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▶ 株式会社モリタ製作所の特許一覧

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-16
(45)【発行日】2023-08-24
(54)【発明の名称】術者用椅子、および歯科用診療ユニット
(51)【国際特許分類】
   A61C 19/00 20060101AFI20230817BHJP
   A61G 15/00 20060101ALI20230817BHJP
【FI】
A61C19/00 Z
A61G15/00 Z
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2022164717
(22)【出願日】2022-10-13
(62)【分割の表示】P 2020115365の分割
【原出願日】2020-07-03
(65)【公開番号】P2022186800
(43)【公開日】2022-12-15
【審査請求日】2022-10-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000138185
【氏名又は名称】株式会社モリタ製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】奥村 大
(72)【発明者】
【氏名】麻生 昌秀
【審査官】岡▲さき▼ 潤
(56)【参考文献】
【文献】実開昭54-069698(JP,U)
【文献】実開昭62ー113527(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2016/0089294(US,A1)
【文献】実開昭58-182718(JP,U)
【文献】特開平07-008442(JP,A)
【文献】特開2017-104215(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第00691120(EP,A1)
【文献】実開昭56-109721(JP,U)
【文献】特開2018-086172(JP,A)
【文献】実開昭62-113527(JP,U)
【文献】韓国公開特許第10-2019-0044162(KR,A)
【文献】独国特許出願公開第2705458(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61C 19/00
A61G 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
歯科医師が施術の際に座る術者用椅子であって、
前記歯科医師が座る座部と、
前記座部を回転可能に支持する支持部と、
前記座部または前記支持部において前記座部に着座した場合の右側に取り付けられ、歯科診療器具を置く診療トレーと、
前記座部または前記支持部において前記座部に着座した場合の左側に取り付けられ、歯科助手が使用する器具を保持する歯科助手用保持部と、
を備える、術者用椅子。
【請求項2】
前記診療トレーを所定範囲の移動可能なトレー移動機構をさらに備える、請求項1に記載の術者用椅子。
【請求項3】
前記診療トレーは、複数の前記歯科診療器具を保持する保持部を有する、請求項1または請求項2に記載の術者用椅子。
【請求項4】
前記座部または前記支持部に着脱可能に取り付けられ、複数の前記歯科診療器具を収納する収納部をさらに備える、請求項1または請求項2に記載の術者用椅子。
【請求項5】
前記支持部は、複数の前記歯科診療器具に接続された複数のチューブを束ねて貫通させる貫通部を有する、請求項3または請求項4に記載の術者用椅子。
【請求項6】
前記貫通部は、束ねた前記複数のチューブを、前記座部の背もたれ側または前記座部の前記背もたれに対する側面側から引き出し可能に設けられる、請求項5に記載の術者用椅子。
【請求項7】
前記座部の上部に設けられる表示部をさらに備える、請求項1~請求項6のいずれか1項に記載の術者用椅子。
【請求項8】
前記表示部を所定範囲の移動可能な表示部移動機構をさらに備える、請求項7に記載の術者用椅子。
【請求項9】
前記座部の下部に設けられ、前記歯科診療器具を制御するフットコントローラをさらに備える、請求項1~請求項8のいずれか1項に記載の術者用椅子。
