(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-16
(45)【発行日】2023-08-24
(54)【発明の名称】画像センサ
(51)【国際特許分類】
H01L 27/146 20060101AFI20230817BHJP
H01L 31/10 20060101ALI20230817BHJP
H04N 25/70 20230101ALI20230817BHJP
H04N 25/76 20230101ALI20230817BHJP
H10K 30/60 20230101ALI20230817BHJP
【FI】
H01L27/146 E
H01L31/10 A
H04N25/70
H04N25/76
H10K30/60
(21)【出願番号】P 2020534245
(86)(22)【出願日】2018-11-16
(86)【国際出願番号】 FR2018052894
(87)【国際公開番号】W WO2019122557
(87)【国際公開日】2019-06-27
【審査請求日】2021-10-25
(32)【優先日】2017-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】513257535
【氏名又は名称】イソルグ
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】ブティノン,ベンジャミン
(72)【発明者】
【氏名】サラッコ,エメリン
(72)【発明者】
【氏名】ゴメス,ジャン-イヴ
(72)【発明者】
【氏名】デズ,オリバー
【審査官】小山 満
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-227091(JP,A)
【文献】特開2016-152417(JP,A)
【文献】特開2008-252004(JP,A)
【文献】特開2015-056554(JP,A)
【文献】特開2010-067827(JP,A)
【文献】特開2010-062380(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0230123(US,A1)
【文献】欧州特許出願公開第01970959(EP,A2)
【文献】米国特許出願公開第2016/0240571(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2008/0246107(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0070556(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0060769(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 27/146
H01L 31/10
H04N 25/70
H04N 25/76
H10K 30/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機ではない技術で形成された読み出し回路のアレイと、
有機材料で形成されたフォトダイオー
ドと
を備えて
おり、
前記フォトダイオードは、前記フォトダイオードのアクティブ領域を画定して透明な電気絶縁材料で形成されているスペーサによって、隣り合うフォトダイオードから離隔して配置されていることを特徴とする画像セン
サ。
【請求項2】
前記読み出し回路はCMOS技術で形成されていることを特徴とする請求項1に記載の画像センサ。
【請求項3】
前記フォトダイオー
ドは、関連付けられた読み出し回路の画素又はサブ画素の大きさの第1の電
極を有していることを特徴とする請求項1
又は2に記載の画像センサ。
【請求項4】
前記第1の電
極は、前記読み出し回
路の第1のトランジス
タのゲー
トに連結されていることを特徴とする請求項
3に記載の画像センサ。
【請求項5】
前記第1の電極は、一又は複数の更なるトランジスタを介して前記読み出し回
路の第1のトランジス
タのゲー
トに連結されていることを特徴とする請求項
3に記載の画像センサ。
【請求項6】
前記フォトダイオー
ドの第2の電
極が複数の読み出し回
路に共通であることを特徴とする請求項1~
5のいずれか1つに記載の画像センサ。
【請求項7】
前記第2の電極は半透明な保護
層で覆われていることを特徴とする請求項
6に記載の画像センサ。
【請求項8】
前記第2の電
極は、透明な有機導電層から形成されていることを特徴とする請求項
6又は
7に記載の画像センサ。
【請求項9】
画素又はサブ画素が、50μm未満の辺長の正方形内に内接していることを特徴とする請求項1~
8のいずれか1つに記載の画像センサ。
【請求項10】
画素又はサブ画素が、5μm未満の長さ分、横方向に間隔を空けて配置されていることを特徴とする請求項1~
