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特許7333355無線通信システムにおけるシンボルの送信および受信
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-16
(45)【発行日】2023-08-24
(54)【発明の名称】無線通信システムにおけるシンボルの送信および受信
(51)【国際特許分類】
   H04L 47/6275 20220101AFI20230817BHJP
   H04W 72/566 20230101ALI20230817BHJP
【FI】
H04L47/6275
H04W72/566
【請求項の数】 18
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021011308
(22)【出願日】2021-01-27
(65)【公開番号】P2021125878
(43)【公開日】2021-08-30
【審査請求日】2021-04-22
【審判番号】
【審判請求日】2023-02-14
(31)【優先権主張番号】20154825
(32)【優先日】2020-01-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】519431812
【氏名又は名称】ヒタチ・エナジー・スウィツァーランド・アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】HITACHI ENERGY SWITZERLAND AG
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ミケーレ・ルビソット
(72)【発明者】
【氏名】ジボ・パン
(72)【発明者】
【氏名】ロジャー・ヤンソン
(72)【発明者】
【氏名】ヘンリク・ヘルストレーム
(72)【発明者】
【氏名】マレク・セプロニス
【合議体】
【審判長】山澤 宏
【審判官】中野 裕二
【審判官】富澤 哲生
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-534103(JP,A)
【文献】特表2019-531643(JP,A)
【文献】特表2019-526979(JP,A)
【文献】特開平10-117213(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 45/00-65/80
H04W 72/566
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
物理層プロトコルデータユニットPDUの送信を準備するための方法であって、無線通信システム(100)においてパケット送信機(120)によって実行される前記方法は、
前記パケット送信機(120)からパケット受信機(130)へ送信中のシンボルの第1のストリーム(210,210a,210b)よりも優先順位の高いシンボルの第2のストリーム(220)を送信する必要があることを検出するステップ(S102)を含み、シンボルの各ストリームは対応する物理層PDUの一部であり、前記方法はさらに、
理層においてプリエンプションされている前記シンボルの第1のストリーム(210,210a,210b)を示す専用タグ(240)を、前記シンボルの第1のストリーム(210,210a,210b)のうち最新の送信済みシンボルの後に挿入するステップ(S104)と、
前記パケット受信(130)に前記シンボルの第2のストリーム(220)を送信するために、前記専用タグ(240)の後に前記シンボルの第2のストリーム(220)のうち複数のシンボルを挿入するステップ(S106)とを含む、方法。
【請求項2】
前記シンボルの第2のストリーム(220)を前記パケット受信機(130)に向けて送信するステップ(S108)をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記シンボルの第1のストリーム(210,210a,210b)のうち残りのシンボルがいずれも、前記シンボルの第2のストリーム(220)の後に挿入される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記シンボルの第2のストリーム(220)のうち予め定められた数のシンボルが前記専用タグ(240)の後に挿入される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記パケット送信機(120)は、センサ、ゲートウェイ、ブレーカ、プロテクタ、またはこれらのいずれかの組合わせである、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
物理層プロトコルデータユニットPDUの受信のための方法であって、無線通信システム(100)においてパケット受信機(130)によって実行される前記方法は、
シンボルにフラグメント化されているシンボルの第1のストリーム(210,210a,210b)を受信するステップ(S202)を含み、シンボルの各ストリームは対応する物理層PDUの一部であり、前記方法はさらに、
理層においてプリエンプションされている前記シンボルの第1のストリーム(210,210a,210b)を示す専用タグ(240)を、前記シンボルの第1のストリーム(210,210a,210b)のうち最新の受信済みシンボルの後に受信するステップ(S204)とを含む、方法。
【請求項7】
シンボルにフラグメント化されている前記シンボルの第2のストリーム(220)のうち複数のシンボルを、前記専用タグ(240)の後に受信するステップ(S206)をさらに含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記シンボルの第1のストリーム(210,210a,210b)のうち残りのシンボルはいずれも、前記シンボルの第2のストリーム(220)のうち前記複数のシンボルの後に受信される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記シンボルの第2のストリーム(220)のうち予め定められた数のシンボルが前記専用タグ(240)の後に受信される、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
