(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-16
(45)【発行日】2023-08-24
(54)【発明の名称】ヘリコプター
(51)【国際特許分類】
B64D 33/08 20060101AFI20230817BHJP
B64C 27/14 20060101ALI20230817BHJP
【FI】
B64D33/08
B64C27/14
(21)【出願番号】P 2019236611
(22)【出願日】2019-12-26
【審査請求日】2022-08-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小笠原 健太
(72)【発明者】
【氏名】早坂 陽
(72)【発明者】
【氏名】山本 浩樹
(72)【発明者】
【氏名】有澤 秀則
(72)【発明者】
【氏名】篠田 祐司
(72)【発明者】
【氏名】田中 秀明
(72)【発明者】
【氏名】橋本 拓典
【審査官】林 政道
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-345602(JP,A)
【文献】特開2009-298399(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64D 33/08
B64C 27/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原動機と、胴体と、メインローターと、テールローターと、を備えるヘリコプターであって、
前記原動機から入力される回転動力を変速し
、前記メインローター及び前記テールローターに出力する変速機構と、
前記胴体の内部において、前記変速機構を収容するハウジングと、を有するトランスミッションと、
前記ハウジングに取り付けられて前記ハウジングの外表面の少なくとも一部を覆い、前記外表面との間に間隙を形成する、カウルと、
前記間隙に外気を流通させる流通機構と、を備える、ヘリコプター
。
【請求項2】
前記カウルは、
前記間隙に前記外気を導入する導入部と、
前記間隙を流通した前記外気を排出する排出部と、を有し、
前記流通機構は、
前記排出部に接続された吸気路と、
前記間隙から前記外気を前記吸気路に強制的に流通させるファンと、を有する、請求項1に記載のヘリコプター
。
【請求項3】
前記ファンは、前記ヘリコプターに備えられたオイルクーラー冷却用のファンである、請求項2に記載のヘリコプター
。
【請求項4】
前記変速機構は、前記原動機からの前記回転動力が入力される入力部を有し、
前記間隙において前記導入部から前記排出部へ向かう前記外気の流通経路の途中に、前記入力部が配置されている、請求項2又は3に記載のヘリコプター
。
【請求項5】
前記カウルは、前記入力部の周縁を囲むように配置されている、請求項4に記載のヘリコプター
。
【請求項6】
前記原動機と前記変速機構とは、前記原動機からの前記回転動力を前記変速機構に伝達する入力軸により接続され、
前記トランスミッションは、前記ハウジングに支持されて前記入力軸を軸支する少なくとも1つの軸受を有し、
前記間隙を流通する前記外気により前記軸受を冷却可能に、前記カウルが配置されている、請求項1~5のいずれか1項に記載のヘリコプター
。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘリコプターのトランスミッション冷却構造に関する。
【背景技術】
【0002】
ヘリコプターのトランスミッションは、例えば、原動機から入力される回転動力を変速して出力する。トランスミッションを円滑に駆動させるため、トランスミッションには、通常、潤滑系統により潤滑油が供給される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されるように、ヘリコプターのトランスミッションには、飛行中に潤滑油が潤滑系統によりトランスミッションに供給されない非常時(以下、ドライラン時とも称する。)においても、一定時間継続して運転できる継続運転能力が求められる。しかしながら、このような非常時において、潤滑油が供給されないことによりトランスミッションの過熱が進行すると、トランスミッションを円滑に駆動することが困難となり、前記非常時における飛行可能時間が短縮する。
【0005】
