IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ブループリント アコースティックス ピーティーワイ リミテッドの特許一覧

<図1a-1b>
  • 特許-同軸電気音響変換器用の音響フィルタ 図1a-1b
  • 特許-同軸電気音響変換器用の音響フィルタ 図2a-2b
  • 特許-同軸電気音響変換器用の音響フィルタ 図3
  • 特許-同軸電気音響変換器用の音響フィルタ 図4
  • 特許-同軸電気音響変換器用の音響フィルタ 図5
  • 特許-同軸電気音響変換器用の音響フィルタ 図6
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-16
(45)【発行日】2023-08-24
(54)【発明の名称】同軸電気音響変換器用の音響フィルタ
(51)【国際特許分類】
   H04R 1/28 20060101AFI20230817BHJP
   H04R 1/24 20060101ALI20230817BHJP
【FI】
H04R1/28 310Z
H04R1/24 Z
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021502494
(86)(22)【出願日】2019-07-12
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-11-18
(86)【国際出願番号】 AU2019050734
(87)【国際公開番号】W WO2020014734
(87)【国際公開日】2020-01-23
【審査請求日】2022-01-05
(31)【優先権主張番号】2018902579
(32)【優先日】2018-07-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(73)【特許権者】
【識別番号】512104889
【氏名又は名称】ブループリント アコースティックス ピーティーワイ リミテッド
【氏名又は名称原語表記】BLUEPRINT ACOUSTICS PTY LTD
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ベリカン,ジェリコ
【審査官】堀 洋介
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-060625(JP,A)
【文献】特開昭50-037423(JP,A)
【文献】米国特許第07433483(US,B2)
【文献】特開平05-095595(JP,A)
【文献】特開2006-041891(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 1/28
H04R 1/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
共通の軸上に配置された比較的高い周波数の高周波ドライバと比較的低い周波数の低周波ドライバとを有する電気音響変換器に適した音響フィルタであって、前記音響フィルタは、
外側および内側を有するバッフル本体を備え、前記外側は、前記高周波ドライバのためのバッフルとして機能し、前記内側は、チャンバと前記チャンバと連通しているベントダクトとを含む少なくとも1つのヘルムホルツ共鳴器の第1の壁を形成し、前記バッフル本体は、前記高周波ドライバのローエンド応答を半空間放射(2πステラジアン)に変換するために配置され、
前記ヘルムホルツ共鳴器は、前記バッフル本体と作用することで、前記ドライバ間に音響クロスオーバーを提供し、および、
前記低周波ドライバは、コーンを含み、前記コーンは、前記ヘルムホルツ共鳴器の第2の壁を形成し、
前記ヘルムホルツ共鳴器は、それを超えると前記ヘルムホルツ共鳴器が音響的にロールオフする、低周波ドライバのピストン範囲の1オクターブ上までのクロスオーバー周波数に調整される、音響フィルタ。
【請求項2】
前記高周波ドライバに組み合わせた前記バッフル本体は、前記低周波ドライバと関連するピストン半径の少なくとも80%の主軸付近の半径を有する円形断面によって定義される、前記低周波ドライバと関連するピストン領域をカバーするために適合される、請求項に記載の音響フィルタ。
【請求項3】
前記バッフル本体は、ベント寸法に寄与するために、および/または、前記ヘルムホルツ共鳴器をクロスオーバー周波数に調整することに寄与するために調整される、請求項1または請求項2に記載の音響フィルタ。
【請求項4】
