(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-16
(45)【発行日】2023-08-24
(54)【発明の名称】ジ第4級構造指向剤を使用するゼオライト合成
(51)【国際特許分類】
C01B 39/00 20060101AFI20230817BHJP
C01B 39/48 20060101ALI20230817BHJP
【FI】
C01B39/00
C01B39/48
(21)【出願番号】P 2022513365
(86)(22)【出願日】2020-07-22
(86)【国際出願番号】 US2020043005
(87)【国際公開番号】W WO2021040915
(87)【国際公開日】2021-03-04
【審査請求日】2022-04-13
(32)【優先日】2019-08-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】390023630
【氏名又は名称】エクソンモービル・テクノロジー・アンド・エンジニアリング・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】ExxonMobil Technology and Engineering Company
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100221501
【氏名又は名称】式見 真行
(72)【発明者】
【氏名】メイボン,ロス
(72)【発明者】
【氏名】バートン,アレン ダブリュー
(72)【発明者】
【氏名】ブローマン,ヒルダ ビー
(72)【発明者】
【氏名】ウエストン,サイモン シー
【審査官】廣野 知子
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-519043(JP,A)
【文献】国際公開第2017/200607(WO,A1)
【文献】特表2012-505148(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 33/20-39/54
JSTPlus/JSTChina/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)シリコン源ならびに(b)ホウ素源および/またはアルミニウム源を含む水性反応混合物を、構造指向剤の存在下で少なくとも75℃の温度に加熱して、ゼオライトを生成すること含んで成り、
前記構造指向剤は式1:
【化1】
(前記式1中、
nは、1または2であり、
R
1およびR
2の各々は、独立してメチルもしくはエチルであるか、またはR
1およびR
2が結合してピロリジニウム環またはピペリジニウム環を形成し、
R
3は、メチルまたはエチルであり、
X
-は、OH
-、F
-、Cl
-、Br
-、またはI
-である)
で表される、方法。
【請求項2】
前記構造指向剤は、化合物I~VIII:
【化2】
【化3】
【化4】
【化5】
【化6】
【化7】
【化8】
【化9】
のいずれか1つから選択され、または化合物I~VIIIの2以上の混合物である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記水性反応混合物は、約1から約20の前記構造指向剤に対する原子Siのモル比を有する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記水性反応混合物は、約2から約80の原子Siに対する水のモル比を有する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
前記水性反応混合物は、約12から約50の原子Bに対する原子Siのモル比を有する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項6】
前記水性反応混合物は、約12から約50の原子Alに対する原子Siのモル比を有する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項7】
前記水性反応混合物におけるSi源は、シリカのコロイド懸濁液、沈降シリカアルカリ金属シリケート、ヒュームドシリカ、シリカヒドロゲル、水和シリカ、テトラアルキルオルトシリケート、およびそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項8】
前記水性反応混合物におけるB源は、ホウ酸、水溶性ホウ酸塩、およびそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項9】
加熱することは、2時間から50日間行われる、請求項1または2に記載の方法。
【請求項10】
前記水性反応混合物は、ゼオライトシードをさらに含んで成る、請求項1または2に記載の方法。
【請求項11】
前記ゼオライトはボロシリケートゼオライトであり、合成された形態において、前記ボロシリケートゼオライトは、以下のd-間隔(d(Å))および相対強度を含むX線回折パターンを有する、請求項1または2に記載の方法。
【表1】
【請求項12】
ゼオライトを350℃から約1000℃で焼成して、焼成ゼオライトを生成する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項13】
前記ゼオライトは
焼成ボロシリケートゼオライトであり、前記焼成ボロシリケートゼオライトは、以下のd-間隔(d(Å))および相対強度を含むX線回折パターンを有する、請求項12に記載の方法。
【表2】
【請求項14】
約0.24cm
3/g~約0.28cm
3/gの微細孔体積を有し、以下のd-間隔および相対強度を含むX線回折パターンを有するボロシリケートゼオライトを含んで成る、組成物。
【表3】
【請求項15】
約0.24cm
3/g~約0.28cm
3/gの微細孔容積を有し、以下のd-間隔および相対強度を含むX線回折パターンを有するボロシリケートゼオライト、アルミノシリケートゼオライト、またはアルミノボロシリケートゼオライトを含んで成る、組成物。
【表4】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
背景技術
本開示は、ゼオライト組成物、ジ第四級指向剤を使用するその調製方法、および有機変換および収着プロセスにおけるその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ゼオライト材料は、吸着剤としての有用性を有し、様々なタイプの炭化水素変換反応に対して触媒特性を有することが知られている。特定のゼオライト材料は、X線回折によって決定される明確な結晶構造を有する規則正しい多孔質結晶材料であり、その中には多数の空洞があり、これらはさらに小さなチャネルまたは細孔の数によって相互接続されている可能性がある。これらの空洞および細孔は、特定のゼオライト材料内でサイズが均一である。これらの細孔の寸法は、特定の寸法の収着分子を可能にする一方で、より大きな寸法の分子をブロックするようなものであるため、これらの材料は「モレキュラーシーブ」として知られるようになり、これらの特性を利用するために様々な方法で利用されている。
【0003】
天然および合成の両方のそのようなモレキュラーシーブは、多種多様な結晶性シリケート(またはケイ酸塩;silicate)および置換シリケートを含み、シリコンは、部分的または完全に他の四価元素で置き換えられている。これらのシリケートは、SiO4四面体の剛性のある三次元フレームワーク、および任意で三価元素酸化物、例えば、AlO4および/またはBO4の四面体として説明することができ、四面体は酸素原子の共有によって架橋されており、これにより、全三価元素およびシリコン原子の酸素原子に対する局所的な比率(local ratio)は1:2になる。三価元素を含む四面体のイオン原子価(electrovalence)は、余分なフレームワークカチオン、例えば、アルカリ金属またはアルカリ土類金属カチオンの結晶に含まれることによってバランスがとられている。これは、例えば、Ca2+、Sr2+、Na+、K+、またはLi+のようなさまざまなカチオンからの電荷の数に対する3価元素(例えば、アルミニウムなど)の比率が1に等しいことを表すことができる。あるタイプのカチオンは、従来の方法でイオン交換技術を利用して、別のタイプのカチオンと完全にまたは部分的に交換することができる。そのようなカチオン交換によって、カチオンの適切な選択によって所与のシリケートの特性を変えることが可能であった。
【0004】
