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特許7333255車両システムの制御方法及び車両システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-16
(45)【発行日】2023-08-24
(54)【発明の名称】車両システムの制御方法及び車両システム
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/35 20060101AFI20230817BHJP
   H02S 50/10 20140101ALI20230817BHJP
   H02S 40/38 20140101ALI20230817BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20230817BHJP
【FI】
H02J7/35 A
H02S50/10
H02S40/38
H02J7/00 P
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019221943
(22)【出願日】2019-12-09
(65)【公開番号】P2021093799
(43)【公開日】2021-06-17
【審査請求日】2022-08-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】507308902
【氏名又は名称】ルノー エス.ア.エス.
【氏名又は名称原語表記】RENAULT S.A.S.
【住所又は居所原語表記】122-122 bis, avenue du General Leclerc, 92100 Boulogne-Billancourt, France
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】冨田 要介
(72)【発明者】
【氏名】図子 祐輔
(72)【発明者】
【氏名】谷本 勉
(72)【発明者】
【氏名】竹本 圭佑
(72)【発明者】
【氏名】本部 惇史
【審査官】右田 勝則
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-158396(JP,A)
【文献】特開2014-217218(JP,A)
【文献】特開2010-061495(JP,A)
【文献】特開2006-278711(JP,A)
【文献】特開2014-133545(JP,A)
【文献】特開2016-163473(JP,A)
【文献】特開平08-191573(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/35
H02S 50/10
H02S 40/38
H02J 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光エネルギを電気エネルギに変換する太陽電池を用いて発電を行う太陽光発電システムと、前記太陽光発電システムから出力される電力を充電するバッテリを備えた車両を制御する車両制御システムとを有し、前記車両に搭載される車両システムであって、前記車両の走行中に行われる車両システムの制御方法において、
前記車両の速度を取得し、
前記車両の速度に基づいて、前記太陽光発電システムの停止後に前記太陽光発電システムの起動を制限する時間である起動判断時間を設定し、
前記太陽光発電システムの停止後、前記太陽電池の発電状態と、前記起動判断時間とに基づいて、前記太陽光発電システムが起動可能か否かを判断し、
前記太陽光発電システムが起動可能と判断された場合に、前記太陽光発電システムを起動するものであり、
前記車両が走行中の場合、
前記車両制御システムは、前記太陽光発電システムの起動又は停止に関わらず起動しており、
前記起動判断時間を設定する場合、
前記車両の速度が大きいほど、前記起動判断時間を短く設定し、
前記太陽光発電システムの起動の可否を判断する場合、
前記太陽光発電システムが起動期間に消費する電力量である前記太陽光発電システムの起動エネルギと、前記太陽光発電システムが起動後に消費する電力である前記太陽光発電システムの消費電力とをそれぞれ推定し、
前記太陽電池の発電状態として、前記太陽電池から取得可能な最大電力を推定し、
前記太陽光発電システムの起動エネルギを前記起動判断時間で除算した除算値に、前記太陽光発電システムの消費電力を加算した加算値を算出し、前記加算値以上の値を起動電力しきい値として設定し、
前記最大電力が前記起動電力しきい値よりも大きい場合に、前記太陽光発電システムの起動が可能と判断する
車両システムの制御方法。
【請求項2】
前記太陽光発電システムの起動後、前記太陽電池の出力電力を取得し、
前記太陽電池の出力電力が前記前記太陽光発電システムの消費電力よりも小さい状況が、所定の停止判断時間にわたって継続した場合、起動している前記太陽光発電システムを停止する
請求項記載の車両システムの制御方法。
【請求項3】
電圧センサを用いて、前記太陽光発電システムが停止しているときの前記太陽電池の開放端電圧を検出し、
前記太陽電池の開放端電圧に基づいて、前記最大電力を推定する
請求項記載の車両システムの制御方法。
【請求項4】
前記太陽電池の温度を検出し、
前記太陽電池の温度が高いほど、前記最大電力を低く推定する
請求項記載の車両システムの制御方法。
【請求項5】
前記電圧センサの検出誤差を取得し、
前記検出誤差が大きいほど、前記最大電力を低く推定する
請求項記載の車両システムの制御方法。
【請求項6】
光エネルギを電気エネルギに変換する太陽電池を用いて発電を行う太陽光発電システムと、前記太陽光発電システムから出力される電力を充電するバッテリを備えた車両を制御する車両制御システムとを有し、前記車両に搭載される車両システムにおいて、