前記ヘルムホルツ共鳴器は、軸上および軸外の両方のピストン範囲を超えて前記低周波ドライバの出力をブーストするように適合されることで、リスニング角度の広範囲にわたって実質的に平坦となるように聴取者によって知覚される応答を提供する、請求項1~請求項のいずれか1項に記載の音響フィルタ。
【請求項5】
前記高周波ドライバは、ダイアフラムを含み、前記バッフル本体は、前記高周波ドライバの前記ダイアフラムと前記低周波ドライバの前記コーンとの間の分離を提供することで、前記高周波ドライバと前記低周波ドライバとの間のクロストークを低減する、請求項1~請求項のいずれか1項に記載の音響フィルタ。
【請求項6】
請求項1~請求項のいずれか1項に記載の前記音響フィルタを含む、電気音響変換器。
【請求項7】
共通の軸上に配置された比較的高い周波数の高周波ドライバと比較的低い周波数の低周波ドライバとを有する電気音響変換器を音響的にフィルタリングすることで、前記ドライバ間に音響クロスオーバーを形成する方法であって、前記方法は、
外側および内側を有するバッフル本体を形成し、前記外側は、前記高周波ドライバのためのバッフルとして機能し、前記内側は、チャンバと前記チャンバと連通しているベントダクトとを含む少なくとも1つのヘルムホルツ共鳴器の第1の壁を形成し、前記バッフル本体は、前記高周波ドライバのローエンド応答を半空間放射(2πステラジアン)に変換するために配置され、
前記ヘルムホルツ共鳴器は、前記バッフル本体と作用することで、前記ドライバ間に音響クロスオーバーを提供し、および、
前記低周波ドライバは、コーンを含み、前記コーンは、前記ヘルムホルツ共鳴器の第2の壁を形成し、
前記ヘルムホルツ共鳴器を、それを超えると前記ヘルムホルツ共鳴器が音響的にロールオフする、低周波ドライバのピストン範囲の1オクターブ上までのクロスオーバー周波数に調整することを含む、方法。
【請求項8】
前記低周波ドライバと関連するピストン半径の少なくとも80%の主軸付近の半径を有する円形断面によって定義される、前記低周波ドライバと関連するピストン領域をカバーするために、前記高周波ドライバに組み合わせた前記バッフル本体を適合することを含む、請求項に記載の方法。
【請求項9】
ベント寸法に寄与するために、および/または、前記ヘルムホルツ共鳴器をクロスオーバー周波数に調整することに寄与するために、前記バッフル本体を調整することを含む、請求項7または請求項8に記載の方法。
【請求項10】
リスニング角度の広範囲にわたって実質的に平坦となるように聴取者によって知覚される応答を提供するために、軸上および軸外の両方のピストン範囲を超えて前記低周波ドライバの出力をブーストするように、前記ヘルムホルツ共鳴器を適合することを含む、請求項~請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記高周波ドライバは、ダイアフラムを含み、前記高周波ドライバの前記ダイアフラムと前記低周波ドライバの前記コーンとの間の分離を提供することで、前記高周波ドライバと前記低周波ドライバとの間のクロストークを低減するために、前記バッフル本体を配置することを含む、請求項~請求項10のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラウドスピーカ、特に同軸電気音響変換器用の音響フィルタに関する。
【0002】
定義
本明細書を通して、「電気音響ドライバ」または「ドライバ」は、ラウドスピーカ変換器を含む。「同軸ドライバ」は、複合または実質的に同軸の位置合わせまたは構造における2つ以上のドライバを含む。「ラウドスピーカ」は、エンクロージャまたはバッフルに取り付けられた1つまたは複数のドライバを含む。「ピストン範囲」は、対応する波長がドライバの円周よりも大きい周波数の範囲を含む。ピストン範囲の上限は、ka=1である周波数として時折定義され、k=波数(2π/波長)およびa=ピストン半径である。ドライバの円周は、本技術において理解されている有効直径に円周率を掛けたものを含む。
【背景技術】
【0003】
クロスオーバーは、1つの周波数帯域が別の周波数帯域とインターフェースする点または領域を定義する。したがって、隣接する周波数帯域は、比較的高い周波数帯域および比較的低い周波数帯域と称し得、関連するドライバは、それらの絶対周波数に関係なく、比較的高い周波数の高周波ドライバおよび比較的低い周波数の低周波ドライバと称し得る。それらは、互いに高いか低いかである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来技術において、ドライバは、時折、同軸アライメントに配置されることで、同軸変換器を形成する。同軸変換器は、より一貫した音場または点源に寄与し得る。しかしながら、そのような同軸アライメントは、特に、比較的低い周波数応答を有する大径ドライバ(低周波ドライバ)が比較的高い周波数応答を有する小径ドライバ(高周波ドライバ)とアライメントされる場合に不整合になりがちである。