触媒作用に適用されるモレキュラーシーブには、天然に存在するまたは合成の結晶性モレキュラーシーブが含まれる。これらのモレキュラーシーブの例には、大孔径ゼオライト(large pore zeolite)、中孔径ゼオライト(intermediate pore size zeolite)、および小孔径ゼオライト(small pore zeolite)が含まれる。これらのゼオライトおよびそれらのアイソタイプは、Ch.Baer ocher、L.B.McCusker、D.H.Olson編「ゼオライトフレームワークタイプのアトラス」、Elsevier、第6改訂版、2007年に記載されており、これは参照により本明細書に組み込まれる。大細孔ゼオライトは一般に6~7.5Åの細孔サイズを有し、LTL、VFI、MAZ、FAU、OFF、*BEA、およびMOR(これらのフレームワークの多く、例えば、BEAおよびMORには7.0Åの細孔がないことに注意されたい)フレームワーク型ゼオライト(ゼオライト命名法のIUPAC委員会)を含む。大孔径ゼオライトの例には、マザイト、オフレタイト、ゼオライトL、VPI-5、ゼオライトY、ゼオライトX、オメガ、およびベータが含まれる。中孔径ゼオライトは、一般に、約5Åから7Å未満までの細孔サイズを有し、例えば、MFI、MEL、EUO、MTT、MFS、AEL、AFO、HEU、FER、MWW、およびTONフレームワーク型ゼオライト(ゼオライト命名法のIUPAC委員会)を含む。中孔径ゼオライトの例としては、ZSM-5、ZSM-11、ZSM-22、MCM-22、シリカライト-1、およびシリカライト-2を含む。小孔径ゼオライトは、約3Åから5Å未満までの細孔サイズを有し、例えば、CHA、ERI、KFI、LEV、およびLTAフレームワークタイプのゼオライト(ゼオライト命名法のIUPAC委員会)を含む。小孔孔ゼオライトの例としては、ZK-4、SAPO-34、SAPO-35、ZK-14、SAPO-42、ZK-21、ZK-22、ZK-5、ZK-20、ゼオライトA、菱沸石、ゼオライトT、およびALPO-17を含む。
【0005】
多くのゼオライトは、例えば、有機窒素化合物のような有機構造指向剤の存在下で合成される。例えば、ZSM-5は、テトラプロピルアンモニウムカチオンの存在下で合成され得、ゼオライトMCM-22は、ヘキサメチレンイミンの存在下で合成され得る。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
概要
本開示は、ゼオライト組成物、ジ第4級構造指向剤(SDA)を使用するその調製方法、および有機変換プロセスにおける前記ゼオライトの使用に関する。
【0007】
第1実施形態は、(a)シリコン源ならびに(b)ホウ素源および/またはアルミニウム源を含む水性反応混合物を、構造指向剤の存在下で少なくとも75℃の温度に加熱して、ゼオライトを生成すること含んで成り、
前記構造指向剤は式1:
【化1】
(前記式1中、
nは、1または2であり、
R
1およびR
2の各々は、独立してメチルもしくはエチルであるか、またはR
1およびR
2が結合してピロリジニウム環またはピペリジニウム環を形成し、
R
3は、メチルまたはエチルであり、
X
-は、OH
-、F
-、Cl
-、Br
-、またはI
-である)
で表される、方法である。
【0008】
第2実施形態は、C2/mのフレームワーク対称ならびに3.5Å~4.5Åのa、20.1Å~21.1Åのb、15.5~16.5Åのcおよび97°~98°のβの単位セルを有する、ボロシリケートゼオライト、アルミノシリケートゼオライト、またはアルミノボロシリケートゼオライトを含んで成る、組成物である。
【0009】
第3実施形態は、約0.24cm
3/g~約0.28cm
3/gの微細孔体積(またはミクロポア体積;micropore volume)を有し、以下のd-間隔および相対強度を含むX線回折パターンを有するボロシリケートゼオライトを含んで成る、組成物である。
【表1】
【0010】
第4実施形態は、約0.24cm
3/g~約0.28cm
3/gの微細孔体積を有し、以下のd-間隔および相対強度を含むX線回折パターンを有するボロシリケートゼオライト、アルミノシリケートゼオライト、またはアルミノボロシリケートゼオライトを含んで成る、組成物である。
【表2】
【図面の簡単な説明】
【0011】
図面の簡単な説明
以下の図は、本開示の特定の態様を説明するために含まれており、排他的な実施形態と見なされるべきではない。開示される主題は、当業者に起こり、および本開示の利益を有するように、形態および機能においてかなりの修正、変更、組み合わせ、および同等物が可能である。
【0012】
【
図1】
図1は、実施例8で得られた材料の粉末XRDパターンを示している。
【0013】
【
図2A】
図2Aは、実施例8の例示的なSEM画像を示している。
【
図2B】
図2Bは、実施例8の例示的なSEM画像を示している。
【0014】
【
図3】
図3は、実施例9で得られた生成物のSEM画像を示している。
【発明を実施するための形態】
【0015】
詳細な説明
【0016】
本開示は、ゼオライト組成物(例えば、ボロシリケート(またはホウケイ酸塩;borosilicate)、アルミノシリケート(またはアルミノケイ酸塩;aluminosilicate)、およびアルミノボロシリケート(またはアルミノホウケイ酸塩;aluminoborosilicate))、ジ第4級(diquaternary)SDAを使用してそのようなゼオライトを調製するための方法、および有機変換プロセスにおける前記ゼオライトの使用に関する。より具体的には、ジ第4級SDAは、アンモニウム末端基を接続する鎖上のC5およびC6環を含む。そのようなジ第4級SDAは大きく、その結果、大孔径サイズを有するゼオライトを生成する。大細孔径ゼオライト(large pore size zeolite)は、プロピレンおよびベンゼンのアルキル化反応ならびに芳香族トランスアルキル化反応のような触媒化炭化水素反応(catalyzed hydrocarbon reaction)に役立つ。
【0017】
定義
本明細書の「Aおよび/またはB」などの句で使用される「および/または」という用語は、「AおよびB」、「AまたはB」、「A」、および「B」を含むことを意図している。
【0018】
本明細書で使用される場合、「水性媒体」という用語は、主に水、特に約90体積%以上の水を含んで成る液体をいう。適切な水性媒体は、水もしくは水と水混和性有機溶媒との混合物を含んで成り得るか、または本質的にそれらからなり得る。
【0019】
本明細書で使用される場合、「三価(trivalent)」という用語は、+3酸化状態を有する原子をいう。
【0020】
本明細書で使用される場合、「四価(tetravalent)」という用語は、+4酸化状態を有する原子をいう。
【0021】
本明細書で使用される場合、「表面配向剤(surface directing agent)」および「SDA」という用語は、ゼオライト合成を促進し得るテンプレート化合物(templating compound)をいう。
【0022】
本明細書で使用される場合、「焼成する(calcine)」、「焼成(calcination)」、および似た異表記という用語は、酸素含有環境(例えば、空気または酸素)において特定の温度を超えて加熱するプロセスをいう。
【0023】
本明細書で使用される場合、「水熱合成」という用語は、水および反応物が、特定の温度で特定の時間、密閉容器内で加熱されるプロセスをいう。
【0024】
ゼオライトEMM-59合成
本明細書で使用される場合、ゼオライトEMM-59は、一般に、ボロシリケートゼオライトEMM-59、アルミノシリケートゼオライトEMM-59、およびアルミノボロシリケートゼオライトEMM-59を包含するために使用される。
【0025】
ホウ素源および/またはアルミニウム源とともにシリコン源は、本明細書に記載のジ第四級SDAの存在下で組み合わせて、反応混合物を形成し、その後加熱してEMM-59ゼオライトを生成することができる。
【0026】
シリカ源の例としては、これらに限定されないが、シリカのコロイド懸濁液、沈降シリカアルカリ金属シリケート、ヒュームドシリカ、シリカヒドロゲル、水和シリカ、テトラアルキルオルトシリケート、およびそれらの任意の組み合わせが挙げられる。
【0027】
ホウ素源の例としては、これらに限定されないが、ホウ酸、水溶性ホウ酸塩、およびそれらの任意の組み合わせが挙げられる。
【0028】
アルミニウム源の例としては、これらに限定されないが、硝酸アルミニウム、硫酸アルミニウム、アルミン酸ナトリウム、酸化アルミニウム、アルミナゾル、アルミナ三水和物、およびそれらの任意の組み合わせが挙げられる。
【0029】
反応混合物における原子Bに対する原子Siのモル比は、約5~約50、好ましくは約5~約30、より好ましくは約10~約20の範囲であり得る。
【0030】
反応混合物における原子Alに対する原子Siのモル比は、約5~約50、好ましくは約5~約30、より好ましくは約10~約20の範囲であり得る。
【0031】
一般に、ジ第4級SDAは、式1:
【化2】
(式1中、
nは、1または2であり、
R
1およびR
2は、独立にメチル、エチルであり得、またはR
1およびR
2が結合してアンモニウム末端基のカチオン性窒素原子を有するピロリジニウム環またはピペリジニウム環を形成し得、
R
3は、メチルまたはエチルであり得る。
対イオンX
-は、OH
-、F
-、Cl
-、Br
-、またはI
-であり得る)
の化合物として説明することができる。より具体的には、ジ第4級SDAは、2つのアンモニウム末端基を接続するC5線状鎖上にシクロペンチルC5環またはシクロヘキシルC6環を含んで成る化合物として説明することができる。アンモニウム末端基の例としては、これらに限定されないが、N-エチルピロリジニウム、N-エチルピペリジニウム、N,N-ジエチル-N-メチルアンモニウム、N-エチル-N,N-ジメチルアンモニウム、およびN,N,N-トリエチルアンモニウムが挙げられる。ジ第4級SDAの特定の例としては、これらに限定されないが、化合物I~VIII:
【化3】
【化4】
【化5】
【化6】
【化7】
【化8】
【化9】
【化10】
が挙げられ、ここで、X
-は、OH
-、F
-、Cl
