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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-16
(45)【発行日】2023-08-24
(54)【発明の名称】三次元スキャナ
(51)【国際特許分類】
   A61B 1/247 20060101AFI20230817BHJP
   A61B 1/00 20060101ALI20230817BHJP
   A61B 1/06 20060101ALI20230817BHJP
   A61B 1/07 20060101ALI20230817BHJP
   G01B 11/24 20060101ALI20230817BHJP
   G02B 21/00 20060101ALI20230817BHJP
【FI】
A61B1/247
A61B1/00 551
A61B1/00 731
A61B1/00 735
A61B1/06 530
A61B1/07 733
G01B11/24 A
G02B21/00
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020095473
(22)【出願日】2020-06-01
(62)【分割の表示】P 2017052750の分割
【原出願日】2017-03-17
(65)【公開番号】P2020151497
(43)【公開日】2020-09-24
【審査請求日】2020-06-01
【審判番号】
【審判請求日】2022-09-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000138185
【氏名又は名称】株式会社モリタ製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】反本 啓介
【合議体】
【審判長】石井 哲
【審判官】渡戸 正義
【審判官】上田 泰
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-530267(JP,A)
【文献】特開2012-26998(JP,A)
【文献】国際公開第2013/069265(WO,A1)
【文献】特開平4-163509(JP,A)
【文献】特開2018-155605(JP,A)
【文献】特開2011-92232(JP,A)
【文献】国際公開第2014/013950(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B1/00-1/32
G02B23/24-23/26
G02B9/00-17/08
G02B21/02-21/04
G02B25/00-25/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
口腔内の対象物の形状情報を取得する三次元スキャナであって、
光源部と、
前記対象物で反射された前記光源部からの光を検出する検出部と、
前記口腔内に挿入して、前記光源部からの光を前記対象物に導くとともに、前記対象物からの反射光を前記検出部へ導くプローブと、
前記プローブより前記光源部に近い側に設けられ、前記光源部から前記対象物を経て前記検出部に至る光の焦点位置を、所定範囲で変化させることが可能な焦点可変部と、
前記検出部で検出した光から前記対象物の形状情報を演算する演算部と、
前記焦点位置と前記焦点可変部と間で、かつ瞳位置より前記焦点位置側に正レンズの物体側レンズと、
前記焦点可変部と前記光源部および前記検出部との間に、前記光源部からの光路と前記検出部への光路とを分離するビームスプリッタと、を備え、
前記物体側レンズは、前記プローブと嵌合可能な光学計測部の一部である接続部に設け、前記光源部、前記検出部、前記焦点可変部、および前記ビームスプリッタは、前記接続部以外の前記光学計測部内に設けて、
前記プローブ、前記接続部、および前記光学計測部でハンドピースを構成し、
前記焦点可変部は、
合成したレンズパワーの値が正となる複数のレンズと、
前記複数のレンズのうち少なくとも一つのレンズを光軸方向に沿って駆動する駆動部とを含み、
前記複数のレンズは、少なくとも1組の正レンズと負レンズとの組み合わせを含んでいる、三次元スキャナ。
【請求項2】
前記駆動部は、前記複数のレンズのうちレンズパワーの絶対値が最大のレンズを光軸方向に沿って駆動する、請求項1に記載の三次元スキャナ。
【請求項3】
前記駆動部は、前記複数のレンズに含まれる前記正レンズと前記負レンズとを光軸方向に沿って互いに反対の向きに駆動する、請求項1または請求項2に記載の三次元スキャナ。
【請求項4】
前記複数のレンズは、
合成したレンズパワーの絶対値に比べて、大きなレンズパワーの絶対値を有するレンズを少なくとも含む、請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の三次元スキャナ。
【請求項5】
前記焦点可変部は、
前記駆動部で駆動されるレンズとは反対方向に駆動されるカウンタウェイトをさらに含む、請求項1または請求項2に記載の三次元スキャナ。
【請求項6】
前記複数のレンズのうち前記駆動部で駆動されるレンズは、前記正レンズであって、アッベ数が前記複数のレンズに含まれる前記負レンズのアッベ数より大きい、請求項1、請求項2または請求項5のいずれか1項に記載の三次元スキャナ。
【請求項7】
前記複数のレンズの全体で色消し条件を満たすように、前記複数のレンズに含まれるレンズの光学特性値が決定されている、請求項1~請求項6のいずれか1項に記載の三次元スキャナ。
【請求項8】
口腔内の対象物の形状情報を取得する三次元スキャナであって、
光源部と、
前記対象物で反射された前記光源部からの光を検出する検出部と、
前記口腔内に挿入して、前記光源部からの光を前記対象物に導くとともに、前記対象物からの反射光を前記検出部へ導くプローブと、
前記プローブより前記光源部に近い側に設けられ、前記光源部から前記対象物を経て前記検出部に至る光の焦点位置を変化させることが可能な焦点レンズと、
前記焦点レンズを光軸方向に沿って駆動する駆動部と、
前記焦点レンズと同じ光軸上に設けられた少なくとも一つの負レンズと、
前記検出部で検出した前記対象物で反射された光から前記対象物の形状情報を演算する演算部と、
前記焦点位置と前記焦点レンズと間で、かつ瞳位置より前記焦点位置側に正レンズの物体側レンズと、
前記焦点レンズと前記光源部および前記検出部との間に、前記光源部からの光路と前記検出部への光路とを分離するビームスプリッタと、を備え、
前記物体側レンズは、前記プローブと嵌合可能な光学計測部の一部である接続部に設け、前記光源部、前記検出部、前記焦点レンズ、前記駆動部、前記負レンズ、および前記ビームスプリッタは、前記接続部以外の前記光学計測部内に設けて、
前記プローブ、前記接続部、および前記光学計測部でハンドピースを構成し、
前記焦点レンズと前記負レンズとを合成したレンズパワーの値が正であって、前記対象物上での前記焦点位置の可動範囲が所定範囲となる、三次元スキャナ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象物の形状情報を取得する三次元スキャナに関する。
【背景技術】
【0002】
歯科分野において、補綴物等をコンピュータ上でデジタル的に設計するために、歯の三次元形状を取得するための三次元スキャナ(口腔内スキャナ)が開発されている(特許文献1)。特許文献1に開示されている三次元スキャナは、合焦法の原理を使用して対象物の三次元形状を取得する手持ち式スキャナである。具体的に、当該三次元スキャナでは、線状または市松模様状のパターンを有する光(以下、パターンともいう)を対象物の表面に投影し、焦点の位置を変化させながら複数回撮像したパターンの画像からもっとも焦点の合う距離を求め、対象物の三次元形状を取得している。
