(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-16
(45)【発行日】2023-08-24
(54)【発明の名称】検定を行う装置
(51)【国際特許分類】
G01N 35/00 20060101AFI20230817BHJP
G01N 37/00 20060101ALI20230817BHJP
【FI】
G01N35/00 D
G01N37/00 101
(21)【出願番号】P 2020503045
(86)(22)【出願日】2018-07-20
(86)【国際出願番号】 GB2018052054
(87)【国際公開番号】W WO2019016562
(87)【国際公開日】2019-01-24
【審査請求日】2021-07-13
(32)【優先日】2017-07-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】516120722
【氏名又は名称】マスト グループ リミティド
(74)【代理人】
【識別番号】100112874
【氏名又は名称】渡邊 薫
(72)【発明者】
【氏名】ウォング ケン ジン
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアムズ デイビッド ヒュー
【審査官】野田 華代
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-064753(JP,A)
【文献】特表平06-507835(JP,A)
【文献】国際公開第2017/085472(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/019625(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0295366(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0195523(US,A1)
【文献】特表2017-523907(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 35/00-37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気ビーズを含む微小流体システム中で検定を行う装置であって、
微小流体システムを装着することができる基台、
前記基台は前記微小流体システムを含む検定円盤を受け、かつ前記検定円盤を制御可能に回転させるようになっている回転盤を含み、
磁石を有し、微小流体システムが前記基台に装着されると前記微小流体システム内に入っている磁気ビーズの動きに直接に影響を及ぼすようになっている1つ以上の作動部、お よび
前記1つ以上の磁石と装着後の前記微小流体システムの相対的動きと、前記1つ以上の作動部と前記回転盤とを制御して、前記基台に装着された前記微小流体システムを横断する望ましい進路を前記磁石がたどることができるようになっている制御手段を含み、
前記作動部は回転作動部を含み、
前記磁石は前記基台に装着された前記微小流体システムの任意のx座標およびy座標に配置可能で、前記装置はさらに
前記基台に装着された前記微小流体システムを段階的に動かす手段を含む、装置。
【請求項2】
前記装置は、前記基台に装着された前記微小流体システムを回転可能に動かす手段を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記基台に装着された前記微小流体システムの前記段階的な動きは不連続な回転により達成される、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記作動部は直進作動部を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の装置。
【請求項5】
前記装置は1つの駆動軸表面に回転作動部と直進作動部を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の装置。
【請求項6】
前記装置は前記基台に装着された前記微小流体システムの上方に配置可能な磁石および/または前記基台に装着された前記微小流体システムの下方に配置可能な磁石を含む、請 求項1~5のいずれか1項に記載の装置。
【請求項7】
前記装置は前記磁石を前記微小流体システムから離す手段を含む、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記磁石を前記微小流体システムから離す前記手段は前記駆動軸がx軸周りに回転できるようになっている回転作動部を含む、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記磁石は前記基台に装着された前記微小流体システム表面と接触し、または前記基台に装着された前記微小流体システムの表面から一定の間隔に保持される、請求項1~
8のいずれか1項に記載の装置。
【請求項10】
前記磁石はばね部材に装着される、請求項1~9のいずれか1項に記載の装置。
【請求項11】
前記磁石は調整式装着組立品に装着される、請求項1~9のいずれか1項に記載の装置。
【請求項12】
前記調整式装着組立品は前記回転作動部および/または直進作動部の一部に配置された調整式磁石保持材と貫通孔付き板を含む、請求項11に記載の装置。
【請求項13】
前記貫通孔付き板は第1の係合部分を含み、前記調整式磁石保持材は前記貫通孔付き板の前記第1の係合部分と係合するようになっている第2の係合部分を含む、請求項
12に記載の装置。
【請求項14】
前記貫通孔付き板の前記第1の係合部分はねじ部分を含み、前記調整式磁石保持材の前記第2の係合部分は対応するねじ部分を含む、請求項
13に記載の装置。
【請求項15】
前記調整式装着組立品はz軸に沿った位置に前記磁石を配置できるようになっている、請求項11~14のいずれか1項に記載の装置。
【請求項16】
前記磁石は前記微小流体システムの表面に接触している、請求項10~15のいずれか1項に記載の装置。
【請求項17】
前記回転盤は、前記基台に装着された前記微小流体システムが回転する間、前記微小流体システムの1つ以上の特定部分に熱を加える1つ以上の加熱器モジュールを含む、請求 項1~16のいずれか1項に記載の装置。
【請求項18】
前記回転盤はさらに
必要とされる加熱器を選択して前記加熱器の温度を制御する加熱器制御部、および
命令および/または加熱パラメーターを前記加熱器制御部に無線で伝達できるようにする赤外線送受信機を含む、請求項1~17のいずれか1項に記載の装置。
【請求項19】
前記回転盤はさらに前記回転盤に対する前記検定円盤の正しい配置を容易にする手段を含む、請求項1~18のいずれか1項に記載の装置。
【請求項20】
前記手段は前記回転盤に心棒を含み、前記心棒は前記検定円盤の心棒穴に対応し、前記心棒は前記検定円盤のハブ表面の縦方向凸部に対応する縦溝を有する、請求項19に記載の装置。
【請求項21】