-、Br
-、またはI
-であり得る。
【0032】
反応混合物におけるSDAに対する原子Siのモル比は、約1~約20、好ましくは約2~約15、より好ましくは約3~約10の範囲であり得る。
【0033】
いくつかの場合、反応混合物に少量のゼオライトEMM-59を播種する(またはシードする;seed)ことができる。反応混合物におけるシード量は、反応混合物におけるシリカ(SiO2)の重量に基づいて約0.1重量%~約10重量%、好ましくは約0.5重量%~約7重量%、より好ましくは約1重量%~約5重量%であり得る。シードは、ゼオライトEMM-59の以前の水熱合成から得ることができる。本開示によれば、シードはゼオライトの結晶化を促進し得るが、本明細書に開示されるゼオライト合成プロセスは、シードを使用せずに進行し得ることも理解されたい。シードを使用しない場合、ゼオライトの結晶化が遅くなる可能性があり、その場合、より長い水熱反応時間を利用することができる。
【0034】
反応混合物における原子Siに対する水のモル比は、約2~約80、好ましくは約10~約65、より好ましくは約15~約50の範囲であり得る。
【0035】
ゼオライトEMM-59は、ゼオライトEMM-59を生成するために少なくとも約75℃、好ましくは約75℃~約200℃、より好ましくは約100℃~約185℃、さらに好ましくは約150℃~約175℃の温度での水熱合成条件下で、調製することができる。適切な水熱合成条件は、例えば、オートクレーブ容器または様々なプロセス構成の「ボム(bomb)」のような容器内の密封された水溶液または反応物の懸濁液を加熱することを含み得る。いくつかの場合、シリコン源、ホウ素源および/またはアルミニウム源、ならびにジ第4級SDAを水性媒体と組み合わせた後、ゲルが形成され得る。ゲル形成は、存在するシリコン原子ならびにホウ素原子および/またはアルミニウム原子の量に依存し得る。水熱合成条件下でのゲルを加熱することは、同様に、本明細書の開示によるゼオライト形成をもたらし得る。
【0036】
ゼオライトEMM-59の合成は、少なくとも約2時間、好ましくは約48時間~約50日、より好ましくは約72時間~約40日、より好ましくは、約7日~約30日行って、ゼオライトEMM-59を生成することができる。ゼオライトEMM-59シードを合成に使用する場合、シードを使用しない場合と比較して、結晶化までの時間が短くなる可能性がある。
【0037】
反応の時間および温度は相互に関連している。通常、温度が低いほど反応時間は長くなる。さらに、シードが含まれている場合、より低い反応温度でさえ、反応時間が短縮され得る。
【0038】
本開示の生成されたゼオライトEMM-59は、好ましくはBおよび/またはAlよりも著しく高い濃度のSiを有する。反応混合物から生成される場合、ゼオライトEMM-59は、独立して、約8以上、好ましくは約12~約50、より好ましくは約15~約40の原子Bに対する原子Siのモル比および/または原子Alに対する原子Siのモル比を有し得る。
【0039】
水性媒体からゼオライトを単離することは、水性媒体を濾過、デカンテーション、および/または遠心分離して、固体形態のゼオライトを得ることを含み得る。水性媒体から分離されたら、ゼオライトを水または別の適切な流体で洗浄して、水熱合成から残っている不純物を除去し得る。一般に、ジ第4級SDAは、この時点でゼオライトのフレームワークシリケートと結合したままであり、洗浄中に除去されない。水熱合成中にゼオライトのフレームワークシリケート内に閉塞されない過剰なジ第4級SDAは、この時点での洗浄中に除去される。
【0040】
ゼオライトの単離の前または後に、ボロシリケートゼオライトEMM-59を、高温(例えば、約75℃~約200℃、約100℃~約185℃、または約150℃~約175℃)でアルミニウム塩(例えば、硝酸アルミニウム)で適切な時間(例えば、約2時間~約30日、または約6時間~約7日、または約12時間~約72時間)処理して、ボロシリケートゼオライトEMM-59におけるホウ素原子の少なくとも一部をアルミニウム原子で置き換えて、アルミノボロシリケートゼオライトEMM-59またはアルミノシリケートゼオライトEMM-59を生成することができる。したがって、アルミノボロシリケートゼオライトEMM-59およびアルミノシリケートゼオライトEMM-59は、本明細書に記載の方法によって、または本明細書に記載の原子置換法によって直接製造することができる。
【0041】
いくつかの場合、ボロシリケートゼオライトEMM-59中のホウ素の少なくとも一部、またはアルミノケイ酸塩ゼオライトEMM-59中のアルミニウムの少なくとも一部をその構造から放出または除去して、ボロシリケートゼオライトEMM-59におけるBに対するSiの比をさらに増加させることができる。これは、ボロシリケートゼオライトEMM-59を酸で処理するか、熱湯で沸騰させることによって達成できる。
【0042】
ゼオライトEMM-59を処理するのに適した酸の例としては、これらに限定されないが、硫酸、塩酸、酢酸、硝酸、およびそれらの任意の組み合わせが挙げられる。
【0043】
ホウ素を放出または除去するように処理された本開示のボロシリケートゼオライトEMM-59は、約11以上の原子Bに対する原子Siのモル比を有することができる。ほとんどすべてのBを除去できるため、原子Bに対する原子Siのモル比は無限に高くなる可能性がある。ホウ素を放出または除去するように処理された本開示のボロシリケートゼオライトEMM-59は、ボロシリケートゼオライトEMM-59の5重量%未満、またはボロシリケートゼオライトEMM-59の1重量%未満、ボロシリケートゼオライトEMM-59の0.1重量%未満、またはボロシリケートRhoゼオライトの0.01重量%未満のホウ素を含むことができる。
【0044】
本開示のゼオライトEMM-59は、酸素含有環境(例えば、空気、酸素に富む空気、または酸素)中でさらに焼成されて、ジ第4級SDAを含まないまたは実質的に含まない焼成ゼオライトを形成し得る。ゼオライトEMM-59(合成後に処理されるか、または製造されたままである)は、約350℃~約1000℃、好ましくは約400℃~約700℃、より好ましくは約450℃~約650℃の温度で焼成することができる。焼成は、ジ第4級SDAを酸化してガス状生成物にし、それがその後ゼオライトの細孔から出る可能性がある。ゼオライトEMM-59のフレームワークは、粉末X線回折スペクトルの特徴的な散乱角が、焼成前のゼオライトと焼成後のゼオライトとの間でほとんど変化しないことから明らかなように、焼成プロセスの影響を実質的に受けない。適切な焼成時間は、約1時間~約48時間、またはそれ以上の範囲であり得る。
【0045】
ゼオライトEMM-59(合成後に処理されるか、または製造されたままである)は、約0.02ミクロン~約25ミクロン、好ましくは約0.04ミクロン~約1ミクロンの平均結晶寸法を有することができる。粒子サイズは、走査型電子顕微鏡で結晶を画像化し、少なくとも100個の結晶の直径を平均することによって決定できる。結晶はファセット形状をしている。したがって、直径は、結晶の中心を通って一方の側からもう一方の側に通過する最大距離として定義される。
【0046】
ゼオライトEMM-59(合成後に処理されるか、または製造されたままである)は、約500m2/g~約1000m2/g、好ましくは約600m2/g~約800m2/g、より好ましくは、約640m2/g~約720m2/gの表面積を有することができる。表面積は、窒素吸着を伴うBrunauer、Emmett and Teller(BET)分析(ASTM D4365-13)を使用して決定される。
【0047】
ゼオライトEMM-59(合成後に処理された、または製造されたままである)は、約0.15cm3/gから約0.50cm3/g、好ましくは約0.20cm3/g~約0.40cm3/g、より好ましくは約0.22cm3/g~約0.30cm3/gの微細孔体積を有することができる。微細孔体積は、ASTMD4365-13による窒素吸着によって決定される。
【0048】
ゼオライトEMM-59(合成後に処理されるか、または製造されたままである)は、C2/mのフレームワーク対称性および表1による単位セル測定結果(measurements)を有することができる。
【表3】
合成され処理されたままの(例えば、焼成または酸処理された)ボロシリケートゼオライトEMM-59は、本質的な(最も強い)反射線である特性X線回折(XRD)パターンを有することができ、そのうち表2(合成形態)および表3(焼結形態)に表すことができる。変化は、合成で使用される特定の組成およびSDAの関数として発生する可能性がある。このため、相対的な積分強度(VS=非常に強い、S=強い、SM=中程度の強い、W=弱い)およびd間隔は、表2および表3の範囲として表される。アルミノシリケートゼオライトおよびアルミノボロシリケートゼオライトは、表3に示される範囲内の特徴的なX線回折(XRD)パターンを有する。
【0049】
【0050】
【0051】
用途