前記車両の速度を検出する車速センサと、
前記車両システムを制御するコントローラと、を有し、
前記コントローラは、前記車両の走行中において、
前記車両の速度に基づいて、前記太陽光発電システムの停止後に前記太陽光発電システムの起動を制限する時間である起動判断時間を設定し、
前記太陽光発電システムの停止後、前記太陽電池の発電状態と、前記起動判断時間とに基づいて、前記太陽光発電システムが起動可能か否かを判断し、
前記太陽光発電システムが起動可能と判断された場合に、前記太陽光発電システムを起動するものであり、
前記車両が走行中の場合、
前記車両制御システムは、前記太陽光発電システムの起動又は停止に関わらず起動しており、
前記コントローラは、
前記起動判断時間を設定する場合、
前記車両の速度が大きいほど、前記起動判断時間を短く設定し、
前記太陽光発電システムの起動の可否を判断する場合、
前記太陽光発電システムが起動期間に消費する電力量である前記太陽光発電システムの起動エネルギと、前記太陽光発電システムが起動後に消費する電力である前記太陽光発電システムの消費電力とをそれぞれ推定し、
前記太陽電池の発電状態として、前記太陽電池から取得可能な最大電力を推定し、
前記太陽光発電システムの起動エネルギを前記起動判断時間で除算した除算値に、前記太陽光発電システムの消費電力を加算した加算値を算出し、前記加算値以上の値を起動電力しきい値として設定し、
前記最大電力が前記起動電力しきい値よりも大きい場合に、前記太陽光発電システムの起動が可能と判断する
車両システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両システムの制御方法及び車両システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1には、太陽光発電装置から車両のバッテリに電力を供給してバッテリを充電する充電装置が開示されている。この充電装置は、太陽光発電装置の出力電圧が基準電圧より大きいとき、充電回路を起動して太陽光発電装置からバッテリに電力を供給させる。一方、太陽光発電装置の出力電力、又は、充電回路の出力電力が基準電力より小さいとき、充電装置は、充電回路を停止して太陽光発電装置からバッテリへの電力の供給を停止させ、そして、充電回路を停止してから起動待ち時間が経過するまでは充電回路を起動させない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-217218号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示された手法によれば、太陽電池が電力を十分に発電することができる発電状態となっていても、起動待ち時間の間においては充電回路を起動することができない。そのため、バッテリの充電機会を失ってしまうという不都合がある。
【0005】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、バッテリの充電機会を増やすことができる車両システムの制御方法及び車両システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る車両システムの制御方法は、車両の速度に基づいて起動判断時間を設定し、太陽電池の発電状態と起動判断時間とに基づいて、太陽光発電システムが起動可能か否かを判断する。起動判断時間を設定する場合、車両の速度が大きいほど、起動判断時間を短く設定する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、車両の速度が大きいほど起動判断時間が短く設定されるので、バッテリの充電機会を増やすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本実施形態に係る車両システムの構成を示すブロック図である。
図2図2は、車両システムの動作を示すフローチャートである。
図3図3は、車両システムの動作を示すフローチャートである。
図4図4は、起動判断時間と車速との関係を示す説明図である。
図5図5は、開放端電圧と最大電力との関係を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。図面の記載において同一部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0010】
図1を参照して、本実施形態に係る車両システム1の構成を説明する。車両システム1は、電動モータのみで駆動する電気自動車に適用されている。しかしながら、車両システム1は、エンジンと電動モータとで駆動するハイブリッド自動車、エンジンのみで駆動するエンジン自動車に適用してもよい。
【0011】
車両システム1は、車両に搭載されたシステムであり、太陽光発電システム2と、車両制御システム3とを主体に構成されている。
【0012】
太陽光発電システム2は、太陽光を利用して電力を発電する。太陽光発電システム2は、太陽電池モジュール20と、コンバータ21と、太陽電池コントローラ22とを主体に構成されている。
【0013】
太陽電池モジュール20は、光エネルギを電気エネルギに変換し、発電を行う。太陽電池モジュール20で発電された電力は、コンバータ21へ出力される。
【0014】
コンバータ21は、太陽電池モジュール20において発電された電力を変換し、変換した電力を出力する。具体的には、コンバータ21は、DC/DCコンバータであり、太陽電池モジュール20の出力電圧を、所定の電圧へと変換して出力する。コンバータ21から出力された電力は、高電圧バッテリ30などに出力される。
【0015】
