(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-16
(45)【発行日】2023-08-24
(54)【発明の名称】ペメトレキセドの安定な注射溶液
(51)【国際特許分類】
A61K 31/519 20060101AFI20230817BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20230817BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230817BHJP
A61J 1/05 20060101ALI20230817BHJP
【FI】
A61K31/519
A61K9/08
A61P35/00
A61J1/05 315Z
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021165012
(22)【出願日】2021-10-06
(62)【分割の表示】P 2017125576の分割
【原出願日】2017-06-27
【審査請求日】2021-10-06
(31)【優先権主張番号】201621018113
(32)【優先日】2016-06-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IN
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】503422000
【氏名又は名称】サン ファーマシューティカル インダストリーズ リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SUN PHARMACEUTICAL INDUSTRIES LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100143823
【氏名又は名称】市川 英彦
(74)【代理人】
【識別番号】100183519
【氏名又は名称】櫻田 芳恵
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100160749
【氏名又は名称】飯野 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100160255
【氏名又は名称】市川 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】サマルス、クマール
(72)【発明者】
【氏名】パラシャント、ケーン
(72)【発明者】
【氏名】スバス、バララム、ボーミック
(72)【発明者】
【氏名】ウダイ、クマール、パンディット
(72)【発明者】
【氏名】ニサルグ、ビピンチャンドラ、ミストリー
(72)【発明者】
【氏名】ラマジ、カルシャンバイ、バル
【審査官】伊藤 幸司
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-021012(JP,A)
【文献】国際公開第2015/050230(WO,A1)
【文献】実開昭60-017545(JP,U)
【文献】特表2013-532566(JP,A)
【文献】国際公開第2015/092758(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/144814(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/121523(WO,A1)
【文献】Journal of Pharmaceutical and Biomedical Analysis,2015年,105,pp.46-54
【文献】アメリカ薬局方案PF41(2015),PF41(6):Nov.-Dec.2015,2015年,第429~437頁
【文献】Molecules,2015年,20,pp.10004-10031
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
A61P
A61J
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶存酸素含有量が0ppm~0.2ppmの範囲内にある、ペメトレキセドまたはその薬剤的に許容できる塩、注射用水を含む安定な注射溶液であって、
前記溶液は、
安定剤も可溶化剤も含まず、1個以上の部分的または完全な溝を有する溝付きストッパーで密閉された容器に入れられ、
前記容器は、ペメトレキセド含有量を表示したラベルが貼られており、
室温で1年以上貯蔵した際に、
前記溶液は、下記構造:
【化1】
の不純物Fを0.6%以下含み、
前記溶液中のペメトレキセドのアッセイ値は、前記ペメトレキセド含有量の表示の95重量%~105重量%の範囲内である、安定な注射溶液。
【請求項2】
前記容器が、硬質材料でできている、請求項1に記載の安定な注射溶液。
【請求項3】
前記容器が、ガラスバイアルであり、そのデザインが、ネック領域のバイアルの縁の内側に径方向刻み目を含む、請求項
1に記載の安定な注射溶液。
【請求項4】
前記容器が、ポーチ、バッグ、フィルム、オーバーラップ、またはカートンから選択される二次容器により包装される、請求項1に記載の安定な注射溶液。
【請求項5】
前記容器中の前記溶液が、空気圧を低下させ、次いで不活性ガスを供給することにより前記圧を開放する繰り返しに付され、次に湿熱殺菌に付される、請求項1に記載の安定な注射溶液。
【請求項6】
室温で1年以上貯蔵した際に、
前記溶液は、下記構造:
【化2】
の不純物Bを0.24%以下含み、
前記溶液中のペメトレキセドのアッセイ値は、前記ペメトレキセド含有量の表示の95重量%~105重量%の範囲内である、請求項1に記載の安定な注射溶液。
【請求項7】
室温で1年以上貯蔵した際に、
前記溶液は、下記構造:
【化3】
の不純物Cを0.24%以下含み、
前記溶液中のペメトレキセドのアッセイ値は、前記ペメトレキセド含有量の表示の95重量%~105重量%の範囲内である、請求項1に記載の安定な注射溶液。
【請求項8】
以下のステップ:
i. 注射用水中のペメトレキセドまたはその薬剤的に許容できる塩の溶液を製造し、前記溶液を容器に充填するステップ;
ii. ステップ(i)の前記容器に、1個以上の溝を有する溝付きストッパーで部分的に栓をし、密閉チャンバにそれらを入れるステップ;
iii. 約100トル~約560トルの低下させた空気圧を前記密閉チャンバに適用し、次いで、不活性ガスを供給することにより、前記圧を開放して、約760トルの気圧を達成するステップ;
iv. ステップ(iii)を2~8回繰り返すステップ;
v. 前記容器を完全に栓をして密閉し、それらを湿熱殺菌に付すステップ
を含む、請求項1に記載の安定な注射溶液の製造方法。
【請求項9】
ステップ(iv)の後、1時間以上の期間、前記密閉チャンバ内に前記容器を保持するステップをさらに含む、請求項
8に記載の、安定な注射溶液の製造方法。
【請求項10】
前記保持するステップが、任意に1回以上繰り返される、請求項
9に記載の、安定な注射溶液の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶存酸素含有量が0ppm~0.2ppmの範囲内にあるペメトレキセドまたはその薬剤的に許容できる塩の安定な注射溶液、およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ペメトレキセド、(ペメトレキセド二酸としても知られている)N-[4-[2-(2-アミノ-4,7-ジヒドロ-4-オキソ-lH-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-5-イル)エチル]ベンゾイル]-L-グルタミン酸は、いくつかの葉酸要求酵素の強力な阻害剤であり、非小細胞肺癌および中皮腫の治療に有用である。
ペメトレキセドの現在市販されている製品(Alimta(登録商標))は、凍結乾燥粉末の形態で入手可能である。医薬品のこの形態はある種の不都合を有し、例えば、これらの凍結乾燥物の製造方法は、複雑で費用がかかり、粉末の再構成は、追加の作業ステップを要し、このことは、作業を行う作業員への望ましくないリスクおよび希釈エラーのリスクを引き起こすという不都合が挙げられる。ペメトレキセドを注射前に希釈を要する濃縮溶液として調製する場合には、ペメトレキセドは、抗酸化剤の使用により安定化されていることが知られている。このような製品の例は、Caduceus Pharma Ltd/Actavis UK Ltdによる輸液用の25mg/mlのペメトレキセド濃縮物である。USFDAの認可を待っているEagle Pharmaceuticalsによる別の濃縮溶液製品も、抗酸化剤としての塩酸システインの助けを借りる。非常に酸化されすいペメトレキセドの水溶液を安定化するために抗酸化剤を使用するが、抗酸化剤、およびアミン、アミノ酸、可溶化剤、錯化剤などのようなその他の賦形剤などのこれらの賦形剤は、異質剤(extraneous agent)となり、可能な限り避けられなければならない。世界中の保健衛生当局は、医薬組成物、特に注射/非経口用途用医薬組成物中のこのような異質剤(extraneous agent)のレベルについて、非常に関心を持っている。化学療法を受けている患者は、既に重度の抗腫瘍薬の副作用に直面しており、これらの異質剤(extraneous agent)が引き起こし得る副作用のわずかな増加にさえも耐えることができないので、ペメトレキセドのような抗腫瘍薬を含んでなる組成物については、これらの薬剤を避けることが、一層望ましい。これらの賦形剤を避けること、および長期間の安定性を有するペメトレキセドの注射可能な水溶液をさらに達成することは、課題であり、満たされていない要求である。抗酸化剤の存在を避けながらペメトレキセドの濃縮無菌溶液を製造することに対して、わずかな試みがなされているが、ほとんど成功していない。
