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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-16
(45)【発行日】2023-08-24
(54)【発明の名称】電気化学装置及び電子装置
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/058 20100101AFI20230817BHJP
   H01M 50/51 20210101ALI20230817BHJP
   H01M 50/186 20210101ALI20230817BHJP
   H01M 50/193 20210101ALI20230817BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20230817BHJP
   H01M 10/0566 20100101ALI20230817BHJP
   H01M 50/486 20210101ALI20230817BHJP
   H01M 50/483 20210101ALI20230817BHJP
   H01M 10/0585 20100101ALI20230817BHJP
   H01M 10/0587 20100101ALI20230817BHJP
   H01G 11/52 20130101ALI20230817BHJP
   H01G 11/78 20130101ALI20230817BHJP
【FI】
H01M10/058
H01M50/51
H01M50/186
H01M50/193
H01M10/052
H01M10/0566
H01M50/486
H01M50/483
H01M10/0585
H01M10/0587
H01G11/52
H01G11/78
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2022518848
(86)(22)【出願日】2020-06-30
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-28
(86)【国際出願番号】 CN2020099509
(87)【国際公開番号】W WO2022000328
(87)【国際公開日】2022-01-06
【審査請求日】2022-03-23
(73)【特許権者】
【識別番号】513054978
【氏名又は名称】寧徳新能源科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】Ningde Amperex Technology Limited
【住所又は居所原語表記】No.1 Xingang Road, Zhangwan Town, Jiaocheng District, Ningde City, Fujian Province, 352100, People’s Republic of China
(74)【代理人】
【識別番号】100177426
【弁理士】
【氏名又は名称】粟野 晴夫
(72)【発明者】
【氏名】厳 坤
(72)【発明者】
【氏名】丁 宇
(72)【発明者】
【氏名】張 益博
(72)【発明者】
【氏名】胡 喬舒
【審査官】冨士 美香
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-340144(JP,A)
【文献】国際公開第2014/073443(WO,A1)
【文献】特開2007-080733(JP,A)
【文献】特開2012-212607(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/058
H01M 50/51
H01M 50/186
H01M 50/193
H01M 10/052
H01M 10/0566
H01M 50/486
H01M 50/483
H01M 10/0585
H01M 10/0587
H01G 11/52
H01G 11/78
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
隔離板を含む電気化学装置であって、前記隔離板が外装と密封接続され、前記隔離板の両側にそれぞれ独立したキャビティが形成され、各キャビティ内に電極アセンブリと電解液が封入され、隣接するキャビティ内の電極アセンブリはタブによって直列接続され、前記隔離板がイオン絶縁層を含み、
前記隔離板の水透過率が10-3g/(day・m・Pa)/3mm以下であり、前記隔離板と前記外装とが密封されたシール厚みT及びシール幅Wが0.01≦T/W≦0.05を満たす、電気化学装置。
【請求項2】
前記イオン絶縁層の材料は、高分子材料、金属材料及び炭素材料のうちの少なくとも一つを含む、請求項1に記載の電気化学装置。
【請求項3】
前記高分子材料は、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエーテルエーテルケトン、ポリイミド、ポリアミド、ポリエチレングリコール、ポリアミドイミド、ポリカーボネート、環状ポリオレフィン、ポリフェニレンスルフィド、ポリビニルアセテート、ポリテトラフルオロエチレン、ポリメチレンナフタレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリエチレンナフタレート、ポリプロピレンカーボネート、ポリ(フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン)、ポリ(フッ化ビニリデン-コ-クロロトリフルオロエチレン)、シリコーン、ビニロン、ポリプロピレン、酸無水物変性ポリプロピレン、ポリエチレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-エチルアクリレート共重合体、エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-ビニルアルコール共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリエーテルニトリル、ポリウレタン、ポリフェニレンエーテル、ポリエステル、ポリスルホン、非晶性α-オレフィン共重合体及びその誘導体のうちの少なくとも一つを含み、
前記金属材料は、Ni、Ti、Cu、Ag、Au、Pt、Fe、Co、Cr、W、Mo、Al、Mg、K、Na、Ca、Sr、Ba、Si、Ge、Sb、Pb、In、Zn、ステンレス鋼及びその組成物や合金のうちの少なくとも一つを含み、
前記炭素材料は、カーボンフェルト、炭素膜、カーボンブラック、アセチレンブラック、フラーレン、導電性グラファイトフィルム、及びグラフェン膜のうちの少なくとも一つを含む、請求項2に記載の電気化学装置。
【請求項4】
前記隔離板はさらに封止層を含み、前記封止層は前記イオン絶縁層の表面の周縁部又はその全面に設けられ、前記封止層の材料の融点が120~160℃である、請求項1に記載の電気化学装置。
【請求項5】
前記封止層は、ポリプロピレン、酸無水物変性ポリプロピレン、ポリエチレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-エチルアクリレート共重合体、エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-ビニルアルコール共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリエーテルニトリル、ポリウレタン、ポリアミド、ポリエステル、非晶性α-オレフィン共重合体及びその誘導体のうちの少なくとも一つを含む、請求項4に記載の電気化学装置。
【請求項6】
前記隔離板の厚みは、6~100μmである、請求項1に記載の電気化学装置。
【請求項7】
前記イオン絶縁層は、単層または多層構造である、請求項1に記載の電気化学装置。
【請求項8】
(a)前記隔離板の水透過率が10-4g/(day・m・Pa)/3mm以下であること、
(b)前記隔離板の厚みが10~40μmであること、及び
(c)前記イオン絶縁層の材料の融点が165℃以上であることのうちの少なくとも一つの特徴を有する、請求項1に記載の電気化学装置。
【請求項9】
