(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-16
(45)【発行日】2023-08-24
(54)【発明の名称】エネルギーリターンシステムを有する義手
(51)【国際特許分類】
A61F 2/56 20060101AFI20230817BHJP
A61F 2/70 20060101ALI20230817BHJP
G01L 5/00 20060101ALI20230817BHJP
【FI】
A61F2/56
A61F2/70
G01L5/00 Z
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021168740
(22)【出願日】2021-10-14
【審査請求日】2021-10-14
(32)【優先日】2020-10-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】516172237
【氏名又は名称】アクセンチュア グローバル ソリューションズ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100102406
【氏名又は名称】黒田 健二
(74)【代理人】
【識別番号】100100240
【氏名又は名称】松本 孝
(72)【発明者】
【氏名】グリーンスパン,マーク ベンジャミン
(72)【発明者】
【氏名】ダニエルスキュ,アンドレア
【審査官】中尾 麗
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2014/0041188(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2005/0187640(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0254845(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/56
A61F 2/70
G01L 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
義手であって、
競技用ボールに係合するように適合化された表面を有する第1の部材と、
前記第1の部材に結合された第1のばねであって、前記第1のばねは、エネルギーを吸収するために、および前記第1の部材の移動に応じてエネルギーリターンをもたらすために、配置され、前記第1のばねは、前記第1のばねの撓みに応じて変化する導電率を有する、第1のばねと、
前記第1のばねの前記導電率を検出するように、および前記導電率に応じた信号を出力するように、構成された電気回路と、
を備えた義手。
【請求項2】
前記第1のばねに結合された、且つ前記第1の部材に枢動可能に結合された、ベース部材を更に備え、前記ベース部材に対する前記第1の部材の枢動が前記第1のばねを撓ませる、請求項1に記載の義手。
【請求項3】
前記ベース部材に結合されたスリーブであって、前記義手の使用者の残肢を収容するように構成された内部空間を画成するスリーブを更に備える、請求項2に記載の義手。
【請求項4】
前記導電率に応じた前記信号を前記電気回路から受信するために配置された触覚デバイスを更に備える、請求項3に記載の義手。
【請求項5】
前記触覚デバイスは、前記内部空間内の残肢に接触して振動するように配置された振動モータである、請求項4に記載の義手。
【請求項6】
前記第1の部材に結合された第1の片持ちばねであって、前記第1の部材に係合した競技用ボールに係合するように配置された表面を含む第1の片持ちばねを更に備える、請求項1に記載の義手。
【請求項7】
前記第1の部材に結合された第1の片持ちばねと前記第1の部材に結合された第2の片持ちばねとを更に備え、前記
第1および第2
の片持ちばねの各々は、前記第1の部材に係合した競技用ボールに係合するように配置された表面を含む、請求項1に記載の義手。
【請求項8】
前記第1の部材、前記第1の片持ちばね、および前記第2の片持ちばねの各表面は、競技用ボールに係合するような輪郭を有する、請求項7に記載の義手。
【請求項9】
前記第1のばねは多材料3D印刷されたデバイスである、請求項1に記載の義手。
【請求項10】
前記第1のばねと前記第1の部材とは、単一の印刷工程で3D印刷される、請求項9に記載の義手。
【請求項11】
義手であって、
競技用ボールに係合するように適合化された表面を有する第1の部材と、
前記第1の部材に結合された第1のばねであって、前記第1の部材の移動に応じて撓んでエネルギーリターンをもたらすように配置された第1のばねと、
前記第1のばねに結合された、且つ前記第1の部材に枢動可能に結合された、ベース部材であって、前記ベース部材に対する前記第1の部材の枢動が前記第1のばねを撓ませるベース部材と、
前記第1の部材から延在する第1の片持ちばねであって、競技用ボールが前記第1の部材の前記表面に係合しているときに前記競技用ボールに係合するように適合化された表面を有する第1の片持ちばねと、
を備え
、
前記第1の部材、前記第1のばね、前記ベース部材、および前記第1の片持ちばね部材の各々は単一の印刷工程で3D印刷され、
前記第1のばねは、多材料3D印刷されたデバイスであり、前記第1のばねは、
第1の3D印刷された材料と、
前記第1の3D印刷された材料に一体化された第2の3D印刷された材料であって、前記第1の3D印刷された材料の導電率より大きい導電率を有する第2の3D印刷された材料と、
前記第2の3D印刷された材料に接続された第1の電気接点と、
前記第2の3D印刷された材料に接続された第2の電気接点と、
を備え、
前記第1のばねは、前記ばねの変形に応じて変化する導電率を前記第1および第2の電気接点の間に有するように構成されている、義手。
【請求項12】
競技用ボールが前記第1の部材の前記表面に係合しているときに前記競技用ボールに係合するように適合化された表面を有する第2の片持ちばねを更に備え
、前記第2の片持ちばねは単一の印刷工程で3D印刷される、請求項11に記載の義手。
【請求項13】
前記第1の部材に結合された第2のばねであって、前記第1の部材の移動に応じて撓んでエネルギーリターンをもたらすように配置された第2のばねを更に備え
、前記第2のばねは単一の印刷工程で3D印刷される、請求項11に記載の義手。
【請求項14】
前記第1および第2のばねの各々はコイルばねである、請求項13に記載の義手。
【請求項15】
前記ベース部材に結合されたスリーブであって、前記義手の使用者の残肢を収容するように構成された内部空間を画成するスリーブを更に備える、請求項
