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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-16
(45)【発行日】2023-08-24
(54)【発明の名称】シリコーン-アクリルポリマー粒子
(51)【国際特許分類】
   C08F 285/00 20060101AFI20230817BHJP
   C08F 290/06 20060101ALI20230817BHJP
   C08L 27/06 20060101ALI20230817BHJP
   C08L 51/00 20060101ALI20230817BHJP
【FI】
C08F285/00
C08F290/06
C08L27/06
C08L51/00
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021500119
(86)(22)【出願日】2019-07-26
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-11-18
(86)【国際出願番号】 US2019043551
(87)【国際公開番号】W WO2020023815
(87)【国際公開日】2020-01-30
【審査請求日】2022-07-19
(31)【優先権主張番号】62/711,117
(32)【優先日】2018-07-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】590002035
【氏名又は名称】ローム アンド ハース カンパニー
【氏名又は名称原語表記】ROHM AND HAAS COMPANY
(73)【特許権者】
【識別番号】590001418
【氏名又は名称】ダウ シリコーンズ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110000589
【氏名又は名称】弁理士法人センダ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チェン、ヤン
(72)【発明者】
【氏名】ウィルス、モリス
(72)【発明者】
【氏名】クォ、ハイラン
(72)【発明者】
【氏名】リウ、ナンクォ
【審査官】牟田 博一
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-307073(JP,A)
【文献】特開2017-222837(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F
C08L51/
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマー粒子であって、
(a)コアポリマーであって、
(i)構造(II)の1つ以上のモノマーの重合単位と、
【化1】
(式中、全てのRが独立して、水素または炭化水素基であり、nが0~1,000であり、mが2~1,000であり、pが0~1,000であり、全てのRが独立して、以下の構造
【化2】
を有する有機基であり、式中、R 15 は、炭化水素基であり、R 16 は、水素原子又はメチル基である
(ii)1つ以上の単官能アクリルモノマーの重合単位と、
(iii)ケイ素原子を有しない1つ以上のグラフトリンカーの重合単位と、を含む、コアポリマーと、
(b)1つ以上のアクリルモノマーの重合単位を含むシェルポリマーと、を含む、ポリマー粒子。
【請求項2】
前記ポリマー粒子が、-90℃以下の測定されたガラス転移温度および-80℃~-10℃の測定されたガラス転移温度を有する、請求項1に記載のポリマー粒子。
【請求項3】
前記シェルポリマーが、50℃~120℃の計算されたガラス転移温度を有する、請求項1に記載のポリマー粒子。
【請求項4】
モノマー(i)のモノマー(ii)とモノマー(iii)との合計に対する重量比が、0.7:1~19:1である、請求項1に記載のポリマー粒子。
【請求項5】
前記シェルポリマーが、前記ポリマー粒子の重量に基づいて5重量%~40重量%の量で存在する、請求項1に記載のポリマー粒子。
【請求項6】
ポリ塩化ビニルと、請求項1に記載ポリマー粒子と、を含むポリマー組成物であって、請求項1に記載のポリマー粒子が、前記ポリ塩化ビニル100重量部あたり1~10重量部の量で存在する、ポリマー組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
コアおよびシェルを有するポリマー粒子は、様々な目的に有用である。例えば、かかる粒子が比較的低いガラス転移温度(Tg)を有するコアおよび比較的高いTgのシェルを有する場合、これらの粒子は、例えば、耐衝撃性改良剤として、様々な目的のための有用性を見出す。耐衝撃性改良剤は、マトリックスポリマーへの添加剤として使用され、耐衝撃性改良剤の存在は、マトリックスポリマーの耐衝撃性を改善することを目的とする。変性マトリックスポリマーを屋外で使用することを目的とする場合、耐衝撃性改良剤が風化による劣化に抵抗することが望ましい。変性マトリックスポリマーを比較的高い温度で使用することを目的とする場合、耐衝撃性改良剤が高温による劣化に抵抗することが望ましい。いくつかの耐衝撃性改良剤は、シリコーンポリマーおよびアクリルポリマーを含み、いずれも低Tgポリマーを形成することができ、概して風化および高温に抵抗すると考えられている。いくつかのシリコーンポリマーは非常に低いTgを有し、これは、いくつかの耐衝撃性改良剤に有利であると考えられている。シリコーンポリマーは、高温での劣化に抵抗し、難燃性を提供するとも考えられている。しかしながら、シリコーンポリマーは高価である。