前記電極アセンブリの構造は、巻回構造又は積層構造を含む、請求項1に記載の電気化学装置。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載の前記電気化学装置を含む電子装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電気化学分野に関し、特に、電気化学装置及び前記電気化学装置を使用する電子装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のリチウムイオン電池系では、正極材料と負極材料との電圧差が限られ、電解液の抗酸化還元能力が限られている等により、電池の開回路電圧が5Vを超えることは困難である。しかし、電池の実際の使用において、例えば、電動乗物(EV)、電動工具(PT)、エネルギー貯蔵システム(ESS)などの5Vを超える電圧が要求される場合は多く、携帯電話市場においても、急速充電などの要求に応えるため、電池セルの開回路電圧の向上が求められている。現在、一般的には、複数のリチウムイオン電池を直列接続する方法を用いて出力電圧を向上させているが、複数のリチウムイオン電池が直列接続される場合に、例えば、個々のリチウムイオン電池の容量バラツキにより全体のエネルギー密度(Energy Density)が低くなる問題、直列用導線及び接触抵抗により追加の電子抵抗が導入されて、発熱になってエネルギーが浪費され且つ電池の耐用年数に影響を与える問題や電圧が高いほどリチウムイオン電池の数が多くなる必要があり、電池管理の難易度を向上させる問題などの多くの問題が存在している。上記した問題を解決するために、高出力電圧電池の概念が提示され、それはリチウムイオン電池内部で直列接続の方式を利用して単一電池の高電圧出力を達成し、電池の総発熱量を減少させ、使用過程における温度上昇範囲を低下させる。
【0003】
従来技術における直列電池は同一の包装袋内に二つの電極アセンブリを直接直列接続し、二つの直列接続された電極アセンブリに対してイオン絶縁を行わず、電池電圧が上昇すると、電解液が高電圧条件で分解され、電池の故障を引き起こし、また、二つの電極アセンブリの間に極片の電圧差によって内部短絡が発生し、電池の故障も引き起こす。以上の理由から、現在提案されている解決策は、いずれも固体電解質電池のみに適用可能である。しかし、主流のリチウム電池は液体電解質を使用しているため、上記した解決策は広まりにくい。
【発明の概要】
【0004】
本発明は、高電圧出力を達成することができるだけでなく、電気化学装置の温度上昇範囲を低減することができる電気化学装置を提供することを目的とする。
【0005】
本発明の第一態様は、隔離板を含む電気化学装置であって、前記隔離板が外装と密封接続され、前記隔離板の両側にそれぞれ独立したキャビティが形成され、各キャビティ内に一つの電極アセンブリと電解液が含まれ、隣接するキャビティ内の電極アセンブリはタブによって直列接続され、前記隔離板がイオン絶縁層を含む。前記隔離板の水透過率が10-3g/(day・m・Pa)/3mm以下である。前記隔離板と前記外装とが密封されたシール厚みT及びシール幅Wが0.01≦T/W≦0.05を満たす電気化学装置を提供する。
【0006】
本発明の一つの実施形態において、シール幅Wは、1mm~7mmである。
【0007】
本発明の一つの実施形態において、前記キャビティは、密封キャビティである。
【0008】
本発明の一つの実施形態において、イオン絶縁層の材料は、高分子材料、金属材料及び炭素材料のうちの少なくとも一つを含む。
【0009】
本発明の一つの実施形態において、高分子材料は、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエーテルエーテルケトン、ポリイミド、ポリアミド、ポリエチレングリコール、ポリアミドイミド、ポリカーボネート、環状ポリオレフィン、ポリフェニレンスルフィド、ポリビニルアセテート、ポリテトラフルオロエチレン、ポリメチレンナフタレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリエチレンナフタレート、ポリプロピレンカーボネート、ポリ(フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン)、ポリ(フッ化ビニリデン-コ-クロロトリフルオロエチレン)、シリコーン、ビニロン、ポリプロピレン、酸無水物変性ポリプロピレン、ポリエチレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-エチルアクリレート共重合体、エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-ビニルアルコール共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリエーテルニトリル、ポリウレタン、ポリフェニレンエーテル、ポリエステル、ポリスルホン、非晶性α-オレフィン共重合体及びその誘導体のうちの少なくとも一つを含む。前記金属材料は、Ni、Ti、Cu、Ag、Au、Pt、Fe、Co、Cr、W、Mo、Al、Mg、K、Na、Ca、Sr、Ba、Si、Ge、Sb、Pb、In、Zn、ステンレス鋼及びその組成物や合金のうちの少なくとも一つを含む。前記炭素材料は、カーボンフェルト、炭素膜、カーボンブラック、アセチレンブラック、フラーレン、導電性グラファイトフィルム、及びグラフェン膜のうちの少なくとも一つを含む。
【0010】
本発明の一つの実施形態において、前記隔離板はさらに封止層を含み、前記封止層は前記イオン絶縁層の表面の周縁部又はその全面に設けられ、前記封止層の材料の融点が120~160℃である。
【0011】
本発明の一つの実施形態において、前記封止層は、ポリプロピレン、酸無水物変性ポリプロピレン、ポリエチレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-エチルアクリレート共重合体、エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-ビニルアルコール共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリエーテルニトリル、ポリウレタン、ポリアミド、ポリエステル、非晶性α-オレフィン共重合体及びその誘導体のうちの少なくとも一つを含む。
【0012】
本発明の一つの実施形態において、前記隔離板の厚みは、6~100μmである。
【0013】
本発明の一つの実施形態において、前記イオン絶縁層は、単層または多層構造である。
【0014】
本発明の一つの実施形態において、
(a)前記隔離板の水透過率が10-4g/(day・m・Pa)/3mm以下であること、
(b)前記隔離板の厚みは、10~40μmであること、及び
(c)前記イオン絶縁層の材料の融点が165℃以上であることのうちの少なくとも一つの特徴を有する。
【0015】
本発明の一つの実施形態において、前記電極アセンブリの構造は、巻回構造又は積層構造を含む。
【0016】
本発明の第二態様は、本発明の第一態様に提供される電気化学装置を含む電子装置を提供する。
【0017】
本発明が提供する電気化学装置は、隔離板が外装と密封接続され、隔離板の両側にそれぞれ独立したキャビティが形成され、隔離板の両側に位置する電極アセンブリ及び電解液が完全に分離されるため、両側の電極アセンブリの正常な動作を確保できるだけでなく、良好な密封性も電気化学装置の安全性の向上に寄与する。また、隔離板はイオン絶縁性を有するため、電解液の高圧分解及び電極アセンブリ内部短絡を回避することができる。隔離板の両側の電極アセンブリは直列接続されるため、電気化学装置は高電圧出力を達成するだけでなく、電池セルの総発熱量を減少させ、使用過程における温度上昇範囲を低下させる。隔離板の水透過率を10-3g/(day・m・Pa)/3mm以下に限定し、そして、隔離板と外装とが密封されたシール厚みT及びシール幅Wが0.01≦T/W≦0.05を満たすことにより、電池の耐水性及び環境安定性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