11に記載の義手。
【請求項16】
前記第1および第2の電気接点の間の前記第1のばねの前記導電率を検出するように、および前記導電率に応じた信号を出力するように、構成された電気回路を更に備える、請求項
11に記載の義手。
【請求項17】
前記導電率に応じた前記信号を前記電気回路から受信するように配置された触覚デバイスを更に備え、前記触覚デバイスは、前記義手の使用者の上肢に接触して振動するように配置された振動モータである、請求項
16に記載の義手。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、全般的に義手に関する。
【0002】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年10月16日出願の米国仮特許出願第63/092,688号の利益を主張する。先行出願の開示内容は、本出願の開示内容の一部であると見なされる(且つ本出願の開示内容に組み込まれる)ものとする。
【背景技術】
【0003】
3D印刷は、多材料3D印刷、メタマテリアル、および3Dプリンテッドエレクトロニクスにおける新興研究分野を有する多くの業界にわたって商品および研究調査の両方のために広く使用されている製造手法である。高いカスタマイズ性およびアクセス性の故に、3D印刷は、義手の3D印刷など、より多くのメカニズムを提供する。ただし、従来の3D印刷された義手は、本来の上肢が提供するものと同じ機能および制御を可能にしない。例えば、本来の上肢は、掴んでいる物体がどの程度硬質であるかを人に感じさせる。
【0004】
2020年の時点で、四肢欠損を有する米国内の人数はほぼ200万人である。それらのうち、下肢切断の数は上肢切断の数より10倍超多いため、義足の解決策が多数存在する。上肢、特に手、は、個人が行う高い巧緻性および微細制御作業の圧倒的多数を担う。求められる高い巧緻性は、機能的な義手の設計を著しく複雑にする。義手は、一定範囲内の微細なモータ制御を提供するが、大半は把持作業のためにのみ設計されている。既存の義手は、競技用義手のために不可欠な特徴である位置または力フィードバックを与えないので、その機能は限定されている。
【0005】
競技を行う運動選手にとっては、競技用義手の選択肢が少ない。既存の競技用義手は、個人を卓越させる高度な巧緻性および制御を提供しない。調査によると、切断後に競技に復帰した運動選手または個人は、心理的健康が向上している。バスケットボールは最も一般的な球技であり、7番目に一般的なレクリエーションスポーツである。加えて、手首および指の屈曲からバスケットボール用ボールに加えられる力は、ボールの速度、方向、および回転を制御するために極めて重要である。これらの理由により、バスケットボール用義手は有用である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
全般的に、本願明細書に記載の主題の一態様は、義手を含み得る。この義手は、コイルばねを含む。このコイルばねは、エネルギーリターンをもたらし、ばね上の歪み量に応じて変化する導電率を有する。一部の実施形態において、ばねは、多材料3D印刷(積層造形)によって製作される。多材料3D印刷で製作されたこのようなばねは、非導電性(絶縁性)の第1の材料と導電性の第2の材料とを含み得る。ばねの変形または歪みの程度の判定または推定は、ばねの導電性材料部分の導電率または抵抗率を測定することによって行われ得る。触覚フィードバックジェネレータがコイルばねの導電率(および変形)に比例した触覚フィードバックを使用者に対して発生させる。したがって、コイルばねによって戻されたエネルギーは、義手の装着者がより少ないエネルギーで作業するのを助け得る。触覚フィードバックは、装着者がより微調整された制御で作業するのを助け得る。
【0007】
本願明細書に記載のいくつかの発明態様は、以下を含むが、これらだけには限定されない。すなわち、(i)競技用ボールに係合するように適合化された義手、(ii)使用者が義手を使用してボールを投げているときにエネルギーリターンをもたらす複数のばね、(iii)これらのばねは、ばねの歪みまたは変形量に応じて変化する導電率を有し得る、および(iv)導電率の変化は、触覚フィードバックを使用者にもたらすために使用できるので、使用者は、ボールを投げているときに加えられている力の大きさを感知できる。
【0008】
一部の実施形態において、本願明細書に記載の義手は、3D印刷(積層造形)法によって製作可能である。特定の実施形態において、義手の複数のばねのうちの1つ以上が多材料3D印刷法によって製作され、非導電性の第1の材料と導電性の第2の材料とを含む。一部の実施形態において、義手は、1つ以上の片持ちばねを更に含む。この片持ちばねもボールに係合するように適合化されており、義手の使用者がボールを投げているときにエネルギーリターンをもたらす。
【0009】
本願明細書に記載の義手のための感歪能力が組み込まれた1つ以上のばねを使用すると、伝統的な加速度計または圧力センサの使用などの他の手法に比べ、電子部品の点数、製作後の組み立てステップ数、重量、および総コストが低減され得る。
【0010】
一部の態様において、本開示は義手に関する。このような義手は、競技用ボールに係合するように適合化された表面を有する第1の部材と、この第1の部材に結合された第1のばねとを含む。第1のばねは、エネルギーを吸収するように、および第1の部材の移動に応じてエネルギーリターンをもたらすように、配置されている。第1のばねは、第1のばねの撓みに応じて変化する導電率を有する。義手は、第1のばねの導電率を検出するように、およびこの導電率に応じた信号を出力するように、構成された電気回路を更に含む。
【0011】
このような義手は、場合によっては、以下の特徴のうちの1つ以上を含み得る。義手は、第1のばねに結合された、且つ第1の部材に枢動可能に結合された、ベース部材を更に含み得る。一部の実施形態において、ベース部材に対する第1の部材の枢動は、第1のばねを撓ませる。義手は、ベース部材に結合されたスリーブを更に含み得る。スリーブは、義手の使用者の残肢を収容するように構成された内部空間を画成する。義手は、導電率に応じた信号を電気回路から受信するように配置された触覚デバイスを更に含み得る。触覚デバイスは、内部空間内の残肢に接触して振動するように配置された振動モータでもよい。義手は、第1の部材に結合された第1の片持ちばねを更に含み得る。第1の片持ちばねは、第1の部材に係合した競技用ボールに係合するように配置された表面を含む。義手は、第1の部材に結合された第1の片持ちばねと、第1の部材に結合された第2の片持ちばねとを更に含み得る。第2および第3のばねの各々は、第1の部材に係合した競技用ボールに係合するように配置された表面を含み得る。第1の部材、第1の片持ちばね、および第2の片持ちばねのそれぞれの表面は、競技用ボールに係合するように成形され得る。第1のばねは、多材料3D印刷されたデバイスでもよい。一部の実施形態において、第1のばねおよび第1の部材は、単一の印刷工程で3D印刷される。
