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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-16
(45)【発行日】2023-08-24
(54)【発明の名称】反射型マイクロストリップ同調回路
(51)【国際特許分類】
   H01P 5/04 20060101AFI20230817BHJP
   H01P 5/22 20060101ALI20230817BHJP
【FI】
H01P5/04 603Z
H01P5/22 B
H01P5/04 603D
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2021575303
(86)(22)【出願日】2020-05-29
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-19
(86)【国際出願番号】 US2020035162
(87)【国際公開番号】W WO2020256909
(87)【国際公開日】2020-12-24
【審査請求日】2022-01-31
(31)【優先権主張番号】16/446,018
(32)【優先日】2019-06-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】503455363
【氏名又は名称】レイセオン カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】ムーア,ゲイリー,アイ.
【審査官】齊藤 晶
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第03611199(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0036189(US,A1)
【文献】特開2000-091803(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第107196033(CN,A)
【文献】米国特許第03842419(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0224848(US,A1)
【文献】P. Padilla et al.,Electronically Reconfigurable Reflective Phase Shifter for Circularly Polarized Reflectarray Systems,IEEE Microwave and Wireless Components Letters,2016年08月24日,VOL.26, NO.9,pp.705-707
【文献】Shi Cheng et al.,Compact reflective microstrip phase shifter for traveling wave antenna applications,IEEE Microwave and Wireless Components Letters,2006年06月26日,VOL.16, NO.7,pp.431-433
【文献】T. Koga,Synthesis of a resistively terminated cascade of uniform lossless transmission lines and lumped passive lossless two-ports,IEEE Transactions on Circuit Theory,1971年07月,VOL.18, NO.4,pp.444-455
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01P 5/04
H01P 5/22
IEEE Xplore
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
反射型マイクロストリップ同調回路であって:
他の回路からの入射信号を受信するためのポート;
前記入射信号を分割して分割入射信号を提供するように構成された1つ以上の結合器;及び
前記分割入射信号を受信するように構成された調節可能な複数の同調アーム;
を含む同調回路であり、
前記1つ以上の結合器は、前記入射信号に関連し前記同調アームへ提供される入射電力が前記結合器と前記同調アームとの間の接続点において前記複数の同調アームの間で不均等に分割されるよう前記入射信号を分割するように構成され、それにより前記入射電力の分割各同調アームに対して異なる重み付け効果をもたらし;
前記複数の同調アームの各々は、各同調アーム内の前記分割入射信号の各々の少なくとも一部を反射して反射分割入射信号を前記1つ以上の結合器へと戻すように構成され
前記1つ以上の結合器は、前記複数の同調アームの各々からの前記反射分割入射信号を受信し、前記反射分割入射信号を結合して結合反射信号を提供するように構成され;
当該同調回路が、前記1つ以上の結合器に動作可能に結合された1つ以上のターミネータをさらに含み;
前記1つ以上のターミネータは、前記入射電力と前記結合反射信号に関連する電力との間の差に基づいて、当該同調回路において電力を消散するように構成されている;
同調回路。
【請求項2】
前記複数の同調アームの各々は、前記結合反射信号の振幅及び/又は位相を調節するように調節可能である、請求項1に記載の同調回路。
【請求項3】
前記ポートは、前記結合反射信号を受信し前記結合反射信号を前記同調回路から前記他の回路へと送信する、当該同調回路の単一ポートである、請求項1又は2に記載の同調回路。
【請求項4】
前記結合器の各々は、分岐直交マイクロストリップ結合器であって、前記入射信号を分割し、前記入射信号の分割出力経路の間に分離を提供するマイクロストリップ結合器である、請求項1乃至3の何れか1項に記載の同調回路。
【請求項5】
前記分割入射信号は、複数の入射信号成分を含み、前記複数の同調アームの各々は、前記複数の入射信号成分のうちの1つを受け取り;
