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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-16
(45)【発行日】2023-08-24
(54)【発明の名称】判定装置および判定方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/77 20060101AFI20230817BHJP
   B29C 45/40 20060101ALI20230817BHJP
   B29C 45/17 20060101ALI20230817BHJP
【FI】
B29C45/77
B29C45/40
B29C45/17
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020197273
(22)【出願日】2020-11-27
(65)【公開番号】P2022085535
(43)【公開日】2022-06-08
【審査請求日】2022-06-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000215785
【氏名又は名称】TPR株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】丸山 仁
(72)【発明者】
【氏名】清田 賢也
(72)【発明者】
【氏名】藤森 克紀
【審査官】神田 和輝
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-044748(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0073805(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0252954(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/00-45/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
射出成形装置の成形に関わる可動部品の位置を判定する判定装置であって、
検知対象の可動部品と該可動部品が所定位置にあるときに当接する当接部品との間を真空引きしたときの真空圧を測定する真空圧測定部と、
前記真空圧測定部が測定した真空圧に基づき、前記可動部品の位置を判定する位置判定部と、を備え
前記可動部品は、エジェクタプレートであり、前記当接部品は可動側取付板であって、
前記位置判定部は、前記エジェクタプレートが成形品を押し出した後、該エジェクタプレートが前記可動側取付板と当接する位置に戻ったか否かを判定する判定装置。
【請求項2】
前記可動側取付板の前記エジェクタプレートと対向する面とは異なる面、または、前記エジェクタプレートの前記可動側取付板と対向する面とは異なる面に、前記エジェクタプレートと前記可動側取付板との間と連通する第1孔を備える請求項に記載の判定装置。
【請求項3】
前記真空圧測定部は、前記エジェクタプレートが、成形品を押し出すために前記可動側取付板から離反する方向へ移動した後、所定位置まで戻ってくるときに、真空圧を測定する請求項またはに記載の判定装置。
【請求項4】
前記位置判定部は、前記エジェクタプレートが前記所定位置まで戻ってきたときに前記真空圧測定部により測定した真空度が所定値より低い場合、異常と判定する請求項に記載の判定装置。
【請求項5】
射出成形装置の成形に関わる可動部品の位置を判定する判定装置であって、
検知対象の可動部品と該可動部品が所定位置にあるときに当接する当接部品との間を真空引きしたときの真空圧を測定する真空圧測定部と、
前記真空圧測定部が測定した真空圧に基づき、前記可動部品の位置を判定する位置判定部と、を備え、
前記射出成形装置は、アンダーカット形状の成形品を生成するものであり、
前記可動部品は、スライドコアであり、前記当接部品は前記スライドコアが摺動自在に載置される基台であって、
前記スライドコアは、金型が開いた状態で前記基台の載置面の第1位置と当接し、前記金型が閉じた状態で前記基台の載置面の第2位置と当接するものであり、
前記位置判定部は、前記スライドコアが、金型が開いた状態で前記第1位置と当接する位置にあるか否か、および前記金型が閉じた状態で前記第2位置と当接する位置にあるか否かを判定する、判定装置。
【請求項6】
前記基台は、前記金型が閉じている状態で前記スライドコアとの間と連通する第2孔、および、前記金型が開いている状態で前記スライドコアとの間と連通する第3孔を有する、請求項に記載の判定装置。
【請求項7】
前記位置判定部は、
前記金型が閉じている状態のとき、前記第2孔を通して真空引きしたときに、前記真空圧測定部により測定した真空度が所定値より低い場合、異常と判定し、
金型が開いている状態のとき、前記第3孔を通して真空引きしたときに、前記真空圧測定部により測定した真空度が所定値より低い場合、異常と判定する、請求項に記載の判定装置。
【請求項8】
射出成形装置の成形に関わる可動部品の位置を判定する判定方法であって、
検知対象の可動部品と該可動部品が所定位置にあるときに当接する当接部品との間を真空引きしたときの真空圧を測定する真空圧測定ステップと、
前記真空圧測定ステップにおいて測定した真空圧に基づき、前記可動部品の位置を判定する位置判定ステップと、を含み、
前記可動部品は、エジェクタプレートであり、前記当接部品は可動側取付板であって、