【0002】
US2007/0167567は、第1のステップが末端基を有する変性シロキサンに第1の重合反応を行うプロセスによって作製されるポリオルガノシロキサン含有グラフトコポリマーについて記載している。この第1の重合反応は酸性条件下で行われ、ペンダントビニル基を有するポリマーポリオルガノシロキサンを生成する。その後、ビニルモノマーはこのポリオルガノシロキサンの存在下でラジカル重合を起こす。
【0003】
組成物中にシリコーンを含むという性能上の利点を有するが、組成物中のシリコーンの量を減少させると同時のそれらの利点を達成する組成物を提供することが望ましい。かかる組成物を作製する方法を提供することも望ましい。ポリ塩化ビニル等のマトリックスポリマーを含み、かかる組成物のポリマー粒子も含む組成物を提供することも望ましい。
【0004】
以下は、本発明の記述である。
【0005】
本発明の第1の態様は、ポリマー粒子であって、
(a)コアポリマーであって、
(i)構造(I)のモノマー、構造(II)のモノマー、およびそれらの混合物から選択される1つ以上のモノマーの重合単位と、
【化1】
(式中、全てのRが独立して、水素または炭化水素基であり、nが0~1,000であり、mが2~1,000であり、pが0~1,000であり、全てのRが独立して、1つ以上のエチレン性不飽和基を含む有機基である)
(ii)1つ以上のモノビニルアクリルモノマーの重合単位と、
(iii)ケイ素原子を有しない1つ以上のグラフトリンカーの重合単位と、を含む、コアポリマーと、
(b)1つ以上のアクリルモノマーの重合単位を含むシェルポリマーと、を含む、ポリマー粒子である。
【0006】
本発明の第2の態様は、ポリ塩化ビニルと、請求項1に記載の複数のポリマー粒子と、を含むポリマー組成物であって、請求項1に記載のポリマー粒子が、ポリ塩化ビニル100重量部あたり1~10重量部の量で存在する、ポリマー組成物である。
【0007】
本発明の第3の態様は、ポリマー粒子の集合体を作製する方法であって、
(A)水性媒体中に分散した液滴の集合体を含むエマルジョン(E1)にフリーラジカル重合(A)を行って、水性媒体中にコアポリマー粒子の分散液(D1)を形成することであって、液滴が、
(i)構造(I)のモノマー(上で定義されたもの)、構造(II)のモノマー(上で定義されたもの)、およびそれらの混合物から選択される1つ以上のモノマーと、
(ii)1つ以上のモノビニルアクリルモノマーと、
(iii)ケイ素原子を有しない1つ以上のグラフトリンカーと、を含む、形成することと、
(B)コアポリマー粒子の分散液(D1)の存在下で、1つ以上のアクリルモノマーに水性乳化重合(B)を行うことと、を含む、方法である。
【0008】
以下は、本発明の詳細な説明である。
【0009】
本明細書で使用される場合、以下の用語は、文脈が別途明確に示さない限り、指定された定義を有する。
【0010】
本明細書で使用される場合、「ポリマー」は、より小さい化学的繰り返し単位の反応生成物で構成される比較的大きい分子である。ポリマーは、直鎖状、分岐状、星形、ループ状、超分岐状、架橋状、またはそれらの組み合わせである構造を有してもよく、ポリマーは、単一タイプの繰り返し単位(「ホモポリマー」)を有してもよく、またはそれらは2つ以上のタイプの繰り返し単位(「コポリマー」)を有してもよい。コポリマーは、ランダムに、順番に、ブロックで、他の配置で、またはそれらの任意の混合物もしくは組み合わせで配置された様々なタイプの繰り返し単位を有してもよい。
【0011】
互いに反応してポリマーの繰り返し単位を形成することができる分子は、本明細書で「モノマー」として知られている。そのように形成された繰り返し単位は、本明細書でモノマーの「重合単位」として知られている。モノマーの繰り返し単位が100未満の分子はオリゴマーであり、モノマーの繰り返し単位が100以上の分子はポリマーである。
【0012】
ビニルモノマーは、構造(III)を有し、
【化2】
式中、R21、R22、R23、およびR24の各々は、独立して、水素、ハロゲン、脂肪族基(例えば、アルキル基等)、置換脂肪族基、アリール基、置換アリール基、別の置換もしくは非置換有機基、またはそれらの任意の組み合わせである。ビニルモノマーは、フリーラジカルを重合させてポリマーを形成することができる。アルキル基を含む脂肪族基は、直鎖状、分岐状、環状、またはそれらの組み合わせであり得る。
【0013】
いくつかのビニルモノマーは、R21、R22、R23、およびR24のうちの1つ以上に組み込まれた1つ以上の重合性炭素-炭素二重結合を有し、かかるビニルモノマーは、本明細書で多官能性ビニルモノマーとして知られている。正確に1つの重合性炭素-炭素二重結合を有するビニルモノマーは、本明細書で単官能性ビニルモノマーとして知られている。
【0014】
ビニル芳香族モノマーは、R21およびR22の各々が水素であり、R23が水素またはアルキルであり、-R24が構造(VI)を有するビニルモノマーであり、
【化3】
式中、R、R、R、R、およびRの各々が、独立して、水素、ハロゲン、脂肪族基(例えば、アルキル基もしくはビニル基)、置換脂肪族基、アリール基、置換アリール基、別の置換もしくは非置換有機基、またはそれらの任意の組み合わせである。