有機化合物(炭化水素)変換プロセスで使用される多くの触媒の場合のように、ゼオライトEMM-59を、有機変換プロセスで使用される温度および他の条件に耐性のある別の材料と組み込むことが望ましい場合がある。そのような材料には、活性材料および不活性材料、合成ゼオライトまたは天然ゼオライト、ならびに粘土、シリカのような無機材料、および/またはアルミナのような金属酸化物が含まれ得る。後者は、天然に存在するか、シリカおよび金属酸化物の混合物を含むゼラチン状の沈殿物またはゲルの形態である可能性がある。ゼオライトEMM-59と組み合わせた材料の使用(すなわち、それと組み合わせて、および/または活性である新しい結晶の合成中に存在する)は、特定の有機変換プロセスにおける触媒の変換および/または選択性を変える傾向がある。不活性材料は、所与のプロセスにおける変換量を制御するための希釈剤として適切に機能し得、反応速度を制御するための他の(より費用のかかる)手段を使用せずに、経済的かつ秩序ある方法で生成物を得ることができる。これらの材料は、商業的操作条件下での触媒の破砕強度を改善するために、天然に存在する粘土(例えば、ベントナイトおよびカオリン)に組み込まれ得る。前記材料(すなわち、粘土、酸化物など)は、触媒の結合剤として機能することができる。商業的使用においては、触媒が粉末状の材料(摩滅)に分解するのを防ぐことが望ましい場合があるので、良好な破砕強度を有する触媒を提供することが望ましい場合がある。これらの粘土および/または酸化物結合剤は、通常、触媒の破砕強度を改善する目的でのみ使用されてきた。
【0052】
ゼオライトEMM-59と複合化することができる天然に存在する粘土は、限定されないが、サブベントナイトを含むモンモリロナイトおよびカオリンファミリー、ならびにディキシー、マクナミー、ジョージア、およびフロリダ粘土として一般に知られるカオリンまたは主な鉱物成分がハロイサイト、カオリナイト、ディッカイト、ナクル石、またはアノーサイトであるその他のものが挙げられる。そのような粘土は、最初に採掘された、または最初に焼成、酸処理、または化学修飾を受けたままの状態で使用することができる。ゼオライトEMM-59との複合化に有用な結合剤は、追加的または代替的に、シリカ、ジルコニア、チタニア、マグネシア、ベリリア、アルミナ、およびそれらの混合物のような無機酸化物が挙げられる。
【0053】
代替的に、または前述の材料に加えて、ゼオライトEMM-59は、シリカ-アルミナ、シリカ-マグネシア、シリカ-ジルコニア、シリカ-トリア、シリカ-ベリリア、シリカ-チタニアならびに/またはシリカ-アルミナ-トリア、シリカ-アルミナ-ジルコニア、シリカ-アルミナ-マグネシア、およびシリカ-マグネシア-ジルコニアのような1または複数の三元組成物のような多孔質マトリックス材料と複合化することができる。
【0054】
ゼオライトEMM-59および無機酸化物マトリックスの相対的比率は、ゼオライトEMM-59含有量が約1重量%~約90重量%の範囲であり、より一般的には、大きく変動する可能性があり、特に複合材料がビーズの形態で調製される場合、約2重量%~約80重量%の範囲である。例示的なマトリックス含有量の範囲は、約10重量%~約50重量%を含むことができる。
【0055】
本明細書で使用される数値範囲には、その範囲に記載されている数が含まれる。例えば、「1重量%~10重量%」の数値範囲は、記載された範囲内に1重量%および10重量%を含む。
【0056】
例示的な実施形態
本発明の第1の例示的な実施形態は、(a)シリコン源および(b)ホウ素源および/またはアルミニウム源を含む水性反応混合物を、構造指向剤の存在下で少なくとも75℃の温度に加熱して、ゼオライトを生成することを含んで成る方法であり、前記構造指向剤は式1で表され、nは1または2であり、R1およびR2の各々は、独立してメチルもしくはエチルであるか、またはR1およびR2が結合してピロリジニウム環またはピペリジニウム環を形成し、R3はメチルまたはエチルであり、X-は、OH-、F-、Cl-、Br-、またはI-である。この例示的な実施形態は、以下のうちの1または複数を含むことができる:要素1:構造指向剤は、化合物I~VIIIのいずれか1つ、または化合物I~VIIIの2以上の混合物から選択される;要素2:水性反応混合物は、約1~約20の構造指向剤に対する原子Siのモル比を有する;要素3:水性反応混合物は、約2~約80の原子Siに対する水のモル比を有する;要素4:水性反応混合物は、約12~約50の原子Bに対する原子Siのモル比を有する;要素5:水性反応混合物は、約12~約50の原子Alに対する原子Siのモル比を有する;要素6:水性反応混合物中のSi源は、シリカのコロイド懸濁液、沈降シリカアルカリ金属シリケート、ヒュームドシリカ、シリカヒドロゲル、水和シリカ、テトラアルキルオルトシリケート、およびそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される;要素7:水性反応混合物中のB源は、ホウ酸、水溶性ホウ酸塩、およびそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される;要素8:加熱することは2時間~50日間行われる;要素9:水性反応混合物は、ゼオライトシードをさらに含んで成る;要素10:ゼオライトはボロシリケートゼオライトであり、合成されたままの形態で、ボロシリケートゼオライトは、表2に示されるd間隔(d(Å))および相対強度を含むX線回折パターンを有する;要素11:ゼオライトを350℃~約1000℃で焼成して、焼成ゼオライトを生成することをさらに含んで成る;ならびに要素12:ゼオライトはボロシリケートゼオライトであり、焼成されたボロシリケートゼオライトは、表3に示されるd間隔(d(Å))および相対強度を含むX線回折パターンを有する。例示的な組み合わせとしては、これらに限定されないが、要素1~11の2以上が含まれる;要素11の、要素12との組み合わせ;要素1~10の1または複数を要素11と組み合わせて、任意で要素12とのさらなる組み合わせ。
【0057】
別の例示的な実施形態は、任意で1または複数の要素1~11を含む、または任意で1または複数の要素1~10を元素11と組み合わせて、任意でさらに要素12を組み合わせて含む第1の例示的な実施形態の方法によって生成されるゼオライトである。
【0058】
さらに別の例示的な実施形態は、C2/mのフレームワーク対称性と、3.5Å~4.5Åのa、20.1Å~21.1Åのb、15.5~16.5Åのc、および97°~98°のβの単位セルとを有するボロシリケートゼオライト、アルミノシリケートゼオライト、またはアルミノボロシリケートゼオライトを含んで成る組成物である。
【0059】
別の例示的な実施形態は、約0.24cm3/g~約0.28cm3/gの微細孔体積を有し、表2に示されるd-間隔および相対強度を含むX線回折パターンを有するボロシリケートゼオライトを含む組成物である。
【0060】
さらに別の例示的な実施形態は、約0.24cm3/g~約0.28cm3/gの微細孔体積を有し、表3に示すd-間隔および相対強度を含むX線回折パターンを有する、ボロシリケートゼオライト、アルミノシリケートゼオライト、またはアルミノボロシリケートゼオライトを含んで成る組成物である。
【0061】
本明細書に記載の実施形態のより良い理解を容易にするために、様々な代表的な実施形態の以下の例が与えられる。以下の例は、本開示の範囲を制限または定義するために読まれるべきではない。
【実施例】
【0062】
実施例1:1,1'-(シクロヘキサン-1,1-ジイルビス(エタン-2,1-ジイル))ビス(1-エチルピロリジン-1-イウム)水酸化物(化合物I)の合成
1,1’-(シクロヘキサン-1,1-ジイルビス(エタン-2,1-ジイル))ビス(1-エチルピロリジン-1-イウム)水酸化物は、以下のように、3-オキサスピロ-[5,5]-ウンデカン-2,4-ジオンから4段階で合成された。次に、1,1'-(シクロヘキサン-1,1-ジイルビス(エタン-2,1-ジイル))ビス(1-エチルピロリジン-1-イウム)水酸化物を、以下にさらに概説するゼオライト合成における指向剤として使用した。
【0063】
2,2'-(シクロヘキサン-1,1-ジイル)ビス(1-(ピロリジン-1-イル)エタン-1-オン)の合成:
【化11】
【0064】
攪拌棒を備えた火炎乾燥した丸底フラスコ500mLに、無水テトラヒドロフラン100mLを加えた。3-オキサスピロ-[5,5]-ウンデカン-2,4-ジオン(9.11g、50.0mmol)を前記フラスコに加え、該フラスコを窒素でパージした。ピロリジン(10.7g、150.0mmol、3当量(eq))をシリンジで加え、反応混合物を95℃で1時間還流した。熱を除去し、反応物を室温まで冷却した。ピリジン(13.1g、165mmol、3.3当量)をシリンジで加え、反応混合物を0℃に冷却した。プロピルホスホン酸無水物溶液(EtOAc中50重量%、63.64g、100mmol、2当量)をビーカーからゆっくりと注ぎ(無水物溶液は非常に粘稠である)、反応を窒素下で氷浴中で一晩攪拌した(氷を溶かした)。10%HCl水溶液170mLを反応混合物に加えた。この溶液を24時間激しく攪拌した。反応混合物を分液漏斗500mLに移し、塩化メチレン75mLで3回抽出した。有機物を硫酸ナトリウムで乾燥させ、予め秤量した丸底に重力濾過し、溶媒を真空下で除去して油(15.32g、50.0mmol、100%収率)を生成した。その生成物は、さらに精製することなく次のステップのために十分に純粋であった。この最初のステップの生成物は、予想される1H NMRスペクトルを有していた。1H NMR(400MHz,CDCl3):δ ppm:3.48(t,4H),3.40(t,4H),2.60(s,4H),1.90(m,4H),1.80(m,4H),1.68(m,4H),1.43(m,6H).
