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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-16
(45)【発行日】2023-08-24
(54)【発明の名称】時計伝達システム
(51)【国際特許分類】
   G04B 13/00 20060101AFI20230817BHJP
   G04B 19/02 20060101ALI20230817BHJP
【FI】
G04B13/00
G04B19/02 Z
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020550862
(86)(22)【出願日】2019-03-21
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-08-02
(86)【国際出願番号】 EP2019057049
(87)【国際公開番号】W WO2019180119
(87)【国際公開日】2019-09-26
【審査請求日】2022-03-10
(31)【優先権主張番号】00383/18
(32)【優先日】2018-03-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CH
(73)【特許権者】
【識別番号】515188350
【氏名又は名称】ブルガリ オロジェリー ソシエテ アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】110000062
【氏名又は名称】弁理士法人第一国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ロシャ, ジャンヌ
(72)【発明者】
【氏名】ド ビアス, アルフレド
【審査官】菅藤 政明
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第4207777(US,A)
【文献】スイス国特許出願公開第712477(CH,A3)
【文献】中国特許出願公開第104776193(CN,A)
【文献】実開昭56-59683(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G04B 13/00
G04B 19/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1歯群(10a)を含む、第1可動部(10)と、
第2歯群(11a)を含む、第2可動部(11)であって、前記第1可動部と噛合し、前記第1可動部により駆動されることが意図される、第2可動部(11)と、
第3歯群(14a)を含む、第3可動部(14)であって、前記第2可動部と噛合し、前記第2可動部により駆動されることが意図される、第3可動部(14)と、
を含む、時計伝達システム(90)であって、
前記第1歯群の前記第2歯群との噛合は不可逆であり、前記第3歯群の前記第2歯群との噛合は不可逆であり、
前記システムは、フレーム(50)を含み、前記第1可動部は、前記フレーム上で第1真(10b)周りに旋回され、前記第2可動部は、前記フレーム上で第2真(11b)周りに旋回され、前記第3可動部は、前記フレームに対して可動な要素(20)上で第3真(14b)周りに旋回される
時計伝達システム(90)。
【請求項2】
前記第1歯群は非対称プロファイルの歯を含む、及びまたは前記第3歯群は非対称プロファイルの歯を含む、
請求項1に記載の伝達システム。
【請求項3】
前記第2歯群は対称プロファイルの歯を含む、
請求項1または2に記載の伝達システム。
【請求項4】
前記第2可動部は、時間情報または時間から派生する情報を表示するための要素(2)が固定される
求項1から3のいずれか一項に記載の伝達システム。
【請求項5】
前記可動要素は、前記フレーム上で第4真(20b)周りに旋回されるレバーである
請求項1から4のいずれか一項に記載の伝達システム。
【請求項6】
前記可動要素は、前記第2及び第3歯群が噛合する第1位置と、前記第2及び第3歯群が噛合しない第2位置との間で可動である、
請求項1から5のいずれか一項に記載の伝達システム。
【請求項7】
前記システムは、選択要素及びまたは修正要素を含み、前記可動要素は、前記選択要素の及びまたは前記修正要素の作動に応じて移動されるよう配置される
請求項1から6のいずれか一項に記載の伝達システム。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載のシステム(90)を含む、時計機構(100)
【請求項9】