前記位置判定ステップでは、前記エジェクタプレートが成形品を押し出した後、該エジェクタプレートが前記可動側取付板と当接する位置に戻ったか否かを判定する判定方法。
【請求項9】
射出成形装置の成形に関わる可動部品の位置を判定する判定方法であって、
検知対象の可動部品と該可動部品が所定位置にあるときに当接する当接部品との間を真空引きしたときの真空圧を測定する真空圧測定ステップと、
前記真空圧測定ステップにおいて測定した真空圧に基づき、前記可動部品の位置を判定する位置判定ステップと、を含み、
前記射出成形装置は、アンダーカット形状の成形品を生成するものであり、
前記可動部品は、スライドコアであり、前記当接部品は前記スライドコアが摺動自在に載置される基台であって、
前記スライドコアは、金型が開いた状態で前記基台の載置面の第1位置と当接し、前記金型が閉じた状態で前記基台の載置面の第2位置と当接するものであり、
前記位置判定ステップでは、前記スライドコアが、金型が開いた状態で前記第1位置と当接する位置にあるか否か、および前記金型が閉じた状態で前記第2位置と当接する位置にあるか否かを判定する判定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、射出成形装置の金型のエジェクタプレート等の位置を判定する判定装置および判定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
射出成形装置の金型を連続使用すると、エジェクタピン、エジェクタスリーブ等の摺動面に異常摩耗、いわゆる「かじり」が発生することが知られている。摺動面の摩耗が進行し、かじりが発生すると、キャビティやコアに修理をすることができない致命的なダメージを与え、高価な金型を破損してしまう。このため、かじりが発生する前に摺動面の異常をできる限り早期に発見し、修理ができるうちに対処する必要がある。
【0003】
例えば、下記の特許文献1には、金型のパーティング面に異物を挟み込んで金型を破損することを防ぐために、パーティング面の間に密閉した排気通路を形成し、真空引きする技術が開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、金型の破損を防止するために、金型内突出板(エジェクタプレート)の突出前進限位置を設定する技術が開示されている。
【0005】
また、特許文献3には、金型内の空気やガスによって発生する成形不良を防止するために、周壁状に構成されたスペーサブロックの内側を真空チャンパとして常時真空吸引(真空引き)することにより、キャビティ部を効率よく真空吸引する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平11-070545号公報
【文献】特許第3228779号公報
【文献】特開2009-166284号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1に記載の技術では、摺動不具合によるエジェクタピンの突出等による、型締め時の金型の破損を防止することができない。また、特許文献2に記載の技術は、オペレータの操作ミスを防ぐことが目的であり、摺動不具合によるエジェクタプレートの位置異常には対応していない。また、特許文献3に記載の技術は、金型内の空気やガスによって発生する成形不良を防止するために、キャビティ部内を真空引きするものであって、金型の摺動不具合を検知することはできない。
【0008】
本発明の一態様は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、摺動不具合を早期に検知して金型の破損を防止することができる判定装置および判定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る判定装置は、射出成形装置の成形に関わる可動部品の位置を判定する判定装置であって、検知対象の可動部品と該可動部品が所定位置にあるときに当接する当接部品との間を真空引きしたときの真空圧を測定する真空圧測定部と、前記真空圧測定部が測定した真空圧に基づき、前記可動部品の位置を判定する位置判定部とを備える。
【0010】
前記の構成によれば、可動部品と当接部品とが当接していれば、可動部品と当接部品との間の真空度は高くなり、当接していなければ、その分、真空度は低くなる。よって、前記の構成によれば、可動部品と当接部品との間の真空圧から可動部品の位置を判定することができる。また、可動部品と当接部品とが当接する位置に可動部品があるか否かを判定することができる。
【0011】
前記の判定装置では、前記可動部品は、エジェクタプレートであり、前記当接部品は可動側取付板であって、前記位置判定部は、前記エジェクタプレートが成形品を押し出した後、該エジェクタプレートが前記可動側取付板と当接する位置に戻ったか否かを判定してもよい。
【0012】
前記の構成によれば、エジェクタプレートが可動側取付板と当接する位置に戻っているか否かを判定することができる。
【0013】
前記の判定装置では、前記可動側取付板の前記エジェクタプレートと対向する面とは異なる面、または、前記エジェクタプレートの前記可動側取付板と対向する面とは異なる面に、前記エジェクタプレートと前記可動側取付板との間と連通する第1孔を備えてもよい。
【0014】
前記の構成によれば、第1孔を用いて、エジェクタプレートと可動側取付板との間を真空引きすることができる。
【0015】
前記の判定装置では、前記真空圧測定部は、前記エジェクタプレートが、成形品を押し出すために前記可動側取付板から離反する方向へ移動した後、所定位置まで戻ってくるときに、真空圧を測定してもよい。
【0016】