本発明の実施例及び従来技術の技術案をより明確に説明するために、以下では実施例及び従来技術において使用する必要がある図面を簡単に紹介し、明らかに、以下の図面は、ただ本発明の若干の実施例に過ぎず、当業者にとって、進歩的な労働を要しない前提において、これらの図面に基づいて他の実施例を得ることができる。
【0019】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る電気化学装置の構造を示す模式図である。
図2図2は、本発明の一実施形態に係る隔離板の断面の構造を示す模式図である。
図3図3は、本発明の一実施形態に係る隔離板の構造を示す模式図である。
図4図4は、比較例1の電気化学装置の構造を示す模式図である。
図5図5は、比較例2の電気化学装置の構造を示す模式図である。
図6図6は、比較例3の電気化学装置の構造を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の目的、技術案及び利点をより明白にするために、以下は図面を参照して実施例を挙げて、本発明を更に詳しく説明する。明らかに、説明される実施例は、本発明の実施例の単なる一部であり、全てではない。
【0021】
本発明の電気化学装置は、当業者によく知られたいかなる電気化学装置、例えば、リチウムイオン電池、ナトリウムイオン電池、マグネシウムイオン電池、スーパーキャパシタ等であってもよく、以下では、リチウムイオン電池を例として説明する。当業者であれば、以下の説明は例示的なものに過ぎず、本発明の保護範囲を限定するものではないことを理解すべきである。
【0022】
本発明は、電気化学装置を提供し、典型的な実施形態は、図1に示すとおりであり、隔離板1を含み、前記隔離板1が外装3と密封接続され、前記隔離板1の両側にそれぞれ独立したキャビティが形成され、各キャビティ内に一つの電極アセンブリ2と電解液とを含まれ、隣接する電極アセンブリ2はタブによって直列接続され、電極アセンブリ201の正極タブ4が電極アセンブリ202の負極タブ5に直列接続されてもよく、電極アセンブリ201の負極タブ5が電極アセンブリ202の正極タブ4に直列接続されてもよい。前記隔離板1はイオン絶縁に用いるイオン絶縁層を含む。前記キャビティは密封キャビティである。
【0023】
本発明において、前記隔離板の水透過率が10-3g/(day・m・Pa)/3mm以下である。隔離板の水透過率が大きいほど、環境中の水蒸気が隔離板を介して電池内部に浸透しやすくなり、その結果、非水電解質中の水分量が増加し、電池の厚みが増加し、電池の使用寿命が短くなる。
【0024】
前記隔離板と前記外装とが密封されたシール厚みT(単位:mm)とシール幅W(単位:mm)が0.01≦T/W≦0.05を満たす。T/Wの比が上記した範囲内であると、電池の良好な密封性を確保し、電池の使用寿命を向上させることができる。T/Wが小さすぎると、シール厚みが不足する可能性があり、密閉効果が低く、その結果、電池の環境安定性が低下し、例えば、環境中の水蒸気が電池内部に浸透しやすく、その結果、電池内の水分含量が増大し、電解質が分解し、電池の使用寿命が短くなる。T/Wの比が大きすぎると、シール幅Wが小さすぎる可能性があり、同様に密閉効果が低く、その結果、電池の環境安定性が低下し、例えば、環境中の水蒸気が電池内部に浸透しやすく、その結果、電池内の水分量の増大、電解質の分解等の問題があり、電池の使用寿命が短くなる。本発明において、シール厚み及びシール幅は、本発明の目的を達成できるものであれば特に限定されないが、例えば、シール幅が1mm~7mmであることが好ましい。本発明において、前記シール厚みとは、密封領域におけるシール材料の厚みを意味し、前記シール幅とは、密封領域におけるシール材料の幅を意味する。密封領域とは、隔離板と外装とが密封されて結合された領域である。シール過程において、外装内層における高分子材料と隔離板における高分子材料は熱プレスによって封じられ、密封領域を形成する。したがって、シール厚みは、隔離板における高分子材料と外装内層における高分子材料とが融着した後の厚みを含む。シール幅とは、熱プレスによって封じられた後に隔離板における高分子材料と外装内層における高分子材料とが結合して形成される密封領域の幅をいう。前記シール厚みの方向は外装と隔離板との積層方向であり、前記シール幅の方向は二つのシールエッジの間の距離の方向である。
【0025】
本発明のいくつかの実施形態において、前記隔離板が外装と密封接続され、隔離板の両側にそれぞれ独立したキャビティが形成され、隔離板の両側に位置する電極アセンブリ及び電解液が完全に分離されるため、両側の電極アセンブリの正常な動作を確保できるだけでなく、良好な密封性も電気化学装置の安全性及び環境安定性の向上に寄与する。また、隔離板はイオン絶縁性を有するため、電解液の高圧分解及び電極アセンブリ内部短絡を回避することができる。隔離板の両側の電極アセンブリは直列接続されるため、電気化学装置は高電圧出力を達成するだけでなく、電池セルの総発熱量を減少させ、使用過程における温度上昇範囲を低下させる。なお、隔離板の水透過率を上記した範囲に限定することにより、電気化学装置が高湿度環境で動作する際の安全性の問題をより効果的に回避することができ、シール厚みTとシール幅Wとの比を上記した範囲に限定することにより、電気化学装置の密封をより効果的に達成し、電気化学装置の安全性をより向上させることができる。
【0026】
前記イオン絶縁層の構造は、本発明の目的を達成できるものであれば特に限定されず、例えば、単層構造であってもよいし、複層複合構造であってもよい。
【0027】
本発明のいくつかの実施形態において、前記イオン絶縁層の材料は、高分子材料、金属材料、炭素材料、及びそれらの複合材料のうちの少なくとも一つを含む。
【0028】
前記高分子材料は、本発明の目的を達成できるものであれば特に限定されず、当業者に知られている任意の材料を使用することができ、例えば、前記高分子材料は、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエーテルエーテルケトン、ポリイミド、ポリアミド、ポリエチレングリコール、ポリアミドイミド、ポリカーボネート、環状ポリオレフィン、ポリフェニレンスルフィド、ポリビニルアセテート、ポリテトラフルオロエチレン、ポリメチレンナフタレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリエチレンナフタレート、ポリプロピレンカーボネート、ポリ(フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン)、ポリ(フッ化ビニリデン-コ-クロロトリフルオロエチレン)、シリコーン、ビニロン、ポリプロピレン、酸無水物変性ポリプロピレン、ポリエチレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-エチルアクリレート共重合体、エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-ビニルアルコール共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリエーテルニトリル、ポリウレタン、ポリフェニレンエーテル、ポリエステル、ポリスルホン、非晶性α-オレフィン共重合体及びその誘導体のうちの少なくとも一つを含んでもよい。
【0029】
前記金属材料は、本発明の目的を達成できるものであれば特に限定されず、当業者に知られている任意の材料を使用することができ、例えば、Ni、Ti、Cu、Ag、Au、Pt、Fe、Co、Cr、W、Mo、Al、Mg、K、Na、Ca、Sr、Ba、Si、Ge、Sb、Pb、In、Zn、ステンレス鋼及びその組成物や合金のうちの少なくとも一つを含んでもよい。好ましくは、リチウムイオン電池環境下で抗酸化還元性に優れた金属材料を選択することができる。
【0030】
前記炭素材料は、カーボンフェルト、炭素膜、カーボンブラック、アセチレンブラック、フラーレン、導電性グラファイトフィルム、及びグラフェン膜のうちの少なくとも一つを含む。本発明のいくつかの実施形態において、イオン絶縁層は高分子材料を用いることが好ましく、高分子材料の密度が小さいため、不活性物質の重量を低減させることができ、これによって、電極アセンブリの質量エネルギー密度を向上させる。また、イオン絶縁層は高分子材料を採用することにより、機械的誤用状況(釘刺し、突き当て、押し当て等)において、破片が発生する確率がより低く、且つ機械的破損表面に対する被覆効果がより高いため、上記した機械的誤用状況における安全境界を改善し、安全測定の合格率を向上させることができる。