【0065】
1,1’-(シクロヘキサン-1,1-ジイルビス(エタン-2,1-ジイル))ジピロリジンの合成:
【化12】
【0066】
火炎乾燥した、攪拌棒を備えた3つ口丸底フラスコ1000mLのに、カニューレを介して無水テトラヒドロフラン400mLを加えた。ゆっくりと、水素化アルミニウムリチウム粉末(4.74g、125mmol、2.5当量)を激しく攪拌している溶液に加えた。これとは別に、この合成の最初のステップで得られたジアミド(15.32g、50.0mmol)を無水テトラヒドロフラン100mLに溶解し、火炎乾燥した液体添加漏斗に移した。ジアミド溶液を水素化アルミニウムリチウム懸濁液にゆっくりと滴下した。ジアミド溶液を完全に加えたら、ゴム栓をガラス栓に交換し、反応物を窒素下で2時間還流した後、室温で一晩攪拌した。反応容器に蓋をせず、脱イオン水4.74mLを液体添加漏斗に加え、攪拌反応混合物に滴下して加えた。これに続いて、10%NaOH水溶液4.74mLを液体添加漏斗に加え、攪拌混合物に滴下して加えた。次に、脱イオン水14.22mLを攪拌混合物に滴下し、その混合物を室温で1時間攪拌した。反応混合物をセライトパッドを通して濾過し、固体水酸化アルミニウム塩をジエチルエーテル50mLで3回洗浄した。エーテル濾液を硫酸ナトリウムで乾燥させ、予め秤量した丸底フラスコに重力濾過し、溶媒を真空下で除去して、無色の油(12.79g、46.0mmol、92%収率)を生成した。生成物は、さらに精製することなく次のステップのために十分に純粋であった。この2番目のステップの生成物は、予想される1H NMRスペクトルを有していた。1H NMR(400MHz,CDCl3):δ ppm:2.49(m,8H),2.39(m,4H),1.75(m,8H),1.49(m,4H),1.35~1.45(m,6H),1.29(t,4H).
【0067】
1,1’-(シクロヘキサン-1,1-ジイルビス(エタン-2,1-ジイル))ビス(1-エチルピロリジン-1-イウム)ヨウ化物の合成:
【化13】
【0068】
この合成の二番目のステップから得られたジアミン(12.79g、46.0mmol)を、攪拌棒を備えた丸底フラスコ250mL中のアセトン100mLに溶解させた。ヨードエタン(35.96g、230.66mmol、5当量)をシリンジで加え、反応物を、ゆるく蓋をして72時間、室温で攪拌した。非常に濁った反応混合物を中型グレードのフリットに注ぎ、白色の固体をアセトン20mLで3回洗浄し、乾燥させて、純粋な生成物(21.73g、36.8mmol、80%収率)を生成した。この3番目のステップの生成物は、予想される1HNMRスペクトルを有していた。1H NMR(400MHz,D2O):δ ppm:3.25~3.45(m,8H),3.20(q,4H),3.10(m,4H),2.00(m,8H),1.58(m,4H),1.30(m,4H),1.22(m,6H),0.80(t,6H).
【0069】
1,1'-(シクロヘキサン-1,1-ジイルビス(エタン-2,1-ジイル))ビス(1-エチルピロリジン-1-イウム)水酸化物の合成:
【化14】
【0070】
1,1'-(シクロヘキサン-1,1-ジイルビス(エタン-2,1-ジイル))ビス(1-エチルピロリジン-1-イウム)ヨウ化物を水に溶解し、Dowex LC NG水酸化物交換樹脂700mLに加えることにより、その水酸化物形態に変換した。その交換樹脂に一晩接触させた後、樹脂を濾過により除去し、脱イオン水で洗浄した。次に、その水性画分を合わせ、減圧下で約60℃で濃縮した。この水溶液の水酸化物濃度は、0.1N HCl標準溶液で滴定して測定したところ14.9重量%であった。
【0071】
実施例2:1,1'-(シクロペンタン-1,1-ジイルビス(エタン-2,1-ジイル))ビス(1-エチルピロリジン-1-イウム)水酸化物(化合物II)の合成
1,1’-(シクロペンタン-1,1-ジイルビス(エタン-2,1-ジイル))ビス(1-エチルピロリジン-1-イウム)水酸化物は、以下のように3,3-テトラメチレングルタル酸無水物から4段階で合成された。次に、1,1’-(シクロペンタン-1,1-ジイルビス(エタン-2,1-ジイル))ビス(1-エチルピロリジン-1-イウム)水酸化物を、以下にさらに概説するゼオライト合成における指向剤として使用した。
【0072】
2,2'-(シクロペンタン-1,1-ジイル)ビス(1-(ピロリジン-1-イル)エタン-1-オン)の合成:
【化15】
【0073】
火炎乾燥した、攪拌棒を備えた丸底フラスコ500mLに、無水テトラヒドロフラ100mLンを加えた。3,3-テトラメチレングルタル酸無水物(10.0g、59.5mmol)を前記フラスコに加え、該フラスコを窒素でパージした。ピロリジン(12.69g、178.4mmol、3当量)をシリンジで加え、反応混合物を95℃で1時間還流した。熱を除去し、反応物を室温まで冷却した。ピリジン(15.53g、196.4mmol、3.3当量)をシリンジで加え、反応混合物を0℃に冷却した。プロピルホスホン酸無水物溶液(EtOAc中50重量%、75.73g、119.0mmol、2当量)をビーカーからゆっくりと注ぎ(無水物溶液は非常に粘稠である)、反応を窒素下で氷浴中で一晩攪拌した(氷を溶かした)。10%HCl水溶液200mLを反応混合物に加えた。この溶液を24時間激しく攪拌した。反応混合物を分液漏斗500mLに移し、塩化メチレン75mLで3回抽出した。有機物を硫酸ナトリウムで乾燥させ、予め秤量した丸底に重力濾過し、溶媒を真空下で除去して油(16.87g、57.7mmol、97%収率)を生成した。生成物は、さらに精製することなく次のステップのために十分に純粋であった。この最初のステップの生成物は、予想される1H NMRスペクトルを有していた。1H NMR(400MHz,CDCl3):δ ppm:3.30(m,8H),2.50(s,4H),1.78(m,4H),1.68(m,4H),1.60(m,4H),1.47(m,4H).
【0074】
1,1’-(シクロペンタン-1,1-ジイルビス(エタン-2,1-ジイル))ジピロリジンの合成:
【化16】
【0075】
火炎乾燥した、攪拌棒を備えた3つ口丸底フラスコ1000mLに、無水テトラヒドロフラン400mLを加えた。ゆっくりと、水素化アルミニウムリチウム粉末(5.00g、131.8mmol、2.5当量)をその攪拌する溶液に加えた。これとは別に、この合成の最初のステップで得られたジアミド(15.40g、52.70mmol)を無水テトラヒドロフラン100mLに溶解させ、火炎乾燥した液体添加漏斗に移した。ジアミド溶液を水素化アルミニウムリチウム懸濁液にゆっくりと滴下した。ジアミド溶液を完全に加えたら、ゴム栓をガラス栓と交換し、反応混合物を窒素下で2時間還流した後、室温で一晩攪拌した。反応容器に蓋をせず、脱イオン水5.00mLを液体添加漏斗に加え、攪拌する反応混合物に滴下して加えた。これに続いて、10%NaOH水溶液5.00mLをその液体添加漏斗に加え、攪拌する混合物に滴下して加えた。次に、脱イオン水15.00mLを攪拌する混合物に滴下し、混合物を室温で1時間攪拌した。反応混合物をセライトパッドを通して濾過し、固体水酸化アルミニウム塩をジエチルエーテル50mLで3回洗浄した。濾液を硫酸ナトリウムで乾燥させ、予め秤量した丸底フラスコに重力濾過し、溶媒を真空下で除去して、無色の油(12.54g、47.43mmol、90%収率)を生成した。生成物は、さらに精製することなく次のステップのために十分に純粋であった。この2番目のステップの生成物は、予想される1H NMRスペクトルを有していた。1H NMR(400MHz,CDCl3):δ ppm:2.48(m,8H),2.43(m,4H),1.77(m,8H),1.58(m,4H),1.50(m,4H),1.40(m,4H).
【0076】
1,1’-(シクロペンタン-1,1-ジイルビス(エタン-2,1-ジイル))ビス(1-エチルピロリジン-1-イウム)ヨウ化物の合成:
【化17】
【0077】
この合成の二番目のステップから得られたジアミン(12.54g、47.43mmol)を、攪拌棒を備えた丸底フラスコ250mL中のアセトン100mLに溶解させた。ヨードエタン(36.99g、237.15mmol、5当量)をシリンジで加え、反応物を室温で72時間ゆるく蓋をしながら攪拌した。非常に濁った反応混合物を中型フリット漏斗で濾過し、得られた白色固体をアセトン20mLで3回洗浄し、乾燥させて、純粋な生成物(21.31g、37.0mmol、収率78%)を生成した。この3番目のステップの生成物は、予想される1H NMRスペクトルを有していた。1H NMR(400MHz,D2O):δ ppm:3.25~3.40(m,8H),3.05~3.20(m,8H),2.00(m,8H),1.60(m,4H),1.48(m,4H),1.35(m,4H),0.80(t,6H).