そこで本発明は、ヘリコプターの飛行中に潤滑油が潤滑系統よりトランスミッションに供給されない非常時においても、飛行可能時間を従来よりも向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明の一態様に係るヘリコプターのトランスミッション冷却構造は、原動機から入力される回転動力を変速して出力する変速機構と、前記変速機構を収容するハウジングと、を有するトランスミッションと、前記ハウジングの外表面の少なくとも一部を覆い、前記外表面との間に間隙を形成するカウルと、前記間隙に外気を流通させる流通機構と、を備える。
【0007】
上記構成によれば、ハウジングとカウルとの間の間隙を流通する外気を用いて、ハウジングを効率的に冷却できる。これにより、ドライラン時においても、ハウジングに収容された変速機構の焼付きを抑制できる。従って、ドライラン時においても、トランスミッションの過熱により飛行可能時間が短縮するのを防止でき、従来よりも飛行可能時間を向上できる。
【0008】
前記カウルは、前記間隙に前記外気を導入する導入部と、前記間隙を流通した前記外気を排出する排出部と、を有し、前記流通機構は、前記排出部に接続された吸気路と、前記間隙から前記外気を前記吸気路に強制的に流通させるファンと、を有していてもよい。上記構成によれば、吸気路に向けてファンにより前記間隙に外気を効率よく流通させることができる。
【0009】
前記ファンは、前記ヘリコプターに備えられたオイルクーラー冷却用のファンであってもよい。このようにオイルクーラー冷却用のファンを用いることにより、例えば、通常時には当該ファンでオイルクーラーを冷却できると共に、上記非常時には当該ファンでトランスミッションを冷却できる。
【0010】
前記変速機構は、前記原動機からの前記回転動力を入力する入力部を有し、前記間隙において前記導入部から前記排出部へ向かう前記外気の流通経路の途中に、前記入力部が配置されていてもよい。これにより、流通経路を流通する外気を用いて、回転数が比較的高く、発熱し易い入力部を効率よく冷却できる。
【0011】
前記カウルは、前記入力部の周縁を囲むように配置されていてもよい。これにより、前記間隙を流通する外気を用いて、変速機構の入力部を一層効率よく冷却できる。
【0012】
前記原動機と前記変速機構とは、前記原動機からの前記回転動力を前記変速機構に伝達する入力軸により接続され、前記トランスミッションは、前記ハウジングに支持されて前記入力軸を軸支する少なくとも1つの軸受を有し、前記間隙を流通する前記外気により前記軸受を冷却可能に、前記カウルが配置されていてもよい。これにより、例えば、入力軸の回転速度が比較的速い場合でも、軸受が過熱されるのを抑制し、トランスミッションを円滑に駆動できる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の各態様によれば、ヘリコプターの飛行中に潤滑油が潤滑系統よりトランスミッションに供給されない非常時においても、飛行可能時間を従来よりも向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】実施形態に係るヘリコプターの模式図である。
【
図2】
図1のトランスミッション冷却構造の斜め後方から見た外観図である。
【
図3】
図1のトランスミッション冷却構造の入力部を軸支する軸受を示す模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、実施形態について各図を参照しながら説明する。
図1は、実施形態に係るヘリコプター1の模式図である。
図2は、
図1のトランスミッション冷却構造4の斜め後方から見た外観図である。
【0016】
図1に示されるように、ヘリコプター1は、トランスミッション8に接続されたメインローター2とテールローター3とを備える。メインローター2の下方には、ドライラン時にトランスミッション8を冷却するトランスミッション冷却構造4が配置されている。メインローター2の後方には、左右一対の原動機(例えば、タービン)5が配置されている。またトランスミッション8の近傍には、オイルクーラー6とオイルクーラー冷却用ファン7が配置されている。
【0017】
トランスミッション冷却構造4は、空冷によりトランスミッション8を冷却する。
図1~3に示されるように、トランスミッション冷却構造4は、トランスミッション8、カウル16、及び流通機構9を備える。トランスミッション8は、変速機構10、ハウジング11、シール保持部材14a,14b、及びシール部材15を有する。
【0018】