請求項8に記載の機構及びまたは請求項1から7のいずれか一項に記載のシステムを含む、時計(200)
【請求項10】
請求項1から7のいずれか一項に記載の時計システム、または請求項1から7のいずれか一項に記載の時計システムを含む時計機構、または請求項1から7のいずれか一項に記載の時計システムを含む時計、の作動方法であって、
前記第2及び第3歯群が噛合する第1位置から、前記第2及び第3歯群が噛合しない第2位置へ移動するステップ、
前記第2可動部を第1方向または第2方向へ回転することで、時計表示を修正するステップ、
前記可動要素を前記第2位置から前記第1位置へ移動するステップ、
を含む、作動方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機械式時計伝達システムに関する。本発明はまた、当該システムを含む、時計機構に関する。本発明はまた、当該時計システムまたは当該時計機構を含む、時計に関する。
【背景技術】
【0002】
時計において、時間情報または時間から派生する情報を示す要素は、時計の装着者の動きや時計が受ける衝撃または時計の向きによる、制御されない動きに曝されないことが、重要である。要約すると、時間情報または時間から派生する情報を示す要素の動きが、時計の経験する加速によって引き起こされないことが重要である。
【0003】
これは、時間情報または時間から派生する情報を示す要素が著しい慣性を示すときに、例えば時間情報または時間から派生する情報を示す要素がディスクの場合、特に重要である。
【0004】
この問題は、時間情報または時間から派生する情報を示す要素が、歯車列の可動部に締着または固定されている場合には発生しない、なぜならば、時計の動作中にこれら可動部が常に主ぜんまいによって張力下にあるからである。
【0005】
しかしながら、動作間隙を有する伝達装置により歯車列にリンクされた時間情報または時間から派生する情報を示す他の要素については、その予期せぬ動きを、特にフラッタリングを、防止するための手段を設けることが必要となる。このため、例えば、伝達装置に摩擦を設けたり、ジャンパの助力により時間情報または時間から派生する情報を示す要素を割出すための提供がなされたりしてもよい。
【0006】
このような解決策は、エネルギーを消費し、時間測定に悪影響をもたらす。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、上記の欠点を改善可能で、従来技術から既知のシステムを改善可能な伝達システムを提供することにある。特に、本発明は、過度なエネルギー消費をすることなく、また時間測定に悪影響をもたらすことなく、時間情報または時間から派生する情報を示す要素の予期せぬ動きを回避可能な伝達システムを提案する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るシステムは、請求項1に定義される。
【0009】
システムの様々な実施形態は、従属請求項2からに定義される。
【0010】
本発明に係る機構は、請求項に定義される。
【0011】
本発明に係る時計は、請求項に定義される。
【0012】
本発明にかかる方法は、請求項10に定義される
【0013】
添付の図面は、例として、本発明にかかる時計の実施形態を示す。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、時計の実施形態に係る、文字盤側の模式図である。
図2図2は、文字盤が除去された時計の実施形態の模式図である。
図3図3は、時計の実施形態に係る機械式伝達システムの実施形態の図である。
図4図4は、時計の実施形態に係る機械式伝達システムの実施形態の図である。
図5図5は、時計の実施形態に係る機械式伝達システムの実施形態の図である。
図6図6は、時計の実施形態に係る機械式伝達システムの実施形態の図である。
図7図7は、時計の実施形態に係る機械式伝達システムの実施形態の図である。
図8図8は、時計の実施形態に係る機械式伝達システムの実施形態の図である。
図9図9は、時計の実施形態に係る機械式伝達システムの実施形態の図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
時計200の実施形態を、図1から図9を参照して以下に説明する。時計は、例えば小型時計、特に腕時計である。時計は、時計機構、特に機械式小型時計ムーブメント100を含む。時計ムーブメントは、例えば、手動巻き上げ型または自動巻き上げ型である。
【0016】