【0005】
典型的に高周波ドライバは、所望の高周波に対して無指向性を維持するために小さな直径を有する必要があり、一方、典型的に低周波ドライバは、所望の低周波に到達するために大きな直径を有する必要があるため、問題が生じ得る。結果として、高周波ドライバの有用な周波数範囲は、低周波ドライバのピストン範囲にまで下に到達し得ない。
【0006】
このような不整合に関連するペナルティがある。低周波ドライバの応答をそのピストン範囲を超えて周波数において上げることは、一貫性のない極性パターンを引き起こしたり、および/またはドライバ間の極性パターンの不整合を引き起こしたり、また周波数応答における潜在的な低下を引き起こしたりし得る。高周波ドライバの応答をその実効出力能力を超えて周波数において下げることは、周波数応答における低下を引き起こし得る。ドライバ間の相互作用は、周波数応答における潜在的に比較的急激な低下を含む特定の周波数における出力の損失もまた引き起こし得る。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、特に低周波ドライバのピストン範囲と高周波ドライバの出力能力との間にギャップがある場合に、比較的低周波のドライバを比較的高周波のドライバに整合させることの問題に対する音響的解決策を提供することができる。
【0008】
より具体的には、以下のような解決策が望まれ得る。
a)低周波ドライバの軸外出力は、そのピストン範囲を超えて音響的に強化されることで、高周波ドライバと低周波ドライバとの間のクロスオーバー領域において高周波ドライバの軸出力と整合する。
b)高周波ドライバの出力能力は、その自然な出力能力の下で音響的に強化される。
c)ドライバ間の干渉は、最小限に抑えられ、および/または、
d)低周波ドライバの応答は、クロスオーバー周波数で音響的にロールオフされ得る。
【0009】
特に、高周波ドライバと低周波ドライバとの間の比較的シームレスな整合またはクロスオーバーが望ましい。高周波ドライバと低周波ドライバとの間のシームレスな整合は、クロスオーバー領域に急激な遷移がないことに依存している。これは軸上の周波数応答に関してよく理解されているが、軸外の応答に関してはしばしば忘れられたり、よく理解されていないことがあったりする。無指向性スピーカにとって、ほとんどの音響エネルギーが入るのは軸外応答であり、車内など、特に、音響反射環境および/または聴取者が軸外にある環境において、異なる軸外応答からの急激な遷移は聴取者にとってシームレスにはほど遠い。この不整合は、一貫性のない極性パターンとして時折称される。低周波ドライバが音響的にロールオフされていない場合、高周波ドライバの帯域において高指向性の音響放射が混合される可能性があり、これは比較的低レベルで聞こえ、またさらにドライバ間の可聴不整合に寄与し得る。
【0010】
先行技術として与えられる特許文献または他の事項に対するここでの言及は、その文献または事項が知られていたこと、またはそれが含む情報がいずれの請求項の優先日で現在の一般知識の一部であったことを認めるものと見なされない。
【0011】
本明細書における説明および特許請求の範囲を通して、「備える,含む(comprise)」という用語、および、「備えている,含んでいる(comprising)」や「備える,含む(comprises)」などの当該用語の変形は、他の付加的なこと、構成、完全なこと、または処理を除外することを意図するものではない。
【0012】
発明の概要
本発明の一態様によれば、共通の軸上に配置された比較的高い周波数の高周波ドライバと比較的低い周波数の低周波ドライバとを有する、電気音響変換器に適した音響フィルタが提供され、音響フィルタは、外側および内側を有するバッフル本体を備えることで、外側は、高周波ドライバのバッフルとして機能し、内側は、チャンバとチャンバと連通しているベントダクトとを含む少なくとも1つのヘルムホルツ共鳴器の第1の壁を形成し、バッフル本体は、高周波ドライバのローエンド応答を半空間放射(2πステラジアン)に変換するために配置され、ヘルムホルツ共鳴器は、バッフル本体と作用することで、ドライバ間に音響クロスオーバーを提供し、および、低周波ドライバは、コーンを含み、コーンは、ヘルムホルツ共鳴器の第2の壁を形成する。
【0013】
音響フィルタは、外側および内側を有するバッフル本体を備えていてもよく、バッフル本体は、変換器との使用に関連し、そのような外側は、高周波ドライバのバッフルとして機能し、内側は、チャンバとチャンバと連通しているベントダクトとを含む少なくとも1つのヘルムホルツ共鳴器の第1の壁を形成する。