【0003】
1つのこのような試みがなされ、PCT国際公開公報第2012-121523号(以後‘523出願と呼ぶ)に記載されている。これは、注射用抗酸化剤非含有溶液の形態で医薬製剤を製造するための方法を与え、前記方法は、(a)水性媒体または溶液のパージなどの様々な脱気方法により、ペメトレキセドまたはその塩を含んでなる注射用溶液中の溶存酸素濃度を制御するステップ、および(b)グローブボックス内でステップ(a)から得られた溶液で注射用容器を充填するステップを含んでなる。国際公開‘523は、充填作業中の酸素を制御するためのグローブバッグなどの従来型の密閉システムを論じている。しかしながら、充填中にグローブボックスなどの密閉システムを使用するこのような方法は、手作業を必要とし、製薬工場でGMP環境下で非経口製剤を大規模に商業生産するのに適さない。さらに、規定の組成物は、溶存酸素レベルが1ppm以下であり、溶存酸素レベルが0~0.2ppmのペメトレキセドの注射溶液を与えない。したがって、以下の特徴を有するペメトレキセド、またはその薬剤的に許容できる塩の安定な注射溶液を開発する必要がある。
・ 0~0.2ppmの溶存酸素含有量、
・ 安定剤(抗酸化剤)および可溶化剤などの異質剤(extraneous agent)を含まない、
・ 長期の貯蔵安定性、
・ 無菌性の高い保証、
・ 大規模での商業生産が可能。
【0004】
本発明は、これらの必要性を満たし、上記の望ましい特徴を有するペメトレキセドまたはその薬剤的に許容できる塩の安定で注射可能な水溶液を与える。本発明者は、ペメトレキセドまたはその薬剤的に許容できる塩の安定な注射溶液を、溶存酸素レベルが0~0.2ppmの無菌溶液であって、安定剤(抗酸化剤)および可溶化剤などの異質剤(extraneous agent)を含まない前記溶液を与えるように製造するための商業的に適する方法を開発した。溶液は、安定であり、貯蔵した際、全不純物は、長期間の貯蔵で、2.0重量%未満である。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、溶存酸素含有量が0ppm~0.2ppmの範囲内にある、ペメトレキセドまたはその薬剤的に許容できる塩、注射用水を含んでなる安定な注射溶液であって、安定剤または可溶化剤を含まず、ストッパーで密閉された容器に入れられ、前記注射溶液中の全不純物が、室温で1年間貯蔵された場合、ペメトレキセドの2.0重量%よりも多くなるまで増加することはない、前記注射溶液を与える。
【0006】
本発明は、溶存酸素含有量が0ppm~0.2ppmの範囲内にあるペメトレキセドまたはその薬剤的に許容できる塩の安定な注射溶液であって、安定剤または可溶化剤を含まず、ストッパーで密閉された容器に入れられている前記注射溶液の製造方法をさらに与える。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】フランジ部分「1」およびプラグ部分「2」を有する一脚ストッパー(Iglooストッパー)の図表示である。プラグ部分は、放射状に配置された1つの溝「3」およびベント位置ニブ「4」を有する。
【
図2】フランジ部分「1」およびプラグ部分「2」を有する二脚ストッパーの図表示である。プラグ部分は、直径方向に配置された溝「3」およびベント位置ニブ「4」を有する。
【
図3】フランジ部分「1」およびプラグ部分「2」を有する三脚ストッパーの図表示である。プラグ部分は、溝「3」およびベント位置ニブ「4」を有する。
【
図4A】フランジ部分「1」およびプラグ部分「2」を有する先行技術に従った溝がない従来型のストッパーの図表示であり、前記プラグ部分は、固体であり、溝を全く有しない。
【
図4B】フランジ部分「1」およびプラグ部分「2」を有する先行技術に従った溝がない従来型のストッパーの図表示であり、前記プラグ部分は、固体であり、溝を全く有しない。
【発明を実施するための形態】
【0008】
既知の不純物には、不純物B、不純物C、および不純物Fが含まれる。不純物Bは、本明細書で使用される場合、ペメトレキセドの分解不純物であり、(2S,2’S)-2,2’-[[(5R)-2,2’-ジアミノ-4,4’,6-トリオキソ-1,4,4’,6,7,7’-ヘキサヒドロ-1’H,5H-5,6’-ビピロロ2,3-d]ピリミジン-5,5’-ジイル]ビス(エチレンベンゼン-4,1-ジイルカルボニルイミノ)]ジペンタン二酸(dipentanedioic acid)と化学的に呼ばれる。不純物Bの化学構造は以下の通りである。
【0009】
【0010】
不純物Cは、本明細書で使用される場合、別のペメトレキセドの分解不純物であり、(2S,2’S)-2,2’-[[(5S)-2,2’-ジアミノ-4,4’,6-トリオキソ-1,4,4’,6,7,7’-ヘキサヒドロ-1’H,5H-5,6’-ビピロロ[2,3-d]ピリミジン-5,5’-ジイル]ビス(エチレンベンゼンン-4,1-ジイルカルボニルイミノ)]ジペンタン二酸(dipentanedioic acid)と化学的に呼ばれる。不純物Cの化学構造は以下の通りである。
【0011】
【0012】
不純物Fは、本明細書で使用される場合、ペメトレキセドの酸化不純物であり、化学的には、4-{2-[(RS)-2-アミノ-4,6-ジオキソ-4,5,6,7-テトラヒドロ-3H-ピロロ[2,3-d]ピリジミン-5-イル]エチル}ベンゾイル)-L-グルタミン酸二ナトリウムと呼ばれている。不純物Fは、ケトペメトレキセドとして一般に知られており、以下の化学構造を有する。
【0013】
【0014】
全不純物、薬剤、不純物B、不純物C、不純物Fを含む既知の不純物、および単一の未知の不純物のアッセイを、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)などの好適な技術により分析する。一実施形態において、HPLC技術を、アセトニトリルおよびギ酸アンモニウムバッファーの混合物を含んでなる移動相(pHが約3.5)を用いて適用し、クロマトグラフィーカラムは、C-8((150×4.6)mm,3.5μ)カラムであり、クロマトグラムは、UV分光法を用いて記録する。
【0015】
用語「安定」は、本明細書で使用される場合、本発明に係るペメトレキセドまたはその薬剤的に許容できる塩を含んでなる注射溶液が、室温での1年以上の貯蔵下で維持されたときに、ペメトレキセドの2.0重量%以下の全不純物を有することを意味することが意図されている。本発明の溶液を、室温(15℃~30℃)で1年以上の間貯蔵する場合に、全不純物は、ペメトレキセドの2.0重量%よりも多くなるまで増加することはなく、好ましくはペメトレキセドの1.3重量%以下、より好ましくはペメトレキセドの1.0重量%以下である。
【0016】
用語「全不純物」は、本明細書で使用される場合、完成された製品の製造時または貯蔵時にペメトレキセドの分解により生じる、本発明の注射溶液中に存在するペメトレキセドの既知および未知の不純物全ての合計を表す。全不純物を、ペメトレキセドの重量%、すなわち標識ペメトレキセドの含有量の重量%として表す。
【0017】
用語「安定」は、貯蔵時の溶液中の単一の既知の不純物および最も多い未知の不純物の含有量が、医薬品規制調和国際会議(INTERNATIONAL CONFERENCE ON HARMONISATION OF TECHNICAL REQUIREMENTS FOR REGISTRATION OF PHARMACEUTICALS FOR HUMAN USE )(ICH)により示された米国薬局方またはガイドラインなどの標準規制当局により示された限度内にあることも意味し得る。
【0018】
例えば、室温で1年以上の間溶液を貯蔵した場合に、単一の不純物BおよびCの含有量は、0.24%以下であり、単一の不純物Fの限度は、0.6%以下であり、最も多い未知の不純物は、0.24%以下である。
【0019】
また、本発明の注射溶液は、本発明に記載の方法により製造される完成剤形の製造中のペメトレキセドのアッセイにおける変化が±2%以内である場合、すなわち、アッセイが98%~102%を超えて変化しない場合に、安定であるといわれ得る。また、注射溶液は、ストッパーを備えた容器で長期間室温で貯蔵されるときに、ペメトレキセドのアッセイが、標識量の90~110%内に留まる場合に、安定であると言われる。
【0020】
句「注射可能」または「注射溶液」は、本明細書で使用される場合、有効期間の終わりまで、溶液が、非経口製品の基準に合うこと、特に、溶液が無菌の状態にされたことを意味する「無菌性」であり、溶液が、米国薬局方(USP)などの標準薬局方の無菌性の要件に適合することを意味する。
【0021】