【0015】
アクリルモノマーは、RおよびRの各々が水素であり、Rが水素またはメチルのいずれかであり、Rが以下の構造(V)、(VI)、または(VII)のうちの1つを有するビニルモノマーであり、
【化4】
式中、R11、R12、およびR14の各々が、独立して、水素、C~C14アルキル基、または置換C~C14アルキル基である。本明細書に定義されるように、アクリルモノマーはケイ素原子を含まない。
【0016】
ビニルモノマーの重合単位を90重量%以上有するポリマーは、ビニルポリマーである。アクリルモノマーの重合単位を55重量%以上有するポリマーは、アクリルポリマーである。ポリマーが0.5重量%以上の多官能性ビニルモノマーの重合単位を含む場合、本明細書において、ポリマーは架橋されているとみなされる。架橋ポリマーの典型的な試料中、ポリマーの20重量%以下が任意の溶媒中で可溶性の材料である場合、本明細書において、架橋ポリマーは「完全に」架橋されているとみなされる。
【0017】
多官能性ビニルモノマーのカテゴリーには、架橋剤およびグラフトリンカーの2つのサブカテゴリーが含まれる。架橋剤では、分子上の全ての重合性ビニル基は、分子上の全ての他の重合性ビニル基と実質的に同じである。グラフトリンカー(iii)では、分子上の少なくとも1つの重合性ビニル基は、分子上の少なくとも1つの他の重合性ビニル基と実質的に異なる。「実質的に」とは、以下の分子構造によって定義される。各重合性ビニル基は、2つの炭素原子、ならびに上の構造(I)に示される基R、R、R、およびRによって定義される。各炭素原子の「環境」は、本明細書において、構造(I)の炭素原子のうちの1つに由来する3つの共有結合の任意の経路に従うことによって決定される原子の配置として定義される。本明細書で定義されるように、架橋剤およびグラフトリンカー(iii)は、ケイ素原子を含まない。
【0018】
例えば、以下の分子、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレートは、各分子において、全ての重合性ビニル基が、同じ分子中の全ての他の重合性ビニル基とその化学環境において同一であるため、架橋剤である。別の例として、1,3ブタンジオールジアクリレート(1,3-BDA)を考慮することが有用である。
【化5】
1,3-BDAは、重合性ビニル基の両方が上で定義されたものと同じ「環境」を有するため、架橋剤である。ビニル基の「環境」は、以下の構造(IX)に示される。
【化6】
【0019】
グラフトリンカーの例は、メタクリル酸アリル、アクリル酸アリル、アクリルオキシプロピオン酸アリル、マレイン酸ジアリルである。
【0020】
別のタイプのポリマーまたはオリゴマーは、ポリシロキサンポリマーおよびオリゴマーである。ポリシロキサンオリゴマーおよびポリマーは、構造(X)を有し、
【化7】
式中、各R20が、他の全てのR20とは無関係に、水素、炭化水素基、または置換炭化水素基であり、qが1以上である。いくつかのポリシロキサンオリゴマーまたはポリマーは、ビニル重合を受けることができるビニル基を含む1つ以上のR20基を有し、かかるポリシロキサンオリゴマーまたはポリマーは、「ビニルモノマー」のカテゴリーにも当てはまる。
【0021】
ビニルモノマーの1つのタイプは、構造(X)を有し、式中、qが0であり、R20基のうちの1つ以上がビニル重合を受けることができるビニル基を含む。
【0022】
ポリマーの測定されたガラス転移温度(Tg)は、示差走査熱量測定(DSC)によって10℃/分で測定される。DSCデータからガラス転移が検出され、その後、その転移の温度が中点法で決定される。モノマーのTgは、そのモノマーから作製されたホモポリマーの測定されたTgとして定義される。Fox等式によって決定されるポリマーの計算されたTgを定義することも有用である。
【数1】
式中、Tgポリマーは、ポリマーの計算されたTg(ケルビン単位)であり、ここで、1からzまでのインデックスiでラベル付けされたz個のモノマーが存在し、wは、i番目のモノマーの重量分率であり、Tgiは、i番目のモノマーのホモポリマーの測定されたTg(ケルビン単位)である。
【0023】
粒子の集合体は、粒子の直径によって特徴付けられる。特定の粒子が球形でない場合、本明細書において、その特定の粒子の直径はその特定の粒子と同じ体積を有する仮想粒子の直径であるとみなされる。粒子の集合体は、液体媒体中の粒子の分散での動的光散乱によって測定される体積平均直径によって特徴付けられる。
【0024】
マトリックスポリマーが連続相を形成し、ポリマー粒子がマトリックスポリマー全体に分布している場合、本明細書において、ポリマー粒子はマトリックスポリマー中に分散しているといわれる。分散したポリマー粒子は、ランダムにまたはある非ランダムなパターンで分布している場合がある。
【0025】
化合物の2グラム以上が25℃で100グラムの水中に溶解する場合、本明細書において、その化合物は水溶性であるとみなされる。25℃で水中に溶解する化合物の最大量が0.5グラム以下である場合、本明細書において、その化合物は水不溶性であるとみなされる。
【0026】
