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特許7333339燃料電池装置およびバッテリを有した供給装置、燃料電池車両、および供給装置を始動する方法
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  • 特許-燃料電池装置およびバッテリを有した供給装置、燃料電池車両、および供給装置を始動する方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-16
(45)【発行日】2023-08-24
(54)【発明の名称】燃料電池装置およびバッテリを有した供給装置、燃料電池車両、および供給装置を始動する方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/04291 20160101AFI20230817BHJP
   H01M 8/00 20160101ALI20230817BHJP
   H01M 8/04225 20160101ALI20230817BHJP
   H01M 8/04302 20160101ALI20230817BHJP
   H01M 8/04492 20160101ALI20230817BHJP
   H01M 8/04537 20160101ALI20230817BHJP
   H01M 8/04701 20160101ALI20230817BHJP
   H01M 8/04746 20160101ALI20230817BHJP
   B60L 50/60 20190101ALN20230817BHJP
   B60L 50/75 20190101ALN20230817BHJP
   B60L 58/13 20190101ALN20230817BHJP
   B60L 58/31 20190101ALN20230817BHJP
   B60L 58/32 20190101ALN20230817BHJP
   B60L 58/40 20190101ALN20230817BHJP
【FI】
H01M8/04291
H01M8/00 A
H01M8/00 Z
H01M8/04225
H01M8/04302
H01M8/04492
H01M8/04537
H01M8/04701
H01M8/04746
B60L50/60
B60L50/75
B60L58/13
B60L58/31
B60L58/32
B60L58/40
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020563997
(86)(22)【出願日】2019-04-09
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-10-07
(86)【国際出願番号】 EP2019058858
(87)【国際公開番号】W WO2020025179
(87)【国際公開日】2020-02-06
【審査請求日】2020-11-12
【審判番号】
【審判請求日】2022-06-01
(31)【優先権主張番号】102018212881.2
(32)【優先日】2018-08-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】591006586
【氏名又は名称】アウディ アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】AUDI AG
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【弁理士】
【氏名又は名称】富岡 潔
(72)【発明者】
【氏名】ブロイ,マルティン
(72)【発明者】
【氏名】シーデルマイアー,マクシミリアン
(72)【発明者】
【氏名】シュルテ,ファビアン
【合議体】
【審判長】窪田 治彦
【審判官】長馬 望
【審判官】五十嵐 康弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-74889(JP,A)
【文献】特開2008-166018(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L50/00-58/40
H01M 8/00- 8/2495
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電圧コンバータを介して電力を通過させることなく、少なくとも1つの負荷(2,3)に前記電力を供給する供給装置(1)であって、