【0003】
つまり、当該三次元スキャナでは、対象物に投影したパターンの焦点を、高速に変化させるための焦点可変部が必要である。焦点可変部は、光源からの光の焦点位置、または検出部の焦点位置のうち少なくとも一方を所定範囲で変化させる必要があるため、レンズの位置を機械的に可動させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第5654583号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
当該三次元スキャナを歯科分野で応用するためには、スキャナ本体は片手で持つことができ、かつ狭隘な口腔内に挿入できるほどに、十分小型である必要がある。しかし、光源からの光の焦点位置、または検出部の焦点位置を所定範囲で変化させるためには、レンズの位置を同程度の範囲で変化させる必要があった。つまり、焦点可変部は、光源からの光の焦点位置、または検出部の焦点位置が対象物上で変化する距離(例えば、10mm~20mm)と同程度の距離をレンズの位置を動かす必要があった。そのため、当該焦点可変部を内蔵する三次元スキャナでは、少なくともレンズの位置の可動範囲分だけのスペースを確保する必要があるので小型化の制約となる問題があった。
【0006】
さらに、焦点可変部は、レンズの位置を可動させるためのモータを有しており、可動させる距離が長くなるにつれてモータが大型化する問題があった。大型のモータを内蔵する三次元スキャナでは、モータ自体のスペースも確保する必要があるので小型化の制約となる問題があるとともに、大型のモータから発せられる音や振動が大きくなる他、消費電力や発熱量が増加するという問題があった。
【0007】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、レンズの位置を機械的に可動させる焦点可変部を内蔵する三次元スキャナにおいて、小型化が可能な構成を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る三次元スキャナは、口腔内の対象物の形状情報を取得する三次元スキャナであって、光源部と、対象物で反射された光源部からの光を検出する検出部と、口腔内に挿入して、光源部からの光を対象物に導くとともに、対象物からの反射光を検出部へ導くプローブと、プローブより光源部に近い側に設けられ、光源部から対象物を経て検出部に至る光の焦点位置を、所定範囲で変化させることが可能な焦点可変部と、検出部で検出した光から対象物の形状情報を演算する演算部と、焦点位置と焦点可変部と間で、かつ瞳位置より焦点位置側に正レンズの物体側レンズと、焦点可変部と光源部および検出部との間
に、光源部からの光路と検出部への光路とを分離するビームスプリッタと、を備え、物体側レンズは、プローブと嵌合可能な光学計測部の一部である接続部に設け、光源部、検出部、焦点可変部、およびビームスプリッタは、接続部以外の光学計測部内に設けて、プローブ、接続部、および光学計測部でハンドピースを構成し、焦点可変部は、合成したレンズパワーの値が正となる複数のレンズと、複数のレンズのうち少なくとも一つのレンズを光軸方向に沿って駆動する駆動部とを含み、複数のレンズは、少なくとも1組の正レンズと負レンズとの組み合わせを含んでいる。
【0009】
ある別の局面によれば、本発明に係る三次元スキャナは、口腔内の対象物の形状情報を取得する三次元スキャナであって、光源部と、対象物で反射された光源部からの光を検出する検出部と、口腔内に挿入して、光源部からの光を対象物に導くとともに、対象物からの反射光を検出部へ導くプローブと、プローブより光源部に近い側に設けられ、光源部から対象物を経て検出部に至る光の焦点位置を変化させることが可能な焦点レンズと、焦点レンズを光軸方向に沿って駆動する駆動部と、焦点レンズと同じ光軸上に設けられた少なくとも一つの負レンズと、焦点レンズを通って対象物で反射された光を検出する検出部と、検出部で検出した対象物で反射された光から対象物の形状情報を演算する演算部と、焦点位置と焦点可変部と間で、かつ瞳位置より焦点位置側に正レンズの物体側レンズと、焦点可変部と光源部および検出部との間に、光源部からの光路と検出部への光路とを分離するビームスプリッタと、を備え、物体側レンズは、プローブと嵌合可能な光学計測部の一部である接続部に設け、光源部、検出部、焦点レンズ、駆動部、負レンズ、およびビームスプリッタは、接続部以外の光学計測部内に設けて、プローブ、接続部、および光学計測部でハンドピースを構成し、焦点レンズと負レンズとを合成したレンズパワーの値が正であって、対象物上での焦点位置の可動範囲が所定範囲となる。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る三次元スキャナは、焦点可変部が複数のレンズを含み、当該複数のレンズが少なくとも1組の正レンズと負レンズとの組み合わせを含んでいるので、可動するレンズのレンズパワーを、焦点可変部を単一の焦点レンズで構成した場合と比べて大きく設定することができるため、効率良く対象物上での焦点位置を可動させることができ、レンズの位置の可動範囲を短くして小型化することができる。また、ある別の局面によれば、本発明に係る三次元スキャナは、光軸上に負レンズを配置することで検出部の縮小像を形成し、焦点レンズの拡大投影倍率を調整できるため、効率良く対象物上での焦点位置を可動させることができ、焦点レンズの位置の可動範囲を短くして小型化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施の形態1に係る三次元スキャナの構成を示すブロック図である。
図2】本発明の実施の形態1に係るハンドピース内の光学系の構成を説明するための概略図である。
図3】本発明の実施の形態1に係る焦点可変部の構成を説明するための概略図である。
図4】本発明の実施の形態1に係る焦点可変部を可動させた場合の光学シミュレーション結果を示す図である。
図5】本発明の実施の形態2に係る焦点可変部の構成を説明するための概略図である。
図6】本発明の実施の形態2に係る焦点可変部を可動させた場合の光学シミュレーション結果を示す図である。
図7】本発明の実施の形態3に係る焦点可変部を可動させた場合の光学シミュレーション結果を示す図である。
図8】本発明の実施の形態4に係る焦点可変部の構成を説明するための概略図である。
図9】焦点可変部のレンズの組み合わせを説明するための図である。
図10】焦点可変部を通過する光路を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る実施の形態について図面を参照して説明する。
【0013】
(実施の形態1)
本発明の実施の形態1に係る三次元スキャナは、口腔内の歯の三次元形状を取得するための三次元スキャナ(口腔内スキャナ)である。しかし、本発明に係る三次元スキャナは、口腔内スキャナに限定されるものではなく、同様の構成を有する他の三次元スキャナについて適用することができる。たとえば、口腔内以外に人の耳の内部を撮像して、外耳内の三次元形状を取得することができる三次元スキャナにも適用できる。
【0014】
[三次元スキャナの構成]