前記複数の同調アームの各々におけるそれぞれの入射信号成分は、各同調アームによって反射されて、各同調アーム内にそれぞれの反射信号成分を形成し;かつ
前記複数の同調アームの各々は、各同調アームにおける前記反射信号成分の位相を調節するように調節可能である;
請求項1乃至4の何れか1項に記載の同調回路。
【請求項6】
前記複数の同調アームの各々は、各同調アームの長さを調節することにより調節可能である、請求項5に記載の同調回路。
【請求項7】
前記複数の同調アームの各々は、ワイヤボンドによって互いに接続される複数のセグメントを含み、前記ワイヤボンドは、それぞれの前記同調アームの長さを調節するために抜去又は破断でき、それぞれの前記同調アームにおける前記反射信号成分の位相を調節することができる、請求項6に記載の同調回路。
【請求項8】
前記複数の同調アームの各々は、前記入射信号の動作周波数において前記反射信号成分の少なくとも360度の位相変化を達成するのに十分な長さを有する、請求項5に記載の同調回路。
【請求項9】
前記1つ以上のターミネータは抵抗器を含む、請求項1乃至8の何れか1項に記載の同調回路。
【請求項10】
前記同調回路は4つの同調アームを含み、前記1つ以上の結合器は前記入射電力を前記4つの同調アーム間で8:4:2:1の比率で分割するように構成される、請求項1乃至9の何れか1項に記載の同調回路。
【請求項11】
前記入射信号は電磁信号である、請求項1乃至10の何れか1項に記載の同調回路。
【請求項12】
前記電磁信号は8.0GHz~12.0GHzの範囲の周波数を有するマイクロ波信号である、請求項11に記載の同調回路。
【請求項13】
前記他の回路は、干渉計回路、アンテナ回路、フィルタ回路又はコネクタ回路を含む、請求項1乃至12の何れか1項に記載の同調回路。
【請求項14】
干渉計であって:
干渉計回路と;
前記干渉計回路に動作可能に結合された、請求項1記載の同調回路であり、
前記1つ以上の結合器は、前記結合反射信号を、戻り信号として前記干渉計回路へと方向づけるように構成されている、
干渉計。
【請求項15】
回路を同調する方法であって:
前記回路から入射信号を受信するためのポートと、前記入射信号を分割して分割入射信号を提供するように構成された1つ以上の結合器と、前記分割入射信号を受信するように構成された調節可能な複数の同調アームとを備えた反射型マイクロストリップ同調回路をもたらすステップであり、前記入射信号に関連し前記同調アームへ提供される入射電力が前記結合器と前記同調アームとの間の接続点において前記複数の同調アーム間で不均等に分割され、前記入射電力の分割が各同調アームに対して異なる重み付け効果をもたらすように前記1つ以上の結合器が前記入射信号を分割するように構成されている、ステップ;
ポートを介して前記反射型マイクロストリップ同調回路を前記回路に動作可能に結合するステップ;
前記入射信号を生成し、前記ポートを介して前記入射信号を前記反射型マイクロストリップ同調回路へと方向づけるステップ;
前記1つ以上の結合器を介して前記入射信号を分割し、前記入射電力を前記複数の同調アーム間で不均等に分割するステップ;
各同調アームにより前記分割入射信号を反射して反射分割入射信号を提供するステップ;
前記複数の同調アームのうちの1つ以上を選択的に調節して、それぞれの同調アームにおける前記反射分割入射信号を調節するステップ;
前記複数の同調アームの各々からの前記反射分割入射信号を、前記1つ以上の結合器を介して結合し結合反射信号を形成するステップ;及び
前記1つ以上の結合器に動作可能に結合された1つ以上のターミネータを介して、前記入射電力と前記結合反射信号に関連する電力との間の差に基づいて、当該同調回路における電力を消散するステップ;及び
前記結合反射信号を前記ポートを介して前記回路に戻り信号として通信するステップ;
を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、同調回路に関し、より詳細には、同調干渉計等に用いるための反射型マイクロストリップ同調回路に関する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0002】
キャリアからオフセットされた超低位相雑音側波帯の検出は、しばしば、レーダ、通信、ナビゲーションシステム等のような高度な用途における干渉計の使用を必要とする。そのような干渉計は、典型的には、干渉計信号処理内の信号の相殺又は部分的相殺を達成するために、1つ以上の前記信号の振幅及び位相の両方の正確な調節を必要とする。バラクタ及びPINダイオードのような能動部品に基づく移相器及び減衰器を使用する電子的同調は、複雑さを増し、より具体的には、これらのセンシティブな用途のために許容できない量の電子的ノイズを加えることが多い。ライン・ストレッチャー及び/又は回転ベーン減衰器のような機械的装置に基づく受動的同調アプローチは、かさばっており、多くの用途には適さない。代替的な受動的同調アプローチが、干渉計回路内の信号の所望のキャンセルを達成するために、例えばメス(scalpel)を用いて手で注意深くトリミングしなければならない同調スタブを使用している。このようなマニュアル処置は、訓練と高度な技能を必要とする。超低位相雑音用途では、Xバンド周波数が含まれることがあり、これは、必要とされるキャンセルに対する最終的な解決が近づくにつれて、1つ以上の同調スタブ長に対する極めて微細な手動調節を必要とすることがある。このような手動精度は、同調スタブを過度にトリミングする結果となることが多く、回路基板全体を廃棄する必要がある場合がある。
【課題を解決するための手段】
【0003】
本発明は、振幅及び位相の両方において複素帰還(戻り)平面(complex return plane)上に高分解能を提供し、より高い精度で最終的な所望の結果に近づくために、同調回路への反復可能かつ一貫した調整を可能にする受動マイクロストリップ同調回路を提供する。
【0004】