【請求項10】
前記フットコントローラは、前記座部の移動とともに移動可能である、請求項9に記載の術者用椅子。
【請求項11】
前記歯科助手用保持部は、前記座部または前記支持部に対して着脱可能に取り付けられる、請求項1~請求項10のいずれか1項に記載の術者用椅子。
【請求項12】
前記診療トレーは、前記座部または前記支持部に対して着脱可能に取り付けられる、請求項1~請求項11のいずれか1項に記載の術者用椅子。
【請求項13】
前記座部または前記支持部に取り付けられるマイクロスコープをさらに備える、請求項1~請求項12のいずれか1項に記載の術者用椅子。
【請求項14】
前記座部を支持する側と反対側の前記支持部に設けられ、床面に対して前記座部を移動可能にする回転部をさらに備える、請求項1~請求項13のいずれか1項に記載の術者用椅子。
【請求項15】
患者が診療の際に座る歯科診療用椅子と、
請求項1~請求項14のいずれか1項に記載の前記術者用椅子とを備える、歯科用診療ユニット。
【請求項16】
前記術者用椅子に対して前記歯科診療用椅子が移動可能である、請求項15に記載の歯科用診療ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、術者用椅子、および歯科用診療ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
歯科分野において、患者を診療椅子に座らせ、術者が術者用椅子に座って診療を行う場合、診療椅子は、背もたれおよび足置き台を座面シートに対して垂直方向に移動させた座位姿勢から、背もたれおよび足置き台を座面シートに対して水平方向に移動させた仰向け姿勢となる。
【0003】
このように診療椅子を水平にした上で、術者が、歯科診療器具(例えば、ハンドピース、スケーラ、口腔内用の三次元スキャナ、2Dハンディカメラ、根管治療器、または、LED光重合器等)を用いて患者の歯を診療する水平診療が行われている。特許文献1には、水平診療を行う歯科用診療ユニットが開示されており、複数の歯科診療器具を収納するホルダを設けたトレーテーブルが診療椅子に取り付けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第5570801号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1では、トレーテーブルが診療椅子に取り付けられる構成であるため、複数の歯科診療器具を収納するホルダがトレーテーブルの稼働範囲に限定される。一方、術者用椅子は、診療椅子に対して自由に移動することができるため、トレーテーブルのように稼働範囲が限定されることはない。
【0006】
そのため、術者が座る術者用椅子の位置によっては、複数の歯科診療器具を収納するホルダの位置が遠くなり、患者の歯を診療する際に、術者が歯科診療器具を取り扱い難い状態となることがあった。
【0007】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、術者が歯科診療器具などを取り扱い易い術者用椅子、および歯科用診療ユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示に係る術者用椅子は、歯科医師が施術の際に座る術者用椅子であって、歯科医師が座る座部と、座部を回転可能に支持する支持部と、座部または支持部において前記座部に着座した場合の右側に取り付けられ、歯科診療器具を置く診療トレーと、座部または支持部において座部に着座した場合の左側に取り付けられ、歯科助手が使用する器具を保持する歯科助手用保持部と、を備える。
【0009】
本開示に係る歯科用診療ユニットは、患者が診療の際に座る歯科診療用椅子と、上記の術者用椅子とを備える。
【発明の効果】
【0010】
本開示に係る術者用椅子では、診療トレーが座部または支持部に取り付けられているので、患者の歯を診療する際に、術者が歯科診療器具などを取り扱い易くなる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】歯科用診療ユニットの外観の構成を示す概略図である。
図2】術者用椅子の外観の構成を示す概略図である。
図3】トレーテーブルが可動する様子を示す概略図である。