【0014】
ヘルムホルツ共鳴器は、バッフル本体と作用し得ることで、高周波ドライバと低周波ドライバとの間に音響クロスオーバーを提供する。
【0015】
ヘルムホルツ共鳴器は、変換器にベントボックス特性を与え得る。高周波ドライバおよび低周波ドライバは、実質的に同軸である主軸を含み得る。低周波ドライバは、コーンを含んでいてもよく、コーンは、ヘルムホルツ共鳴器の第2の壁を形成し得る。ヘルムホルツ共鳴器は、それを超えるとヘルムホルツ共鳴器が音響的にロールオフするクロスオーバー周波数に調整され得る。バッフル本体は、低周波ドライバと関連するピストン領域の70%から100%以上をカバーするように適合され得る。高周波ドライバに組み合わせたバッフル本体は、低周波ドライバと関連するピストン半径の少なくとも80%の主軸付近の半径を有する円形断面によって定義される、低周波ドライバと関連するピストン領域をカバーするために適合され得る。
【0016】
バッフル本体は、ベント寸法に寄与するために、および/または、ヘルムホルツ共鳴器をクロスオーバー周波数に調整することに寄与するために調整され得る。ヘルムホルツ共鳴器は、軸上および軸外の両方のピストン範囲を超えて低周波ドライバの出力をブーストするように適合され得ることで、聴取者によって知覚される応答を実質的に回復させる。ヘルムホルツ共鳴器は、低周波ドライバ用のローパス音響フィルタを形成するように適合され得ることで、高周波ドライバと低周波ドライバとの間の比較的シームレスなクロスオーバーに寄与することに正に最も有用であり得る。
【0017】
バッフル本体は、高周波ドライバのローエンド応答を半空間放射(2πステラジアン)に変換するように寸法決定され得ることで、そのローエンド出力能力に理論的に6dBを追加し得る。高周波ドライバは、ダイアフラムを含んでいてもよく、バッフル本体は、高周波ドライバのダイアフラムと低周波ドライバのコーンとの間の分離を提供し得ることで、高周波ドライバと低周波ドライバとの間のクロストークを低減する。ヘルムホルツ共鳴器は、クロストークの破壊的な影響を緩和し得る。
【0018】
クロスオーバー周波数が設定された後、本技術分野において知られているように、高周波ドライバと低周波ドライバとの間の最適な位置合わせは、試行錯誤によって達成され得る。クロスオーバー周波数は、ヘルムホルツ共鳴器のチャンバと共振する、ヘルムホルツベントダクトの長さに対する面積比率を最初に選択することによって選択され得、それによって、チャンバの体積は、低周波ドライバのピストン範囲周波数制限を超える低周波ドライバにとっての高周波音響ロールオフを実質的に決定する。チャンバの体積とともにベントダクトの寸法は、ピストン範囲を超える低周波ドライバの応答に提供されるブーストの程度を決め得る。バッフルプレートなどのバッフル本体は、低周波ドライバのコーンを実質的に覆うために追加され得、その結果、ヘルムホルツベントダクトのために上記で決定された長さに対する面積の比と、ヘルムホルツ共鳴器のチャンバのために上記で決定された体積とを形成する。
【0019】
バッフルプレートを適切な位置に配置して高周波ドライバの低周波音響ロールオフが観察され得、バッフルを適切な位置に配置して低周波ドライバの高周波音響ロールオフが観察され得ることで、それらが整合することを確実にできる。必要ならば、ヘルムホルツ共鳴器のベントダクト領域が調整され得ることで、低周波ドライバの高周波音響ロールオフと高周波ドライバの低周波音響ロールオフとの間の整合を最適化することができる。本技術分野で知られているように、その最適化は、試行錯誤によって実行され得る。
【0020】
本発明はまた、上述したような音響フィルタを含む電気音響変換器を提供する。
【0021】
本発明のさらなる態様によれば、比較的高い周波数の高周波ドライバと比較的低い周波数の低周波ドライバとを有する電気音響変換器を音響的にフィルタリングすることで、ドライバ間に音響クロスオーバーを形成する方法が提供され、方法は、外側および内側を有するバッフル本体を形成し、外側が高周波ドライバのためのバッフルとして機能し、内側がチャンバとチャンバと連通しているベントダクトとを含む少なくとも1つのヘルムホルツ共鳴器の第1の壁を形成するように、バッフル本体は、変換器とともに使用中に関連付けられており、バッフル本体は、高周波ドライバのローエンド応答を半空間放射(2πステラジアン)に変換するために配置され、ヘルムホルツ共鳴器は、バッフル本体と作用することで、ドライバ間に音響クロスオーバーを提供し、および、低周波ドライバは、コーンを含み、コーンは、ヘルムホルツ共鳴器の第2の壁を形成する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1aおよび図1bは、本発明に係る高周波ドライバに交差する低周波ドライバのための音響クロスオーバーフィルタを示す図である。