より詳細には、同調回路は、同調回路を介して同調される他の回路に動作可能に結合される反射型マイクロストリップ同調回路として構成され、同調回路は、他の回路から入射信号を受信し、他の回路で使用するために同調回路によって反射される戻り信号の振幅及び/又は位相の調整を可能にする。同調回路は、複数の調節可能な同調アームの間で入射信号の電力を分割する1つ以上のカスケード接続されたカスケード結合器を含み、この場合、同調アームの長さは、結合器を通過する前記個々の反射信号の一部が結合されて、所望の同調結果を達成するために振幅及び位相の両方で調整され得る戻り信号を生成するように、同調アームからの個々の反射信号の位相を調整するために個々に調整され得る。さらに、カスケード接続された結合器は、入射電力を同調アーム間で不均等に分割して、各同調アームの調節効果に対する漸増的な重み付けを提供することができ、これは、ユーザが回路をより容易にかつより高い程度の再現性及び精度で調整することを可能にする一連の粗さを、効果的に提供する。
【0005】
各同調アームは、一連のワイヤボンディングセグメントとして形成することができ、ワイヤボンディングを摘出又は抜去することにより、各同調アームの長さを、従来のメスによるトリミングの長さと比較して、より一貫した方法で調節することができる。さらに、各同調アームの重み付け効果により、同調アームの長さの2つ以上の組み合わせは、許容可能な戻り信号に導くことができ、1つ以上の同調アームが過剰調整された場合に回復する可能性を可能にする。当業者には理解されるように、ワイヤボンディングされたセグメントのサイズ及び間隔は、セグメント間のワイヤボンディングの数及び形状と組み合わされて、結合器が動作するように設計された特性インピーダンスを維持するようにすることができる。
【0006】
さらに、同調回路は、1つ以上のカスケード結合器に動作可能に結合された1つ以上のターミネータを含み、このターミネータは、同調回路が電力を吸収し、消散することを可能にし、従って、結合された戻り信号に対する位相制御に加えて、振幅制御を可能にする。
【0007】
本発明の一態様によれば、反射型マイクロストリップ同調回路は、他の回路からの入射信号を受信するためのポートと、前記入射信号を分割するように構成された1つ以上のカスケード結合器と、前記分割入射信号を受信するように構成された複数の調節可能な同調アームとを含み、前記1つ以上のカスケード結合器は、前記入射信号を分割するように構成され、その結果、前記入射信号に関連する電力が、前記複数の調節可能な同調アーム間で不均等に分割され、その結果、前記電力を分割することによって、各同調アームの調節の異なる重み付け効果が生じる。
【0008】
本概要の任意のパラグラフの一実施形態によれば、複数の同調アームの各々は、各同調アーム内の分割信号の少なくとも一部を1つ以上のカスケード結合器に戻すように構成される。
【0009】
本概要の任意のパラグラフの一実施形態によれば、同調回路は、1つ以上のカスケード結合器に動作可能に結合された1つ以上のターミネータをさらに含み、1つ以上のターミネータは、入射信号に関連する電力と結合された反射信号に関連する電力との間の差に基づいて、同調回路内の電力を消散する。
【0010】
本概要の任意のパラグラフの実施形態によれば、1つ以上のカスケード接続された結合器は、複数の同調アームから反射された分割信号を受信し、反射された分割信号を結合された反射信号に結合するように構成される。
【0011】
本概要の任意のパラグラフの実施形態によれば、複数の同調アームの各々は、結合された反射信号の振幅及び/又は位相を調整するように調整可能である。
【0012】
本概要の任意のパラグラフの実施形態によれば、ポートは、結合された反射信号を受信し、結合された反射信号を同調回路から他方の回路へと送信する同調回路の単一のポートである。
【0013】
本概要の任意のパラグラフの実施形態によれば、カスケード結合器の各々は、分岐直交マイクロストリップ結合器であって、入射信号を分割し、入射信号の分割された出力経路間の分離を提供する。
【0014】
本概要の任意のパラグラフの一実施形態によれば、分割された入射信号は、複数の入射信号成分を含み、複数の同調アームの各々は、複数の入射信号成分のうちの1つを受信し、複数の同調アームの各々におけるそれぞれの入射信号成分は、各同調アームによって反射され、各同調アームにおいてそれぞれの反射信号成分を形成し、複数の同調アームの各々は、各同調アームにおける反射信号成分の位相を調節するように調節可能である。
【0015】
本概要の任意のパラグラフの一実施形態によれば、複数の同調アームの各々は、各同調アームの長さを調節することによって調節可能である。
【0016】
本概要の任意のパラグラフの一実施形態によれば、複数の同調アームの各々は、ワイヤボンドによって互いに接続された複数のセグメントを含み、ワイヤボンドは、それぞれの同調アームの長さを効果的に調整するために抜去することができるか、又は破断することができる。これにより、それぞれの同調アーム内の反射信号成分の位相を調整する。
【0017】
本概要の任意のパラグラフの一実施形態によれば、複数の同調アームの各々は、入射信号の動作周波数において反射信号成分の少なくとも360度の位相変化を達成するのに十分な長さを有する。
【0018】
本概要の任意のパラグラフの一実施形態によれば、複数の同調アームは、同調回路のインピーダンスに整合するように構成される。
【0019】
本概要の任意のパラグラフの一実施形態によれば、1つ以上のターミネータは、同調回路のインピーダンスに整合するように構成される。
【0020】
本概要の任意のパラグラフの一実施形態によれば、1つ以上のターミネータは、抵抗器を含む。
【0021】
本概要の任意のパラグラフの一実施形態によれば、同調回路は、4つの同調アームを含み、1つ以上のカスケード結合器は、4つの同調アーム間で8:4:2:1の比率で電力を分割するように構成される。
【0022】
本概要の任意のパラグラフの実施形態によれば、入射信号は電磁信号である。
【0023】
本概要のパラグラフのいずれかの実施形態によれば、電磁信号は、8.0GHz~12.0GHzの範囲の周波数を有するマイクロ波信号である。
【0024】
本概要の任意のパラグラフの実施形態によれば、他の回路は、干渉計回路、アンテナ回路、フィルタ回路又はコネクタ回路を含む。