【0031】
本発明のいくつかの実施形態において、イオン絶縁層は金属材料を使用することが好ましい。金属材料は、絶縁信頼性が高く、靭性及び緻密性はいずれも高分子材料より優れ、加工厚みもより薄くすることができる。イオン絶縁層として好ましくは炭素材料膜を用いると、製品安全性に優れ、特に高温信頼性が極めて優れ、電池セル本体が破損した場合に両
側の電池セルを分割する機能を有する。
【0032】
本発明のいくつかの実施形態において、前記隔離板は、封止層102をさらに含み、図2に示すように、前記封止層102はイオン絶縁層101の両側に設けられてもよい。前記封止層102は、イオン絶縁層101を外装と密封接続することに用いられる。他の実施形態において、前記封止層102は、外装上に設けられてもよい。
【0033】
本発明のいくつかの実施形態において、前記封止層は、イオン絶縁層の表面の周縁部又はその全面に設けられる。前記封止層がイオン絶縁層の表面の周縁部に設けられる場合、封止層の幅は、要求されるシール幅の形成を保証するように、シール幅より大きければよく、特に制限されない。図3に示すように、封止層102がイオン絶縁層101の表面の周縁部に設けられるため、封止層の塗布量及び割合をできるだけ減少させ、不活性物質の割合を低下させ、電池セルのエネルギー密度を向上させることができる。前記封止層がイオン絶縁層の全面に設けられる場合、隔離板の水透過率を効果的に低下させることができるため、電気化学装置が高空気湿度環境で動作する時、隔離板の吸水による電気化学装置の短路、さらに安全故障をより効果的に回避することができる。
【0034】
本発明のいくつかの実施形態において、前記封止層がイオン絶縁層の表面の周縁部に設けられ、イオン絶縁層が導電性材料であり、隔離板の両側の電極アセンブリのうちの少なくとも一つは、隔離板と隣接する最外側がセパレータである。
【0035】
本発明のいくつかの実施形態において、前記封止層がイオン絶縁層の表面の周縁部に設けられ、イオン絶縁層が絶縁材料であり、隔離板の両側の電極アセンブリは、隔離板と隣接する最外側がセパレータ、正極集電体、負極集電体、正極活性材料、及び負極活性材料のうちの一つであることができる。
【0036】
本発明のいくつかの実施形態において、前記封止層がイオン絶縁層の全面に設けられ、隔離板の両側の電極アセンブリは、隔離板と隣接する最外側がセパレータ、正極集電体、負極集電体、正極活性材料、及び負極活性材料のうちの一つであることができる。
【0037】
本発明において、前記封止層の材料は、本発明の目的を達成できるものであれば特に限定されず、当業者に知られている任意の材料を使用することができ、例えば、前記封止層の材料は、ポリプロピレン、酸無水物変性ポリプロピレン、ポリエチレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-エチルアクリレート共重合体、エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-ビニルアルコール共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリエーテルニトリル、ポリウレタン、ポリアミド、ポリエステル、非晶性α-オレフィン共重合体及びその誘導体のうちの少なくとも一つを含む。
【0038】
もちろん、本発明の封止層は、イオン絶縁層の全面を覆う場合には、イオン絶縁の機能も有する。本発明において、隔離板は、便宜上、イオン絶縁層と封止層とに分けてが、封止層がイオン絶縁性を有していないことを意味するものではない。例えば、イオン絶縁層の
両側全体が封止層を覆う場合、イオン絶縁層は封止層とともにイオン絶縁の機能を果たす。
【0039】
本発明のいくつかの実施形態において、前記隔離板の厚みは、6~100μmである。前記隔離板は、イオン絶縁性を有するだけでなく、同時に特定の機械的強度も有する必要がある。そのため、前記隔離板が薄すぎると、機械的強度が低く、破損を引き起こして電気化学装置の性能ひいては安全性に影響を与える。前記隔離板が厚すぎると、電子の伝導に影響を及ぼすとともに、電気化学装置のエネルギー密度が低下して、電気化学装置の性能を発揮させることが困難となる。
【0040】
本発明の実施例において、封止層が密封領域のみに位置する場合、隔離板の厚みはイオン絶縁層自体の厚みである。封止層がイオン絶縁層全体を覆う場合、隔離板の厚みはイオン絶縁層の厚みとイオン絶縁層の両側に位置する封止層の厚みとの和である。本発明の目的を達成することができれば、イオン絶縁層の両側に位置する封止層の厚みは同一であっても異なっていてもよい。例えば、イオン絶縁層の両側に位置する封止層の厚みは同じである。
【0041】
本発明のいくつかの実施形態において、電気化学装置は、
(a)前記隔離板の水透過率が10-4g/(day・m・Pa)/3mm以下であること、
(b)前記隔離板の厚みが10~40μmであること、
(c)前記封止層の材料の融点が120~160℃であること、及び
(d)前記イオン絶縁層の材料の融点が165℃以上であることのうちの少なくとも一つの特徴を有する。
【0042】
本発明において、隔離板が外装と密封接続されるとは、隔離板の封止層が外装の内層と密封接続され、これによって、前記電気化学装置にそれぞれ独立した密封キャビティを形成させ、複数の電極アセンブリの間に液体直列電池の複数電極アセンブリ間のイオン絶縁を達成させ、内部短絡又は電解液高圧分解の安全リスクの発生を回避し、電気化学装置の安全性能を向上させる。したがって、封止材料の融点を上記した温度に限定することは、隔離板と外装との密封接続性を高める上でより好ましい。
【0043】
本発明のいくつかの実施形態において、前記電極アセンブリの構造は巻回構造又は積層構造を含む。
【0044】
本発明のいくつかの実施形態において、前記電極アセンブリの構造は巻回構造であり、電極アセンブリは片タブ又はマルチタブを含む。前記電極アセンブリが片タブを含むとは、正極片及び負極片からそれぞれ一つの正極タブ及び一つの負極タブが引き出される。前記電極アセンブリがマルチタブを含むとは、各巻回の正極片及び負極片からそれぞれ一つの正極タブ及び一つの負極タブが引き出されてもよく、2巻回又は複数巻回の正極片及び負極片からそれぞれ一つの正極タブ及び一つの負極タブが引き出されてもよく、最終的に一つの巻回構造の電極アセンブリは複数の正極タブ及び負極タブを含み、続いてトランスファーパッドによってタブリードを変換する。
【0045】
本発明のいくつかの実施形態において、前記電極アセンブリの構造は積層構造であり、電極アセンブリはマルチタブを含み、各層の正極片及び負極片からそれぞれ一つの正極タブ及び一つの負極タブが引き出されてもよく、最終的に一つの積層構造の電極アセンブリは複数の正極タブ及び負極タブを含み、続いてトランスファーパッドによってタブリードを変換する。
【0046】
本発明において、前記溶接の態様は本発明の目的を達成できる限り特に限定されない。前記溶接が、例えば、レーザ溶接、超音波溶接又は抵抗溶接等である。
【0047】
本発明でいう電極アセンブリは、正極片、負極片及びセパレータを含む電極アセンブリであってよく、上記した電極アセンブリを例として説明する。当業者であれば、以下の説明は例示的なものに過ぎず、本発明の保護範囲を限定するものではないことを理解すべきである。
【0048】
本発明において、正極片は、本発明の目的を達成できるものであれば特に限定されない。例えば、前記正極片は通常、正極集電体と正極活性材料とを含む。本発明において、前記正極集電体は、特に制限されず、当分野に知られている任意の正極集電体、例えば、銅箔、アルミ箔、アルミ合金箔及び複合集電体等であってもよい。前記正極活性材料は、特に制限されず、従来技術の任意の正極活性材料であってもよく、例えば、前記正極活物質は、ニッケルコバルトマンガン酸リチウム、ニッケルコバルトアルミニウム酸リチウム、リン酸鉄リチウム、コバルト酸リチウム、マンガン酸リチウム、及びリン酸マンガン鉄リチウムのうちの少なくとも一つを含む。本発明において、正極集電体及び正極活性材料の厚みは、本発明の目的を達成できるものであれば特に制限されない。例えば、正極集電体の厚みは8~12μmであり、正極活性材料の厚みは30~120μmである。