句「安定剤または可溶化剤を含まない」は、本明細書で使用される場合、本発明の注射溶液が、抗酸化剤、アミノ酸、アミン、シクロデキストリンなどの錯化剤、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、トレメチレングリコール、ブチレングリコールなどの共溶媒、鉱油などの油性賦形剤などの追加の賦形剤を含まないことを意味する。本発明の注射溶液は、メタ重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、重亜硫酸ナトリウムなどの亜硫酸塩抗酸化剤、またはチオグリセロール、アスコルビン酸、リポ酸、没食子酸プロピルなどのそのほかの一般に使用される抗酸化剤を含む抗酸化剤を含まない。本発明の注射溶液は、アミノ酸またはアミン、例えば、システイン、リシン、メチオニン、ジエタノールアミン、トロメタミン、メグルミンなどを含まないことが、好適である。ペメトレキセドの注射溶液は、キレート剤、例えば、エデト酸二ナトリウム、エチレンジアミン四酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸などを含まないことが、好適である。
【0022】
用語「約(approximately)」または「約(about)」は、本明細書で用いられる場合、記載された値の±10%を意味する。用語「約」は、圧力値の前につけられている場合、例えば「約Xトル」は、X±5%トルの圧力を意味することが好ましい。
【0023】
本発明において、使用され得るペメトレキセドの薬剤的に許容できる塩には、限定はされないが、ナトリウム、二ナトリウム、カリウム、リチウム、カルシウム、マグネシウム、アルミニウム、亜鉛、アンモニウム、トリメチルアンモニウム、トリエチルアンモニウム、モノエタノールアンモニウム、トリエタノールアンモニウム、トロメタミン、ピリジニウム、置換型ピリジニウムなどが含まれる。ペメトレキセドのあらゆる好適な薬剤的に許容できる塩を使用し得るが、薬剤的に許容できる塩は、ペメトレキセドの二ナトリウム七水和物塩であることが、好ましい。
【0024】
本開示において言及されているペメトレキセドまたはその薬剤的に許容できる塩の量または濃度は、ペメトレキセドの遊離酸形態に相当する量として表現されている。ペメトレキセドまたはその薬剤的に許容できる塩は、本発明の溶液中に、約2.0mg/ml~約100.0mg/ml、好ましくは20.0mg/ml~約50.0mg/mlに亘る量、例えば、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、または50mg/mlなど、より好ましくは約20mg/ml~約30mg/mlに亘る量で存在し得る。一実施形態において、ペメトレキセドの二ナトリウム七水和物塩が使用され、(ペメトレキセドの遊離酸形態に相当する量として表現される)20mg/ml~30mg/mlに亘る量、例えば25mg/mlの量で存在する。
【0025】
本発明に係る注射溶液中の溶存酸素含有量は、0.2百万分率(ppm)以下、すなわち0~0.2百万分率、例えば0.01、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.10、0.11、0.12、0.13、0.14、0.15、0.16、0.17、0.18、または0.19ppmである。容器中に含まれる溶液中の溶存酸素含有量を、商標Seven GOTM、Seven Duo Go ProTM(登録商標-METTLER TOLEDO)として市販されているものなどの溶存酸素メーターを使用することにより、またはWinkler-Azide滴定法、ダイヤフラム電極を使用する方法(機器分析)などの当業で公知のその他の方法を使用することにより、測定し得る。
【0026】
一つの好ましい実施形態において、溶存酸素濃度を、溶存酸素メーター(DOメーター)を使用して測定する。溶存酸素濃度が測定される本発明の溶液を含む容器を、窒素雰囲気を有する(すなわち、1ppm未満の酸素濃度を有する)密閉チャンバ内で開け、DOメーターのセンサーを、サンプル(水溶液)中に直ちに置き、次いでREADボタンを押すことにより、測定を開始する。ディスプレイは、単一チャンネルまたは二重チャンネルモードのいずれかでのサンプルの読み取りを示す。測定が進行中であることを示すエンドポイントの形式は、点滅である。測定が安定するとすぐに、安定アイコンが現れ、結果、すなわち溶存酸素濃度の値が、記録される。
【0027】
ペメトレキセドの注射溶液の充填後に容器のヘッドスペースに存在するヘッドスペースの酸素は、1.0%v/v以下、好ましくは0.5%v/v以下、例えば0.4、0.3、0.2、0.1、または0%v/v、好ましくは0.3%v/v以下、より好ましくは0.2%v/v以下である。ヘッドスペースの酸素レベルを、当業で公知の方法、例えば酸素分析装置/電気センサー(酸素分析装置、MODEL 905V、Quantek Instruments)、ヘッドスペースガスクロマトグラフィー、電気化学分析装置、周波数変調分光技術、蛍光消光法、四重極MS分析装置などの測定法により測定し得る。
【0028】
一実施形態において、ヘッドスペースの酸素レベルを、センサーベースの酸素分析装置である、Quantek InstrumentsによるMODEL 905Vにより測定する。MODEL 905Vは、低容量センサーデザインである。サンプルガスが流れる酸素センサー内部チャンバは、約0.1ccの非常に小さい容積を有する。センサーは、管の長さを最小にするために、フロントパネルに近い装置ケースの内側に位置し、フロントパネルフィッティングバイアル1/32ID(0.3インチ)不活性管に連結する。
センサーのベントポートは、サンプルの排出およびゼロまたは較正ガスの導入のための短い狭口径管に連結する。ヘッドスペースの酸素を、この方法に従って、短期間で便利よく測定し得る。針が、容器/バイアルの隔壁を通ってバイアルのヘッドスペースへと刺さるように使用されるサンプルプローブの雄ルアーフィッティングに挿入されていることが、好適である。1~2ccのガスを、センサーを介して連結されたプラスチックシリンジおよびバイアルの隔壁に穿刺された針を使用して、バイアルのヘッドスペースから引き出す。このことにより、ヘッドスペースガスは、針、管を通ってセンサーに入ることが可能になる。安定な読み取りは、約15秒で得られる。サンプル当りの分析時間は、約30秒である。
【0029】
本発明に係る注射溶液は、非経口的に許容できる賦形剤、例えば、限定はされないが、浸透圧性剤または等張化剤、pH調節剤、バッファーも含んでなり得る。
【0030】
一実施形態において、浸透圧性剤を使用して、溶液の張度を調節し、溶液を非経口/血漿流体と等張にする。使用し得る浸透圧性剤は、限定はされないが、塩化ナトリウム、塩化カリウム、マンニトール、ソルビトール、デキストロース、スクロースなど、またはそれらの混合物から選択される。
【0031】
注射溶液は、6~11、好ましくは約7.0~8.0の範囲内にあるpHを有し、例えば、7.05、7.10、7.15、7.20、7.25、7.30、7.35、7.40、7.45、7.50、7.55、7.60、7.65、7.70、7.75、7.80、7.85、7.90、または7.95のpHを有する。
【0032】
溶液のpHを、pH調節剤の使用により所望の範囲内に調節し得、必要に応じて、バッファーを使用して、前記範囲内にpHを維持し得る。
【0033】
使用し得るpH調節剤および/またはバッファー剤には、限定はされないが、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、塩酸、硫酸、酢酸、酢酸ナトリウム、酒石酸など、およびこれらの混合物が含まれる。一つの好ましい実施形態において、pH調節剤は、水酸化ナトリウムおよび塩酸である。一実施形態において、pHは、本発明の溶液中に存在する成分により所望の範囲内に自動的に調節され得る。
【0034】
本発明の注射溶液を、容器、例えば、バイアル、ボトル、プレフィルドシリンジのバレルなどに入れる。一実施形態において、容器は、硬質材料製、例えばガラス製、特に、米国薬局方チャプター<660>に規定されている珪硼酸ガラスであるI型ガラス製であり得る。容器の非限定な例として、ガラスバイアル、ガラスボトル、またはプレフィルドシリンジのガラスバレルが挙げられる。溶液を、1ml~100mlに亘る様々な充填体積、例えば、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、または95ml、好ましくは1ml~50mlに亘る様々な充填体積で、容器に充填する。
【0035】
好ましい実施形態において、容器は、I型ガラス製バイアルである。
【0036】
一つの好ましい特定の実施形態において、容器は「ブローバック」機構を有するガラスバイアルであり、ストッパーの刻み目または突起とかみ合うように、ネック領域のバイアルの縁の内側に径方向刻み目がある。
【0037】
一つの好ましい実施形態において、充填体積は、4mlであり、バイアル容積は、5mlである。別の好ましい実施形態において、充填体積は、20mlであり、バイアル容積は、20mlである。別の好ましい実施形態において、充填体積は、40mlであり、バイアル容積は、50mlである。
【0038】
バイアルネックのブローバック機構には異なるスタイルがあり得る。一実施形態において、ブローバック機構は、米国ブローバックスタイルであり、バイアルのプラグシール表面に環状刻み目がある。