太陽電池コントローラ22は、CPU、ROM、RAM、及びI/Oインターフェースを主体に構成されている。太陽電池コントローラ22は、CPUがROMなどから処理内容に応じた各種プログラムを読み出し、RAMに展開し、展開した各種プログラムを実行することにより、太陽光発電システム2の動作を制御する。
【0016】
太陽電池コントローラ22は、太陽電池モジュール20の出力電圧と出力電流とに基づいて、コンバータ21を駆動する。太陽電池コントローラ22は、太陽電池モジュール20から最大の出力電力が得られるように、MPPT(Maximum Power Point Tracking)方式でコンバータ21を制御する。
【0017】
具体的には、太陽電池コントローラ22は、コンバータ21を動作させ、太陽電池モジュール20の出力電圧を変化させる。太陽電池モジュール20の出力電圧を変化させると、太陽電池モジュール20の出力電力が変化するので、太陽電池コントローラ22は、太陽電池モジュール20の出力電圧を変化させながら最大動作点を検索する。そして、太陽電池コントローラ22は、コンバータ21を駆動して、最大動作点を追従するように太陽電池モジュール20の出力電圧を制御する。
【0018】
この太陽電池コントローラ22には、太陽電池モジュール20の出力電流を検出する電流センサ23が接続されている。太陽電池コントローラ22には、太陽電池モジュール20の出力電圧を検出する電圧センサ24が接続されている。太陽電池コントローラ22には、太陽電池モジュール20の温度を検出する温度センサ25が接続されている。
【0019】
車両制御システム3は、太陽光発電システム2が搭載された車両を制御する。車両制御システム3は、高電圧バッテリ30と、インバータ31と、モータ32と、車両コントローラ33と、低電圧バッテリ34とを主体に構成されている。
【0020】
高電圧バッテリ30は、太陽光発電システム2において発電された電力を充電する。高電圧バッテリ30は、コンバータ21の出力端子と接続されており、コンバータ21で変換された所定電圧の電力が充電される。高電圧バッテリ30は、低電圧バッテリ34よりも電圧が高いバッテリが用いられる。また、高電圧バッテリ30に充電された電力は、インバータ31へ供給される。また、高電圧バッテリ30に充電された電力は、太陽光発電システム2を構成する電気負荷及び車両制御システム3を構成する電気負荷のうち、必要な電気負荷にも供給される。なお、太陽光発電システム2において発電された電力を、インバータ31及び必要な電気負荷に対して直接供給することもできる。
【0021】
インバータ31は、例えば三相インバータ回路によって構成される。インバータ31は、車輪を駆動するモータ32に接続されている。インバータ31は、高電圧バッテリ30又は太陽光発電システム2の出力電力を三相交流電力に変換してモータ32に供給する。
【0022】
車両コントローラ33は、CPU、ROM、RAM、及びI/Oインターフェースを主体に構成されている。車両コントローラ33は、CPUがROMなどから処理内容に応じた各種プログラムを読み出し、RAMに展開し、展開した各種プログラムを実行することにより、車両制御システム3の動作を制御する。
【0023】
車両コントローラ33は、車両の走行に必要な各種制御を行う。例えば車両コントローラ33は、モータ32の回転速度に応じてインバータ31を制御したり、高電圧バッテリ30の監視を行ったりする。
【0024】
低電圧バッテリ34は、太陽電池コントローラ22及び車両コントローラ33に対して電力を供給するバッテリである。
【0025】
車両制御システム3は、車両の速度(車速)を検出する車速センサ35が設けられている。車速センサ35によって検出された車速の情報は、車両コントローラ33に入力される。また、車速センサ35によって検出された車速の情報は、車両コントローラ33を介して太陽電池コントローラ22に入力されたり、車速センサ35から直接太陽電池コントローラ22に入力されたりする。
【0026】
このような車両システム1において、車両のパワースイッチ(又はイグニッションスイッチ)がオンの場合、すなわち、車両が走行中又は停車中の場合、車両制御システム3は、太陽光発電システム2の起動又は停止に関わらず、起動している。一方、車両のパワースイッチ(又はイグニッションスイッチ)がオフの場合、すなわち、車両が駐車中の場合、車両制御システム3は、太陽光発電システム2の停止時に停止し、太陽光発電システムの起動時に起動する。太陽光発電システム2において発電された電力を高電圧バッテリ30に充電するにあたり、高電圧バッテリ30を備える車両制御システム3側も起動している必要がある。そのため、車両制御システム3の起動及び停止を、太陽光発電システム2の起動及び停止と同期させている。なお、太陽光発電システム2が停止している状態であっても、太陽電池コントローラ22及び車速センサは、低電圧バッテリ34からの電力を受けて動作可能な状態となっている。
【0027】
以下、図2から図3を参照し、車両システム1の動作について説明する。図2から図3に示すフローチャートは、太陽光発電システム2の停止後、太陽電池コントローラ22によって所定の周期で実行される。
【0028】
まず、ステップS1において、太陽電池コントローラ22は、車速センサ35を用いて、車速Vvehicleを取得する。
【0029】
太陽電池コントローラ22は、1日の中で太陽光発電システム2が起動した起動回数を計測する起動回数カウンタを備えている。ステップS2において、太陽電池コントローラ22は、太陽光発電システム2の起動回数Nを取得する。
【0030】
ステップS3において、太陽電池コントローラ22は、車速Vvehicleから起動判断時間Tstartを取得する。起動判断時間Tstartは、太陽光発電システム2の停止後に太陽光発電システム2の起動を制限する時間に相当する。この起動判断時間Tstartを設けることで、太陽光発電システム2が停止してから起動するまでの間に一定の期間が確保されるので、太陽光発電システム2の起動と停止とが頻繁に繰り返される事態を抑制することができる。