比率は、本明細書で以下のように記載される。例えば、比率が3:1以上であるといわれる場合、その比率は、3:1または5:1または100:1であり得るが、2:1にはなり得ない。この考えの概要は以下の通りである:本明細書において比率がX:1以上であるといわれる場合、その比率がY:1であることを意味し、ここでYはX以上である。同様に、例えば、比率が15:1以下であるといわれる場合、その比率は、15:1または10:1または0.1:1であり得るが、20:1にはなり得ない。一般的に述べると、本明細書において比率がW:1以下であるといわれる場合、その比率がZ:1であることを意味し、ここでZはW以下である。
【0027】
本発明は、ポリマー粒子の使用を含む。ポリマー粒子は、コアポリマーおよびシェルポリマーを含む。好ましくは、コアポリマーは、ポリマー粒子の中心に存在する。いくつかの実施形態では、シェルポリマーはコアポリマーの表面に配置されており、いくつかの実施形態では、シェルポリマーはコアポリマーを取り囲んでいる。好ましくは、コアポリマーは、1つ以上の検出可能なガラス転移温度を有する。
【0028】
コアポリマーは、1つ以上のモノマー(i)の重合単位を含む。モノマー(i)は、本明細書において、構造(I)のモノマー、構造(II)のモノマー、およびそれらの混合物から選択されるモノマーとして定義され、
【化8】
式中、全てのRが独立して、水素または炭化水素基であり、nが0~1,000であり、mが2~1,000であり、pが0~1,000であり、全てのRが独立して、1つ以上のエチレン性不飽和基を含む有機基である。構造(I)では、2組の括弧内の基が任意の様式で配置されてもよく、それらは、示される2つのブロックで配置され得るか、複数のブロックで配置され得るか、交互に配置され得るか、統計的順序で配置され得るか、またはそれらの組み合わせであり得る。統計的順序が好ましい。すなわち、「m」単位および「n」単位が統計的コポリマーに見られるように配置されることが好ましい。
【0029】
構造(I)および(II)では、好ましいR基は、12個以下の炭素原子を有する水素および炭化水素基であり、より好ましくは、8個以下の炭素原子を有する水素および炭化水素基であり、より好ましくは、4個以下の炭素原子を有する炭化水素基であり、より好ましくはメチル基である。構造(I)および(II)では、好ましくは、全てのR基が互いに同じである。
【0030】
構造(I)および(II)では、好ましい-R基は、以下の構造を有し、
【化9】
式中、R15は、炭化水素基であり、好ましくはアルキル基である。好ましくは、R15は、8個以下、より好ましくは5個以下、より好ましくは3個以下の炭素原子を有する。好ましくは、R15は、1個以上の炭素原子、より好ましくは2個以上の炭素原子、より好ましくは3個以上の炭素原子を有する。R16は、水素原子又はメチル基のいずれかであり、好ましくはメチルである。好ましくは、全てのR基が互いに同じである。
【0031】
構造(I)では、nは、好ましくは10以上、より好ましくは20以上、より好ましくは50以上、より好ましくは100以上である。構造(I)では、nは、好ましくは800以下、より好ましくは500以下、より好ましくは300以下である。構造(I)では、n:mの比率は、好ましくは5:1以上、より好ましくは10:1以上、より好ましくは15:1以上である。構造(I)では、n:mの比率は、好ましくは100:1以下、より好ましくは50:1以下、より好ましくは30:1以下である。構造(II)では、pは、好ましくは10以上、より好ましくは20以上、より好ましくは50以上である。構造(II)では、pは、好ましくは800以下、より好ましくは500以下、より好ましくは300以下である。
【0032】
構造(II)のモノマーが好ましい。
【0033】
コアポリマーは、1つ以上のモノビニルアクリルモノマー(ii)の重合単位も含む。好ましいモノビニルアクリルモノマー(ii)は、アクリル酸、メタクリル酸、それらの非置換アルキルエステル、それらの置換アルキルエステル、およびそれらの混合物である。アクリル酸、メタクリル酸、それらの非置換アルキルエステル、およびそれらの混合物がより好ましい。アクリル酸またはメタクリル酸の1つ以上の非置換アルキルエステルがより好ましい。アクリル酸の1つ以上の非置換アルキルエステルがより好ましい。アクリル酸およびメタクリル酸の非置換アルキルエステルのうち、18個以下の炭素原子を有するアルキル基を有するものが好ましく、8個以下の炭素原子がより好ましく、6個以下の炭素原子がより好ましく、4個以下の炭素原子がより好ましい。アクリル酸およびメタクリル酸の非置換アルキルエステルのうち、2個以上の炭素原子を有するアルキル基を有するものが好ましく、4個以上の炭素原子がより好ましい。
【0034】
コアポリマーは、1つ以上のグラフトリンカー(iii)の重合単位も含む。好ましいグラフトリンカー(iii)は、アリルメタクリレート、アリルアクリレート、アリルアクリロキシプロピオネート、ジアリルマレエート、およびそれらの混合物であり、アリルメタクリレートがより好ましい。
【0035】
好ましくは、モノマー(i)の重合単位の量は、コアポリマーの重量に基づいて、40重量%以上、より好ましくは50重量%以上、より好ましくは60重量%以上、より好ましくは70重量%以上である。好ましくは、モノマー(i)の重合単位の量は、コアポリマーの重量に基づいて、95重量%以下、より好ましくは90重量%以下、より好ましくは85重量%以下である。
【0036】
好ましくは、モノマー(i)の重合単位の量と、モノビニルアクリルモノマー(ii)の重合単位の量と、グラフトリンカー(iii)の重合単位の量との合計は、コアポリマーの重量に基づいて、95重量%以上、より好ましくは98重量%以上、より好ましくは99重量%以上である。