前記心棒の前記縦溝の水平方向の大きさは縦方向下向きに小さくなる、請求項20に記載の装置。
【請求項22】
前記手段は前記回転盤表面に位置決め凸部を含み、前記位置決め凸部は、前記検定円盤表面、必要であれば前記検定円盤の近傍または前記検定円盤の外縁付近に設けられた対応 する位置決め凹部と嵌合される、請求項19に記載の装置。
【請求項23】
前記回転盤に対して前記検定円盤を位置決めする前記手段は請求項20または21、および請求項22に請求される通りである、請求項19に記載の装置。
【請求項24】
前記回転盤はさらに前記検定円盤を前記回転盤に固定する締付け手段を含む、請求項1~23のいずれか1項に記載の装置。
【請求項25】
前記締付け手段は前記検定円盤を前記回転盤に対して保持する機械的玉軸受け締付け機構を含む、請求項24に記載の装置。
【請求項26】
前記締付け手段は磁気手段を含み、前記磁気手段は前記回転盤に対する定位置に前記検定円盤を保持し、および/または前記検定円盤を正しい位置に調整および/または案内す る、請求項24または25に記載の装置。
【請求項27】
前記磁気手段は前記回転盤内部の両極方向に配置された円盤磁石を含み、前記円盤磁石は前記検定円盤内部の両極方向に配置された円盤磁石に対応する、請求項26に記載の装置。
【請求項28】
前記回転盤は電力を前記回転盤内の加熱器モジュールに伝達する無線電力伝達手段を含む電力伝達組立品を含む、請求項1~27のいずれか1項に記載の装置。
【請求項29】
前記赤外線送受信機は1つ以上の赤外線発信部と1つ以上の赤外線受信部を含む、請求項18~27のいずれか1項に記載の装置。
【請求項30】
前記赤外線送受信機は4つの赤外線発信部を含む、請求項29に記載の装置。
【請求項31】
前記4つの赤外線発信部は等間隔に配置され、前記回転盤の中心ハブを囲む、請求項30に記載の装置。
【請求項32】
1つ以上の加熱器モジュールが設けられる、請求項18~31のいずれか1項に記載の装置。
【請求項33】
前記加熱器モジュールは独立して制御される、請求項32に記載の装置。
【請求項34】
前記加熱器に供給される電力は要求に応じて前記加熱器の間で共用かつ分配できる、請求項32または33に記載の装置。
【請求項35】
前記回転盤は固定コイル部品と回転コイル部品を含む電力伝達組立品を含み、前記固定コイル部品は軸方向に合致する前記回転コイル部品の下方に装着される、請求項1~34のいずれか1項に記載の装置。
【請求項36】
請求項1~35のいずれか1項に記載の装置を含む検定ユニット。
【請求項37】
前記検定中に前記検定円盤が配置される室内の周囲温度を上昇または降下させる手段をさらに含む、請求項36に記載の検定ユニット。
【請求項38】
前記手段はファンヒーターまたはクーラーである、請求項37に記載の検定ユニット。
【請求項39】
請求項1~25のいずれか1項に記載の装置または請求項36~38のいずれか1項に記載の検定ユニットと、前記装置に装着されるようになっている検定円盤の組み合わせ。
【請求項40】
検定を行うための請求項1~39に記載の装置の使用。
【請求項41】
検定を行う方法であって、
i)複数の磁気ビーズを含む微小流体システムを含む検定円盤を回転盤に装着する工程、および
ii)前記検定円盤の任意のx座標およびy座標に磁石を配置するように前記磁石を作動部表面に設ける工程を含み、
前記作動部は回転作動部を含む、
方法。
【請求項42】
前記磁石を動かしつつ、前記検定円盤のx平面およびy平面の望ましい軌跡を前記磁石がたどるように前記検定円盤を回転させることで前記磁気ビーズが前記微小流体システム の一部を通過する工程をさらに含む、請求項41に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は検定を行う装置に関し、特に、いわゆる「ラボ・オン・ディスク(lab-on-a-disc)」システムで微小流体室および/または微小流体経路を通る磁気ビーズの動きを制御することができる装置に関する。
【0002】
「ラボ・オン・ディスク」システムすなわち「ラボ・オン・CD」システムには一般的には円盤形状の反応容器を用いるが、他の形状の物を用いて経路、空洞、および他の構造体、例えば異なる疎水性の弁や区域を格納する場合がある。これらのシステムは微小流体の移動や微小流体の円盤との反応を伴う生物学的検定法を実行するのに特に有用である。検定円盤は、遠心力を用いて回転運動を生じさせて反応流体の流れを制御する装置とともに用いられる。
【0003】
微小流体システムは医薬診断用途および分子診断用途の分野でますます重要になっており、体積に対して表面積が高いこと、拡散部品が短いこと、かつ試薬量が最小限ですむことゆえに特に関心を集めている。微小流体システムは緊急を要する用途や現場での診断で特に関心を集めている。多くの用途では、診断検査を行うために微少流体室および/または微小流体経路を通して成分を分離および/または移動しなければならない。特に、生体標本の標的液相および/または粒子状固相生体材料を微小流体システムにより分離および/または移動しなければならない場合がある。
【0004】
微小流体システム、例えば検定円盤で検定を行う既知の装置の中には、微小流体室および/または微小流体経路内に入っている磁気ビーズを用いて微小流体室間および/または微小流体経路間で成分を輸送する手段を含むものがある。そのような磁気ビーズの動きは外部に装着された複数の磁石を組み合わせおよび/または微小流体システムを入れる検定円盤を回転させて制御され、遠心力で磁気ビーズを動かしてもよい。
【0005】
磁気ビーズを用いて望ましい生体成分との相互作用を生じさせて生体の分子および/または細胞、例えばDNA、抗体、または細菌を輸送、混合、分離および/または濃縮してもよい。
【背景技術】
【0006】
米国公開特許第2013/0206701号には固定磁石を用いて検定円盤の中心の方にビーズを引き付け、検定円盤を回転させて遠心力を生成し、円盤の外縁に向けてビーズを動かすシステムが開示されている。別の開示として、固定磁石または検定円盤が回転する間に検定円盤の半径方向に沿って動くことができる磁石を用いて遠心力と磁力を釣り合わせる類似のシステムを用いる米国特許第2008/0073546号が挙げられる。米国公開特許第2008/0035579号および米国公開特許第2008/0056949号にも、釣り合った遠心力と磁力を用いて微小流体システムの中を通る磁気ビーズの動きを操ることが開示されており、磁石の位置は案内レールに沿って制限されている。
【0007】
他のシステムでは異なる半径方向間隔で設けられた2個の固定磁石を用いる場合がある。第1の磁石は円盤の中心の方にビーズを引き付け、第2の磁石は円盤の円周の方にビーズを引き付ける。
【0008】
これらのシステムのそれぞれでは、対抗する力同士を釣り合わせる必要があるために磁気ビーズの動きの正確な制御は妨げられる。磁石は微小流体室の最も内側の領域と最も外側の領域にあるビーズを収集することができない場合もある。さらに、遠心力を用いてビーズを動かすのに必要とされる速度に円盤を加速するのに時間がかかる場合がある。複数の微小流体室が検定円盤の中心から同様あるいは同一の間隔で収納されている場合には、同様あるいは同一の遠心力を受け、磁気ビーズの望ましい動きを管理するのが困難になる場合がある。