ムーブメントは、例えば香箱と発振器との間に、歯車列を含む。歯車列は、例えば、12時歯車7、特にムーブメントの中心に12時歯車を含み、その上に時を表示するための要素、例えば時表示用ディスク1が固定される。このディスクは、例えば、ムーブメント上にまたは取り付けられた文字盤上に設けられた、縁3と、特に時インデックス31を含む縁と協働する、三角や矢印といったマーキングを含む。この協働により、時を表示することが可能になる。
【0017】
当該ムーブメントにおいて、歯車列の一部である筒かな4は、12時間で1回転をする。歯車6と時歯車を駆動する歯車5は、筒かなに押圧される。
【0018】
当該ムーブメントにおいて、歯車5は、例えば、分表示用ディスク2といった分を表示するための要素を駆動する。当該ディスクは、例えば、ムーブメント上にまたは取り付けられた文字盤上に設けられた、縁と、特に時インデックスを含む縁と協働する、三角や矢印といったマーキングを含む。この協働により、分を表示することが可能になる。同じ縁を、時の表示と分の表示に用いることができる。ディスク2は、例えば、ディスククラウンである。
【0019】
ディスク2は、歯車8、9、10、11、及び12の歯車群を介して歯車5により駆動される。歯車5、8、9、10、及び11は、外歯群の歯車である。歯車12は、内歯群を有する歯付きリングである。ディスク2は、歯付リング12に取り付けられまたは固定される。
【0020】
歯付リング12は、例えば、ムーブメントのフレーム50上で、ローラ51の、例えばフレーム上に搭載された3つのローラ51の助力により、案内される。
【0021】
このため、ディスク2は、歯車5、8、及び9の下流の伝達装置90を介して歯車5により駆動される。
【0022】
時計伝達システム90は、
第1歯群10aを含む第1可動部10と、
第2歯群11aを含む第2可動部11であって、第1可動部と噛合し、第1駆動部により駆動されることが意図される第2可動部11と、
第3歯群14aを含む第3可動部14であって、第2可動部と噛合し、第2可動部により駆動されることが意図される第3可動部14と、
を含む。
【0023】
第1歯群の第2歯群との噛合は不可逆であり、第3歯群の第2歯群との噛合は不可逆である。
【0024】
「第1歯群の第2歯群との噛合が不可逆である」という表現は、噛合により、特に歯群により、第1可動部は第2可動部を両方向に駆動可能であり、第2可動部は第1可動部を一方向のみに駆動可能であることを意味する。
【0025】
「第3歯群の第2歯群との噛合は不可逆である」という表現は、噛合により、特に歯群により、第3可動部は第2可動部を両方向に駆動可能であり、第2可動部は第3可動部を一方向のみに駆動可能であることを意味する。
【0026】
更に、歯群は、第2可動部が第1可動部を駆動することのできる方向は、第2可動部が第3可動部を駆動することのできる方向と反対であるようにされる。
【0027】
この設計の結果、第2及び第3歯群が噛合すると、第2可動部は、第1または第3可動部のどちらかにより駆動されない限り、第1可動部も第3可動部も駆動することができない。
【0028】
上述のように、第2可動部は、時間情報または時間から派生する情報を表示するための要素が、特に分を表示するための要素が、特に噛合により固定される、可動部である。
【0029】
これらの不可逆性を達成するために、第1歯群は非対称プロファイルの歯を含む、及びまたは第3歯群は非対称プロファイルの歯を含む。「非対称」プロファイルとは、各歯が第1側面と第2側面を有し、第1及び第2側面は、それぞれ歯の頂点を通過する第1可動部の半径または第3可動部の半径に対して非対称であることを意味する。
【0030】
好ましくは、第2歯群は、対称プロファイルの歯を含む。第2歯群は、例えば、標準プロファイルの歯群である。これは、第1可動部が、回転の両方向に第2可動部を駆動可能にすることを保証する。
【0031】
第1可動部10は、フレーム50上で第1真10b周りに旋回される。
【0032】
第2可動部11は、フレーム50上で第2真11b周りに旋回される。
【0033】
第3可動部14は、フレーム50に対して可動である要素20上で第3真14b周りに旋回される。第3可動部は、自由に取り付けられる。第3可動部の回転に抵抗するわずかな摩擦が存在してもよい。
【0034】
可動要素は、例えば、フレーム50上で第4真20b周りに旋回されるレバーである。
【0035】
可動要素は、有利には、第2及び第3歯群が噛合する第1位置と、第2及び第3歯群が噛合しない第2位置との間で可動である。第1位置は、好ましくは、可動要素が第1位置において接触する第1ストップ21により定義される。第2位置は、好ましくは、可動要素が第2位置において接触する第2ストップ22により定義される。
【0036】