燃料電池装置(5)があり、第1主電流ネットワーク接続部(10)および第2主電流ネットワーク接続部(11)を備えた主電流ネットワーク(4)と、バッテリ(7)があり、第1副電流ネットワーク接続部(12)および第2副電流ネットワーク接続部(13)を備えた副電流ネットワーク(6)とを備え、前記バッテリ(7)は、最大電圧によって上限が制限され、最小電圧によって下限が制限される動作電圧範囲を有し、前記バッテリ(7)は、前記少なくとも1つの負荷(2,3)に通電する動作電流強さ範囲を有し、前記第1主電流ネットワーク接続部(10)および前記第1副電流ネットワーク接続部(12)は、阻止ダイオード(14)を介して互いに接続され、前記第2主電流ネットワーク接続部(11)および前記第2副電流ネットワーク接続部(13)は、互いに直接接続され、前記主電流ネットワーク(4)は、前記電圧コンバータなしで前記副電流ネットワーク(13)に接続され、
前記燃料電池装置(5)のオフロード電圧は、多くとも前記バッテリ(7)の前記最大電圧に対応し、
前記主電流ネットワーク(4)には、霜始動条件を確認するために、前記燃料電池装置(5)または前記燃料電池装置(5)の個々の燃料セルのインピーダンス分光学計測を実行するように設計されたインピーダンス分光学装置(15)があり、一端で、前記インピーダンス分光学装置(15)は、前記第1主電流ネットワーク接続部(10)に接続され、他端で、前記インピーダンス分光学装置(15)は、前記第2主電流ネットワーク接続部(11)に接続され、
前記インピーダンス分光学装置(15)は、MOSFETである電力半導体スイッチとして設計され
前記インピーダンス分光学装置(15)は、取得された応答信号と、所定の信号値とを比較し、前記所定の信号値からの前記応答信号の偏差が霜状況の存在の兆候を示し、前記インピーダンス分光学装置(15)は、前記偏差が所定値に達した場合に前記霜始動条件の存在を検出することを特徴とする供給装置(1)。
【請求項2】
前記インピーダンス分光学装置(15)は、前記燃料電池装置(5)の電流コネクタ上で異なる周波数の交流を伝えるように設計されることを特徴とする請求項1に記載の供給装置(1)。
【請求項3】
前記インピーダンス分光学装置(15)は、前記燃料電池装置(5)の電流および/または電圧を計測するように設計されることを特徴とする請求項1または2に記載の供給装置(1)。
【請求項4】
前記バッテリ(7)は一定の数のバッテリセルを有し、および/または前記燃料電池装置(5)は一定の数の燃料セルを有し、前記バッテリセルの数および/または前記燃料セルの数は、前記燃料電池装置(5)の前記オフロード電圧が前記バッテリ(7)の前記最大電圧に対応するように選択されることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の供給装置(1)。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかに従う供給装置(1)を備えた燃料電池車両。
【請求項6】
請求項1~4のいずれかに従う供給装置(1)を始動する方法であって、
a.インピーダンス分光学装置(15)によって燃料電池装置(5)の電流コレクタ上で交流を伝えることと、
b.前記応答信号を取得し、該応答信号を前記所定の信号値と比較することと、
c1.前記所定の信号値からの前記応答信号の偏差が前記所定値に達したことを検出した場合に、霜始動動作で前記供給装置を始動し、前記霜始動動作では、前記燃料電池装置(5)が加熱される、もしくは反応物の質量流量が増加され
c2.前記所定の信号値からの前記応答信号の偏差が前記所定値よりも小さことを検出した場合に、通常動作で前記供給装置を始動することと、
を含む、供給装置(1)を始動する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つの負荷に電力を供給する供給装置に関し、該供給装置は、燃料電池装置が存在する主電流ネットワークを備えている。供給装置は、バッテリが存在する副電流ネットワークをさらに備え、バッテリは、最大電圧によって上限が制限され、最小電圧によって下限が制限される動作電圧範囲を有している。さらに、バッテリは、少なくとも1つの負荷に通電する動作電流強さ範囲を有する。本発明は、上記供給装置を有した燃料電池車両および上記供給装置を始動する方法にさらに関する。
【背景技術】
【0002】