図4】複数のチューブが術者用椅子の支持部に設けた貫通部を通る様子を示す概略図である。
図5】モニタが可動する様子を示す概略図である。
図6】モニタの取り付け位置が異なる術者用椅子の外観の構成を示す概略図である。
図7】トレーテーブルにモニタを取り付けた術者用椅子の外観の構成を示す概略図である。
図8】トレーテーブルの取り付け位置が異なる術者用椅子の外観の構成を示す概略図である。
図9】マイクロスコープを取り付けた術者用椅子の外観の構成を示す概略図である。
図10】複数の診療器具を収納する収納部を背もたれに取り付けた術者用椅子の外観の構成を示す概略図である。
図11】歯科助手用保持部を取り付けた術者用椅子の外観の構成を示す概略図である。
図12】床面に支持部が固定された術者用椅子の外観の構成を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る実施の形態について図面を参照して説明する。
本実施の形態においては、術者が座る術者用椅子の1つの例示的形態として、歯科診療に用いる歯科用診療ユニットについて説明する。なお、術者用椅子は、主として歯科について説明するが、眼科、耳鼻咽喉科、放射線科、および獣医科など、あらゆる医科の診療にも適用することも可能である。また、診療には、診断および治療が含まれる。
【0013】
従前の歯科診療では、歯科診療用椅子に患者が腰掛け上半身を起こしたまま、術者(歯科医師)が患者の口腔内を覗き込むように身体を捩じって診療が行われていた。しかし、術者が身体を捩じるような不自然な姿勢で診療を行うことは、術者にとって負担であるとともに、術者が安定した手指のコントロールおよび視野の確保を実現できないという問題点があった。その後、米国人歯科医師Dr.ダリルR.ビーチからの提案で、患者を水平に寝かせ、術者は頭部後方に座って治療をする水平診療が可能な歯科用診療ユニットが開発された。
【0014】
この歯科用診療ユニットの開発の根底に流れている思想は、「pd」(“proprioceptive derivation”)と呼ばれる考え方で、「固有感覚に基づく演繹」という意味である。意訳すれば「人間を中心とした設計・配置」となり、具体的に物理的な動きや動線だけでなく、メンタル等も含め、全ての人に優しい診療環境を提供するという考え方である。
【0015】
本実施の形態で説明する歯科用診療ユニット(特に術者用椅子)に、この「pd」という考え方を取り入れて開発したものであり、術者が自然に取り上げられる位置に診療器具を配し、術者が安定した手指のコントロールおよび視野の確保ができるようにしている。以下、本実施の形態に係る歯科用診療ユニットについて図を用いて説明する。図1は、歯科用診療ユニットの外観の構成を示す概略図である。図2は、術者用椅子の外観の構成を示す概略図である。
【0016】
図1に示すように、歯科用診療ユニット1は、術者用椅子10と、診療椅子20(歯科診療用椅子)と、ベースンユニット30と、照明装置40とを備える。
【0017】
また、歯科用診療ユニット1は、図示していないが、各種機能を発揮する機能部を備えており、これら各機能部が術者の操作に基づき機能を発揮する。なお、これら各機能部および各機能部を制御する制御部には、基板上に実装されたCPU(Central Processing Unit)およびメモリ(ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)(図示は省略)などを備えたコンピュータによって構成される。
【0018】
術者用椅子10は、図2に示すように、術者が診療を行う際に座る椅子であり、術者の背中を支える背もたれ11と、術者の尾尻を支える座面シート12(座部)と、術者の足を支える足置き台13と、座面シート12を支持する支持部14と、支持部14に設けられるキャスタ15(回転部)と、歯科診療器具を置くトレーテーブル16(診療トレー)と、フットコントローラ17と、モニタ18(表示部)とを備えている。背もたれ11、座面シート12、および足置き台13は、図示していないシート駆動部により駆動ことができるようにしてもよい。なお、術者用椅子10は、背もたれ11および足置き台13を設けずに座面シート12に術者が座る形状、背もたれ11および座面シート12を備える形状であってもよい。
【0019】