【0031】
図4に示すように、起動判断時間Tstartは、車速Vvehicleとの間に一定の関係性を有している。具体的には、起動判断時間Tstartは、車速Vvehicleが最小(車速0km/h)のとき最も大きな値(基準値)となり、車速Vvehicleが大きいほど、基準値よりも短くなる傾向を有している。太陽電池コントローラ22は、起動判断時間Tstartと車速Vvehicleとの関係性を示すマップ又は計算式を保持しており、車速Vvehicleに基づいて起動判断時間Tstartを取得する。したがって、起動判断時間Tstartは、車速Vvehicleが大きいほど短く設定される。
【0032】
なお、1日の中で太陽光発電システム2を初めて起動する場合、すなわち、起動回数Nが1である場合、基準値(車速Vvehicleが最小(車速0km/h)のときに値)が起動判断時間Tstartとして設定される。
【0033】
ステップS4において、太陽電池コントローラ22は、電圧センサ24を用いて、太陽電池モジュール20の電圧を取得する。太陽光発電システム2が停止している場合、コンバータ21も停止しているので、太陽電池モジュール20の電圧は、開放端電圧Vocに相当する。すなわち、ステップS4では、太陽電池モジュール20の開放端電圧Vocが取得される。
【0034】
ステップS5において、太陽電池コントローラ22は、電圧センサ24のセンサ誤差Verrorを取得する。センサ誤差Verrorは、電圧を検出するときに生じる電圧センサ24の検出誤差を示すものであり、電圧センサ24の固有の特性値である。センサ誤差Verrorは、実験又はシミュレーションを通じて予め取得されており、ROMなどのメモリに格納されている。
【0035】
ステップS6において、太陽電池コントローラ22は、温度センサ25を用いて、太陽電池モジュール20の温度(モジュール温度)Tsolorを取得する。
【0036】
ステップS7において、太陽電池コントローラ22は、太陽電池モジュール20から取得可能な最大電力Pmaxを算出する。最大電力Pmaxは、太陽電池モジュール20の発電状態を示すパラメータである。最大電力Pmaxは、ステップS4からS6までで取得した各パラメータに基づいて、以下に示す数式を用いて算出される。
【数1】
【0037】
同数式において、「A」は比例定数である。「I」は、太陽電池モジュール20の飽和電流である。「n」は、理想係数、「k」は、ボルツマン定数である。これらのパラメータは、実験又はシミュレーションを通じて予め取得されており、ROMなどのメモリに格納されている。
【0038】
このように、最大電力Pmaxは、太陽電池モジュール20の開放端電圧Vocに基づいて推定される。また、最大電力Pmaxは、モジュール温度Tsolorが高いほど、低く推定される。同様に、最大電力Pmaxは、センサ誤差Verrorが大きいほど、低く推定される。
【0039】
ステップS8において、太陽電池コントローラ22は、車両制御システム3がオフしているか否かを判断する。車両が走行中又は停車中の場合、車両制御システム3はオンしている。一方、車両が駐車中の場合、車両制御システム3はオフしている。車両制御システム3がオフしている場合には、ステップS8で肯定判定され、ステップS9に進む。一方、車両制御システム3がオンしている場合には、ステップS8で否定判定され、ステップS14に進む。
【0040】
ステップS9において、太陽電池コントローラ22は、全システムの起動エネルギEsysを推定する。全システムの起動エネルギは、太陽光発電システム2及び車両制御システム3が起動期間(起動動作の開始から終了までに必要な期間)に消費する電力量である。太陽光発電システム2及び車両制御システム3の起動には、リレーなどの電気負荷を動作させる必要がある。すなわち、全システムの起動エネルギEsysは、太陽光発電システム2及び車両制御システム3に含まれる電気負荷が起動期間において消費する電気エネルギに相当する。全システムの起動エネルギEsysは、太陽光発電システム2及び車両制御システム3に含まれる電気負荷の存在を前提に、実験又はシミュレーションを通じて予め取得されており、ROMなどのメモリに格納されている。
【0041】
ステップS10において、太陽電池コントローラ22は、全システムの消費電力Psysを推定する。全システムの消費電力Psysは、太陽光発電システム2及び車両制御システム3が起動した後に、太陽光発電システム2及び車両制御システム3が定常的に消費する電力に相当する。太陽光発電システム2及び車両制御システム3には電気負荷が含まれるため、起動後にも、定常的に消費する電力が存在する。全システムの消費電力Psysは、太陽光発電システム2及び車両制御システム3に含まれる電気負荷の存在を前提に、実験又はシミュレーションを通じて予め取得されており、ROMなどのメモリに格納されている。
【0042】
ステップS11において、太陽電池コントローラ22は、全システムの起動エネルギEsys、全システムの消費電力Psys及び起動判断時間Tstartに基づいて、下式を満たすように、全システムの起動電力しきい値Pthを算出する。
【数2】
【0043】
全システムの起動電力しきい値Pthは、全システムの起動エネルギEsysを起動判断時間Tstartで除算した除算値に、全システムの消費電力Psysを加算した加算値として、又はこの加算値よりも大きな値として設定されている。すなわち、起動電力しきい値Pthは、起動判断時間Tstartが経過したときに、全システムの消費電力Psysのみならず、全システムの起動エネルギEsysを賄うことができる電力として決定されている。
【0044】