変速機構10は、ヘリコプターの原動機5から入力される回転動力を変速して出力する。本実施形態の変速機構10は、少なくとも1つ(ここでは一対)の原動機5から入力される回転動力を変速し、メインローター2とテールローター3とに出力する。変速機構10は、複数のギヤと複数の回転軸とを有する。この複数のギヤと複数の回転軸とは、通常時には、ヘリコプター1に備えられた潤滑系統に供給される潤滑油により潤滑される。
【0019】
変速機構10は、原動機5からの回転動力が入力される入力部10a,10bを有する。また変速機構10は、外部に回転動力を出力する出力部10c,10dを有する。出力部10cは、メインローター2に回転動力を出力する。出力部10dは、テールローター3に回転動力を出力する。入力部10a,10b及び出力部10c,10dは、一例として、軸周りに回転される中空の軸体を有する。また一例として、入力部10a,10bは、ギヤ歯を有する中空軸18、後述する入力軸12に接続される筒状部材13a,13b、中空軸18と筒状部材13a,13bとの間に設けられて筒状部材13a,13bから中空軸18に回転動力を伝達するフリーホイールクラッチFW、及び中空軸18と筒状部材13a,13bとの間に設けられる軸受B2、B3を有する。
【0020】
ハウジング11は、変速機構10を収容する。ハウジング11は、原動機5からの回転動力をハウジング11の内部の変速機構10に入力する少なくとも1つ(ここでは一対)の開口部11a,11bと、変速機構10により変速された回転動力をハウジング11の外部に出力する少なくとも1つ(ここでは一対)の開口部11c,11dとを有する。開口部11aの内部には、入力部10aが配置され、開口部11bの内部には、入力部10bが配置されている。開口部11cからは、出力部10cの一部が露出している。開口部11dの内部には、出力部10dが配置されている。
【0021】
一例として、開口部11dと一対の開口部11a,11bとは、ハウジング11の後側に配置されている。また、一対の開口部11a,11bは、左右方向に離隔して配置され、且つ、開口部11dは、一対の開口部11a,11bの間に配置されている。開口部11cは、ハウジング11の上側に配置されている。
【0022】
シール保持部材14a,14bは、開口部11a,11bに取り付けられる。シール保持部材14a,14bは、図示しない締結部材によりハウジング11に固定されている。シール部材15は、入力部10a,10bに接するように配置される。シール部材15は、ハウジング11の内部から開口部11a,11bを通じて外部にオイルが漏出するのを防止する。
【0023】
図1に示すように、ヘリコプター1は、原動機5からの回転動力を変速機構10に伝達する入力軸12を更に備える。本実施形態の原動機5と、変速機構10の入力部10a,10bとは、この入力軸12により接続されている。トランスミッション8は、ハウジング11に支持されて、入力部10a,10bを軸支する少なくとも1つの軸受(本実施形態では複数であり、一例として、ボール軸受B1,B4,及びころ軸受B5)(
図3参照)を有する。本実施形態の軸受B1,B4,及びB5は、内輪において入力部10a,10bを支持し、外輪においてハウジング11に直接的又は間接的に支持されている。
【0024】
図2に示すように、カウル16は、ハウジング11の外表面の少なくとも一部を覆い、前記外表面との間に間隙Gを形成する。間隙Gは、ハウジング11の外表面に沿って延びている。一例として、本実施形態の間隙Gは、区画されていない。これにより間隙Gは、ハウジング11の外表面とカウル16との間の全領域で連続している。またカウル16は、ハウジング11の外表面に、図示しないブラケットを介して取り付けられている。流通機構9は、ハウジング11の外表面に沿って間隙Gに外気を流通させる。
【0025】
カウル16は、例えば、ドライラン時間を確保するために外気による冷却が効果的なハウジング11の外表面の部分を覆うように配置される。当該外表面の部分は、トランスミッション8の構成や構造、サイズ等によって変化する。本実施形態でカウル16が覆うハウジング11の外表面の部分は、入力部10a,10bの周縁を含む。
【0026】
具体的にカウル16は、間隙Gに外気を導入する複数の導入部16aと、間隙Gを流通した外気を排出する単一の排出部16bとを有する。複数の導入部16aは、カウル16の左右両側において、カウル16の左右両端部、上端部、及び下端部から外気を間隙Gに導入可能に形成されている。
【0027】
排出部16bは、カウル16の左右中央上側において、カウル16の左右両側から間隙Gに導入された外気を外部に排出可能に形成されている。排出部16bは、流通機構9に接続されている。一例として、排出部16bは、円筒状に形成されているが、排出部16bの形状はこれに限定されない。またカウル16は、単一の導入部16aを有していてもよいし、複数の排出部16bを有していてもよい。