また、支持部14は、座面シート12と接続する部分が座面シート12を回転可能に支持する構造である。そのため、座面シート12に座った術者は、床面に対する水平面内で自由に向きを変えることができる。座面シート12を回転可能に支持する構造については、何れの構造であってもよい。
【0020】
キャスタ15は、座面シート12を支持する側と反対側の支持部14に設けられている。つまり、術者用椅子10は、キャスタ15を介して床面に接地している。キャスタ15は、回転する車輪を有しているので、床面に対して座面シート12を移動させることができる。つまり、術者用椅子10は、キャスタ15を用いて床面上を自由に移動することができる。
【0021】
トレーテーブル16は、診療時の物置台として用いられる。トレーテーブル16は、術者用椅子10の支持部14から延びるアーム14a(トレー移動機構)に接続されており、所定範囲内であれば術者用椅子10に対して手動で回動、水平移動、および垂直移動することができる。図3は、トレーテーブル16が可動する様子を示す概略図である。なお、アーム14aは、支持部14からではなく、座面シート12から延びていてもよい。つまり、トレーテーブル16は、座面シート12または支持部14に取り付けられていればよい。なお、トレーテーブル16は、座面シート12または支持部14に対して着脱可能でもよい。
【0022】
トレーテーブル16の底面には、制御部16aが設けられている。制御部16aには、複数の診療器具16b(歯科診療器具)と、操作パネル16cと、インスツルメントホルダ16dと、モニタ18とが接続されている。制御部16aは、これら各構成を駆動させるための制御を行う。
【0023】
診療器具16bは、たとえば、エアータ-ビンハンドピース(ハイスピードハンドピース)、マイクロモータハンドピース(ロースピードハンドピース)、スケーラ、スリーウェイシリンジ、バキュームシリンジなど、診療に用いるインスツルメントである。なお、診療器具16bは、これらに限らず、口腔内カメラ、光重合用照射器、根管長測定器、および根管拡大器などであってもよいし、鏡や注射器など、駆動しない器具であってもよい。
【0024】
診療器具16bは、例えば3種類が用いられる。診療器具16bとして、ハイスピードハンドピース(HSともいう)、ロースピードハンドピース(LSともいう)、スケーラ(SCともいう)が用いられる。これら診療器具16bは、インスツルメントホルダ16dによって保持される。インスツルメントホルダ16dから使用する診療器具16bを取り出すと、インスツルメントホルダ16dによる保持が解除される。インスツルメントホルダ16dによって、診療器具16bの保持が解除されると、診療器具16bが被選択状態となる。
【0025】
ハイスピードハンドピースは、例えば、エアタービンハンドピースである。エアタービンハンドピースは、歯牙のエナメル質である象牙を切削する際に発生する熱を抑制するために発熱箇所へ水を噴射させる機能や、水等を噴射させて粉塵を吹き飛ばす機能を備える。そのため、エアタービンハンドピースには、水を供給する供給管路と、水を排出する排出管路と、駆動用エアを供給する給気管路と、駆動用エアを排気する排気管路を含むチューブが接続される。一方、ロースピードハンドピースであるマイクロモータハンドピースやスケーラは、駆動用エアを供給する給気管路などは不要であるが、電力を供給するための電源配線、水を供給する供給管路がチューブに接続される。
【0026】
このように、各診療器具16bは、複数のチューブ16eが接続されている。この複数のチューブ16eは、制御部16aに接続されるとともに、エア元や水元に接続される。この複数のチューブ16eが床面に配置されていると、術者用椅子10の自由な移動を妨げるだけでなく、チューブ16eに躓いて術者などが転倒する虞がある。
【0027】