【0012】
別の態様において、本開示は、競技用ボールに係合するように適合化された表面を有する第1の部材と、第1の部材に結合された、第1の部材の移動に応じて撓んでエネルギーリターンをもたらすように配置された第1のばねと、第1の部材から延在する第1の片持ちばねであって、競技用ボールが第1の部材の表面にも係合しているときに競技用ボールに係合するように適合化された表面を有する第1の片持ちばねとを含む義手に関する。
【0013】
このような義手は、以下の特徴のうちの1つ以上を随意に含み得る。義手は、第1の部材から延在する第2の片持ちばねを更に含み得る。第2の片持ちばねは、競技用ボールが第1の部材の表面にも係合しているときに競技用ボールに係合するように適合化された表面を有する。義手は、第1の部材に結合された第2のばねを更に含み得る。第2のばねは、第1の部材の移動に応じて撓んでエネルギーリターンをもたらすように配置される。第1および第2のばねの各々は、コイルばねでもよい。義手は、第1のばねに結合された、且つ第1の部材に枢動可能に結合された、ベース部材を更に含み得る。ベース部材に対する第1の部材の枢動は、第1のばねを撓ませ得る。義手は、ベース部材に結合されたスリーブを更に含み得る。スリーブは、義手の使用者の残肢を収容するように構成された内部空間を画成する。ベース部材、第1の部材、第1のばね、および第1の片持ちばね部材は、それぞれ単一の印刷工程で3D印刷され得る。一部の実施形態において、第1のばねは、多材料3D印刷されたデバイスであり、第1の3D印刷された材料と、第1の3D印刷された材料と一体化された、第1の3D印刷された材料の導電率より大きい導電率を有する第2の3D印刷された材料と、第2の3D印刷された材料に接続された第1の電気接点と、第2の3D印刷された材料に接続された第2の電気接点とを含む。第1のばねは、ばねの変形に応じて変化する導電率を第1および第2の電気接点の間に有するように構成され得る。義手は、第1および第2の電気接点の間の第1のばねの導電率を検出するように、且つこの導電率に応じた信号を出力するように、構成された電気回路を更に含み得る。義手は、導電率に応じた信号を電気回路から受信するように配置された触覚デバイスを更に含み得る。この触覚デバイスは、義手の使用者の上肢に接触して振動するように配置された振動モータである。
【0014】
1つ以上の実施例の詳細が添付の図面および以下の説明に示されている。本開示の他の潜在的特徴および利点は、以下の説明および添付図面から、更には特許請求の範囲から、明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】一部の実施形態による例示的義手を使用してバスケットボール用ボールをシュートしようと準備している人を示す。
【
図2】バスケットボール用ボールをシュートした後の
図1の人と義手とを示す。
【
図3】バスケットボール用ボールに係合している
図1の義手の斜視図である。
【
図4】バスケットボール用ボールに係合している
図1の義手の側面図である。
【
図6】バスケットボール用ボールに係合して第1段階のシュート用構成に構成されている
図1の義手を示す。
【
図7】バスケットボール用ボールに係合して第2段階のシュート用構成に構成されている
図1の義手を示す。
【
図8】バスケットボール用ボールのリリース後のその本来の構成への
図1の義手の復帰を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
さまざまな図面における同様の参照符号は、同様の要素を示している。
【0017】
図1および
図2を参照すると、例示的義手100は、例えば、バスケットボール用ボール10をバスケットボールゴール12にシュートするために、使用者1(例えば、切断手術を受けた人)によって装着され得る。更に以下に説明するように、一部の実施形態において、義手100は、1つ以上のばねを含む。義手100は、シュート中に義手100を介してバスケットボール用ボール10に加えられている力の大きさに比例する身体的感覚を使用者1にもたらす触覚フィードバックシステムを含むことができる。したがって、ばね(単数または複数)によって戻されたエネルギーは、使用者1がより少ないエネルギーを使用してバスケットボール用ボール10をシュートするのを助け得る。触覚フィードバックは、使用者1がより微調整された制御でバスケットボール用ボール10をシュートするのを助け得る。
【0018】
本願明細書に示されているシナリオはバスケットボール用ボールのシュートであるが、下記の義手100の設計態様は、他のコンテキストでの使用に適合化された義手にも適用可能である。例えば、本願明細書に記載の諸概念は、フットボール用ボールを投げる、野球用ボールまたはソフトボール用ボールなどのボールを投げる、フライングディスクを投げる、ボールをドリブルする、およびこれらに類することなどの、ただしこれらだけに限定されない、目的のために適合化された義手に制限なく適用可能である。
【0019】
図3~
図5を参照すると、義手100は、第1の部材110と、第1のばね120と、第2のばね130と、第1の片持ちばね140と、第2の片持ちばね150と、ベース部材160と、ソケット170と、電気回路180と、触覚デバイス190とを含む。義手100の構成要素のうち、少なくとも第2のばね130、第2の片持ちばね150、ソケット170、電気回路180、および触覚デバイス190は任意使用であり、義手100の一部の実施形態には含まれていない。例えば、一部の実施形態において、義手100は、第1の部材110、第1のばね120、第1の片持ちばね140、およびベース部材160のみを含み得る。
【0020】
第1の部材110は、競技用ボール(この例では、バスケットボール用ボール10)に係合するように適合化された表面を有する。一部の実施形態において、第1の部材110の表面は、バスケットボール用ボール10の外側球面の曲率に適合する凹面を設けて成形されている。一部の実施形態においては、第1の部材110の表面をざらつかせることができる。第1の部材110に係合する特定の物体種別に応じて、特定の物体の形状およびサイズに対応するために、表面を種々の方法で適合化可能である。