【0025】
本概要の任意のパラグラフの実施形態によれば、同調回路は、反射信号を所望の経路に向けるように構成されたサーキュレータをさらに有する。
【0026】
本発明の一態様によれば、干渉計は、干渉計回路と、干渉計回路に動作可能に結合される同調回路とを含み、前記同調回路は、干渉計回路から入射信号を受信するためのポートと、前記入射信号を分割するように構成された1つ以上のカスケード結合器と、前記分割入射信号を受信するように構成された複数の調節可能な同調アームと、を含み、前記1つ以上のカスケード結合器は、前記入射信号を、前記入射信号に関連する電力が発生するように分割するように構成されている、ことを特徴とする。信号は、複数の調節可能な同調アームの間で不均等に分割され、その結果、電力の分割は、各同調アームの調節の異なる重み付け効果をもたらし、複数の同調アームの各々は、各同調アーム内の分割信号を1つ以上のカスケード結合器に反射するように構成され、1つ以上のカスケード結合器は、複数の同調アームから反射された分割信号を受信し、反射された分割信号を結合反射信号へと結合し、干渉計回路へと戻す。
【0027】
本発明の別の態様によれば、回路を同調させる方法が提供される。この方法は、(i)回路から入射信号を受信するためのポートと、前記入射信号を分割するように構成された1つ以上のカスケード結合器と、前記分割入射信号を受信するように構成された複数の調節可能な同調アームとを備える反射型マイクロストリップ同調回路を提供するステップであって、前記1つ以上のカスケード結合器は、前記入射信号に関連する電力が前記複数の調節可能な同調アーム間で不均等に分割されるように、前記入射信号を分割するように構成され、前記電力の分割は、前記各同調アームの調節の異なる重み付け効果をもたらす、ステップと、(ii)前記マイクロストリップ同調回路を前記ポートを介して前記回路に動作可能に結合するステップと、(iii)前記入射信号を生成し、前記入射信号を前記ポートを介して前記マイクロストリップ同調回路に向けるステップと、(iv)前記入射信号を前記1つ以上のカスケード結合器を介して分割し、前記入射に関連する電力を複数の同調アーム間で不均等に分割するステップと、を含む。さらに、(v)各同調アームによる分割信号を反射するステップと、複数の同調アームのうちの1つ以上を選択的に調節して、それぞれの同調アームにおける反射分割信号を調整するステップと、1つ以上のカスケード結合器を介して複数の同調アームのそれぞれからの反射分割信号を組み合わせて結合反射信号を形成するステップと、ポートを介して結合反射信号を戻り信号として回路へと通信するステップと、を含む。
【0028】
以下の説明及び添付の図面は、本発明の特定の例示的実施形態を記載している。しかしながら、これらの実施形態は、本発明の原理が使用され得る種々の方法のうちのいくつかを示しているにすぎない。本発明の態様による他の目的、利点、及び新規な特徴は、図面と併せて考察すると、以下の詳細な説明から明らかになるであろう。
【0029】
添付の図面は、必ずしも縮尺どおりではないが、本発明の種々の態様を示す。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本発明の一実施形態による例示的な反射型マイクロストリップ同調回路の平面図であり、他の回路に接続されていることを示す図である。
図2】反射型マイクロストリップ同調回路の斜視図であり、他方の回路に接続せずに示されている。
図3】反射型マイクロストリップ同調回路の一部の拡大斜視図である。
図4】反射型マイクロストリップ同調回路を調節する例示的な動作を示す例示的な電圧位相図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明の原理及び態様は、反射型マイクロストリップ同調回路に特に適用され、例えば、レーダ、通信、ナビゲーションシステム等に使用され得る超低位相雑音信号(ultra-low phase-noise signals)を検出するために使用される干渉計回路の同調に使用され、従って、以下、この文脈で主に説明される。しかしながら、本発明の原理及び態様は、アンテナ、フィルタ、コネクタなどと共に使用するためのような、例えばマイクロ波信号のような電磁信号と共に動作することができる他のタイプの回路の同調にも適用可能であることが理解される。
【0032】
図1乃至図3を参照すると、例示的な反射型マイクロストリップ同調回路10が示されている。図示された実施形態では、反射型マイクロストリップ同調回路10(同調回路10とも呼ばれる)は、以下にさらに詳細に説明されるように、同調回路10の調節を通して受動的に同調される回路12に動作可能に接続されている。図示されるように、同調回路10のマイクロストリップ構造は、一般に、接地面14と、接地面14の上部にある誘電体層16と、誘電体層16の上部にある導電トレース18又は導電体を含み、これらは、電磁信号(例えば、マイクロ波周波数信号)などの信号を同調回路10を介して伝送するための伝導経路を形成する。
【0033】
例示的な実施形態では、回路12は、同調回路10を使用して同調される干渉計用の干渉計回路(参照番号12でも参照される)である。一般に、干渉計は、電磁波のような波を組み合わせるために、重ね合わせの原理を利用する。その方法は、それらの組み合わせの結果が、波の元の状態の診断となる何らかの意味のある特性を有するようなものである。キャリアからオフセットされた超低位相雑音側波帯を検出するために使用される干渉計では、2つの信号を組み合わせることが典型的であり、キャリアの振幅は同一であるが、側波帯は異なる。2つのこのような信号をそれらの搬送波位相外れと組み合わせると、キャリアの相殺(cancellation)が生じ、残留信号は2つの元の信号の側波帯の組み合わせである。前記残留信号は、次いで、有意のキャリア信号の存在下で可能となるであろう大きさよりも大きく増幅され得る。他の用途は、異なる方法で信号を組み合わせてもよく、この場合、1つ以上の前記信号の振幅及び/又は位相は、前記信号に関する情報を抽出するために、或いは当業者に理解されるような所望の結果を達成するために、調節されなければならない。
