(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-16
(45)【発行日】2023-08-24
(54)【発明の名称】インクジェット印刷装置におけるヘッドの高さ傾き検出方法
(51)【国際特許分類】
B41J 2/01 20060101AFI20230817BHJP
【FI】
B41J2/01 307
B41J2/01 451
(21)【出願番号】P 2019222085
(22)【出願日】2019-12-09
【審査請求日】2022-06-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100093056
【氏名又は名称】杉谷 勉
(74)【代理人】
【識別番号】100142930
【氏名又は名称】戸高 弘幸
(74)【代理人】
【識別番号】100175020
【氏名又は名称】杉谷 知彦
(74)【代理人】
【識別番号】100180596
【氏名又は名称】栗原 要
(74)【代理人】
【識別番号】100195349
【氏名又は名称】青野 信喜
(72)【発明者】
【氏名】安田 友則
(72)【発明者】
【氏名】將野 敬二
【審査官】長田 守夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-1278(JP,A)
【文献】特開2007-98838(JP,A)
【文献】国際公開第2016/039159(WO,A1)
【文献】特開2006-27162(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0070993(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インク滴を吐出するヘッドを備えた印刷ヘッドと印刷媒体とを相対移動させながら印刷を行うインクジェット印刷装置におけるヘッドの高さ傾き検出方法において、
前記印刷ヘッドと前記印刷媒体とを第1の速度で相対移動させた状態で、前記相対移動方向と直交する方向に第1の線分を印刷させる工程と、
前記第1の速度より速い第2の速度で前記印刷ヘッドと前記印刷媒体とを相対移動させた状態で、前記相対移動方向と直交する方向に第2の線分を印刷させる工程と、
前記相対移動方向と直交する方向における前記第2の線分の傾きが前記第1の線分の傾きより大きい場合には、前記ヘッドに高さ方向の傾きがあると判断する工程と、
を備え
、
前記ヘッドとは異なるヘッドであって、高さ傾きがない状態で前記印刷ヘッドに取り付けられたヘッドを基準ヘッドとし、
前記第1の線分を印刷させる工程の前及び前記第2の線分を印刷させる工程の前に、前記基準ヘッドによって前記相対移動方向とは直交する方向に基準線分を前記印刷媒体に印刷する工程を実施し、
前記第1の線分及び前記第2の線分は、それぞれ前記基準線分に近接して印刷されることを特徴とするインクジェット印刷装置におけるヘッドの高さ傾き検出方法。
【請求項2】
請求項1に記載のインクジェット印刷装置におけるヘッドの高さ傾き検出方法において、
前記第1の線分を印刷させる工程の後、前記第2の線分を印刷させる工程の前に、
前記相対移動方向と直交する方向における前記第1の線分の傾きが第1の閾値以上の傾きを有するか否かを判定する工程と、
前記第1の線分の傾きが第1の閾値以上の傾きを有する場合には、前記ヘッドについて前記相対移動方向における傾きをなくすように調整する工程と、
を実施することを特徴とするインクジェット印刷装置におけるヘッドの高さ傾き検出方法。
【請求項3】
請求項
1に記載のインクジェット印刷装置におけるヘッドの高さ傾き検出方法において、
前記基準線分は、前記基準ヘッドが備える複数個のノズルのうち、前記相対移動方向と直交する方向における両端側に位置する複数個のノズルだけで印刷されることを特徴とするインクジェット印刷装置におけるヘッドの高さ傾き検出方法。
【請求項4】
請求項1または
3に記載のインクジェット印刷装置におけるヘッドの高さ傾き検出方法において、
前記基準線分は、前記相対移動方向に第1の間隔を空けて二本印刷されてなる第1の基準線分群と、前記第1の間隔よりも広い第2の間隔を空けて二本印刷されてなる第2の基準線分群とを備え、
前記第1の線分及び前記第2の線分は、前記第1の間隔及び前記第2の間隔に印刷され、
前記第2の間隔は、前記第1の線分及び前記第2の線分と前記第1の基準線分群との位置関係が目視できる間隔であり、前記第1の間隔は、前記第1の線分及び前記第2の線分と前記第2の基準線分群との位置関係が拡大手段によって目視できる間隔であることを特徴とするインクジェット印刷装置におけるヘッドの高さ傾き検出方法。
【請求項5】
請求項1または2に記載のインクジェット印刷装置におけるヘッドの高さ傾き検出方法において、
