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特許7333426鍔部を有する軸部材の製造方法及び鍔部を有する軸部材
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  • 特許-鍔部を有する軸部材の製造方法及び鍔部を有する軸部材 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-16
(45)【発行日】2023-08-24
(54)【発明の名称】鍔部を有する軸部材の製造方法及び鍔部を有する軸部材
(51)【国際特許分類】
   B23K 20/00 20060101AFI20230817BHJP
【FI】
B23K20/00 310L
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022005640
(22)【出願日】2022-01-18
(65)【公開番号】P2023104571
(43)【公開日】2023-07-28
【審査請求日】2022-03-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000144614
【氏名又は名称】株式会社三條機械製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100091373
【弁理士】
【氏名又は名称】吉井 剛
(72)【発明者】
【氏名】刈谷 博之
(72)【発明者】
【氏名】関根 隆尋
(72)【発明者】
【氏名】五井 一志
(72)【発明者】
【氏名】黒澤 亮
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 俊哉
【審査官】永井 友子
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-091125(JP,A)
【文献】米国特許第06419147(US,B1)
【文献】特開平11-063853(JP,A)
【文献】特開2019-151901(JP,A)
【文献】国際公開第2016/133024(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2008/0187697(US,A1)
【文献】特開2004-025198(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 20/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鍔部を有する軸部材を製造する方法であって、
外周面に雄螺子部が形成された円筒状部材と、内周面に前記雄螺子部に螺合する雌螺子部が設けられた前記鍔部となる環状部材とを準備する準備工程と、
前記環状部材を前記円筒状部材に被嵌する被嵌工程と、
前記円筒状部材の前記雄螺子部近傍に設けられる第一の平坦面と、前記環状部材の前記雌螺子部近傍に設けられ前記第一の平坦面と対向する第二の平坦面とを当接させるように前記雌螺子部と前記雄螺子部とを螺合させる螺合工程と、
前記雄螺子部と前記雌螺子部との螺合により前記第一の平坦面と前記第二の平坦面との当接を維持した状態で加熱して前記第一の平坦面と前記第二の平坦面とを拡散接合する拡散接合工程とを含み、
前記円筒状部材は該円筒状部材の外周方向に鍔状に突出する突出部に前記第一の平坦面が形成されたものであることを特徴とする鍔部を有する軸部材の製造方法。
【請求項2】
請求項1記載の鍔部を有する軸部材の製造方法において、前記第一の平坦面は第一のテーパー面であり、前記第二の平坦面は第二のテーパー面であることを特徴とする鍔部を有する軸部材の製造方法。
【請求項3】
請求項1,2いずれか1項に記載の鍔部を有する軸部材の製造方法において、前記環状部材は長手方向端面に環状の前記第二の平坦面を有するものであることを特徴とする鍔部を有する軸部材の製造方法。
【請求項4】
請求項1~いずれか1項に記載の鍔部を有する軸部材の製造方法において、前記拡散接合工程は、拡散接合処理のみを行う第一の工程と、前記第一の工程後に行われ拡散接合処理と浸炭焼入れ処理とを同時に行う第二の工程とを含むことを特徴とする鍔部を有する軸部材の製造方法。