9のいずれか1つに記載の画像センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、画像センサ又は電子式撮像装置に関する。本開示は、より具体的には有機光検出器を備えたデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
画像センサは、多くの分野に、特に電子デバイスの小型化のために電子デバイスに使用されている。画像センサは、マンマシンインタフェース及び画像取込の用途に見受けられ得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本開示は、より具体的には有機材料製の光検出器から形成された画像センサに関する。
【0004】
有機材料製の光検出器の例が、米国特許第9417731 号明細書の文献に記載されている。
【0005】
米国特許出願公開第2015/060775号明細書の文献には、二重電子遮断層を備えた有機フォトダイオードが記載されている。
【0006】
米国特許出願公開第2009/090903号明細書の文献には、チオフェン誘導体を含むCMOS画像センサが記載されている。
【0007】
国際公開第99/39372 号パンフレットの文献には、有機半導体から形成された画像センサが記載されている。
【0008】
実施形態は、有機材料で形成された光検出器が一体化されている画像センサの不利点の全て又は一部を克服する。
【0009】
実施形態は、画像センサ全体で有機技術を使用することを回避する解決策を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
従って、本発明は、有機ではない技術で形成された読み出し回路のアレイと、有機材料で形成されたフォトダイオードとを備えていることを特徴とする画像センサを提供する。
【0011】
実施形態によれば、前記読み出し回路はCMOS技術で形成されている。
【0012】
実施形態によれば、前記フォトダイオードは、電気絶縁材料で形成されたスペーサによって、隣り合うフォトダイオードから離隔して配置されている。
【0013】
実施形態によれば、前記スペーサは透明な材料で形成されている。
【0014】
実施形態によれば、前記スペーサは光を通さない。
【0015】
実施形態によれば、前記スペーサは光を吸収する。
【0016】
実施形態によれば、前記フォトダイオードは、関連付けられた読み出し回路の画素又はサブ画素の大きさの第1の電極を有している。
【0017】
実施形態によれば、前記第1の電極は、前記読み出し回路の第1のトランジスタのゲートに連結されている。
【0018】
実施形態によれば、前記第1の電極は、一又は複数の更なるトランジスタを介して前記読み出し回路の第1のトランジスタのゲートに連結されている。
【0019】
実施形態によれば、前記フォトダイオードの第2の電極が複数の読み出し回路に共通である。
【0020】
実施形態によれば、前記第2の電極は、透明な有機導電層から形成されている。
【0021】
実施形態によれば、画素又はサブ画素が、略50μmの辺長の正方形内に内接している。
【0022】
実施形態によれば、画素又はサブ画素が、5μm未満の長さ分、横方向に間隔を空けて配置されている。
【0023】
実施形態によれば、前記第2の電極は半透明な保護層で覆われている。
【図面の簡単な説明】
【0024】
前述及び他の特徴及び利点は、添付図面を参照して本発明を限定するものではない実例として与えられる以下の特定の実施形態に詳細に記載されている。
【0025】
【
図1】画像センサの実施形態を概略的に示す斜視図である。
【
図4】3つのトランジスタを備えたCMOS読み出し回路を示す簡略化された電気回路図である。
【
図5】有機フォトダイオードの層の例を非常に概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
同一の要素は異なる図面で同一の参照番号で示されている。
【0027】
明瞭化のために、記載される実施形態の理解に有用な工程及び要素のみが示され詳述されている。特に、画像センサの動作は詳述されておらず、記載された実施形態は、画像センサ単体であれ、ディスプレイが一体化されているセンサであれ、通常のセンサと適合する。更に、画像センサが一体化されている電子デバイスの他の部品も詳述されておらず、記載された実施形態は、画像センサの用途で電子デバイスの他の通常の部品と適合する。
【0028】
特に示されていない場合、共に接続された2つの要素を参照するとき、これは、導体以外のいかなる中間要素も無しの直接接続を表し、共に連結された2つの要素を参照するとき、これは、これら2つの要素が接続され得るか、又は一若しくは複数の他の要素を介して連結され得ることを表す。
【0029】
以下の記載では、「略」、「約」及び「程度」という用語を参照するとき、これは10%の範囲内、好ましくは5%の範囲内を意味する。
【0030】
更に、以下の記載では、特に指定されていない場合、「高」、「低」、「左」、「右」などの絶対位置、若しくは「上方」、「下方」、「上側」、「下側」などの相対位置を限定する用語、又は「水平」、「垂直」などの向きを限定する用語を参照するとき、この用語は図面の向きを指す。