【0034】
本明細書に記載する例示的な実施形態では、干渉計回路12は、ポート23a及び23bにおいて2つの信号を受信することができ、各信号はキャリア及び側波帯を含む。さらに、干渉計12は、暗いポート(dark port)20及び少なくとも1つの明るいポート(bright port)22を有する。23a及び23bで干渉計に入るキャリア信号の相殺(cancellation)又は部分的相殺が、暗いポート20で行われる。当業者であれば、前記相殺はキャリア電力の破壊を意味しないこと、及び暗いポート20から出ておらず23a及び23bで干渉計12に入る全キャリア電力の残りの部分は回路の他の場所、この場合明るいポート22に向けられなければならないことを理解するであろう。例示的な実施形態において、暗ポート20において干渉計回路12を出る残留信号は、図示されていないさらなる回路に送られてもよく、残留信号は、Xバンド周波数範囲(例えば、8.0GHz~12.0GHz)のようなマイクロ波周波数範囲内の超低位相雑音側波帯の検出を可能にするように増幅されてもよく、又はさらに処理されてもよい。一般に、ここで説明したように、超低位相雑音検出のために使用される干渉計の明るいポートから出る残りのキャリア電力は、利用されず、抵抗性終端に吸収される。しかしながら、当業者には理解されるように、同調回路10から明るいポート22に反射されたキャリア電力は、干渉計回路12の暗ポート20における信号の合計を調節するために、干渉計内の手段によって再方向付けされ、それによって、干渉計12に組み込むことができる任意の調節手段とは無関係に、同調回路10を調整することによって、相殺のレベルを調節する手段を提供することができる。
【0035】
超低位相雑音干渉計用途は、典型的には、相殺又は部分的相殺を達成するために、少なくとも1つの電磁信号の振幅及び位相の両方の正確な調節を必要とする。例示的な同調回路10は、干渉計回路12と組み合わせてこの所望の結果を達成するために利用することができる。図示された実施形態に示されるように、例えば、同調回路10は、干渉回路12の明るいポート22に動作可能に接続されてもよく、この場合、同調回路10は、干渉回路12の暗いポート20において所望の位相外れ相殺の程度を提供するために、明るいポート22に戻される信号を調節するために利用される。一般に、同調回路10は、明るいポート22から入射信号を受信することによってこれを達成し、明るいポート22を通して戻り信号を反射する。この場合、同調回路10の選択的調節が、以下にさらに詳細に説明するように、戻り信号の振幅及び/又は位相を変化させて、干渉計回路12内の波の所望の相殺を達成する。
【0036】
例示的な実施形態では、同調回路10は、干渉計回路12に動作可能に接続されて回路12の所望の調節を提供し、同調回路10は、干渉計が現場で利用されるとき、調節後も所定の位置に留まる。同調回路10のマイクロストリップ構造は、同調回路10を所定の位置に留めることを可能にする設計のコンパクト性を高める。さらに、同調回路10の受動的性質は、そのコンパクト性を高め、能動的なデバイスノイズを除去するが、これは、上述したように、能動的な同調アプローチに対する利点である。マイクロストリップ同調回路10は、一般に、振幅及び位相の両方において複素戻り平面にわたって向上した解像度を提供し、以下でさらに詳細に説明するように、より高い精度で最終的な所望の結果に近づくために、同調回路10に反復可能で一貫した調節を可能にする。
【0037】
図示のように、同調回路10は、一般に、他方の回路12からの入射信号(例えば、干渉計回路12の明るいポート22を介しての電磁信号)を受信するためのポート24を含む。同調回路10はまた、ポート24の下流に配置された1つ以上のカスケード結合器26a、26b、26c(参照番号26でまとめて参照)を含み、カスケード結合器26は、複数の調節可能な同調アーム28a、28b、28c、28d(参照番号28でまとめて参照)の間で入射信号を分割するように構成される。一般に、複数の同調アーム28は、カスケード結合器26から分割入射信号を受信するように構成され、各同調アーム28内の分割信号を1つ以上のカスケード結合器26に反射させるように構成される。カスケード接続された結合器26は、各同調アーム28からの反射された分割信号を結合された反射信号に結合するように構成され、この結合された反射信号は、回路12(例えば、干渉計回路)で使用するための戻り信号としてポート24を通して戻される。以下にさらに詳細に説明するように、各同調アーム28の調節は、各アーム28からの反射分割信号の位相の変化をもたらし、この調節は、例えば、干渉計回路12の暗ポート20において波の所望のレベルの相殺又は部分的相殺を達成するために、戻り信号の所望の位相シフト及び/又は振幅変化を提供するためのように、回路12への所望の戻り信号を達成するために利用される。
【0038】
同調技術においてより高い再現性と精度を提供するために、カスケード接続された結合器26は、回路12から来る入射信号を分割するように構成され、その結果、入射信号に関連する電力は、複数の調節可能な同調アーム28間で不均等に分割される。このようにして同調アーム28間で電力を分割することは、各同調アーム28の調節の異なる重み付け効果をもたらす。これは、基本的に、各同調アーム28に関連する電力分割に応じて、微調整を通して一連の粗い調節を提供する。
【0039】
図示の実施形態では、例えば、カスケード接続された結合器26は、第1同調アーム28aに、他の同調アーム28b、28c及び28dと比較して最大の分割電力比を与えるように構成され、第1同調アーム28aは、反射信号の粗い調節量を提供する。他方、第4同調アーム28dは、第4同調アーム28dが反射信号の非常に微細な調整量を提供するように、同調アーム28間の分割された電力の最低の比率を備えることができる。第2同調アーム及び第3同調アーム28b及び28cは、第1同調アーム及び第4同調アーム28a及び28dの間に分割された電力の異なる中間比を備えることができ、それによって、例えば、中間及び微量の調整を提供することができる。このようにして、微調整を通じた粗い調節が、それぞれの同調アーム28a、28b、28c、28dの個々の調節によって提供される。当業者は、所定の技術レベルで達成され得るパッド及びワイヤボンドの最小実用サイズが存在することを理解するであろう。微調整による粗さの提供は、この最小実用サイズに基づいて達成され得る分解能よりもはるかに大きい分解能を可能にする。