ステップS12において、太陽電池コントローラ22は、最大電力Pmaxが起動電力しきい値Pthよりも大きいか否かを判断する。最大電力Pmaxが起動電力しきい値Pthよりも大きい場合には、ステップS12で肯定判定され、ステップS13に進む。一方、最大電力Pmaxが起動電力しきい値Pth以下の場合には、ステップS12で否定判定され、ステップS1に戻る。
【0045】
ステップS13において、太陽電池コントローラ22は、太陽光発電システム2を起動する。また、太陽電池コントローラ22は、車両制御システム3に起動指令を出力し、車両制御システム3を起動する。車両制御システム3を起動することで、車両制御システム3が動作可能となるので、車両制御システム3が備える高電圧バッテリ30への充電が可能となる。すなわち、本ステップS13における車両制御システム3の起動は、ドライバー起因の起動ではなく、高電圧バッテリ30への充電を目的とした起動となる。
【0046】
ステップS14において、太陽電池コントローラ22は、太陽光発電システム2の起動エネルギEs-sysを推定する。太陽光発電システム2の起動エネルギEs-sysは、太陽光発電システム2が起動期間において消費する電力量である。太陽光発電システム2の起動には、リレーなどの電気負荷を動作させる必要がある。すなわち、太陽光発電システム2の起動エネルギEs-sysは、太陽光発電システム2に含まれる電気負荷が起動期間において消費する電気エネルギに相当する。太陽光発電システム2の起動エネルギEs-sysは、太陽光発電システム2に含まれる電気負荷の存在を前提に、実験又はシミュレーションを通じて予め取得されており、ROMなどのメモリに格納されている。
【0047】
ステップS15において、太陽電池コントローラ22は、太陽光発電システム2の消費電力Ps-sysを推定する。太陽光発電システム2の消費電力Ps-sysは、太陽光発電システム2が起動した後に、太陽光発電システム2が定常的に消費する電力に相当する。太陽光発電システム2には電気負荷が含まれるため、起動後にも、定常的に消費する電力が存在する。太陽光発電システム2の消費電力Ps-sysは、太陽光発電システム2に含まれる電気負荷の存在を前提に、実験又はシミュレーションを通じて予め取得されており、ROMなどのメモリに格納されている。
【0048】
ステップS16において、太陽電池コントローラ22は、太陽光発電システム2の起動エネルギEs-sys、太陽光発電システム2の消費電力Ps-sys及び起動判断時間Tstartに基づいて、下式を満たすように、太陽光発電システム2の起動電力しきい値Ps-thを算出する。
【数3】
【0049】
太陽光発電システム2の起動電力しきい値Ps-thは、太陽光発電システム2の起動エネルギEs-sysを起動判断時間Tstartで除算した値に、太陽光発電システム2の消費電力Ps-sysを加算した加算値として、又はこの加算値よりも大きな値として設定されている。すなわち、起動電力しきい値Pthは、起動判断時間Tstartが経過したときに、太陽光発電システム2の消費電力Ps-sysのみならず、太陽光発電システム2の起動エネルギEs-sysを賄うことができる電力として決定されている。また、太陽光発電システム2の起動エネルギEs-sys及び消費電力Ps-sysが全システムの起動エネルギEsys及び消費電力Psysよりも小さいため、太陽光発電システム2の起動電力しきい値Ps-thは、全システムの起動電力しきい値Pthよりも小さい。
【0050】
ステップS17において、太陽電池コントローラ22は、最大電力Pmaxが起動電力しきい値Ps-thよりも大きいか否かを判断する。最大電力Pmaxが起動電力しきい値Ps-thよりも大きい場合には、ステップS17で肯定判定され、ステップS18に進む。一方、最大電力Pmaxが起動電力しきい値Ps-th以下の場合には、ステップS17で否定判定され、ステップS1に戻る。
【0051】
ステップS18において、太陽電池コントローラ22は、太陽光発電システム2を起動する。
【0052】
ステップS19において、太陽電池コントローラ22は、高電圧バッテリ30に対して、太陽光発電システム2により発電された電力の充電を開始する。
【0053】
ステップS20において、太陽電池コントローラ22は、モジュール発電電力Psolorを取得する。モジュール発電電力Psolorは、太陽電池モジュール20が実際に発電している電力である。モジュール発電電力Psolorは、電流センサ23により検出された出力電流、電圧センサ24により検出された出力電圧に基づいて算出される。
【0054】
ステップS21において、太陽電池コントローラ22は、車両制御システム3のオフ指令があるか否かを判断する。車両制御システム3のオフ指令は、車両コントローラ33に入力されるパワースイッチのオフ信号などを用いて判断することができる。車両制御システム3のオフ指令があった場合には、ステップS21で肯定判定され、ステップS22に進む。一方、車両制御システム3のオフ指令がない場合には、ステップS21で否定判定され、ステップS25に進む。
【0055】
ステップS22において、太陽電池コントローラ22は、全システムの停止判断時間Tstopを取得する。全システムの停止判断時間Tstopは、太陽光発電システム2及び車両制御システム3の停止の可否を判断するための判断時間である。全システムの停止判断時間Tstopは、実験又はシミュレーションを通じて予め取得されており、ROMなどのメモリに格納されている。
【0056】
ステップS23において、太陽電池コントローラ22は、モジュール発電電力Psolorが全システムの消費電力Psysよりも小さくなっている状況が、全システムの停止判断時間Tstopよりも長い時間継続しているか否かを判断する。全システムの消費電力Psysは、実験やシミュレーションを通じて取得した定数(ステップS9で取得した値)であってもよいし、太陽光発電システム2及び車両制御システム3で実際に消費される電力を直接検出してもよい。