【請求項5】
請求項1~いずれか1項に記載の鍔部を有する軸部材の製造方法において、前記第一の平坦面及び前記第二の平坦面は表面粗さRzが2μm以下であることを特徴とする鍔部を有する軸部材の製造方法。
【請求項6】
鍔部を有する軸部材であって、
外周面に雄螺子部が形成された円筒状部材と、内周面に前記雄螺子部に螺合する雌螺子部が設けられた前記鍔部となる環状部材とを備え、
前記円筒状部材の前記雄螺子部近傍には第一の平坦面が設けられ、この第一の平坦面は、前記円筒状部材の外周方向に鍔状に突出する突出部に形成され、
前記環状部材の前記雌螺子部近傍には第二の平坦面が設けられ、
前記環状部材は前記円筒状部材に被嵌されて前記雌螺子部が前記雄螺子部に螺合され、前記第一の平坦面と前記第二の平坦面とが拡散接合されていることを特徴とする鍔部を有する軸部材。
【請求項7】
請求項記載の鍔部を有する軸部材において、前記第一の平坦面は第一のテーパー面であり、前記第二の平坦面は第二のテーパー面であることを特徴とする鍔部を有する軸部材。
【請求項8】
請求項6,7いずれか1項に記載の鍔部を有する軸部材において、前記環状部材は長手方向端面に環状の前記第二の平坦面を有するものであることを特徴とする鍔部を有する軸部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鍔部を有する軸部材の製造方法及び鍔部を有する軸部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、円筒状部材(軸部品)と該円筒状部材を取付可能な貫通穴を備えた環状部材(ギア部品)とからなり、軸部品をギア部品の貫通穴に圧入して両者の接合面を拡散接合する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-91125号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されるように、円筒状部材を環状部材の貫通穴に圧入して拡散接合する場合、円筒状部材の外周面と環状部材の内周面の加工精度を高める必要があり、また、圧入作業にも手間がかかり、それだけコスト高となる。
【0005】
本発明は、軸部材を構成する円筒状部材と環状部材とをより効率的に拡散接合可能とする、これまでにない鍔部を有する軸部材の製造方法及び鍔部を有する軸部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
添付図面を参照して本発明の要旨を説明する。
【0007】
鍔部1を有する軸部材Aを製造する方法であって、
外周面に雄螺子部2が形成された円筒状部材3と、内周面に前記雄螺子部2に螺合する雌螺子部4が設けられた前記鍔部1となる環状部材5とを準備する準備工程と、
前記環状部材5を前記円筒状部材3に被嵌する被嵌工程と、
前記円筒状部材3の前記雄螺子部2近傍に設けられる第一の平坦面6と、前記環状部材5の前記雌螺子部4近傍に設けられ前記第一の平坦面6と対向する第二の平坦面7とを当接させるように前記雌螺子部4と前記雄螺子部2とを螺合させる螺合工程と、
前記雄螺子部2と前記雌螺子部4との螺合により前記第一の平坦面6と前記第二の平坦面7との当接を維持した状態で加熱して前記第一の平坦面6と前記第二の平坦面7とを拡散接合する拡散接合工程とを含み、
前記円筒状部材3は該円筒状部材3の外周方向に鍔状に突出する突出部8に前記第一の平坦面6が形成されたものであることを特徴とする鍔部を有する軸部材の製造方法に係るものである。
【0008】
また、請求項1記載の鍔部を有する軸部材の製造方法において、前記第一の平坦面6は第一のテーパー面6であり、前記第二の平坦面7は第二のテーパー面7であることを特徴とする鍔部を有する軸部材の製造方法に係るものである。
【0009】
また、請求項1,2いずれか1項に記載の鍔部を有する軸部材の製造方法において、前記環状部材5は長手方向端面に環状の前記第二の平坦面7を有するものであることを特徴とする鍔部を有する軸部材の製造方法に係るものである。
【0010】