【0009】
複数のそのようなシステムでは、相互接続される微小流体経路および/または微小流体室の配置は1つ以上の固定磁石の位置により決定される場合がある。これらの設計上の制約はシステムの有用性および/または最適化を制限してしまう場合がある。本発明者らは既知の装置の欠点を認識し、より制御された検定円盤の動きを可能にし、さらなる利点を提供する新しいシステムを開発した。
【発明の概要】
【0010】
第1の側面によれば、本発明は磁気ビーズを含む微小流体システム中で検定を行う装置を提供する。この装置は微小流体システムを装着することができる基台と、磁石を有し、微小流体システムが前記基台に装着されると前記微小流体システム内に入っている磁気ビーズの動きに直接に影響を及ぼすようになっている1つ以上の作動部、それに前記1つ以上の磁石と装着後の前記微小流体システムの相対的動きを制御して、前記基台に装着された微小流体システムを横断する望ましい進路を前記磁石がたどることができるようになっている制御手段を含む。前記磁石は前記基台に装着された微小流体システムの任意のx座標およびy座標に配置可能である。前記装置はさらにa)x軸に沿って磁石を動かすことができるようになっている少なくとも1つの回転作動部および/またはb)前記基台に装着された微小流体システムを段階的に動かす手段を含む。
【0011】
そのような装置は基台に装着された複数の微小流体システムとともに用いられてもよく、微小流体室、微小流体経路、および基台に装着された微小流体システムの最も内側の領域および最も外側の領域を含む微小流体システム内の任意の位置からビーズを収集して輸送することができてもよい。したがって、微小流体室および/または微小流体経路は要求される検定試験の見地から、かつ固定磁石の位置および/または遠心力を気にせずに最適に配置されてもよい。
【0012】
そのようなシステムは磁気ビーズの適時の動きも提供してもよい。
【0013】
第2の側面によれば、本発明は、第1の側面による装置を含む検定ユニットを提供する。第3の側面によれば、本発明は、第1の側面による装置または第2の側面の検定ユニットと前記装置に装着されるようになっている微小流体システムとの組み合わせを提供する。
【0014】
本発明の第4の側面によれば、第1、第2、または第3の側面による装置の使用が提供される。
【0015】
本発明の第5の側面によれば、検定を行う方法が提供される。この方法はi)複数の磁気ビーズを含む微小流体システムを含む検定円盤を回転盤に装着する工程、およびii)磁石が前記検定円盤の任意のx座標およびy座標に配置されるように前記磁石を作動部表面に設ける工程を含む。
【0016】
詳細な説明
本発明の実施形態は磁気ビーズを含む微小流体システムで検定を行う装置を提供する。この装置は、微小流体システムを装着することができる基台と、磁石を有し、微小流体システムが前記基台に装着されると微小流体システム内に入っている磁気ビーズの動きに直接に影響を及ぼすようになっている1つ以上の作動部、それに前記1つ以上の磁石と装着後の前記微小流体システムの相対的動きを制御して、前記基台に装着された微小流体システムを横断する望ましい進路を前記磁石がたどることができるようになっている制御手段を含む。前記磁石は前記基台に装着された微小流体システムの任意のx座標およびy座標に配置できる。前記装置はさらにa)x軸に沿って磁石を動かすことができるようになっている少なくとも1つの回転作動部および/またはb)前記基台に装着された微小流体システムを段階的に動かす手段を含む。
【0017】
回転作動部は円弧状の磁石の動きを生じさせてもよい。当然のことだが、円弧状の動きは直進の動きと異なり、少なくとも2本の座標軸でのベクトル成分を必ず含む。しかし当然のことだが、特定の軸、例えばx軸に沿った円弧状の動きはこの軸に沿った円弧状の動きのベクトル成分に関係する。したがって、x軸に沿った磁石の円弧状の動きはx軸に沿った磁石の何らかの動きがあることを要するが、y軸またはその他の軸に沿った磁石のさらなる動きがあることを妨げるものではない。
【0018】
回転作動部は大きい半径の弧形状を持つ回転作動部を含んでもよい。磁石はそのような回転作動部に装着され、基台に装着された微小流体システムの表面にわたるx-y平面の進路を横断してもよい。磁石は回転作動部に装着され、x-y平面で基台に装着された微小流体システムの最も外側の縁部と中心点の間の進路を横断できるのが好ましい。これに代えて、あるいはこれに加えて、回転作動部は基台に装着された微小流体システムの表面から離れる方向、または表面に向かう方向にz軸に沿って磁石を動かすようになっていてもよい。
【0019】
この装置は装着された微小流体システムを固定位置に保持するようになっていてもよい。磁石は少なくとも2本の軸に沿って動くことができる。x軸での磁石の動きは1つ以上の回転作動部を用いることで達成される。必要であれば、1つ以上の直進作動部または回転作動部をさらに用いてもよい。選択肢によっては、磁石の動きがさらにy軸に沿って生じてもよい。
【0020】
あるいは、この装置は装着された微小流体システムを段階的に少なくとも1本の軸に沿ってあるいはその周りで段階的に動かすことができるようになっていてもよい。磁石は少なくとも1本の別の軸に沿って動くことができる。
【0021】
いくつかの実施形態によれば、この装置が基台に装着された微小流体システムを動かす手段を含む場合、微小流体システムは回転可能であってもよい。
【0022】
当然のことだが、段階的な動きは不連続な動き、すなわち休止で隔てられた動きの期間または動きの方向の変化に関係する。
【0023】
いくつかの実施形態によれば、装着された微小流体システムの段階的な動きは不連続な回転により達成されてもよい。必要であれば、段階的な動きは軸周りの一方向の回転であり、その後同じ軸周りの逆方向の回転になってもよい。一方向におけるそれぞれの期間の回転は360°未満の回転であるのが好ましい。必要であれば、それぞれの期間の回転は0~180°、0~90°、または0~30°であってもよい。
【0024】
あるいは、段階的で不連続な回転は一方向の軸周りの回転を含んでもよい。この場合、回転は休止により断続的に中断する。休止で隔てられるそれぞれの期間の回転は0~360°であってもよい。必要であれば、それぞれの期間の回転は0~180°、0~90°、または0~30°であってもよい。
【0025】
段階的な動きは1本以上の軸での不連続な直進の動きも含んでもよい。必要であれば、段階的な直進の動きはある軸に沿った動きの期間と、その後の第2の軸に沿った動きの期間を含んでもよい。好ましくは、これらの軸は互いに実質的に直角であってもよい。
【0026】