【0049】
本発明のいくつかの好ましい実施形態において、前記正極片は導電層をさらに含んでもよく、前記導電層は正極集電体と正極活性材料層との間に位置する。前記導電層の組成は、特に制限されず、当分野でよく使用される導電層でもよい。前記導電層は、導電剤及び接着剤を含む。
【0050】
本発明のいくつかの実施形態において、負極片は、本発明の目的を達成できるものであれば特に制限されない。例えば、前記負極片は通常、負極集電体と負極活性材料とを含む。本発明において、前記負極集電体は、特に制限されず、当分野に知られている任意の負極集電体、例えば、銅箔、アルミ箔、アルミ合金箔及び複合集電体等であってもよい。前記負極活性材料は、特に制限されず、当分野に知られている任意の負極活性材料を使用してもよい。前記負極活性材料は、例えば、人造黒鉛、天然黒鉛、メソカーボンマイクロビーズ、シリコン、ケイ素-炭素、ケイ素-酸素化合物、ソフトカーボン、ハードカーボン、チタン酸リチウム、及びチタン酸ニオブのうちの少なくとも一つを含んでもよい。本発明において、負極集電体及び負極活性材料の厚みは、本発明の目的を達成できるものであれば特に制限されない。例えば、負極集電体の厚みは6~10μmであり、負極活性材料の厚みは30~120μmである。
【0051】
本発明のいくつかの好ましい実施形態において、前記負極片は導電層をさらに含んでもよく、前記導電層は負極集電体と負極活性材料層との間に位置する。前記導電層の組成は、特に制限されず、当分野でよく使用される導電層でもよい。前記導電層は、導電剤及び接着剤を含む。
【0052】
前記導電剤は、本発明の目的を達成できるものであれば、特に制限されず、当分野に知られている任意の導電剤を使用してもよい。例えば、導電剤は、導電性カーボンブラック(Super P)、カーボンナノチューブ(CNTs)、カーボンファイバー、及びグラフェン等のうちの少なくとも一つを含んでもよい。前記接着剤は、本発明の目的を達成できるものであれば、特に制限されず、当分野に知られている任意の接着剤を使用してもよい。例えば、接着剤は、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、及びカルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC-Na)等のうちの少なくとも一つを含んでもよい。
【0053】
本発明のいくつかの実施形態において、セパレータ(又称隔膜)は、本発明の目的を達成できるものであれば特に制限されない。例えば、セパレータの厚みは5~15μmであってもよく、セパレータは、本発明の電解液に対して安定な材料からなる重合体又は無機物等を含んでもよい。
【0054】
例えば、セパレータは、基材層と表面処理層とを含んでもよい。基材層は、多孔構造を有する不織布、膜又は複合膜であってもよく、基材層の材料は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート及びポリイミドのうちの少なくとも一つを含んでもよい。任意に、ポリプロピレン多孔質膜、ポリエチレン多孔質膜、ポリプロピレン不織布、ポリエチレン不織布又はポリプロピレン-ポリエチレン-ポリプロピレン多孔質複合膜を使用してもよい。任意に、基材層の少なくとも一つの表面に表面処理層が設けられており、表面処理層は、重合体層又は無機物層であってもよく、重合体と無機物とを混合してなる層であってもよい。
【0055】
例えば、無機物層は、無機粒子及びバインダーを含み、前記無機粒子は特に制限されず、例えば、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化ハフニウム、酸化スズ、酸化セリウム、酸化ニッケル、酸化亜鉛、酸化カルシウム、酸化ジルコニウム、酸化イットリウム、炭化ケイ素、ベーマイト、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム及び硫酸バリウムのうちの少なくとも一つを含んでもよい。前記バインダーは特に制限されず、例えば、ポリフッ化ビニリデン、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ポリアミド、ポリアクリロニトリル、ポリアクリル酸エステル、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸塩、ポリビニルピロリドン、ポリビニルエーテル、ポリメタクリル酸メチル、ポリテトラフルオロエチレン及びポリヘキサフルオロプロピレンからなる群より選ばれる一種または複数の種類の組み合わせである。重合体層は重合体を含み、重合体の材料は、ポリアミド、ポリアクリロニトリル、アクリル酸エステルの重合体、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸塩、ポリビニルピロリドン、ポリビニルエーテル、ポリフッ化ビニリデン、及びポリ(フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン)のうちの少なくとも一つを含む。
【0056】
本発明でいうタブとは、正極片又は負極片から引き出された金属導体であり、電気化学装置の他の部分を直列接続又は並列接続するために用いられる。正極タブは正極片から引き出され、負極タブは負極片から引き出される。
【0057】
本発明でいう電解液は、リチウム塩と非水溶媒とを含んでもよい。本発明において、前記リチウム塩は、本発明の目的を達成できるものであれば、特に制限されず、当分野に知られている任意のリチウム塩を使用してもよい。例えば、リチウム塩は、LiPF、LiBF、LiAsF、LiClO、LiB(C、LiCHSO、LiCFSO、LiN(SOCF、LiC(SOCF、及びLiPOのうちの少なくとも一つを含んでもよい。例えば、リチウム塩は、LiPFを用いてもよい。本発明において、前記非水溶媒は特に制限されず、本発明の目的を達成できるものであればよい。例えば、非水溶媒は、カーボネート化合物、カルボン酸エステル化合物、エーテル化合物、ニトリル化合物、その他の有機溶媒のうちの少なくとも一つを含んでもよい。
【0058】
例えば、カーボネート化合物は、ジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジプロピルカーボネート(DPC)、メチルプロピルカーボネート(MPC)、エチルプロピルカーボネート(EPC)、メチルエチルカーボネート(MEC)、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)、ビニルエチレンカーボネート(VEC)、フルオロエチレンカーボネート(FEC)、1,2-ジフルオロエチレンカーボネート、1,1-ジフルオロエチレンカーボネート、1,1,2-トリフルオロエチレンカーボネート、1,1,2,2-テトラフルオロエチレンカーボネート、1-フルオロ-2-メチルエチレンカーボネート、1-フルオロ-1-メチルエチレンカーボネート、1,2-ジフルオロ-1-メチルエチレンカーボネート、1,1,2-トリフルオロ-2-メチルエチレンカーボネート、トリフルオロメチルエチレンカーボネートのうちの少なくとも一つを含んでもよい。
【0059】
本発明において、外装は、本発明の目的を達成できるものであれば特に制限されない。例えば、外装は内層と外層とを含んでもよく、内層は隔離板と密封接続され、そのため、内層の材料は高分子材料を含むことができ、これによって、良好な密封効果を達成し、同時に内層と外層との結合により電気化学装置の内部構造を効果的に保護することができる。本発明において、前記内層の材料は本発明の目的を達成できるものであれば特に制限されず、例えば、内層の材料は、ポリプロピレン、ポリエステル、p-ヒドロキシベンズアルデヒド、ポリアミド、ポリフェニレンエーテル、ポリウレタン等のうちの少なくとも一つを含む。本発明において、前記外層の材料は本発明の目的を達成できるものであれば特に制限されず、例えば、外層の材料は、アルミ箔、酸化アルミニウム層、窒化ケイ素層、Ni、Cu、Ag、Alのうちの少なくとも一つを含む。