また、請求項1~いずれか1項に記載の鍔部を有する軸部材の製造方法において、前記拡散接合工程は、拡散接合処理のみを行う第一の工程と、前記第一の工程後に行われ拡散接合処理と浸炭焼入れ処理とを同時に行う第二の工程とを含むことを特徴とする鍔部を有する軸部材の製造方法に係るものである。
【0011】
また、請求項1~いずれか1項に記載の鍔部を有する軸部材の製造方法において、前記第一の平坦面6及び前記第二の平坦面7は表面粗さRzが2μm以下であることを特徴とする鍔部を有する軸部材の製造方法に係るものである。
【0012】
また、鍔部1を有する軸部材Aであって、
外周面に雄螺子部2が形成された円筒状部材3と、内周面に前記雄螺子部2に螺合する雌螺子部4が設けられた前記鍔部1となる環状部材5とを備え、
前記円筒状部材3の前記雄螺子部2近傍には第一の平坦面6が設けられ、この第一の平坦面6は、前記円筒状部材3の外周方向に鍔状に突出する突出部8に形成され、
前記環状部材5の前記雌螺子部4近傍には第二の平坦面7が設けられ、
前記環状部材5は前記円筒状部材3に被嵌されて前記雌螺子部4が前記雄螺子部2に螺合され、前記第一の平坦面6と前記第二の平坦面7とが拡散接合されていることを特徴とする鍔部を有する軸部材に係るものである。
【0013】
また、請求項記載の鍔部を有する軸部材において、前記第一の平坦面6は第一のテーパー面6であり、前記第二の平坦面7は第二のテーパー面7であることを特徴とする鍔部を有する軸部材に係るものである。
【0014】
また、請求項6,7いずれか1項に記載の鍔部を有する軸部材において、前記環状部材5は長手方向端面に環状の前記第二の平坦面7を有するものであることを特徴とする鍔部を有する軸部材に係るものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明は上述のようにするから、軸部材を構成する円筒状部材と環状部材とをより効率的に拡散接合可能とする、これまでにない鍔部を有する軸部材の製造方法及び鍔部を有する軸部材となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本実施例の概略説明斜視図である。
図2】本実施例の製造工程の説明図である。
図3】本実施例の製造工程の説明図である。
図4】本実施例の製造工程の説明図である。
図5】本実施例の焼入れ処理の説明図である。
図6】本実施例の焼戻し処理の説明図である。
図7】別例を示す概略説明断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
好適と考える本発明の実施形態を、図面に基づいて本発明の作用を示して簡単に説明する。
【0018】
環状部材5を円筒状部材3に被嵌し、環状部材5の雌螺子部4を円筒状部材3の雄螺子部2に螺合させ、螺合による締め付けにより第一の平坦面6に第二の平坦面7を押し付け、この螺合の締め付けにより、第一の平坦面6と第二の平坦面7との当接は維持され、この状態(両者を押し付け合わせた状態)で該平坦面6・7同士の拡散接合を行う。
【0019】
したがって、厄介な圧入作業や円筒状部材3の外周面と環状部材5の内周面の高精度加工を行うことなく、また、第一の平坦面6と第二の平坦面7とが押し付け合う状態を作出するための治具等を別途用いる必要もなく、それだけ簡易に且つ効率的に鍔部1(フランジ部)を有する軸部材Aを製造することが可能となる。
【実施例
【0020】
本発明の具体的な実施例について図面に基づいて説明する。
【0021】
本実施例は、図1に図示したような鍔部1を有する軸部材Aを製造する方法である。
【0022】
具体的には、外周面に雄螺子部2が形成された円筒状部材3と、内周面に前記雄螺子部2に螺合する雌螺子部4が設けられた前記鍔部1となる環状部材5とを準備する準備工程と、前記環状部材5を前記円筒状部材3に被嵌する被嵌工程と、前記円筒状部材3の前記雄螺子部2近傍に設けられる第一の平坦面6と、前記環状部材5の前記雌螺子部4近傍に設けられ前記第一の平坦面6と対向する第二の平坦面7とを当接させるように前記雌螺子部4と前記雄螺子部2とを螺合させる螺合工程と、前記雄螺子部2と前記雌螺子部4との螺合により前記第一の平坦面6と前記第二の平坦面7との当接を維持した状態で加熱して前記第一の平坦面6と前記第二の平坦面7とを拡散接合する拡散接合工程とを含むものである。
【0023】
