑制しつつ簡便に排水処理条件を評価、決定することができる。
【0062】
以下に実施例を示して本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれに制限されるものではない。
【0063】
(実施例1)
図7に示す装置構成を有する携帯型排水処理評価用前処理装置10を構成した。
図7に示すように、本実施例で用いた携帯型排水処理評価用前処理装置10において、流入口Dinより排水が流入する凝集槽11(内容量が5L、内径20cm、縦40cmの内部形状が概略円筒形状であるもの)の槽内に、支持棒13により支持された攪拌羽根12と、攪拌羽根12を凝集槽11の上下方向に位置調整可能な上下位置移動手段14とを配置した。
また、本実施例で用いた携帯型排水処理評価用前処理装置10において、凝集槽11と連通し凝集槽11で処理された凝集物処理水を貯留する貯留室15(内容量が2Lで、内部形状が、縦15cm、横15cm、高さ25cmの外略箱形状のもの)と、取水口が上記貯留室15内に引き込まれるとともに貯留した凝集物処理水の水面W13近傍に位置するように上下移動可能に配置される上記貯留室15に貯留した凝集物処理水を排出する排出管T(内径15mm)とを配置した。
上記凝集槽11および貯留室15は、厚さ4~6mmの透明な樹脂板により構成され、外部から容易に視認し得る状態になっている。
上記凝集槽11内に配置される攪拌羽根(攪拌プロペラ)12(各翼の長さ約6 cm)は、図3(b)に示す形態を有し、同図に示すように、プロペラ状の複数枚の翼のうち、1枚の翼の先端部には先端部を切り出し加工した、内径10mmのチューブ状のシリコン樹脂を差し込み固定することにより(上記チューブ状のシリコン樹脂を差し込んだ後の翼の長さ約24cm)、撹拌羽根12の外縁部を拡幅した拡幅部Rが形成され、当該拡幅部Rが攪拌プロペラ12の回転時に凝集槽11の内壁に接触し得るように配置した。
上記携帯型排水処理評価用装置10において、石油精製設備から排出される排水を、流入口Dinより凝集槽11に速度20ml/分間で流入させるとともに、凝集槽11内において攪拌プロペラ12を1~10rpmで回転させながら、凝集剤として硫酸アルミニウムを加えて当該凝集物を凝集、沈殿させた。係る凝集処理によって得られた凝集物処理水を貫通孔Pを介して貯留室15に流入させるとともに、貯留室15に貯留した凝集物処理水を排出管Tの流出口Doutより速度15ml/分間で流出させた。
【0064】
このとき、(1)流入口Dinより流入する排水、(2)凝集槽11の水面近傍における排水、(3)貯留室15の水面近傍における排水、(4)流出口Dinより流出する排水を各々採取し、下記方法により吸光度(660nm)および浮遊粒子状物質量(mg/L)を測定した。結果を表1に示す。
【0065】
<吸光度の測定方法>
各サンプルを測定用のセルに採取し、測定波長660nmにおける吸光度を測定した。
【0066】
<浮遊粒子状物質量の測定方法>
JIS K 0102工業排水試験方法に基づいて、各サンプルをそれぞれろ紙に捕集し、乾燥後の重量を秤量して、各サンプル1Lあたりの浮遊粒子状物質濃度(mg/L)を求めた。
【0067】
【表1】
【0068】
表1より、本発明に係る携帯型排水処理評価用前処理装置により、(1)流入口Dinより流入する排水に対して凝集槽11で凝集処理を施すことにより、(2)凝集槽11の水面近傍における排水、(3)貯留室15の水面近傍における排水および(4)流出口Dinより流出する排水の吸光度および浮遊粒子状物質量が低下していること、特に貯留室15に設けた(4)流出口Dinより流出する排水の吸光度および浮遊粒子状物質量が低下していることを確認することができた。
このため、本発明に係る携帯型排水処理評価用前処理装置によれば、凝集槽11の槽壁への付着物層の形成を抑制しつつ簡便かつ迅速に凝集処理(前処理)を行って、排水処理条件を評価し得ることが分かる。
【0069】
(実施例2)