【0021】
第1のばね120は、第1の部材110に結合されている。第1のばね120は、ベース部材160にも結合されている。したがって、更に以下に説明するように、第1の部材110がベース部材160に対して枢動すると(義手100を使用してバスケットボール用ボール10をシュートする際など)、第1のばね120は変形する、または撓む、ことになる。シュート動作時、最初に、第1のばね120は圧縮されることになる。その後、シュート動作中、第1のばね120はエネルギーリターンをもたらす。換言すると、第1のばね120の伸張に伴い、圧縮されていた第1のばね120のポテンシャルまたは蓄積エネルギーが放出されることになる。
【0022】
一部の実施形態において、更に以下に説明するように、第1のばね120は、第1のばね120の撓みに応じて変化する導電率を有するように構成されている。図示の実施形態において、第1のばね120はコイルばねである。一部の実施形態において、第1のばね120は、台板ばね、マルチセグメント台板ばね、撓みばね、片持ちばね、ねじりばね、非線形特性ばね、定荷重ばね、線形特性ばね、およびこれらに類するものなどの、ただしこれらだけに限定されない、別の種類のばねに、制限なく、することができる。
【0023】
図示の実施形態において、第1の片持ちばね140および第2の片持ちばね150は、これらの撓み、またはこれらに加わる力、に応じて変化する導電率を有するように構成されていない。ただし、一部の実施形態において、第1の片持ちばね140および/または第2の片持ちばね150の一方または両方は、その撓み(単数または複数)に応じて変化する導電率を有するように構成可能である。このような一部の実施形態において、第1のばね120は、このような能力(すなわち、撓みに応じて変化する導電率を有すること)も有する。あるいは、このような一部の実施形態において、第1のばね120は、このような能力を含まない。
【0024】
一部の実施形態(図示の実施形態など)において、義手100は、第2のばね130を更に含む。第2のばね130は、(第1のばね120と同様に)第1の部材110およびベース部材160に結合されている。義手100を使用したバスケットボールシュート動作中、第2のばね130は圧縮され、その後、弾性反発して、第1のばね120と同じようにエネルギーリターンをもたらす。
【0025】
義手100は、第1の片持ちばね140を更に含む。第1の片持ちばね140は、第1の部材110に取り付けられており、第1の部材110から延在する。片持ちばね140は、第1の部材110に対して屈撓可能である。以下に説明するように、義手100を使用したバスケットボール用ボール10のシュート動作中、片持ちばね140は第1の部材110に対して撓んでエネルギーリターンをもたらす。第1の片持ちばね140は、バスケットボール用ボール10が第1の部材110にも係合しているときに、バスケットボール用ボール10に係合するように配置された表面を有する。一部の実施形態において、第1の片持ちばね140の表面は、バスケットボール用ボール10の外側球面の曲率に適合する凹面を設けて成形されている。
【0026】
一部の実施形態(図示の実施形態など)において、義手100は、第2の片持ちばね150を更に含む。第2の片持ちばね150は、第1の片持ちばね140と同様に、第1の部材110に取り付け可能であり、第1の部材110から延在可能である。更に、第2の片持ちばね150は、第1の片持ちばね140と同様に、第1の部材110に対して屈撓可能であり、義手100を使用したバスケットボール用ボール10のシュート動作中、第1の部材110に対して撓んでエネルギーリターンをもたらす。第2の片持ちばね150も、バスケットボール用ボール10が第1の部材110にも係合しているときに、バスケットボール用ボール10に係合するように配置された表面を有する。一部の実施形態において、第2の片持ちばね150の表面は、バスケットボール用ボール10の外側球面の曲率に適合する凹面を設けて成形されている。
【0027】
義手100は、ベース部材160を更に含む。第1のばね120および第2のばね130は、ベース部材160に結合されている。以下に説明するように、第1の部材110は、ベース部材160に枢動可能に結合されている。ベース部材160は、ソケット170をベース部材160に解放可能に接続するための接続点も提供する。
【0028】
ソケット170は、使用者1の残肢を収容するように構成された内部空間を画成する。例えば、使用者1の腕が肘より下で切断されている場合、ソケット170は、使用者1の前腕の一部を収容するように構成可能である。ソケット170は、切断手術を受けた人が使用する任意の種類のスリーブにできる。一部の実施形態において、ソケット170は、ソケット170をベース部材160に解放可能に接続するように構成された接続部材を含む。例えば、一部の実施形態において、ソケット170はベース部材160をソケット170の端部に取り付けるために使用可能なねじが切られたロッドを含む。
【0029】
一部の実施形態(図示の実施形態など)において、義手100は、電気回路180を更に含む。一部の実施形態において、電気回路180は、1つ以上のハウジング内で、ソケット170および/またはベース部材160に結合可能である。
【0030】
電気回路180は、固体回路(例えば、集積回路、トランジスタ、ダイオード、等々)および/またはアナログ電気回路を備えることができる。一部の実施形態において、電気回路180は、1つ以上のプロセッサを備えることができる。一部の実施形態において、電気回路180はプログラム可能である。電気回路180は、電池などの電源を含むことができる。電気回路180は、(第1のばね120の導電率を測定するための電気接続部からなどの)1つ以上の入力を受け付けるように構成可能である。これら入力は、デジタルおよび/またはアナログとすることができる。電気回路180は、1つ以上の出力を(触覚デバイス190などに)提供するように構成可能である。これら出力は、デジタルおよび/またはアナログとすることができる。一部の実施形態において、これら出力を入力への応答とすることができる。例えば、図示の実施形態において、電気回路180によってもたらされる触覚デバイス190への出力は、第1のばね120の導電率測定値からの電気回路180への入力への応答とすることができる。特定の実施形態において、電気回路180によってもたらされる触覚デバイス190へのアナログ出力は、第1のばね120の導電率測定値からの電気回路180へのアナログ入力に比例させることが可能である。