【0078】
1,1’-(シクロペンタン-1,1-ジイルビス(エタン-2,1-ジイル))ビス(1-エチルピロリジン-1-イウム)水酸化物の合成:
【化18】
【0079】
1,1’-(シクロペンタン-1,1-ジイルビス(エタン-2,1-ジイル))ビス(1-エチルピロリジン-1-イウム)ヨウ化物を、水に溶解し、かつDowex LC NG水酸化物交換樹脂700mLに加えることにより、その水酸化物形態に変換した。その交換樹脂に一晩接触させた後、樹脂を濾過により除去し、脱イオン水で洗浄した。次に、水性画分を合わせ、減圧下で約60℃で濃縮した。この水溶液の水酸化物濃度は、0.1N HCl標準溶液で滴定して測定したところ16.6wt%であった。
【0080】
実施例3:2,2'-(シクロヘキサン-1,1-ジイル)ビス(N,N-ジエチル-N-メチルエタン-1-アミニウム)ヨウ化物(化合物III)の合成
2,2’-(シクロヘキサン-1,1-ジイル)ビス(N,N-ジエチル-N-メチルエタン-1-アミニウム)ヨウ化物は、以下のように、3-オキサスピロ-[5,5]-ウンデカン-2,4-ジオンから3段階で合成された。次に、1,1’-(シクロヘキサン-1,1-ジイルビス(エタン-2,1-ジイル))ビス(1-エチルピロリジン-1-イウム)ヨウ化物を、以下でさらに概説するゼオライト合成における指向剤として使用した。
【0081】
1-(ジエチルアミノ)-2-{1-[2-(ジエチルアミノ)-2-オキソエチル]シクロヘキシル}-1-エタノン:
【化19】
【化20】
【0082】
3-オキサスピロ-[5,5]-ウンデカン-2,4-ジオン(10.93g、60mmol、1当量)を無水THF(150mL)に溶解させた。ジエチルアミン(13.17g、180mmol、3当量)をシリンジで反応混合物に加えた。反応混合物を攪拌し、80℃で1.5時間還流し、次に室温まで放冷した。そのカルボン酸中間体は単離されず、次のステップに直接実行された。ピリジン(12.43g、457.1mmol、3.3当量)をその溶液に加え、混合物を0℃に冷却した。プロピルホスホン酸無水物(T3P)(30.29g、95.2mmol、2当量)を混合物にゆっくりと加え、反応物を一晩攪拌しながら室温まで温めた。次に、その反応物を0℃に冷却し戻し、0.5M HCl(180mL)を加えた。混合物を6.5時間攪拌した。その反応混合物を分液漏斗500mLに移し、DCM100mLで3回抽出した。それら有機層を合わせ、炭酸カリウムで乾燥させた。溶媒を真空下で除去して、1-(ジエチルアミノ)-2-{1-[2-(ジエチルアミノ)-2-オキソエチル]シクロヘキシル}-1-エタノンを黄色の油として生成した(13.85g、44.6mmol、94%)。この最初のステップの生成物は、予想される1H NMRスペクトルを有していた。
【0083】
1-(ジエチルアミノ)-2-{1-[2-(ジエチルアミノ)エチル]シクロヘキシル}エタンの合成:
【化21】
【0084】
水素化アルミニウムリチウム(3.72g、98.1mmol、2.2当量)を、火炎乾燥した3つ口丸底フラスコ1L中、無水THF250mLに溶解させた。ジアミド1-(ジエチルアミノ)-2-{1-[2-(ジエチルアミノ)-2-オキソエチル]シクロヘキシル}-1-エタノン(13.85g、44.6mmol、1当量)を無水THF200mLに溶解させ、次いで、滴下漏斗でLiAlH4/THF混合物に滴下した。ジアミドの添加が完了した後、反応物を80℃に加熱し、1.5時間還流し、次に攪拌し、室温まで一晩冷却した。次に、反応を1:1:3法(それぞれ使用したLiAlH4のグラム当たり、水1mL、10%水酸化ナトリウム水溶液1mL、水3mL)でクエンチした。反応混合物を、中型フリットディスク漏斗上のセライトのパッドを通して濾過し、セライトをジエチルエーテルで洗浄した。有機濾液を炭酸カリウムで乾燥させ、溶媒を真空下で除去して、1-(ジエチルアミノ)-2-{1-[2-(ジエチルアミノ)エチル]シクロヘキシル}エタンを淡黄色の油として生成した(9.43g、33.4mmol、75%)。この2番目のステップの生成物は、予想される1H NMRスペクトルを有していた。1H NMR(400MHz,CDCl3):δ ppm:2.51(q,8H),2.40(m,4H),1.42(m,10H),1.29(m,4H),1.03(t,12H).
【0085】
2,2’-(シクロヘキサン-1,1-ジイル)ビス(N,N-ジエチル-N-メチルエタン-1-アミニウム)ヨウ化物の合成:
【化22】
【0086】
この合成の2番目のステップから得られたジアミン(12.79g、46.0mmol)を、攪拌棒を備えた丸底フラスコ500mL中のアセトン100mLに溶解させた。ヨウ化メチル(23.7g、167mmol、5当量)をシリンジでその反応に加えた。その反応を窒素下、室温で4日間攪拌した。フリットディスク漏斗で濾過することにより白色沈殿物を回収し、アセトンで数回洗浄して、白色粉末として2,2’-(シクロヘキサン-1,1-ジイル)ビス(N,N-ジエチル-N-メチルエタン-1-アミニウム)ヨウ化物(15.6g、27.54mmol、83%)を生成した。この3番目のステップの生成物は、予想される1H NMRスペクトルを有していた。1H NMR(400MHz,D2O):δ ppm:3.20(q,8H),3.1(m,4H),2.80(s,6H),2.04(m,4H),1.29(m,10H,ブロード),1.17(t,12H).このヨウ化物生成物は、実施例1および2と同様にその水酸化物形態に変換された。
【0087】
実施例4:2,2'-(シクロヘキサン-1,1-ジイル)ビス(N-エチル-N,N-ジメチルエタン-1-アミニウム)ヨウ化物の合成(化合物V)
2,2’-(シクロヘキサン-1,1-ジイル)ビス(N-エチル-N,N-ジメチルエタン-1-アミニウム)ヨウ化物は、以下のように3-オキサスピロ-[5,5]-ウンデカン-2,4-ジオンから4段階で合成された。次に、2,2’-(シクロヘキサン-1,1-ジイル)ビス(N-エチル-N,N-ジメチルエタン-1-アミニウム)ヨウ化物を、以下でさらに概説するゼオライト合成の指向剤として使用した。
1-(ジメチルアミノ)-2-{1-[2-(ジメチルアミノ)-2-オキソエチル]シクロヘキシル}-1-エテノン:
【化23】
【化24】
【0088】
3-オキサスピロ-[5,5]-ウンデカン-2,4-ジオン(9.11g、50mmol、1当量)を無水THF(40mL)に溶解させた。ジメチルアミン(THF中2.0M)(75mL、150mmol、3当量)をシリンジで反応混合物に加えた。反応物を攪拌し、95℃で1.5時間還流し、次に室温まで冷却した。そのカルボン酸中間体は単離されず、次のステップに直接実行された。ピリジン(13.1g、165mmol、3.3当量)を溶液に加え、0℃に冷却した。プロピルホスホン酸無水物(T3P)(31.82g、100mmol、2当量)を混合物にゆっくりと加え、その反応を一晩攪拌しながら室温まで温めた。次に、反応物を0℃に冷却し戻し、0.5M HCl(170mL)を加えた。混合物を6.5時間攪拌した。反応混合物を分液漏斗500mLに移し、DCM75mLで3回抽出した。それら有機層を合わせ、炭酸カリウムで乾燥させた。溶媒を真空下で除去して、1-(ジメチルアミノ)-2-{1-[2-(ジメチルアミノ)-2-オキソエチル]シクロヘキシル}-1-エタノンを黄色の油として生成した(12.7g、49.93mmol、100%)。この最初のステップの生成物は、予想される1H NMRスペクトルを有していた。1H NMR(400MHz,CDCl3):δ ppm:3.04(s,6H),2.90(s,6H),2.65(s,4H),1.66(m,4H),1.43(m,6H).