そこで、本実施の形態では、術者用椅子10の支持部14に貫通部を設けて、束ねた複数のチューブ16eを当該貫通部に通すことで術者用椅子10の自由な移動を妨げとならないように構成している。図4は、複数のチューブ16eが術者用椅子10の支持部14に設けた貫通部14bを通る様子を示す概略図である。貫通部14bは、図4に示すように、座面シート12の側面(背もたれ11に対する側面)側から背もたれ11側に貫通するように支持部14に設けられている。そのため、トレーテーブル16の制御部16aから延びた複数のチューブ16eを、背もたれ11に対する側面側から背もたれ11側から引き出すことができる。なお、貫通部14bは、背もたれ11に対する一方の側面側から他方の側面に貫通するように支持部14に設けてもよい。この場合、複数のチューブ16eは、貫通部14bを通ってトレーテーブル16と反対側の背もたれ11に対する側面側から引き出すことができる。このように、束ねた複数のチューブ16eを、座面シート12の背もたれ11側または座面シート12の側面側から引き出し可能な貫通部14bを支持部14に設けることで、術者が移動する側に複数のチューブ16eが配置されず、チューブ16eに躓いて術者などが転倒する虞を低減できる。
【0028】
制御部16aは、フットコントローラ17によって受け付けられたユーザの操作に基づき各診療器具16bを駆動する。たとえば、制御部16aの制御に基づき、HSのヘッド部に保持される切削工具が回転し、歯科治療に用いることができる。
【0029】
操作パネル16cは、各機能を発揮させるために操作される各操作ボタンを特定可能なアイコン等で表示してある。術者などのユーザは、操作パネル16cに表示してある各操作ボタンを操作することができる。
【0030】
インスツルメントホルダ16dは、診療器具16bを保持する保持部材であり、インスツルメントホルダ16dによって保持されている診療器具16bと、保持が解除されている診療器具16bとを判定することができるセンサ(図示せず)を有している。
【0031】
フットコントローラ17は、床面に接地するように足置き台13の下側に取り付けられ、術者などの足踏操作によって、診療椅子20を駆動させるための操作を受け付けるとともに、診療器具16bを駆動させるための操作を受け付ける。フットコントローラ17は、座面シート12の移動とともに移動可能である。
【0032】
たとえば、フットコントローラ17に設けられた診療椅子駆動用のスイッチを足踏操作することにより、フットコントローラ17から診療椅子20に対して制御信号が出力され、診療椅子20が駆動する。また、フットコントローラ17に設けられた診療器具駆動用のスイッチを足踏操作することにより制御部16aに対して制御信号が出力され、制御部16aの制御によって診療器具16bが駆動する。
【0033】
モニタ18は、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイなどで構成され、制御部16aの制御に基づき所定の画像を表示する。たとえば、制御部16aの制御に基づき、インスツルメントホルダ16dから取り出されて使用されている診療器具16bや、操作パネル16cの操作ボタンが操作されて被選択状態とされている診療器具16bの駆動情報を示す画像、根管内での切削工具の先端の位置を示す画像、および口腔内カメラによって撮影された口腔内の画像などを、モニタ18に表示することができる。
【0034】
モニタ18は、座面シート12の上部に設けられている。モニタ18は、術者用椅子10の背もたれ11から延びるアーム11a(表示部移動機構)に接続されており、所定範囲であれば術者用椅子10に対して手動で回動、水平移動、および垂直移動することができる。図5は、モニタ18が可動する様子を示す概略図である。なお、アーム11aは、背もたれ11の上側からではなく、背もたれ11の横側から延びていてもよい。図6は、モニタ18の取り付け位置が異なる術者用椅子10の外観の構成を示す概略図である。モニタ18は、背もたれ11の側面側から延びるアーム11bに接続されている。また、モニタ18は、トレーテーブル16に取り付けてもよい。図7は、トレーテーブル16にモニタ18を取り付けた術者用椅子10の外観の構成を示す概略図である。このように、モニタ18は、術者用椅子10側の何らかの位置に取り付けられていればよい。
【0035】
モニタ18は、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイなどの他、透明パネル、VR(virtual reality)ゴーグル、ウェアラブルディスプレイなどであってもよい。表示部移動機構は、垂直方向に設置される第1軸と、第1軸の上部から水平方向へ延伸する第2軸とを有し、モニタ18が、第2軸の延伸方向の端部付近に設けられる構成でもよい。この第2軸は、第1軸を中心に水平方向へ回転可能に構成され、第1軸は、垂直方向へ伸縮可能に構成されてもよい。モニタ18は、第2軸の遠心方向端部付近において水平方向へ回転可能に構成されることが好ましく、さらに、上側端部付近を中心に上下へ回転可能に構成されてもよい。