【0037】
コアポリマー中、全てのモノビニルアクリルモノマー(ii)の全てのグラフトリンカー(iii)に対する重量比は、好ましくは40:1以上、より好ましくは50:1以上、より好ましくは75:1以上、より好ましくは100:1以上である。コアポリマー中、全てのモノビニルアクリルモノマー(ii)の全てのグラフトリンカー(iii)に対する重量比は、好ましくは500:1以下、より好ましくは300:1以下、より好ましくは200:1以下である。
【0038】
コアポリマー中、好ましくは、全てのモノビニルアクリルモノマー(ii)の量と全てのグラフトリンカー(iii)の量との合計は、コアポリマーの重量に基づいて、5重量%以上、より好ましくは10重量%以上、より好ましくは15重量%以上であるコアポリマー中、好ましくは、全てのモノビニルアクリルモノマー(ii)の量と全てのグラフトリンカー(iii)の量との合計は、コアポリマーの重量に基づいて、60重量%以下、より好ましくは50重量%以下、より好ましくは40重量%以下、より好ましくは30重量%以下である。
【0039】
コアポリマー中、好ましくは、全てのモノマー(i)の重量の、全てのモノビニルアクリルモノマー(ii)の重量と全てのグラフトリンカー(iii)の重量との合計に対する比率は、0.7:1以上、より好ましくは1:1以上、より好ましくは1.5:1以上、より好ましくは2.3:1以上である。コアポリマー中、好ましくは、全てのモノマー(i)の重量の、全てのモノビニルアクリルモノマー(ii)の重量と全てのグラフトリンカー(iii)の重量との合計に対する比率は、19:1以下、より好ましくは9:1以下である。
【0040】
好ましくは、コアポリマーは、-90℃以下、より好ましくは-100℃以下、より好ましくは-115℃以下、より好ましくは-120℃以下の測定されたTgを有する。好ましくは、コアポリマーは、第2の測定されたTgも示す。好ましくは、第2の測定されたTgは、-80℃以上、より好ましくは-70℃以上、より好ましくは-60℃以上である。好ましくは、第2の測定されたTgは、0℃以下、より好ましくは-12℃以下、より好ましくは-40℃以下である。
【0041】
本発明がいずれの特定の理論に限定されるものではないが、モノマー(i)は、複数の重合性ビニル基を有するため、架橋剤として作用し、結果としてコアポリマーの比較的低い可溶性画分をもたらすと考えられる。グラフトリンカー分子では、多くが1つ以上の重合性ビニル基を反応させてモノマー(i)と共重合する一方で、1つ以上の重合性ビニル基はコアポリマー中で未反応のままであると考えられる。グラフトリンカー上のいくつかの重合性基が他の基よりも反応性が高く、モノマーが互いにかつグラフトリンカー上のより反応性の高い重合性ビニル基のみと共重合するようにコアポリマーの形成の重合条件が選択されるため、かかる結果が可能であると考えられる。
【0042】
さらに、モノマー(i)上のビニル基のうちのいくつかがアクリルモノマーと共重合すると考えられる。さらに、この共重合にもかかわらず、アクリルモノマーの重合単位は、モノマー(i)の重合単位から完全にまたは部分的に分離し、その分離により、コアポリマー内に2つの別個の相が生じ、2つの測定されたTgをもたらすと考えられる。
【0043】
本発明のポリマー粒子は、1つ以上のアクリルモノマーの重合単位を含むシェルポリマーも含む。シェルポリマーは、好ましくは、コアポリマーの存在下で重合する。好ましくは、シェルポリマー中のアクリルモノマーの重合単位の量は、シェルポリマーを形成するためにコアポリマーに添加された全てのモノマーの重量に基づいて、90重量%以上、より好ましくは95重量%以上、より好ましくは99重量%以上である。
【0044】
シェルポリマーを考慮する際に、コアポリマーの作製に使用されたグラフトリンカーの運命を考慮することも有用である。好ましくは、コアポリマーを重合させたときに、グラフトリンカーのうちのいくつかまたは全ては、1つ以上の重合性ビニル基を反応させるが、1つ以上の追加の重合性ビニル基を未反応のまま残すことによってコアポリマーを作製する重合プロセスを経た。すなわち、好ましくは、コアポリマーは、それに結合した未反応の重合性ビニル基を有する。好ましくは、シェルポリマーの作製に使用されたモノマーがコアポリマーの存在下で重合する場合、それらのモノマーのうちのいくつかは、コアポリマーに結合したそれらの未反応の重合性ビニル基と共重合し、それらのモノマーのうちのいくつかは互いに重合する。好ましくは、これらの未反応の重合性ビニル基を除いて、シェルポリマーは、マルチビニルモノマーの重合単位を含まない。
【0045】
好ましくは、シェルポリマーは、1つ以上のアクリルモノマーの重合単位を含む。好ましいアクリルモノマーは、アクリル酸、メタクリル酸、それらの非置換アルキルエステル、それらの置換アルキルエステル、およびそれらの混合物である。アクリル酸、メタクリル酸、それらの非置換アルキルエステル、およびそれらの混合物がより好ましい。アクリル酸またはメタクリル酸の1つ以上の非置換アルキルエステルがより好ましい。メタクリル酸の1つ以上の非置換アルキルエステルがより好ましい。シェルポリマー中、アクリル酸およびメタクリル酸の非置換アルキルエステルのうち、アルキル基が4個以下の炭素原子、より好ましくは3個以下の炭素原子、より好ましくは2個以下の炭素原子、より好ましくは1個の炭素原子を有するものが好ましい。好ましい実施形態では、メチルメタクリレートは、コアポリマーの存在下での重合によってシェルポリマーを形成するためにコアポリマーに添加される唯一のモノマーである。