前記パケット受信機(130)は、センサ、ゲートウェイ、ブレーカ、プロテクタ、またはこれらのいずれかの組合わせである、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記複数のシンボルがOFDMシンボルである、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記専用タグ(240)が特別なプリアンブルである、請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記シンボルの第1のストリーム(210,210a,210b)が、前記物理層自体において、または前記物理層よりも高いプロトコル層においてプリエンプションされている、請求項1~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記無線通信システム(100)が無線の産業用通信システム(100)である、請求項1~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
物理層プロトコルデータユニットPDUの送信を準備するための、無線通信システム(100)におけるパケット送信機(120)であって、処理回路(122)を備え、前記処理回路は、前記パケット送信機(120)に、
前記パケット送信機(120)からパケット受信機(130)への送信中であるシンボルの第1のストリーム(210,210a,210b)よりも優先順位の高いシンボルの第2のストリーム(220)を送信する必要があることを検出させ、シンボルの各ストリームは対応する物理層PDUの一部であり、さらに、
理層においてプリエンプションされている前記シンボルの第1のストリーム(210,210a,210b)を示す専用タグ(240)を、前記シンボルの第1のストリーム(210,210a,210b)のうち最新の送信済みシンボルの後に挿入させ、
前記パケット受信機(130)に前記シンボルの第2のストリーム(220)を送信するために、前記専用タグ(240)の後に前記シンボルの第2のストリーム(220)のうち複数のシンボルを挿入させる、パケット送信機(120)。
【請求項16】
物理層プロトコルデータユニットPDUの受信のための、無線通信システム(100)におけるパケット受信器(130)であって、処理回路(132)を備え、前記処理回路は、前記パケット受信器(130)に、
シンボルにフラグメント化されているシンボルの第1のストリーム(210,210a,210b)を受信させ、シンボルの各ストリームは対応する物理層PDUの一部であり、さらに、
理層においてプリエンプションされている前記シンボルの第1のストリーム(210,210a,210b)を示す専用タグ(240)を、前記シンボルの第1のストリーム(210,210a,210b)のうち最新の受信済みシンボルの後に受信させる、パケット受信器(130)。
【請求項17】
物理層プロトコルデータユニットPDUの送信を準備するためのコンピュータプログラム(1210a)であって、コンピュータコードを含み、前記コンピュータコードは、無線通信システム(100)におけるパケット送信機(120)の処理回路(122)上で実行されると、前記パケット送信機(120)に、
前記パケット送信機(120)からパケット受信機(130)へ送信中のシンボルの第1のストリーム(210,210a,210b)よりも優先順位の高いシンボルの第2のストリーム(220)を送信する必要があることを検出させ(S102)、シンボルの各ストリームは対応する物理層PDUの一部であり、さらに、
理層においてプリエンプションされている前記シンボルの第1のストリーム(210,210a,210b)を示す専用タグ(240)を、前記シンボルの第1のストリーム(210,210a,210b)のうち最新の送信済みシンボルの後に挿入させ(S104)、
前記パケット受信機(130)に前記シンボルの第2のストリーム(220)を送信するために、前記専用タグ(240)の後に前記シンボルの第2のストリーム(220)のうち複数のシンボルを挿入させる、コンピュータプログラム(1210a)。
【請求項18】
物理層プロトコルデータユニットPDUの受信のためのコンピュータプログラム(1210b)であって、コンピュータコードを含み、前記コンピュータコードは、無線通信システム(100)におけるパケット受信器(130)の処理回路(132)上で実行されると、前記パケット受信器(130)に、
シンボルにフラグメント化されているシンボルの第1のストリーム(210,210a,210b)を受信させ(S202)、シンボルの各ストリームは対応する物理層PDUの一部であり、さらに、
理層においてプリエンプションされている前記シンボルの第1のストリーム(210,210a,210b)を示す専用タグ(240)を、前記シンボルの第1のストリーム(210,210a,210b)のうち最新の受信済みシンボルの後に受信させる(S203)、コンピュータプログラム(1210b)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本明細書に提示される実施形態は、無線通信システムにおけるパケット受信機へのシンボルの送信のための方法、パケット送信機、コンピュータプログラム、およびコンピュータプログラムプロダクトに関する。本明細書に提示される実施形態はさらに、無線通信システムにおけるパケット送信機からのシンボルの受信のための方法、パケット受信機、コンピュータプログラム、およびコンピュータプログラムプロダクトに関する。
【背景技術】
【0002】
背景
産業用通信システムは、典型的には、リアルタイムでの制約を伴う緊急を要するメッセージ(たとえば、障害発生時に人々および機器に被害が及ぶのを防ぐために迅速に処理されなければならない緊急コマンド)を配信することが必要とされている。これらのメッセージに加えて、同じ通信ネットワークは、典型的には、たとえばファームウェア更新、システム監視または診断のために、緊急性のないトラフィックも処理することが要求される。緊急を要するメッセージは通常短く、非常に速やかに送信することができるが、緊急性のないメッセージはかなり長く、長時間にわたって通信チャネルを占有する可能性がある。結果として、産業用通信ネットワークにおいて、さまざまな優先順位をメッセージに割当てるとともに当該優先順位に応じてこれらメッセージを処理するためのメカニズムが必要とされている。
【0003】
この理由から、現在の通信ネットワーク規格は、パケット送信機とパケット受信機との間でパケットをやり取りするためのさまざまな優先順位レベルをサポートしている。パケット優先順位を実現する一例がIEEE802.11拡張分散調整機能(Enhanced Distribution Coordination Function:EDCF)によって表されている。これに従い、さまざまなトラフィックフローが同時に無線通信チャネルへのアクセスを要求しているときに優先順位が実現される。これによりパケット送信機のキュー内で衝突が起こった場合、その競合状態は、より優先順位の高いパケットが常に最初に送信されることによって解決される。同様のシステムが、WirelessHART(登録商標:HARTは「Highway Addressable Remote Transducer(ハイウェイアドレス可能遠隔トランスデューサ)」の略称)およびWIA-PA(Wireless networks for Industrial Automation-Process Automation(産業用自動プロセス自動化のための無線ネットワーク)の略称)などの産業用無線規格においても用いられている。