前記の構成によれば、エジェクタプレートが所定の位置に戻るタイミングで、エジェクタプレートと可動側取付板との間の真空圧を測定するので、エジェクタプレートが所定の位置に戻ったか否かを適切に判定することができる。
【0017】
前記の判定装置では、前記位置判定部は、前記エジェクタプレートが前記所定位置まで戻ってきたときに前記真空圧測定部により測定した真空度が所定値より低い場合、異常と判定してもよい。
【0018】
前記の構成によれば、エジェクタプレートが適切な位置に戻っていない場合、異常と判定することができる。
【0019】
前記の判定装置では、前記射出成形装置は、アンダーカット形状の成形品を生成するものであり、前記可動部品は、スライドコアであり、前記当接部品は前記スライドコアが摺動自在に載置される基台であって、前記スライドコアは、金型が開いた状態で前記基台の載置面の第1位置と当接し、前記金型が閉じた状態で前記基台の載置面の第2位置と当接するものであり、前記位置判定部は、前記スライドコアが、金型が開いた状態で前記第1位置と当接する位置にあるか否か、および前記金型が閉じた状態で前記第2位置と当接する位置にあるか否かを判定してもよい。
【0020】
前記の構成によれば、金型が開いた状態または該金型が閉じた状態において、スライドコアが基台の載置面の適切な位置にあるか否かを判定できる。
【0021】
前記の判定装置では、前記基台は、前記金型が閉じている状態で前記スライドコアとの間と連通する第2孔、および、前記金型が開いている状態で前記スライドコアとの間と連通する第3孔を有してもよい。
【0022】
前記の構成によれば、第2孔および第3孔を用いて、スライドコアと基台の載置面との間を真空引きすることができる。
【0023】
前記の判定装置では、前記位置判定部は、前記金型が閉じている状態のとき、前記第2孔を通して真空引きしたときに、前記真空圧測定部により測定した真空度が所定値より低い場合、異常と判定し、金型が開いている状態のとき、前記第3孔を通して真空引きしたときに、前記真空圧測定部により測定した真空度が所定値より低い場合、異常と判定してもよい。
【0024】
前記の構成によれば、金型が開いている状態、および金型閉じている状態において、スライドコアが適切な位置にない場合、異常と判定することができる。
【0025】
また、前記の課題を解決するために、本開示の一態様における判定方法は、射出成形装置の成形に関わる可動部品の位置を判定する判定方法であって、検知対象の可動部品と該可動部品が所定位置にあるときに当接する当接部品との間を真空引きしたときの真空圧を測定する真空圧測定ステップと、前記真空圧測定部が測定した真空圧に基づき、前記可動部品の位置を判定する位置判定ステップと、を含む。
【発明の効果】
【0026】
本発明の一態様によれば、摺動不良を早期に検知して金型の破損を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の実施形態1に係る判定装置の要部構成の一例を示すブロック図である。
図2図1に示される金型を型開きして、成形品を取出す状態の一例を説明する図である。
図3図1に示される金型に摺動不具合が発生した状態の一例を説明する図である。
図4図2に示される金型の排気孔の構造の一例を示す図である。
図5】本発明の実施形態1に係る2経路の判定装置の外観の一例を示す図である。
図6】本発明の実施形態1に係る3経路の判定装置の外観の一例を示す図である。
図7図1に示される判定装置制御部が実行する処理の一例を示すフローチャートである。
図8】本発明の実施形態1に係る判定装置の性能を、従来と比較して示す図である。
図9】本発明の実施形態1に係る判定装置の性能を、従来と比較して示すグラフである。
図10】本発明の実施形態2に係る金型を型開きして、成形品を取出す状態の一例を説明する図である。
図11図10に示される金型を型締めした状態の一例を説明する図である。
図12図10に示される金型に摺動不具合が発生した状態の一例を説明する図である。
図13図10に示される金型に摺動不具合が発生した状態の他の一例を説明する図である。
図14図10に示される金型に摺動不具合が発生した状態の他の一例を説明する図である。
図15図10に示される金型に摺動不具合が発生した状態の他の一例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
〔実施形態1〕
以下、本発明の一側面に係る実施の形態を、図面に基づいて説明する。なお、以下では、本発明を金型のエジェクタプレートの位置の検知に適用した例に基づいて説明するが、特許請求の範囲に記載の本発明の構成は、金型の他にも、真空圧により位置を検知することが可能な種々の製造装置・製品等に適用可能である。
【0029】
<金型の概要>
図2は、本発明の実施形態1に係る金型3を型開きして、成形品317を取出す状態の一例を説明する図である。図2に示すように、金型3は、固定側型板(キャビティプレート)311、固定側取付板312、可動側型板(コアプレート)313、可動側取付板(当接部品)314、エジェクタ機構32を備える。また、金型3は、可動側取付板314に形成された測定用開口部333に接続されたホース334を介して、真空発生部12と接続される。測定用開口部333については、図4に基づいて詳述する。
【0030】
固定側型板311は、固定側取付板312を介して射出成形装置2の図示しない射出装置に取付けられる。固定側型板311および固定側取付板312の内部には、それぞれスプール316が連なって形成される。射出装置から射出された溶融樹脂等からなる成形材料は、スプール316を通って、後述するキャビティ部318内に提供される。