前記印刷媒体は、前記相対移動方向と直交する方向への罫線入りであることを特徴とするインクジェット印刷装置におけるヘッドの高さ傾き検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インク滴を吐出するヘッドを備えた印刷ヘッドと印刷媒体とを相対移動させることにより、印刷媒体に対して印刷を行うインクジェット印刷装置におけるヘッドの高さ傾き検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の方法として、複数個のヘッドを備えた印刷ヘッドに対して印刷用紙を搬送させつつ、各ヘッドからインク滴を吐出させてヘッド位置調整チャートを印刷させ、このヘッド位置調整チャートに基づいて印刷ヘッドにおけるヘッドの位置調整を行うものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この方法では、ヘッド位置調整チャートを印刷させた後、ヘッドごとの線分の傾きに応じて、印刷ヘッドにおける印刷用紙に平行な平面上での各ヘッドの位置ズレ及び傾きを検出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような構成を有する従来例の場合には、次のような問題がある。
すなわち、従来の方法は、印刷用紙に平行な平面上における各ヘッドの位置ズレ及び傾きを検出できるものの、印刷ヘッドにおける各ヘッドの高さ方向(印刷用紙に平行な平面に垂直な方向)における傾きを検出することはできない。
【0006】
なお、インクジェット印刷装置は、印刷ヘッドに対して印刷用紙を搬送させながらインク滴を吐出する関係上、ヘッドが高さ方向に傾斜していると、印刷用紙の搬送速度を速くするにつれて、印刷用紙の幅方向に印刷した直線が搬送方向へ傾斜する度合いが大きくなる。一般的に、印刷のスループットを向上させるには、搬送速度を速くすることが行われるので、搬送速度を速くするにつれて印刷品質が低下する原因となるヘッドの高さ方向への傾きを検出することは重要である。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、速度を変えて線分を印刷するだけで、ヘッドの高さ方向の傾きを検出できるインクジェット印刷装置におけるヘッドの高さ傾き検出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、このような目的を達成するために、次のような構成をとる。
すなわち、請求項1に記載の発明は、インク滴を吐出するヘッドを備えた印刷ヘッドと印刷媒体とを相対移動させながら印刷を行うインクジェット印刷装置におけるヘッドの高さ傾き検出方法において、前記印刷ヘッドと前記印刷媒体とを第1の速度で相対移動させた状態で、前記相対移動方向と直交する方向に第1の線分を印刷させる工程と、前記第1の速度より速い第2の速度で前記印刷ヘッドと前記印刷媒体とを相対移動させた状態で、前記相対移動方向と直交する方向に第2の線分を印刷させる工程と、前記相対移動方向と直交する方向における前記第2の線分の傾きが前記第1の線分の傾きより大きい場合には、前記ヘッドに高さ方向の傾きがあると判断する工程と、を備え、前記ヘッドとは異なるヘッドであって、高さ傾きがない状態で前記印刷ヘッドに取り付けられたヘッドを基準ヘッドとし、前記第1の線分を印刷させる工程の前及び前記第2の線分を印刷させる工程の前に、前記基準ヘッドによって前記相対移動方向とは直交する方向に基準線分を前記印刷媒体に印刷する工程を実施し、前記第1の線分及び前記第2の線分は、それぞれ前記基準線分に近接して印刷されることを特徴とするものである。
【0009】
[作用・効果]請求項1に記載の発明によれば、印刷ヘッドのヘッドが高さ方向の傾きを有する場合には、相対移動方向と直交する方向においてヘッドと印刷媒体との間隔が一方から他方に向かって次第に大きくなる。そのため、相対移動速度を速くすると、ヘッドと印刷媒体との間隔が大きいほど、第2の線分の傾きが大きく印刷される。したがって、相対移動方向と直交する方向における第2の線分の傾きが第1の線分の傾きより大きい場合には、ヘッドに高さ方向の傾きがあることを表す。その結果、速度を変えて線分を印刷するだけで、ヘッドの高さ方向の傾きがあるか否かを検出できる。また、相対移動方向と直交する方向に傾きがない基準線分が基準ヘッドによって印刷されるので、この基準線分に近接して第1の線分及び第2の線分を印刷すると、それぞれの傾きを容易に検出できる。
【0010】
また、本発明において、前記第1の線分を印刷させる工程の後、前記第2の線分を印刷させる工程の前に、前記相対移動方向と直交する方向における前記第1の線分の傾きが第1の閾値以上の傾きを有するか否かを判定する工程と、前記第1の線分の傾きが第1の閾値以上の傾きを有する場合には、前記ヘッドについて前記相対移動方向における傾きをなくすように調整する工程と、を実施することが好ましい(請求項2)。
【0011】