【0060】
本発明において、外装の厚みは、本発明の目的を達成できるものであれば特に制限されない。例えば、外装の厚みは、60~200μmであり、このような厚みの外装は電気化学装置の内部構造を効果的に保護することができる。
【0061】
本発明において、隔離板と外装との密封接続方式は、本発明の目的を達成できるものであれば特に制限されない。例えば、密封方式は、熱プレスを用いて行うことができる。本発明において、前記熱プレスの条件は、本発明の目的が達成できるものであれば特に制限されないが、例えば、熱プレス温度が150~220℃であり、熱プレス圧力が0.1~0.6MPaである。
【0062】
本発明は、本発明が提供する電気化学装置を含む電子装置をさらに提供する。本発明の電子装置は、特に限定されず、従来技術で既知の任意の電子装置であってもよい。例えば、電子装置は、ノートコンピューター、ペン入力型コンピューター、モバイルコンピューター、電子ブックプレーヤー、携帯電話、携帯型ファクシミリ、携帯型コピー機、携帯型プリンター、ステレオヘッドセット、ビデオレコーダー、液晶テレビ、ポータブルクリーナー、携帯型CDプレーヤー、ミニディスク、トランシーバー、電子ノートブック、電卓、メモリーカード、ポータブルテープレコーダー、ラジオ、バックアップ電源、モーター、自動車、オートバイ、補助自転車、自転車、照明器具、おもちゃ、ゲーム機、時計、電動工具、閃光灯、カメラ、大型家庭用ストレージバッテリー、及びリチウムイオンコンデンサーなどを含むが、これらに限定されない。
【0063】
本発明の電気化学装置の調製方法は特に制限されず、当分野で公知の任意の方法を使用することができ、例えば、本発明は、以下の調製方法によって製造することができる。
【0064】
(1)負極片の調製:負極活性材料及び溶媒をスラリーに調製し、且つ均一に撹拌する。スラリーを負極片に均一に塗布して乾燥させ、片面が塗布された負極片を得る。負極片の他方の面に上記したステップを繰り返し、両面が塗布された負極片を得る。その後、以下のステップに使用するように負極片を切断する。負極活性材料の片面のコーティング厚みは70μmである。
【0065】
(2)正極片の調製:正極活性材料及び溶媒をスラリーに調製し、且つ均一に撹拌する。スラリーを正極片に均一に塗布して乾燥させ、片面が塗布された正極片を得る。正極片の他方の面に上記したステップを繰り返し、両面が塗布された正極片を得る。その後、以下のステップに使用するように正極片を切断する。正極活性材料の片面のコーティング厚みは65μmである。
【0066】
(3)電解液の調製:リチウム塩と非水溶媒とを混合して均一に攪拌し、リチウム塩含有濃度30%の電解液を得る。
【0067】
(4)電極アセンブリの調製:負極片、セパレータ、正極片を積み重ね且つ各層を一体に固定する;各電極アセンブリは一つの正極タブ及び一つの負極タブを含む;上記したステップを繰り返して複数の電極アセンブリを得る;電極アセンブリの構造は、巻回構造又は積層構造であってもよい。
【0068】
(5)隔離板:本発明が提供する隔離板を採用することができる。
【0069】
(6)電極アセンブリの組み立て:外装を組み立て治具内に置き、次に電極アセンブリと隔離板とを間隔設置し、且つ外装と電極アセンブリとを隣接させ、最後に密封して組み立て電極アセンブリを得る。
【0070】
(7)注液封止:それぞれ組み立て電極アセンブリの二つのキャビティに電解液を単独で注入し、以下の加工に使用するように、電極アセンブリの全てのタブをアルミラミネートフィルムの外に引き出す。
【0071】
(8)直列接続:レーザ溶接の方式で一つの電極アセンブリの正極タブと他の一つの電極アセンブリの負極タブとを一体に溶接接続し、直列接続を達成し、電池の組み立てが完了する。
【0072】
本発明が提供する電気化学装置は、二つの電極アセンブリを含んでもよく、三つ以上の電極アセンブリを含んでもよい。二つの電極アセンブリ又は三つ以上の電極アセンブリを含む電気化学装置の調製方法はいずれも上記した電気化学装置の調製方法を参照することができる。
【0073】
本発明で使用される用語は、一般的に当業者が通常に使用する用語であり、通常に使用する用語と一致しない場合、本発明における用語が優先する。
【0074】
具体的に、本発明において、以下の用語は以下の意味を有する。
測定方法:
【0075】
水蒸気透過率:
一定の厚み(例えば60μm)の膜を調製し、それをクランプ機構に配置し、エッジをゴムの大きな圧力で押す。装置の片側Aに固定温湿度の環境を作り、他側Bに水蒸気質量分析検出プローブを設置し、両側のガス交換は膜のみで行う。測定過程はまず膜を固定し、キャビティBを真空引きし、内部の水蒸気を排出する。その後、質量分析計をオンにし、該質量分析計は、キャビティAから浸透した水蒸気を連続的に受け取り、電気信号出力に変換する。上記した測定を24h又はそれ以上継続し、該期間内の水の浸透総量mを得て、浸透総量mを時間、水蒸气分圧、浸透面積、膜の厚みで割ると水蒸気透過率(単位g/(day・m・Pa)/3mm)を得ることができる。
【0076】
0.1C放電エネルギー密度:
電気化学装置を常温で30分間静置し、0.05Cの充電レートで電圧が4.4V(定格電圧)になるまで定電流で充電し、続いて0.05Cの放電レートで電気化学装置を3.0Vまで放電し、上記した充電/放電ステップを3サイクル繰り返して電気化学装置の化成を完了する。電気化学装置の化成が完了した後、0.1Cの充電レートで電圧が4.4Vになるまで定電流で充電し、続いて0.1Cの放電レートで電気化学装置を3.0Vまで放電し、その放電容量を記録し、続いてその0.1C放電時のエネルギー密度を計算する。
[式1]
【0077】
隔離板と外装との封止強度:
隔離板と外装とを封止した後、平坦部を取り、幅8mmのサンプルに裁断する。サンプルの一端の隔離板を引張計でクランプし、他端を引張計の他のクランプでクランプし、20mm/minの引張速度で両側へ引っ張り、隔離板と封止テープが完全に分離するまで行い、記録過程におけるピーク値は即ち引張力値である。
【0078】
65℃_90%相対湿度(RH)で7日間貯蔵後電気化学装置の厚みの増加率:
電池セルを1.0Cの電流で4.45Vまで定電流充電し、次に電流が0.05Cになるまで定電圧充電し、充電を停止し、次に1時間静置して電池セルを取り外し、電池セル初期厚みT1を測定する。該電池セルを65℃_90%RH環境に7日間貯蔵し、その厚みT2を測定し、且つ貯蔵初期の厚みと比べてその厚が増加し、増加率は(T2-T1)/T1*100%である。
【0079】
7.6V電圧プラトー自己放電率K:
リチウムイオン電池を0.5Cの電流で6.0V(直列電池)まで放電し、5分間静置した後、リチウムイオン電池を0.5Cの定電流で7.6Vまで充電し、次に7.6Vの定電圧で電流が0.05Cになるまで充電し、25℃±3℃の環境下で2日間静置し、そのときの電圧OCV1を測定し記録する。次に、リチウムイオン電池を25℃±3℃の環境下に2日間放置し続け、そのときの電圧OCV2を測定して記録し、以下の式によりK値を得る。
[式2]
【0080】
釘刺し測定:
【0081】
測定対象である電気化学装置を0.05Cの充電レートで電圧が4.45V(比較例1の定格電圧)又は8.90V(他の比較例及び全ての実施例)になるまでに定電流充電し、続いて電流が0.025C(オフ電流)になるまでに定電圧充電し、電池を満充電状態に到達させ、測定前の電気化学装置の外観を記録する。25±3℃の環境において電気化学装置に釘刺し測定を行い、鋼釘の直径は4mmであり、突刺し速度は30mm/sであり、釘刺し位置はそれぞれ正極タブ電極アセンブリのエッジから15mmの位置及び負極タブ電極アセンブリのエッジから15mmの位置に位置し、3.5分間測定を行うし又は電極アセンブリの表面温度が50℃まで低下した後に測定を停止し、10個の電池セルを一組とし、測定過程における電池状態を観察し、電池が燃焼・爆発しないことを判定基準とする。
【0082】
放電升温:
測定温度は25℃であり、一つの温度プローブが電池セルの中央に粘着され、電池セル本体の温度を監視し、且つ電池セルの表面に発泡綿が包まれ、電池セルと接触物との間の熱交換を弱める。測定過程は以下のとおりである。0.2Cの定電流で6V(直列電池セルが6Vである)又は3V(比較例における単一電池セルが3Vであり、以下同じ)まで放電し、次に0.5Cの定電流で8.4V又は4.2Vまで充電し、0.2Cで8.9V又は4.45Vまで充電し、電池セルの中心温度が常温25℃に下がるまで120分間静置する。同じ電力15Wで放電し、電池セル本体の放電過程の温度上昇を監視する。
【0083】
実施例1:
(1)負極片の調製:負極活性材料である人造黒鉛、導電性カーボンブラック(Super P)、スチレンブタジエンゴム(SBR)を重量比96:1.5:2.5で混合し、溶媒として脱イオン水を入れ、固形分含有量が70wt%であるスラリーに調製し、均一に撹拌した。スラリーを厚み10μmの負極集電体である銅箔の片面に均一に塗布し、110℃の条件で乾燥して、コーティング厚み150μmの片面に負極活性材料層が塗布された負極片を得た。当該負極片の他方の面に上記ステップを繰り返し、両面に負極活性材料層が塗布された負極片を得た。その後、以下のステップに使用するように負極片を41mm×61mmのサイズに裁断した。
【0084】
(2)正極片の調製:正極活性材料であるコバルト酸リチウム(LiCoO)、導電性カーボンブラック(Super P)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)を重量比97.5:1.0:1.5で混合し、溶媒としてN-メチルピロリドン(NMP)を入れ、固形分含有量が75wt%であるスラリーに調製し、均一に撹拌した。スラリーを厚み12μmの正極集電体であるアルミ箔の片面に均一に塗布し、90℃の条件で乾燥して、正極活性材料層の厚み100μmの正極片を得た。正極集電体であるアルミ箔の他方の面に上記ステップを繰り返し、両面に正極活性材料層が塗布された正極片を得た。その後、以下のステップに使用するように正極片を38mm×58mmのサイズに裁断した。
【0085】
(3)電解液の調製:乾燥したアルゴンガス雰囲気で、まず、有機溶媒であるエチレンカーボネート(EC)、メチルエチルカーボネート(EMC)及びジエチルカーボネート(DEC)を質量比EC:EMC:DEC=30:50:20で混合し、次に有機溶媒にリチウム塩であるヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF)を加えて溶解し、均一に混合し、リチウム塩の濃度が1.15mol/Lの電解液を得た。
【0086】
(4)電極アセンブリA及び電極アセンブリBの調製:セパレータ、両面塗布負極片、セパレータ、両面塗布正極片をこの順に積層して積層シートを得、次に、以下のステップに使用するように積層シート構造全体の四隅を固定した。ここで、各電極アセンブリは一つの正極タブ及び一つの負極タブを含み、セパレータは厚みが15μmであるポリエチレン(PE)膜を選択した。
【0087】
(5)隔離板:隔離板の厚みが30μmであり、イオン絶縁層は融点が165℃であるPPを選択し、イオン絶縁層の厚みが10μmであり、両側の封止層は融点が140℃であるPPを選択し、両側の封止層の厚みがそれぞれ10μmであり、隔離板の水蒸気透過率が3×10-4g/(day・m・Pa)/3mmであった。
【0088】
(6)電極アセンブリAの組み立て:ピット成形されたアルミラミネートフィルム1を組み立て治具内に置き、ピット面を上に向け、電極アセンブリAをピット内に置き、且つセパレータ面を上に向け、次に隔離板を電極アセンブリA上に置き、エッジを揃え、外力を印加して圧着して組み立て半製品を得た。
【0089】
(7)電極アセンブリBの組み立て:組み立て半製品を組み立て治具内に置き、隔離板面を上に向け、電極アセンブリBのセパレータ面を下に向け、隔離板上に置き、エッジを揃え、外力を印加して圧着し、次に別のピット成形されたアルミラミネートフィルムのピット面を下に向けて電極アセンブリBに被覆し、熱プレスの方式で周縁をヒートシールし、組み立て電極アセンブリを得た。ここで、熱プレス温度が185℃であり、熱プレス圧力が0.5MPaであり、密封領域の幅が2mmであり、包装袋付き密封厚みが0.3mmであり、密封領域の高分子層の厚みが約0.04mmであった。
【0090】
(8)注液封止:それぞれ組み立て電極アセンブリの二つのキャビティに電解液を単独で注入し、電極アセンブリA及び電極アセンブリBの全てのタブをアルミラミネートフィルムの外に引き出した。
【0091】
(9)直列接続:レーザ溶接の方式で電極アセンブリAの正極タブと電極アセンブリBの負極タブとを一体に溶接接続し、直列接続を達成し、電池の組み立てが完了した。
【0092】
実施例2
イオン絶縁層がTi金属箔であり、イオン絶縁層の厚みが10μmであった以外は実施例1と同様にした。
【0093】
実施例3
イオン絶縁層がSUS金属箔であり、イオン絶縁層の厚みが10μmであった以外は実施例1と同様にした。
【0094】
実施例4
イオン絶縁層がポリイミド(PI)膜であり、イオン絶縁層の厚みが10μmであった以外は実施例1と同様にした。
【0095】
実施例5
隔離板の厚みが6μmであり、イオン絶縁層がTi金属箔であり、イオン絶縁層の厚みが6μmであり、イオン絶縁層の周縁に厚みが10μm、幅が2mmである封止層が設けられ、封止層は、材料がPPであり、融点が140℃であった以外は実施例1と同様にした。
【0096】
実施例6
隔離板の厚みが100μmであり、イオン絶縁層の厚みが80μmであり、両側の封止層の厚みがそれぞれ10μmであった以外は実施例1と同様にした。
【0097】
実施例7
隔離板の厚みが15μmであり、イオン絶縁層の厚みが15μmであり、イオン絶縁層の周縁に厚みが10μm、幅が2mmである封止層が設けられ、封止層は、材料がPPであり、融点が140℃であった以外は実施例1と同様にした。
【0098】
実施例8
調製ステップ(1)~(3)は実施例1と同様にした。
【0099】
(4)電極アセンブリA及び電極アセンブリBの調製:両面塗布負極片、セパレータ、片面塗布正極片をこの順に積層して積層シートを得、且つ正極片の未塗布面を外に向け、次に、以下のステップに使用するように積層シート構造全体の四隅を固定した。ここで、各電極アセンブリは一つの正極タブ及び一つの負極タブを含み、セパレータは厚みが15μmであるポリエチレン(PE)膜を選択した。
【0100】
(5)隔離板:隔離板の厚みが50μmであり、イオン絶縁層は融点が165℃であるPPを選択し、イオン絶縁層の厚みが15μmであり、両側の封止層は融点が140℃であるPPを選択し、両側の封止層の厚みがそれぞれ10μmであり、隔離板の水蒸気透過率が3×10-4g/(day・m・Pa)/3mmであった。
【0101】
(6)電極アセンブリAの組み立て:ピット成形されたアルミラミネートフィルムを組み立て治具内に置き、ピット面を上に向け、電極アセンブリAをピット内に置き、且つ正極片の未塗布面を上に向け、次に隔離板を電極アセンブリA上に置き、エッジを揃え、外力を印加して圧着して組み立て半製品を得た。
【0102】
(7)電極アセンブリBの組み立て:組み立て半製品を組み立て治具内に置き、隔離板面を上に向け、電極アセンブリBのセパレータ面を下に向け、隔離板上に置き、エッジを揃え、外力を印加して圧着し、次に別のピット成形されたアルミラミネートフィルムのピット面を下に向けて電極アセンブリBに被覆し、熱プレスの方式で周縁をヒートシールし、組み立て電極アセンブリを得た。ここで、熱プレス温度が185℃であり、熱プレス圧力が0.5MPaであり、密封領域の幅が2mmであり、包装袋付き密封厚みが0.3mmであり、シール領域の高分子層の厚みが約0.04mmであった。
【0103】
(8)注液封止:それぞれ組み立て電極アセンブリの二つのキャビティに電解液を単独で注入し、電極アセンブリA及び電極アセンブリBの全てのタブをアルミラミネートフィルムの外に引き出した。
【0104】
(9)直列接続:レーザ溶接の方式で電極アセンブリAの正極タブと電極アセンブリBの負極タブとを一体に溶接接続し、直列に導通を達成し、電池の組み立てが完了した。
【0105】
実施例9
調製ステップ(1)~(3)は実施例1と同様にした。
【0106】
(4)電極アセンブリA及び電極アセンブリBの調製:両面塗布負極片、セパレータ、片面塗布正極片をこの順に積層して積層シートを得、且つ正極片の未塗布面を外に向け、次に、以下のステップに使用するように積層シート構造全体の四隅を固定した。ここで、各電極アセンブリは一つの正極タブ及び一つの負極タブを含み、セパレータは厚みが15μmであるポリエチレン(PE)膜を選択した。