【0031】
可動側型板313は、スペーサブロック315を介して、可動側取付板314に取付けられる。可動側型板313は、固定側型板311と対向するように設置される。可動側型板313は、型締めの際に、図示しない駆動装置によって、固定側型板311に近接する方向へ移動する。このとき、可動側型板313の固定側型板311と対向する面313aは、固定側型板311の可動側型板313と対向する面311aと当接する。
【0032】
これによって、可動側型板313と固定側型板311との間の空隙部にキャビティ部318が形成される。上述したように、キャビティ部318内に射出装置から成形材料が提供された後、成形材料は冷却され、キャビティ部318内面の形状に成形されることにより、成形品317が生成される。
【0033】
その後、可動側型板313は、駆動装置によって固定側型板311と離反する方向へ移動し型開きが行われる。このとき、成形品317はエジェクタ機構32によって、可動側型板313の表面から押し出され、金型3から離形して取出される。
【0034】
エジェクタ機構32は、エジェクタプレート(可動部品)321、エジェクタロッド322、エジェクタスリーブピン323、エジェクタコアピン324、リターンピン325、図示しないサーボモータを備える。エジェクタプレート321は、上側エジェクタプレート321a、下側エジェクタプレート321bを備える。エジェクタプレート321は、成形品317を取出すとき以外は、下側エジェクタプレート321bが可動側取付板314と互いに当接する位置(以下、「正常位置」という)に配置される。
【0035】
エジェクタスリーブピン323およびリターンピン325は、エジェクタプレート321に取付けられ、可動側型板313に形成された貫通孔にそれぞれ挿通される。エジェクタスリーブピン323およびリターンピン325は、後述するエジェクタプレート321の移動に連動して、可動側型板313の貫通孔内を摺動する。
【0036】
エジェクタプレート321は、エジェクタロッド322を介してサーボモータと接続され、型開きの際に、上述したように、可動側型板313に近接する方向へ移動する。これにより、エジェクタプレート321に取付けられたエジェクタスリーブピン323の先端部は、可動側型板313の表面から突出し、可動側型板313の表面に張り付いている成形品317を押し出して取出すことができる。
【0037】
成形品317を取出した後、次の成形品317を生成するため、金型3は再び型締めされる。このとき、エジェクタプレート321は、リターンピン325に装着されたスプリング326の付勢力によって、正常位置に戻される。エジェクタプレート321に取付けられたエジェクタスリーブピン323も、エジェクタプレート321に連動して戻され、エジェクタスリーブピン323の先端部は、再び可動側型板313の貫通孔内に収容される。このため、金型3を型締めしても、エジェクタスリーブピン323の先端部が固定側型板311のキャビティ部318に当たって、キャビティ部318を破損することはない。
【0038】
金型3が再び型締めされた後、次の成形品を生成するために、射出装置からキャビティ部318内に成形材料が射出される。このように、射出成形装置2は、型締め、射出、冷却、型開き、取出し等という成形サイクルを繰り返す。
【0039】
<摺動面の異常摩耗>
次に、エジェクタ機構32について、より詳細に説明する。エジェクタスリーブピン323は略筒状に構成され、全長にわたって、内部にエジェクタコアピン324が挿入される貫通孔が形成される。
【0040】
エジェクタコアピン324は、基端部が可動側取付板314に固定されるため、エジェクタプレート321に取付けられたエジェクタスリーブピン323のように、エジェクタプレート321の動きに連動して移動することはない。このため、エジェクタスリーブピン323が、エジェクタプレート321の動きに連動して移動する際に、固定されたエジェクタコアピン324の外周面を、エジェクタスリーブピン323の内周面が摺動することになる。これによって、エジェクタスリーブピン323とエジェクタコアピン324との摺動面に、特に、異常摩耗が発生しやすくなる。
【0041】
詳細に説明すると、エジェクタスリーブピン323とエジェクタコアピン324との摺動部は、僅かなクリアランスを有しており、エジェクタスリーブピン323またはエジェクタコアピン324の位置が僅かにずれた場合、異常摩耗が発生しやすくなる。また、高温の溶融樹脂等からなる成形材料から発生するガスによって、エジェクタスリーブピン323やエジェクタコアピン324に付着物が付着したり、熱膨張により摺動面が互いに強く当たりすぎたり、局部接触(部分接触)し、異常摩耗が発生しやすくなる。
【0042】
なお、スリーブ機構を備えないエジェクタピンであっても、エジェクタピンと可動側型板313との摺動面に異常摩耗が発生する可能性がある。また、これに限らず、金型3の摺動面であれば、異常摩耗が発生する可能性がある。
【0043】
図3は、本発明の実施形態1に係る金型3に摺動不具合が発生した状態の一例を説明する図である。
【0044】
図3に示すように、例えば、エジェクタスリーブピン323とエジェクタコアピン324との摺動面に異常摩耗が発生すると、エジェクタスリーブピン323とエジェクタコアピン324との間に摺動抵抗が発生して滑りが悪くなる。このため、型締めの際に、リターンピン325に装着されたスプリング326の付勢力によっても、エジェクタプレート321は正常位置まで戻らなくなる。
【0045】