【0057】
太陽電池モジュール20で発電を行い、発電した電力を高電圧バッテリ30に充電するためには、太陽光発電システム2及び車両制御システム3を起動しておく必要がある。一方で、太陽電池モジュール20が発電可能であっても、太陽電池モジュール20の発電電力が小さく、モジュール発電電力Psolorが全システムの消費電力Psysよりも小さい状況が継続した場合には、高電圧バッテリ30の容量が低下してしまう。このようなケースでは、太陽光発電システム2及び車両制御システム3を停止した方が好ましい。そこで、ステップS23に示す判断が設けられている。
【0058】
モジュール発電電力Psolorが全システムの消費電力Psysよりも小さい状況が、停止判断時間Tstopにわたって継続している場合には、ステップS23で肯定判定され、ステップS24に進む。一方、モジュール発電電力Psolorが全システムの消費電力Psysよりも小さい状況が、停止判断時間Tstopにわたって継続していない場合には、ステップS23で否定判定され、ステップS20に戻る。
【0059】
ステップS24において、太陽電池コントローラ22は、太陽光発電システム2を停止する。また、太陽電池コントローラ22は、車両制御システム3に停止指令を出力し、車両制御システム3を停止する。
【0060】
ステップS25において、太陽電池コントローラ22は、太陽光発電システム2の停止判断時間Ts-stopを取得する。太陽光発電システム2の停止判断時間Ts-stopは、太陽光発電システム2の停止の可否を判断するための判断時間である。太陽光発電システム2の停止判断時間Ts-stopは、実験又はシミュレーションを通じて予め取得されており、ROMなどのメモリに格納されている。ステップS25で取得される太陽光発電システム2の停止判断時間Ts-stopは、ステップS22で取得される全システムの停止判断時間Tstopよりも長く設定されている。
【0061】
ステップS26において、太陽電池コントローラ22は、モジュール発電電力Psolorが太陽光発電システム2のシステム消費電力Ps-sysよりも小さい状況が、太陽光発電システム2の停止判断時間Ts-stopよりも長い時間継続しているか否かを判断する。太陽光発電システム2の消費電力Ps-sysは、実験やシミュレーションを通じて取得した定数(ステップS15で取得した値)であってもよいし、太陽光発電システム2で実際に消費される電力を直接検出してもよい。
【0062】
太陽電池モジュール20で発電が可能であっても、太陽電池モジュール20の発電電力が小さいことがある。よって、モジュール発電電力Psolorが太陽光発電システム2のシステム消費電力Ps-sysよりも小さい状況が継続した場合には、太陽光発電システム2を起動していることで、高電圧バッテリ30の容量を低下させてしまう。このようなケースでは、太陽光発電システム2を停止した方が好ましい。そこで、ステップS26に示す判断が設けられている。
【0063】
モジュール発電電力Psolorが太陽光発電システム2の消費電力Ps-sysよりも小さい状況が、停止判断時間Ts-stopにわたって継続している場合には、ステップS26で肯定判定され、ステップS27に進む。一方、最大電力Psolorが太陽光発電システム2のシステム消費電力Ps-sysよりも小さい状況が、停止判断時間Ts-stopにわたって継続していない場合には、ステップS26で否定判定され、ステップS20に戻る。
【0064】
ステップS27において、太陽電池コントローラ22は、太陽光発電システム2を停止する。
【0065】
このように本実施形態に係る車両システム1の制御方法は、車速Vvehicleを取得し、車速Vvehicleに基づいて起動判断時間Tstartを設定する。そして、太陽光発電システム2の停止後、太陽電池モジュール20の発電状態と起動判断時間Tstartとに基づいて、太陽光発電システム2が起動可能か否かを判断し、太陽光発電システム2が起動可能と判断された場合に、太陽光発電システム2を起動する。起動判断時間Tstartを設定する場合には、車速Vvehicleが大きいほど、起動判断時間を短く設定している。
【0066】
太陽光発電システムが車両に搭載される場合、家屋又は土地に固定されている場合と比べ、太陽電池モジュールの発電状態の変動が大きい傾向にある。そのため、太陽光発電システムを起動したにも関わらず、太陽電池モジュールの発電状態が悪くなってしまった場合には、太陽電池モジュールから充分な電力を得ることができず、太陽光発電システムを停止する必要がある。太陽光発電システムの起動と停止とが頻繁に繰り返された場合には、バッテリの容量が低下してしまう。
【0067】
この点、本実施形態に係る制御方法においては、太陽電池モジュール20の発電状態と、起動判断時間Tstartと考慮して起動の可否を判断している。これにより、太陽光発電システム2が停止した後、一定の期間にわたって太陽光発電システム2の起動を制限することができる。これにより、日射量が上昇し、太陽電池モジュール20が電力を十分に発電することができる発電状態になってから、太陽光発電システム2を起動することができる。その結果、太陽光発電システム2の起動と停止が頻繁に繰り返されることを抑制することができる。
【0068】
また、車速が大きい状況では、影などに起因する日射量の変動も早くなる。したがって、車速が大きい場合には、日射量がいったん低下したとしても、日射量がすぐさま回復することがある。すなわち、日射量の変動が早い状況では、太陽電池モジュールが電力を十分に発電することができる発電状態へと遷移し易い。しかしながら、起動判断時間が一律に固定されている状況では、太陽電池モジュールが電力を十分に発電することができる発電状態になっていたとしても、起動判断時間に到達していなければ、太陽光発電システムを起動することができない。その結果、バッテリへの充電機会を失ってしまうことなる。