【0046】
上の本明細書に定義されるように、計算されたTgを見出すことによってシェルポリマーを作製する際に使用されるモノマーまたはモノマーの混合物を特徴付けることが有用である。計算されたTgの計算では、シェルポリマーを形成するために添加されたモノマーを使用し、これらのモノマーがコアポリマーに結合した未反応の重合性ビニル基と共重合する可能性を無視する。好ましくは、シェルポリマーの計算されたTgは、50℃以上、より好ましくは75℃以上、より好ましくは85℃以上である。好ましくは、シェルポリマーの計算されたTgは、150℃以下である。
【0047】
好ましくは、本発明のポリマー粒子は、コアポリマーとは別のポリマー相(本明細書では「シェル相」と呼ばれる)を含むシェルポリマーを含む。シェル相中のシェルポリマー鎖のうちのいくつかがコアポリマー鎖にグラフトされていると予想される。別個のシェル相の存在は、例えば、原子間力顕微鏡法(AFM)によって観察され得る。ポリマー粒子の集合体が加熱され、フィルムにプレスされ、AFMによって分析され得る。好ましくは、別個のシェル相が観察される。いくつかの実施形態では、AFMによって観察可能なシェル相は、DSCによって分析されたときに別個のTgを呈さない。
【0048】
本発明のコア/シェルポリマーは、可溶性画分によって特徴付けられ得る。可溶性画分は、ポリマーの試料をテトラヒドロフラン(THF)と接触させ、完全に混合することによって測定される。その後、溶解しなかったポリマーが遠心分離および濾過によって除去される。その後、THF中に溶解したポリマーの結果として生じた溶液が核磁気共鳴(NMR)分光法によって分析される。NMR分光法は、THF中に溶解したコアポリマーとシェルポリマーの相対量を明らかにする。THF中ポリマーの溶液を乾燥させ、乾燥したポリマーの重量が測定される。これらのデータ(コア/シェルポリマーの試料の初期重量、試料中のコアポリマーとシェルポリマーの割合、乾燥溶液の重量、および溶液中のコアポリマーとシェルポリマーの相対量)から、コアポリマーの可溶性画分が決定される。コアポリマーの可溶性画分は、THF中に溶解したコアポリマーの重量を、コア/シェルポリマーの試料中に存在したコアポリマーの重量で割ったものであり、パーセンテージで表される。好ましくは、コアポリマーの可溶性画分は、1%以上、より好ましくは2%以上である。好ましくは、コアポリマーの可溶性画分は、30%以下、より好ましくは20%以下、より好ましくは10%以下である。
【0049】
同様に、シェルポリマーの可溶性画分は、THF中に溶解したシェルポリマーの重量を、コア/シェルポリマーの試料中に存在したシェルポリマーを作製するためにコアポリマーに添加されたモノマーの全ての重合単位の重量で割ったものであり、パーセンテージで表される。
【0050】
可溶性画分を決定するために使用される手順は、シェルポリマーのグラフトの程度を決定するためにも使用され得る。シェルポリマー中のポリマー鎖のうちのいくつがコアポリマーにグラフトされ(グラフトリンカーとの共重合により)、ポリマー鎖のうちのいくつかがコアポリマーにグラフトされない。コアポリマーにグラフトするシェルポリマー中のポリマー鎖の多くは、架橋されて不溶性になるコアポリマーの一部にグラフトされ、シェルポリマーのそれらのポリマー鎖も不溶性になる。次に、グラフト%は、以下のように決定される。
グラフト%=100×(Wshell0-Wshellsol)/Wshell0
式中、Wshell0は最初の試料中のシェルポリマーの重量であり、WshellsolはTHF中に溶解したシェルポリマーの重量である。
【0051】
好ましくは、シェルポリマーのグラフト%は、10%以上、より好ましくは15%以上、より好ましくは20%以上である。好ましくは、シェルポリマーのグラフト%は、85%以下、より好ましくは75%以下、より好ましくは65%以下である。
【0052】
本発明のポリマーは、任意の方法によって作製され得る。組成物を作製する好ましい方法は、以下の通りである。
【0053】
好ましくは、混合物(M1)は、1つ以上のモノマー(i)、1つ以上のモノビニルアクリルモノマー(ii)、および1つ以上のグラフトリンカー(iii)で作製される。モノマー(i)、モノビニルアクリルモノマー(ii)、およびグラフトリンカー(iii)の好適な好ましいタイプおよび量は、コアポリマーについて上の本明細書に記載のものと同じである。
【0054】
好ましくは、その後、混合物(M1)が水および界面活性剤と接触させられて、混合物(M2)を形成する。界面活性剤は、カチオン性、非イオン性、またはアニオン性であり得、非イオン性およびアニオン性が好ましく、アニオン性界面活性剤がより好ましい。好ましくは、界面活性剤の量は、混合物(M1)の重量に基づいて、0.1重量%以上、より好ましくは0.2重量%以上である。好ましくは、界面活性剤の量は、混合物(M1)の重量に基づいて、5重量%以下、より好ましくは2重量%以下、より好ましくは1重量%以下である。
【0055】
好ましくは、混合物(M1)は、100秒-1の定常せん断下で円錐平板粘度計において測定される、25℃で10mPa*s以下の粘度を有する。
【0056】