【0031】
一部の実施形態において、回路180は、義手100からスマートフォン、スマートウォッチ、タブレットコンピュータ、または使用者1にリアルタイムフィードバックまたはポストアクティビティ分析および改良提案を提供するためのアプリケーションを実行する別のデバイス、に通信するWiFi、BT、BLE、またはANT+無線などの無線接続を含むことができる。一部の実施形態において、このアプリケーションは、シュート中に義手100の各ばねに加わっている歪み量を可視化するための使用者1向けトレーニングツールを含むこともできる。
【0032】
一部の実施形態(図示の実施形態など)において、義手100は触覚デバイス190を更に含む。一部の実施形態において、触覚デバイス190はソケット170に結合可能である。特定の実施形態において、触覚デバイス190は、使用者1の残肢に装着されるカバーまたはライナに結合可能である。更に他の複数の実施形態において、触覚デバイス190は、使用者1の他の面域または使用者1が装着しているアイテムに結合可能である。
【0033】
触覚デバイス190は、振動モータ、可変量の力を出力するデバイス、電気触感デバイス、およびこれらに類するものなど、ただしこれらだけに限定されない、さまざまな種類のデバイスとすることができる。一部の実施形態において、触覚デバイス190は、ソケット170に結合された振動モータとすることができる。この振動モータは、ソケット170の内部空間内で使用者1の残肢に接触して振動するように配置可能である。
【0034】
全ての実施形態において必須という訳ではないが、一部の実施形態において、義手100は3D印刷によって製作される。例えば、一部の実施形態において、少なくとも第1の部材110、第1のばね120、第2のばね130、第1の片持ちばね140、第2の片持ちばね150、およびベース部材160の全てが3D印刷によって製作される。以下に説明するように、一部の実施形態において、少なくとも第1のばね120は、多材料3D印刷法によって製作される。特定の実施形態において、義手100は、単一の3D印刷工程によって製作される。
【0035】
一部の実施形態において、義手100の各構成要素は、1種以上のさまざまな工程(例えば、機械加工、鋳造、成形、3D印刷、等々)で製作される。これら構成要素は、その後、組み立てられて義手100を形成する。
【0036】
図6~
図8は、義手100を使用したバスケットボール用ボール10のシュート過程における義手100のばねの撓みを示す一連の図である。片持ちばね140/150およびコイルばね120/130は、エネルギーリターン構成要素として機能する。コイルばね120/130は、手首の屈曲から生成された力を表し、片持ちばね140/150は、指の屈曲から生成された力を表す。人差し指および中指は、伝統的なバスケットボールシュートにおいてバスケットボール用ボール10に最後まで接触している2点であるので、義手100は、2本の指に対応する2つの片持ちばね140/150を有する。片持ちばね140/150は、第1の部材110の輪郭とバスケットボール用ボール10の輪郭とに適合するように湾曲され得る。
【0037】
コイルばね120/130と片持ちばね140/150との間で段階的変形が実現され得るので、エネルギーリターンシステムは伝統的なバスケットボールシュートの生体力学を中実に再現できる。使用者1によって加えられた主な上向きの力は、コイルばね120/130の中心を真っ直ぐに通過するので、片持ちばね140/150は主荷重経路からオフセットされている。コイルばね120/130は、更に、(
図9~
図11を参照して以下に説明するように)第1の部材110とベース部材160との間に組み込まれたヒンジを中心とした回転角度に適合するように、直線的な直動関節ではなく、(
図12および
図13を参照して以下で更に説明するように)湾曲軌道を設けて印刷され得る。
【0038】
図6に示されているように、義手100を使用したバスケットボールシュート動作は、第1のばね120を圧縮させる(義手100が第2のばね130を含んでいる場合は、第2のばね130も圧縮させる)。第1のばね120の圧縮は、ベース部材160に対する第1の部材110の枢動によって引き起こされる。ベース部材160に対する第1の部材110の枢動は、義手100を使用したバスケットボールシュート動作中の義手100の上方への加速に伴い、バスケットボール用ボール10(および第1の部材110)の重量によって引き起こされる。
【0039】
以下に説明するように、第1のばね120の圧縮の程度は、第1のばね120の導電率を監視することによって検出可能である。例えば、電気回路180(
図3および
図4)は、義手100を使用したバスケットボールシュート動作中の第1のばね120の圧縮に伴う第1のばね120の導電率を測定/監視するように構成および動作可能である。一部の実施形態において、電気回路180は、第1のばね120の測定/監視された導電率に対応する出力(例えば、比例出力)を触覚デバイス190に提供できる。したがって、義手100の使用者は、義手100を使用したバスケットボールシュート動作中にバスケットボール用ボール10に加えられている力の大きさを示す身体的感覚を感受できる。
【0040】
図7に示されているように、義手100を使用したバスケットボールシュート動作は、第1の片持ちばね140の撓み(義手100が第2の片持ちばね150を含んでいる場合は、更に第2の片持ちばね150の撓み)も引き起こす。第1の片持ちばね140の撓みは、義手100を使用したバスケットボールシュート動作中の義手100の前方への加速に伴い、バスケットボール用ボール10の重量によって引き起こされる。
【0041】
図8に示されているように、義手100を使用したバスケットボール用ボールのシュート動作は、第1のばね120の弾性反発からの(および第2のばね130が含まれている場合は、更に第2のばね130からの)、および第1の片持ちばね140の弾性反発からの(第2の片持ちばね150が含まれている場合は、更に第2の片持ちばね150からの)エネルギーの放出(エネルギーリターン)を更に含む。このエネルギーの放出によってもたらされる義手100からのバスケットボールシュートは、彼/彼女の身体部分を全て有する人による通常のシュートの手、手首、および腕の動作によってもたらされる通常のバスケットボールシュートを忠実に模倣している。例えば、第1の片持ちばね140からの(第2の片持ちばね150が含まれている場合は、更に第2の片持ちばね150からの)エネルギーリターンは、最後の力をバスケットボール用ボール10に提供し、本来のシュートのようにバスケットボール用ボール10のバックスピンを発生させる。