【0028】
カウル16は、ここでは一体的に形成されている。カウル16は、複数の部材を組み合わせて構成されていてもよい。カウル16の材料は適宜選択可能である。カウル16の材料は、ここでは樹脂であるが、例えば金属等の他の材料であってもよい。
【0029】
本実施形態の流通機構9は、カウル16の排出部16bに接続された吸気路と、間隙Gから外気を吸気路に強制的に流通させるファンとを有する。前記ファンの送風(出口)側には、トランスミッション8以外の主冷却対象が配置され、前記ファンに向かう吸気路の吸込(入口)側には、カウル16の排出部16bが接続されている。ここでは一例として、主冷却対象はオイルクーラー6である。
【0030】
前記ファンは、ヘリコプター1に備えられたオイルクーラー冷却用ファン7であり、前記吸気路は、ファン7に向けて吸気を流通させるオイルクーラー用吸気路17である。流通機構9が有するファンは、オイルクーラー6以外を主冷却対象としてもよい。また、重量や配置スペース等の条件が許容範囲内であれば、トランスミッション冷却構造4は、間隙Gに外気を流通させるための専用の流通機構9を備えていてもよい。
【0031】
ここで本実施形態のトランスミッション冷却構造4では、間隙Gにおいて導入部16aから排出部16bへ向かう外気の流通経路の途中に、入力部10a,10bが配置されている。入力部10a,10bは、円筒状に形成され、入力軸12に接続されている。カウル16は、入力部10a,10bの周縁を囲むように配置されている。トランスミッション冷却構造4では、間隙Gを流通する外気により軸受B1,B4,及びB5を冷却可能に、カウル16が配置されている。またカウル16は、開口部11dに干渉しない形状に形成され、カウル16と開口部11dとの重なりが回避されている。
【0032】
また一例として、カウル16は、上方から見て、一対の入力部10a,10bを外部に露出させる一対の開口部16c,16dと、一対の開口部16c,16dの間のカウル16の前側に設けられて上下方向及び左右方向に延びる前壁部16eとを有する。前壁部16eは、間隙Gを流通する外気を排出部16bに向けて案内する。また前壁部16eは、間隙Gを流通する外気がカウル16の前側から抜け出るのを抑制する。本実施形態のカウル16は、前壁部16eを有することにより、一対の入力部10a,10bのそれぞれに対応するように一対の導入部16aが左右方向に互いに分離して配置されている。
【0033】
このようにトランスミッション冷却構造4では、外気を用いた空冷によりトランスミッション8を冷却する。このため、例えば液体の冷媒や、当該冷媒を循環させる循環機構等を用いなくてもよい。よって、トランスミッション冷却構造4を比較的軽量、且つ低コストで構成できる。また、ヘリコプター1内のトランスミッション冷却構造4の配置スペースを抑制できる。
【0034】
なおカウル16は、ハウジング11の冷却対象部分を覆うことができる形状を有していればよい。従ってカウル16は、例えば、左右方向又は上下方向のいずれかにおいて、対称的な形状を有していてもよいし、非対称な形状を有していてもよい。またカウル16は、他の部材と干渉しない範囲内で、ハウジング11の外表面を広く覆うように配置してもよい。
【0035】
図3は、
図1のトランスミッション冷却構造4の入力部10aを軸支する軸受B1,B4,及びB5を示す模式的な断面図である。
図3は、開口部11a内に配置された軸受B1,B4,及びB5の各軸線を含む平面を断面とするハウジング11とカウル16との鉛直断面図である。
図3に示すように、ハウジング11の外表面に垂直な方向の間隙Gの寸法(以下、寸法Dとも称する。)は、間隙Gに外気が良好に流通できる十分な値に設定されている。寸法Dは、例えば、間隙Gに流通させようとする外気の流量や流速を最適化し、ハウジング11の外表面の熱伝達率が最大となるように適宜変更可能である。
【0036】
以上に説明したように、本実施形態のトランスミッション冷却構造4によれば、ハウジング11とカウル16との間の間隙Gを流通する外気を用いて、ハウジング11を効率的に冷却できる。これにより、ドライラン時においても、ハウジング11に収容された変速機構10の焼付きを抑制できる。よって、ドライラン時において、変速機構10の焼付きによりトランスミッション8が過熱して変速機構10の各部(例えば回転軸の軸受やギヤ等)が損傷するのを防止できる。従って、ドライラン時においても、トランスミッション8の過熱により飛行可能時間が短縮するのを防止でき、従来よりも飛行可能時間を向上できる。