【0039】
別の実施形態において、ブローバック機構は、欧州スタイルブローバックであり、バイアルネックが、シール面の下で広くなっている。
【0040】
バイアルのブローバック機構は、部分的または半分栓をされた位置にある場合、ストッパーを容器のネックで保持することに役立ち、すなわち、ストッパーがバイアルの口にしっかりと均等に収められることを可能にし、ストッパー上に存在するニブまたはリングとかみ合うことによって部分的に収められたストッパーの位置を維持し、それにより、方法中にストッパーの「飛び出し」または「中への落下」を防ぐことに役立つ。ブローバック機構は、完全に栓をされた場合に、ストッパーで気密フィットを固定することにも役立ち、密閉前にストッパーの「飛び出し」を防ぐ。
【0041】
一実施形態において、容器を、弾性クロージャーまたはストッパーを用いて栓をする。
【0042】
弾性クロージャーまたはストッパーは、1個以上の部分的または完全な溝を有する溝付きストッパーであることが、好ましい。
【0043】
特に、ストッパーのデザインは、ストッパーが、1個以上の溝を有するストッパープラグ部分(プラグ部分は、
図1、2、および3で「2」を付けられることにより表されている)とフランジ部分(
図1、2、および3で記号付け「1」を参照されたい)とを有するようなデザインである。フランジ部分は、前記プラグ部分よりも直径が大きい。
【0044】
一実施形態において、ストッパーは、一面溝または放射状に配置された溝を有し、Iglooストッパーと呼ばれる(
図1)。プラグ部分に一面溝を有する溝付きストッパーは、
図1に「3」を付けられることにより表されている。
【0045】
別の実施形態において、ストッパーは、二面溝または放射状に配置された溝を有し、二脚ストッパーと呼ばれる(
図2)。ストッパーのプラグ部分の二面溝は、
図2に「3」を付けられることにより表されている。
【0046】
別の実施形態において、ストッパーは、三面溝を有し三脚ストッパーと呼ばれる(
図3)。ストッパーのプラグ部分の三面溝は、
図3に「3」を付けられることにより表されている。
【0047】
一つ以上の実施形態において、溝付きストッパーは、ストッパープラグ部分に複数の溝を有し得る。
【0048】
本体部分に存在する溝は、ストッパープラグが容器の口に部分的に挿入されている場合、すなわち、ストッパーが部分的または半分栓をされた位置にある場合、溝を通したガス交換を可能にし、外部環境と容器内部空間との連絡を可能にする。部分的または半分栓をされた位置にある溝付きストッパーを介した容器ヘッドスペースと外部環境との間のガス交換速度は、望まれる通りに最適である。交換速度は、溝がないストッパーをバイアルに置いた場合の交換速度と比べて、より緩徐である。
【0049】
ストッパーのフランジ部分は、容器の口の上を覆うように構成されており、溝付きストッパーの前記プラグ部分が容器の口に完全に挿入されている場合に、前記容器を密閉するのに役立つ。
【0050】
一実施形態において、ストッパーが部分的または半分栓をされた位置にある場合に、すなわち、「上方」位置にある場合に、ストッパーは、容器の中にガス交換用の通路を与える。ストッパーが容器の口/ネックに完全に押し込まれている場合に、すなわち、下方の、または低い位置にある場合に、溝付きストッパーと容器との間の間隙は閉じられる、すなわち、容器は完全に栓をされる。この位置において、ガスまたは液体のさらなる交換は起こり得ない、すなわち、流体密封フィットが、ストッパーおよびバイアルのネックの界面で生成する。一実施形態において、ストッパープラグ領域は、外向きに突出する、ベント位置ニブとも呼ばれる突起を有し得る(
図1、2、および3の記号付け「4」を参照されたい)。これらのニブは、前記ストッパーが容器の口に部分的に装入されている場合に、ストッパーを容器のネックで保持することに役立つ。バイアルのブローバック機構は、容器のネックでストッパーを保持することにさらに役立ち得る、すなわち、ベント位置ニブを有する二または三脚ストッパーが、半分栓をされた位置にある場合に、バイアルの口にしっかりと均等に収められることを可能にし、方法中にストッパーの「飛び出し」または「中への落下」を防ぐ。
【0051】
ストッパーは、エラストマー材料製であることが、好適である。このようなエラストマー材料には、限定はされないが、ゴムまたはその他のポリマーまたはプラスチック材料が含まれる。一実施形態において、ストッパーは、ブロモブチルまたはクロロブチル系エラストマーゴム配合物であり得る。
【0052】
一つの好ましい実施形態において、ストッパーは、酸素透過率が100cc/m2.24時間以下であるゴム材料製である。
【0053】
一つ以上の実施形態において、完全に栓をされた容器をさらに密閉する。一実施形態において、キャップを使用して、容器/バイアルを永久に密閉し得る。キャップは、溝付きストッパーのフランジ部分とバイアルネックに圧着し得、それにより、適当な位置でストッパーをロックし、永久にバイアルを密閉する、アルミニウムキャップのようなフリップオフ金属クリンプ様キャップであり得る。
【0054】
一つ以上の好ましい実施形態において、容器は、二次容器またはパッケージングにより覆われている、または包装されていることがあり得る。二次容器またはパッケージングは、容器を覆うポーチ、またはバッグ、またはフィルム、またはオーバーラップ、またはカートンなどであることが好適であり得る。
【0055】
一実施形態において、二次容器は、密閉フィルムである。一実施形態において、二次容器は、ペメトレキセドの溶液に対して光からの保護を与え、酸素、光、および湿気遮断性を有する材料製であり得る。二次容器を構成する材料には、限定はされないが、アルミニウム、またはポリアミド、エチレンビニルアルコールコポリマーのような様々なポリマーおよびコポリマーが含まれる。
【0056】
一実施形態において、二次パッケージングは、脱酸素剤をさらに含んでなる。脱酸素剤を、主容器と二次容器との間の空間に入れ得る。別の好ましい実施形態において、二次容器は、脱酸素材料製の1つの層を有する多層オーバーラップポーチである。
【0057】
ペメトレキセドまたはその薬剤的に許容できる塩の安定な注射溶液は、適正製造基準(Good Manufacturing Processes)下での製品の大規模な商業生産を可能にする特定の方法により得られ得る。特に、これらの方法は、速い速度での100リットル~2000リットル以上の程度の大きなバッチサイズの製造を可能にする。例えば、1ml~100mlの様々なサイズを有する容器に含まれるペメトレキセドの安定な注射溶液は、本発明の方法により大規模に、1時間当り1000~10000容器以上の程度の速い速度で製造され得る。一実施形態において、5mlの充填体積を有する容器は、1,00,000~2,50,000容器程度で大規模に、1時間当り約4000~10000容器の速度で、製造され得る。別の実施形態において、5mlの充填体積を有する容器は、50,000~1,50,000容器程度で大規模に、1時間当り約2500~5000容器の速度で、製造され得る。
【0058】
一方、先行技術に記載の方法は、手動で作動する機械、例えばグローブボックスを使用して、手動で一度に1つの容器/バイアルを充填する。手動の単位操作を伴うこのような方法は、小規模でのみ作業可能であり、大規模生産に適さない。さらに、本発明に係る方法は、室温で実施でき、それゆえに、温度を制御するため、例えば、凍結または室温より高い温度にするための追加の装置は必要とされないことに留意することが重要である。
【0059】
本発明の安定な注射溶液は、容器をペメトレキセドの溶液で満たし、部分的に栓をし、密閉チャンバに入れる方法により得られ得る。密閉チャンバを、真空を適用することにより空気圧を下げ、次いで不活性ガスの供給により圧力を開放するサイクルに付す。空気圧を、約100トル~560トルの範囲、好ましくは100トル~525トルの圧力に下げる。
【0060】
本発明の注射溶液が得られる方法は、圧力の極端な低下、すなわち、100トル未満、例えば30トルまたは50トルへの低下を含まない。圧力の急激な低下がある場合、発明者は、注射溶液の体積の損失という望ましくない問題に直面した。いかなる理論にも拘束されることを望むものではないが、80~100トルを下回る圧力の低下に起因する水の損失が起こる。体積の損失または減少は、溶液中のペメトレキセドのアッセイの増加をもたらす。アッセイは、2.0%を超えるまで増え、場合によっては、2.0%以下という望ましい限度を超える4.0%を超えるまで増える。
【0061】
最適な範囲内で圧力を低下させ、次いで、不活性ガスの供給により圧力を開放するステップを、通常2回以上実施し、その後、半分栓をした充填した容器に、完全に栓をし、次に、密閉した充填した容器を、公知の技術により、好ましくはオートクレーブ処理により殺菌に付す。
【0062】
1つ以上の好ましい実施形態において、方法は、1時間以上の期間、密閉チャンバ内部に容器に満たされた注射溶液を保持する追加のステップを伴う。空気圧を低下させ、不活性ガスの供給により圧力を開放するサイクルが終わった後、保持するステップを実施することが好ましい。密閉チャンバの内部に容器に満たされた注射溶液を保持するステップに続いて、方法は、空気圧を(特定の圧力に)低下させ、不活性ガスの供給により圧力を開放するステップをさらに伴い得る。処理条件および中間処理ステップは、変わり得る。例えば、目標とする低下させた空気圧、「空気圧を低下させ、次いで圧力を開放する」ステップのサイクルまたは繰り返しを変えることにより、またはチャンバ内に容器を保持する時間を変えることにより、方法を変え得る。