【0004】
優先順位に関して区別をするための別のメカニズムは、各送信の完了後の待ち時間として定義されるフレーム間隔(Inter Frame Space:IFS)を適合させるためのものであり、これは、搬送波感知多重アクセス/衝突回避方式(carrier-sense multiple access with collision avoidance:CSMA/CA)のチャネルアクセス方式に基づいて無線ネットワーク内に必然的に存在している。したがって、優先順位方式は、より短いIFSを優先順位のより高いトラフィッククラスに割当てることによって実現され得る。このようなメカニズムは、たとえば、WIA-PAにおいて用いられている。
【0005】
上述のすべてのメカニズムは、さまざまなパケットに優先順位を付ける何らかの方法を提供するものであって、これにより、優先順位の高いパケットに関する全体的な待ち時間を減らすことを可能にする。しかしながら、これらのメカニズムでも共有される制限がある。一例として、パケットの送信を開始した後、パケットの送信を停止することができるメカニズムがないため、新しいパケットは、送信中のパケットよりも優先順位が高いものであっても、現在のパケットの送信が終了するのを待たなければならない。より優先順位の低い送信中のパケットが優先順位のより高いパケットに比べて長い場合、待ち時間の大幅な質低下が予想され得る。
【0006】
有線の産業用ネットワークにおいて、この問題を克服するための一方法は、プリエンプション戦略を実現することである。この文脈におけるプリエンプションとは、より優先順位の高いパケットを優先して、優先順位の低いパケットの送信を中断できることを意味している。このような一例が文献US7,558,269B2に開示されており、これによれば、パケット送信機において、プリエンプションビットがインターネットプロトコル(Internet protocol:IP)パケットのヘッダに挿入されると、現在のパケットが停止中であることと、より優先順位の高い新しいパケットの送信が直ちに開始されることとがパケット受信機に通知される。
【0007】
しかしながら、無線ネットワーク、特に無線の産業用通信システムのための同様のメカニズムは存在しない。それにも関わらず、このような機能は、さまざまな優先順位を有する複数のパケットの送信をサポートする無線通信システム、たとえば電力システムの自動化のために用いられるシステムなど、において必要とされている。
【0008】
したがって、さまざまな優先順位を有する複数のパケットの送信および受信のためのメカニズムの改善が依然として必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】US7,558,269B2
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
概要
本明細書における実施形態の目的は、上述の問題を引起すことなく、または少なくとも上述の問題を緩和もしくは軽減しつつ、さまざまな優先順位を有する物理層PDUのシンボルの効率的な送信および受信を可能にすることである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
第1の局面に従うと、物理層PDUの送信を準備するための方法が提供される。当該方法はパケット送信機によって実行される。当該方法は、パケット送信機からパケット受信機に送信中のシンボルの第1のストリームよりも高い優先順位を有するシンボルの第2のストリームを送信する必要があることを検出するステップを含む。当該方法は、シンボルの第1のストリームがプリエンプションされているパケットを示す専用タグを、シンボルの第1のストリームのうち最新の送信済みシンボルの後に挿入するステップを含む。当該方法は、パケット受信機にシンボルの第2のストリームを送信するために、専用タグの後にシンボルの第2のストリームのうち複数のシンボルを挿入するステップを含む。
【0012】
第2の局面に従うと、PDUの送信を準備するためのパケット送信機が提供される。パケット送信機は処理回路を備える。処理回路は、パケット送信機に、パケット送信機からパケット受信機に送信中のシンボルの第1のストリームよりも高い優先順位を有するシンボルの第2のストリームを送信する必要があることを検出させるように構成される。処理回路は、パケット送信機に、シンボルの第1のストリームがプリエンプションされているパケットを示す専用タグを、シンボルの第1のストリームのうち最新の送信済みシンボルの後に挿入させるように構成されている。処理回路は、パケット受信機にシンボルの第2のストリームを送信するために、パケット送信機に、専用タグの後にシンボルの第2のストリームのうち複数のシンボルを挿入させるように構成されている。
【0013】
第3の局面に従うと、PDUの送信を準備するためのパケット送信機が提供される。パケット送信機は、パケット送信機からパケット受信機に送信中のシンボルの第1のストリームよりも高い優先順位を有するシンボルの第2のストリームを送信する必要があることを検出するように構成された検出モジュールを備える。パケット送信機は、シンボルの第1のストリームがプリエンプションされているパケットを示す専用タグを、シンボルの第1のストリームのうち最新の送信済みシンボルの後に挿入するように構成された挿入モジュールを備える。パケット送信機は、パケット受信機にシンボルの第2のストリームを送信するために、専用タグの後にシンボルの第2のストリームのうち複数のシンボルを挿入するように構成された挿入モジュールを備える。
【0014】
第4の局面に従うと、無線通信システムにおけるパケット受信機へのシンボルの送信のためのコンピュータプログラムが提供される。コンピュータプログラムは、パケット送信機の処理回路上で実行されると、パケット送信機に第1の局面に従った方法を実行させるコンピュータプログラムコードを含む。
【0015】
第5の局面に従うと、物理層PDUの受信のための方法が提供される。当該方法は、パケット受信機によって実行される。当該方法は、複数のシンボルにフラグメント化されているシンボルの第1のストリームを受信するステップを含む。当該方法は、シンボルの第1のストリームがプリエンプションされているパケットを示す専用タグを、シンボルの第1のストリームのうち最新の受信済みシンボルの後に受信するステップを含む。