図1は、本発明の実施の形態1に係る三次元スキャナ100の構成を示すブロック図である。図1に示す三次元スキャナ100は、プローブ10、接続部20、光学計測部30、制御部40、表示部50、電源部60を含んでいる。プローブ10は、口腔内に差込まれ、対象物200である歯にパターンを有する光(以下、パターンともいう)を投影し、パターンが投影された対象物200からの反射光を光学計測部30に導いている。また、プローブ10は、光学計測部30に対して着脱可能であるので、感染対策として、生体に接触する可能性のあるプローブ10だけを光学計測部30から取り外して滅菌処理(たとえば、高温高湿環境での処理)を施すことが可能である。三次元スキャナの装置全部を滅菌処理した場合、光学部品や電子部品などが多く含まれるため装置の寿命が短くなる欠点があるが、プローブ10だけを取り外して滅菌処理した場合当該欠点は生じない。接続部20は、光学計測部30の一部であり、プローブ10と嵌合可能な形状をしており、光学計測部30から突出している部分である。接続部20は、プローブ10で採光した光を光学計測部30へ導くためのレンズ系や、カバーガラス、光学フィルタ、位相差板(1/4波長板)等の光学部品を有していてもよい。
【0015】
光学計測部30は、プローブ10を介して対象物200にパターンを投影し、投影したパターンを撮像する。光学計測部30は、図示していないが対象物200に投影するパターンを生成するための光学部品(パターン生成素子)および光源、パターンを対象物200の表面に結像するためのレンズ部品、焦点位置を変化させることが可能な焦点可変部、投影したパターンを撮像する光学センサ(CCDイメージセンサやCMOSイメージセンサなど)を有している。なお、光学計測部30は、合焦法の原理を用いて三次元形状を取得する構成として以下説明するが、共焦点法等の原理を用いて三次元形状を取得する構成でもよい。つまり、光学計測部30は、焦点可変部によって投影パターンや光学センサの焦点の位置を変化させる構成を含み、光学的な手法を用いて三次元形状を取得する構成であればいずれの原理を用いた構成であっても適用することが可能である。なお、プローブ10、接続部20と光学計測部30とで、口腔内を撮像するためのハンドピース80を構成している。
【0016】
制御部40は、光学計測部30の動作を制御するとともに、光学計測部30で撮像した画像を処理して三次元形状を取得する。制御部40は、制御中枢としてのCPU(Central Processing Unit)、CPUが動作するためのプログラムや制御データ等を記憶しているROM(Read Only Memory)、CPUのワークエリアとして機能するRAM(Random Access Memory)、周辺機器との信号の整合性を保つための入出力インターフェイス等が設けられている。また、制御部40は、取得した三次元形状を表示部50に出力することが可能であるとともに、光学計測部30の設定などの情報を図示していない入力装置などで入力可能である。なお、撮像した画像を処理して三次元形状を取得するための演算の少なくとも一部は、制御部40のCPUによってソフトウェアとして実現されてもよいし、当該CPUとは別に処理を行うハードウェアとして実現されてもよい。また、当該CPUやハードウェアなどの処理部のうち少なくとも一部は、光学計測部30の内部に組み込まれていてもよい。また、図1では三次元スキャナ100の各構成要素(30、40、50、60)がケーブル(図中の太線)によって配線されているように描かれているが、これらの配線のうち一部または全部が無線通信によって接続されていてもよい。また、制御部40が片手で持ち上げられるほど十分に小型かつ軽量であれば、制御部40と光学計測部30とが一体化され、ひとつのハンドピースとして構成されていてもよい。
【0017】
表示部50は、制御部40で得られた対象物200の三次元形状の計測結果を表示するための表示装置である。また、表示部50は、光学計測部30の設定情報や、患者情報、スキャナの起動状態、取扱説明書、ヘルプ画面などの、その他の情報を表示するための表示装置としても利用することができる。表示部50の例として、たとえば据え置き式の液晶ディスプレイや、ヘッドマウント式やメガネ式のウェアラブルディスプレイなどが適用できる。また、表示部50は複数あってもよく、三次元形状の計測結果やその他の情報が、複数の表示部50上に同時表示あるいは分割表示されるよう構成されてもよい。電源部60は、光学計測部30および制御部40を駆動するための電力を供給するための装置である。電源部60は、図1に示すように制御部40の外部に設けられていても、制御部40の内部に設けられていてもよい。また、電源部60は、制御部40、光学計測部30、表示部50に対し、別々に給電できるよう、複数設けられていてもよい。
【0018】
[ハンドピース内の光学構成]
次に、ハンドピース内の光学系の構成についてさらに詳しく説明する。図2は、本発明の実施の形態1に係るハンドピース80内の光学系の構成を説明するための概略図である。まず、ハンドピース80には、光源部81、焦点可変部82、駆動部83、光学センサ85が設けられている。なお、ハンドピース80には、これ以外に、光源部81から対象物200への光と、対象物200から光学センサ85への光とを分離するビームスプリッタ、レンズ系、対象物200に向けて光を反射させる反射板などが必要に応じて設けられている。但し、これらの構成については、図2での図示および詳細な説明については省略している。
【0019】
光源部81から出力された光は、焦点可変部82を通って対象物200に照射され、対象物200で反射される。対象物200で反射された光は、焦点可変部82を通って光学センサ85で検出される。合焦法の技術を用いて三次元形状を取得する場合、光源部81と対象物200との間に設けたパターン生成素子(図示せず)を通過した光を対象物200に投影し、駆動部83で焦点可変部82の状態(焦点可変部82による投影パターンの焦点位置)を変化させながら対象物200からの光を光学センサ85で検出する。図1に示した制御部40は、焦点可変部82の状態(たとえば駆動するレンズの位置)と、その位置での光学センサ85の検出結果とに基づいて対象物200の形状情報を演算している。そのため、制御部40は、光学センサ85で検出した光から対象物200の形状情報を演算する演算部として機能している。なお、三次元スキャナ100では、駆動部83で焦点可変部82による投影パターンの焦点位置を変化させる所定範囲として、対象物200である歯の形状を取得するのに必要となる範囲(例えば、10mm~20mm)を確保している。
【0020】
次に、焦点可変部82において、当該範囲を確保するための構成について説明する。図3は、本発明の実施の形態1に係る焦点可変部82の構成を説明するための概略図である。図3(a)では、比較例として従来の三次元スキャナで採用されているような、単独の焦点レンズ82zを駆動部83で可動させて投影パターンの焦点位置を変化させる構成を示している。光源部81から出射された光は、ビームスプリッタ84で曲げられて、焦点レンズ82zおよび物体側レンズ86を通過して対象物(図示せず)の位置に投影パターンを投影する。なお、投影パターンを生成するためのパターン生成素子は、図示していないが、例えば光源部81とビームスプリッタ84との間に設けられているか、あるいは、光源部81自体に含まれている。対象物で反射された光は、逆に物体側レンズ86および焦点レンズ82zを通過し、さらにビームスプリッタ84を経て光学センサ85で検出される。ここで、焦点レンズ82zの焦点距離をf、物体側レンズ86の焦点距離をfとした場合、拡大投影倍率Mは、概ねM=f/fとなる。そのため、光学センサ85の一辺の長さをHとした場合、焦点位置に形成される光学センサ85の像の一辺の長さ(視野に相当)がM×Hとなる。