【0063】
部分的に栓をされ、充填された容器が置かれるチャンバは、空気圧を調製するための手段を有する密閉チャンバであることが好適である。前記チャンバは、不活性ガスを供給するための手段をさらに有する。一実施形態において、このようなチャンバは、空気圧を約80トル~560トル程度に低下させる手段がある凍結乾燥器である。このようなチャンバは、不活性ガスを供給し、不活性ガスを使用してチャンバ内で約760トルの気圧を達成する手段をさらに有する。使用し得る不活性ガスには、窒素、アルゴン、ネオン、ヘリウム、またはこれらの混合物が含まれることが、好適である。このように処理され充填された容器を、次に、湿熱殺菌により殺菌に付す。このことを、約100℃~125℃の温度で、5分~60分の期間、オートクレーブで実施する。
【0064】
一実施形態において、密閉チャンバを、チャンバ内の空気圧を所望の値に低下させるために使用し得る真空ポンプと連結する。一実施形態において、密閉チャンバを、密閉チャンバに不活性ガスを供給し、密閉チャンバ内部のガスの圧力を上昇させるのに役立ち得る不活性ガス供給器と連結する。
【0065】
一実施形態において、チャンバ内部の圧力を測定し、様々なオペレーションを実施する間、所定の圧力をモニタリングおよび維持するのに役立つ圧力センサー(圧力トランスミッター/ピラニ真空計)がある。本発明のペメトレキセドの安定な注射溶液が得られる方法の様々な特定の実施形態を、以下で説明する。
【0066】
一実施形態において、本発明は、溶存酸素含有量が0ppm~0.2ppmの範囲内にある、ペメトレキセドまたはその薬剤的に許容できる塩、注射用水を含んでなる安定な注射溶液であって、安定剤または可溶化剤を含まず、ストッパーで密閉された容器に入れられており、以下のステップを含んでなる方法により得られる前記溶液を与える。
i.注射用水中のペメトレキセドまたはその薬剤的に許容できる塩の溶液を製造し、前記溶液を容器に充填するステップ;
ii.ステップ(i)の前記容器に、1個以上の溝を有する溝付きストッパーで部分的に栓をし、密閉チャンバに入れるステップ;
iii.約100トル~525トルの低下させた空気圧を前記密閉チャンバに適用し、次いで、不活性ガスを供給することにより、前記圧力を開放して、約760トルの気圧を達成するステップ;
iv.ステップiii)を2回以上繰り返すステップ;
v.前記容器を完全に栓をして密閉し、前記容器を湿熱殺菌に付すステップ。
【0067】
特定の実施形態において、溶液の溶存酸素含有量が0~0.2ppmの範囲内となるように、減圧を適用するステップ(iii)を2回以上繰り返す。空気圧の低減を、真空の適用により実施し得る。圧力を低下させ、不活性ガスをチャンバに供給して圧力を開放するステップ(ステップiii)を、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、または12回繰り返し得ることが、好ましい。
【0068】
空気圧を、約100トル~560トル、好ましくは約100~525トルの範囲内の圧力、例えば、100、105、110、115、120、125、130、135、140、145、150、155、160、165、170、175、180、185、190、195、200、205、210、215、220、225、230、235、240、245、250、255、260、265、270、275、276、280、285、290、300、305、310、315、320、325、330、335、340、345、350、355、360、365、370、375、380、385、390、391、395、400、405、410、415、420、425、430、435、440、445、450、455、460、465、470、475、480、485、490、495、500、505,510、515、520、または525トルなどに低下させる。この後、不活性ガスを供給することにより圧力を開放して、チャンバ内で、約760トルである通常/初期の気圧を達成する。真空の解除後に達成される圧力は、通常、約760トルであるが、これは変わり得る。例えば、圧力は、561トル~860トル以上で変わり得る。1つ以上の溝を有するストッパーは、半分栓をされた位置にある場合に、ガス交換を可能にし、瞬時的方法を実施するために重要な特徴である。
【0069】
一実施形態において、ステップiii)を、2~10回、例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、または10回実施する。ステップiii)を、2~8回実施することが好ましく、3~6回実施することが、より好ましい。
【0070】
別の実施形態において、ステップiii)を、約80~560トルの低下させた空気圧で、好ましくは100~525トルで、より好ましくは100~275トルで実施する。
【0071】
一つ以上の実施形態において、ステップiii)を、2~10回、100~525トルの低下させた空気圧で繰り返す。
【0072】
一つ以上の実施形態において、ステップiii)を、2~10回、100~275トルの低下させた空気圧で繰り返す。
【0073】
一つ以上の実施形態において、ステップiii)を、4~10回、275~390トルの低下させた空気圧で繰り返す。
【0074】
一つ以上の実施形態において、ステップiii)を、8~12回、391~525トルの低下させた空気圧で繰り返す。
【0075】
好ましい実施形態において、本発明は、溶存酸素含有量が0ppm~0.2ppmの範囲内にある、ペメトレキセドまたはその薬剤的に許容できる塩、注射用水を含んでなる安定な注射溶液であって、ストッパーで密閉された容器に入れられ、前記溶液中の全不純物が、室温で1年間貯蔵された場合、ペメトレキセドの1.0重量%よりも多くなるまで増加することはなく、以下のステップを含んでなる方法により製造される前記注射溶液を与える。
i. 注射用水中のペメトレキセドまたはその薬剤的に許容できる塩の溶液を製造し、前記溶液を容器に充填するステップ;
ii. ステップ(i)の前記容器に、1個以上の溝を有する溝付きストッパーで部分的に栓をし、密閉チャンバに入れるステップ;
iii. 約100~275トルの低下させた空気圧を前記密閉チャンバに適用し、次いで、不活性ガスを供給することにより、前記圧力を開放して、約760トルの気圧を達成するステップ;
iv. ステップiii)を2回以上繰り返すステップ;
v. 前記容器を完全に栓をして密閉し、前記容器を湿熱殺菌に付すステップ。
【0076】
いくつかの好ましい実施形態において、本発明は、溶存酸素含有量が0ppm~0.2ppmの範囲内にある、ペメトレキセドまたはその薬剤的に許容できる塩、注射用水を含んでなる安定な注射溶液であって、ストッパーで密閉された容器に入れられ、前記溶液中の全不純物が、室温で1年間貯蔵された場合、ペメトレキセドの2.0重量%よりも多くなるまで増加することはなく、以下のステップを含んでなる方法により製造される前記注射溶液を与える。
i. 注射用水中のペメトレキセドまたはその薬剤的に許容できる塩の溶液を製造し、前記溶液を容器に充填するステップ;
ii. ステップ(i)の前記容器に、1個以上の溝を有する溝付きストッパーで部分的に栓をし、密閉チャンバに入れるステップ;
iii. 約276~390トルの低下させた空気圧を前記密閉チャンバに適用し、次いで、不活性ガスを供給することにより、前記圧力を開放して、約760トルの気圧を達成するステップ;
iv. ステップiii)を4回以上繰り返すステップ;
v. 前記容器を完全に栓をして密閉し、前記容器を湿熱殺菌に付すステップ。
【0077】
いくつかの好ましい実施形態において、本発明は、溶存酸素含有量が0ppm~0.2ppmの範囲内にある、ペメトレキセドまたはその薬剤的に許容できる塩、注射用水を含んでなる安定な注射溶液であって、ストッパーで密閉された容器に入れられ、前記溶液中の全不純物が、室温で1年間貯蔵された場合、ペメトレキセドの2.0重量%よりも多くなるまで増加することはなく、以下のステップを含んでなる方法により製造される前記注射溶液を与える。
i. 注射用水中のペメトレキセドまたはその薬剤的に許容できる塩の溶液を製造し、前記溶液を容器に充填するステップ;
ii. ステップ(i)の前記容器に、1個以上の溝を有する溝付きストッパーで部分的に栓をし、密閉チャンバに入れるステップ;
iii. 約391~525トルの低下させた空気圧を前記密閉チャンバに適用し、次いで、不活性ガスを供給することにより、前記圧力を開放して、約760トルの気圧を達成するステップ;
iv. ステップiii)を8回以上繰り返すステップ;
v. 前記容器を完全に栓をして密閉し、前記容器を湿熱殺菌に付すステップ。
【0078】
一実施形態において、ペメトレキセドまたはその薬剤的に許容できる塩の安定な注射溶液を製造する方法が与えられ、前記方法は以下のステップを含んでなる。
i. 注射用水中のペメトレキセドまたはその薬剤的に許容できる塩の溶液を製造し、前記溶液を容器に充填するステップ;
ii. ステップ(i)の前記容器に、1個以上の溝を有する溝付きストッパーで部分的に栓をし、密閉チャンバに入れるステップ;