【0016】
第6の局面に従うと、物理層PDUの受信のためのパケット受信機が提供される。パケット受信機は処理回路を備える。処理回路は、パケット受信機に、複数のシンボルにフラグメント化されているシンボルの第1のストリームを受信させるように構成されている。処理回路は、パケット受信機に、シンボルの第1のストリームがプリエンプションされているパケットを示す専用タグを、シンボルの第1のストリームのうち最新の受信済みシンボルの後に受信させるよう構成されている。
【0017】
第7の局面に従うと、物理層PDUの受信のためのパケット受信機が提供される。パケット受信機は、複数のシンボルにフラグメント化されているシンボルの第1のストリームを受信するように構成された受信モジュールを備える。パケット受信機は、シンボルの第1のストリームがプリエンプションされているパケットを示す専用タグを、シンボルの第1のストリームのうち最新の受信済みシンボルの後に受信するように構成された受信モジュールを備える。
【0018】
第8の局面に従うと、物理層PDUの受信のためのコンピュータプログラムが提供される。コンピュータプログラムは、パケット受信機の処理回路上で実行されると、パケット受信機に第5の局面に従った方法を実行させるコンピュータプログラムコードを含む。
【0019】
第9の局面に従うと、第4の局面および第8の局面のうちの少なくとも1つに従ったコンピュータプログラムと、当該コンピュータプログラムが格納されているコンピュータ可読記憶媒体とを含むコンピュータプログラムプロダクトが提供される。コンピュータ可読記憶媒体は非一時的なコンピュータ可読記憶媒体であり得る。
【0020】
有利には、これらの方法、これらのパケット送信機、これらのパケット受信機、これらのコンピュータプログラム、およびこのコンピュータプログラムプロダクトは、さまざまな優先順位を有する物理層PDUのシンボルの効率的な送信および受信を可能にする。
【0021】
有利には、これらの方法、これらのパケット送信機、これらのパケット受信機、これらのコンピュータプログラム、およびこのコンピュータプログラムプロダクトには、上述の問題または少なくとも上述の問題が生じない。
【0022】
有利には、現在の物理層PDUの送信が終了するのを待つのではなく、現在のシンボルの送信が完了した直後に、優先順位のより高い物理層PDUの送信を開始させてもよい。
【0023】
有利には、待ち時間は、最長で数百マイクロ秒またはさらには数ミリ秒かかる可能性のある物理層PDU全体の送信が終了するのを待つという標準的なアプローチと比べて大幅に短縮される。
【0024】
記載される実施形態の他の目的、特徴および利点が、以下の詳細な開示、添付の従属請求項および添付の図面から明らかになるだろう。
【0025】
概して、添付の特許請求の範囲で使用されるすべての用語は、本明細書中で特に明示的に定義されない限り、当該技術分野におけるそれらの通常の意味に従って解釈されるべきである。「或る/1つの/その要素、装置、構成要素、手段、モジュール、動作など」と言及する場合、それらはすべて、特に明記されない限り、その要素、装置、構成要素、手段、モジュール、動作などのうちの少なくとも1つの例を指すものとして広義に解釈されるべきである。本明細書に開示されるいずれの方法の動作も、明示的に記載されない限り、開示されるとおりの順序で実行されなくてもよい。
【0026】
図面の簡単な説明
ここで、添付の図面を参照して、本発明の概念を例として説明する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】実施形態に従った無線通信システムを示す概略図である。
図2】従来技術に従った2つの物理層PDUのシンボルの送信を示す概略図である。
図3】一実施形態に従ったプリエンプションを用いた2つの物理層PDUのシンボルの送信を示す概略図である。
図4】実施形態に従った方法を示すフローチャートである。
図5】実施形態に従った方法を示すフローチャートである。
図6】実施形態に従った方法を示すフローチャートである。
図7】実施形態に従った方法を示すフローチャートである。
図8】実施形態に従ったパケット送信機におけるバッファ処理を示す概略図である。
図9】実施形態に従ったパケット送信機におけるバッファ処理を示す概略図である。
図10】一実施形態に従ったパケット送信機の機能ユニットを示す概略図である。
図11】一実施形態に従ったパケット受信機の機能ユニットを示す概略図である。
図12】一実施形態に従ったコンピュータ可読手段を備えるコンピュータプログラムプロダクトの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
詳細な説明
本発明の概念は、本発明の概念を含む特定の実施形態が示されている添付の図面を参照して以下においてより十分に説明されるだろう。しかしながら、本発明の概念は、多くの異なる形態で具現化され得るものであって、本明細書に記載される実施形態に限定されるものと解釈されるべきではない。むしろ、これらの実施形態は、本開示が完全かつ完璧であるとともに本発明の概念の範囲を当業者に十分に伝えるように、例として提供されるものである。説明全体を通して、同様の番号は同様の要素を指している。破線によって示される動作または特徴はいずれも、任意なものと見なされるべきである。
【0029】
図1は、本明細書に提示される実施形態が適用可能である無線通信システム100を示す概略図である。いくつかの実施形態においては、無線通信システム100は無線の産業用通信システムである。無線通信システム100は、パケット送信機(Tx)120およびパケット受信機(Rx)130を備える。パケット送信機120およびパケット受信機130は、参照符号110で示されるように、無線チャネルなどの無線通信チャネルを介して互いに通信するように構成されている。以下においては、一般性を損なうことなく、パケット送信機120が物理層PDUをパケット受信機130に送信するものと想定する。いくつかの例においては、パケット送信機120およびパケット受信機130の各々は、無線通信システム100におけるセンサ、ゲートウェイ、ブレーカ、プロテクタ、またはこれらのいずれかの組合せの一部であるか、これらと一体化されるか、またはこれらと並置される。
【0030】