当然のことだが、x軸、y軸、およびz軸という用語は微小流体システムが本発明の装置に装着された後の軸に関する。そのような微小流体システムは広い表面積の平面、例えば平らな表面の微小流体円盤を持ち、この微小流体円盤はx-y平面として理解される。z軸は、装着後の微小流体システムのx-y平面、すなわち微小流体システムの広い表面積の平面と直角の方向に延びる。
【0027】
4つの回転対称性を持つシステムについては、x軸およびy軸は相互に交換可能に用いられてもよい。円盤形状のシステムについては、x軸は装着後の微小流体円盤の半径に対応する任意の軸に沿って延びるものとして理解されてもよい。
【0028】
本発明は任意の形状の微小流体システムとともに用いられてもよい。微小流体システムは大部分が平らであるのが好ましい。好適なシステムは正方形、長方形、または円盤形状であってもよい。好ましくは、システムは円盤形状であってもよい。
【0029】
必要であれば、装置は装着された微小流体システム、例えば微小流体円盤を軸周りに回転させるようになっていてもよい。装着された微小流体円盤を装置が軸周りに回転させるようになっている場合、磁石は装着後に微小流体円盤の半径に対応する軸に沿って、あるいは大部分が軸に沿って動くことができてもよい。
【0030】
必要であれば、装置が装着後の微小流体システムを段階的に動かす手段を含む場合に、磁石は回転作動部に装着されてもよい。これに代えて、あるいはこれに加えて、磁石は直進作動部に装着されてもよい。磁石が回転作動部に装着される場合、結果として生じる磁石の動きは弧状であってもよい。
【0031】
いくつかの実施形態によれば、作動部は直進作動部を含んでもよい。そのような作動部は任意の軸方向に磁石を動かすのに適している場合がある。好ましくは、直進作動部は装着された微小流体システムの平面のx軸に沿って、例えば微小流体検定円盤の半径に沿って磁石を動かすようになっていてもよい。
【0032】
したがって、装着された微小流体システム内に入っている磁気ビーズの動きの制御を、1つ以上の軸で1つ以上の磁石を動かし、装着された検定円盤の360°未満の角度での段階的で正確な回転を伴うことにより、磁石に対する1つ以上の軸に沿って装着された微小流体システムを制御して段階的に動かすことにより、または回転作動部に装着された磁石を、さらなる直進作動部または回転作動部および固定微小流体システムと組み合わせて用いることにより達成することができる。したがって、装着された微小流体システムの任意の望ましいx座標およびy座標に磁石を配置できてもよい。
【0033】
装着された微小流体検定円盤の回転から生じる遠心力を利用する以前のシステムに比べて、本発明は装着された微小流体システムの微小流体経路および微小流体室の中を通る磁気ビーズ、ならびにそれに関連する任意の液体および/または粒子状固体の動きをより個別に制御することができる。さらに、本発明の制御手段は装着された微小流体システムを横断して磁石が任意の望ましい進路をたどることができる。これは遠心力を生成および/または維持するために回転するシステムでは達成できない場合がある。
【0034】
実施形態によっては、装置は1つの駆動軸に装着された回転作動部および直進作動部を含んでもよい。必要であれば、直進作動部は、装着微小流体システムに対する磁石のx軸の位置を制御し、回転作動部は、装着微小流体システムに対する磁石のz軸の位置を制御してもよい。
【0035】
装着された微小流体システムに対する磁石のz軸の位置を制御することで、任意の磁気ビーズとの強い相互作用を提供するのに十分近くなるように、装着された微小流体システム毎に磁石の位置を最適化しつつ、基台が磁石に干渉せずに、かつ装置および/または微小流体システムの動きを抑制せずに円盤を回転できるようしてもよい。
【0036】
当然のことだが、装置は必要があれば複数の磁石を含んでもよい。複数の磁石が用いられる場合、それぞれの磁石は別々の作動部に入っていてもよい。
【0037】
いくつかの実施形態によれば、1つ以上の作動部は装着された微小流体システムの表面上方に1つ以上の磁石を配置するようになっていてもよい。あるいは、1つ以上の作動部は装着された微小流体システムの表面下方に1つ以上の磁石を配置するようになっていてもよい。
【0038】
必要であれば、装着された微小流体システムの上方に磁石が配置される場合、磁石は自重で微小流体システムの表面に支えられてもよい。自重は磁石が微小流体システムの表面との接触を保持するように十分な力を提供する。あるいは、1つ以上の作動部は装着された微小流体システムの表面から一定の間隔に1つ以上の磁石を配置するようになっていてもよい。
【0039】
装着された微小流体システムの下方に磁石が配置される場合、上向きの力を磁石に加えて、装着された微小流体システムの底部との接触を磁石が保持し、あるいは装着された微小流体システムの下方面から離れた一定の間隔に保持されるように磁石を束縛してもよい。
【0040】
装置が2個以上の磁石を含む場合、これらの磁石は微小流体システムの上方または下方に独立して配置されてもよい。
【0041】
いくつかの実施形態によれば、装置は磁石を微小流体装置から離す手段を含んでもよい。これは必要であればz軸周りの駆動軸の回転で達成されてもよい。
【0042】
実施形態によっては、1つ以上の磁石は、装置に装着された微小流体システムの表面と1つ以上の磁石が接触できるようにするばね部材に装着されてもよい。必要であれば、1つ以上の磁石は板ばね部材に装着されてもよい。
【0043】
例えば、支持台が磁石に干渉することなく、装置に装着された微小流体システムが回転できるようにするために追加の空間が必要とされる場合、磁石をx軸方向に動かすのに適した作動部、例えば直進作動部に磁石を装着してもよい。装置に装着された微小流体装置から離れる方向および/または微小流体装置に向かう方向にこの作動部を回転させてもよい。作動部の棒を一方向に回転させて妨害なしに磁石を動かし、逆方向に回転させて磁石を円盤に接触させることができる。必要であれば、磁石をばね、例えば板ばねに装着し、さらに少し回転させてばねを屈曲させ、必要とされる上向きの圧力を提供してもよい。
【0044】
いくつかの実施形態によれば、1つ以上の磁石を調整式装着組立品に装着してもよい。必要であれば、調整式装着組立品は少なくとも1個の調整式磁石保持材と少なくとも1個の貫通孔付き板を含む。1つ以上の磁石を調整式磁石保持材のそれぞれの保持部分に配置してもよい。実施形態によっては、1つ以上の磁石は装置に装着された微小流体システムの上方および/または下方の位置にある保持部分の内部に保持される。
【0045】
必要であれば、貫通孔付き板は複数の回転作動部のうちの1つの一部に配置されてもよい。一実施形態では、貫通孔付き板は複数の直進作動部のうちの1つの一部に配置されてもよい。さらなる実施形態では、貫通孔付き板は回転作動部および/または直進作動部の一部に配置される。貫通孔付き板は回転作動部および/または直進作動部の駆動軸表面に配置されてもよい。
【0046】