ヘッドが印刷ヘッドに対して、高さ方向ではなく、相対移動方向及び相対移動方向と直交する方向とを含む平面上において相対移動方向に傾いた状態で取り付けられている場合には、第1の線分及び第2の線分がその平面上において相対移動方向と直交する方向に対して相対移動方向に傾いて印刷される。この傾きは、速度を変えても変わらないが、第1の線分と第2の線分の傾きに含まれるので、これらの比較がしづらくなる。そこで、第1の線分を印刷した後、第1の線分の傾きが第1の閾値以上である場合には、そのヘッドについて、相対移動方向と直交する方向に対する傾きをなくすように調整してから、第2の線分を印刷させる。したがって、相対移動方向と直交する方向に対する傾きをなくした状態にできるので、第2の線分の傾きの比較が容易にかつ正確にできる。
【0012】
(削除)
【0013】
(削除)
【0014】
また、本発明において、前記基準線分は、前記基準ヘッドが備える複数個のノズルのうち、前記相対移動方向と直交する方向における両端側に位置する複数個のノズルだけで印刷されることが好ましい(請求項3)。
【0015】
相対移動方向と直交する方向におけるヘッドの両端側に相当する位置にだけ基準線分が印刷される。基準線分に対する第1の線分及び第2の線分の傾きを比較することができつつも、ヘッドの傾き検出にあたりインクの消費を抑制できる。
【0016】
また、本発明において、前記基準線分は、前記相対移動方向に第1の間隔を空けて二本印刷されてなる第1の基準線分群と、前記第1の間隔よりも広い第2の間隔を空けて二本印刷されてなる第2の基準線分群とを備え、前記第1の線分及び前記第2の線分は、前記第1の間隔及び前記第2の間隔に印刷され、前記第2の間隔は、前記第1の線分及び前記第2の線分と前記第1の基準線分群との位置関係が目視できる間隔であり、前記第1の間隔は、前記第1の線分及び前記第2の線分と前記第2の基準線分群との位置関係が拡大手段によって目視できる間隔であることが好ましい(請求項4)。
【0017】
印刷ヘッドを構成するヘッドが複数個である場合には、ヘッドごとに高さ方向の傾きを検出する必要がある。第2の基準線分群は目視で高さ方向の傾きがあるか否かをおおよそ知ることができるので、どのヘッドに高さ方向の傾きがあるのかをおおまかに判断できる。したがって、見当を付けたヘッドについてだけ、第1の基準線分群を拡大手段で確認すればよいので、印刷ヘッドが複数個のヘッドで構成されている場合に効率よく高さ方向の傾きを検出できる。
【0018】
また、本発明において、前記印刷媒体は、前記相対移動方向と直交する方向への罫線入りであることが好ましい(請求項5)。
【0019】
罫線入りの印刷媒体であれば、その罫線を基準として第1の線分及び第2の線分の傾きを容易に検出できる。したがって、余分な線分を印刷する必要もなく、インクの消費を抑制できる。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係るインクジェット印刷装置におけるヘッドの高さ傾き検出方法によれば、印刷ヘッドのヘッドが高さ方向の傾きを有する場合には、相対移動方向と直交する方向においてヘッドと印刷媒体との間隔が一方から他方に向かって次第に大きくなる。そのため、相対移動速度を速くすると、ヘッドと印刷媒体との間隔が大きいほど、第2の線分の傾きが大きく印刷される。したがって、相対移動方向と直交する方向における第2の線分の傾きが第1の線分の傾きより大きい場合には、ヘッドに高さ方向の傾きがあることを表す。その結果、速度を変えて線分を印刷するだけで、ヘッドの高さ方向の傾きがあるか否かを検出できる。また、相対移動方向と直交する方向に傾きがない基準線分が基準ヘッドによって印刷されるので、この基準線分に近接して第1の線分及び第2の線分を印刷すると、それぞれの傾きを容易に検出できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】実施例に係るインクジェット印刷システムの全体を示す概略構成図である。
【
図2】印刷ユニットの模式的な概略構成を示した平面図
【
図3】ベースプレートに1つのヘッドモジュールだけを取り付けた状態を示す印刷ヘッドの斜視図である。
【
図4】ヘッドモジュール単体を上方から見た斜視図である。
【
図5】ヘッドモジュール単体を下方から見た斜視図である。
【
図6】ヘッドと連続紙との位置関係の説明に供する斜視図である。
【
図7】(a)は、ヘッドがY軸に対して傾きがない場合の印刷結果を示し、(b)は、ヘッドがY軸に対して傾きを有する場合の印刷結果を示す図である。
【
図8】ヘッドがZ軸に対して傾きがある場合を説明する図である。
【
図9】ヘッドが高さ方向Zに対して傾いている場合における印刷結果を示し、(a)は連続紙を低速で搬送した場合であり、(b)は、連続紙を高速で搬送した場合を示す。
【
図10】高さ方向Zにヘッドの傾きがある場合における線分のズレ量を搬送速度と傾き量ごとに計算した結果を示す表である。
【
図11】ヘッドの高さ方向Zの傾きを調整すべき調整量の説明に供する図である。
【
図13】高さ方向Zの傾き検出チャートの一例を示す図である。
【
図14】高さ方向の傾き検出調整処理を示すフローチャートである。
【
図15】検出用チャートの変形例1を示す図である。
【