上述したように、典型的な無線通信システム100においては、物理層PDUの送信が開始されるとプリエンプションは起こらない。図2は、200において、シンボルの2つのストリーム210、220を概略的に示しており、ストリームの各々は、送信中である1つの物理層PDUを表わしており、シンボルの2つのストリーム210、220がプリアンブル230によって分離されている。したがって、図2に示されるように、通信チャネルがビジーである間、より優先順位の高い物理層PDUがパケット送信機120の送信キューに入る場合、パケット送信機120は、より優先順位の高い第2の物理層PDUのシンボルの送信を開始する前に、進行中の(すなわち、第1の物理層PDUのすべてのシンボルの)送信の完了を待たなければならない。
【0031】
本明細書で開示される実施形態は、より優先順位の高い物理層PDUの待ち時間を減らすことを可能にするとともに、特に、待ち時間が少なく信頼性の高い産業用無線通信システム100を対象としたカスタマイズされた物理(physical:PHY)層に依存している。
【0032】
データのビットストリームが不連続番号の直交周波数分割多重(orthogonal frequency-division multiplexing:OFDM)シンボルに符号化される際に適用されるOFDM変調を、以下、具体例として使用することとする。しかしながら、当業者が理解するように、本明細書に開示される実施形態は、OFDMを考慮しない無線通信システム100にも適用可能である。実際には、ほとんどの無線通信システム100においては、物理層PDUはPHY層において時間領域内の複数の連続するシンボルに分割されている。これらのシンボルの形状および長さは異なっている。
【0033】
このように、本明細書に開示される実施形態は、無線通信システム100におけるパケット送信機120からのシンボルの送信およびシンボルの受信を準備するためのメカニズムに関する。このようなメカニズムを得るために、パケット送信機120と、パケット送信機120によって実行される方法と、パケット送信機120の処理回路上で実行されるとパケット送信機120に当該方法を実行させるコードをたとえばコンピュータプログラムの形態で含むコンピュータプログラムプロダクトとが提供される。このようなメカニズムを得るために、パケット受信器130と、パケット受信器130によって実行される方法と、パケット受信器130の処理回路上で実行されるとパケット受信器130に当該方法を実行させるコードをたとえばコンピュータプログラムの形態で含むコンピュータプログラムプロダクトとがさらに提供される。
【0034】
本明細書に開示される実施形態は、プリエンプションのためにPHY層において物理層PDUをシンボルにフラグメント化することに基づいている。次いで、パケット送信機120は、現在の物理層PDUのシンボルの送信が終了するのを待つのではなく、現在の物理層PDUの現在のシンボルの送信が完了した直後に、より優先順位の高い物理層PDUのシンボルの送信を開始するように構成されている。OFDMシンボルなどの単一シンボルの送信時間は一般的に非常に短く、その範囲は、IEEE802.11gでは4μsから、カスタマイズされたシステムではさらにより短い時間となっている。したがって、待ち時間は、最長で数百マイクロ秒、またはさらには数ミリ秒かかる可能性のある物理層PDU全体の送信を待つという従来のアプローチと比べて著しく短縮される。
【0035】
複数のシンボルの物理層PDUを、プリエンプトされ得る1つの単数シンボルを有する複数の物理層PDUにフラグメント化する際に起こり得る1つの問題は、各々のシンボルがヘッダ情報を含まない可能性があることである。これは、パケット受信機130が異なる物理層PDUに属する複数のシンボルを区別できないので、パケット受信機130が物理層PDUの復号を成功させるために、物理層PDUの全シンボルが連続ストリームとして受信されなければならないことを意味している。
【0036】
したがって、提案される発明概念によれば、以下において専用タグと称される特別なプリアンブルは、より優先順位の低い物理層PDUの送信がより優先順位の高い物理層PDUによってプリエンプトされるたびに、パケット送信機120によって挿入される。このようなプリエンプトされた送信ストリームの一例を図3に示す。図3は300において、シンボルに関して、シンボルの2つのシーケンスを概略的に示す。各シーケンスが、送信中の1つの物理層PDUを表わしている。プリアンブル230の後、シンボルの第1のストリームの第1の部分210aが送信され、次いで、専用タグ240が(たとえば、1つ以上のシンボルの形態で)送信され、次いで、シンボルの第2のストリーム220が送信され、次いで、シンボルの第1のストリームの第2の部分210bにおいて、第1のストリームの残りのシンボルが送信される。パケット受信機130は、このような専用タグを検出すると、プリエンプション中であることを理解し、受信中のシンボルのストリームの処理を一時停止し、新たなストリームのシンボルの処理を開始する。
【0037】
ここで図4を参照すると、一実施形態に従ったパケット送信機120によって実行される、シンボルの送信を準備するための方法が示されている。
【0038】
シンボルの第1のストリームよりも優先順位の高いシンボルの第2のストリームを送信する必要がある場合、パケット送信機120がシンボルの第1のストリームを送信するものと想定する。第1の例に従うと、シンボルの第2のストリームは、無線通信システム100における制御機能に関係しているのに対して、シンボルの第1のストリームは、無線通信システム100において捕捉されるセンサデータに関係している。第2の例に従うと、シンボルの第2のストリームは、無線通信システム100におけるアラームイベントに関係しているのに対して、シンボルの第1のストリームは、無線通信システム100における制御機能または無線通信システム100において捕捉されるセンサデータに関係している。シンボルの各ストリームは、パケット送信機120からパケット受信機130に送信される1つ以上のそれぞれ対応する物理層PDUに属する可能性がある。したがって、いくつかの実施形態においては、シンボルの各ストリームはそれぞれ対応する物理層PDUの一部をなしている。特に、パケット送信機120は、アクションS102を実行するように構成される。
【0039】
S102:パケット送信機120は、シンボルの第2のストリームをパケット受信機130に送信する必要があることを検出する。シンボルの第2のストリームは、パケット送信機120からパケット受信機130に送信中のシンボルの第1のストリームよりも高い優先順位を有する。
【0040】
無線通信システム100の物理層におけるシンボルからシンボルへのフラグメント化は、プリエンプションを実現するために用いられる。上述したように、いくつかの例においては、シンボルはOFDMシンボルである。専用タグは、このようなプリエンプションが行われていることをパケット受信機130に通知するために、シンボル送信機によって挿入される。上述したように、いくつかの例においては、専用タグは特別なプリアンブルである。いくつかの非限定的な例においては、専用タグは、パケット送信機120およびパケット受信機130の両方によって専用タグとして認識される複数ビットの特定のシーケンス(すなわち、特定のビットパターンを有する複数ビットのシーケンス)で構成される。このため、特別なプリアンブルは、このような複数ビットの特定のシーケンスで構成され得る。特に、パケット送信機120は、アクションS104を実行するように構成される。