また、投影パターンの焦点位置を変化させる範囲F0は、焦点レンズ82zの可動距離をZとした場合、概ねF0=M×Zとなる。なお、駆動部83は、焦点レンズ82zの位置をモータなどで機械的に可動させる構成である。なお、図3(および以降の図面)では、三次元スキャナ100を構成するレンズ系が、焦点可変部82と、物体側レンズ86の2群のレンズで構成された略テレセントリック光学系として描かれているが、当該レンズ系の形態はこれに限らない。たとえば、広角のレンズなどであっても良い。また、当該レンズ系の光路中に、図示した以外の別のレンズや、絞り、偏光光学素子、フィルタなどのその他の光学部品が使用されていてももちろん良い。また、レンズの倍率や焦点距離などの数値に対して「概ね」という表記を用いているが、これは各種数値が、薄肉理論に基づいた近似的な計算結果であるためである。すなわち、各種レンズ、ビームスプリッタといった光学部品の厚みや収差などの影響は考慮していないため、実際の値とは若干異なる場合がある。また、レンズ系が厳密なテレセントリック光学系でない場合にも、実際の値が近似値から若干異なる場合がある。以降の説明においては「概ね」という表記を省略する場合がある。
【0021】
一方、本実施の形態1に係る焦点可変部82では、図3(b)に示すように1組の正レンズ82bと負レンズ82aとの組み合わせを含んでいる。なお、正レンズとは、レンズの縁よりも中央の方が厚いレンズである。例外として、フレネルレンズ、GI(Graded Index)レンズ、回折レンズなどの特殊レンズを用いた場合には、レンズの縁と中心とで厚みが同じになるような正レンズや負レンズが存在するが、もちろん上記特殊レンズを焦点可変部82や、三次元スキャナ100に含まれる他のレンズとして採用してもよい。負レンズとは、レンズの縁よりもレンズの中央の方が薄いレンズである。ここで、負レンズ82aと正レンズ82bとは互いに近接しているため、近似的に一つの合成レンズとみなすことができる。負レンズ82aの焦点距離をf1a、正レンズ82bの焦点距離をf1bとした場合、焦点可変部82の合成焦点距離fは、1/{1/f1a+1/f1b}となり、焦点レンズ82zの焦点距離fと同じ値に合わせてある。また、焦点可変部82の合成焦点距離fが焦点レンズ82zの焦点距離fと同じ値、すなわち正の値であるため、正レンズ82bは、焦点距離f1bが焦点レンズ82zの焦点距離fより短くなり、レンズパワー(1/f1b)が焦点レンズ82zのレンズパワー(1/f)より大きくなる。ここで、「焦点可変部82の焦点距離」という表現は、焦点可変部82に含まれるレンズ等の光学部品を対象とした表現であり、焦点可変部82に含まれる駆動部等のその他の部分(光が通過しない部材)は表現の対象ではない。
【0022】
図3(b)に示す焦点可変部82では、焦点可変部82を構成する複数のレンズのうちレンズパワーの絶対値が最大のレンズを、駆動部83で光軸方向に沿って駆動している。焦点可変部82では、正レンズ82bのレンズパワー(1/f1b)の絶対値が、負レンズ82aのレンズパワー(1/f1a)の絶対値より大きいとして、正レンズ82bを駆動部83で光軸方向に沿って駆動している。ここで、正レンズ82bの可動距離を焦点レンズ82zの可動距離Zと同じ値にした場合、正レンズ82bのレンズパワー(1/f1b)が焦点レンズ82zのレンズパワー(1/f)より大きいので、投影パターンの焦点位置を変化させる範囲F1は範囲F0より長くなる。逆に、範囲F1を範囲F0と同じ長さにすれば、正レンズ82bの可動距離を焦点レンズ82zの可動距離Zより短くすることが可能になる。すなわち、図3(a)と(b)とを比較すると、駆動するレンズのレンズパワーの絶対値が大きいほど、小さいレンズの可動距離で効率良く焦点位置を可動することができ、三次元スキャナ100の小型化にとって有利な構成となる。なお、焦点可変部82は、図3(b)に示すように瞳位置には設けていない。例えば、瞳位置や物体側レンズ86の位置のようなプローブ側に焦点可変部82を設けた場合、駆動部であるモータもプローブの近くに設置する必要があり、プローブ自体の口径が大型化する。プローブ自体の口径が大型化すると、歯科分野で応用する場合、プローブを口に入れにくくなり、患者に負担がかかる問題がある。一方、プローブ側に焦点可変部82を設けない場合、プローブ自体の口径を小型化でき、患者に負担が軽減できるメリットがある。
【0023】
レンズの可動距離と焦点位置を変化させる範囲との関係をさらに詳しく説明する。図3(a)で示した光学構成において、拡大投影倍率をMとすると焦点位置を変化させる範囲がM倍に増幅されることを説明した。具体的に、焦点レンズ82zの焦点距離fを50mm、物体側レンズ86の焦点距離fを100mmとした場合、拡大投影倍率Mが2倍となるので、焦点位置に形成される光学センサ85の像の一辺の長さ(視野に相当)は2Hとなり、焦点位置を変化させる範囲F0はレンズの可動距離Zと比べてM=4倍となる。
【0024】
一方、図3(b)で示した光学構成において、レンズの可動距離と焦点位置を変化させる範囲との関係を考える場合、負レンズ82aと正レンズ82bとの2段階にわけて考える。まず、負レンズ82aについて考える。光学センサ85の前に負レンズ82aを置くことで、光学センサ85と負レンズ82aとの間に光学センサ85の縮小像が形成される。例えば、負レンズ82aの焦点距離f1aを-40mmとし、負レンズ82aを光学センサ85の50mm(=a)前に置いた場合、負レンズ82aから光学センサ85側に向かって22.2mm(=b)の位置に縮小像が形成される。光学センサ85の一辺の長さをHとした場合、縮小像の一辺の長さは、H×(b/a)=0.44Hとなる。
【0025】
次に、正レンズ82bについて考える。負レンズ82aにより形成された縮小像に対して正レンズ82bを置いた光学構成として考える。すなわち、負レンズ82aにより形成された光学センサ85の縮小像を、正レンズ82bと物体側レンズ86とを用いて、対象物上にM1倍に拡大投影することで、光学センサ85の像を焦点位置に形成する構成を考える。しかし、焦点位置に形成される光学センサ85の像の一辺の長さ(視野に相当)はM×Hと同じ値になるように、縮小像の拡大投影倍率M1を決定する必要がある。基本的に、縮小像の拡大投影倍率M1は、縮小していない光学センサ85に対する拡大投影倍率Mよりも大きな値になる。縮小像の拡大投影倍率M1が大きくなることで、焦点位置を変化させる範囲F1も、F1=M1×Z>F0=M×Zとなる。例えば、焦点位置での一辺の長さ(視野に相当)が2Hとなるように、縮小画像の一辺の長さ0.44Hを拡大する拡大投影倍率M1は、M1=2H/0.44H=約4.5となる。物体側レンズ86の焦点距離fを100mmとした場合に拡大投影倍率M1を約4.5とするには、正レンズ82bの焦点距離f1bは22.2mmとなる。なお、拡大投影倍率M1が約4.5であれば、焦点位置を変化させる範囲はM1=20.25倍となる。
【0026】