【0036】
図示していないが、術者用椅子10は、所定の音声を出力するためのスピーカを設けてもよい。例えば、スピーカは、制御部16aに接続され、制御部16aからの制御信号に基づき警告音を出力する。例えば、操作パネル16cの操作ボタンを操作しても機能を発揮できない操作ボタンが操作された場合に、スピーカから警告音を出力する。
【0037】
歯科用診療ユニット1には、術者用椅子10以外に、診療椅子20が設けられる。診療椅子20は、術者から診療を受ける際に患者が座る椅子であり、患者の頭を支えるヘッドレスト20aと、患者の背中を支える背もたれ20bと、患者の尾尻を支える座面シート20cと、患者の足を支える足置き台20dとを備えている。ヘッドレスト20a、背もたれ20b、座面シート20c、および足置き台20dは、図示していない診療椅子駆動部に接続されている。診療椅子駆動部は、ヘッドレスト20a、背もたれ20b、座面シート20c、および足置き台20dを駆動する。
【0038】
たとえば、診療椅子駆動部の制御に基づき、座面シート20cを上昇させることができ(診療椅子20を上昇させるともいう)、これにより診療椅子20に座った患者を上昇させることができる。一方、診療椅子駆動部の制御に基づき、座面シート20cを下降させることもでき(診療椅子20を下降させるともいう)、これにより診療椅子20に座った患者を下降させることができる。また、診療椅子駆動部の制御に基づき、ヘッドレスト20a、背もたれ20b、および足置き台20dを、座面シート20cに対して垂直方向に移動させることができ(診療椅子20を起立させるともいう)、これにより診療椅子20に座った患者を座位姿勢にさせることができる。一方、診療椅子駆動部の制御に基づき、ヘッドレスト20a、背もたれ20b、および足置き台20dを、座面シート20cに対して水平方向に移動させることもでき(診療椅子20を傾斜させるともいう)、これにより診療椅子20に座った患者を仰向け姿勢にさせることができる。
【0039】
歯科用診療ユニット1は、さらにベースンユニット30を備えていてもよい。もちろん、歯科用診療ユニット1は、術者用椅子10と、診療椅子20とで構成されてもよい。ベースンユニット30は、診療椅子20の側部に備え付けられており、排水口が形成された鉢30aと、コップが載置されるコップ台30bと、コップに給水するための給水栓30cとを備える。ベースンユニット30は、給水栓30cからコップに給水された水を用いて患者がうがいをするための台である。また、ベースンユニット30は、ベースン制御部(図示せず)を備えており、ベースン制御部の制御に基づき歯科用診療ユニット1で用いられる水の流れを制御する。
【0040】
さらに、ベースンユニット30は、照明制御部(図示せず)を備えており、照明制御部の制御に基づき照明装置40の照明および消灯を制御する。
【0041】
前述の歯科用診療ユニット1は一例であって、様々な構成のバリエーションが考えられる。以下、特に術者用椅子10の構成のバリエーションについて説明する。図8は、トレーテーブル16の取り付け位置が異なる術者用椅子10の外観の構成を示す概略図である。図8に示す術者用椅子10では、トレーテーブル16が図2で示した支持部14から延びるアーム14aに接続されるのではなく、背もたれ11から延びるアーム11cに接続される。アーム11cに接続されるトレーテーブル16は、所定範囲であれば術者用椅子10に対して手動で回動、水平移動、および垂直移動することができる。トレー移動機構は、アーム14aやアーム11cに限定されず、トレーテーブル16を所定範囲、移動可能な移動機構であれば何れの機構であってもよい。
【0042】
次に、術者用椅子10は、トレーテーブル16やモニタ18以外にマイクロスコープなどの機器を取り付けてもよい。図9は、マイクロスコープ19を取り付けた術者用椅子10の外観の構成を示す概略図である。マイクロスコープ19は、患者の口腔内を拡大して診療することができる機器である。マイクロスコープ19は、術者用椅子10の背もたれ11から延びるアーム11d(マイクロスコープ移動機構)に接続されており、所定範囲であれば術者用椅子10に対して手動で回動、水平移動、および垂直移動することができる。