iii. 約100トル~525トルの低下させた空気圧を前記密閉チャンバに適用し、次いで、不活性ガスを供給することにより、前記圧力を開放して、約760トルの気圧を達成するステップ;
iv. ステップiii)を2回以上繰り返すステップ;
v. 前記容器を完全に栓をして密閉し、前記容器を湿熱殺菌に付すステップ。
【0079】
一つの特定の実施形態において、ステップiii)を、2回、100トルの低下させた空気圧で繰り返す。一つの特定の実施形態において、ステップiii)を、6回、100トルの低下させた空気圧で繰り返す。
【0080】
一つの特定の実施形態において、ステップiii)を、3回、225トルの低下させた空気圧で繰り返す。一つの特定の実施形態において、ステップiii)を、4~5回、225トルの低下させた空気圧で繰り返す。
【0081】
一つの特定の実施形態において、ステップiii)を、9回、525トルの低下させた空気圧で繰り返す。一つの特定の実施形態において、ステップiii)を、10回、525トルの低下させた空気圧で繰り返す。
【0082】
一つ以上の実施形態において、本発明に係る方法は、ステップ(iii)の後に、1時間以上の期間、密閉チャンバ内に容器を保持するステップと、必要に応じてステップ(iii)を繰り返すこととをさらに含んでなり得ることが、好ましい。
【0083】
一つ以上の実施形態において、方法は、ステップ(iv)の後に、1時間以上の期間、密閉チャンバ内に容器を保持するステップと、その後ステップ(iii)を1回以上繰り返すこととを含んでなることが、好ましい。
【0084】
驚くべきことに、方法が、ステップ(iv)の後に、1時間以上の期間、密閉チャンバ内に容器を保持するステップを伴う場合に、溶液中の溶存酸素含有量が0~0.2ppmの範囲内となることが、ステップ(iii)の繰り返し数が比較的少ないことにより達成されることが測定された。
【0085】
一つ以上の実施形態において、方法が密閉チャンバ内に容器を保持するステップを伴う場合に、方法が前記ステップを伴わない場合と比べて、溶存酸素含有量が相対的に低いが、両方の場合において、溶存酸素含有量は、0~0.2ppmの範囲内にある。
【0086】
一実施形態において、溶存酸素含有量が0ppm~0.2ppmの範囲内にある、ペメトレキセドまたはその薬剤的に許容できる塩、注射用水を含んでなる安定な注射溶液であって、安定剤または可溶化剤を含まず、ストッパーで密閉された容器に入れられている前記溶液は、以下のステップを含んでなる方法により得られる。
i. 注射用水中のペメトレキセドまたはその薬剤的に許容できる塩の溶液を製造し、前記溶液を容器に充填するステップ;
ii. ステップi)の前記容器に、1個以上の溝を有する溝付きストッパーで部分的に栓をし、密閉チャンバに入れるステップ;
iii. 約100トル~560トルの低下させた空気圧を前記密閉チャンバに適用し、次いで、不活性ガスを供給することにより、前記圧力を開放して、約760トルの気圧を達成するステップ;
iv. ステップiii)を2回以上繰り返すステップ;
v. ステップiv)の後、1時間以上の期間、前記密閉チャンバ内で前記容器を保持し、必要に応じてステップiii)を繰り返すステップ;
vi. 前記容器を完全に栓をして密閉し、前記容器を湿熱殺菌に付すステップ。
【0087】
一実施形態において、ペメトレキセドまたはその薬剤的に許容できる塩の安定な注射溶液を製造する方法が与えられ、前記方法は以下のステップを含んでなる。
i. 注射用水中のペメトレキセドまたはその薬剤的に許容できる塩の溶液を製造し、前記溶液を容器に充填するステップ;
ii. ステップi)の前記容器に、1個以上の溝を有する溝付きストッパーで部分的に栓をし、密閉チャンバに入れるステップ;
iii. 約100トル~560トルの低下させた空気圧を前記密閉チャンバに適用し、次いで、不活性ガスを供給することにより、前記圧力を開放して、約760トルの気圧を達成するステップ;
iv. ステップiii)を2回以上繰り返すステップ;
v. ステップiv)の後、1時間以上の期間、前記密閉チャンバ内で前記容器を保持し、必要に応じてステップiii)を繰り返すステップ;
vi. 前記容器に完全に栓をし、前記容器を湿熱殺菌に付すステップ。
【0088】
方法は、約100~560トルの低下させた空気圧で2回以上ステップ(iii)を繰り返すこと、1時間以上、好ましくは2~20時間の期間密閉チャンバ内に容器を保持すること、およびステップ(iii)またはステップ(iii)~(v)のどちらかを所望の回数必要に応じて繰り返すことからなる様々な組み合わせを有するステップを含んでなり得る。ステップ(iii)を、2回以上、好ましくは3回以上繰り返す。一実施形態において、ステップiii)を、2~10回、例えば、2、3、4、5、6、7、8、または9回実施する。
【0089】
ステップiii)を、2~8回実施することが好ましく、2~6回実施することが、より好ましい。
【0090】
さらなる別の実施形態において、ステップ(iii)を、約100~560トルの低下させた空気圧で、好ましくは100~525トルで、より好ましくは100~390トルで実施する。
【0091】
一つ以上の実施形態において、ステップ(v)を、1時間以上、好ましくは約2~20時間、例えば2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20時間の期間、不活性ガスを含む密閉チャンバ内に容器を保持することによって実施する。
【0092】
好ましい実施形態において、本発明に係る方法は、約100~560トルの低下させた空気圧で2回以上ステップiii)を繰り返すステップ、1時間以上、好ましくは2~20時間の期間密閉チャンバ内に容器を保持するステップ、および100~560トルの低下させた空気圧で1回以上ステップiii)を繰り返すステップを含んでなり、ここで、保持するステップの後に実施するステップiii)での空気圧は、保持するステップの前に実施するステップiii)での空気圧と同一または異なる。
【0093】
別の好ましい実施形態において、本発明は、溶存酸素含有量が0ppm~0.2ppmの範囲内にある、ペメトレキセドまたはその薬剤的に許容できる塩、注射用水を含んでなる安定な注射溶液であって、安定剤または可溶化剤を含まず、ストッパーで密閉された容器に入れられており、以下のステップを含んでなる方法により製造される前記注射溶液を与える。
i. 注射用水中のペメトレキセドまたはその薬剤的に許容できる塩の溶液を製造し、前記溶液を容器に充填するステップ;
ii. ステップ(i)の前記容器に、1個以上の溝を有する溝付きストッパーで部分的に栓をし、密閉チャンバに入れるステップ;
iii. 約100トル~390トルの低下させた空気圧を前記密閉チャンバに適用し、次いで、不活性ガスを供給することにより、前記圧力を開放して、約760トルの気圧を達成するステップ;
iv. ステップiiiを2回以上繰り返すステップ;
v. ステップ(iv)の後、1時間以上の期間、前記密閉チャンバ内に前記容器を保持するステップ;
vi. ステップ(iii)を1回以上繰り返すステップ;
vii. 前記容器を完全に栓をして密閉し、前記容器を湿熱殺菌に付すステップ。
【0094】
いくつかの好ましい実施形態において、本発明は、溶存酸素含有量が0ppm~0.2ppmの範囲内にある、ペメトレキセドまたはその薬剤的に許容できる塩、注射用水を含んでなる安定な注射溶液であって、安定剤または可溶化剤を含まず、ストッパーで密閉された容器に入れられており、以下のステップを含んでなる方法により製造される前記注射溶液を与える。
i. 注射用水中のペメトレキセドまたはその薬剤的に許容できる塩の溶液を製造し、前記溶液を容器に充填するステップ;
ii. ステップ(i)の前記容器に、1個以上の溝を有する溝付きストッパーで部分的に栓をし、密閉チャンバに入れるステップ;
iii. 約390トル~560トルの低下させた空気圧を前記密閉チャンバに適用し、次いで、不活性ガスを供給することにより、前記圧力を開放して、約760トルの気圧を達成するステップ;
iv. ステップiii)を6回以上繰り返すステップ;
v. ステップ(iv)の後、1時間以上の期間、前記密閉チャンバ内に前記容器を保持するステップ;
vi. ステップiii)を1回以上繰り返すステップ;
vii. 前記容器を完全に栓をして密閉し、前記容器を湿熱殺菌に付すステップ。
【0095】
一つ以上の特定の実施形態において、方法は、100トルの低下させた空気圧でステップiii)を2回以上繰り返し、次いで、1時間以上の期間不活性ガスを含む密閉チャンバ内に容器を保持し、100~525トルの低下させた空気圧で1回以上ステップiii)を再び繰り返すことを含んでなる。
【0096】
一つ以上の特定の実施形態において、方法は、100トルの低下させた空気圧でステップiii)を2回繰り返し、次いで、2~10時間の期間不活性ガスを含む密閉チャンバ内に容器を保持することを伴うステップv)を行い、100トルの低下させた空気圧で1回以上ステップ(iii)を再び繰り返すことを含んでなる。
【0097】
別の特定の実施形態において、方法は、100トルの低下させた空気圧でステップiii)を3回繰り返し、次いで、7時間の期間不活性ガスを含む密閉チャンバ内に容器を保持し、100トルの低下させた空気圧で3回ステップiii)を再び繰り返すことを含んでなる。