図16】検出用チャートの変形例2を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して本発明の一実施例について説明する。
図1は、実施例に係るインクジェット印刷システムの全体を示す概略構成図である。
【0023】
実施例に係るインクジェット印刷システム1は、インクジェット印刷装置3と、給紙部5と、排紙部7とを備えている。
【0024】
インクジェット印刷装置3は、長尺の連続紙WPに対して印刷を行う。給紙部5は、連続紙WPのロールを水平軸周りに回転可能に保持し、連続紙WPのロールから連続紙WPを搬送方向Xに巻き出してインクジェット印刷装置3に対して供給する。排紙部7は、インクジェット印刷装置3で印刷された連続紙WPを水平軸周りに巻き取る。連続紙WPの供給側を上流とし、連続紙WPの排紙側を下流とすると、給紙部5はインクジェット印刷装置3の上流側に配置され、排紙部7はインクジェット印刷装置3の下流側に配置されている。
【0025】
なお、上述した連続紙WPが本願発明における「印刷媒体」に相当する。
【0026】
インクジェット印刷装置3は、給紙部5からの連続紙WPを取り込むための第1の駆動ローラM1を上流側に備えている。第1の駆動ローラM1によって給紙部5から巻き出された連続紙WPは、回転自在の搬送ローラ11等に沿って搬送方向Xの下流側に配置されている排紙部7に向かって搬送される。
【0027】
第1の駆動ローラM1の下流側には、エッジ位置制御部15が配置されている。エッジ位置制御部15は、連続紙WPが搬送方向Xと直交する方向へ蛇行すると自動で調整し、連続紙WPが正しい位置に搬送されるように制御する。
【0028】
エッジ位置制御部15の下流側には、第2の駆動ローラM2が配置されている。第2の駆動ローラM2により下流側へ送られた連続紙WPは、搬送経路に沿った、印刷を行うための印刷領域に、第2の駆動ローラM2の下流側に配置された搬送ローラ11によって搬送方向が変えられる。この搬送ローラ11は、図示しないロータリエンコーダが取り付けられている。印刷領域の上方には、印刷ユニット19が配置されている。印刷ユニット19は、例えば、4個のインクジェット式の印刷ヘッド21~24で構成されている。例えば、最上流の印刷ヘッド21は、ブラック(K)のインク滴を吐出し、次の印刷ヘッド22は、シアン(C)のインク滴を吐出し、次の印刷ヘッド23は、マゼンタ(M)のインク滴を吐出し、次の印刷ヘッド24は、イエロー(Y)のインク滴を吐出する。各印刷ヘッド21~24は、搬送方向Xにおいて所定の間隔だけ離間して配置されるように印刷ユニット19の印刷ヘッド保持部(不図示)に取り付けられている。
【0029】
印刷領域にて印刷された連続紙WPは、下流側の搬送ローラ11によって方向が変えられる。その位置には、第3の駆動ローラM3が配置されている。第3の駆動ローラM3は、大きな巻付角で連続紙WPを巻き付け、連続紙WPに当接して連続紙WPのインク滴を乾燥させる。この第3の駆動ローラM3は、ヒータを内蔵しており、ヒートドラムとも呼ばれる。
【0030】
第3の駆動ローラM3によって乾燥された連続紙WPは、複数個の搬送ローラ11によって方向を変えられながら、第4の駆動ローラM4によって排紙部7に送られる。第4の駆動ローラM4の上流側には、検査部27が配置されている。検査部27は、印刷ユニット19によって印刷された連続紙WPを検査する。排紙部7は、検査部27検査された連続紙WPをロール状に巻き取る。
【0031】
上述した第1の駆動ローラM1と、第2の駆動ローラM2と、第4の駆動ローラM4は、個別にニップローラ29が回転可能に取り付けられている。連続紙WPへの搬送力は、ニップローラ29によって、各駆動ローラとの間に連続紙WPが挟持されることで付与される。ニップローラ29による押圧力は、例えば、エアシリンダ(不図示)で付与される。ニップローラ29は、例えば、ゴムなどの弾性体で構成されている。
【0032】
上述したインクジェット印刷装置3と、給紙部5と、排紙部7とは、主制御部31によって統括的に制御される。主制御部31には、後述するテストチャートの印刷や、連続紙WPの搬送速度や印刷時のテンションなどを含む印刷条件を指示するために操作される操作部33が接続されている。
【0033】
ここで、
図2を参照する。なお、
図2は、印刷ユニット19の模式的な概略構成を示した平面図である。
【0034】
印刷ユニット19は、印刷ヘッド21~24を上流から下流に向かってその順に配置されている。各印刷ヘッド21~24は、複数個のヘッド35を搬送方向Xと直交する連続紙WPの幅方向Yに向かって一列にベースプレート25に配置されている。また、一列に配置された複数個のヘッド35から搬送方向Xに所定距離だけ離れた位置には、各ヘッド35を搬送方向Xから見た際に、ヘッド35同士における間に1個のヘッド35が配置され、それが幅方向Yに一列になるように複数個のヘッド35が配置されている。換言すると、印刷ヘッド21~24は、それぞれ、いわゆる千鳥配置された複数個のヘッド35で構成されている。各ヘッド35は、連続紙WPの上面に対向する下面であって、幅方向Xに沿って、インク滴を吐出する複数個のノズル37を備えている。