【0089】
1-(ジメチルアミノ)-2-{1-[2-(ジメチルアミノ)エチル]シクロヘキシル}エタンの合成:
【化25】
【0090】
水素化アルミニウムリチウム(4.36g、115mmol、2.3当量)を、火炎乾燥した3つ口丸底フラスコ1L中で無水THF200mLに溶解した。ジアミド1-(ジメチルアミノ)-2-{1-[2-(ジメチルアミノ)-2-オキソエチル]シクロヘキシル}-1-エタノン(12.7g、50mmol、1当量)を無水THF200mLに溶解し、火炎乾燥した滴下漏斗でゆっくりと滴下してLiAlH4/THF溶液に加えた。すべてのジアミドを加えた後、反応混合物を70℃に加熱し、3時間還流し、次に攪拌し、室温まで一晩冷却した。反応を1:1:3法(使用したLiAlH4のグラムごとにそれぞれ、水1mL、10%NaOH水溶液1mL、水3mL)でクエンチした。反応物を中型フリットディスク漏斗上のセライトパッドを通して濾過し、そのパッドをジエチルエーテルですすいだ。有機濾液を硫酸ナトリウムで乾燥させ、溶媒を真空下で除去して、1-(ジメチルアミノ)-2-{1-[2-(ジメチルアミノ)エチル]シクロヘキシル}エタンを透明な油として生成した(10.4g、45.93mmol、92%)。この2番目のステップの生成物は、予想される1H NMRスペクトルを有していた。1H NMR(400MHz,CDCl3):δ ppm:2.17~2.24(s,16H),1.43(m,10H),1.28(t,4H).
【0091】
2,2’-(シクロヘキサン-1,1-ジイル)ビス(N-エチル-N,N-ジメチルエタン-1-アミニウム)ヨウ化物の合成:
【化26】
【0092】
この合成の2番目のステップから得られたジアミン(10.4g、46mmol、1当量)を、攪拌棒を備えた丸底フラスコ500mL中のアセトン125mLに溶解させた。ヨウ化エチル(35.8g、230mmol、5当量)をシリンジでその反応に加えた。その反応を窒素下、室温で4日間攪拌した。フリットディスク漏斗で濾過することにより白色沈殿物を回収し、アセトンで数回洗浄して、白色粉末としての2,2’-(シクロヘキサン-1,1-ジイル)ビス(N-エチル-N,N-ジメチルエタン-1-アミニウム)ヨウ化物(21.94g、40.75mmol、89%)を生成した。この3番目のステップの生成物は、予想される1H NMRスペクトルを有していた。1H NMR(400MHz,D2O):δ ppm:3.24(q,4H),3.14(m,4H),2.89(s,12H),1.60(m,4H),1.33(m,4H),1.23(m,6H),1.17(t,6H).このヨウ化物生成物は、実施例1および2と同様にその水酸化物形態に変換された。
【0093】
実施例5:2,2'-(シクロペンタン-1,1-ジイル)ビス(N,N,N-トリエチルエタン-1-アミニウム)ヨウ化物(化合物VIII)の合成
2,2’-(シクロペンタン-1,1-ジイル)ビス(N,N,N-トリエチルエタン-1-アミニウム)ヨウ化物は、以下のように3,3-テトラメチレングルタル酸無水物から3段階で合成された。次に、2,2’-(シクロペンタン-1,1-ジイル)ビス(N,N,N-トリエチルエタン-1-アミニウム)ヨウ化物を、以下でさらに概説するゼオライト合成の指向剤として使用した。
1-(ジエチルアミノ)-2-{1-[2-(ジエチルアミノ)-2-オキソエチル]シクロペンチル}-1-エテノン:
【化27】
【化28】
【0094】
3,3-テトラメチレングルタル無水物(5.0g、29.7mmol、1当量)を、火炎乾燥した、攪拌棒を備えた丸底フラスコ200mL中で、無水THF50mLに溶解させた。ジエチルアミン(6.52g、89.2mmol、3当量)を気密シリンジ(air tight syringe)で反応混合物に直接加え、次に90℃に加熱し、1.5時間還流した。熱を除去し、反応を室温で24時間攪拌したままにした。そのカルボン酸中間体は単離されず、次のステップで直接使用された。ピリジン(7.76g、98.1mmol、3.3当量)をカルボン酸中間体(7.17g、29.7mmo、1当量)の溶液に直接加え、10分間攪拌したままにした。反応混合物を0℃に冷却し、次にプロピルホスホン酸無水物(T3P)(THF中50重量%)(37.84g、59.5mmol、2当量)を加えた。反応物を窒素下、0℃で24時間攪拌した。HCl(0.5M、90mL)をそのフラスコに加え、反応を週末にかけて室温で攪拌した。反応を分液漏斗500mLに移し、生成物をDCM75mLで3回抽出した。有機層を合わせ、炭酸カリウムで乾燥させ、重力濾過し、溶媒を真空下で除去して、淡黄色の油として1-(ジエチルアミノ)-2-{1-[2-(ジエチルアミノ)-2-オキソエチル]シクロペンチル}-1-エタノン(8.71g、29.4mmol、99%)を得る。この最初のステップの生成物は、予想される1H NMRスペクトルを有していた。1H NMR(400MHz,CDCl3):δ ppm:3.32(m,8H),2.63(s,4H),1.7(q,4H),1.6(q,4H),1.13(t,6H),1.07(t,6H).
【0095】
1-(ジエチルアミノ)-2-{1-[2-(ジエチルアミノ)エチル]シクロペンチル}エタンの合成:
【化29】
【0096】
水素化アルミニウムリチウム(4.36g、115mmol、2.4当量)を、火炎乾燥した3つ口丸底フラスコ1L中で無水THF200mLに溶解させた。ジアミド1-(ジエチルアミノ)-2-{1-[2-(ジエチルアミノ)-2-オキソエチル]シクロペンチル}-1-エタノン(14.2g、47.9mmol、1当量)を無水THF200mLに溶解させ、火炎乾燥した滴下漏斗でゆっくりと滴下してLiAlH4/THF溶液に加えた。すべてのジアミドを加えた後、その反応を70℃に加熱し、3時間還流し、次に攪拌し、室温まで一晩冷却した。次に反応物を0℃に冷却し、1:1:3法(それぞれ使用したLiAlH4のグラムごとに、水1mL、10%NaOH水溶液1mL、水3mL)でクエンチした。その反応を中型フリットディスク漏斗上のセライトパッドを通して濾過し、次にそのパッドをジエチルエーテルですすいだ。濾液を硫酸ナトリウムで乾燥させ、溶媒を真空下で除去して、透明な油として1-(ジエチルアミノ)-2-{1-[2-(ジエチルアミノ)エチル]シクロペンチル}エタン(12.10g、45.06mmol、94.5%)を生成した。この2番目のステップの生成物は、予想される1HNMRスペクトルを有していた。1H NMR(400MHz,CDCl3):δ ppm:2.53(q,8H),2.42(m,4H),1.58(m,4H),1.42(m,8H),1.03(t,12H).