実施形態によっては、貫通孔付き板は第1の係合部分を持つ。実施形態によっては、調整式磁石保持材は第2の係合部分を持つ。第2の係合部分は貫通孔付き板の第1の係合部分と係合するようになっていてもよい。例えば、貫通孔付き板の第1の係合部分はねじ部分、好ましくは貫通ねじ穴を含んでもよい。調整式磁石保持材の第2の係合部分は第1の係合部分の雄ねじに対応する雌ねじ部分を含む。
【0047】
したがって、実施形態によっては、調整式装着組立品はz軸に沿った位置に磁石を配置できるようになっている。これは、例えば貫通孔付き板に対して調整式磁石保持材を時計回りまたは反時計回りに回転させて調整式磁石保持材を作動させることで達成されてもよい。これにより磁石の位置を、貫通孔付き板の対応するねじ部分に沿って上方または下方に進む調整式磁石保持材のねじ部分で変更することができる。
【0048】
特定の実施形態では、1つ以上の磁石を調整式装着組立品に装着することで、z軸に沿った1つ以上の磁石の位置を、装置に装着された微小流体システムに対して微調整することができる。したがって、本明細書に記載する実施形態ではより広範な異なる微小流体システムを装着して用いることができる。
【0049】
いくつかの実施形態によれば、基台は微小流体システムを含む検定円盤を受けて制御可能に回転させるようになっている回転盤を含んでもよい。特に、回転盤は、基台に装着された検定円盤を部分的回転により制御可能に回転させることができるようになっていてもよい。必要であれば、回転盤は装着された検定円盤を時計回りまたは反時計回りに回転させることができるようになっていてもよい。したがって、装置は基台に装着された検定円盤を、時計回りまたは反時計回りの一連の部分回転により制御可能に回転させることができてもよい。装置は、1つ以上の作動部と回転盤を制御して基台に装着された微小流体システムを横断する望ましい進路を磁石がたどることができるようになっている制御部を含んでもよい。必要であれば、微小流体システムの回転と、1つ以上の磁石が装着された1つ以上の作動部の動きを同時に制御してもよい。
【0050】
本発明の装置は1つ以上の微小流体室と1つ以上の微小流体経路を含む検定円盤とともに用いるのに適している。微小流体経路は任意の適した向き、形状、および長さであってもよい。微小流体経路は直進および/または円弧状の区間を含んでもよく、必要であれば、鋭角、鈍角、優角、または直角の角部を含んでもよい。したがって、本発明の装置は磁気ビーズが任意の望ましい形状の進路を通って動くことができるようにする。本発明の装置は拮抗する磁力および遠心力が横断する形状に限定されない。
【0051】
実施形態によっては、回転盤は1つ以上の加熱器モジュールを含んでもよい。そのような加熱器モジュールは、装置に装着された微小流体システムの1つ以上の特定部分に熱を加えるようになっていてもよい。好ましくは、1つ以上の加熱器が、装着された微小流体システムの回転中に微小流体システムの1か所以上の部分に熱を加えるようになっていてもよい。
【0052】
必要であれば、制御部は加熱器モジュールを制御するようになっていてもよい。この制御は伝導により熱を加える位置だけでなく、温度上昇/降下時間、すなわち円盤の特定位置での反応媒質の温度の変化率に関しても個別的であってもよい。
【0053】
本発明の装置は等温検定を行うようになっていてもよい(例えば、加熱器要素は検定のすべてが実質的に同じ温度で行われるように検定の全領域にわたって実質的に切れ目のないように配置される。あるいは、熱は加えられない)。しかし、本発明の装置は、非等温検定を行うようになっている場合、すなわち検定円盤の異なる部分、したがって反応媒質の異なる部分が異なる温度に曝され、または曝される可能性がある場合には、おそらくはそれより有用であろう。磁気ビーズを標的とする収集および輸送を、磁気ビーズと関連する任意の液体および/または粒子、それに特定の加熱方法と組み合わせると、装置は有効かつ調整可能に動作することができる。
【0054】
微小流体システムの特定領域を標的とする加熱は、磁気ビーズの制御された輸送を伴うことで特定の加熱プロファイルを達成することもできるようにしてもよい。
【0055】
検定円盤内に加熱要素を含む従来技術のいくつかの装置と異なり、熱は回転盤から発生する。必要とされる電力量は少ない。なぜなら熱は具体的には検定円盤の特定部分への伝導により加えられ、温度を迅速に調整することができるからである。これにより検定の時間だけでなく加熱要素を用いるのに必要な時間に関しても効率性を提供することができる。
【0056】
回転盤に対して検定円盤を正確に配置することを容易にする手段を設けてもよい。例えば、回転盤は検定円盤の心棒穴に対応する心棒を含んでもよい。心棒表面の縦溝および検定円盤のハブ表面の対応する縦方向凸部により検定円盤の角度位置を回転盤に対して固定することができる。案内手段を設けて検定円盤を正確な角度位置に案内してもよい。例えば、心棒表面の縦溝の水平方向の大きさおよび検定円盤の相補的凸部の水平方向の大きさは縦方向下向きに小さくなってもよい。これは、検定円盤が回転盤の真上にある場合、回転盤に対する検定円盤の角度位置を決める際にいくらかの許容度があることを意味する。検定円盤が回転盤に対して押し下げられると、この許容度は小さくなる。
【0057】
回転盤に対して検定円盤を配置するさらなる手段を設けてもよい。例えば、位置決め凸部(例えば、ピンまたは突起)を回転盤に設け、対応する位置決め凹部(例えば、穴または切欠き)を検定円盤に設けてもよく、その逆であってもよい。これらの位置決め構造体を検定円盤またはその外縁付近に配置してもよい。
【0058】
したがって、回転盤に対する検定円盤の角度位置を決める2つ以上の手段があってもよい。例えば、心棒位置決め手段は固定配置部および案内手段として機能してもよい。検定円盤の表面またはその外縁付近の凸部構造体および凹部構造体はより正確な探知手段として機能してもよい。
【0059】
締付け手段を設けて検定円盤を回転盤に固定してもよい。
【0060】
締付け手段は、例えば中央ハブで検定円盤を回転盤に保持する機械的玉軸受け締付け機構を含んでもよい。
【0061】
これに代えて、あるいはこれに加えて、締付け手段は検定円盤を回転盤に対する固定位置に保持する磁気手段を含んでもよい。磁気手段を用いて円盤を調整し、正しい位置に案内してもよい。したがって、例えば使用者が円盤を回転盤の上方に配置した後、装置は検定円盤を自動的に調整し、正しい位置で回転盤に対して確実に保持してもよい。
【0062】
これにより微小流体室および/または微小流体経路の相対的位置が分かるように検定円盤を特定位置に装着することができる。その結果、分かっている開始位置からの円盤の回転を正確に制御して微小流体システムの望ましい部分により磁気ビーズを収集および輸送することができてもよい。
【0063】
磁気手段は回転盤の反対極方向(例えば、回転盤のハブ)に配置された円盤磁石と、検定円盤の反対極方向(例えば、検定円盤のハブ)に配置された円盤磁石を含んでもよい。
【0064】