円筒状部材3としては、中実材であっても中空材であっても良い。本実施例では中空材を採用している。また、円筒状部材3は適宜な合金鋼製であり、例えば、各種合金鋼のうちC量が約0.20%以下のSCM材等を採用できる。
【0024】
本実施例では、例えばSCM420等の長尺材からビレットに切り出した中実材に穴明け加工を施したパイプ材を採用している。なお、市販のSCM420等のパイプ材を採用しても良い。
【0025】
環状部材5は図2に図示したような鍔状であり、円筒状部材3と同様、適宜な合金鋼製であり、例えば、各種合金鋼のうちC量が約0.20%以下のSCM材等を採用できる。また、拡散接合時の密着度を考慮して円筒状部材3の素材より熱膨張の小さい素材(例えばSUS430材等)を採用しても良い。
【0026】
本実施例では、SCM420等のパイプ材をカットしたものを採用している。なお、SCM420等の長尺材からビレットに切り出したものに穴明け加工を施したものを採用しても良い。
【0027】
円筒状部材3の外周面の一端から所定距離離れた位置には、所定範囲で雄螺子部2が設けられ、雄螺子部2の螺合方向終端全周には前記第一の平坦面6としての第一のテーパー面6が設けられている。第一のテーパー面6は環状であり、円筒状部材3の外周面から鍔状に突出した突出部8に適宜なテーパー加工を施して形成されている。
【0028】
また、円筒状部材3は片側段付きパイプとしている。なお、適宜他の機械加工を施しても良い。例えばキー溝加工やスプライン転造を施しても良い。
【0029】
環状部材5の内周面には雌螺子部4が設けられている。雌螺子部4の螺合方向始端全周には前記第二の平坦面7としての第二のテーパー面7が設けられている。第二のテーパー面7は環状であり、環状部材5の前記第一のテーパー面6と対向する側の端面に設けられており、具体的には貫通穴の周囲(全周)にテーパー加工を施して形成されている。
【0030】
第一の平坦面6及び第二の平坦面7(第一のテーパー面6及び第二のテーパー面7)の表面粗さRz(面粗度。最大高さ)は、2μm以下、好ましくは0.4μm~1.6μm程度とするのが好ましい。0.4μm未満では、加工難易度が高い割に接合品質の飛躍的な向上が期待できず、1.6μmを超えると接合品質が低下するためである。本実施例ではRzは1μmとしている。
【0031】
なお、本実施例では、接合面積を可及的に広くするため、第一・第二の平坦面6・7として、図3中の拡大断面図等に示すように図中左側ほど先細る第一・第二のテーパー面6・7を採用しているが、テーパー面に限らず、図7に図示したような別例のように垂直面を採用しても良い。例えば、突出部8の一端面を垂直面である第一の平坦面6とし、図7(a)に図示したように環状部材5に端面から一段低い段差面を設け該段差面を垂直面である第二の平坦面7としたり、図7(b)に図示したように環状部材5の端面と面一に垂直面である第二の平坦面7を設けたりすることができる。
【0032】
本実施例は、以上の構成の環状部材5を円筒状部材3に被嵌し、環状部材5の雌螺子部4を円筒状部材3の雄螺子部2に螺合させ、螺合による締め付けにより第一のテーパー面6に第二のテーパー面7を押し付け、この螺合の締め付けにより、第一のテーパー面6と第二のテーパー面7との当接を維持した状態(両者を押し付け合わせた状態)で該テーパー面6・7同士の拡散接合を行うことで一体化されている(図3参照)。
【0033】
したがって、鍔部1となる環状部材5が螺子部の螺合だけでなく、テーパー面同士の拡散接合により回り止めされることで強固に取り付けられたものとなり、例えばEV用シャフトとして使用する場合には、鍔部1をローターの位置決め支持のために良好に利用可能となる。
【0034】
本実施例の拡散接合工程は、図4に図示したような真空雰囲気若しくは不活性雰囲気で熱処理が可能な熱処理炉9内で行う。また、本実施例では、拡散接合と共に、同一の前記熱処理炉9内で浸炭焼入れを行う。すなわち、拡散接合処理のみを行う第一の工程と、前記第一の工程の後、拡散接合処理と浸炭焼入れ処理とを同時に行う第二の工程とを含む。
【0035】
具体的には、図5に図示したように、熱処理炉9に投入後、10-3Paから10Pa程度の真空雰囲気となるまで待機し、900℃から1000℃(本実施例では1000℃程度)まで加熱し、所定時間(数十分~数時間)前記真空度と前記温度を一定に保持(均熱)することで拡散接合を行う(第一の工程)。