【0042】
図6~
図8のシーケンスのコンテキストにおいてより容易に理解できるように、義手100は直列に配置された複数のばねを含むと云える。すなわち、第1のばね120と第1の片持ちばね140とは直列に配置され、第1の部材110は、第1のばね120と第1の片持ちばね140との間に配置されている。
【0043】
図9~
図11は、第1の部材110とベース部材160との間に使用可能な枢動可能な機械式接続の一例示的種類を示す。図示の実施形態において、第1の部材110は、2つの対向する円錐状突起112を含む。ベース部材は、2つの対向する円錐状凹部162を画成する。円錐状突起112は、円錐状凹部162の内側に移動可能に留まる。円錐状突起112と円錐状凹部162との間の界面は、第1の部材110がベース部材160に枢動可能に結合される回転関節をもたらす。
【0044】
第1の部材110とベース部材160との間の枢動可能な機械式接続のために、他の配置の使用も可能である。例えば、一部の実施形態において、円錐状突起112は、ベース部材160から延在可能であり、円錐状凹部162は、第1の部材110によって画成可能である。この円錐形状は、全ての実施形態において必要な訳ではない。例えば、一部の実施形態においては、これらの突起および凹部のために円筒形状または半球形状を使用できる。
【0045】
第1の部材110およびベース部材160の製作に3D印刷法が使用される場合、第1の部材110とベース部材160との間の枢動可能な機械式接続は、第1の部材110およびベース部材160の3D印刷中に形成可能である。例えば、一部の実施形態において、円錐状突起112は、3D印刷によって画成された円錐状凹部162の内側に3D印刷可能である。換言すると、一部の実施形態において、第1の部材110とベース部材160との間の枢動可能な機械式接続は、第1の部材110とベース部材160とを製作する3D印刷の単一の工程/実行中に形成可能である。
【0046】
図12~
図15は、第1のばね120(第2のばね130が含まれている場合は、第2のばね130も表し得る)の更なる特徴を示す。図示の第1のばね120は、第1の材料122と第2の材料124とから成るコイルを含む。第1の材料122と第2の材料124とは、互いに一体化されている。第1のばね120は、シャフト121とガイドスリーブ123とを更に含む。シャフト121は、第1のばね120の一端に取り付けられており、ガイドスリーブ123は、第1のばね120の反対側端部に取り付けられている。
【0047】
シャフト121は、ガイドスリーブ123よって画成された内部空間の内側で移動自在に摺動する。一部の実施形態において、シャフト121とガイドスリーブ123とを含むと、第1のばね120の圧縮時の座屈を防止できるので有利である。これら構成要素は、一部の実施形態において有利であるが、任意使用である。一部の実施形態において、シャフト121とガイドスリーブ123とから成るアセンブリの一部として、緩衝子が含まれる。特定の実施形態において、緩衝子は調整可能であるので、使用者1が緩衝量を調整できる。
【0048】
図示の実施形態において、シャフト121は多角形の横断面形状を有し、ガイドスリーブ123よって画成される内部空間の横断面形状は、対応する形状を有する(その間に滑り嵌めが生じる)。多角形の横断面形状は、ガイドスリーブ123に対するシャフト121の回転を防止する。図示の実施形態において、多角形の横断面形状は、矩形である。ただし、第1のばね120の一部の実施形態においては、他の多角形の横断面形状および多角形以外の横断面形状(例えば、円形)の使用も可能である。
【0049】
一部の実施形態において(例えば、
図12および
図13に示されているように)、シャフト121を湾曲させることができる。ガイドスリーブ123によって画成される内部空間は、対応する湾曲を有し得る。あるいは、一部の実施形態において、シャフト121とガイドスリーブ123によって画成される内部空間とを(例えば、
図14および
図15に示されているように)直線状にすることができる。
【0050】
特に
図14および
図15を参照すると、一部の実施形態において、第1のばね120は、第1のばね120の変形に応じて変化する導電率を有するように構成可能である。換言すると、第1のばね120は、エネルギーリターンの提供に加え、組み込まれた感歪能力を提供できる。
【0051】
図示の実施形態において、第1のばね120は、少なくとも2つの異種材料から成る。例えば、第1のばね120のコイルは、第1の材料122と第2の材料124とを含む。第1の材料122と第2の材料124とは、それぞれ異なる電気的特性を有する。例えば、一部の実施形態において、第2の材料124の導電率は、第1の材料122の導電率より高い。一部の実施形態において、第1の材料122は電気絶縁体であり、第2の材料124は導電体である。
【0052】
第1のばね120は、コイルばねおよび圧縮ばねである。ただし、本願明細書に記載されている第1のばね120(コイル圧縮ばね)のコンテキストにおける感歪という概念は、他の多くの種類のばねにおいても実現可能であることを理解されたい。例えば、本願明細書に記載の概念は、他の種類のばねにおいても制限なしに実現可能である。他の種類のばねとして、例えば、引きばね、ねじりばね、片持ちばね、板ばね、非線形特性ばね、定荷重ばね、線形特性ばね、およびこれらに類するものなどが挙げられるが、これらだけに限定されない。
【0053】
第1のばね120は、何れか所望のばね特性を有するように構成可能である。ばね特性として、ばね定数、コイル数、コイル部材の直径、ピッチ、ばねコイルの内径および外径、自由長さ、密着長さ、エンド型、およびこれらに類するものが挙げられるが、これらだけに限定されない。更に、フックの法則およびカスチリアノの定理によって定義されているように、さまざまな所望のばね定数および/または力プロファイルを生成するように、第1のばね120の特性を変化させることによって、第1のばね120を調整できる。例えば、(ばねのヤング率およびコイルばねの剪断弾性係数に影響を及ぼす)横断面の厚さ、ばね直径、および/または巻き数を変化させることによって、第1のばね120の特性を変化させることができる。したがって、第1のばね120は、義手100を含む、ただしこれだけには限定されない、特定の最終用途のための調整可能性を有する。