図3(b)では、焦点可変部82が1組の正レンズ82bと負レンズ82aとの組み合わせを含むことで、図3(a)のように焦点可変部82が焦点レンズ82zのみから構成される場合と比べ、焦点位置を変化させる範囲を長くすること(F1>F0)ができると説明した。逆に、焦点可変部82が焦点位置を変化させる範囲を同じにすることで、正レンズ82bの可動距離を焦点レンズ82zの可動距離Zより短くすることについてさらに詳しく説明する。図4は、本発明の実施の形態1に係る焦点可変部を可動させた場合の光学シミュレーション結果を示す図である。図4に示す光学構成では、図中の横軸における座標が0mmの位置に光学センサ85が設置されており、物体側レンズ86の図中左側(瞳位置)に絞り部87を設けてある。絞り部87には、物体側レンズ86の作動距離や収差を調整するためのレンズが設置されていてもよく、当該レンズの口径を小さくしたり、当該レンズの表面を塗料などの遮蔽体でマスクしたりすることで、当該レンズ自体を絞りとして機能させることもできる。図4および以降の光学シミュレーション結果においては、絞り部87にレンズを設置している場合がある。なお、図4で用いている光学シミュレーションでは、薄肉レンズの理論式に基づいた近似的な計算結果を示しているが、別のシミュレーションの方法(たとえばスネルの法則に基づいた厳密な光線追跡法など)によっても近い結果が得られることは言うまでもない。また、図4において、図3で示した構成と同じ構成については、同じ符号を付与して詳細な説明を繰り返さない。また、図3では図示していたビームスプリッタ84や光源部81について、図4では省略している。図4(a)では、比較例として、図3(a)に示した比較例に対応した光学シミュレーションを示しており、単独の焦点レンズ82zを駆動部83で可動させて投影パターンの焦点位置を変化させている光学シミュレーション結果を示している。このとき、焦点レンズ82zの可動距離(被駆動距離)はZである。なお可動距離Zは、焦点レンズ82zの中心における光軸方向の変位量で測っている。
【0027】
一方、図4(b)では、図3(b)に示した実施形態に対応する光学シミュレーションを示している。すなわち、1組の正レンズ82bと負レンズ82aとを組み合わせた焦点可変部82において、正レンズ82bを駆動部83で可動させて投影パターンの焦点位置を変化させている光学シミュレーション結果を示している。このとき、正レンズ82bの可動距離はZ1である。なお可動距離Z1は、正レンズ82bの中心における光軸方向の変位量で測っている。図4(a)での焦点位置を変化させる範囲と、図4(b)での焦点位置を変化させる範囲とを同じFとした場合、焦点レンズ82zの可動距離Z1が焦点レンズ82zの可動距離Zより短くなっていることが光学シミュレーション結果から明らかである。なお、図4に示す光学シミュレーションでは、焦点レンズ82zの焦点距離fを50mm、物体側レンズ86の焦点距離fを70mm、負レンズ82aの焦点距離f1aを―200mm、および正レンズ82bの焦点距離f1bを40mmとして行っている。
【0028】
以上のように、本実施の形態1に係る三次元スキャナ100は、光源部81と、対象物200で反射された光源部81からの光を検出する光学センサ85と、光源部81から対象物200を経て光学センサ85に至る光の焦点位置を、所定範囲で変化させることが可能な焦点可変部82と、光学センサ85で検出した光から対象物200の形状情報を演算する制御部40とを備えている。光学センサ85は対象物200で反射された光を検出する検出部を構成する。焦点可変部82は、合成したレンズパワーの値が正となる複数のレンズと、複数のレンズのうち少なくとも一つのレンズを光軸方向に沿って駆動する駆動部83とを含む。複数のレンズは、少なくとも1組の正レンズ82bと負レンズ82aとの組み合わせを含んでいる。そのため、本実施の形態1に係る三次元スキャナ100は、従来の構成のように焦点レンズ82zのみを可動する場合と比べ、可動するレンズ(正レンズ82b)のレンズパワーを大きくすることが可能となるため、効率良く焦点位置を可動することができるようになり、レンズの位置の可動範囲を短くして小型化することができる。なお、三次元スキャナ100では、レンズの位置の可動範囲を短くすることで、駆動部83のモータも小型化でき、さらにモータの消費電力や発熱量を小さく抑えることができる。また、焦点可変部82を複数のレンズで構成することにより、光学設計において、収差低減のために調整できるレンズ曲面の数や選択できるガラス材料の数が増えるため、設計の自由度が高くなるメリットがある。
【0029】
三次元スキャナ100では、図3(a)に示したような単一の焦点レンズ82zを、図3(b)で示したように合成したレンズパワーが等価な1組の正レンズ82bと負レンズ82aとで置き換えることで、駆動するレンズのレンズパワーを従来よりも大きく設定することが可能となり、高効率な焦点駆動を実現していると説明したが、図3(b)に示した構成は別の見方で捉えることもできる。すなわち、正レンズ82bを焦点レンズ82zとして捉えることもできる。図3(a)に示した構成に対して、負レンズ82aを追加することで光学センサ85の縮小像が形成され、当該縮小像の位置に、縮小像ではなくあたかも本物の小さな光学センサが置かれていると考えれば、正レンズ82bは焦点レンズ82zとして機能していると言える。つまり、三次元スキャナ100は、ある別の局面として、光源部81と、光学センサ85と、光源部81から対象物200を経て光学センサ85に至る光の焦点位置を変化させることが可能な焦点レンズ(正レンズ82b)と、焦点レンズを光軸方向に沿って駆動する駆動部83と、焦点レンズと同じ光軸上に設けられた少なくとも一つの負レンズ82aと、制御部40とを備える構成であると捉えることができる。そして、焦点レンズと負レンズ82aとを合成したレンズパワーの値が正であって、合成した焦点位置の可動範囲が所定範囲となるよう構成されている。負レンズ82aを光軸上に追加することによって光学センサ85の縮小像が形成され、焦点位置の駆動効率を決定するパラメータの一つである拡大投影倍率M1を調整することが可能となるため、三次元スキャナ100の小型化に有利な構成となる。
【0030】
また、駆動部83は、焦点可変部82を構成する複数のレンズのうちレンズパワーの絶対値が最大のレンズ(正レンズ82b)を光軸方向に沿って駆動させてもよい。具体的に、駆動部83は、正レンズ82bのレンズパワー(1/f1b)の絶対値が、負レンズ82aのレンズパワー(1/f1a)の絶対値より大きいので、正レンズ82bを可動させる。例えば、正レンズ82bのレンズパワー(1/f1b)を1/(40mm)、負レンズ82aのレンズパワー(1/f1a)を1/(-200mm)とした場合、正レンズ82bのレンズパワーの絶対値が大きくなる。レンズパワーの絶対値が最大のレンズを駆動することで、効率良く対象物上での焦点位置の駆動することができるため、三次元スキャナ100の小型化に有利な構成となる。
【0031】
さらに、焦点可変部82を構成する複数のレンズは、合成したレンズパワーの絶対値に比べて、大きなレンズパワーの絶対値を有するレンズを少なくとも含めてもよい。具体的に、正レンズ82bのレンズパワー(1/f1b)の絶対値は、焦点可変部82の合成したレンズパワー{(f1a+f1b)/(f1a・f1b)}=焦点レンズ82zのレンズパワー(1/f)の絶対値より大きい。例えば、正レンズ82bのレンズパワー(1/f1b)を1/(40mm)、負レンズ82aのレンズパワー(1/f1a)を1/(-200mm)とした場合、合成したレンズパワー{(f1a+f1b)/(f1a・f1b)}=4/(200mm)より正レンズ82bのレンズパワー1/(40mm)=5/(200mm)の方が大きい。
【0032】
なお、図3(b)および図4(b)で説明した焦点可変部82では、光学センサ85側から負レンズ82a、正レンズ82bの順に配置してあるが、レンズを配置する順序はこれに限定されない。すなわち負レンズ82aと正レンズ82bの位置を入れ替えてもよい。また、負レンズ82aは、1枚のレンズとして説明したが、合成負レンズでもよい。例えば、合成焦点距離が負となるダブレットレンズやトリプレットレンズであってもよい。
【0033】
(実施の形態2)