有利には、システムは、選択要素およびまたは修正要素を含む。可動要素は、好ましくは、選択要素の、およびまたは修正要素の、作動に応じて移動されるよう配置される。このため、有利には、可動要素は、時修正選択用要素が作動されたときに、または時修正要素が作動されたときに、第2位置に移動される。加えて、可動要素は、時修正選択用要素がもはや作動されなくなったときに、または時修正要素がもはや作動されなくなったときに、第1位置に移動されてもよい。
【0037】
選択要素およびまたは修正要素は、軸99を含んでもよい。
【0038】
特に、可動要素20の運動は、(図8で模式的に示される)軸99により制御される引き抜き片機構98により制御されてもよい。
【0039】
時計200またはムーブメント100または伝達システムの作動方法を実施する態様を、以下に説明する。
【0040】
伝達システムは、初めは、図8に示す構成にあると仮定する。この構成において、第1可動部10は、反時計回り方向に回転し、第2可動部を時計回り方向に駆動する。第2可動部は、第3可動部を反時計回り方向に駆動する。この構成において、第2歯群の反対側の側面は、一方では第1可動部と、他方では第3可動部と、接する。
【0041】
第2可動部が、自身を時計回り方向に回転させようとする加速にさらされると、第1及び第2歯群の間に突合せが生じ、第2可動部の回転が阻止される。
【0042】
第2可動部が、自身を反時計回り方向に回転させようとする加速にさらされると、第2及び第3歯群の間に突合せが生じ、第2可動部の回転が阻止される。
【0043】
第1及び第2歯群の歯は、少なくとも第1歯群の1本の歯が、第2歯群の2つの連続するまたは隣接する歯の間で最小限の間隙で位置されるように、また少なくとも第3歯群の1本の歯が、第2歯群の他の2つの連続するまたは隣接する歯の間で最小限の間隙で位置されるように、配置及びまたは寸法付けられる。例えば、間隙は、反対方向の2つの不動化の間の、第2可動部の第2真11b周りの角度移動は、10°以下である、または6°以下である、または4°以下であるというものである。これは、反対方向の2つの不動化の間の、回転軸周りの、歯付リング12の角度移動、従って時間情報または時間から派生する情報表示用要素2の移動は、3°以下である、または1.8°以下である、または1.2°以下であることになる。このような歯群の配置の結果、加速によって第2可動部が付勢されても、第1可動部または第3可動部との接触点で、第2可動部を不動化させる突合せが生じる。当該突合せは、上述の間隙の補償に続いて行われる。間隙の値を考慮すると、当該運動は、ユーザが感知できるものではない。加えて、当該突合せは、第2可動部を不動化し、不動化がなければ歯車5、8、9、10により伝達され筒かなの摩擦トルクを克服可能となりかねない運動を防止する。
【0044】
可動要素は、第2及び第3歯群が噛合する第1位置から、第2及び第3歯群が噛合しない第2位置へ移動される。この移動は、選択要素または修正要素の作用により実施される。この結果、伝達システムは、図9に示す構成になる。
【0045】
当該構成において、第1可動部10は、時表示を修正するために、時計回り及び反時計回り方向に回転される。
【0046】
その後可動要素は、第2位置から第1位置へ移動される。この移動は、選択要素または修正要素の作用により実施される。この結果、伝達システムは、図8に示す構成になる。
【0047】
本実施形態において、時間情報を表示するための要素または時間から派生する情報を表示するための要素は、分表示用可動部である。代替的に、時間情報を表示するための要素または時間から派生する情報を表示するための要素は、特に、秒表示用要素であってもよい。
【0048】
開示した実施形態において、時間情報を表示するための要素または時間から派生する情報を表示するための要素は、ディスクである。代替的に、時間情報を表示するための要素または時間から派生する情報を表示するための要素は、特に、針であってもよい。
【0049】
開示した実施形態において、第3可動部は、可動要素上で旋回される。代替的に、第3可動部は、直接フレーム上で旋回されてもよい。この場合、第2及び第3可動部は、永続的に噛合が維持され、時間表示の修正は、時計回り方向のみで実施可能である。
【0050】
上述の不可逆性を実施可能にすることを条件として、説明したものとは異なるあらゆるタイプの歯群を、第1、第2、及び第3歯群を形成するために使用してもよい。
【0051】
伝達システムは、時計情報の表示への適用で説明された。しかしながら、本伝達システムは、伝達システムが実施する駆動の不可逆性を保証する必要があるあらゆる適用に用いることができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9