好ましくは、混合物(M2)中の水の量は、混合物(M2)の重量に基づいて、55重量%以上、より好ましくは65重量%以上である。好ましくは、混合物(M2)中の水の量は、混合物(M2)の重量に基づいて、95重量%以下、より好ましくは85重量%以下である。
【0057】
好ましくは、混合物(M2)が機械的に撹拌されて、混合物(M1)の液滴が水中に分散したエマルジョン(E1)を形成する。好ましい撹拌法は、超音波を用いる。好ましくは、エマルジョン(E1)中の体積平均液滴サイズは、500nm以下である。
【0058】
好ましくは、1つ以上の開始剤もエマルジョン(E1)中に存在する。好ましい開始剤は、水不溶性熱開始剤、水溶性レドックス開始剤、およびそれらの混合物である。レドックス開始剤は、時には触媒の存在下で、還元剤と反応して、ビニル重合を開始するラジカルを生成する。好ましい水溶性レドックス開始剤は、過硫酸塩(例えば、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、および過硫酸アンモニウムを含む)、およびヒドロペルオキシド(例えば、t-ブチルヒドロペルオキシド、過酸化水素、および1-メチル-1-(4-メチルシクロヘキシル/エチルヒドロペルオキシド)を含む)である。好ましい還元剤は、亜硫酸水素ナトリウム、アスコルビン酸、テトラメチルエチレンジアミン、およびメタ重亜硫酸ナトリウムである。好ましい触媒は、エチレンジアミン四酢酸および硫酸第一鉄である。
【0059】
熱開始剤は室温で安定しているが、高温で分解してビニル重合を開始するラジカルを生成する。熱開始剤の分解は、72℃での半減期を特徴とする。好ましい熱開始剤は、72℃で3時間以下、より好ましくは2時間以下の半減期を有する。好ましい熱開始剤は、72℃で20分以上、より好ましくは30分以上、より好ましくは40分以上の半減期を有する。好ましい熱開始剤は、過酸化物およびアゾ化合物である。過酸化物のうち、ペルオキシエステル(ペルカルボン酸エステルまたはペルオキシカルボン酸エステルと呼ばれることもある)、ペルオキシジカーボネート、過酸化物(例えば、ジアルキルペルオキシドおよびジアシルペルオキシド等)、ペルオキシケタール、およびケトンペルオキシドが好ましい。
【0060】
好ましくは、エマルジョン(E1)は、1つ以上の水溶性レドックス開始剤および1つ以上の水不溶性熱開始剤を含む。
【0061】
好ましくは、エマルジョン(E1)が40℃以上に加熱され、重合を起こす。好ましくは、重合は混合物(M1)の液滴中で起こり、ポリマーは、水中に分散した固体ポリマーの粒子として形成される。このタイプの重合は、「ミニ乳化」重合として知られている。その結果、コアポリマーの粒子が水中に分散する(D1)。
【0062】
好ましくは、モノマーの混合物(M2)が作製され、その後、1つ以上のアニオン性界面活性剤および水と混合されて、エマルジョン(E2)を形成する。好ましくは、エマルジョン(E2)は、分散液(D1)および1つ以上の水溶性開始剤と組み合わされ、結果として生じた混合物(M3)は70℃以上に加熱される。好ましくは、これらの条件下で、エマルジョン(E2)由来のモノマー分子が水を通ってコアポリマーの粒子に拡散する乳化重合プロセスが起こり、そこで(E2)由来のモノマー分子の重合、好ましくは、コアポリマーに結合した利用可能な重合性ビニル基との共重合が起こる。
【0063】
好ましくは、シェルポリマーの重合後、ポリマー粒子が水中に分散する(D2)。これらの粒子は本発明のコア/シェルポリマー粒子であると考えられる。好ましくは、粒子の体積平均直径は、100nm以上、より好ましくは200nm以上である。好ましくは、粒子の体積平均直径は、1,000nm以下、より好ましくは750nm以下、より好ましくは500nm以下である。好ましくは、分散液(D2)中のポリマーの量は、分散液(D2)の総重量に基づいて、15重量%以上、より好ましくは20重量%以上である。好ましくは、分散液(D2)中のポリマーの量は、分散液(D2)の総重量に基づいて、40%以下、より好ましくは30%以下である。
【0064】
分散液(D2)を任意に乾燥させて、水を除去してもよい。好適な乾燥方法には、凍結乾燥、噴霧乾燥、および凝固に続くベルト乾燥および流動床乾燥が含まれる。結果として生じた組成物乾燥組成物は、好ましくは、乾燥組成物の重量に基づいて、10%以下、より好ましくは5%以下の量の水を有する。
【0065】
本発明のポリマー粒子は、任意の目的のために使用され得る。1つの好ましい用途は、複数の粒子をマトリックスポリマーに添加することである。粒子をマトリックスポリマーに添加することにより、マトリックスポリマーの耐衝撃性が向上すると考えられる。好ましいマトリックスポリマーは、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリスチレン、スチレン/アクリロニトリルコポリマー、ポリメチルメタクリレート、およびそれらの混合物である。ポリ塩化ビニルが好ましい。好ましくは、本発明の粒子の量は、マトリックスポリマー100重量部あたりの重量部(phr)で、1phr以上、より好ましくは2phr以上、より好ましくは3phr以上である。好ましくは、本発明の粒子の量は、マトリックスポリマー100重量部あたりの重量部(phr)で、10phr以下、より好ましくは8phr以下である。
【0066】