図2図2aおよび図2bは、音響クロスオーバーフィルタが取り付けられた同軸変換器の実施例を示す図である。
図3】本発明に係る音響フィルタを追加する前後のミッドレンジドライバの軸外周波数応答を示す図である。
図4】本発明に係る音響フィルタを追加する前後のツイーターの軸外周波数応答を示す図である。
図5】音響フィルタを有しない同軸ドライバのための典型的な軸外周波数応答を示す図である。
図6】本発明に係る音響フィルタを含む同軸ドライバの典型的な軸外周波数応答を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
詳細な説明
本発明の好ましい実施形態を、添付の図面と併せて説明する。添付の図面は、本発明の範囲の広さを示すことを意図している。特に、図1aおよび図1bは、本技術分野において一般的であるように台座に取り付けられたツイーターを示し、図2aおよび図2bは、独立して取り付けられたツイーターを示す。
【0024】
図1aおよび図1bは、ミッドレンジドライバ11などの比較的低い周波数のドライバとツイーター12などの比較的高い周波数のドライバとを備える同軸変換器10を示す。ミッドレンジドライバ11のコーン13は、そのサラウンド14とともに示されている。ミッドレンジドライバ11の残りの部分は、音響クロスオーバーフィルタの一部を形成しないため、示されていない。当業者は、図1aおよび図1bに示される部品からミッドレンジドライバ11を容易に識別し得る。
【0025】
ツイーター12は、ミッドレンジドライバ11のコーン13を貫通する台座15に取り付けられて示されている。ヘルムホルツ共鳴室16は、バッフル本体またはプレート17とミッドレンジドライバ11のコーン13との間に形成される。バッフル本体17は、空気を逃がすためのベント18を除くコーン13を実質的にカバーする。バッフル本体17は、ツイーター12のバッフルとして機能し、また一方で、ミッドレンジドライバ11とツイーター12との間の望ましくない相互作用を最小限に抑える。
【0026】
ヘルムホルツ共鳴器16は、適切なクロスオーバー周波数で音響ロールオフを提供するように調整され得る。ツイーター12がバッフル本体17を有していない場合、クロスオーバー周波数は、ミッドレンジドライバ11のピストン範囲より上でありかつツイーター12の許容出力能力の限界より下にあり得る。ツイーター12とヘルムホルツ共鳴器16との相互作用は、クロスオーバー周波数、バッフルサイズ、および/またはツイーター12に関連するパラメータを調整することにより、ドライバ11,12の位置合わせを支援し得る。
【0027】
図2aおよび図2bは、ミッドレンジドライバ21などの比較的低い周波数のドライバとツイーター22などの比較的高い周波数のドライバとを備える同軸変換器20を示す。図2bは、断面図を示す。ミッドレンジドライバ21のコーン23は、そのサラウンド24とともに示されている。ミッドレンジドライバ21の残りの部分は、音響クロスオーバーフィルタの一部を形成しないため、示されていない。当業者は、図2aおよび図2bに示される部品からミッドレンジドライバ21を容易に識別し得る。
【0028】
ツイーター22は、円形本体25に取り付けられて示され、円形本体25は、さらに、ミッドレンジドライバ21に関連するフレーム(図示せず)に取り付けられ得る。円形本体25は、バッフルプレートを形成し得る。ツイーター22と組み合わせた本体/バッフルプレート25の内壁は、チャンバ26の第1の壁または外壁を形成し得る。ミッドレンジドライバ21のコーン23は、チャンバ26の第2の壁または内壁を形成し得る。チャンバ26は、空気が閉じ込められたヘルムホルツ共鳴室として機能し得る。本体/バッフルプレート25とコーン23との間の環状ギャップ27は、ヘルムホルツ共鳴器のためのベントダクトとして機能し得る。取り付けピラー28は、ギャップ27のサイズを制御するために高さを調整し得る。
【0029】
チャンバ26に閉じ込められた空気の量は、図2bに示されるように最小化されることで、音響クロスオーバーフィルタの許容可能な調整を生成し得る。ミッドレンジドライバ21の高周波拡張を形成したヘルムホルツ共鳴器は、クロスオーバーのために選択された周波数まで変換器20の周波数応答をブーストし得る。
【0030】