これにより、エジェクタプレート321が戻りきらなかった長さ、すなわち、実際に戻った位置と正常位置との長さの差分W1と同じ長さ分、エジェクタスリーブピン323の先端部は、可動側型板313の表面から突出する。
【0046】
この状態で金型3を型締めすると、突出したエジェクタスリーブピン323の先端部が固定側型板311のキャビティ部318に当たってキャビティ部318を破損してしまう。また、リターンピン325が摺動抵抗により戻りきらなかった場合も、リターンピン325が固定側型板311に当たってキャビティ部318を備える固定側型板311を破損してしまう。
【0047】
<装置構成>
図1は、本発明の実施形態1に係る判定装置1の要部構成の一例を示すブロック図である。
【0048】
判定装置1は、エジェクタプレート321と可動側取付板314との間を真空引きしたときの真空圧に基づいて、エジェクタプレート321の戻り度合を判定する装置である。判定装置1は、上述した長さW1が僅かな数値であっても、(例えば、0.04mm等)精度よく測定することができる。これにより、金型3の摺動不具合を早期に検知して、金型3の破損を防止することができる。
【0049】
図1に示すように、判定装置1は、判定装置制御部11、真空発生部12、真空計13、各種情報を表示する表示部14、異常時に異常が発生したことをユーザに報知する異常報知部15を備える。異常報知部15は、音声や警報音等を出力するスピーカ、点滅等により異常を知らせるLED、インジケータ等を備える。
【0050】
判定装置1は、異常報知部15を備えない構成としてもよい。また、真空発生部12を、判定装置1と別個の構成としてもよい。
【0051】
判定装置制御部11は、判定装置1の各部を統括して制御する。真空発生部12は、エジェクタプレート321と可動側取付板314との間を真空引きし、真空計13は真空圧を測定する。
【0052】
判定装置制御部11は、真空発生部制御部111、真空圧測定部112、位置判定部113、異常報知制御部114、表示制御部115を備える。
【0053】
真空発生部制御部111は、射出成形装置2が動作している間、常に真空引きが行われるよう、真空発生部12を制御する。また、真空発生部制御部111は、真空圧測定部112が真空圧を測定するときのみ真空引きをしてもよい。また、真空引きをするか否かを任意のタイミングで切り替えることができるよう、判定装置1は、切り替えスイッチ等をさらに備えてもよい。
【0054】
真空圧測定部112は、エジェクタプレート321が正常位置または可動側取付板314に最も接近する位置まで戻ったとき、エジェクタプレート321と可動側取付板314との間の真空圧を測定する。真空圧測定部112は、エジェクタプレート321を駆動させるサーボモータに取付けられたエンコーダからの信号に基づいて、エジェクタプレート321が戻ったことを検知する。測定された真空圧は、表示制御部115を介して、表示部14に表示する。
【0055】
位置判定部113は、真空圧測定部112によって測定された真空圧に基づいてエジェクタプレート321の戻り度合を判定する。
【0056】
図2および図3に示すように、可動側取付板314には、エジェクタプレート321と対向する面に一方の開口部332を備え、真空発生部12へ気体を排出するホース334が接続される他方の開口部である測定用開口部333を備える排気孔(第1孔)331が形成される。
【0057】
排気孔331は、エジェクタプレート321側に形成されてもよい。この場合、エジェクタプレート321は、可動側取付板314と対向する面に一方の開口部332を備え、真空発生部12へ気体を排出するホース334が接続される他方の開口部である測定用開口部333および排気孔331が形成される。
【0058】
エジェクタプレート321が正常位置にあるとき、開口部332はエジェクタプレート321により塞がれているため、真空度は高くなる。真空度とは、真空の度合を示すものであり、真空度が高いほど、より真空に近いことを示す。一方、エジェクタプレート321が摺動抵抗により正常位置まで戻りきらず可動側取付板314と当接していない場合、エジェクタプレート321と可動側取付板314との間に隙間が生じ、真空度は低くなる。
【0059】
位置判定部113は、真空圧測定部112によって測定された真空度が所定値より低い場合に、エジェクタプレート321の位置が異常であると判定する。例えば、エジェクタプレート321が正常位置にあるときの真空圧が-70kPaであるとき、閾値(所定値)を-65kPaと予め設定する。位置判定部113は、真空度が閾値-65kPaより低くなった場合、異常であると判定する。
【0060】
また、金型制御部30は、エジェクタプレート321を移動させるサーボモータを制御するサーボモータ制御部301、可動側取付板314を移動させ、型締めと型開きを制御する駆動装置制御部302を備える。
【0061】
エジェクタプレート321の位置が異常であると判定した位置判定部113は、その旨を異常報知制御部114へ通知する。通知を受けた異常報知制御部114は、金型制御部30の駆動装置制御部302へ異常の発生を通知し、駆動装置制御部302は、型締め動作を停止させる。
【0062】
これにより、金型3の摺動不具合を早期に検知し、金型3の動作を停止させ、金型3が破損する前に金型3を修理することができる。
【0063】
異常報知制御部114は、表示制御部115を介して、表示部14に異常が発生した旨を表示させてもよい。また、異常報知制御部114は、異常報知部15を介して、異常が発生したことを音声や警報音、LEDの点滅、インジケータ等によりユーザに通知してもよい。
【0064】
<測定用開口部>