好ましくは、本発明のポリマー粒子は、マトリックスポリマー中に分散している。分散したポリマー粒子は、ランダムにまたはいくらかの非ランダムな方法で、あるいはそれらの組み合わせで分布している場合がある。分散した粒子の非ランダム分布の例は、ポリマー粒子が多く、マトリックスポリマーが少ないストリングである。
【0067】
以下は、本発明の実施例である。
【0068】
以下の略語および材料を使用した。
TSO-1=以下の構造を有するテレケリックシリコーンオイル(式中、pが198である)
【化10】
BA=ブチルアクリレート
ALMA=アリルメタクリレート
MMA=メチルメタクリレート
SLS=ラウリル硫酸ナトリウム
NaPS=過硫酸ナトリウム
PVC=ポリ塩化ビニル
pbw=重量部
phr=樹脂100重量部あたりの重量部
【0069】
実施例1
99.3重量部のBAおよび0.7重量部のALMAの混合物(M0)を調製した。その後、75重量部のTSO-1および25重量部のBA/ALMA混合物(M0)の混合物(M1)を調製した。混合物(M1)を水およびSLS(M1の重量に基づいて0.5重量%のSLS)と組み合わせた。混合物M1を、キャビテーションの原理に基づいて作動する超音波プロセッサで乳化して、エマルジョンE1を形成した。混合物M1の量は、エマルジョンE1の重量に基づいて25重量%であった。エマルジョンE1を丸底フラスコに移し、t-ブチルヒドロペルオキシド(tBHP)、硫酸第一鉄、およびホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム(SFS)のレドックス開始系で重合させた。この系は、72℃で約1時間の半減期を有する油溶性熱開始剤であるTrigonox 125(ペルオキシピバル酸t-アミル)も総モノマーに基づいて1%で含んだ。この段階を45℃に加熱し、約65℃に発熱した。その結果、コアポリマー粒子が分散した。
【0070】
MMAのエマルジョンを20重量部のMMA:80重量部の固体コアポリマーで作製および添加し、混合物を80℃に加熱し、NaPsを添加した。混合物を85℃で保持し、その後、23℃に冷却した。その結果、コア/シェルポリマー粒子が水中に分散した。その後、分散液を凍結乾燥させて、ポリマー粒子を固体形態で得た。
【0071】
実施例1を上記のようにDSCで分析し、検出された全てのガラス転移を報告する。実施例1をコアポリマーの可溶性画分(SF)およびシェルポリマーのグラフト%(G%)についても上記のように分析した。コア/シェルポリマーの分散も、体積平均直径(D)について動的光散乱によって分析した。固形分(重量%)も測定した。結果を表Iaおよび表Ibに示す。
【表1】

【表2】
【0072】
実施例2
様々な追加のコア/シェルポリマーを作製した。各々、実施例1と同様であった。様々なテレケリックシリコーン油(TSO)を使用し、全てTSO-1と同じ構造を有し、様々なp値を有した。コアポリマー中の様々な成分の相対量を変化させた。全ての実施例において、BA/ALMA比は、99.3/0.7重量であり、SLSの量は、コア/シェルポリマーの乾燥重量に基づいて、0.5重量%であり、コアポリマーのシェルポリマーに対する重量比は、80/20であった。
【0073】
実施例を上記のようにDSCで分析し、検出された全てのガラス転移を報告する。実施例をコアポリマーの可溶性画分(SF)およびシェルポリマーのグラフト%(G%)についても上記のように分析した。コア/シェルポリマーの分散も、体積平均直径(D)について動的光散乱によって分析した。固形分(重量%)も測定した。結果を表IIおよび表IIIに示す。
【表3】
【表4】
【0074】
実施例3-衝撃試験
これらの実施例は、PVC中の耐衝撃性改良剤としての有効性についても試験した。非可塑化PVCの典型的な配合物を使用し、PVC100重量部あたり4、5、または6phrの乾燥改良剤を使用した。配合物を混合し、その後、加熱したプラスチック加工2ロールミルで粉砕し、次いで、プラークにプレスした。耐衝撃性を、23℃でのノッチ付きアイゾット衝撃試験(ASTM D256、American Society of Testing and Materials,Conshohocken PA,USA)によって試験した。各実施例に対して10個の複製試料を試験した。
【0075】
比較耐衝撃性改良剤を配合したPVC試料も試験した。比較改良剤は、従来の二段階乳化重合によって作製されたコア/シェルポリマーであった。BA/ALMAのコアポリマーを重合させ、その後、MMAのシェルポリマーを80/20のコア/シェル重量比で重合させた。
【0076】
衝撃結果は、(1)試料を破壊するのに必要なエネルギー、および(2)脆性様式ではなく延性様式で破壊した複製試料の割合である。より高いエネルギーおよびより高い延性破壊率は各々、より良好な耐衝撃性を示す。衝撃結果を表IVに示す。
【表5】

比較を等しいphrレベルで使用した改良剤間で行った場合、全ての発明例が比較例よりも良好な耐衝撃性を示すことが明らかである。
【0077】
実施例4:原子間力顕微鏡法(AFM)
実施例2-1および2-2を以下のように試験した。ポリマー粒子の水性分散液を凍結乾燥させて、ポリマー粒子の集合体を固体形態で生成した。固体試料をフィルムにプレスし、表面をAFMによって調査した。いずれの試料も、シリコーンが豊富な相、ポリ(BA)が豊富な相、およびポリ(MMA)が豊富な相の3つの相を示した。実施例2-2では、シリコーンが豊富な相のドメインのサイズは、実施例2-1よりも大きかった。