【0035】
ここで、
図3~
図5を参照して、印刷ヘッド21~24の構造について説明する。印刷ヘッド21~24は同様な構造であるため、ここではブラック(K)のインク滴を吐出する印刷ヘッド21を例にとって詳細に説明する。なお、
図3は、ベースプレート25に1つのヘッドモジュール41だけを取り付けた状態を示す印刷ヘッド21の斜視図であり、
図4は、ヘッドモジュール41単体を上方から見た斜視図であり、
図5は、ヘッドモジュール41単体を下方から見た斜視図である。
【0036】
印刷ヘッド21は、複数個のヘッドモジュール41を取り付け可能なベースプレート25と、複数個のヘッドモジュール41とを含む。ベースプレート25には、Y方向に4列分、Xに3行分、計12個のヘッドモジュール41を取り付けることができる。12個のヘッドモジュール41を取り付けたベースプレート25を印刷ユニット19の印刷ヘッド保持部に固定することにより印刷ヘッド21が印刷ユニット19に固定される。なお、
図3のベースプレート25の上には1個のヘッドモジュール41だけを取り付けた状態を示す。
【0037】
1個のヘッドモジュール41は、1枚のモジュールベースプレート43と4個のヘッド35とを備えている。1枚のモジュールベースプレート43には、4個の挿入口45が形成されている。各挿入口45には、1個のヘッド35が挿入されている。各ヘッド35は、モジュールベースプレート43に対して、搬送方向X及び幅方向Yにおける位置を調整する調整ピン47によって位置が微調整可能に取り付けられている。また、各ヘッド35は、調整ピン47で調整された搬送方向X及び幅方向Yにおける位置でモジュールベースプレート43に対して固定ピン49によって位置が固定されている。なお、高さ方向Zの位置調整は、例えば、薄い板状部材(シム(shim)とも呼ばれる)として、薄鋼板をモジュールベースプレート43とヘッド35との間に挟み込むことにより行われる。
【0038】
上記のように構成された各ヘッドモジュール41は、ベースプレート25に形成されているモジュール挿入口51に挿入される。モジュール挿入口51に挿入された各ヘッドモジュール41は、ベースプレート25に立設されている係止ピン53により、ベースプレート25に対する位置が固定される。
【0039】
次に、
図6及び
図7を参照して、印刷ヘッド21~24のうちの一つのヘッド35における連続紙WPとの位置関係と、その位置関係による直線印刷の変化について説明する。なお、
図6は、ヘッド35と連続紙WPとの位置関係の説明に供する斜視図であり、
図7(a)は、ヘッド35がY軸に対して傾きがない場合の印刷結果を示し、
図7(b)は、ヘッド35がY軸に対して傾きを有する場合の印刷結果を示す図である。
【0040】
ヘッド35がXY平面において幅方向Yにずれていない状態で、幅方向Yに伸びる線分L1を印刷させる。この場合には、
図7(a)に示すように、幅方向Yに平行に線分Lが印刷される。
【0041】
一方、ヘッド35がXY平面において幅方向Yに角度θの傾きが存在している状態で、幅方向Yに伸びる線分Lを印刷させる。この場合には、
図7(b)に示すように、XY平面上において幅方向Yに傾いた線分Lが印刷される。この場合、印刷条件を変えて連続紙WPの搬送速度を変えたとしても、ヘッド35の幅方向Yに対するズレである角度θが不変であれば、線分Lの傾きも角度θのままで不変である。
【0042】
ヘッド35に幅方向Yの傾きが存在している場合には、印刷条件にかかわらず、幅方向Yに対する線分Lの傾きを求め、その傾きに応じてヘッド35の幅方向Yの傾きを調整すれば、幅方向Yにおける線分Lの傾きがなくなるように補正できる。
【0043】
次に、
図8及び
図9を参照する。なお、
図8は、ヘッドがZ軸に対して傾きがある場合を説明する図であり、
図9は、ヘッドが高さ方向Zに対して傾いている場合における印刷結果を示し、(a)は連続紙WPを低速で搬送した場合であり、(b)は、連続紙WPを高速で搬送した場合を示す。
【0044】
ここでは、
図8に実線で示す、ヘッド35がYZ平面において高さ方向Zに傾いていない場合(Z軸に直交している場合であり、幅方向Yに対して高さ方向Zに傾いていない場合)に対して、
図8に二点鎖線で示すように、ヘッド35がYZ平面において高さ方向Zに傾いている場合(Z軸に直交していない場合であり、幅方向Yに対して高さ方向Zに傾いている場合)について説明する。なお、ヘッド35の下面(インク吐出面)と、連続紙WPの上面との間隔をDp[mm]とし、ヘッド35の端部における高さ方向Zへの距離を傾き量Mと[μm]する。
【0045】
ヘッド35が高さ方向Zに対して傾斜している状態で、連続紙WPの搬送速度Vfを低速として搬送させつつ、幅方向Yに伸びる線分Lを印刷させる。すると、
図9(a)に示すように、搬送方向Yにほぼ平行な線分Lが印刷される。厳密には、搬送方向Yに対して傾斜しているが、ここでは印刷品質に問題にならない程度であるので、搬送方向Yにほぼ平行であるとする。