【0037】
具体的に例えば、ドライラン時には潤滑油の不足によりギヤの歯面の焼付が進行し、トランスミッション8の発熱量が増加する。このような場合でも、トランスミッション冷却構造4によりハウジング11が冷却されることで、トランスミッション8の発熱量の増加を抑え、ドライラン時間を従来よりも延長できる。
【0038】
またカウル16は、間隙Gに外気を導入する導入部16aと、間隙Gを流通した外気を排出する排出部16bと、を有し、流通機構9は、排出部16bに接続された吸気路17と、間隙Gから外気を吸気路17に強制的に流通させるファン7とを有する。この構成によれば、ファン7の吸気路17に向けて間隙Gに外気を強制的に流通でき、外気によるトランスミッション8の冷却効果を向上できる。また、ファン7の吸気路17を利用することで、間隙Gに外気を強制的に流通させるための構成を別途設ける必要をなくすことができる。
【0039】
また本実施形態では、流通機構9のファンは、ヘリコプター1に備えられたオイルクーラー冷却用のファン7である。このようにオイルクーラー冷却用のファン7を用いることにより、例えば、通常時には当該ファン7でオイルクーラー6を冷却できると共に、上記非常時には当該ファン7でトランスミッション8を冷却できる。
【0040】
また変速機構10は、原動機5からの回転動力が入力される入力部10a,10bを有し、間隙Gにおいて導入部16aから排出部16bへ向かう外気の流通経路の途中に、入力部10a,10bが配置されている。これにより、ハウジング11とカウル16との間の流通経路を流通する外気を用いて、回転数が比較的高く、発熱し易い入力部10a,10bを効率よく冷却できる。
【0041】
またカウル16は、入力部10a,10bの周縁を囲むように配置されている。これにより、間隙Gを流通する外気を用いて入力部10a,10bを一層効率よく冷却できる。
【0042】
また、原動機5と変速機構10とは、原動機5からの回転動力を変速機構10の入力部10a,10bに伝達する入力軸12により接続され、トランスミッション8は、ハウジング11に支持されて入力部10a,10bを軸支する少なくとも1つ(ここでは複数)の軸受B1,B4,及びB5を有し、間隙Gを流通する外気により軸受B1,B4,及びB5を冷却可能に、カウル16が配置されている。これにより、例えば、入力軸12の回転速度が比較的速い場合でも、軸受B1,B4,及びB5が過熱されるのを抑制し、トランスミッション8を円滑に駆動できる。また、本実施形態では、間隙Gを流通する外気により、軸受B2,B3も良好に冷却でき、トランスミッション8を更に円滑に駆動できる。
【0043】
また例えば、本実施形態のように、変速機構10の入力部10a,10bが入力軸12からの回転動力を伝達されるギヤ(一例としてベベルギヤ)を有する場合、軸受B1,B4,及びB5、及び前記ギヤ等は、回転数が比較的高いため、ドライラン時にはヘリコプター1において最も作動環境が厳しくなることがある。このような場合でも、トランスミッション冷却構造4によれば、ハウジング11の外表面を通じて、外気により軸受B1,B4,B5、及び前記ギヤ等を良好に冷却できる。これにより、トランスミッション8の過熱を防ぎ、ドライラン時間を従来よりも延長できる。
【0044】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、その構成を変更、追加、又は削除できる。トランスミッション冷却構造4は、複数のカウル16を備えていてもよい。この場合、トランスミッション冷却構造4は、異なる形状の複数のカウル16を備えていてもよい。
【0045】
また、カウル16の排出部は、吸気路に接続されていなくてもよい。この場合、トランスミッション冷却構造は、例えば、ヘリコプター1の飛行時にヘリコプター1の前方から後方に向けて流れる外気をカウル16の導入部16aに供給する流通機構を備えていてもよい。この場合の流通機構は、例えばダクトを有していてもよい。また、カウル16の前壁部16eは、一対の開口部16c,16dの間以外の場所に設けられていてもよい。
【符号の説明】
【0046】
B1,B4,B5 軸受
G 間隙
1 ヘリコプター
4 トランスミッション冷却構造
5 原動機
6 オイルクーラー
7 オイルクーラー用ファン
8 トランスミッション
9 流通機構
10 変速機構
10a,10b 入力部
11 ハウジング
12 入力軸
16 カウル
16a 導入部
16b 排出部
17 吸気路