【0098】
さらなる別の一つの特定の実施形態において、方法は、225トルの低下させた空気圧でステップiii)を2回以上繰り返し、次いで、2~20時間の期間不活性ガスを含む密閉チャンバ内に容器を保持することを伴うステップv)を行い、100~525トルの低下させた空気圧で1回以上ステップiii)を繰り返すことを含んでなる。
【0099】
さらに、他の実施形態において、方法は、225トルの低下させた空気圧でステップiii)を4回繰り返し、次いで、約2~20時間の期間不活性ガスを含む密閉チャンバ内に容器を保持することを含んでなる。
【0100】
一つの特定の実施形態において、方法は、225トルの低下させた空気圧でステップiii)を4回繰り返し、次いで、約6~20時間の期間不活性ガスを含む密閉チャンバ内に容器を保持し、225トルの低下させた空気圧で3回ステップiii)を繰り返すことを含んでなる。
【0101】
一つの特定の実施形態において、方法は、225トルの低下させた空気圧でステップiii)を3回繰り返し、次いで、約2~10時間の期間不活性ガスを含む密閉チャンバ内に容器を保持し、100トルの低下させた空気圧で2回ステップiii)を繰り返すことを含んでなる。
【0102】
一つの特定の実施形態において、方法は、525トルの低下させた空気圧でステップiii)を6回繰り返し、次いで、約2~20時間の期間不活性ガスを含む密閉チャンバ内に容器を保持し、525トルの低下させた空気圧で1回以上ステップiii)を繰り返すことを含んでなる。
【0103】
一つの特定の実施形態において、方法は、525トルの低下させた空気圧でステップiiiを6回繰り返し、次いで、約3時間の期間不活性ガスを含む密閉チャンバ内に容器を保持し、525トルの低下させた空気圧で3回ステップiii)を繰り返すことを含んでなる。
【0104】
一つの特定の実施形態において、方法は、225トルの低下させた空気圧でステップiii)を3回繰り返し、次いで、約3時間の期間不活性ガスを含む密閉チャンバ内に容器を保持し、100トルの低下させた空気圧で2回ステップiii)を繰り返すことを含んでなる。
【0105】
一つの特定の実施形態において、方法は、100トルの低下させた空気圧でステップiii)を3回繰り返し、次いで、3時間の期間不活性ガスを含む密閉チャンバ内に容器を保持し、100トルの低下させた空気圧で3回ステップiii)を繰り返し、次いで3時間の期間容器を保持し、100トルの低下させた空気圧で3回ステップiii)を再び繰り返すことを含んでなる。
【0106】
一つの特定の実施形態において、方法は、225トルの低下させた空気圧でステップiii)を3回繰り返し、次いで、3時間の期間不活性ガスを含む密閉チャンバ内に容器を保持し、225トルの低下させた空気圧で3回ステップiii)を繰り返し、次いで3時間の期間容器を保持し、225トルの低下させた空気圧で3回ステップiii)を繰り返すことを含んでなる。
【0107】
いくつかの実施形態において、方法は、80~560トルの低下させた空気圧で2回以上ステップiii)を繰り返し、次いで、密閉チャンバ内で1時間以上保持することおよびステップiii)を繰り返すことを伴うサイクルを行うことを含んでなる。
【0108】
本発明のペメトレキセドの注射溶液は、室温(15℃~30℃)で1年間貯蔵する場合に、前記溶液中の全不純物が、ペメトレキセドの2.0重量%よりも多くなるまで増加することはなく、安定性があることが分かっている。
【0109】
好ましい実施形態において、全不純物は、(容器に含まれる)水溶液を室温で2年以上までの期間貯蔵する場合に、ペメトレキセドの2.0重量%以下に留まる。
【0110】
いくつかの好ましい実施形態において、全不純物は、(容器に含まれる)水溶液を室温(15℃~30℃)で1年以上の期間貯蔵する場合に、ペメトレキセドの1.3重量%以下に留まる。
【0111】
より好ましい実施形態において、全不純物は、(容器に含まれる)水溶液を室温(15℃~30℃)で1年以上の期間貯蔵する場合に、ペメトレキセドの1.0重量%以下に留まる。
【0112】
また、注射溶液中の単一の既知の不純物および最も多い未知の不純物の含有量は、医薬品規制調和国際会議(INTERNATIONAL CONFERENCE ON HARMONISATION OF TECHNICAL REQUIREMENTS FOR REGISTRATION OF PHARMACEUTICALS FOR HUMAN USE )(ICH)により示された米国薬局方またはガイドラインなどの標準規制当局により示された限度内にある。例えば、本発明に係るペメトレキセドを含んでなる注射溶液は、安定であり、本発明の溶液を、室温(15℃~30℃)で1年以上の期間貯蔵する場合に、0.24%以下の単一の不純物BおよびC、0.6%以下の単一の不純物F、および0.24%以下の最も多い未知の不純物を含む。
【0113】
さらに、本発明に記載の方法により製造される完成剤形の製造中のペメトレキセドのアッセイにおける変化は、±2%以内であり、すなわち、アッセイは、98%~102%を超えて変化しない。
【0114】
さらに、ペメトレキセドのアッセイは、室温(15℃~30℃)で1年以上、好ましくは1.5年、より好ましくは2年、溶液を貯蔵した際に、90.0%~110.0%の承認規準内、好ましくはラベルクレームの95.0%~105.0%の範囲内によく留まる。したがって、注射溶液は、特に室温で、長期間の貯蔵安定性を有する。対照的に、0.2ppmより高い、例えば0.32ppmの溶存酸素含有量を有するペメトレキセドの注射溶液は、室温で長期間貯蔵する場合に、不安定であることが分かった。このことは、以下で説明する比較例で例証する。したがって、本発明は、ロバスト性であり安定性である、0~0.2ppmの範囲内にある溶存酸素含有量を有するペメトレキセドの注射溶液を与えた。注射溶液は、化学的に安定であるだけでなく、大規模に実施可能であり、手動操作を用いる小規模な実施に限定されない方法により得ることができる。さらに有利なことに、本発明に係る方法は、溶液の製造中に媒体またはペメトレキセド溶液を不活性ガスでパージする方法などの脱気法の使用を必要としない。
【0115】
本明細書において、「含んでなる」は、「含む」として解釈されるべきである。
【0116】
特定の要素を含んでなる本発明の態様は、関連要素から「なる」または「本質的になる」代替的な実施形態にまで及ぶことも意図されている。
【0117】
技術的に適当な場合、本発明の実施形態は、組み合わされ得る。
【0118】
実施形態を、特定の特徴/要素を含んでなるものとして本明細書で記載する。本開示は、前記特徴/要素からなる、または本質的になる別の実施形態にも及ぶ。
【0119】
特許および出願などの技術文献を、本明細書の一部を構成するものとして援用する。
【0120】
本明細書に具体的かつ明確に挙げられたあらゆる実施形態は、単独で、または1つ以上の他の実施形態と組み合わされて、除くクレームの基礎を形成し得る。
【0121】
以下、本発明を、実施例として、さらに具体的に説明することにする。実施例は、本発明の範囲を限定することを意図されてはおらず、単に実例として使用される。
【実施例】
【0122】
実施例1
本発明の好ましい実施形態に従って、実施例は、ガラス容器(バイアル)中のペメトレキセドの安定で注射可能な水溶液を例証する。
【0123】
【0124】
溶液を、以下の方法により製造した。ペメトレキセドの二ナトリウム七水和物塩および塩化ナトリウムを、注射用水に溶解した。得られた溶液のpHを測定し、pHが6.0~8.0の範囲外にあることが分かった場合に、水酸化ナトリウムおよび/または塩酸などのpH調節剤を使用してこの範囲に調節した。このように形成したペメトレキセドの溶液を、ガラス容器に満たした。方法を室温(25~30℃)で実施した。ペメトレキセドの水溶液を含むガラス容器に、溝付きストッパーを使用して部分的または半分栓をした。次に、部分的に栓をされた、充填された容器を、空気圧を調節することができる密閉チャンバ内に置いた。様々なバッチにおいて、チャンバ内の空気の圧力を、真空を適用することにより、100トル~525トルの範囲内の特定の圧力値に下げた。チャンバ内の圧力が760トルの気圧に達するまで、不活性ガスを密閉チャンバに供給することによって、圧力を開放した。圧力を低下させ(真空の適用)、不活性ガスをチャンバへ供給するステップを、2回以上、および/または0.2ppm未満の(溶液中の)溶存酸素レベルおよび0.5%未満のヘッドスペースの酸素含有量が得られるのに十分な回数繰り返した。次に、ストッパーをガラス容器にしっかりと取り付けることによって、充填されたガラス容器に完全に栓をした。ガラス容器をチャンバから取り出し、フリップオフアルミニウムクリンピングキャップを使用して密閉した。密閉したガラス容器を、オートクレーブで、約121℃の温度で15分間、湿熱殺菌に付した。
【0125】
実施例2~9
ペメトレキセドの安定な注射溶液を、実施例と同様ではあるが、以下の表2に与えられているように処理パラメーターを変えることによって製造し、溶存酸素含有量およびペメトレキセドのアッセイにおける変化について測定した注射溶液の体積の損失を求めることにより特徴付けた。
【0126】
【0127】