図4は、図2および図3に示される金型3の排気孔331の構造の一例を示す図である。
【0065】
図4の真中の図は、金型3を可動側取付板314側から見た背面図であり、図4の左側の図および右側の図は、金型3の一部を切り欠いた両側面図である。
【0066】
図4に示すように、可動側取付板314の両側面には、2つの排気孔331a、331bがそれぞれ形成される。2つの排気孔331a、331bは、エジェクタプレート321と対向する面に一方の開口部332a、332bを備え、真空発生部12へ気体を排出するホース334が接続される他方の開口部である測定用開口部333a,333bをそれぞれ備える。
【0067】
なお、以降の説明において、開口部332a、332bなどを互いに区別せず、総称する目的で記載するときは、開口部332と記載する。測定用開口部333、排気孔331についても同様に記載する。
【0068】
測定用開口部333a,333bは、ホース334を介してそれぞれ別個に判定装置1に接続される。また、排気孔331a、331bは、互いに接続されたり交差することがなく、独立して形成され、測定用開口部333a,333bおよび開口部332a、332bを共有しない。
【0069】
これにより、各測定用開口部333a,333bにおいて、真空圧をより正確に測定することができる。
【0070】
なお、これに限らず、排気孔331a、331bが互いに接続・交差する構造を有していてもよいし、測定用開口部333a,333bおよび開口部332a、332bを共有してもよい。
【0071】
また、測定用開口部333a,333bは、上下に位置をずらして形成される。具体的には、測定用開口部333aは、可動側取付板314のやや上方、測定用開口部333bは、やや下方に形成される。
【0072】
これにより、互いに当接するエジェクタプレート321と可動側取付板314との間に撓みや歪み等があっても、測定位置をずらすことによって、より全体の状況を正確に把握することができる。
【0073】
排気孔331は、例えば、略L字状に曲がって形成される。排気孔331は、まず測定用開口部333から可動側取付板314の側表面に対して略垂直方向に孔が形成される。それからエジェクタプレート321に近接する方向へ略直角に曲がり、エジェクタプレート321に対向する面で開口部332が形成される。
【0074】
なお、排気孔331は、測定用開口部333と開口部332とを連通するものであればよく、略L字状に限定されない。
【0075】
図4に示す例では、測定用開口部333の数が2つある例について説明したが、これに限らず、金型3の大きさや金型3の形状によって、測定用開口部333の数は1つでも良いし、3つ以上形成されてもよい。
【0076】
これにより、様々な形状、大きさの金型3において、それぞれ適当な数、適当な箇所に測定用開口部333等を設けることができ、各金型3について、より正確な真空圧を測定することができる。
【0077】
<判定装置の外観>
図5は、本発明の実施形態1に係る2経路の判定装置1の外観の一例を示す図である。図6は、本発明の実施形態1に係る3経路の判定装置1の外観の一例を示す図である。
【0078】
図5に示される判定装置1は、2つの表示部14を備え、同時に2か所の真空圧を監視することができる。また、図6に示される判定装置1は、3つの表示部14を備え、同時に3か所の真空圧を監視することができる。
【0079】
また、表示部14は、異常が発生したときに、異常が発生した旨を表示してもよい。判定装置1は、上記の他に異常を報知する種々のインジケータ、LED等を備えてもよい。
【0080】
<処理の流れ>
図7に基づいて、判定装置制御部11における処理の流れの一例を説明する。図7は、図1に示される判定装置制御部11が実行する処理の一例を示すフローチャートである。
【0081】
まず、射出成形装置2による成形サイクルが開始され、真空発生部制御部111は、射出成形装置2が動作している間、常に真空引きが行われるよう、真空発生部12を制御する(S1)。また、真空発生部制御部111は、真空圧測定部112が真空圧を測定するときのみ真空引きが行われるよう、真空発生部12を制御してもよい。また、真空引きをするか否かを切り替える、切り替えスイッチが操作されるのを検知したときに、真空引きが行われるよう、真空発生部12を制御してもよい。
【0082】
金型制御部30は、金型3の動作を制御して、型締め・成形材料の充填・型開き・成形品317の取出しを行う(S2)。
【0083】
真空圧測定部112は、成形品317の取出し後、エジェクタプレート321が戻ったか否かを判断する(S3)。真空圧測定部112により、エジェクタプレート321が戻ったと判断された場合(S3でYES)、真空圧測定部112は、真空圧を測定する(S4:真空圧測定ステップ)。
【0084】
一方、戻っていないと判断された場合(S3でNO)、真空圧測定部112はエジェクタプレート321が戻るまで待機する。
【0085】
位置判定部113は、真空圧測定部112により測定された真空圧が、閾値より真空度が高いか判断する(S5)。閾値より真空度が高いと判断された場合、位置判定部113は、異常なしと判定し(S5でYES:位置判定ステップ)、次サイクルへ移行して(S6)、再び金型制御部30による、型締め・成形材料の充填・型開き・成形品317の取出しの制御が行われる(S2)。
【0086】
一方、閾値より真空度が低いと判断された場合、位置判定部113は異常ありと判定し(S5でNO:位置判定ステップ)、異常報知制御部114へ通知する。異常報知制御部114は、金型3の駆動装置制御部302に停止信号を送り(S7)、金型3の動作を停止させ(S8)、処理を終了する。