【0040】
図示の実施形態では、ポート24からの入射信号を4つの同調アーム28a、28b、28c、28dの間で分割するために、3つのカスケード結合器26a、26b、26cが設けられている。図示のように、カスケード接続された結合器26の各々は、分岐直交マイクロストリップ結合器であり、入射信号を分割し、当該技術分野で既知の方法で結合器26を形成する導電性トレース18の長さ及び幅に基づいて、分割された出力経路間の分離を提供する。図示された実施形態では、例えば、第1のカスケード接続された結合器26aは、ポート24からの入射信号を2つの入射信号成分に分割し、この2つの入射信号成分は、カスケード接続された結合器26b及び26cによってさらに下流で4つの入射信号成分に分割される。カスケード結合器26及び同調アーム28は、各同調アーム28a乃至28dが、カスケード結合器26a乃至26cの分割によって引き起こされた入射信号成分のうちの1つを受け取るが、他のアーム28a乃至28dによって反射された信号は実質的に全く受け取らないように構成される。
【0041】
上述したように、カスケード接続された結合器26は、複数の同調アーム28の間で入射信号に関連する電力を不均等に分割する。本明細書で使用される用語「不均等に」は、以下の計算によって例示されるように、最も粗いアーム28と最も細いアーム28との間の重み付けに少なくとも2:1の差を提供する結合器26の組み合わせを意味する。図示された実施形態では、例えば、第1結合器26aは、結合器26bと26cとの間で電力を4:1の比率で分割する。結合器26b及び26cは、各々、2:1の電力分割を提供するので、第1アーム28aは、入射電力の2/3×4/5 = 8/15を受け、アーム28bは、1/3×4/5 = 4/15を受け、アーム28cは、2/3×1/5 = 2/15を受け、アーム28dは、1/3×1/5 = 1/15を受ける。従って、電力は、同調アーム28a、28b、28c及び28dの間でそれぞれ8:4:2:1の比に分割され、最も粗いアームと最も細かいアームの間の比は、8:1である。
【0042】
カスケード結合器26の構成によって提供される前述の8:4:2:1の電力分割比は、例示的なものであり、カスケード結合器26は、当業者によって理解されるように、各同調アーム28に対して望ましい調整の程度に応じて異なる電力分割を提供するように構成されてもよいことが理解される。さらに、図示の実施形態では、3つのカスケード接続された結合器26a~c及び4つの同調アーム28a~dが示されているが、いくつかの例示的な実施形態は、各同調アーム28によって提供される調整の所望の重み付け効果に応じて望ましいように、3つより大きい又は小さいカスケード接続された結合器26及び/又は4つより大きい又は小さい同調アーム28を有することができることが理解される。例えば、同調回路10の同調における解像度を高めるために、対応する追加の同調アーム28を有する追加のカスケード結合器26を同調回路10に追加することができるが、このような4つの同調アーム28は、広範な用途に実用的である。
【0043】
カスケード接続された結合器26によって提供される分割入射信号は、カスケード接続された結合器26によって提供される電力分割比に基づいて異なる振幅を有する複数の入射信号成分として特徴付けることができる。各同調アーム28a~dは、複数の入射信号成分のうちの1つを受信し、各同調アーム28a~dは、少なくとも部分的には、該同調アーム28a~dにおいて受信された入射信号成分の振幅に基づいて調節されたときに異なる重み付け効果を有する。各同調アーム28a~28dは、各同調アーム28a~28d内にそれぞれの反射信号成分を形成するように、入射信号成分の少なくとも一部を反射するように構成される。このようにして、各同調アーム28a~dの長さを調節するなどして、各同調アーム28a~dの調節は、各同調アーム288a~dにおける反射信号成分の時間遅延を変化させ、従って、各同調アーム28a~dにおける反射信号成分の位相を調整する。カスケード結合器26a~26cは、同調アーム28a~28dの各々からの反射(調節)信号成分を、調節された振幅及び/又は位相を有する結合反射信号に結合し、次いで、回路12で使用するための戻り信号としてポート24を通して戻されるように構成される。図4の電圧位相図を参照して以下でさらに詳細に説明するように、各同調アーム28a~d内の反射信号成分を異なる重み付け効果で調節する複合効果により、回路12に戻るための結合反射信号の所望の振幅及び/又は位相が達成されるまで、各同調アーム28a~dを個別に調節(例えば、短縮)することが可能となる。
【0044】
図3に最も良く示されているように、例示的な実施形態では、同調アーム28a~28dの各々は、ワイヤボンド34によって互いに接続された複数のセグメント32又はパッドを含む。ワイヤボンド34は、ワイヤボンド34を抜き又は破断することによりセグメント32から取り外すことができ、これにより、それぞれの同調アーム28a~dの長さが効果的に短くなり、それにより、それぞれの同調アーム28a~d内の反射信号成分の位相が、それぞれの同調アーム28a~dの短縮によって生じる時間遅延によって調整されることが可能になる。一般に、同調回路10のそれぞれの部分(例えば、ポート24、カスケード結合器26、及び/又は同調アーム28のセグメント32)は、マイクロストリップ構造の誘電体層16上に堆積及び/又はエッチングされる導電性トレース18を介して形成される。図示された実施形態では、4つの同調アーム28a、28b、28c、28dの各々は、160,000通りの可能な抜去された組み合わせを提供する20個のセグメント32を含む。同調アーム28当たりのセグメント32の数は、セグメント32をエッチングする実用性、ワイヤボンド34のサイズ、及び各同調アーム28a~28dの長さによって制限され得る。ワイヤボンディングされたセグメント32は、所望の調節を提供するための好ましいアプローチであり得るが、同調アーム28a~dは、メスなどの器具でトリミングされ得る連続トレースのような他の構成で提供され得ることが理解される。