【0036】
その後、温度を維持したまま炭素含有ガスを熱処理炉9内に導入し、炭素含有ガス濃度と温度を一定に所定時間(数十分~数時間)保持して浸炭処理を行い(この際、拡散接合も進行する)、降温し、850℃程度で所定時間(数十分)保持し、油冷却して焼入れ処理を行う(第二の工程)。
【0037】
したがって、拡散接合工程の後半において同一熱処理炉9内で同時に浸炭焼入れ工程を行うことで、浸炭焼入れが必要な合金鋼を用いる場合でも効率的な処理が可能となる。
【0038】
熱処理炉9で油冷却した後、軸部材Aを大気開放炉に移動させ大気開放炉内で図6に図示したように200℃程度まで加熱し、温度一定で所定時間(数十分~数時間)保持して焼戻し処理を行う(焼戻し工程)。
【0039】
製造工程について以下さらに具体的に説明する。
【0040】
上記構成の円筒状部材3を作製すると共に、上記構成の環状部材5を作製する(準備工程)。
【0041】
続いて、環状部材5の貫通孔に円筒状部材3を挿通させ環状部材5を円筒状部材3に被嵌し、雄螺子部2近傍まで移動させる(被嵌工程)。
【0042】
続いて、環状部材5を回転させて雌螺子部4を雄螺子部2に螺合させ、雌螺子部4の螺合方向始端が概ね雄螺子部2の螺合方向終端に至る螺合完了時に第一のテーパー面6と第二のテーパー面7とが密着した状態となる(螺合工程)。
【0043】
なお、螺合による密着度合いは適宜調整し、テーパー面6・7同士の接触度合い(面圧)を調整する。例えば、締め付けトルクにより面圧を管理・調整することができる(例えば20~100N・m程度とする。)。
【0044】
そして、テーパー面6・7同士が所定の圧力で押し付け合う状態で熱処理炉9内に導入し、熱処理炉9内部を真空雰囲気若しくは不活性雰囲気とした状態で加熱して拡散接合・浸炭焼入れを行う(第一の工程及び第二の工程を含む拡散接合工程)。
【0045】
拡散接合工程後、軸部材Aを油冷却して熱処理炉9から取り出し、大気開放炉に導入し焼戻しを行う(焼戻し工程)。
【0046】
焼戻し工程後、軸部材Aを大気開放炉から取り出し、本実施例に係る鍔部1を有する軸部材Aを得る。
【0047】
なお、上記工程後、軸部材Aには、外面に切削・研磨等の仕上げ加工を施したり、円筒状部材3の内面に凹凸等を除去するための切削・研磨等の仕上げ加工を施したりしてもよい。
【0048】
本実施例では浸炭焼入れが必要な合金鋼を用いる場合について説明したが、浸炭焼入れが不要な合金鋼を用いて本実施例に係る鍔部1を有する軸部材Aを製造しても良い。この場合、拡散接合工程の第二の工程(炭素含有ガスの導入)・焼戻し工程は不要である。
【0049】
本実施例は上述のようにしたから、厄介な圧入作業や円筒状部材3の外周面と環状部材5の内周面の高精度加工を行うことなく、また、第一のテーパー面6と第二のテーパー面7とが押し付け合う状態を作出するための治具等を別途用いる必要もなく、それだけ簡易に且つ効率的に鍔部1(フランジ部)を有する軸部材Aを製造することが可能となる。
【0050】
また、円筒状部材3と環状部材5とを別々に製造するから、材料歩留まりが良く、さらに、浸炭処理が必要な場合にも拡散接合と同時に処理できるから、ライン構成をシンプルにすることができ、それだけローコストとなる。
【0051】
また、冷間鍛造により鍔部1を形成する場合に比べ、材料自由度が高く高強度とすることができ、また肉薄化による軽量化も実現できる。しかも、冷間鍛造に比しエネルギー使用量が少なく、ボンデ処理も不要となるなど、環境負荷を低減できる。また、鍔部1を大型化することも冷間鍛造に比して容易である。
【0052】
よって、本実施例は、軸部材を構成する円筒状部材と環状部材とをより効率的に拡散接合可能とする、これまでにない鍔部を有する軸部材の製造方法となる。
【符号の説明】
【0053】
1 鍔部
2 雄螺子部
3 円筒状部材
4 雌螺子部
5 環状部材
6 第一の平坦面(第一のテーパー面)
7 第二の平坦面(第二のテーパー面)
8 突出部
A 軸部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7