【0054】
第1のばね120は、第1の電気接点126と第2の電気接点128とを更に含む。第1の電気接点126および第2の電気接点128は、それぞれ第2の材料124に電気的につながっている。第2の材料124の少なくとも一部分は、第1の電気接点126と第2の電気接点128との間に延在する。一部の実施形態においては、第2の材料124の全体が第1の電気接点126と第2の電気接点128との間に延在する。特定の実施形態(図示の実施形態など)において、第1の電気接点126および第2の電気接点128は、第2の材料124と同じ種類の材料から成る。このような場合、第2の材料124と接点122および124とは、一続きの単一部材として製作される。一部の実施形態において、第1の電気接点126および/または第2の電気接点128は、第2の材料124とは異なる種類の材料から成る。
【0055】
一部の実施形態において、第1のばね120は、3D印刷されたばね、または多材料3D印刷されたばね、である、あるいはこれらのばねのどちらか一方を備える。例えば、第1の材料122は第1の3D印刷される材料とすることができ、第2の材料124は、第1の3D印刷される材料と一体化される第2の3D印刷される材料とすることができる。場合によっては、第1のばね120を製作するための多材料3D印刷工程の少なくとも幾つかの部分において、第1の材料122および第2の材料124は、並行して、または同時に、堆積される。
【0056】
3D印刷は、多材料3D印刷、メタマテリアル、および3Dプリンテッドエレクトロニクスにおける新興の研究分野を有する製造手法である。このような手法を使用して、第1のばね120を形成できる。多材料3D印刷法は、その高いカスタマイズ性により、義手100の第1のばね120および他の構成要素の製作に適切である。
【0057】
多材料3D印刷される物体(例えば、第1の材料122と第2の材料124とを有する第1のばね120など)は、多材料3Dプリンタによって複数の材料で印刷される物体を指し得る。多材料3Dプリンタは、同じ印刷工程において複数の材料で一貫した印刷が可能である。印刷時、一部品の材料特性は、印刷に使用される材料の材料特性によって少なくともある程度決まる。
【0058】
メタマテリアルは、単一材料で印刷される部品に、その部品の複数部分にそれぞれ異なる材料特性を持たせることによって、その能力を拡張する。これは、印刷の形状および内部構造を変化させることによって可能である。メタマテリアルは、複数部品を必要とせずに、印刷対応機構および変形可能構造を可能にし得る。3D印刷された変形可能物体の主要な用途は、第1のばね120などの3D印刷された調整可能なつる巻きばねである。ばねの3D印刷は、変形可能な物体ばかりでなく、エネルギーリターン特性を有する物体を印刷する可能性も導入する。
【0059】
第1のばね120など、一部の実施例においては、(例えば炭素系フィラメントから成る)導電性材料が(例えば非導電性フィラメントから成る)伝統的な材料(単数または複数)と同じ印刷で印刷される。例えば、一部の実施形態において、第1のばね120は、多材料3D印刷法を使用して形成可能である。ここで、第1の材料122は、1つ以上の非導電性材料から成り、第2の材料124は1つ以上の導電性材料から(例えば、1つ以上の炭素系導電性PLAフィラメント、銀フィラメント、グラフェンフィラメント、等々から)成る。
【0060】
以下に説明するように、第1のばね120は感歪能力が組み込まれており、電気回路180と組み合わせて使用可能である(
図3および
図4)。第1のばね120からの歪み関連データは、デジタル信号またはアナログ信号のどちらかとして使用可能である。
【0061】
第1のばね120は、圧縮を吸収するように、および、上記のように、第1のばね120が圧縮状態から弾性反発するときにエネルギーリターンをもたらすように、製作される。第1のばね120が圧縮されると、そのコイルは弾性変形する。コイルの変形は、当然、第1のばね120のコイルの材料(すなわち、第1の材料122および第2の材料124)に応力と歪みとをもたらす。第1のばね120の図示の実施形態において、第1のばね120が圧縮されると、第1の材料122および第2の材料124の両方が変形する。
【0062】
導電性材料(例えば、この例においては第2の材料124)の電気抵抗は、材料の歪みの変化に伴い、変化する。したがって、第1のばね120の圧縮、および/または圧縮状態からの弾性反発、に伴って歪む第2の材料124の電気抵抗(または導電率)を監視することによって第1のばね120の変形の程度を判定または推定するために、電気回路180を使用できる。一部の実施形態において、第1のばね120の変形に応じた第2の材料124の電気抵抗/導電率の変化は、第1のばね120の変形の程度に比例する。
【0063】
第1の電気接点126および第2の電気接点128は、第2の材料124に電気的につながっている。図示の実施形態において、第1の電気接点126および第2の電気接点128が第2の材料124の両端にあるとき、一部の実施形態において、第1の電気接点126および/または第2の電気接点128は、第2の材料124に沿った位置にある。(第1のばね120のコイルにおける)第2の材料124の少なくとも一部分は、第1の電気接点126と第2の電気接点128との間に延在する。一部の実施形態において、第1の電気接点126、第2の材料124、および第2の電気接点128は、全て同じ材料から3D印刷されている。
【0064】
第2の材料124は、特定の導電率または抵抗率を本質的に有する。その導電率または抵抗率は、第2の材料124の歪みまたは変形に伴い、変化する。したがって、第1のばね120は、第1のばね120の変形に応じて変化する導電率/抵抗率を第1の電気接点126と第2の電気接点128との間に有するように構成される。更に、電気回路180を使用して第1の電気接点126と第2の電気接点128との間の導電率を測定または監視することによって、第1のばね120の変形の程度を判定または推定できる。
【0065】