【0097】
2,2'-(シクロペンタン-1,1-ジイル)ビス(N,N,N-トリエチルエタン-1-アミニウム)ヨウ化物の合成:
【化30】
【0098】
この合成の2番目のステップから得られたジアミン(12.1g、45.1mmol、1当量)を、丸底フラスコ500mL中のアセトン135mLに溶解させた。ヨウ化エチル(42.2g、270mmol、6当量)をシリンジで反応混合物に加え、その反応を室温で週末にかけて攪拌した。フリットディスク漏斗を介して白色の固体を回収し、アセトンで洗浄して、2,2’-(シクロペンタン-1,1-ジイル)ビス(N,N,N-トリエチルエタン-1-アミニウム)ヨウ化物を白色の固体として生成した(20.34g、35.04mmol、78%)。この3番目のステップの生成物は、予想される1H NMRスペクトルを有していた。1H NMR(400MHz,D2O):δ ppm:3.10(q,12H),3.0(m,4H),1.57(m,4H),1.49(m,4H),1.38(m,4H),1.10(t,18H).このヨウ化物生成物は、実施例1および2と同様にその水酸化物形態に変換された。
【0099】
実施例6:ハイスループットゼオライト合成スクリーニング反応
実施例1~3のSDA(C6、C5、およびC6-diEt)は、表4に示すモル比の一連のハイスループットゼオライト合成スクリーニング反応用に水酸化物の形態で提供された。ハイスループットゼオライト合成スクリーニング反応の場合、30wt%水性シリカ懸濁液(LUDOX AS-30またはAERODISP W7330)を3.47wt%ホウ酸水溶液、塩基性水溶液(10wt%NaOH、または17.5wt%KOH)、および指向剤の水溶液と混合した。反応は、表4に示される反応時間の間、160℃でタンブリングされたステンレス鋼反応器1.5mLで実施された。生成物は、遠心分離、脱イオン水中での再懸濁、および遠心分離によって単離された。このプロセスを3回繰り返し、粉末X線回折(XRD)パターンのためにサンプルを収集した。反応物の特定の合成前の比率および様々なサンプルの反応時間は、以下の表4に指定されている。
【0100】
【表6】
得られた生成物は、EMM-59を含むことが見出され、その粉末XRDは、既知のゼオライトと一致させることができなかった。表4の特性評価結果は、EUO、石英、およびZSM-12の特性と比較した製品の粉末XRDパターンの分析に基づいている。EUO、石英、およびZSM-12の特性X線粉末回折ピークは、ゼオライトのシミュレートされた粉末回折パターン集、第5改訂版、2007年に見出すことができ、参照により本明細書に組み込まれる。スクリーニングサンプルの場合、特性粉末XRDピークは、CuK-α放射線と、ブラッグベンターノ形状およびVantec500検出器を備えた連続モードで動作するBruker DaVinci D8 Discovery粉末X線回折計とを使用して決定された。以下のスケールアップサンプルの粉末XRD分析は、CuK-α放射線と0.01796°のステップサイズとで連続モードで動作するBrucker D4粉末X線回折計を使用して実施された。検出器は、50mm×16mmのアクティブエリアを備えたVantec-1ガス検出器であった。
【0101】
実施例7:実施例6からのサンプル12から得られた少量のシードを使用して、実施例6からのサンプル12のプロセスを繰り返した。生成物を粉末XRDで分析し、純粋なEMM-59であることがわかった。
図1は、実施例8の粉末XRDパターンを示している。
図2A~2Bは、様々な倍率での実施例8の例示的なSEM画像を示している。
【0102】
次に、実施例7で得られたサンプルの一部を、最初にサンプルを窒素中で2時間室温に維持し、次に室温からN2中4℃/分で400℃まで上昇させることによって焼成した。次に、環境を空気に切り替える前に、温度を400℃で15分間保持した。次に、温度を空気中、4℃/分で400℃から540℃に上昇させ、その後540℃で3時間保持した。窒素物理吸着のBET分析を使用すると、得られた焼成生成物の、微細孔体積、BET表面積、および外部表面積は、それぞれ0.24cm3/g、683m2/g、および69m2/gであった。この物質はまた、n-ヘキサンの0.11mg/g取り込み、2,3-ジメチルブタンの0.09mg/g取り込み、2,2-ジメチルブタンの0.09mg/g取り込み、およびメシチレンの0.11mg/g取り込みを有していた。
【0103】
実施例8:サンプル12は、実施例7からの種結晶を使用して、以下に記載されるように、より大きなスケールで合成された。60ccのオーバーヘッド攪拌オートクレーブで、IIを含む溶液11.70g、脱イオン水5.9g、17.5wt%KOH溶液1.70g、および3.47wt%ホウ素溶液(boric solution)4.80gを混合した。次に、Aerodisp W7330コロイダルシリカ(30wt%)10.90gをその溶液に混合して、均一な懸濁液を作製した。実施例7からのEMM-59のシード(32mg)を懸濁液に加えた。次に、その混合物を、150℃で9日間、180rpmで頭上攪拌(overhead stirring)しながら加熱した。粉末XRDは、製品が純粋なEMM-59であることを示した。
図3は、実施例8で得られた前記生成物のSEM画像を示している。
【0104】
次に、実施例8で得られたサンプルの一部を、実施例7で説明したのと同じ焼成手順を使用して焼成した。表5は、実施例8の予備焼成(製造したまま)の特性粉末XRD2θ回折角を示す。
【表7】
【0105】
表6は、実施例8の焼成後(焼成された)の特性粉末XRD2θ回折角を示す。
【表8】
【0106】
実施例9.EMM-59の結晶構造の空間群および単位セルは、電子回折から、C2/m、a=4.0Å、b=20.6Å、c=16.0Å、β=97.5°であると決定された。
【0107】
実施例10.化合物VをSDAとして使用したことを除いて、実施例7を繰り返した。28日後、純粋なEMM-59が得られた。
【0108】
実施例11.化合物VIIIがSDAとして使用されたことを除いて、実施例7が繰り返された。7日後、純粋なEMM-59が得られた。
【0109】
実施例12.化合物IIIがSDAとして使用されたことを除いて、実施例7が繰り返された。21日後、純粋なEMM-59が得られた。
【0110】
実施例13.化合物IVがSDAとして使用されたことを除いて、実施例7が繰り返された。14日後、純粋なEMM-59が得られた。
【0111】
実施例14.ボロシリケートEMM-59のアルミノシリケート形態への変換。EMM-59はアンモニウムとアルミニウムを交換した。
【0112】
アンモニウム交換:EMM-59ゼオライト2.25gを蒸留水22.5gに加えた。この混合物に硝酸アンモニウム2.25gを加えた。混合物を十分に攪拌し、パール・ボム(Parr bomb)45mLに入れ、80℃に一晩加熱し、濾過し、洗浄し、および90℃で乾燥させた。乾燥した材料を540℃で焼成した。
【0113】
アルミニウム交換:1M硝酸アルミニウム溶液31.8gをEMM-59ゼオライト2.12gに加えた。混合物を十分に攪拌し、パール・ボム45mLに入れ、80℃に一晩加熱し、ろ過し、洗浄し、90℃で乾燥させた。最終的な材料は540℃で焼成された。
【0114】
最終的な材料は、アルファ活性または250を有していた。
【0115】
本明細書に記載されるすべての文書は、このテキストと矛盾しない範囲での優先文書および/または試験手順を含む、そのような慣行が許可されるすべての管轄区域の目的のために参照により本明細書に組み込まれる。前述の一般的な説明および特定の実施形態から明らかなように、本開示の形態が例示および説明されているが、本開示の精神および範囲から逸脱することなく、様々な修正を行うことができる。したがって、本開示がそれによって限定されることを意図するものではない。例えば、本明細書に記載の組成物は、任意の成分も含まなくてもよく、または本明細書に明示的に記載または開示されていない組成物であってもよい。どの方法も、本明細書に記載または開示されていない任意のステップを欠いている可能性がある。同様に、「含んで成ること(または含むこと;comprising)」という用語は、「含むこと(including)」という用語と同義であると見なされる。方法、構成、要素、または要素のグループの前に「含んで成ること(comprising)」という移行句が付いている場合は常に、構成、要素、または要素の記載に先行する移行句「から本質的になる(consisting essentially of)」、「からなる(consisting of)」、「からなる群より選択される(selected from the group of consisting of)」または「である(is)」を有する同じ構成または要素のグループも想定され、その逆も同様であることが理解される。
【0116】
特に明記しない限り、本明細書および関連する特許請求の範囲で使用される成分の量、分子量、反応条件のような特性を表す全ての数字は、全ての場合において「約」という用語によって変更されていると理解されるべきである。したがって、反対に示されない限り、以下の明細書および添付の特許請求の範囲に示される数値パラメータは、本開示の実施形態によって得られることが求められる所望の特性に応じて変化し得る近似値である。少なくとも、均等論の適用を特許請求の範囲に限定する試みとしてではなく、各数値パラメータは、少なくとも報告された有効桁数に照らして、通常の丸め手法を適用することによって解釈されるべきである。
【0117】
下限および上限を有する数値範囲が開示されるときはいつでも、その範囲内にある任意の数および任意の含まれる範囲が具体的に開示される。特に、本明細書に開示されるすべての範囲の値(「約a~約b(from about a to about b)」、または同等に「約a~b(from approximately a to b)」、または同等に「約a~b(from approximately a-b)」の形式)は、より広い範囲の値に含まれるすべての数値と範囲を示すと理解されるべきである。また、特許権者によって明示的かつ明確に定義されていない限り、特許請求の範囲における用語は、それらの明白で通常の意味を有する。さらに、特許請求の範囲で使用される不定冠詞「a」または「an」は、本明細書では、それが導入する要素の1または複数を意味するように定義される。
【0118】
1または複数の例示的な実施形態が本明細書に提示されている。わかりやすくするために、本願では、物理的な実装のすべての特徴(feature)が説明または示されているわけではない。本開示の物理的実施形態の開発において、システム関連、ビジネス関連、政府関連および他の制約の順守など、開発者の目標を達成するために多数の実装固有の決定を行わなければならないことが理解され、これらは実装によって、また時々異なる。開発者の努力は時間がかかるかもしれないが、それにもかかわらず、そのような努力は、当業者のための日常的な作業であり、この開示の利益を得るであろう。
【0119】
したがって、本開示は、言及された目的および利点、ならびにそれに固有のものを達成するために十分に適合されている。本開示は、当業者に明らかであり、本明細書の教示の利益を有するものに明らかな、異なるが同等の方法で修正および実施され得るので、上に開示された特定の実施形態は例示にすぎない。さらに、以下の特許請求の範囲に記載されている場合を除き、本明細書に示されている構造または設計の詳細に制限は意図されていない。したがって、上に開示された特定の例示的な実施形態は、変更、組み合わせ、または修正され得、そのようなすべての変形は、本開示の範囲および精神の範囲内であると見なされることは明らかである。本明細書に例示的に開示される実施形態は、本明細書に具体的に開示されていない要素および/または本明細書に開示されている任意の要素がない状態で実施することができる。