【0043】
次に、前述の術者用椅子10では、インスツルメントホルダ16dがトレーテーブル16に設けられる構成を説明したが、これに限られない。トレーテーブルとは異なる位置に複数の診療器具16bを収納する収納部を術者用椅子10に取り付けられていてもよい。図10は、複数の診療器具16bを収納する収納部16fを背もたれ11に取り付けた術者用椅子10の外観の構成を示す概略図である。図10に示す術者用椅子10では、背もたれ11の側面に複数の診療器具16bを収納する収納部16fが設けられている。なお、図10では、トレーテーブル16に設けたインスツルメントホルダ16dに代えて、背もたれ11の側面に収納部16fを設ける構成を示した。しかし、術者用椅子10は、トレーテーブル16にインスツルメントホルダ16dを設けつつ、背もたれ11の側面に収納部16fを設けてもよい。その場合、インスツルメントホルダ16dに保持する診療器具16bと、収納部16fに収納する診療器具16bとで診療器具の種類を異ならせてもよい。
【0044】
次に、術者用椅子10に歯科助手用保持部をさらに設けてもよい。図11は、歯科助手用保持部50を取り付けた術者用椅子10の外観の構成を示す概略図である。歯科助手用保持部50は、歯科助手が使用する器具を保持し、トレーテーブル16を取り付けた側とは反対側の術者用椅子10に取り付けられている。歯科助手用保持部50は、座面シート12から延びるアーム11eに回転可能で、かつ着脱可能に取り付けられている。歯科助手用保持部50を取り付けるアームは、背もたれ11や支持部14に設けられてもよい。
【0045】
歯科助手用保持部50は、唾液や冷却水等の吸引を行うサラエバエジェクタ50a、バキュームシリンジ50b、およびエアや水を放出するスリーウェイシリンジが取り出し可能に収納されるユニットである。この歯科助手用保持部50に収納されているサラエバエジェクタ50a、バキュームシリンジ50b、およびエアや水を放出するスリーウェイシリンジは、歯科診療の術者またはアシスタントによって使用され、口腔内の洗浄や吸引等に用いられる。
【0046】
次に、術者用椅子10は、キャスタ15を設けずに床面に固定してもよい。図12は、床面に支持部140が固定された術者用椅子10の外観の構成を示す概略図である。支持部140は、座面シート12と接続する部分が座面シート12を回転可能に支持する構造である。そのため、座面シート12に座った術者は、床面に対する水平面内で自由に向きを変えることができる。座面シート12を回転可能に支持する構造については、何れの構造であってもよい。座面シート12を支持する側と反対側の支持部14は、床面に固定されている。
【0047】
支持部140は、筒状になっており、複数のチューブ16eを通すことができる。そのため、支持部140を通った複数のチューブ16eは、床面に配置されることなく、床下に配置できる。支持部140により複数のチューブ16eを床下に引き出すことで、術者用椅子10の自由な移動を妨げることなく、チューブ16eに躓いて術者などが転倒する虞がなくなる。
【0048】
このように、本実施の形態に係る術者用椅子10は、術者が施術の際に座る術者用椅子10である。術者用椅子10は、術者が座る座面シート12と、座面シート12を回転可能に支持する支持部14と、座面シート12または支持部14に取り付けられ、診療器具16bを置くトレーテーブル16と、を備える。また、本実施の形態に係る歯科用診療ユニットは、患者が診療の際に座る診療椅子20と、上記の術者用椅子10とを備える。
【0049】
このように構成することで、本実施の形態に係る術者用椅子10および歯科用診療ユニット1は、トレーテーブル16を座面シート12または支持部14に取り付けられているので、患者の歯を診療する際に、術者が診療器具16bなどを取り扱い易くなる。
【0050】
トレーテーブル16を所定範囲の移動可能なトレー移動機構をさらに備えることが好ましい。これにより、所定範囲内であれば術者用椅子10に対してトレーテーブル16を手動で回動、水平移動、および垂直移動することができる。
【0051】
トレーテーブル16は、複数の診療器具16bを保持するインスツルメントホルダ16dを有することが好ましい。これにより、術者が診療器具16bなどを取り扱い易くなる。