安定性試験:ガラスバイアルに含まれ、Igloo溝付きストッパーで栓をされた実施例4および5のペメトレキセド溶液を、二次パッケージングカートンに入れ、次に、室温(25℃,60%の相対湿度)で、および、促進させた安定性試験条件(40℃/75%の相対湿度)で、安定性試験に付した。全不純物および不純物Fの含有量を、以下で表3に与える。
【0128】
【0129】
実施例10
【0130】
【0131】
方法:ペメトレキセドの二ナトリウム七水和物塩および塩化ナトリウムを、注射用水に溶解した。得られた溶液のpHを測定し、pHが6.0~8.0の範囲外にあることが分かった場合に、水酸化ナトリウムおよび/または塩酸などのpH調節剤を使用してこの範囲に調節した。このように形成したペメトレキセドの溶液を、ガラス容器、すなわちガラスバイアルに満たした。ペメトレキセドの水溶液を含むガラスバイアルに、溝付きiglooストッパーを使用して半分栓をするか、または部分的に栓をした。次に、部分的に栓をされた、充填されたガラスバイアルを、室温(25~30℃)に維持された密閉チャンバ内に置いた。チャンバ内の空気の圧力を、真空を適用することにより、約225トルの圧力に低下させた。チャンバ内の圧力が760トルの気圧に達するまで、不活性ガスを密閉チャンバに供給することによって、圧力を開放した。圧力を低下させ(真空の適用)、不活性ガスをチャンバに供給するステップを、4回繰り返す。この後、バイアルを約20時間の期間、密閉チャンバに保持し続け、次いで、圧力を(225トルの圧力に)低減し不活性ガスを供給するステップを3回繰り返した。次に、ストッパーをガラスバイアルにしっかりと取り付けることによって、充填されたガラスバイアルに完全に栓をした。ガラスバイアルをチャンバから取り出し、フリップオフアルミニウムクリンピングキャップを使用して密閉した。密閉したガラスバイアルを、オートクレーブで、約121℃の温度で15分間、湿熱殺菌に付した。充填され密閉されオートクレーブ処理されたバイアルを、二次パッケージング(カートン)で覆った。
【0132】
実施例11~15
実施例11~15は、実施例10に記載の方法と類似の方法に従うが、目標とするチャンバ内の低下された空気圧を変え、圧力を低下させチャンバに不活性ガスを供給するステップの繰り返し回数を変え、バイアルを密閉チャンバ内に保持する保持の時期を変えて製造されるペメトレキセドの安定な注射溶液を例証する。溶存酸素レベルおよびペメトレキセドのアッセイにおける初期からの変化を求めた。詳細を、以下で表5に与える。
【0133】
【0134】
安定性試験:実施例10に従って得られたオートクレーブ処理したバイアル(カートンで覆われた充填され密閉されオートクレーブ処理されたバイアル)を、様々な貯蔵条件で、すなわち、室温(25℃,60%の相対湿度)で、冷蔵条件(2~8℃の温度)で、および促進させた安定性試験条件(40℃/75%の相対湿度)で貯蔵安定性試験に付した。薬剤のアッセイならびに既知および未知の不純物の含有量を、貯蔵の際の様々な時点で分析した。全不純物、ならびに不純物B、不純物C、不純物F、および最も多い未知の不純物などの単一の不純物の含有量を、HPLCまたは高速液体クロマトグラフィー法により分析した。様々な貯蔵条件での測定結果を、以下で表6に与える。
【0135】
【0136】
安定性の結果(表6)は、本発明に係るペメトレキセドの注射可能な水溶液(実施例10)が、室温(25℃±2℃/60%RH±5%)での、および2~8度での1年以上の長期間貯蔵時に安定なままであり、全不純物が貯蔵時にペメトレキセドの1.0重量%未満であったことを示す。40℃/75%の相対湿度の促進させた安定性条件下で6ヶ月間貯蔵した場合にさえ、全不純物は、ペメトレキセドの1.0重量%未満に留まった。不純物B、不純物C、不純物F、最も多い未知の不純物、およびその他の既知の不純物などの単一の不純物の各々は、0.2重量%未満にとどまった。ペメトレキセドのアッセイ値は、貯蔵時にほとんど無変化なままであり、値は、95%~105%の範囲内に維持される。さらに、ペメトレキセドの水溶液は、物理的に安定なままであり、沈殿または結晶化または色変化が貯蔵時に起こらず、溶液の透過度のパーセンテージの値は、貯蔵時に95%より高いままであったことが測定された。
【0137】
比較例1
溶存酸素含有量が0.32ppmのペメトレキセドの比較例の注射溶液を、以下のように製造した。pHが6.0~8.0のペメトレキセドの二ナトリウム七水和物塩および塩化ナトリウムの溶液を、注射用水中で製造し、ガラス容器、すなわちガラスバイアルに満たした。ペメトレキセドの水溶液を含むガラスバイアルに、溝付きストッパーを使用して、半分栓するか、または部分的に栓をし、室温(25~30℃)に維持された密閉チャンバ内に置いた。チャンバ内の空気圧を、真空の適用により225トルに低下させ、次いで、不活性ガスを密閉チャンバ内に供給することによって、760トルへと圧力を開放した。圧力を低下させ、不活性ガスをチャンバに供給することによって圧力を開放するこのステップを、1回だけ実施し、繰り返さなかった。次に、ストッパーをガラスバイアルにしっかりと取り付けることによって、充填されたガラスバイアルに完全に栓をした。ガラスバイアルをチャンバから取り出し、フリップオフアルミニウムクリンピングキャップを使用して密閉した。密閉したガラスバイアルを、オートクレーブで、約121℃の温度で15分間、湿熱殺菌に付した。前記バイアルに充填されたペメトレキセド溶液中の溶存酸素含有量を測定し、0.32ppmであることが分かった。
【0138】
安定性試験:オートクレーブ処理したバイアルをカートンに保ち、促進させた安定性試験条件(40℃/75%の相対湿度)で貯蔵安定性試験を続けた。全不純物および不純物Fの含有量を、初期および2か月貯蔵時に評価した。その結果を、以下で表7に表す。
【0139】
【0140】
全不純物がわずか2か月で(1.0%よりも多くなるまで)顕著に増加したことが、測定された。また、不純物Fの含有量は、2か月で0.2%よりも多くなるまで顕著に増加した。このことと対象的に、溶存酸素含有量が0ppm~0.2ppmの範囲にある本発明に従って製造した製剤の場合に測定される全不純物および既知の不純物Fの含有量は、非常に低かった。{例えば、実施例4、5(表3)および実施例10(表6)の安定性の測定結果を参照されたい}。製剤例10について表6に与えられている安定性データから明らかであるように、40℃/75%の相対湿度で6ヶ月の貯蔵後、全不純物の含有量は、たった0.48%(すなわち1.0%未満)であり、不純物Fは、たった0.12(すなわち0.2%未満)であった。また、本発明に係る製剤例4では、40℃/75%の相対湿度で2ヶ月の貯蔵後、全不純物の含有量は、たった0.669(すなわち1.0%未満)であり、既知の不純物Fは、たった0.12(すなわち0.2%未満)であった。
【0141】
比較例2
溶存酸素含有量が1.45ppmのペメトレキセドの比較例の注射溶液を、溝付きストッパーの使用を伴わず、圧力を低下させ開放するサイクルを伴わない先行技術の公知の方法に従って製造する。
図4に示された溝がないゴムストッパーを使用する。組成物および方法の詳細を以下に与える。
【0142】
【0143】
ペメトレキセドの二ナトリウム七水和物塩および等張剤(マンニトール)を、注射用水中に溶解させ、その後アルゴンガスでパージした。得られた溶液のpHを、水酸化ナトリウムおよび/または塩酸などのpH調節剤を使用して7.2に調節した。このように形成したペメトレキセドの溶液を、無菌的にろ過した。ろ過したバルク溶液を不活性アルゴンガスでパージして、溶存酸素レベルを1ppm未満に下げた。溶液(20ml)を、20mlのガラスバイアルに満たした。バイアルのヘッドスペースを、アルゴンガスでフラッシュし、次いで、溝がないゴムストッパー(
図4)を使用してバイアルに栓をした。栓をしたバイアルを、フリップオフアルミニウムクリンピングキャップで密閉した。密閉したガラスバイアルを、121℃の温度で15分間オートクレーブで湿熱殺菌に付すことによって、最後に殺菌した。充填され密閉されオートクレーブ処理されたバイアルを、二次パッケージング(カートン)に入れた。
【0144】
安定性試験:比較例2に係る密閉されオートクレーブ処理されたバイアルを、様々な貯蔵条件で、すなわち、室温(25℃,60%の相対湿度)で、冷蔵条件(2~8℃の温度)で、および促進させた安定性試験条件(40℃/75%の相対湿度)で貯蔵安定性試験に付した。薬剤のアッセイ、最も多い未知の不純物および全不純物を、HPLCまたは高速液体クロマトグラフィー法を用いて、様々な貯蔵時点で分析した。測定結果を、以下で表9に与える。
【0145】
【0146】
安定性の結果は、溶存含有量が>0.2ppmの比較例2に係るペメトレキセドの注射水溶液が、室温(25℃±2℃/60%RH±5%)で、または40℃/75%の相対湿度の促進させた安定性条件で貯蔵した場合に、実質的に高い全不純物および最も多い未知の不純物の形成を示すことを示す。ただ室温で1か月貯蔵した後、全不純物は、ペメトレキセドの2.0重量%という所望の限度を超え、最も多い未知の不純物は、0.24重量%「以下」という所望の限度を超える(表9を参照されたい)。アッセイ値も下がる。
【0147】
比較例1および2ならびに実施例の安定性データから、0ppm~0.2ppmの溶存酸素含有量が、ペメトレキセドの水溶液の安定化および長期間の安定性の付与において重大な意味を持つことが明らかである。