供給装置がモータ車両で用いられるときには、供給装置は、実に様々な天候条件に晒される。ここで、周知の水の凝固点よりも低い温度によって、供給装置における上記燃料電池装置の始動中に、無視できない問題を必然的に伴い得る。例えば、凝固条件では、アノード空間および/またはカソード空間が氷によって閉塞されることがあり、このため、動作媒体が、燃料電池装置のアノードおよび/またはカソードで望ましい程度まで利用可能とならない。しかし、燃料電池装置の入口側および出口側では、霜により、フラップおよびバルブ等の制御構成要素の不正確な機能を生じさせることもあるか、もしくは、動作媒体を運ぶラインの閉塞を生じさせることもある。
【0003】
従って、例えば、霜始動の危険性のための必要条件が満たされるほどまでに、環境温度が摂氏5℃よりも低い場合に、燃料電池装置および従って該燃料電池装置を有した供給装置は、供給装置が通常動作へ移行する前に、霜始動動作で始動される。
【0004】
始動での上述の形式の供給装置の場合には、霜始動条件の検出のための周知の解決策は、DC/DCコンバータ(電圧コンバータまたはインバータ)を介して副電流ネットワークに常に接続された主電流ネットワークを提供する。ここで、DC/DCコンバータは、インピーダンス分光学機能を有しており、これにより、燃料電池装置内および従って燃料電池スタック内の含水量が決定されることができる。インピーダンス計測によって、特にインピーダンス分光学によって、個々の燃料セル内の膜抵抗、反応物の質量輸送、電荷移動抵抗および二重層キャパシタンスに関する結論が引き出されることができる。
【0005】
しかし、電圧コンバータの使用により、供給装置のために設けられなければならない重量および設置空間の増加が生じる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明の目的は、少なくとも1つの負荷に電力を供給する供給装置を規定することであり、供給装置は、最も簡潔な可能な設計を有し、同時に、燃料電池装置の状態についての可能な信頼のある情報を形成する。
【0007】
本発明の他の目的は、供給装置を有した燃料電池車両および上記供給装置を始動する方法を規定することであり、供給装置を用いて、または該供給装置では、霜始動条件の存在が簡潔な様式で検出されることができる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
供給装置に関する目的は、請求項1の特徴部の組み合わせを有した供給装置によって達成される。本発明の有利な発展を有した有利な実施形態が、従属請求項において規定される。ここで、特に、燃料電池装置のオフロード電圧が、多くともバッテリの最大電圧に対応しており、主電流ネットワークには、燃料電池装置または該燃料電池装置の個々の燃料セルのインピーダンス分光学計測を実行するように設計されたインピーダンス分光学装置がある。
【0009】
従って、次に、インピーダンス分光学装置が、燃料電池装置を確認し、燃料セルまたはその構成要素において、霜始動のための条件が存在するかを決定するために使用される。例えば、次に、霜始動条件が検出された場合に、加熱構成要素が燃料電池装置を加熱するために作動されることができ、これにより、氷によって閉塞された部分が再びアクセス可能となる。代替的に、反応物の質量流量が、セルまたは反応物空間のすすぎを生じさせるため、およびいかなる閉塞を外すために増加されることもできる。さらに、燃料電池装置がより低い電圧で動作されることが考慮される。燃料電池装置の低い電圧のために、グラムH2(gram H2)につき、より多くの熱が個々の燃料セルによって生成され、このため、燃料電池装置が自動的に加熱され、氷が溶解される。
【0010】
インピーダンス分光学装置が、主電流ネットワークおよび/または副電流ネットワークで用いられるDC/DCコンバータによる制限を受けることなく、特に、燃料電池装置の要求のために設計されることができる。さらに、インピーダンス分光学装置は、DC/DCコンバータの使用よりも費用対効果が大きい変換を提供し、これにより、簡素化された設計を有した供給装置の簡潔なモジュールを提供することができる。
【0011】