無線電力伝達手段を用いて回転盤内の加熱器要素および/または加熱器制御部に電力を伝達してもよい。1つの考えられる電力伝達機構は同心配置された円盤コイルを含んでもよい。装置は静止円盤コイルと回転円盤コイルを含んでもよい。例えば、静止円盤コイル(回転盤の下方に固定されていてもよい)を励磁して交互の電磁場を生成してもよい。その後、電磁場は回転円盤コイル(回転盤に固定され、静止円盤コイルの上方で小さな間隙で隔てられている)の表面に電流を誘導する。
【0065】
装置は双方向通信用の複数の赤外線送受信機も含んでもよい。赤外線双方向通信を用いて命令および加熱パラメーターを加熱器制御部に無線で伝達することができるようにしてもよく、ホストコンピューターと加熱器制御部の間の応答確認を確立することで加熱器制御部からホストコンピューターへの通信も確立してもよい。それぞれの送受信機は必要であれば1つ以上の赤外線発信部と1つの赤外線受信部を含んでもよい。好ましくは、赤外線送受信機は4つの赤外線発信部を含んでもよい。
【0066】
これらの4つの赤外線発信部は等距離に配置され、回転盤の中心ハブを囲んでもよい。4つの赤外線発信部から生じる全放出場により反対側の端部にある赤外線受信部が放射赤外線信号を360°にわたって受信することができ、その結果、回転盤の位置にかかわらず通信を行うことができる。
【0067】
このように、本発明は検定円盤が回転している間に検定円盤に熱を提供する。この熱を連続的に提供し、および/または熱を調整することができる。
【0068】
検定円盤で生じる場合がある既知の問題は、検定円盤を加熱しているときの液体の状態に関係する。泡が発生し、および/または空気の膨張が生じ、および/または複数の微小流体室間の圧力差が望ましくない結果をもたらし、例えば液体の逆流が生じる場合がある。流れが乱れた状態は、例えば光学的読出しに影響を及ぼすことで検定に影響を及ぼす場合がある。本発明は遠心力による回転で反応ウェル内の液体の元の状態を回復しつつ、液体を加熱するという利点を提供する。したがって、本発明は十分に液体を加熱し、一貫した光学的読出しを得ることができる。
【0069】
加熱器モジュールは、例えば金属箔加熱器であってもよい。
【0070】
回転盤は1つ以上の加熱器モジュール、必要であれば2つ以上の加熱器モジュールとともに装着されてもよい。実施形態によっては、回転盤は3つ以上の加熱器モジュールとともに装着されてもよい。
【0071】
装置は、独立して制御され、標的温度まで加熱することができる複数の加熱器モジュールを制御する回路を含む。加熱器は、検定円盤の1つ以上の特定領域全体を均一に分散して加熱するために薄いアルミニウム板からなってもよい。抵抗温度検出器をこの薄いアルミニウム板に装着してアルミニウム板の温度を監視してもよい。抵抗温度検出器を加熱器制御部の回路に接続してフィードバックを提供し、加熱器を制御して長時間にわたって安定した温度を達成してもよい。
【0072】
回路と加熱器に電源供給するための電力生成の観点から無線機能があってもよい。無線通信を360°の赤外線送受信機の構成で用いてもよい。そのような無線機能により回転盤は自由に回転することができ、それと同時に電源を供給して加熱器と赤外線通信を操作することができる。
【0073】
熱を有効に伝達することができるように、加熱器モジュールは軽いばね圧力を用いて回転盤の表面から突出し、検定円盤に接触するようになっていてもよい。
【0074】
必要であれば、絶縁体を加熱器モジュールの下方に用いて下向き方向の熱損失を防止してもよい。結果として、絶縁体は熱伝達の効率および加熱速度の制御を上げることができる。
【0075】
一実施形態では、回転盤表面に2つの加熱器モジュールが設けられる。一方の加熱器モジュールは標本室内の標本を加熱するために用いられてもよく、他方の加熱器モジュールは検定用の反応ウェルに用いられてもよい。さらなる加熱器モジュールを他の加熱要求のために追加してもよい。例えば、さらなる加熱器を用いて、液体が加熱領域から低温領域に移動することができるようにする差圧を生成することで流体移動の一助となることができる。
【0076】
そのような場合、標本室または反応ウェルの一領域を加熱すると、気体成分の膨張で生じる封入圧が高くなる。装置内の全体的圧力を安定させるため、何らかの手段、例えば圧力を外部環境に解放し、または任意の液体を次の標本室に押し出して圧力を釣り合わせることで圧力を解放しなければならない。その後、標本室または反応ウェルを冷却すると、気体成分の収縮が生じ、したがって内部圧力が下がり、標本室または反応ウェルに液体が移動する。
【0077】
固定コイル部品は2つの保持部の間に挟まれたフェライトシートに取り付けられた固定コイルを含んでもよい。保持部はプラスチック製であるのが便利である。同じ構成を回転コイル部品に用いてもよい。固定コイルおよび回転コイルの構成を用いて電力を加熱器に提供してもよい。固定コイルと回転コイルの構成および/または固定コイルに供給される信号周波数を変更することで用途の必要性に応じて生成電力(例えば5ワット以上)を望みの値にすることができる。例えば、固定コイルに供給される信号の周波数を調整することで生成され、かつ加熱器および制御部に供給される電力を、5ワットと7ワットの間で調整することができる。電力を用いて、加熱器、および赤外線送受信機と加熱器制御部を含む関連回路を駆動してもよい。さらなる例示では、電力は複数の加熱器の間で、例えば同時に動作する4ワットの加熱器と2ワットの加熱器の間で分配されるようになっていてもよい。
【0078】
流体の動きを制御するために回転盤組立品全体をモーターの心棒に取り付けて、回転盤表面の回転運動を達成してもよい。この例示では、ブラシレス直流モーターを用いてもよい。このモーターは筐体に固定された金属基部(モーター装着具)に装着されてもよい。モーター装着具の上部に固定式赤外線送受信機用の基板を装着し、その後固定コイルを装着してもよい。両方の部品が固定を保持するように装着されてもよい。固定コイルの上方には回転コイルと、回転式赤外線送受信機および加熱器制御部用の回路基板が設けられる。回転式赤外線送受信機および加熱器制御部は回転盤に装着されてもよい。回転式赤外線送受信機および加熱器制御部は、ホストコンピューターと加熱器制御部の間の電源供給および赤外線通信を中断せずに回転盤とともに回転することができる。
【0079】
いくつかの実施形態によれば、本発明は第1の側面による装置を含む検定ユニットを提供する。
【0080】
この検定ユニットは、本発明の第1の側面による装置を収めることができる室を提供してもよい。検定ユニットに室内環境の1つ以上の側面を制御する手段を設けてもよい。制御することができる側面としては温度管理、湿度管理、気圧、組成、例えば酸素レベルの管理などが挙げられるが、これらに限定されない。必要であれば、室に温度管理用の手段を設けてもよい。
【0081】
実施形態によっては、検定ユニットは検定中に検定円盤が配置される室の周囲温度を上昇および/または降下させる手段を含んでもよい。したがって、固定式加熱システムは回転盤からの局所的加熱を提供するが、任意に選択できる回転式加熱システムは検定円盤(そして結果的には検定円盤およびその内容物)の周囲の環境温度を変更することができる。必要であれば、ファンヒーターまたはクーラーを用いてもよい。例えば、ファンを用いる送風機を用いてもよい。