【0087】
これにより、金型3の摺動不具合を早期に検知し、金型3の動作を停止させ、金型3が破損する前に金型3を修理することができる。
【0088】
<性能>
図8は、本発明の実施形態1に係る判定装置1の性能を、従来と比較して示す図である。
【0089】
従来、エジェクタプレート321の戻り度合の判定には、リミットスイッチ、近接スイッチ、カメラ等が用いられてきた。リミットスイッチは温度・振動等の耐環境性に優れており、近接スイッチは物体の接近等を非接触で検知する。カメラは、パーティング面等の画像からエジェクタピン等の突出の有無を判定する。
【0090】
図8に示すように、リミットスイッチはコストが安く、約400℃と耐熱性能に優れているが、測定精度が他の装置と比較して低く約1.0mmである。近接スイッチは、測定精度が約0.5mmと比較的高いが、耐熱性能は低く約150℃である。金型3は、溶融樹脂等を成形材料として使用するため、成形材料によって金型3内は非常に高温となる。この場合、近接スイッチを使用することはできない。カメラは、測定精度が約0.35mmと他の装置と比較して一番高く、耐熱性能も約300℃と優れているが、非常に高価である。
【0091】
判定装置1が採用する真空圧による検知では、測定精度が約0.04mmと他の装置と比較して非常に高く、耐熱性能も約300℃と優れており、コストもカメラのように高価ではない。
【0092】
上記のことから、判定装置1は、他の従来装置と比較して、測定精度が非常に高く、耐熱性能も優れており、コストも高くないという利点を有する。
【0093】
図9は、本発明の実施形態1に係る判定装置の性能を、従来と比較して示すグラフである。当該グラフは、金型のエジェクタプレートと可動側取付板との間に種々の厚みを有するシクネスゲージを挿入して隙間を作り出し、エジェクタプレートと可動側取付板との間の真空圧を測定した結果を示したものである。
【0094】
金型は、真空圧の閾値が-60kPaに設定された金型Aと、-70kPaに設定された金型Bとを使用した。真空圧の閾値とは、上述したように、エジェクタプレートが正常位置にあるときの真空圧に基づいて、金型ごとに設定したものである。
【0095】
図9に示すように、金型A、金型Bともに、閾値における隙間の長さは約0.04mmであり、カメラの測定精度約0.35mmと比較しても、非常に高いことがわかる。
【0096】
これにより、判定装置1は、摺動面の不具合を非常に早期に発見することができ、金型が破損する前に修理をすることができる。
【0097】
〔実施形態2〕
本発明の他の実施形態について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0098】
図10は、本発明の実施形態2に係る金型3を型開きして、成形品317を取出す状態の一例を説明する図である。図11は、図10に示す金型3を型締めした状態の一例を説明する図である。なお、説明に不要な部品は図示を省略している。
【0099】
金型3は、実施形態1に係る金型と相違し、アンダーカット形状の成形品317を生成する金型である。アンダーカット形状とは、成形品が穴や窪み等を有するため、通常の型開きでは金型から取りだせない形状のことである。
【0100】
図10および図11に示すように、金型3は、固定側型板311、可動側型板313、エジェクタプレート321、エジェクタピン345を備える。また、金型3は、実施形態1に係る金型が備えない一対のスライドコア(可動部品)341、一対の基台(当接部品)342、および一対のアンギュラピン344を備える。
【0101】
一対のスライドコア341は、それぞれ、先端に円柱状の突起341aを有し、摺動自在に基台342の載置面に載置される。一対の基台342は、それぞれ、第1の貫通孔(第3孔)346aおよび第2の貫通孔(第2孔)346bが形成される。
【0102】
以下、スライドコア341、基台342、およびアンギュラピン344は、それぞれ左右対称に一対に構成されており、同様の構成であり、同様の動作を行うが、特に一対であることを説明する必要が無い場合、便宜上、一方のみについて説明する。
【0103】
第1の貫通孔346aは、スライドコア341と対向する面に一方の開口部346a1を備え、ホース334を介して真空発生部12が接続される他方の開口部である第1検出用開口部346a2を備える。第2の貫通孔346bは、スライドコア341と対向する面に一方の開口部346b1を備え、ホース334を介して真空発生部12が接続される他方の開口部である第2検出用開口部346b2を備える。
【0104】
真空発生部12は、スライドコア341と基台342との間を真空引きする。
【0105】
スライドコア341および基台342は、それぞれ、アンギュラピン344が挿通する挿通孔344a、344bを備える。
【0106】
型締めの際に、可動側型板313は、図示しない駆動装置によって、固定側型板311に近接する方向へ移動する。このとき、基台342に載置された一対のスライドコア341も、斜めに配置されたアンギュラピン344に沿って、固定側型板311に近接する方向へ移動するとともに、互いに近接する方向へ移動する。
【0107】
可動側型板313の固定側型板311と対向する面313aは、固定側型板311の可動側型板313と対向する面311aと当接し、可動側型板313、固定側型板311、および一対のスライドコア341との間の空隙部にキャビティ部318が形成される。
【0108】