【0031】
図1は、画像センサ10の例を概略的に示す斜視図である。
【0032】
画像センサ10は、光子センサ又は光検出器12の集合体、例えば光検出器アレイを備えている。この例では、光検出器12は平面に配置されている。しかしながら、光検出器12が非平面に配置されている実施形態が提供されてもよい。光検出器アレイ12は、透明又は半透明の保護被覆体14で被覆されてもよく、例えばガラスプレート、プラスチック被覆体、単原子層の連続的な堆積又は一若しくは複数の他のパッシベーション層の堆積の技術を使用した堆積物で被覆されてもよい。光検出器アレイ12は、光検出器によって取り込まれた信号を測定するために読み出し回路のアレイ16に関連付けられている。読み出し回路は、対応する光検出器によって画定された画素又はサブ画素を読み出してアドレス指定し、制御するためのトランジスタの集合体を意味する。このような回路は、画素アレイ若しくは画素網と同一のシリコン表面に一体化されてもよく、又は画素アレイに関連付けられた回路若しくは電子回路の集合体であってもよい。
【0033】
光検出器アレイ12に使用される光検出器と、場合によってはフィルタの存在とに応じて、画像センサ10は、影、赤外線画像、白黒画像、カラー画像(RGB) などを取り込むことができる。
【0034】
画像センサ10は更に、対話型インタフェースを形成するためにディスプレイに関連付けられてもよい。
【0035】
以下に記載される実施形態は、組み合わせも含めてこれら全ての用途に適用される。
【0036】
有機センサは一般に、第1の方向に沿って細片を形成する第1の電極、第2の方向に沿って細片を形成する第2の電極及び第1の電極と第2の電極との間の活性物質と共に配置されている。有機センサの各画素は、電極細片の交差部分に有機材料で形成された光検出器要素を有している。電極を伝わる信号を解釈するための回路は一般に、画素アレイの面の外側に配置されている。
【0037】
図2は、画像センサ10の実施形態を示す部分断面図である。
【0038】
図3は、
図2の画像センサを有機要素10のレベルで示す平面略図である。
【0039】
記載された実施形態によれば、光検出器又は有機フォトダイオードOPD と半導体基板上にCMOS技術で形成された有機ではない読み出し回路とを関連付けることにより、画像センサが形成されている。より具体的には、CMOS読み出し回路又はCMOS画素のアレイ上に有機フォトダイオードOPD のアレイが積層されており、各有機フォトダイオードは、画像センサの画素21又はサブ画素の検出要素を形成している。
【0040】
画素に関連して以下に記載される全ては、特に、一般には4つのサブ画素から夫々形成された画素を有するカラー画像センサのためにサブ画素に、より一般に適用される。
【0041】
図2及び
図3に示されているように、各フォトダイオードはスペーサ23によって、隣り合うフォトダイオードから離隔して配置されている。従って、スペーサ23は、フォトダイオードのアクティブ領域を画定してフォトダイオードを互いに電気的に絶縁している。従って、スペーサ23は電気絶縁材料で形成されている。
【0042】
更に、電極層(典型的にはカソード層25)の少なくとも1つは、対応する画素のCMOS回路27と垂直方向に一列にフォトダイオードのカソードを画定すべく構造化(画素化)されている。他の電極(アノード29)も画素化されてもよいが、変形例として細片を形成してもよい。しかしながら、アノードが画素化される場合、アノード電極は、アノード電極のバイアスを可能にすべく少なくとも第1の方向に相互接続されている。
【0043】
CMOS回路又はCMOS画素は非常に概略的に示されており、これらの製造は通常通りであり、記載された実施形態は、シリコン基板、又は有機ではない材料、半導体材料及び導電性材料に基づく他の基板上に形成された通常のCMOS回路と適合する。トランジスタの金属相互接続レベル31が
図2に表されている。
【0044】
実施形態によれば、スペーサ23は透明な材料で形成されている。
【0045】
別の実施形態によれば、スペーサ23は、好ましくは不透明な及び/又は光吸収性の材料で形成されている。このため、1つの画素から次の画素に光が漏れるのを回避しながら、互いに近い画素を備えたCMOS撮像装置の粒状度を利用することが可能になる。実際、シリコン上のCMOSセンサの画素は、例として略50μmの辺長を有し、5μm未満の長さ分、互いに離隔して配置されている。ここで、有機フォトダイオードのアクティブ層の厚さは一般に数μmであり、ひいては2つの画素間の間隔と同程度の大きさである。スペーサを不透明又は吸収性にすることにより、画素間の光干渉を回避し、ひいては画像センサの解像度を高める。
【0046】
特定の実施形態として、スペーサ23は、樹脂、フッ素系樹脂、又はポリイミド若しくはパリレン若しくは他の絶縁材料に基づく樹脂で形成されている。