実施の形態1に係る三次元スキャナ100では、図3(b)に示すように正レンズ82bのみを可動させている構成について説明した。本実施の形態2に係る三次元スキャナでは、レンズの可動に合わせてカウンタウェイトを可動させる焦点可変部の構成について説明する。
【0034】
図5は、本発明の実施の形態2に係る焦点可変部の構成を説明するための概略図である。なお、図5において、図3で示した構成と同じ構成については、同じ符号を付与して詳細な説明を繰り返さない。図5(a)では、比較例として単独の焦点レンズ82zを駆動部83で可動させて投影パターンの焦点位置を変化させている。駆動部83は、スライダ83aに固定された焦点レンズ82zを、光軸方向に延びるレール83b上をモータで可動させる。駆動部83は、スライダ83cにカウンタウェイト83dを固定し、レール83b上で焦点レンズ82zとは逆位相でカウンタウェイト83dを可動させる。焦点レンズ82zの可動にあわせて逆位相でカウンタウェイト83dが可動するので、焦点レンズ82zの可動によって発生する振動がカウンタウェイト83dの可動によって発生する振動でキャンセルされて低減することができる。なお、図5(a)に示す焦点レンズ82zは、可動距離をZとし、投影パターンの焦点位置を変化させる範囲をFとしている。
【0035】
図3(b)で示した焦点可変部82において、可動させる正レンズ82bに対応して図5(a)で示したカウンタウェイト83dを同様に設けることができる。つまり、図5(a)で示した構成において、焦点レンズ82zを正レンズ82bに替え、さらに負レンズ82aを追加する構成である。カウンタウェイト83dを追加した分、部品点数が増えるが、可動させる正レンズ82bによる振動を低減することができる。
【0036】
一方、図5(b)では、焦点可変部82が1組の正レンズ82bと負レンズ82aとの組み合わせを含み、さらに駆動部83で正レンズ82bと負レンズ82aとを光軸方向に沿って互いに反対の向きに駆動する。駆動部83は、スライダ83aに固定された正レンズ82bと、スライダ83cに固定された負レンズ82aとを、光軸方向に延びるレール83b上においてモータで可動させる。もちろん、正レンズ82bと負レンズ82aとは逆位相で可動される。これにより、負レンズ82aは、正レンズ82bの可動による振動を低減するためのカウンタウェイトとして機能させることができ、別途カウンタウェイト83dを追加する必要がない。すなわち、負レンズ82aは正レンズ82bのカウンタウェイトとして用いられている。負レンズ82aは、正レンズ82bのカウンタウェイトとして機能させるために重量や振幅等を調整してある。つまり、正レンズ82bの運動量(=振幅×駆動方向×レンズ重量)をキャンセル(カウンターバランス)されるように負レンズ82aの重量、駆動振幅が設定され、正レンズ82bの運動量と負レンズ82aの運動量との和が0(ゼロ)である。例えば、正レンズ82bの重量が負レンズ82aの重量よりも大きい場合に、正レンズ82b側の振幅を負レンズ82a側の振幅よりも小さくするように調整できる。無論、正レンズ82bと負レンズ82aとの差分を補う重量の図示しないカウンタウェイトを、軽い側に付加するべく、スライダ83aとスライダ83cの一方に設けるようにしてもよい。また、レンズの重量だけでなく、他の駆動する部材の重量(例えばレンズを保持するためのホルダ部材の重量や、スライダ83a、83b自体の重量)も併せて調整することで、可動部全体がカウンターバランスされるよう構成されていてもよい。
【0037】
さらに、焦点可変部82では、正レンズ82bと負レンズ82aとを光軸方向に沿って互いに反対の向きに駆動するので、正レンズ82bおよび負レンズ82aのそれぞれの可動距離Z2は、正レンズ82bのみを可動させた場合の可動距離Z1よりも短くなる。前述のとおり、正レンズ82bの重量と負レンズ82aの重量の一方が他方より大きい場合、例えば正レンズ82bの重量が負レンズ82aの重量よりも大きい場合に、正レンズ82b側の振幅と負レンズ82a側の振幅が異なるよう構成されていてもよく、この場合であっても、正レンズ82bの可動距離Z2bも負レンズ82aの可動距離Z2aも、正レンズ82bのみを可動させた場合の可動距離Z1よりも短くなるように構成するのが好適である。具体的に、光学シミュレーション結果に基づいて説明する。図6は、本発明の実施の形態2に係る焦点可変部を可動させた場合の光学シミュレーション結果を示す図である。なお、図6において、図4で示した構成と同じ構成については、同じ符号を付与して詳細な説明を繰り返さない。図6(a)では、1組の正レンズ82bと負レンズ82aとを組み合わせた焦点可変部82において、正レンズ82bのみを駆動部83で可動させて投影パターンの焦点位置を変化させている光学シミュレーション結果を示している。このとき、正レンズ82bの可動距離はZ1である。
【0038】
一方、図6(b)では、1組の正レンズ82bと負レンズ82aとを組み合わせた焦点可変部82において、正レンズ82bおよび負レンズ82aを駆動部83でそれぞれ可動させて投影パターンの焦点位置を変化させている光学シミュレーション結果を示している。このとき、正レンズ82bおよび負レンズ82aのそれぞれの可動距離はZ2である。図6(a)で焦点位置を変化させる範囲と、図6(b)で焦点位置を変化させる範囲とを同じFとした場合、正レンズ82bの可動距離Z2が正レンズ82bの可動距離Z1より短くなっていることが光学シミュレーション結果から明らかである。なお、図6に示す光学シミュレーションでは、物体側レンズ86の焦点距離fを70mm、負レンズ82aの焦点距離f1aを―200mm、および正レンズ82bの焦点距離f1bを40mmとして行っている。
【0039】
以上のように、焦点可変部82は、駆動部83で駆動されるレンズ(例えば、正レンズ82b)とは反対方向に駆動されるカウンタウェイトをさらに含めてもよい。これにより、焦点可変部82は、正レンズ82bの可動によって発生する振動を低減することができる。また、駆動部83が駆動する複数のレンズのうち一つのレンズ(例えば、負レンズ82a)を他のレンズ(例えば、正レンズ82b)のカウンタウェイトとして用いてもよい。これにより、別途、カウンタウェイトを設ける必要がないので構成する部品点数を減らせることができる。さらに、駆動部83は、複数のレンズに含まれる正レンズ82bと負レンズ82aとを光軸方向に沿って互いに反対の向きに駆動することで、さらに効率よく物体上での焦点位置を駆動することが可能となるため、正レンズ82bおよび負レンズ82aのそれぞれの可動距離Z2を短くすることができ更なる小型化が可能となるという相乗効果が生まれる。
【0040】
(実施の形態3)
実施の形態1に係る三次元スキャナ100では、図3(b)に示すように1組の正レンズ82bと負レンズ82aとを組み合わせた焦点可変部82を有する構成について説明した。本実施の形態3に係る三次元スキャナでは、焦点可変部を構成する正レンズと負レンズとのレンズパワーのバランスにより焦点位置を変化させる範囲が変化することについて説明する。
【0041】
図7は、本発明の実施の形態3に係る焦点可変部を可動させた場合の光学シミュレーション結果を示す図である。図7(a)~図7(c)では、いずれの構成においても焦点可変部82を構成する複数のレンズの合成焦点距離が50mmとなるように構成されているが、焦点可変部82を構成する複数のレンズのパワーバランスが、図7(a)~図7(c)ではそれぞれ異なっている。なお、図7において、図4で示した構成と同じ構成については、同じ符号を付与して詳細な説明を繰り返さない。図7(a)では、1組の正レンズ82bと負レンズ82aとを組み合わせた焦点可変部82において、正レンズ82bのみを駆動部83で可動させて投影パターンの焦点位置を変化させている光学シミュレーション結果を示している。このとき、負レンズ82aの焦点距離f1aを-200mmとし、正レンズ82bの焦点距離f1bを40mmとする。