3D印刷される第1のばね120を構成する材料は、さまざまな方法で構成可能である。一部の実施形態において、第1のばね120の材料(単数または複数)の横断面形状は、第1のばね120のコイル全体に沿って一定である。特定の実施形態において、第1のばね120の材料(単数または複数)の横断面形状は、第1のばね120のコイルに沿って変化する(例えば、第1のばね120のコイルに沿った別々の位置に2つ以上の異なる形状構成で材料(単数または複数)を配置できる)。複数のセンサアーキテクチャをそれぞれ異なる用途に使用できる。三角形の充填材を複数の線にわたらせて印刷すると、より剛性のばねを生じさせ得る。機械的および電気的な両特性が更に最適化され得るので、第1のばね120のコイルから最も弾性的な応答が実現され、組み込まれた歪みゲージから最大且つ最も予測可能な読み取りが実現され得る。これを可能にするには、1つの充填パターンおよび密度を有する導電性材料でばねの芯を印刷し、その後、伝統的なPLA、または有利な機械的特性のために異なる充填パターンおよび密度を有する他の材料、をシェルとして印刷する。
【0066】
一部の実施形態において、第1のばね120のコイルは、第2の材料124(導電性材料)と100%充填材とのみを使用して3D印刷される。すなわち、一部の実施形態においては、第1の電気接点126と第2の電気接点128との間に第2の3D印刷された材料124のみが存在する。この構成は、信号を送信するための最大導電率のために役立つが、荷重/歪み/変形下での抵抗の変化が僅かか皆無であり得る。充填百分率を下げると、導電性材料の横断面積が小さくなるので、抵抗は増加し得る。これらの実施例は、アナログ出力よりデジタル出力を提供し得る。炭素系PLA(第2の材料124)はこのような高い導電率を有するので、第1のばね120は、全圧縮範囲にわたって抵抗の変化を生じさせ得ない。代わりに、第1のばね120が完全に圧縮されたときにのみ、抵抗の変化が検出され得る。
【0067】
一部の実施形態においては、第2の3D印刷された材料124の導電性トレースを外部要素から保護するために、導電性トレースは第1の材料122の壁の内側(例えば、伝統的なPLAフィラメントの壁の内側)に印刷される。換言すると、第2の3D印刷される材料124は、第1の電気接点126と第2の電気接点128との間の1つ以上の位置(または全体)において、第1の3D印刷される材料100の内部に封入される。導電性PLAフィラメント(第2の3D印刷される材料124)の充填密度およびパターンを変化させることによって、第1のばね120の剛性またはばね定数を調整できる。
【0068】
一部の実施形態において、導電性材料(第2の3D印刷される材料124)の印刷は、コイルの外側部分/セグメントを含む。コイルの残りの部分は、第1の3D印刷される材料110(例えば、伝統的なPLA)で印刷される。換言すると、第1の電気接点126と第2の電気接点128との間の第2の3D印刷された材料124は、第1のばね120の外面の一部分を含む。図示の実施形態において(
図15を参照)、第2の材料124は、コイルの外面の約20%を含み、第1の材料122は、残りの80%を含む。一部の実施形態において、第2の材料124は、コイルの外面の大部分を含む。一部の実施形態において、第1の材料122は、コイルの外面の大部分を含む。この構成は、所望のばね特性のために第1の材料122(もう一方の非導電性材料)の機械的材料特性を保持しながら、第1のばね120のコイルの第2の材料124を通して信号を送信するために(例えば、歪みゲージの役目を果たすために)望ましいこともある。
【0069】
一部の実施形態においては、(例えば、第2の材料124の抵抗率/導電率の変化が第1のばね120の変形により直接的に比例する)よりアナログな応答を生成するために、導電性PLAフィラメントがコイルばねばかりでなく、第1の部材110とベース部材160との間の直動関節など他の複数の位置にも埋め込まれ得る。歪みセンサを回転または直動関節に載置することによって、センサからよりクリーンな信号を読み取りながら、第1のばね120のコイルの機械的材料特性を用途が要求する特性に正確に調整し得る。メタマテリアルから、しかしオープンリンケージを設計することによって、インスピレーションが得られることもある。
【0070】
図16は、第2の材料124の導電率/抵抗率の変化を引き起こす第1のばね120の変形を示す。これを使用して、義手100の触覚デバイス190を介したフィードバックの提供を含む、ただしこれだけには限定されない、さまざまな有用な用途のために電気信号を提供できる。
【0071】
この例において、(第1のばね120の変形の変化に応じた)電気信号の変化がプロット280に示されている。プロット280のx軸は時間であり、y軸は、第1のばね120の変形に応じた、および第1のばね120の変形を示す、第1のばね120からの信号出力である。
図16は、弛緩、圧縮、および弛緩から成る1サイクル中の第1のばね120のコイルの抵抗の変化を示す。
【0072】
一部の実施形態において、電気回路180は、第2の材料124の歪みに応じて、または比例して(および第1のばね120の変形に応じて、または比例して)変動する電圧出力を第1のばね120からもたらすために、第1のばね120と併用されるホイートストンブリッジを含むことができる。
【0073】
歪みは、第1のばね120の導電性コイル(第2の材料124)の抵抗の変化を通して測定され得る。一部の実施形態において、この抵抗はAdafruit Metro Mini 328マイクロコントローラのアナログ入力を通して読み出され、窓サイズが例えば10の、移動平均フィルタを使用して平滑化され得る。
【0074】
本願明細書は特定の具現例の詳細を多数含んでいるが、これらは、如何なる発明の、または特許請求され得るものの、範囲の制限と解釈されるべきではなく、むしろ特定の発明の特定の実施形態に固有であり得る特徴の説明として解釈されるものとする。複数の独立した実施形態のコンテキストにおいて本願明細書に記載されている特定の諸特徴は、単一の実施形態において組み合わせて実現することも可能である。逆に、単一の実施形態のコンテキストで記載されているさまざまな特徴は、複数の実施形態にそれぞれ別個に、または何れか適した部分組み合わせで、実現することも可能である。更に、本願明細書においては複数の特徴が特定の組み合わせで機能するように説明され、そのように最初に特許請求されている場合でも、特許請求された1つの組み合わせからの1つ以上の特徴は、場合によっては、その組み合わせから削除可能であり、特許請求された組み合わせは部分組み合わせ、または部分組み合わせの変形例、に向けられ得る。
【0075】
本主題の特定の実施形態を説明してきた。他の実施形態も添付の特許請求の範囲に含まれる。例えば、特許請求の範囲に記載の諸機能は、異なる順番での実行も可能であり、依然として望ましい結果を達成可能である。1つの例として、添付図面に示されている諸工程は、望ましい結果を達成するために、図示の特定の順番または順序を必ずしも必要としない。