【0052】
座面シート12または支持部14に着脱可能に取り付けられ、複数の診療器具16bを収納する収納部16fをさらに備えてもよい。これにより、術者の好みに合わせて診療器具16bなどを取り扱い易くなる。
【0053】
支持部14は、複数の診療器具16bに接続された複数のチューブ16eを束ねて貫通させる貫通部14bを有することが好ましい。これにより、術者用椅子10の自由な移動を妨げとならないように構成できる。
【0054】
貫通部14bは、束ねた複数のチューブ16eを、座面シート12の背もたれ側または座面シート12の背もたれ11に対する側面側から引き出し可能に設けられることが好ましい。これにより、術者が移動する側に複数のチューブ16eが配置されず、チューブ16eに躓いて術者などが転倒する虞を低減できる。
【0055】
座面シート12の上部に設けられるモニタ18をさらに備えてもよい。これにより、患者の歯を診療する際に、術者がモニタ18を取り扱い易くなる。
【0056】
モニタ18を所定範囲の移動可能な表示部移動機構をさらに備えることが好ましい。これにより、所定範囲内であれば術者用椅子10に対してモニタ18を手動で回動、水平移動、および垂直移動することができる。
【0057】
座面シート12の下部に設けられ、診療器具16bを制御するフットコントローラ17をさらに備えてもよい。これにより、患者の歯を診療する際に、術者がフットコントローラ17を取り扱い易くなる。
【0058】
フットコントローラ17は、座面シート12の移動とともに移動可能である。これにより、患者の歯を診療する際に、術者の座る位置に合わせてフットコントローラ17も移動し、取り扱い易くなる。
【0059】
トレーテーブル16を取り付けた側の反対側に、歯科助手が使用する器具を保持する歯科助手用保持部50をさらに備えてもよい。これにより、患者の歯を診療する際に、歯科助手が診療器具16bを取り扱い易くなる。
【0060】
歯科助手用保持部50は、座面シート12または支持部14に対して着脱可能に取り付けられることが好ましい。これにより、歯科助手の好みに合わせて診療器具16bなどを取り扱い易くなる。
【0061】
トレーテーブル16は、座面シート12または支持部14に対して着脱可能に取り付けられることが好ましい。これにより、術者の好みに合わせて診療器具16bなどを取り扱い易くなる。
【0062】
座面シート12または支持部14に取り付けられるマイクロスコープ19をさらに備えてもよい。これにより、患者の歯を診療する際に、術者がマイクロスコープ19を取り扱い易くなる。
【0063】
座面シート12を支持する側と反対側の支持部14に設けられ、床面に対して座面シート12を移動可能にするキャスタ15をさらに備えてもよい。これにより、術者用椅子10がキャスタ15を用いて床面上を自由に移動することができる。
【0064】
術者用椅子10に対して診療椅子20が移動可能である。術者用椅子10は、前述したようにトレーテーブル16、モニタ18などが取り付けられ、施術に必要な機能を術者用椅子10側に集中して設けてあり、あたかもコクピットのような構成である。そのため、従来のように、診療椅子20に対して術者用椅子10を動かして、術者が診療しやすいポジションに移動するのではなく、術者用椅子10に対して診療椅子20を動かして、術者が診療しやすいポジションに移動することも考えられる。
【0065】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した説明ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0066】
1 歯科用診療ユニット、10 術者用椅子、11 背もたれ、11a~11d アーム、12 座面シート、13 足置き台、14,140 支持部、14a アーム、14b 貫通部、15 キャスタ、16 トレーテーブル、16a 制御部、16b 診療器具、16c 操作パネル、16d インスツルメントホルダ、16e チューブ、16f 収納部、17 フットコントローラ、18 モニタ、19 マイクロスコープ、20 診療椅子、30 ベースンユニット、40 照明装置、50 歯科助手用保持部。
図1
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