本発明の文脈の中で、例えば、駆動ユニットを有した駆動装置が、負荷として適格である。駆動装置が副電流ネットワークに電気的に接続されている場合には、駆動装置は、燃料電池車両を駆動するように、つまり燃料電池車両を駆動する駆動トルクを供給するために使用されることができる。この目的のために、駆動装置は、電気機械として設計された少なくとも1つの駆動ユニットを有し、主電流ネットワークおよび/または副電流ネットワークを介して電気エネルギが供給されることができる。自然に、駆動装置は、ハイブリッド駆動装置として、および、駆動装置が、駆動ユニットに加えて、該駆動ユニットとは異なる形式の少なくとも1つの付加的な駆動ユニットを備えることができるほどまでに設計されることができる。付加的な駆動ユニットは、例えば、内燃機関等として存在する。
【0012】
主電流ネットワークおよび副電流ネットワークは、燃料電池車両の搭載されたネットワークを形成するか、または該搭載されたネットワークの領域を少なくとも示すことが好ましい。主電流ネットワークでは、燃料電池装置の形態での第1電流源が設けられ、副電流ネットワークでは、バッテリの形態での第2電流源が設けられている。燃料電池装置は、単一の燃料セルの形式で、または代替的に複数の燃料セルを有した燃料電池スタックとして存在することができる。燃料電池装置は、搭載されたネットワークに電気エネルギを信頼性をもって供給するように用いられる。また、バッテリは、搭載されたネットワークに電気エネルギを信頼性をもって供給するように、およびエネルギ、特に燃料電池装置によって供給されるエネルギを中間貯蔵するように用いられる。
【0013】
負荷、従って電気機械は、燃料電池車両の駆動動作中に、副電流ネットワークに電気的に接続され、好ましくは、バッテリに永久に電気的に接続される。副電流ネットワークへの駆動ユニットの形式での負荷の接続は、例えば、インバータ、特にパルス幅変調インバータを介して実施されることができる。
【0014】
本発明の文脈の中で、インピーダンス分光学装置が燃料電池装置の電流コレクタ上で異なる周波数の交流を伝えるように設計される場合に有利であることが分かる。上記交流を用いて、インピーダンス、つまり交流電圧抵抗を決定することができる。インピーダンスが通常値からずれるときには、インピーダンスは、霜始動条件が存在するというフィードバック情報を提供する。
【0015】
現在までは、燃料電池装置のインピーダンスを決定するために、DC/DCコンバータによって、燃料電池装置の電流コレクタ上で上記交流を伝えることが可能であった。しかし、本発明の場合には、電圧コンバータ無しで済ますことが好ましいので、インピーダンス分光学装置が、燃料電池装置のインピーダンスを計測または決定することができるために用いられ、この機能は、供給装置のコンバータ無しの設計の場合に維持される。
【0016】
インピーダンス分光学装置が、自身で燃料電池装置5の電流および/または電圧を計測するように、好ましくは、燃料電池装置の一時的な経路を描くように設計されるという可能性が存在する。このように、インピーダンス分光学装置は、燃料電池装置の動作状態についての信頼性のある情報を提供する計測システムを形成する。燃料電池装置に対するエージング効果は、時間に対する計測曲線が描かれる場合に検出されることができる。
【0017】
好ましくは、主電流ネットワークは、第1主電流ネットワーク接続部および第2主電流ネットワーク接続部を備え、一端で、インピーダンス分光学装置は、第1主電流ネットワーク接続部に接続され、他端で、インピーダンス分光学装置は、第2主電流ネットワーク接続部に接続される。さらに、副電流ネットワークは、第1副電流ネットワーク接続部および第2副電流ネットワーク接続部を備え、第1主電流ネットワーク接続部および第1副電流ネットワーク接続部は、阻止ダイオードを介して接続され、第2主電流ネットワーク接続部および第2副電流ネットワーク接続部は、互いに直接接続される。従って、この程度まで、同じ電位が、第2主電流ネットワーク接続部および第2副電流ネットワーク接続部に存在する。他方では、第1主電流ネットワーク接続部および第1副電流ネットワーク接続部は、阻止ダイオードを介して間接的に接続されるのみである。燃料電池装置およびバッテリは互いに調整され、供給装置の非常に効率的な動作を可能にし、該供給装置は、電圧コンバータ無しで済ましてあるので、非常に簡潔で費用対効果の大きい設計によってさらに特徴づけられる。従って、この点について、主電流ネットワークが電圧コンバータ無しで副電流ネットワークに接続される場合に有利であることが分かる。
【0018】
好ましくは、阻止ダイオードの順電流が、主電流ネットワークから副電流ネットワークへ向かう方向にある。従って、主電流ネットワークにおける十分に高い電圧の場合には、電気エネルギが、主電流ネットワークから副電流ネットワークに到達する。対照的に、伝達の反対方向は、電流がバッテリから燃料電池装置へ流れないように除外される。容認できない高い電圧が主電流ネットワークへ印加されることが防止される。