【0069】
この点、本実施形態に係る制御方法においては、車速Vvehicleが大きいほど、起動判断時間Tstartを短く設定している。車速Vvehicleが大きく、日射量の変動が早い環境では、太陽電池モジュール20が電力を十分に発電することができる発電状態へと遷移し易い。したがって、太陽電池モジュール20が電力を十分に発電することができる発電状態へと早期に至る状況であれば、起動判断時間Tstartを短く設定することで、起動可能との判断を早期に行うことができる。これにより、日射量が十分に上昇してから起動するまでの時間を早くすることができるので、高電圧バッテリ30の充電機会を増やすことができる。
【0070】
また、本実施形態に係る車両システム1の制御方法は、太陽光発電システム2の起動の可否を判断する場合、システム起動エネルギEsys、Es-sysと、システム消費電力Psys、Ps-sysとをそれぞれ推定する。太陽電池モジュール20の発電状態として、太陽電池モジュール20から取得可能な最大電力Pmaxを推定する。システム起動エネルギEsys、Es-sysを起動判断時間Tstartで除算した除算値に、システム消費電力Psys、Ps-sysを加算した加算値を算出し、この加算値以上の値を起動電力しきい値Pth、Ps-thとして設定する。そして、最大電力Pmaxが起動電力しきい値Pth、Ps-thよりも大きい場合に、太陽光発電システム2の起動が可能と判断している。
【0071】
本実施形態に係る制御方法によれば、起動判断時間Tstartが経過したときに、システム消費電力Psys、Ps-sysのみならず、システム起動エネルギEsys、Es-sysを賄うことができるだけの電力として、起動電力しきい値Pth、Ps-thが決定されている。これにより、太陽電池モジュール20が十分な電力を発電することができる発電状態へと遷移した後に、システムを起動することができるので、システムの起動と停止とが頻繁に繰り返される事態を抑制することができる。
【0072】
また、本実施形態に係る制御方法によれば、車速Vvehicleが遅いときには起動判断時間Tstartが長くなるが、起動電力しきい値Pth、Ps-thを下げることができる。その結果、最大電力Pmaxが起動電力しきい値Pth、Ps-thよりも大きくなる状況が早期に到来するので、起動可能との判断を早期に行うことができる。これにより、日射量が十分に上昇してから起動するまでの時間を早くすることができるので、高電圧バッテリ30の充電機会を増やすことができる。
【0073】
また、図5に示すように、開放端電圧Vocが高い場合には、センサ誤差の影響により、最大電力Pmaxに対する誤差ΔPaの幅が大きくなる。一方で、開放端電圧Vocが低い場合には、同一のセンサ誤差であっても、最大電力Pmaxに対する誤差ΔPbの幅が小さい。したがって、起動電力しきい値Pth、Ps-thを下げることで、低電圧側で演算された最大電力Pmaxを利用して起動電力しきい値Pth、Ps-thと比較を行う頻度が高くなる。これにより、最大電力Pmaxの推定誤差を低減することが可能となる。
【0074】
本実施形態に係る車両システム1の制御方法において、車両システム1は、高電圧バッテリ30を備えた車両を制御する車両制御システム3を含む。車両が走行中又は停車中の場合、車両制御システム3は、太陽光発電システム2の起動又は停止に関わらず起動している。この場合、システム起動エネルギEs-sysは、太陽光発電システム2が起動期間に消費する電力量であり、システム消費電力Ps-sysは、太陽光発電システム2が起動後に消費する電力である。一方、車両が駐車中の場合、車両制御システム3は、太陽光発電システム2の停止時に停止し、太陽光発電システム2の起動時に起動する。この場合、システム起動エネルギEsysは、太陽光発電システム2及び車両制御システム3が起動期間に消費する電力量であり、システム消費電力Psysは、太陽光発電システム2及び車両制御システム3が起動後に消費する電力である。
【0075】
本実施形態に係る制御方法によれば、起動判断時間Tstartが経過したときに、システム消費電力Psys、Ps-sysのみならず、システム起動エネルギEsys、Es-sysを賄うことができるだけの電力として、起動電力しきい値Pth、Ps-thが決定されている。これにより、太陽電池モジュール20が十分な電力を発電することができる発電状態へと遷移した後に、システムを起動することができるので、システムの起動と停止とが頻繁に繰り返される事態を抑制することができる。
【0076】
本実施形態に係る制御方法によれば、車速Vvehicleが遅いときには起動判断時間Tstartが長くなるが、起動電力しきい値Pth、Ps-thを下げることができる。その結果、最大電力Pmaxが起動電力しきい値Pth、Ps-thよりも大きくなる状況が早期に到来するので、起動可能との判断を早期に行うことができる。これにより、日射量が十分に上昇してから起動するまでの時間を早くすることができるので、高電圧バッテリ30の充電機会を増やすことができる。
【0077】
また、図5に示すように、開放端電圧Vocが高い場合には、センサ誤差の影響により、最大電力Pmaxに対する誤差ΔPaの幅が大きくなる。一方で、開放端電圧Vocが低い場合には、同一のセンサ誤差であっても、最大電力Pmaxに対する誤差ΔPbの幅が小さい。したがって、起動電力しきい値Pth、Ps-thを下げることで、低電圧側で演算された最大電力Pmaxを利用する頻度が高くなる。これにより、最大電力Pmaxの推定誤差を低減することが可能となる。
【0078】