【0041】
S104:パケット送信機120は専用タグを挿入する。いくつかの例においては、専用タグは、シンボルの第1のストリームのうち最新の送信済みシンボルの後にシンボルのストリームに配置されるように挿入される。専用タグは、シンボルの第1のストリームがプリエンプションされていることを示す。したがって、専用タグは、シンボルの第1のストリームがプリエンプションされていることをパケット受信機130に通知する。
【0042】
次いで、優先されたシンボルのストリームのうち複数のシンボルが挿入される。特に、パケット送信機120はアクションS106を実行するように構成される。
【0043】
S106:パケット送信機120は、パケット受信機130にシンボルの第2のストリーム220を送信するために専用タグ240の後にシンボルの第2のストリーム220のうち複数のシンボルを挿入する。
【0044】
ここで、パケット送信機120によって実行される、無線通信システム100におけるパケット受信機130へのシンボルの送信のさらなる詳細に関する実施形態を開示する。
【0045】
いくつかの局面においては、シンボルの第2のストリーム220が送信される。特に、一実施形態に従うと、パケット送信機120は、以下を実行するように構成される(オプションのアクションS106)。
【0046】
S108:パケット送信機120は、シンボルの第2のストリーム220をパケット受信機130に向けて送信する。
【0047】
いくつかの局面においては、送信する必要のあるシンボルの第1のストリーム210,210a,210bのより多くのシンボルが存在する。したがって、一実施形態に従うと、シンボルの第1のストリーム210,210a,210bの残りのシンボルはいずれも、シンボルの第2のストリーム220の後に挿入(および送信)される。
【0048】
シンボルの第1のストリームのうち最後のシンボルの終端にマーク付けするためのさまざまな方法があり得る。一実施形態に従うと、シンボルの第2のストリームのうち予め定められた数のシンボルが専用タグの後に挿入される。パケット送信機120およびパケット受信機130はともにこの予め定められた数を認識している。いくつかの例においては、予め定められた数の値は固定されている。他の例においては、予め定められた数の値は、パケット送信機120からパケット受信機130に事前に(または、少なくともシンボルの第2のストリームのうち複数シンボルの送信の開始時に)通信される。他の局面においては、第2の専用タグは、シンボルの第2のストリームのうち最後のシンボルの後に挿入される。この第2の専用タグを検出すると、パケット受信機130は、次のシンボルがシンボルの第1のストリームに属していることを知る。
【0049】
パケット送信機120に関するさらなる局面、例および実施形態を以下に開示する。
ここで図5を参照すると、一実施形態に従ったパケット受信機130によって実行される、無線通信システム100におけるパケット送信機120からのシンボルの受信のための方法が示される。
【0050】
上述したように、シンボルの第1のストリームよりも優先順位の高いシンボルの第2のストリームを送信する必要がある場合、パケット送信機120がシンボルの第1のストリームを送信するものと想定する。この場合、さらに、パケット受信機130がこのシンボルの第1のストリームを受信するものと想定する。したがって、パケット受信機130は、アクションS202、S204を実行するように構成される。
【0051】
S202:パケット受信機130はシンボルの第1のストリームを受信する。上述したように、シンボルの第1のストリームはシンボルにフラグメント化される。
【0052】
S204:パケット受信機130は、シンボルの第1のストリームのうち最新の受信済みシンボルの後に専用タグ240を受信する。専用タグは、シンボルの第1のストリームがプリエンプションされていることを示す。このため、専用タグは、シンボルの第1のストリームがプリエンプションされていることをパケット受信機130に通知する。
【0053】
パケット受信機130によって実行される、無線通信システム100におけるパケット送信機120からのシンボルの受信についてのさらなる詳細に関する実施形態をここで開示する。
【0054】
いくつかの局面においては、パケット受信機130は、専用タグの後に、シンボルの第2のストリームのうち複数のシンボルを受信する。特に、一実施形態に従うと、パケット受信機130は、以下の(オプションの)アクションS206を実行するように構成される。
【0055】
S206:パケット受信機130は、専用タグ240の後に、シンボルの第2のストリーム220のうち複数のシンボルを受信する。上述したように、シンボルの第2のストリームはシンボルにフラグメント化される。
【0056】
いくつかの局面においては、パケット受信機130は、最後に、シンボルの第1のストリームのうち残りのシンボルをいずれも受信する。このため、一実施形態に従うと、シンボルの第1のストリーム210,210a,210bのうち残りのシンボルはいずれも、シンボルの第2のストリーム220のうち複数のシンボルの後にパケット受信機130によって受信される。
【0057】
上述したように、シンボルの第1のストリームのうち最後のシンボルの終端にマーク付けするためのさまざまな方法があり得る。一実施形態に従うと、シンボルの第2のストリームのうち予め定められた数のシンボルが専用タグの後に受信される。パケット送信機120およびパケット受信機130はともに、この予め定められた数を認識している。上述したように、他の局面においては、第2の専用タグは、シンボルの第2のストリームのうち最後のシンボルの後に挿入される。この第2の専用タグを検出すると、パケット受信機130は、次のシンボルがシンボルの第1のストリームに属していることを知る。
【0058】
次に、パケット送信機120およびパケット受信機130に関するさらに他の局面、例および実施形態について説明する。
【0059】
パケット受信機130は、各々の物理層PDUにおける受信中の専用タグに関するシンボルのストリームを連続的にスキャンし得る。一実施形態に従うと、このような専用タグが検出されると、図6のフローチャートに従った処理が実行される。
【0060】
S301:パケット受信機130がプリアンブルを検出する。