【0019】
本発明の発展は、バッテリが一定の数のバッテリセルを有し、および/または燃料電池装置が一定の数の燃料セルを有し、バッテリセルの数および/または燃料セルの数は、燃料電池装置のオフロード電圧が前記バッテリの最大電圧に対応するように選択されることを提供する。しかし、燃料電池装置のオフロード電圧がバッテリの最大電圧の少なくとも85%、好ましくは最大電圧の90%、さらに好ましくは最大電圧の95%に実質的に対応することが好ましい。この構成によって、燃料電池装置およびバッテリの電圧電流特性曲線の調整が、即ちバッテリセルの数および/または燃料電池装置の燃料セルの数を経由して生じることができる。代替的または付加的に、例えば異なる公称電圧を有した異なる形式のバッテリセルが、燃料電池装置の特性曲線に対するバッテリの特性曲線の調整のために使用されることができる。
【0020】
さらに、動作電流強さ範囲を適切に選択することによって、および/または、バッテリセルの数および設計および/または燃料セルの数および設計またはバッテリセルの形式の数および設計を再び選択することによって、燃料電池装置によって提供される燃料電池電圧が、作電流強さ範囲にわたって、バッテリの最小電圧よりも大きくなる。この程度までの燃料電池装置およびバッテリの互いの調整は、燃料電池装置およびバッテリの設計において容易に実施される計測だけによって生じる。
【0021】
さらに、クロック様式で動作されることができる電力半導体スイッチとしてインピーダンス分光学装置が設計される場合に有利であることが分かる。これにより、好ましくは異なる周波数の交流が燃料電池装置上で伝達されることができる。MOSFET(酸化金属半導体電界効果トランジスタ)が、短い切り換え時間を有する、動作上で特に信頼性があり、かつ長寿命の電力半導体スイッチであることが証明されてきた。
【0022】
燃料電池車両に関する目的が、請求項9の特徴部の組み合わせを有した燃料電池車両を用いて達成される。上記燃料電池車両における電力供給装置の使用により、全体の重量がより小さくなり、設置空間およびコストに関する節約が達成される。
【0023】
方法に関する目的は、請求項10の特徴部の組み合わせを有した方法によって達成され、この方法は、以下のステップ、
a.インピーダンス分光学装置(15)によって燃料電池装置(5)の電流コレクタ上で交流を伝えることと、
b.応答信号を取得し、該応答信号を所定の信号値と比較することと、
c1.所定の信号値からの応答信号の偏差が少なくとも所定値に達したことを検出した場合に、霜始動動作で供給装置を始動すること、または、
c2.所定の信号値からの応答信号の偏差が所定値よりも小さくなったことを検出した場合に、通常動作で供給装置を始動することと、
によって特に特徴づけられる。
【0024】
従って、霜始動条件のための条件の検出は、燃料電池装置についてのインピーダンス計測によって、特に電気化学インピーダンス分光学によって実施される。この目的のために、特に簡潔な設計の供給装置が用いられる。信号として、例えば電圧信号または電流信号を考慮することができる。また、インピーダンス、つまり燃料電池装置または該燃料電池装置の個々の燃料セルの交流電流電圧抵抗を直接決定する可能性が切り開かれる。本発明の付加的な利点、特徴および詳細は請求項および好ましい実施形態の以下の説明から、および図面を参照して生じる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】燃料電池車両を駆動する駆動ユニットを有した駆動装置の形式で少なくとも1つの負荷に電力を供給する供給装置を示した概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1には、第1負荷2および第2負荷3に電力を供給する供給装置1の概略図が示されている。本発明の供給装置1は、好ましくは、図示せぬ付加的な負荷に電気エネルギを供給することもできる。
【0027】
供給装置1は、主電流ネットワーク4を備えており、該主電流ネットワーク4には、燃料電池装置5がある。さらに、供給装置1は、副電流ネットワーク6を備えており、副電流ネットワーク6には、動作電圧範囲を有したバッテリ7があり、上記動作電圧範囲は、最大電圧によって上限が制限され、最小電圧によって下限が制限されている。さらに、バッテリ7は、動作電流強さ範囲を有しており、該動作電流強さ範囲は、最小電流強さによって下限が制限されており、最大電流強さによって上限が制限されている。バッテリ7は、負荷2,3に通電するように設計される。