【0045】
図示された実施形態では、各同調アーム28a~28dは、同一の幾何学的構成を有するが、同調アーム28a~28dのうちの1つ以上は、同調回路10のインピーダンス(例えば、50オーム)に整合するように構成されていれば、異なることが可能であることが理解される。図示の実施形態では、各同調アーム28a~28d内のセグメント32の幅は、ワイヤボンド34のインダクタンスと組み合わされたときに同調回路10と所望のインピーダンス整合を提供するように、セグメント32の上流の導電トレース18の各部分の幅よりも広い。例示的な実施形態では、同調アーム28a~28dの各々は、入射信号の動作周波数(例えば、約8.0~12.0GHzの範囲のXバンド周波数)において、反射信号成分の少なくとも360度の位相変化を達成するのに十分な長さを有するように構成される。図示の実施形態では、同調アーム28a~dは、入射信号成分が各同調アーム28a~dの端部30a~dから反射される開回路構成を有する。しかしながら、同調回路10は、ワイヤボンド32が近くの接地面にシャントされ得る短絡回路同調アーム28a~dと共に利用することができ、この場合、アーム28a~dは、結合器26に最も近い端から順にワイヤボンドを抜き取るか又は破断することによって電気的に延長されることが理解される。さらに別の構成では、同調アーム28は、整合抵抗器によって終端された連続マイクロストリップトラックであってもよく、この構成では、反射信号成分は、連続マイクロストリップトラックをアーム28に沿ったある距離で近傍の接地面に動作可能に接続することによって生成される入射信号成分の一部であってもよい。このような構成では、調節アーム28内の個々の反射信号の振幅と位相の両方を、異なるインピーダンスの作動接続を利用することと、アームに沿った異なる距離に前記接続を配置することとを組み合わせることによって調節することができ、それによって、いくつかの用途で要求されるより高い調節解像度を提供することができる。
【0046】
図示された実施形態に示されているように、ターミネータ回路10は、1つ以上のカスケード結合器26に動作可能に結合された1つ以上のターミネータ36a、36b、36c(参照番号36でまとめて参照される)をさらに含む。ターミネータ36は、カスケード結合器26によって結合される反射信号に関連する電力と入射信号に関連する電力との差に基づいて、同調回路10内の電力を吸収し、消散する。図示された実施形態では、ターミネータ36a、36b、36cは、同調回路10のインピーダンスに整合するように構成された抵抗器(例えば、50Ωの抵抗器)である。図示のように、ターミネータ36a、36b、36cの一端は、各カスケード接続された結合器26a、26b、26cの隔離ポート38a、38b、38cに結合され、他端は、接地面14と電気的に接触しているパッド39a、39b、39cに接続され、その結果、ポート24に戻されない反射信号に関連する追加の電力は、ターミネータ36に向けられ、消散される。パッド39a~39cは、誘電体層16を通る導電ビア、開回路の1/4波長アーム、又は都合のよい又は望ましい他の手段によって接地されてもよい。
【0047】
例示的な実施形態では、ポート24は、同調回路10への入力として入射信号を受信し、カスケード接続された結合器26からの合成反射信号を、回路12に戻される出力戻り信号として受信するために回路12と通信する同調回路10の唯一のポートである。
【0048】
図4を参照すると、反射型マイクロストリップ同調回路10を調節する例示的な動作を示す例示的な電圧位相図(voltage phasor diagram)100が示されている。図示された実施形態では、電圧位相図100は、各同調アーム28a~28d内のそれぞれの反射信号成分の振幅及び位相を表すために使用され、この図は、カスケード結合器26を介して結合された反射信号の所望の振幅及び/又は位相変化を戻り信号として達成するために、同調回路10をどのように調節することができるかを示している。
【0049】
上述したように、図示された実施形態では、入射信号に関連する電力は、3つのカスケード結合器26a、26b、26cによって、同調アーム28a、28b、28c、及び28dに対する8:4:2:1の比で、それぞれ分割される。同調アームスタブの端部30a~dを反射すると、分割された反射信号に関連する電力は、再び同じ比だけ分割され、その結果、64:16:4:1の戻り電力比がもたらされる。例示的な電圧位相図100において、電圧は、電力の平方根に比例し、これは、図示のように、それぞれの反射信号成分の戻り電圧が8:4:2:1比であることを意味する。
【0050】
調整されていない(例えば、抜去されていない)同調アーム28a~28dの初期状態は、電圧位相図100の位相子(phasors)102a~102dによって示されている。位相子102a~102dの位置合わせは、単なる例示であり、正確さよりもむしろ明確さのために調整されてきた。図示の実施形態では、カスケード結合器26の直交性は、位相子102b及び102cによって表される第2及び第3の同調アーム28b及び28cからの反射信号成分が、第1及び第4の同調アーム28a及び28dからの反射信号を表す位相子102a及び102dと比較して、追加の180度の位相シフトを有することを意味する。位相子102は、位相子102a~102dのベクトル和を示し、組み合わされた反射信号がポート24を出ることを表す。位相子104は、位相子102a、104b、104c及び104dの合計を含む異なる組み合わされた反射信号を示す。位相102aは同調アーム28aからの調整されていない反射信号であり、位相104b~dは、同調アーム28b~dを異なる量だけ短縮することによって、回転する位相102b~dの効果をそれぞれ約210度、270度、及び90度示す。