【0042】
図7(b)では、1組の正レンズ82dと負レンズ82cとを組み合わせた焦点可変部82において、正レンズ82dのみを駆動部83で可動させて投影パターンの焦点位置を変化させている光学シミュレーション結果を示している。このとき、負レンズ82cの焦点距離f1cを-117mmとし、正レンズ82dの焦点距離f1dを35mmとする。図7(c)では、1組の正レンズ82fと負レンズ82eとを組み合わせた焦点可変部82において、正レンズ82fのみを駆動部83で可動させて投影パターンの焦点位置を変化させている光学シミュレーション結果を示している。このとき、負レンズ82eの焦点距離f1eを-75mmとし、正レンズ82fの焦点距離f1fを30mmとする。
【0043】
可動させる正レンズ82b,82d,82fの可動距離をすべて同じZにした場合、図7(a)において焦点位置を変化させる範囲F1、図7(b)において焦点位置を変化させる範囲F2、図7(c)において焦点位置を変化させる範囲F3の順で長くなっていることが光学シミュレーション結果から明らかである。なお、図7に示す光学シミュレーションでは、物体側レンズ86の焦点距離fを70mmとして行っている。
【0044】
以上のように、焦点可変部82を構成する正レンズ82bと負レンズ82aとのレンズパワーのバランスを変更することで、焦点位置を変化させる範囲Fを変更することが可能になる。これにより、設計の自由度が高くなるメリットがある。例えば、一般的にレンズパワーの大きなレンズは収差が大きく結像性能が悪かったり、加工が難しいこと等から製造コストが増加したりする。結像性能を改善したい場合、および/または製造コストや加工の負担を軽減したい場合にはレンズパワーの小さな正レンズ82bを用いるようにし、結像性能の劣化すること、および/または製造コストや加工の負担が大きくなることを許容してでも、焦点位置の変化範囲を伸ばしたい場合や焦点位置の変化範囲を小さく抑えて可動距離Zを小さくしたい場合には、レンズパワーの大きな正レンズ82fを用いるようにするなど、適宜選択ができる。また、正レンズ82bを用いた製品、正レンズ82dを用いた製品、正レンズ82fを用いた製品を全て製造し、製品のラインナップの充実を図ることもできる。
【0045】
(実施の形態4)
実施の形態1に係る三次元スキャナ100では、図3(b)に示すように1組の正レンズ82bと負レンズ82aとを組み合わせた焦点可変部82を有する構成について説明した。しかし、複数のレンズを組み合わせて焦点可変部82を構成する場合、正レンズ82bの焦点距離f1bおよび負レンズ82aの焦点距離f1a以外の条件を付加することができる。本実施の形態4に係る三次元スキャナでは、複数のレンズで焦点可変部を構成する場合に付加する条件について説明する。
【0046】
一般にレンズを構成する材料(光学ガラスや光学プラスチックなど)の屈折率は光の波長によって異なるため、レンズの焦点距離には波長依存性が生じ、色収差が発生する。特に、複数のレンズで焦点可変部を構成する場合、それぞれのレンズにおける異なる焦点距離の波長依存性により、組み合わせ後の波長依存性がさらに大きくなることがある。そこで、組み合わせ後の波長依存性がさらに大きくならないように構成する条件として、例えば、駆動される正レンズのアッベ数を、負レンズのアッベ数より大きくする。当該条件に基づき焦点可変部を構成することで焦点距離の波長依存性を低減することができる。つまり、正レンズと負レンズとで焦点距離の波長依存性をキャンセルさせることができる。なお、アッベ数とは、光の分散に対する屈折度の比を示した、光学媒質の定数であり、アッベ数が小さいほど、波長依存性が大きい材料であることを意味する。
【0047】
具体例に基づいて説明する。図8は、本発明の実施の形態4に係る焦点可変部の構成を説明するための概略図である。なお、図8において、図3で示した構成と同じ構成については、同じ符号を付与して詳細な説明を繰り返さない。本実施の形態4に係る焦点可変部82では、図8に示すように1組の正レンズ82hと負レンズ82gとの組み合わせを含んでいる。そして、駆動部により正レンズ82hが可動される。なお、駆動部83の図示は省略する。さらに、正レンズ82hには、アッベ数が大きいクラウンガラスを用い、負レンズ82gには、アッベ数が小さいフリントガラスを用いている。そのため、焦点可変部82は、高アッベ数の正レンズ82hと低アッベ数の負レンズ82gとを組合せて合成焦点距離の波長依存性を低減する構成となっている。
【0048】
以上のように、本実施の形態4に係る焦点可変部82では、駆動されるレンズが正レンズ82hであって、アッベ数が複数のレンズに含まれる負レンズ82gのアッベ数より大きくすることで、焦点可変部82の合成焦点距離の波長依存性を低減することができる。
【0049】
また、複数のレンズで焦点可変部82を構成する場合、複数のレンズの全体で色消し条件を満たすように、複数のレンズに含まれる各々のレンズの光学特性値を決定してもよい。なお、色消し条件とは、例えばレンズパワー/アッベ数の値を、焦点可変部82を構成する全てのレンズについて足し合わせた合計値が、略0(ゼロ)となる条件である。
【0050】
さらに、複数のレンズで焦点可変部82を構成する場合、複数のレンズの合成焦点距離の温度依存性を調整するように、複数のレンズに含まれる各々のレンズを構成する材料光学特性値(熱アッベ数など)を決定してもよい。例えばレンズパワー/熱アッベ数の値を、焦点可変部82を構成する全てのレンズについて足し合わせた合計値が、略0(ゼロ)となる条件にて設計することで、レンズの材料の温度依存性に起因する焦点可変部82の温度依存性が低減される。また、レンズの材料の温度依存性だけでなく、レンズの筐体の熱膨張に起因する、焦点可変部82の合成焦点距離の温度依存性を低減するよう、光学特性値(熱アッベ数など)を決定してもよい。焦点可変部82は正レンズと負レンズの両方を少なくとも含んでいるため、色収差や温度依存性といった諸特性を調整するための設計自由度が向上する。
【0051】
(変形例1)
本発明の実施の形態1~4に係る焦点可変部82では、1組の正レンズと負レンズとの組み合わせで構成されていると説明した。しかし、焦点可変部は、1組の正レンズと負レンズとの組み合わせが含まれており、そのレンズパワーの和が正となっていれば、3枚以上のレンズを組み合わせた構成であってもよい。具体的に、3枚のレンズを組み合わせた焦点可変部について説明する。図9は、焦点可変部のレンズの組み合わせを説明するための図である。図9に示す焦点可変部は、1枚の負レンズ82iと2枚の正レンズ82j,82kとの3枚のレンズで構成している。まず、図9では、負レンズ82iを静止させる場合と、負レンズ82iを可動させる場合とに分けて記載してある。さらに、図9では、レンズを図中右向きから可動を開始させる右駆動(白矢印で表記)と、レンズを図中左向きから可動を開始させる左駆動(黒矢印で表記)とのいずれかで駆動されることが図示してある。ここで、右駆動と左駆動とは逆位相の駆動である。図9では、さらに正レンズの左駆動無と、正レンズの左駆動有とに分けて記載してある。
【0052】