本実施形態に係る制御方法において、起動判断時間Tstartは、停車中と駐車中とで同じ値に設定されている。そして、停車中における起動電力しきい値、すなわち、太陽光発電システム2の起動電力しきい値Ps-thは、駐車中における起動電力しきい値、すなわち、全システムの起動電力しきい値Pthよりも小さい。
【0079】
停車中は車両制御システム3がすでに起動しているため、新たに太陽光発電システム2を起動するのみでよい。このため、太陽光発電システム2の起動電力しきい値Ps-thは、全システムの起動電力しきい値Pthよりも小さくすることができる。よって、停車中においては、最大電力Pmaxが太陽光発電システム2の起動電力しきい値Ps-thよりも大きくなる状況が早期に到来するので、起動可能との判断を早期に行うことができる。これにより、日射量が十分に上昇してから起動するまでの時間を早くすることができるので、高電圧バッテリ30の充電機会を増やすことができる。
【0080】
本実施形態に係る制御方法において、1日の中で太陽光発電システム2を初めて起動する場合には、車速Vvehicleに関わらず、車速Vvehicleが最小のときに設定される基準値を、起動判断時間Tstartとして設定している。
【0081】
1日の中で太陽光発電システム2を初めて起動する場合には、朝方又は午前中といった状況が多いことが予想され、日射量の上昇が遅い。この点、本実施形態に係る方法によれば、初回の太陽光発電システム2の起動時の場合には、起動判断時間Tstartが長くなるが、起動電力しきい値Pth、Ps-thを下げることができる。その結果、最大電力Pmaxが起動電力しきい値Pth、Ps-thよりも大きくなる状況が早期に到来するので、起動可能との判断を早期に行うことができる。これにより、日射量が十分に上昇してから起動するまでの時間を早くすることができるので、高電圧バッテリ30の充電機会を増やすことができる。
【0082】
本実施形態に係る制御方法は、太陽光発電システム2の起動後、モジュール発電電力(太陽電池モジュール20の出力電力)Psolorを取得し、モジュール発電電力Psolorがシステム消費電力Psys、Ps-sysよりも小さい状態が、所定の停止判断時間Tstop、Ts-stopにわたって継続した場合、起動しているシステムを停止している。この場合、走行中又は停車中における停止判断時間、すなわち、太陽光発電システム2の停止判断時間Ts-stopは、駐車中における停止判断時間、すなわち、全システムのTstopよりも長く設定される。
【0083】
太陽光発電システム2が停止するまでの期間を長くすることができるので、走行中又は停車中において起動と停止とが頻繁に繰り返されることを抑制することできる。
【0084】
本実施形態に係る制御方法は、電圧センサ24を用いて、太陽光発電システム2が停止しているときの太陽電池モジュール20の開放端電圧Vocを検出し、開放端電圧Vocに基づいて最大電力Pmaxを推定している。
【0085】
最大電力Pmaxを推定することで、太陽電池モジュール20の発電状態を適切に判断することができる。これにより、太陽光発電システム2の起動の可否を適切に判断することができる。
【0086】
本実施形態に係る制御方法は、太陽電池モジュール20の温度Tsolorを検出し、温度Tsolorが低いほど、最大電力Pmaxを低く推定している。
【0087】
この方法によれば、太陽電池モジュール20の温度特性を考慮することができるので、最大電力Pmaxの推定を精度よく行うことができる。
【0088】
本実施形態に係る制御方法は、センサ誤差(電圧センサ24の検出誤差)Verrorを取得し、センサ誤差Verrorが大きいほど、最大電力Pmaxを低く推定している。
【0089】
センサ誤差Verrorが大きい場合には、太陽光発電システム2を起動したときに、太陽電池モジュール20から実際に出力される電力が、最大電力Pmaxよりも低くなることがある。センサ誤差Verrorを考慮することで、太陽光発電システム2の起動の可否を適切に判断することができるので、高電圧バッテリ30に電力を充電することができないという事態を抑制することができる。
【0090】
また、本実施形態に係る車両システム1は、光エネルギを電気エネルギに変換する太陽電池モジュール20を用いて発電を行う太陽光発電システム2と、太陽光発電システム2から出力される電力を充電する高電圧バッテリ30とを有し、車両に搭載されている。この車両システムは、車速Vvehicleを検出する車速センサ35と、太陽電池コントローラ22と、を有している。太陽電池コントローラ22は、上述した各制御方法を実行する。
【0091】
この車両システム1によれば、車速Vvehicleが大きいほど、起動判断時間Tstartを短く設定することができる。車速Vvehicleが大きく、日射量の変動が早い環境では、太陽電池モジュール20が電力を十分に発電することができる発電状態へと遷移し易い。したがって、太陽電池モジュール20が電力を十分に発電することができる発電状態へと早期に至る状況であれば、起動判断時間Tstartを短く設定することで、起動可能との判断を早期に行うことができる。これにより、日射量が十分に上昇してから起動するまでの時間を早くすることができるので、高電圧バッテリ30の充電機会を増やすことができる。
【0092】
上記のように、本発明の実施形態を記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
【符号の説明】
【0093】
1 車両システム
2 太陽光発電システム
3 車両制御システム
20 太陽電池モジュール
21 コンバータ
22 太陽電池コントローラ
23 電流センサ
24 電圧センサ
25 温度センサ
30 高電圧バッテリ
31 インバータ
32 モータ
33 車両コントローラ
34 低電圧バッテリ
35 車速センサ
図1
図2
図3
図4
図5