【0046】
一方、連続紙WPの搬送速度を高速にして搬送させつつ、幅方向Yに伸びる線分Lを印刷させる。すると、
図9(b)に示すように、搬送方向Yに平行とはならず、ズレ量Lgのずれを有する線分Lとなる。これは、インクジェット方式のヘッド35であるために生じる現象である。つまり、ヘッド35が高さ方向Zに傾いており、間隔Dpがヘッド35の両端で異なる。一方、各ノズル37から吐出されるインク滴の速度(液滴速度Vd[mps])は一定であるので、ヘッド35の両端でインク滴が連続紙WPに着弾するまでの時間に差異が生じる。具体的には、間隔Dpが広い方のヘッド端部に位置するノズル37は、間隔Dpが狭い方のヘッド端部に位置するノズル37よりもインク滴が連続紙WPに着弾するまでの時間が長くなる。その結果、線分Lが搬送方向Yに平行ではなくなり、低速では印刷品質に問題とならなかった線分Lが、高速では影響が大きくなって搬送方向Yに傾斜して印刷されることになる。つまり、高速での印刷時に印刷品質が低下することになる。
【0047】
図8の二点鎖線に示すようにヘッド35が高さ方向Zに傾いている場合における線分Lのズレ量Lg[μm]は、次の(1)式によって算出することができる。
【0048】
ズレ量Lg=(傾き量M/液滴速度Vd)×搬送速度Vf×1000 …… (1)
【0049】
ここで、
図10を参照する。なお、
図10は、高さ方向Zにヘッドの傾きがある場合における線分Lのズレ量を搬送速度と傾き量ごとに計算した結果を示す表である。
【0050】
このように、傾き量Mが一定であっても、搬送速度Vfが高速になるにつれてズレ量Lgが大きくなっていくのがわかる。また、搬送速度Vfが一定であても、傾き量Mが大きくなるにつれてズレ量Lgが大きくなっていくのがわかる。
【0051】
ここで、
図11を参照する。なお、
図11は、ヘッドの高さ方向Zの傾きを調整すべき調整量の説明に供する図である。
【0052】
上述したように、高さ方向Zにヘッド35の傾きがある場合には、所定の印刷条件で線分Lを印刷させた後、ズレ量Lgを求めて線分Lの傾きに応じてヘッド35の傾きを調整すればよい。その調整量は、傾き量Mであるので、上記(1)式から次の(2)式のように求められる。
【0053】
傾き量M=(ズレ量Lg×液滴速度Vd)/(搬送速度Vf×1000) …… (2)
【0054】
但し、
図11に示すように、傾き量Mは、複数個のノズル37の端部における値である。実際には、ヘッド35は、ノズル37が両端部にまで形成されてはいない。したがって、傾き量Mで調整すると、調整が不足することになる。そこで、複数個のノズル37が形成されている幅方向Yの長さをD1とし、ヘッド35の幅方向Y長さをD2とすると、調整すべき傾き量M1は、次のように表される。
【0055】
調整すべき傾き量M1=M×(D2/D1) …… (3)
【0056】
したがって、線分Lを印刷した後、幅方向Yに対する線分Lの傾き量Mを測定し、その傾き量Mから調整すべき傾き量M1を算出する。そして、ヘッド35のモジュールベースプレート43に対する傾きを調整すべき傾き量M1で調整する。これにより、ヘッド35の高さ方向Zに対する傾きを補正することができる。
【0057】
次に、
図12及び
図13を参照する。なお、
図12は、テストチャートの一例を示す図であり、
図13は、高さ方向Zの傾き検出チャートの一例を示す図である。
【0058】
主制御部31は、各部を操作して
図12に示すようなテストチャートTCを連続紙WPに印刷させる。なお、
図12では、説明の理解を容易にするために、3個のヘッド35だけを用いてテストチャートTCを印刷させた例としている。本実施例におけるテストチャートTCは、例えば、パッチPTと、第1の検出用チャートDT1と、第2の検出用チャートDT2とを備えている。
【0059】
パッチPTは、例えば、ヘッド35の全ノズル37からインク滴を吐出させつつ、搬送方向Xに所定長さだけ印刷させ、矩形領域をほぼ一定濃度で印刷させる。このとき、ノズル37の目詰まりを解消させるように、できるだけ大滴のインク滴を吐出させることが好ましい。このパッチPTを印刷した後に、第1の検出用チャートDT1及び第2の検出用チャートDT2を印刷するので、第1の検出用チャートDT1及び第2の検出用チャートDT2を目詰まりの影響をなくして高品質で印刷することができる。したがって、傾きの検出を精度良く行うことができる。
【0060】
第1の検出用チャートDT1は、二本の第1の基準線分群RLG1及び一本の検出対象線分DL1から構成されている。
【0061】
第1の基準線分群RLG1は、搬送方向X及び高さ方向Zに対して傾きがないヘッド35によって印刷される。検出対象線分DL1は、搬送方向X及び高さ方向Zに対して傾きがあるか否か不明であって、傾き検出の対象となっているヘッド35によって印刷される。具体的には、第1の基準線分群RLG1は、ヘッド35の中央部のノズル37を除いた両端側の複数個のノズル37により第1の基準線分RL1を印刷し、搬送方向Xに第1の間隔W1だけ離れた位置に、同様にして第1の基準線分RL1を印刷する。さらに、第1の基準線分L1同士の間に、第1の基準線分L1と幅方向Yの長さがほぼ同じ長さの検出対象線分DL1を印刷する。上記の第1の間隔W1は、具体的には、ノズル37の搬送方向Xにおける列数でいうと、例えば、6ライン分である。