【0047】
図4は、有機フォトダイオードOPD に関連付けられた3つのトランジスタを備えたCMOS読み出し回路又はCMOS画素27を示す簡略化された電気回路図である。
【0048】
読み出し回路27は、DC電圧VDD が印加される2つの端子45, 47間に、MOS 選択トランジスタ43と直列にMOS 検出トランジスタ41を有している。MOS 選択トランジスタ43のゲートは、画素選択信号SEL を受けるように構成されている。MOS 検出トランジスタ41のゲート49はCMOS回路の入力端子を定めている。ゲート49は、リセット電位VRが与えられる端子にMOS リセットトランジスタ51を介して連結されている。MOS リセットトランジスタ51のゲートは、(MOS 検出トランジスタ41のゲート49を放電するために)画素リセット制御信号Rを受けるように構成されている。
【0049】
MOS 検出トランジスタ41のゲート49は、対象とする画素の有機フォトダイオードOPD のカソード電極25に連結されている。有機フォトダイオードOPD のアノード電極29は固定電位(不図示)又は接地に連結されているが、必要に応じて異なる電位に設定されてもよい。
【0050】
CMOS読み出し回路の動作は知られており、記載された実施形態によって修正されない。更に、転送トランジスタがフォトダイオードOPD のカソード25と検出トランジスタ41のゲート49との間に配置されている4つのトランジスタ(4T)を備えたCMOS読出しトランジスタ、又は、複数の更なるトランジスタがカソード25と検出トランジスタ41のゲート49との間に配置されている5以上のトランジスタを備えたCMOS読出しトランジスタを使用してもよい。
【0051】
図5は、有機フォトダイオードの層の例を非常に概略的に示す。
【0052】
この例では、各有機フォトダイオードOPD は、CMOS回路に接続されたカソード電極25から以下の順に、
高濃度にドープされた有機半導体高分子で形成された層61(正孔供与層)、
有機半導体高分子、例えばP3HTとして公知のポリ(3-ヘキシルチオフェン)若しくはポリ(3-ヘキシルチオフェン-2,5 -ジイル)(P型半導体)、又はPCBMとして公知の[6,6] -フェニル-C61 -ブタン酸メチル(N型半導体)で形成された層63、
高濃度にドープされた透明な有機半導体高分子、例えば、ポリ(3, 4)-エチレンジオキシチオフェンとポリスチレンスルホン酸ナトリウムとの混合物であるPedot-PSS として公知の高分子の層65(電子供与層)、及び
例えば導電性ナノワイヤ、グラフェン、又は導電性若しくは半導体のナノ粒子に基づく、例えばインジウムスズ酸化物(ITO) 、Pedot-PSS 又は透明な導電性有機材料で形成された透明層67
を含む積層体を有している。
【0053】
カソード電極25は、例えばアルミニウム、銀、ITO 、モリブデン・タンタル(MoTa)、タングステン、クロム、Pedot-PSS 、別の金属、又は導電性若しくは半導体の有機材料で形成されている。
【0054】
正孔供与層61及び電子供与層65は、PN接合と同様のアクティブ領域63とカソード電極及びアノード電極との間の仕事関数を夫々適合させる機能を有する。
【0055】
従って、異なる層の仕事関数に応じて、透明層67又は電子供与層65はアノード29を直接形成してもよい。
【0056】
同様に、カソード層25の仕事関数に応じて、正孔供与層61を省略してもよい。
【0057】
有機フォトダイオードの製造技術は、例えば米国特許第9417731 号明細書の文献に記載されている。
【0058】
記載された実施形態の利点は、シリコン基板又は別の有機ではない半導体基板上のCMOS半導体読み出し回路の製造技術と有機フォトダイオードの製造技術とを組み合わせることが可能になることである。
【0059】
別の利点は、有機フォトダイオードの許容波長と有機ではないCMOSセンサの解像度とを考慮して、赤外線(約1,400 nm)又は近赤外線(約940 nm)のセンサを形成することが可能になることである。
【0060】
記載された実施形態の別の利点は、行われる画素化がアノード側のマイクロレンズの追加と適合するということである。
【0061】
記載されているような画像センサ又は撮像装置の用途の内、視線追跡デバイス、顔認識、指紋センサ、暗視デバイス、カメラなどに注目すべきである。
【0062】
様々な実施形態が述べられている。様々な変更が当業者に想起される。特に、層61, 63, 65を形成する材料の選択は用途に応じて決められ、特に検出すべき所望の波長に応じて決められる。更に、フォトダイオードの感度を高めるために、カソード25に反射材料が使用されてもよい。金、又はタングステン及びモリブデンの合金が特に使用され得る。更に、記載されている実施形態の実際の実施は、上記に記載されている機能的な表示に基づく当業者の技能の範囲内である。
【0063】
本特許出願は、参照によって本明細書に組み込まれる仏国特許出願第17/62783 号明細書の優先権を主張している。