S302:パケット受信機130は、別の物理層PDUに属する(上記にてシンボルの第1のストリームと称される)シンボルのストリームが処理中であるかどうかをチェックする。処理中である場合、アクションS303に進み、処理中でない場合、アクションS304に進む。
【0061】
S303:パケット受信機130は、専用タグの後にシンボルのための通常の物理層PDU処理を開始する。
【0062】
S304:パケット受信機130は、検出されたプリアンブルが上述の専用タグであるかどうかをチェックする。専用タグである場合、アクションS305に進み、専用タグでない場合、アクションS306に進む。
【0063】
S305:パケット受信機130がスケジューリングのエラーを信号で伝え、実施中の物理層PDU処理が中断される。
【0064】
S306:パケット受信機130が、RAMにおけるアドレスを処理するパケット受信機130内の機能ブロックに「PDU中断」信号を送信し、その結果、優先順位の高い新しいシンボルのストリームが、処理中のシンボルのストリームとは異なるアドレス空間を占有することが可能となる。
【0065】
S307:専用タグの後のシンボルが処理され、新しいアドレス空間に格納される。
S308:優先順位の高いシンボルのストリームのうち全シンボルが処理されると、「中断完了」信号がアドレス処理ブロックに送られて、元の優先順位の低いシンボルのストリームの処理が再開される。
【0066】
PDUが処理された後、シンボルのデータコンテンツが、ハードウェアおよびソフトウェアの両方によってアクセス可能なRAMに書込まれる。優先順位の低いシンボルのストリームのデータと優先順位の高いシンボルのストリームのデータとを区別するために、これら2つのストリームのデータがRAM内の異なるアドレスに書込まれる。これは、アドレス処理ブロックに「PDU中断」信号および「中断完了」信号を送ることによって対処され得る。しかしながら、物理層PDUの処理が開始されると、入来するシンボルがすべて、データとして解釈されることとなる。したがって、上述の専用タグは、その処理が「PDU中断」信号の送信前に始まっているので、依然として、優先順位の低い物理層PDUについてのデータとして解釈されることとなるだろう。この問題を解決するために、図7のフローチャートに示されるように、「PDU中断」信号が受信される(S401)と、アドレス処理ブロックは、まず、ポインタを1シンボル分だけ戻して専用タグを破棄し(S402)、現在のアドレスポインタを記憶し(S403)、アドレスポインタを次のPDUの先頭に移動させ(S404)、「中断完了」信号が検出されるまでアドレスポインタをインクリメントし、アドレスポインタを記憶位置に戻す(S405)。
【0067】
アドレス中断プロセスは、パケット受信機130がさまざまなシンボルのストリームを切替えること、および、部分的に復号された物理層PDUに関する情報を記憶することを可能にする。ソフトウェア層は、物理層PDUが完全に復号されるまでこの挙動について通知されないので、シンボルレベルのフラグメント化またはプリエンプションメカニズムを認識する必要はない。
【0068】
シンボルの第1のストリームは、物理層自体において、または物理層よりも上位のプロトコル層においてプリエンプションされる可能性がある。これに関連する局面をここで、図8および図9を参照して開示する。
【0069】
プリエンプションメカニズムは物理層(すなわちプロトコル層1)において実装されており、ここで、ベースバンドは、上位層(すなわち、プロトコル層1よりも上位のプロトコル層:以下、仮想層と記載する)における入力バッファから入来するバイトのストリームからシンボルを生成する。この代替例のパケット送信機120が図8に概略的に示されている。この代替例は、パケット送信機120が、2つの入力バッファ127a、127bに接続された2つのベースバンドモジュール128a、128bを有することを必要とする。一方は、優先順位の高いバイトのストリーム260のためのものであり、もう一方は、優先順位の低いバイトのストリーム260のためのものであり、セレクタ129aはアンテナに接続されている。この場合、セレクタは、プリエンプションが必要なときに2つのベースバンドモジュールを切替えるように構成されている。優先順位の低いシンボルのストリーム210よりも優先される優先順位の高いシンボルのストリーム220のうち第1のシンボルは、プリエンプションが進行中であることを認識するためにパケット受信機130によって必要とされる専用タグ240である。
【0070】
代替的には、プリエンプションは、仮想層において直接実現される。したがって、いくつかの実施形態においては、パケットはバイトレベルでフラグメント化される。この代替例についてのパケット送信機120は、図9に概略的に示されている。セレクタ129bは、優先順位の低いバッファ127aから入来するバイトのストリーム270から、優先順位の高いバッファ127bから入来するバイトのストリーム280に切替えるように構成されている。このため、この代替例に従うと、1つのベースバンドモジュール128aだけが必要となる。プリエンプション中であることをパケット受信機130に認識させるために、優先順位の高いバイトのストリーム280の先頭に専用タグ290が挿入される。この代替例では、ハードウェアリソースの使用頻度の低下(たとえば、ベースバンドモジュールを1つだけ)と、(典型的にはバイトがシンボルよりも短いので)プリエンプション時間の短縮とが可能となり得る。
【0071】
図10は、いくつかの機能ユニットに関して、一実施形態に従ったパケット送信機120の構成要素を概略的に示す。処理回路122は、たとえば記憶媒体126の形態で(図12のような)コンピュータプログラムプロダクト1210aに格納されたソフトウェア命令を実行することができる好適な中央処理ユニット(central processing unit:CPU)、マルチプロセッサ、マイクロコントローラ、デジタル信号プロセッサ(digital signal processor:DSP)などのうちの1つ以上の任意の組合わせを用いて提供される。処理回路122はさらに、少なくとも1つの特定用途向け集積回路(application specific integrated circuit:ASIC)またはフィールドプログラマブルゲートアレイ(field programmable gate array:FPGA)として提供されてもよい。
【0072】
特に、処理回路122は、パケット送信機120に上述したような1セットの動作またはアクションを実行させるように構成される。たとえば、記憶媒体126は当該1セットの動作を格納してもよく、処理回路122は、記憶媒体126から当該1セットの動作を取出してパケット送信機120に当該1セットの動作を実行させるように構成されてもよい。当該1セットの動作は、実行可能な命令のセットとして提供されてもよい。このため、処理回路122は、これにより本明細書に開示される方法を実行するように構成される。