【0028】
負荷2は、電気機械の形式で存在する駆動ユニット8を備えている。この電気機械は、一般に、三相交流電流によって動作されることができ、電気機械は、燃料電池車両用の主電動機として設計されることが好ましい。主電流ネットワーク4および副電流ネットワーク6が高電圧および直流を供給するので、直流を三相交流電流へ変換するインバータ9が負荷2と付加的に関連している。負荷2の発展では、駆動ユニット8は、発電機として用いられることもでき、このため、例えば、制動プロセス中に、駆動ユニット8によって生成されたエネルギは、インバータ9を介してバッテリ7へ再び供給されることができる。
【0029】
また、負荷3は、主電流ネットワーク4および副電流ネットワーク6から構成される、実装されたネットワークに接続されることができる。負荷3として、例えば、燃料電池装置5、充電装置、12VDC-DCコンバータ、高電圧ヒータ、電気空調圧縮機等の第2ユニットを考慮することができる。
【0030】
図1から取得することができるように、主電流ネットワーク4は、コンバータまたは電圧コンバータなしで、副電流ネットワーク6に接続されている。燃料電池装置5は、第1主電流ネットワーク接続部10および第2主電流ネットワーク接続部11を備えている。副電流ネットワーク6のバッテリ7は、第1副電流ネットワーク接続部12および第2副電流ネットワーク接続部13をそれ相応に備えている。第1主電流ネットワーク接続部10は、阻止ダイオード14を介して第1副電流ネットワーク接続部12に接続されている。阻止ダイオード14の順電流は、主電流ネットワーク4から副電流ネットワーク6への方向にある。他方では、第2主電流ネットワーク接続部11は、第2副電流ネットワーク接続部13に直接に電気的に接続されている。
【0031】
さらに、主電流ネットワーク4には、燃料電池装置5のインピーダンス分光学計測を実行するように設計されたインピーダンス分光学装置15がある。この場合には、インピーダンス分光学装置15は、燃料電池装置5と並列に接続されており、燃料電池装置5の電流コレクタ上で異なる周波数の交流を伝えるように設計される。代替的または付加的に、インピーダンス分光学装置15は、燃料電池装置5の電流および/または電圧を計測するように、好ましくは、燃料電池装置5の一時的な経路を描くように設計される。好ましくは、インピーダンス分光学装置15は、一端で第1主電流ネットワーク接続部10に電気的に接続され、他端で第2主電流ネットワーク接続部11に電気的に接続される。ここでは、双方が直接接続部であり、このため、特に、阻止ダイオード14がインピーダンス分光学装置15に影響を及ぼさない。インピーダンス分光学装置15は、クロック様式で動作されることができる電力半導体スイッチ、特にMOSFETとして形成されることができる。
【0032】
霜始動条件の検出のために、MOSFETは、このように形成されたインピーダンス分光学装置15が燃料電池装置の電流コレクタ上で交流を伝えるようにクロック様式で動作される。そして、応答信号が取得され、所定の信号値と比較される。所定の信号値からの応答信号の偏差が検出された場合には、これは、霜状況の存在の兆候を示すことができる。しかし、僅かな偏差が受け入れられることができ、このため、偏差範囲が規定される。従って、所定値による偏差は、通常の動作での供給装置1の始動を依然として導く。しかし、所定の偏差範囲外であり、かつ所定の偏差値よりも大きい偏差が検出された場合には、供給装置1は、霜始動動作で動作または始動される。
【0033】
このような設計では、供給装置1の非常に効率的な動作を確実にすることができる。従って、同様のことが、上記供給装置1によって電気エネルギが供給される駆動装置に従って当て嵌められる。さらに、供給装置1は、該供給装置1が燃料電池車両で用いられるときに設置空間およびコストに関する利点が達成されるように、非常に簡潔に実施されることができる。
【符号の説明】
【0034】
1 供給装置
2 負荷
3 (第2)負荷
4 主電流ネットワーク
5 燃料電池装置
6 副電流ネットワーク
7 バッテリ
8 駆動ユニット
9 インバータ
10 第1主電流ネットワーク接続部
11 第2主電流ネットワーク接続部
12 第1副電流ネットワーク接続部
13 第2副電流ネットワーク接続部
14 阻止ダイオード
15 インピーダンス分光学装置
図1