【0062】
第2の検出用チャートDT2は、二本の第2の基準線RL2及び一本の検出対象線分DL2で構成されている。
【0063】
第2の基準線分RL2は、搬送方向X及び高さ方向Zに対して傾きがないヘッド35によって印刷される。検出対象線分DL2は、搬送方向X及び高さ方向Zに対して傾きがあるか否か不明であって、傾き検出の対象となっているヘッド35によって印刷される。第2の基準線RL2は、上述した第1の基準線RL1と同様に印刷される。つまり、ヘッド35の中央部のノズル37を除いた両端側の複数個のノズル37により第2の基準線分RL2を印刷し、搬送方向Xに第2の間隔W2だけ離れた位置に、同様にして第2の基準線分RL2を印刷する。但し、第2の間隔W2は、上記の所定距離W1よりも広く設定されている。具体的には、第2の間隔W2は、例えば、ノズル37の搬送方向Xにおける列数でいうと、例えば、9ライン分である。
【0064】
上述した第2の間隔W2は、インクジェット印刷システム1のオペレータなどがルーペなどの拡大手段を用いることなく第2の基準線分群RLG2と第2の基準線RL2とを目視で識別できる間隔である。一方、第1の間隔W1は、ルーペなどの拡大手段を用いることによって、第1の基準線分群RLG1と第1の基準線RL1とを目視で識別できる間隔である。ここでいう識別できるとは、第1の基準線分群RLG1に対して検出対象線分DL1が傾斜しているか否か、第2の基準線分群RLG2に対して検出対象線分DL2が傾斜しているか否かを判断できるか否かをいう。
【0065】
上述したような構成のテストチャートTCを主制御部31は、二種類の搬送速度で印刷させる。二種類の搬送速度は、搬送速度Vf1と搬送速度Vf2であり、搬送速度Vf2は搬送速度Vf1より速く設定されている。例えば、搬送速度Vf1=120[mpm]であり、搬送速度Vf2=180[mpm]である。それぞれの搬送速度で同じテストチャートを印刷させ、ヘッド35の傾きを検出して補正する。
【0066】
なお、上述した搬送速度Vf1で印刷された第1の基準線DL1及び第2の基準線DL2が本発明における「第1の線分」に相当し、搬送速度Vf2で印刷された第1の基準線DL1及び第2の基準線DL2が本発明における「第2の線分」に相当する。また、上述した第1の基準線RL1及び第2の基準線RL2が本発明における「基準線分」に相当する。
【0067】
ここで、
図14を参照して、ヘッド35の傾き検出の具体的な処理について説明する。なお、
図14は、高さ方向の傾き検出調整処理を示すフローチャートである。
【0068】
ステップS1
操作部33を操作して、低速の第1の搬送速度(例えば、搬送速度Vf1=120[mpm])で連続紙WPを搬送させつつ、上述したテストチャートTCを印刷させる。
【0069】
ステップS2
連続紙WPに印刷されたテストチャートTCのうち、第2の検出用チャートDT2を目視して検出対象線分DL2が第2の基準線分群RLG2に傾斜しているものがあるか否かを判断する。そして、傾斜しているものがあれば、その第2の検出用チャートDT2に対応する第1の検出用チャートDT1をルーペなどで拡大観察する。そして、第1の検出用チャートDT1における検出対象線分DL1について、第1の基準線分群RLG1に対する傾き量を測定する。その結果、予め設定されている第1の閾値と、その傾き量とを比較して、第1の閾値よりも大きい場合には、ステップS3を実施する。
【0070】
ステップS3
低速の第1の搬送速度で印刷したテストチャートによる傾き量は、XY平面におけるヘッド35の幅方向Yへの傾きである(
図6及び
図7を参照)。そこで、そのヘッド35について、傾き量に応じて調整ピン47によって搬送方向Xにおける位置を調整し、XY平面におけるヘッド35の幅方向Yへの傾きを解消する。
【0071】
ステップS4
操作部33を操作して、第1の搬送速度より高速である第2の搬送速度(例えば、搬送速度Vf2=180[mpm])で連続紙WPを搬送させつつ、上述したテストチャートTCを印刷させる。
【0072】
ステップS5
連続紙WPに印刷されたテストチャートTCのうち、第2の検出用チャートDT2を目視して検出対象線分DL2が第2の基準線分群RLG2に傾斜しているものがあるか否かを判断する。そして、傾斜しているものがあれば、その第2の検出用チャートDT2に対応する第1の検出用チャートDT1をルーペなどで拡大観察する。そして、第1の検出用チャートDT1における検出対象線分DL1について、第1の基準線分群RLG1に対する傾き量を測定する。その結果、予め設定されている第2の閾値(>第1の閾値)と、その傾き量とを比較して、第2の閾値よりも大きい場合には、ステップS6を実施する。第2の閾値は第1の閾値より大きいので、ステップS5の比較が条件を満たす(第2の閾値>第1の閾値)場合には、第2の搬送速度で印刷された検出対象線分DL1,DL2の傾きが、第1の搬送速度で印刷された検出対象線分DL1,DL2の傾きよりも大きいことを表す。