【0082】
いくつかの実施形態によれば、本発明は第1の側面による装置または第2の側面による検定ユニット、およびそのような装置または検定ユニットとともに用いるようになっている微小流体システムの組み合わせを提供する。
【0083】
微小流体システムは検定円盤であってもよく、本装置の基台、例えば回転盤に装着されてもよい。適切な検定円盤は微小流体経路および/または微小流体室を含んでもよい。磁気ビーズは微小流体室および/または微小流体経路のうちの1つ以上に入っていてもよい。
【0084】
本発明のいくつかの実施形態によれば、本発明の第1の側面による装置の使用が提供される。
【0085】
使用中に微小流体システムを本発明による装置に装着してもよい。そのような微小流体システムを検定円盤、矩形ブロック、またはその他の適切な形式で組み込んでもよい。微小流体システムは微小流体経路および/または微小流体室を含んでもよい。微小流体経路および微小流体室のうちの1つ以上に複数の磁気ビーズを入れてもよい。
【0086】
円盤に基づくシステムでは、装置の使用は直進作動機構、または大きな半径の円弧を持つ回転作動部を用いて実質的に半径方向に1つ以上の磁石を動かすことを含んでもよい。円弧の中心は磁石の最も内側の位置と最も外側の位置の間の線の中点に対して直角の線の上にある。外周と同心の運動は円盤の軸周りに制御される円盤の回転により生じる。これらの2つの運動成分を組み合わせることで、磁石の有効な進路は任意の望ましい軌跡をたどることができる。
【0087】
あるいは、円盤形状または非円盤形状のシステムでは、磁石の円弧状の動き、必要ならこれに加えて別の軸に沿って磁石の直進運動または回転運動を生じさせつつ、微小流体システムを定位置に保持することで有効な動きを達成することができる。もう1つの選択肢では、円盤形状または非円盤形状のシステムを段階的に動かし、これに1つ以上の磁石の反対方向の直進運動および/または回転運動を伴ってもよい。好ましくは、磁石の動きはシステムの動きに対してほぼ直角であってもよい。
【0088】
したがって本発明のシステムでは、磁石のx座標とy座標は微小流体システムに対して絶えず変化してもよい。
【0089】
微小流体経路および/または微小流体室の諸条件の範囲で任意の位置に磁石を動かし、磁気ビーズを収集および/または輸送してもよい。微小流体室および/または微小流体経路に対して磁石を制御して相対的に動かすことで、円盤の中心から任意の半径方向距離で微小流体システムを通してビーズを輸送することができる。
【0090】
本発明を用いることで、微小流体システム内の同心の微小流体経路、様々な半径方向の微小流体経路、様々な傾斜の微小流体経路に沿って、かつ微小流体システム内の任意の位置に配置された微小流体経路および/または微小流体室を通して磁気ビーズを輸送することができる。
【0091】
したがって、本発明の装置を用いることで微小流体システムの設計を最適にすることができ、固定された1つ以上の磁石の直近に微小流体室および/または微小流体経路を配置する必要はない。同様に、微小流体流路は遠心力、固定磁石、または両者の組み合わせで導かれる磁気ビーズが容易に横断することができる進路に限定されない。
【0092】
本発明の第5の側面によれば、検定を行う方法が提供される。この方法はi)複数の磁気ビーズを含む微小流体システムを含む装置を回転盤に装着する工程、およびii)前記検定円盤の任意のx座標に磁石を配置するように前記磁石を作動部に設ける工程を含む。
【0093】
いくつかの実施形態によれば、前記磁石を動かしつつ、前記検定円盤のx平面およびy平面の望ましい軌跡を前記磁石がたどるように前記検定円盤を回転させることで複数の磁気ビーズが前記微小流体システムの一部を通過する工程がさらに提供される。
【図面の簡単な説明】
【0094】
ここで以下の図面を参照して、本発明を限定することなくさらに詳細に記載する。
【
図1】本発明による微小流体円盤を装着した1つの例示的な装置の模式的表現を示す。この装置は直進作動部に装着された磁石を含む。
【
図2】本発明による微小流体円盤を装着した装置の代替例の模式的表現を示す。この装置は回転作動部に装着された磁石を含む。
【
図3】本発明による装置表面に装着された微小流体円盤の側面から見た模式的表現を示す。この装置は直進作動部に装着された磁石を含む。
【
図4】本発明による装置表面に装着された微小流体円盤の側面から見た模式的表現を示す。この装置は1つの駆動軸表面に装着された直進作動部および回転作動部を含む。
【
図5】
図4の装置の正面から見た模式的表現を示す。
【
図7】本発明で磁石配置・締付け手段をどのように用いることができるかを示す。
【
図10】本発明による回転盤電力伝達組立品のいくつかの考えられる要素を分解模式図に示す。
【
図11】本発明による回転盤のいくつかの部品を示す。
【
図12】本発明による回転盤のいくつかの部品を示す。
【
図13】本発明による回転盤のいくつかの部品を示す。
【
図14】本発明による回転盤のいくつかの部品を示す。
【
図15】本発明による回転盤のいくつかの部品を示す。
【
図16】本発明による回転盤のいくつかの部品を示す。
【
図17】本発明の特定の実施形態による調整式装着組立品の模式図を示す。
【
図18】本発明の特定の実施形態による調整式装着組立品の模式図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0095】
図1に示すように、装置1は磁石3を装着した直進作動部2aを含む。磁石は微小流体円盤5の表面に延びる進路4を横断することができる。微小流体円盤5を装置表面に装着してもよい。装置1は検定円盤5の回転(矢印6で示す)と磁石3の動き(矢印7で示す)を制御する制御部をさらに含む。制御部により磁石3は微小流体円盤表面の任意の望ましい進路を横断することができる。微小流体経路または微小流体室があるかもしれない領域に対応する、装着された微小流体円盤の半径の一部のみに沿って磁石を配置することができるように磁石3が動く範囲を限定してもよい。あるいは、磁石が動く範囲は装着された微小流体円盤の半径全体に及んでいてもよい。
【0096】
特に、制御部は装着された検定円盤5の回転を必要に応じて時計回りおよび/または反時計回りに制御しつつ、同時に直進作動部の動きを制御して経路9を通る複数の微小流体室8の間の進路を磁石がたどることができるようにする。微小流体室8または微小流体経路9内に入っている磁気ビーズは磁石の近くに生じる局所的な磁場に引き付けられ、微小流体室および/または微小流体経路通過し、磁石3の進路を決める。
【0097】
微小流体経路は、検定円盤の外周と平行にあるいは検定円盤の外周に対して角度を持つようにしてもよい。経路は湾曲部または曲げ部9aも含んでもよい。
【0098】
別の実施形態では、
図2に示すように磁石は回転作動部2bに装着されていてもよい。検定円盤の半径の少なくとも一部とほぼ一致する円弧のみに沿って磁石を配置することができるように、磁石3が動く範囲を限定してもよい。