実施例1で用いた装置構成を有する携帯型排水処理評価用前処理装置10に対し、図8に示すように携帯型活性汚泥処理槽20を組み合わせ、携帯型排水処理評価装置を構成した。
図8に示すように、本実施例で用いた携帯型活性汚泥処理槽20は、内容量が5Lで、縦23cm、横15cm、高さ30cmの箱状の内部形状を有し、携帯型活性汚泥処理槽20で処理された活性汚泥処理水を排出する排出管t(内径20mm)を有している。
上記携帯型活性汚泥処理槽20は、厚さ4~6mmの透明な樹脂板により構成され、外部から容易に視認し得る状態になっている。
上記携帯型排水処理評価用装置10において、石油精製設備から排出される排水を、流入口Dinより凝集槽11に速度20ml/分間で流入させるとともに、凝集槽11内において攪拌プロペラ12を1~10rpmで回転させながら、凝集剤として硫酸アルミニウムを加えて当該凝集物を凝集、沈殿させた。係る凝集処理によって得られた凝集物処理水を貫通孔Pを介して貯留室15に流入させるとともに、貯留室15に貯留した凝集物処理水を排出管Tの流出口Doutより速度15ml/分間で流出させ、次いで、携帯型活性汚泥処理槽20で活性汚泥処理した後、得られた処理水を排出管tから速度15ml/分間で流出させた。
上記処理を5日間連続して行い、このときの(1)流入口Dinより流入する排水および(2)携帯型活性汚泥処理槽の排出管tより流出する排水を1日毎に各々採取した上で、下記方法により(1)流入口Dinより流入する排水1Lあたりのアンモニア態窒素濃度(mg N/L)および(2)携帯型活性汚泥処理槽の排出管tより流出する排水1Lあたりの硝酸態窒素濃度(mg N/L)を各々測定し、硝化率(%)(排水中のアンモニアが硝酸に酸化される割合)を算出した。
結果を表2に示す。
【0070】
<排水中のアンモニア態窒素濃度および硝酸態窒素濃度測定方法>
各々、イオンクロマトグラフで測定した。
【0071】
<硝化率>
{(2)携帯型活性汚泥処理槽の排出管tより流出する排水中の硝酸態窒素濃度/(1)流入口Dinより流入する排水中のアンモニア態窒素濃度}×100
【0072】
【表2】
【0073】
(参考例1) 本実施例に対応する条件で排水処理した実機(実際の排水処理プラント)において、実施例2に対応する排水処理を行ったときの、上記硝化率の5日間の平均値を求めたところ、97質量%であった。
【0074】
(比較例1) 実施例2において、前処理装置として携帯型排水処理評価用前処理装置10を用いず、携帯型活性汚泥処理槽20のみを用いた以外は、実施例2と同様に排水処理を行い、上記硝化率の5日間の平均値を求めたところ、92質量%であった。
【0075】
上記実施例2、参考例1および比較例1における硝化率の5日間の平均値を表3に示す。
【0076】
【表3】
【0077】
表2および表3より、本発明に係る携帯型排水処理評価用前処理装置を用いた実施例2の硝化率は、実機(実際の排水処理プラント)における対応する排水処理を行ったときの硝化率に整合する結果になっていることが分かる。
一方、表2および表3より、比較例1においては、本発明に係る携帯型排水処理評価用前処理装置を用いていないことから、硝化率が低下していることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明によれば、壁への付着物層の形成を抑制しつつ簡便かつ迅速に排水処理条件を評価するための携帯型排水処理評価前処理装置および排水処理評価方法を提供することができる。
【符号の説明】
【0079】
10 携帯型排水処理評価用前処理装置
11 凝集槽
12 攪拌羽根
13 支持棒
14 上下位置移動手段
15 貯留室
16 回転装置
20 携帯型活性汚泥処理槽
Din 流入口
Dout 流出口
N 流入ノズル
WS 水面
B 底部
T、t 排出管
R 拡幅部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8