【0073】
ステップS6
高速の第2の搬送速度で印刷したテストチャートによる傾き量は、YZ平面におけるヘッド35の高さ方向Zへの傾きである(
図8及び
図9を参照)。そこで、そのヘッド35について、
図9に示したズレ量Lgを測定し、上記の(2)式から傾き量Mを求める。そして、上記の(3)式により調整すべき傾き量M1を算出した後、調整すべき傾き量M1に応じて、ヘッド35の高さ方向Zの位置を調整する。具体的には、調整すべき傾き量M1に応じたシムをヘッド35とモジュールベースプレート43との間に挟み込んで高さ方向Zの位置を調整する。
【0074】
本実施例によると、搬送方向Xと直交する幅方向Yにおける検出対象線分DL1,DL2の傾きが、それより遅い搬送速度で印刷された検出対象線分DL1,DL2の傾きより大きい場合には、ヘッド35に高さ方向Zの傾きがあることを表す。その結果、搬送速度を変えてテストチャートTC線分を印刷するだけで、ヘッド35の高さ方向Zの傾きがあるか否かを検出できる。
【0075】
本発明は、上記実施形態に限られることはなく、下記のように変形実施することができる。
【0076】
(1)上述した実施例では、印刷ユニット19が固定され、連続紙WPが搬送される構成を例にとって説明したが、本実施例はこのような構成に限定されない。つまり、連続紙WPが固定され、印刷ユニット19が移動する構成であっても適用できる。
【0077】
(2)上述した実施例では、印刷媒体として連続紙WPを例示しているが、本発明は連続紙WP以外の印刷媒体であってもよい。印刷媒体としては、例えば、単票紙(枚葉紙)やフィルムなどが挙げられる。
【0078】
(3)上述した実施例では、テストチャートTCに第1の基準線分群RLG1及び第2の基準線分群RLG2を備えているが、本発明はこれを必須とするものではない。例えば、幅方向Yに長軸を有する罫線が搬送方向Xに所定間隔で描かれている連続紙WPを用いる場合には、テストチャートTCに第1の基準線分群RLG1及び第2の基準線分群RLG2を描く必要はない。これにより傾き検出の処理においてインクの消費を抑制できる。
【0079】
(4)上述した実施例では、第1の基準線分群RLG1及び第2の基準線分群RLG2がヘッド35の複数個のノズル37のうち中央部を除く両端側のノズル37だけで印刷された。しかしながら、本発明は、
図15の検出用チャートの変形例1に示すように、ヘッド35の複数個のノズル37の全てを用いて第1の基準線分群RLG1及び第2の基準線分群RLG2を印刷させるようにしてもよい。
【0080】
(5)上述した実施例では、テストチャートTCが第1の検出用チャートDT1及び第2の検出用チャートDT2を備えているが、本発明はこのような構成のテストチャートに限定されない。例えば、
図16の検出用チャートの変形例2に示すように、検出用チャートDTのような構成としてもよい。つまり、第1の基準線分群RLG1と第2の基準線分群RLG2とを搬送方向Xにおける同じ位置を中心として印刷し、検出対象線分DL1を一つだけ印刷させる。このような構成であっても、上述した実施例と同様の効果を奏する上、テストチャートTCの搬送方向Xにおける必要長さを短縮できるので、インク及び連続紙WPを節約できる。
【0081】
(6)上述した実施例では、装置のオペレータが検出対象線分DL1,DL2の傾きを検出しているが、検査部27によって撮影したテストチャートTCを画像処理することによって自動的に傾きを検出する構成としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0082】
以上のように、本発明は、インクジェット印刷装置におけるヘッドの高さ傾き検出に適している。
【符号の説明】
【0083】
1 … インクジェット印刷システム
3 … インクジェット印刷装置
5 … 給紙部
7 … 排紙部
WP … 連続紙
M1~M4 … 第1~第4の駆動ローラ
25 … ベースプレート
31 … 主制御部
33 … 操作部
35 … ヘッド
37 … ノズル
41 … ヘッドモジュール
43 … モジュールベースプレート
45 … 挿入口
47 … 調整ピン
49 … 固定ピン
51 … モジュール挿入口
53 … 係止ピン
L … 線分
M … 絡む器量
Vf … 搬送速度
Lg … ズレ量
Vd … 液滴速度
M1 … 調整すべき傾き量
TC … テストチャート
PT … パッチ
DT1 … 第1の検出用チャート
DT2 … 第2の検出用チャート
RLG1 … 第1の基準線分群
RL1 … 第1の基準線
DL1 … 検出対象線分
W1 … 第1の間隔
RLG2 … 第2の基準線分群
RL2 … 第2の基準線
DL2 … 検出対象線分
W2 … 第2の間隔