本発明に係る音響クロスオーバーフィルタによって提供される周波数応答のブーストは、ピストン範囲を超える軸外応答の欠如を補償する可聴効果を有することが示されている。リスニングテストは、そのような音響クロスオーバーフィルタを組み込んだ変換器が広範囲のリスニング角度にわたってフラットな周波数応答を有すると認識されること、および、その結果が連続的な全方向性のフラットな応答とほとんど区別がつかないことを、確認している。周波数応答をブーストするためにヘルムホルツ共鳴器を使用することの利点の1つは、出力能力を維持し得ることであり、出力能力は、拡張および/またはブーストを提供するために代わりに電気的等化が使用されなければ失われ得る。
【0031】
本体/バッフルプレート25の外壁は、ツイーター22のためのバッフルとして機能し、理論的には、その低周波出力能力を6dBブーストする。ツイーター22のローエンド応答は、全てのツイーター放射が半空間(2πステラジアン)に入るようにバッフルサイズ(円形の場合は直径)を調整することによって調整され得る。明らかな理由により、本体/バッフルプレート25が実質的に円形である場合、これはより効果的であり得る。このサイズでは、ヘルムホルツ共鳴器に対するツイーター22の相互結合は、実質的に最適化され得、最適化を完了するために本体/バッフルプレート25のサイズ(円形の場合は直径)に対して微調整が行われ得る。これは、本技術分野において知られているように、過度の実験なしに試行錯誤によって行われ得る。ガイドとして、バッフルプレート25は、図1a、図1b、図2a、および図2bに示されるように、コーン23を実質的に覆い得る。さまざまな角度でのリスニングテストは、応答の均一性を示すはずである。
【0032】
図3は、本発明に係る音響フィルタを追加する前(点線で示される)および音響フィルタを追加した後(実線で示される)のミッドレンジドライバの軸外周波数応答を示す。軸外ミッドレンジドライバのロールオフは、ピーキングを最小限にしかつロールオフの急峻さを最大化するために、ヘルムホルツ共鳴器をピストン範囲の1オクターブ上まで調整することによって発生する。
【0033】
点線の応答曲線は、ミッドレンジドライバのピストン範囲の上限と一致するAを超える実質的な出力損失を示す。それは、音波の一部が互いに相互作用して放射パターンにおける軸外キャンセルを引き起こす周波数である。曲線は、より高い周波数において、ロールオフBを経て、次にリバウンドCを経ることが見られる。リバウンドは、異なるドライバ、および軸外の異なる角度のために、かなり変化され得る。しかし、いかなるリバウンドも、極性パターンにおける突然の変化に寄与し、かつ、電気的に均一化できないために、問題を引き起こし得る。
【0034】
実線の曲線は、本発明に係る音響フィルタが、どのようにして、領域AからDにおいて応答をブーストし、次にEで鋭いロールオフを引き起こし、その後、より高い周波数で実質的な減衰Fを引き起こすかを示す。ブーストの量は、ヘルムホルツチャンバの体積および/またはベントダクトの寸法を調整することによって制御され得る。この例の応答は、車のドアのアプリケーションに適し得、どのようにしてブーストの極端な量が可能であるかを示す。
【0035】
図4は、本発明に係る音響フィルタを追加する前(点線で示される)および音響フィルタ9を追加した後(実線で示される)のツイーターの軸外周波数応答を示す。
【0036】
点線の曲線は、ミッドレンジドライバと一致することができないような、応答Xの下端における出力能力の損失を示す。また、ツイーターとミッドレンジドライバとの間の相互作用によって引き起こされる応答における比較的深刻な偏差Wを示す。
【0037】
実線の曲線は、延長されたバッフルがどのようにローエンドZにおいて応答をブーストし得るかを示し、さらに、音響フィルタがどのように応答における偏差Yを減衰させ得るかを示す。
【0038】
図5は、高周波ドライバの出力能力が低周波ドライバのピストン範囲にまで下に到達しない、同軸ドライバのための典型的な軸外周波数応答曲線を示す。
【0039】
図6は、高周波ドライバの出力能力が低周波ドライバのピストン範囲にまで下に到達し得ない場合でも、シームレスなクロスオーバーを提供する、本発明に係る音響フィルタを含む同軸ドライバのための典型的な軸外周波数応答曲線を示す。
【0040】
本発明の音響クロスオーバーフィルタの構成要素は、位相プラグまたは二次コーンと混同されるべきではない。
【0041】
本明細書において開示および定義された本発明は、本文または図面から言及または明らかな2つ以上の個々の特徴の全ての代替の組み合わせに及ぶことが理解される。これらの異なる組み合わせの全ては、本発明の様々な代替の態様を構成する。
図1a-1b】
図2a-2b】
図3
図4
図5
図6