位相子106は、別の可能な反射信号を示し、同調アーム28aは、前述のように、同じ位相子104b~104dと組み合わせて、位相子102aを106aとして示された位置まで回転させるために短縮されている。位相子108は、同調アーム28a~28dからの反射信号を表す位相子が任意の位相角で整列され、円110は、可能な戻り信号位相子の端点の概略の外側境界を表す組み合わせを示す。同様に、位相子112は、最小振幅のリターン信号を示すために位置合わせされ、円114は、リターン信号位相子の近似的な内側境界を示す。102、104、106で示される前述の調整の組合せは例示的なものであり、同調回路10は、ポート24において所望の戻り信号を達成するために、各同調アーム28a~28dを任意の適切な方法で個別に調節することによって、各反射信号成分を調節することができることが理解される。境界円110、114の間に終わるリターン信号位相子は、主として同調アーム28dの重み付け係数及びパッド34の間の間隔によって決定される高解像度で生成することができる。
【0051】
図示のように、第1同調アーム28aに関連する位相子102aは、カスケード接続された結合器26によって提供される8:4:2:1の電力分割比によって引き起こされる、他の反射信号成分(位相子102aの相対長によって示される)と比較して最大の振幅を有する。このように、第1同調アーム28aの調節は、結合された反射信号の調整に対して、より大きな重み付け効果を有する(例えば、位相子102aの位置106aへの回転は、図示のように、結合されたリターン信号を104から106への比較的大きな距離に移動させる)。このようにして、第1同調アーム28aは、結合された反射信号の比較的粗い調整に利用することができる。他方、第4同調アーム28dは、比較的短い位相子104dの長さによって示されるように、8:4:2:1の電力分割比によって最小の重み付け効果を有し、したがって、所望の組み合わせ反射信号を達成するために非常に小さい微調整を提供するために使用される。第2及び第3の同調アーム28b、28cは、それぞれの位相子104b、104cに示されるように、中間の重み付け効果を有し、従って、それぞれ、中間及び微同調調整に利用される。
【0052】
示されるように、102、104及び106で示される反射信号成分の組み合わせは、ポート24を介して戻される電力の異なるレベルを表す著しく異なる振幅を有する。同調回路10は、ポート24に対して調整される結合反射信号に関連する電力を向けるように構成され、回路10内の追加の電力をターミネータ36に向けてこの電力を吸収し消散させるように構成される。従って、ターミネータ36は、同調回路10が、ポート24における戻り信号として、結合反射信号に対する位相制御に加えて、振幅制御を提供することを可能にする。
【0053】
例示的な反射型マイクロストリップ同調回路が本明細書に記載されてきた。同調回路は、同調されるべき他の回路に動作可能に結合するように構成され、同調回路は、他の回路から入射信号を受信し、他の回路で使用するために同調回路によって反射される戻り信号の振幅及び/又は位相の調節を可能にする。同調回路は、複数の調節可能な同調アームの間で入射信号からの電力を不均等に分割する1つ以上のカスケード結合器を含み、同調アームは、所望の同調結果を達成するために、アームによって反射される戻り信号の振幅及び/又は位相を変化させるように個別に調節され得る。同調アーム間で分割された電力の差は、各同調アームの調整効果に対して漸増的な重み付けを提供し、これは、より大きな分解能を可能にする微調整を通じて一連の粗い調整を提供する。ワイヤボンドによって接続された一連のパッドを含む同調アームは、高い再現性を提供する。
【0054】
例示的な同調回路は、発振器、レーダ、通信、ナビゲーションシステムなどのような超低位相雑音検出用途で使用され得る干渉計回路の同調に使用され得る。同調回路はまた、反射同調においてより高い精度と制御を必要とする他のマイクロストリップ回路と共に利用されてもよい。例えば、同調回路は、アンテナ回路、フィルタ回路、コネクタ整合回路等を同調するために利用することができる。いくつかの実施形態では、同調回路は、組み合わされた反射信号を所望の経路に操作して、用途の範囲を拡大するためのサーキュレータを含んでもよい。
【0055】
本明細書で使用されるように、「動作的接続」又は項目が「動作可能に接続」される接続は、項目が意図した通りに動作できるような方法で項目が接続される接続である。動作接続は、直接接続であってもよいし、又は、中間の単数又は複数の実体が協力するか、又は、そうでなければ、接続の一部である、又は、動作可能に接続された実体の間にある間接接続であってもよい。「動作的接続」とは、信号、物理通信、又は論理通信を送受信することができる接続である。典型的には、動作接続は、物理的インターフェース、電気的インターフェース、又はデータインターフェースを含むが、動作接続は、動作制御を可能にするのに十分な、これら又は他のタイプの接続の異なる組み合わせを含んでもよいことに留意されたい。
【0056】
本発明は、特定の実施形態に関して示され説明されてきたが、本明細書及び添付の図面を読んで理解することにより、当業者に等価な変更及び修正が生じることは明らかである。特に、上述の素子(コンポーネント、アセンブリ、デバイス、組成物等)によって実行される種々の機能に関して、そのような素子を記述するために使用される用語(「手段」への言及を含む)は、別段の指示がない限り、本発明の本明細書に示された例示的な実施形態においてその機能を実行する開示された構造と構造的に等価ではないとしても、記載された素子の特定の機能(すなわち、機能的に同等である)を実行する任意の素子に対応することを意図している。さらに、本発明の特定の特徴は、例示されたいくつかの実施形態のうちの1つ又は複数のみに関して上述したが、このような特徴は、任意の与えられた又は特定の用途に対して所望かつ有利であり得るように、他の実施形態の1つ又は複数の他の特徴と組み合わせることができる。
図1
図2
図3
図4