【0073】
記憶媒体126はまた、たとえば、磁気メモリ、光メモリ、ソリッドステートメモリ、またはさらには遠隔搭載メモリのうちいずれか1つまたはこれらの組合わせであり得る永続的なストレージを備え得る。
【0074】
パケット送信機120はさらに、パケット受信機130との通信のための通信インターフェイス124を含み得る。このため、通信インターフェイス124は、アナログ構成要素およびデジタル構成要素を備える1つ以上の送信機および受信機を含み得る。
【0075】
処理回路122は、たとえばデータおよび制御信号を通信インターフェイス124および記憶媒体126に送ることによって、データおよびレポートを通信インターフェイス124から受信することによって、かつ、データおよび命令を記憶媒体126から取出すことによって、パケット送信機120の全体的動作を制御する。パケット送信機120の他の構成要素や関連する機能は、本明細書で提示される概念を不明瞭にしないために記載されない。
【0076】
図11は、いくつかの機能ユニットに関して、一実施形態に従ったパケット受信機130の構成要素を概略的に示す。処理回路132は、たとえば記憶媒体136の形態で(図12のような)コンピュータプログラムプロダクト1210bに格納されたソフトウェア命令を実行することができる好適な中央処理ユニット(CPU)、マルチプロセッサ、マイクロコントローラ、デジタル信号プロセッサ(DSP)などの1つ以上の任意の組合わせを用いて提供される。処理回路132はさらに、少なくとも1つの特定用途向け集積回路(ASIC)またはフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)として提供され得る。
【0077】
特に、処理回路132は、パケット受信器130に、上で開示したような1セットの動作またはアクションを実行させるように構成される。たとえば、記憶媒体136は当該1セットの動作を格納し得るとともに、処理回路132は、記憶媒体136から当該1セットの動作を取出してパケット受信機130に当該1セットの動作を実行させるように構成され得る。当該1セットの動作は実行可能な命令のセットとして提供されてもよい。したがって、処理回路132は、これにより、本明細書に開示される方法を実行するように構成される。
【0078】
記憶媒体136はまた、たとえば、磁気メモリ、光メモリ、ソリッドステートメモリ、またはさらには遠隔搭載メモリのうちいずれか1つまたはこれらの組合わせであり得る永続的なストレージを備え得る。
【0079】
パケット受信機130はさらに、パケット送信機120との通信のための通信インターフェイス134を含み得る。このため、通信インターフェイス134は、アナログ構成要素およびデジタル構成要素を備える1つ以上の送信機および受信機を備え得る。
【0080】
処理回路132は、たとえば、データおよび制御信号を通信インターフェイス134および記憶媒体136に送ることによって、データおよびレポートを通信インターフェイス134から受信することによって、かつ、データおよび命令を記憶媒体136から取出すことによって、パケット受信機130の全体的動作を制御する。パケット受信機130の他の構成要素や関連する機能は、本明細書に提示されている概念を不明瞭にしないために記載しない。
【0081】
図12は、コンピュータ可読手段1230を備えるコンピュータプログラムプロダクト1210a、1210bの一例を示す。このコンピュータ可読手段1230には、コンピュータプログラム1220aを格納することができ、コンピュータプログラム1220aは、処理回路122ならびにこれに動作可能に連結されたエンティティおよびデバイス、たとえば通信インターフェイス124および記憶媒体126に、本明細書に記載する実施形態に従った方法を実行させることができる。このため、コンピュータプログラム1220aおよび/またはコンピュータプログラムプロダクト1210aは、本明細書で開示するようなパケット送信機120の任意のアクションを実行するための手段を提供し得る。このコンピュータ可読手段1230には、コンピュータプログラム1220bを格納することができ、コンピュータプログラム1220bは、処理回路132ならびにこれに動作可能に連結されたエンティティおよびデバイス、たとえば通信インターフェイス134および記憶媒体136に、本明細書に記載する実施形態に従った方法を実行させることができる。したがって、コンピュータプログラム1220bおよび/またはコンピュータプログラムプロダクト1210bは、本明細書に開示するパケット受信機130の任意のアクションを実行するための手段を提供し得る。
【0082】
図12の例においては、コンピュータプログラムプロダクト1210a、1210bは、コンパクトディスク(compact disc:CD)またはデジタル多用途ディスク(digital versatile disc:DVD)またはブルーレイディスクなどの光ディスクとして示されている。コンピュータプログラムプロダクト1210a、1210bはまた、ランダムアクセスメモリ(random access memory:RAM)、読取り専用メモリ(read-only memory:ROM)、消去可能なプログラム可能読取り専用メモリ(erasable programmable read-only memory:EPROM)、または、電気的消去可能なプログラム可能読取り専用メモリ(electrically erasable programmable read-only memory:EEPROM)などのメモリとして具現化され得るとともに、より特定的にはユニバーサル・シリアル・バス(universal serial bus:USB)メモリなどの外部メモリまたはコンパクトフラッシュ(登録商標)メモリなどのフラッシュメモリにおけるデバイスの不揮発性記憶媒体として具現化され得る。このため、コンピュータプログラム1220a、1220bは、ここでは、図示される光ディスク上のトラックとして概略的に示されており、コンピュータプログラム1220a、1220bはコンピュータプログラムプロダクト1210a、1210bに適した任意の方法で格納することができる。
【0083】
いくつかの実施形態を参照しながら主に本発明の概念を説明してきた。しかしながら、当業者によって容易に理解されるように、上に開示したもの以外の他の実施形態が、添付の特許請求の範囲によって定義されるように本発明の概念の範囲内で等しく実現可能である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12