キャビティ部318内に射出装置から成形材料が、スプール316を通って、提供された後、成形材料は冷却され、キャビティ部318内面の形状に成形されることにより、成形品317が生成される。成形品317は、スライドコア341が先端に備える円柱状の突起341aによって、内部に円筒状の孔が形成される。
【0109】
<位置判定>
一対のスライドコア341は、型開きの状態において、基台342の載置面上を、互いに離反する方向に移動した位置(以下、「型開き位置(第1位置)」という)にあるとき、スライドコア341は、第1の貫通孔346aの開口部346a1を塞ぐように配置される。第1検出用開口部346a2に接続された真空発生部12は、スライドコア341と基台342との間を真空引きする。真空圧測定部112は、真空引きしたときの真空圧を測定し、位置判定部113は、当該真空圧に基づいてスライドコア341が型開き位置にあるか否かを判定する。
【0110】
一対のスライドコア341は、型締めの状態において、基台342の載置面上を、互いに近接する方向に移動した位置(以下、「型締め位置(第2位置)」という)にあるとき、スライドコア341は、第2の貫通孔346bの開口部346b1を塞ぐように配置される。第2検出用開口部346b2に接続された真空発生部12は、スライドコア341と基台342との間を真空引きする。真空圧測定部112は、真空引きしたときの真空圧を測定し、位置判定部113は、当該真空圧に基づいてスライドコア341が型締め位置にあるか否かを判定する。
【0111】
<摺動不具合>
図12図13図14および図15は、図10に示される金型3に摺動不具合が発生した状態の例を説明する図である。
【0112】
図12は、成形品317を取出した後、摺動面の異常摩耗のためエジェクタプレート321が戻らず、突出したエジェクタピン345によりスライドコア341の先端部が破損する例を示している。
【0113】
図12の場合、実施形態1で示した、可動側取付板314とエジェクタプレート321との間を真空引きする方法により、エジェクタプレート321の位置の異常を検知することができる。
【0114】
詳細に説明すると、真空圧測定部112は、可動側取付板314の測定用開口部333に接続された真空発生部12によって、エジェクタプレート321と可動側取付板314との間を真空引きしたときの真空圧を測定する。測定した真空圧が、閾値より真空度が低いか否かにより、位置判定部113は、エジェクタプレート321の位置の異常を検知することができる。
【0115】
図13は、型開きして成形品317を取出す際、摺動面の異常摩耗のためスライドコア341が型開き位置まで戻っていなかったため、次の型締め時において、アンギュラピン344とスライドコア341がぶつかり、金型3が破損する例を示している。
【0116】
この場合、真空圧測定部112は、第1の貫通孔346aの第1検出用開口部346a2に接続された真空発生部12によって、スライドコア341と基台342との間を真空引きしたときの真空圧を測定する。測定した真空圧が、閾値より真空度が低いか否かにより、位置判定部113は、スライドコア341の位置の異常を検知することができる。
【0117】
図14は、型締めして成形材料を射出する際、摺動面の異常摩耗のためスライドコア341が型締め位置まで戻っていなかったため、ロッキングブロック347とスライドコア341がぶつかり、金型3が破損する例を示している。なお、図14および図15に示す一対のスライドコア341は、図示しないシリンダによって、互いに近接する方向または離反する方向へ移動する。
【0118】
この場合、真空圧測定部112は、第2の貫通孔346bの第2検出用開口部346b2に接続された真空発生部12によって、スライドコア341と基台342との間を真空引きしたときの真空圧を測定する。測定した真空圧が、閾値より真空度が低いか否かにより、位置判定部113は、スライドコア341の位置の異常を検知することができる。
【0119】
図15は、型開きして成形品317を取出す際、摺動面の異常摩耗のためスライドコア341が型開き位置まで戻っていなかったため、スライドコア341の突起341a、エジェクタピン345、成形品317が破損する例を示している。
【0120】
この場合、真空圧測定部112は、第1の貫通孔346aの第1検出用開口部346a2に接続された真空発生部12によって、スライドコア341と基台342との間を真空引きしたときの真空圧を測定する。測定した真空圧が、閾値より真空度が低いか否かにより、位置判定部113は、スライドコア341の位置の異常を検知することができる。
【0121】
このように、アンダーカット形状の成形品317を生成する金型3であっても、判定装置1は、摺動不良を早期に検知して金型3の破損を防止することができる。
【0122】
また、射出成形装置2は、上述したように、金型3を横方向に開閉する横型であってもよいし、縦方向に開閉する縦型であってもよい。また、上述したように、固定側型板311と可動側型板313とを含むいわゆる2プレートタイプであってもよいし、ランナーストリッパープレートを含むいわゆる3プレートタイプであってもよい。
【0123】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0124】
1 判定装置
2 射出成形装置
112 真空圧測定部
113 位置判定部
314 可動側取付板(当接部品)
317 成形品
321 エジェクタプレート(可動部品)
331 排気孔(第1孔)
341 スライドコア(可動部品)
342 基台(当接部品)
346a 第1の貫通孔(第3孔)
346b 第2の貫通孔(第2孔)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15