【0099】
図3に示すように、実施形態によっては、装置に装着された検定円盤の上方および下方に配置された各作動部2aに磁石3が装着されてもよい。あるいは、装着された微小流体円盤の上方または下方のみに各磁石が配置されてもよい。
【0100】
図4および
図5に示すように、実施形態によっては、検定円盤の下方に磁石を配置する1本の駆動軸10の表面に直進運動作動部(以下単に直進作動部)2aおよび回転運動作動部(以下単に回転作動部)2cが装着される。あるいは、磁石は検定円盤の上方に配置されてもよい。回転作動部2cを一方向に回転させると、磁石3は検定円盤5と接触し、回転作動部2cを逆方向に回転させると、磁石は回転矢印11で示すように検定円盤から離れる。
【0101】
直進作動部2aにより磁石は、装着された微小流体円盤の半径に沿う望ましいx軸方向に移動することができる。
【0102】
板ばね12は適切な力を磁石3に加えて磁石3と検定円盤5の接触を保持してもよい。
【0103】
図17および
図18に示すように、実施形態によっては、調整式装着組立品2を用いて磁石3を装着しかつ検定円盤5に対してz軸に沿って磁石を配置してもよい。調整式装着組立品は、
図5に示すように板ばね12と組み合わせて用いてもよく、あるいは板ばねなしに用いてもよい。特定の実施形態では、調整式装着組立品は、適切な力を加えて磁石3の検定円盤5との接触を保持するためにばねを含んでもよい。
【0104】
調整式装着組立品は貫通孔付き板22と磁石保持材25を含む。貫通孔付き板は1つ以上の直進作動部2aおよび/または回転作動部2b/2cの駆動軸10に装着されてもよい。貫通孔付き板22は、検定円盤5の上方に配置されるように配置されてもよい。貫通孔付き板22は、調整式磁石保持材25の第2の係合部分26と係合するようになっている第1の係合部分24を含む。調整式磁石保持材は磁石3を係合して定位置に保持する保持部分27を含む。
【0105】
保持部分27は磁石3が挿入される凹部であってもよい。磁石3は磁力で保持部分27に保持されてもよい。実施形態によっては、磁石3は1つ以上の留め金または係合部材で保持部分27に保持されてもよい。実施形態によっては、保持部分は凹部内の磁石3の上方に配置されたばねを持つことで適切な力を加え、磁石3の検定円盤5との接触を保持してもよい。実施形態によっては、
図17および
図18に示すように第1の係合部分24はねじ山付き貫通孔であってもよく、第2の係合部分26はねじ山付き貫通孔に対応するねじ山付き凸部であり、保持部分27から延びてもよい。
【0106】
実施形態によっては、第1の係合部分24は雌ねじ付き貫通孔を含んでもよく、第2の係合部分26は対応する雄ねじ部分を含んでもよい。実施形態によっては、第1の係合部分24は雄ねじ付き貫通孔を含んでもよく、第2の係合部分26は対応する雌ねじ部分を含んでもよい。
【0107】
雄ねじ付き部分が雌ねじ部分に挿入されると、ねじ同士が係合する。これにより調整式磁石保持材21およびその内部に保持された磁石3を検定円盤5の上方の固定位置に維持することができる。調整式磁石保持材は、矢印34で示すように調整式磁石保持材25が回転できるようにする作動部35を含む。この回転は時計回りまたは反時計回りであってもよい。この回転により、ねじ付き部分の配置に応じて、第2の係合部分が第1のねじ部分24に沿って検定円盤5に対してz軸方向に進むことができ、磁石3は
図18に示す矢印36の方向に動く。これにより調整式磁石保持材25とその内部に保持された磁石3を検定円盤の上方または下方のz軸に沿った箇所に配置し、この位置に維持することができる。作動部は対応する凸部、例えばねじ回し、アレンレンチ、六角レンチ、または他の作動装置を受けることができる長穴、ねじ溝、または窪みであってもよい。
【0108】
図6に示すように、回転盤112は複数の加熱器14と複数の絶縁体16を含む。絶縁体16は加熱器14と回転盤の間に挿入され、伝導による熱損失を低減する。その結果、絶縁体16は熱効率と発熱率を向上させる。
【0109】
回転盤112は心棒18を含む。心棒18自体は、内側案内構造体として機能して検定円盤5の心棒18への粗い調整を行うことができるようにする縦溝110を含む。回転盤112はより微細な調整を行う構造体として機能する突起部1112を含む。
【0110】
検定円盤5を配置して回転盤12に固定する磁気手段を
図7に最も分かりやすく示す。分かりやすくするために回転盤112および検定円盤5の構造体のほとんどをこの図面から省いている。検定円盤5は回転盤112の心棒18の上方に配置される心棒穴1102を含む。回転盤は北極116と南極118を持つ円盤磁石部材114を含む。検定円盤5は、対応する円盤磁石部材1104を含む。円盤磁石部材1104は北極円盤磁石1108と南極円盤磁石1110からなる。わかりやすくするため、
図7では円盤磁石部材1104を検定円盤5から分離して示しているが、使用する際には例えばネオプレンシートを用いて円盤磁石部材1104を検定円盤5に固定する。ネオプレンシートを
図7に示す形状に予め切り取り、検定円盤5のみを特定の向きで回転盤表面に配置することができるようにしてもよい。ネオプレンシートは高速で回転するときに検定円盤5が横滑りするのを防止する摩擦握力も提供する。
【0111】
磁石部材114および1104は装置のハブに配置されるのが便利である。したがって示される実施形態では、この磁石部材1104は検定円盤の心棒穴1102に対応する穴1106を持つ。
【0112】
本発明による回転盤の側面図および斜視図を
図8および
図9にそれぞれ示す。
【0113】
図10に示すように、回転盤電力伝達組立品は、固定式赤外線送受信機130、固定コイル下方保持材132、フェライトシート134、固定コイル136、固定コイル上方保持材138、回転コイル下方保持材140、回転コイル142、フェライトシート144、回転コイル上方保持材146、および加熱器制御部と回転式赤外線送受信機を含む組立品148を含んでもよい。固定コイルと回転コイルの両方の下方保持材および上方保持材は締め具として機能し、プラスチック材料製であるのが便利である。
【0114】
回転盤の部品のいくつかを
図11~
図16に示す。
図12にこれらの部品のいくつかに関連して固定コイル部品150の模式的分解斜視図を示す。
図13に固定コイル部品150の上部に配置される回転コイル部品152を示す。固定式赤外線送受信機130の部品と回転式赤外線送受信機155の部品を
図14および
図15にそれぞれ示す。
図16に回転盤組立品の完全な構成の側面図を示す。
図16は基部としてのブラシレス直流モーター装着部品13で始まる。ブラシレス直流装着部品の上部に配置されている第1の部品は固定式赤外線送受信機130の部品である。その次に固定コイル部品150が配置される。回転盤112の組立部品の下方には回転式赤外線送受信機155の部品と加熱器制御部154の回路部品が配置されている。回転式赤外線送受信機155の部品と加熱器制御部154の回路部品は同じプリント回路基板を共用する。