例えば、図9の左上欄の構成では、負レンズ82iを静止させ、正レンズ82j,82kをともに右駆動させる焦点可変部82の構成を図示してある。一方、図9の右上欄の構成では、負レンズ82iを静止、正レンズ82jを左駆動させて、正レンズ82kを右駆動させる焦点可変部82の構成を図示してある。また、図9の左下欄の構成では、負レンズ82iを左駆動させ、正レンズ82j,82kをともに静止させる焦点可変部82の構成を図示してある。さらに、図9の右下欄の構成では、負レンズ82iを左駆動させ、正レンズ82jを静止、正レンズ82kを左駆動させる焦点可変部82の構成を図示してある。
【0053】
図9に示すパターンでは、いずれの場合においても、「{(レンズパワー)×(駆動方向の符号)}をすべての負レンズ82iおよび正レンズ82j,82kについて足し合わせた値の絶対値が、レンズパワーをすべての負レンズ82iおよび正レンズ82j,82kについて足し合わせた値よりも大きくなる」という条件を満たすよう焦点可変部82を構成することが可能である。上記条件を満たすように構成することで、焦点可変部82(負レンズ82iおよび正レンズ82j,82k)を合成したものと等価な単一の焦点レンズ82zのみを駆動する構成と比べて、効率よく物体上で焦点位置を駆動することができ、小型化などの優位性が得られる。上記条件は、定性的には「負レンズと正レンズとはなるべく逆相で駆動する方が良く、正レンズ同士はなるべく同相で駆動する方が良い」ことを意味している。また「反対に、負レンズと正レンズとを同相で駆動したり、正レンズ同士を逆相で駆動したりする場合であっても、一方のレンズパワーが十分に小さい場合には不利にはならない」ことを意味している。もちろん上記条件は、焦点可変部82を4枚以上のレンズで構成される場合にも適用可能である。
【0054】
(変形例2)
本発明の実施の形態1~4に係る三次元スキャナ100では、図3(b)で示したように光源部81から出射された光が、ビームスプリッタ84で曲げられて、焦点可変部82および物体側レンズ86を通過して対象物(図示せず)の位置に投影パターンを投影する。さらに、対象物で反射された光は、逆に物体側レンズ86および焦点可変部82を通過し、さらにビームスプリッタ84を経て光学センサ85で検出される。つまり、本発明の実施の形態1~4に係る三次元スキャナ100では、光源部81から対象物200を経て光学センサ85に至る光が、焦点可変部82を2度通過する構成について説明した。しかし、当該構成に限定されず、光源部81から対象物200を経て光学センサ85に至る光が、焦点可変部82を1度通過する構成であっても、3度以上通過する構成であってもよい。
【0055】
具体的に、図10は、焦点可変部を通過する光路を説明するための図である。図10(a)では、光源部81から出射された光が、焦点可変部82を通過して対象物200にパターンを投影する。しかし、対象物200で反射された光は、焦点可変部82を通過せずに光学センサ85で直接検出される。つまり、図10(a)に示す構成は、光源部81から対象物200を経て光学センサ85に至る光が、焦点可変部82を1度通過する構成である。
【0056】
図10(b)は、実施の形態1と同様、光源部81から出射された光が、焦点可変部82を通過して対象物200に投影パターンを投影する。さらに、対象物200で反射された光は、焦点可変部82を通過して光学センサ85で検出される。つまり、図10(b)に示す構成は、光源部81から対象物200を経て光学センサ85に至る光が、焦点可変部82を2度通過する構成である。
【0057】
図10(c)では、光源部81から出射された光が、焦点可変部82を通過せずに対象物200に投影パターンを直接投影する。一方、対象物200で反射された光は、焦点可変部82を通過して光学センサ85で検出される。つまり、図10(c)に示す構成は、光源部81から対象物200を経て光学センサ85に至る光が、焦点可変部82を1度通過する構成である。以上のように、光源部81から出射された光(以下、投影光路と呼ぶ)、および対象物200から反射された光(以下、撮像光路と呼ぶ)が焦点可変部82を通過する回数に応じて、3種の変形例を例示したが、合焦法を計測原理とした場合には、図10(b)の構成が最も良い。合焦法では、焦点位置を変えながら対象物200の表面に投影されたパターンの画像を複数回撮像・解析して、当該画像群の中からもっとも焦点の合っている画像を求め、対象物200の三次元形状を得る。その際、画像上にて最もパターンが明瞭に見えた状態が「焦点合っている」と判定される。図10(b)に示した構成では、投影光路および撮像光路の両方について同期させて焦点位置を可変することができる。すなわち、投影光路および撮像光路の両方について焦点が合っている状態では、明瞭なパターンの画像が得られ、それ以外の状態では、投影光路および撮像光路の両方について同時に焦点がずれる。つまり、「ピンボケした投影パターンを、ピンボケしたレンズで撮像する」というようにピンボケの効果が2度働くため、急激にパターンの明瞭度が落ちる。すなわち、パターンの明瞭度(=焦点の合っている度合い)が最大を示した画像を容易に特定しやすくなる。一方で図10(a)や図10(c)の構成では、投影光路および撮像光路のうちの片方についてしか、焦点位置が可変されないため、パターンの明瞭度が最大となった状態以外でも、ある程度大きなパターンの明瞭度を示してしまうため、パターンの明瞭度の最大値を示した画像の特定がやや困難となる。すなわち図10(b)の構成と比べ三次元計測の精度が低下する。また上記のパターンの明瞭度の検出の問題の他にも、図10(a)や図10(c)の構成では一般に、投影光路および撮像光路において焦点可変部82が置かれていない側の光路において、パンフォーカスを得るために絞りを使用した(光量を絞った)レンズを採用する必要があるため、光量が低下してしまう虞がある。しかし、十分に光量が確保できる光源部81やノイズの少ない光学センサ85などを採用する場合や、対象物200が良好な反射特性を示す場合等は、図10(a)や図10(c)の構成でも十分に三次元計測が可能となる。
【0058】
(変形例3)
本発明の実施の形態1~4に係る光源部81は、単一の光源(たとえば、LEDやレーザ素子など)であると説明したが、当該構成に限定されない。光源部81は、複数の光源を集合させて構成してもよい。つまり、複数のLEDやレーザ素子を基板に並べて光源部81を構成してもよい。なお、三次元スキャナ100では、光源部81からの光や対象物200からの反射光を、光ファイバなどのライトガイドを利用して光学センサ85や対象物200に導く構成を採用してもよい。
【0059】
(変形例4)
また、本発明の実施の形態1~4に係る三次元スキャナの撮像の対象は、口腔内の歯や歯肉に限ったものではなく、外耳道などの生体組織や、建築物の壁の隙間、配管の内部や、空洞を有する工業製品などであっても良く、本発明は、狭隘で死角の生じやすい空間内を計測/観察する用途に対し広く適用可能である。
【0060】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した説明ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0061】
10 プローブ、20 接続部、30 光学計測部、40 制御部、50 表示部、60 電源部、80 ハンドピース、81 光源部、82 焦点可変部、82a 負レンズ、82b 正レンズ、83 駆動部、83d カウンタウェイト、84 ビームスプリッタ、85 光学センサ、86 物体側レンズ、87 絞り部、100 三次元スキャナ、200 対象物。
図1
図2
図3
図4
図5
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図8
図9
図10