【0107】
(5)隔離板:隔離板の厚みが30μmであり、中間層は融点が165℃であるPPを選択し、中間層の厚みが10μmであり、両側の封止層は融点が140℃であるPPを選択し、両側の封止層の厚みがそれぞれ10μmであり、隔離板の水蒸気透過率が3×10-4g/(day・m・Pa)/3mmであった。
【0108】
(6)電極アセンブリAの組み立て:ピット成形されたアルミラミネートフィルムを組み立て治具内に置き、ピット面を上に向け、電極アセンブリAをピット内に置き、且つ正極片の未塗布面を上に向け、次に隔離板を電極アセンブリA上に置き、エッジを揃え、外力を印加して圧着して組み立て半製品を得た。
【0109】
(7)電極アセンブリBの組み立て:組み立て半製品を組み立て治具内に置き、隔離板面を上に向け、電極アセンブリBの正極片の未塗布面を下に向け、隔離板上に置き、エッジを揃え、外力を印加して圧着し、次に別のピット成形されたアルミラミネートフィルムのピット面を下に向けて電極アセンブリBに被覆し、熱プレスの方式で周縁をヒートシールし、組み立て電極アセンブリを得た。ここで、熱プレス温度が185℃であり、熱プレス圧力が0.5MPaであり、密封領域の幅が2mmであり、包装袋付き密封厚みが0.3mmであり、シール領域の高分子層の厚みが0.04mmであった。
【0110】
調製ステップ(8)及び(9)は実施例1と同様にした。
【0111】
実施例10
イオン絶縁層がTi金属箔であり、イオン絶縁層の厚みが10μmであり、両側の封止層は融点が140℃であるPPを選択し、両側の封止層の厚みがそれぞれ10μmであった以外は実施例8と同様にした。
【0112】
実施例11
イオン絶縁層がTi金属箔であり、イオン絶縁層の厚みが10μmであり、両側の封止層は融点が140℃であるPPを選択し、両側の封止層の厚みがそれぞれ10μmであった以外は実施例9と同様にした。
【0113】
実施例12
封止層は融点が130℃である酸無水物変性PPを選択し、隔離板の水蒸気透過率が8×10-5g/(day・m・Pa)/3mmであった以外は実施例1と同様にした。
【0114】
実施例13
密封領域の厚みが0.1mmであり、密封領域の幅が2mmであった以外は実施例1と同様にした。
【0115】
実施例14
密封領域の厚みが0.05mmであり、密封領域の幅が2mmであった以外は実施例1と同様にした。
【0116】
実施例15
調製ステップ(1)~(4)は実施例1と同様にした。
【0117】
(5)電極アセンブリCの調製:セパレータ、両面塗布負極片、セパレータ、両面塗布正極片をこの順に積層して積層シートを得、次に、以下のステップに使用するように積層シート構造全体の四隅を固定した。ここで、電極アセンブリCは一つの正極タブ及び一つの負極タブを含み、セパレータは厚みが15μmであるポリエチレン(PE)膜を選択した。
【0118】
(6)隔離板A及び隔離板Bの選択:隔離板の厚みが30μmであり、イオン絶縁層は融点が165℃であるPPを選択し、イオン絶縁層の厚みが10μmであり、両側の封止層は融点が140℃であるPPを選択し、両側の封止層の厚みがそれぞれ10μmであり、隔離板の水蒸気透過率が3×10-4g/(day・m・Pa)/3mmであった。
【0119】
(7)電極アセンブリAの組み立て:ピット成形されたアルミラミネートフィルムを組み立て治具内に置き、ピット面を上に向け、電極アセンブリAをピット内に置き、且つセパレータ面を上に向け、次に隔離板を電極アセンブリA上に置き、エッジを揃え、外力を印加して圧着して組み立て半製品を得た。
【0120】
(8)電極アセンブリBの組み立て:ステップ(7)で得られた組み立て半製品を組み立て治具内に置き、隔離板Aを上に向け、電極アセンブリBのセパレータ面を下に向け、隔離板A上に置き、さらに隔離板Bを電極アセンブリB上に置き、エッジを揃え、外力を印加して圧着して組み立て半製品を得た。
【0121】
(9)電極アセンブリCの組み立て:ステップ(8)で得られた組み立て半製品を組み立て治具内に置き、隔離板Bを上に向け、電極アセンブリCのセパレータ面を下に向け、隔離板B上に置き、エッジを揃え、外力を印加して圧着し、次にピット成形されたアルミラミネートフィルムのピット面を下に向けて電極アセンブリCに被覆し、熱プレスの方式で周縁をヒートシールし、組み立て電極アセンブリを得た。ここで、熱プレス温度が185℃であり、熱プレス圧力が0.5MPaであり、密封領域の幅が2mmであり、包装袋付き密封厚みが0.27mmであり、シール領域の高分子層の厚みが約0.05mmであった。
【0122】
(10)注液封止:それぞれ組み立て電極アセンブリの二つのキャビティに電解液を単独で注入し、電極アセンブリA、B、Cの全てのタブをアルミラミネートフィルムの外に引き出した。
【0123】
(11)直列接続:レーザ溶接の方式で電極アセンブリAの正極タブと電極アセンブリBの負極タブとを一体に溶接接続し、電極アセンブリA及び電極アセンブリBを含む電気化学装置間の直列接続を達成し、レーザ溶接の方式で電極アセンブリBの正極タブと電極アセンブリCの負極タブとを一体に溶接接続し、電極アセンブリB及びCを含む電気化学装置間の直列接続を達成し、電池の組み立てが完了した。
【0124】
実施例16
隔離板A及び隔離板Bが実施例2と同様であった以外、実施例15と同様にした。
【0125】
実施例17
イオン絶縁層は炭素膜であり、イオン絶縁層の厚みが20μmであり、イオン絶縁層の周縁に厚みが10μm、幅が2mmである封止層が設けられ、封止層は、材料がPPであり、融点が140℃であった以外は実施例1と同様にした。
【0126】
実施例18
イオン絶縁層はグラフェン膜であり、イオン絶縁層の厚みが20μmであり、イオン絶縁層の周縁に厚みが10μm、幅が2mmである封止層が設けられ、封止層は、材料がPPであり、融点が140℃であった以外は実施例1と同様にした。
【0127】
実施例19
封止層は融点が120℃であるポリフェニレンエーテルを選択し、隔離板の水蒸気透過率が2.5×10-4g/(day・m・Pa)/3mmであった以外は実施例1と同様にした。
【0128】
実施例20
(1)負極片の調製:負極片を41mm×550mmのサイズに裁断した以外は実施例1と同様にした。
【0129】
(2)正極片の調製:正極片を35mm×547mmのサイズに裁断した以外は実施例1と同様にした。
【0130】
(3)電解液の調製:乾燥したアルゴンガス雰囲気で、まず、有機溶媒であるエチレンカーボネート(EC)、メチルエチルカーボネート(EMC)及びジエチルカーボネート(DEC)を質量比EC:EMC:DEC=30:50:20で混合し、次に有機溶媒にリチウム塩であるヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF)を加えて溶解し、均一に混合し、リチウム塩の濃度が1.15mol/Lの電解液を得た。
【0131】
(4)電極アセンブリA及び電極アセンブリBの調製:セパレータ、両面塗布負極片、セパレータ、両面塗布正極片を積層し、次に一端から卷き始め、最終的に巻芯に巻き、負極片を最外側に配置した。ここで、各電極アセンブリは一つの正極タブ及び一つの負極タブを含み、セパレータは厚みが15μmであるポリエチレン(PE)膜を選択した。
【0132】
(5)隔離板:隔離板の厚みが30μmであり、中間層は融点が165℃であるPPを選択し、中間層の厚みが10μmであり、両側の封止層は融点が140℃であるPPを選択し、両側の封止層の厚みがそれぞれ10μmであり、隔離板の水蒸気透過率が3×10-4g/(day・m・Pa)/3mmであった。
【0133】
(6)電極アセンブリAの組み立て:ピット成形されたアルミラミネートフィルム1を組み立て治具1内に置き、ピット面を上に向け、電極アセンブリAをピット内に置き、次に隔離板を電極アセンブリA上に置き、外力を印加して圧着して組み立て半製品を得た。
【0134】
(7)電極アセンブリBの組み立て:組み立て半製品を組み立て治具2内に置き、隔離板を上に向け、電極アセンブリBを隔離板上に置き、外力を印加して圧着し、次にピット成形されたアルミラミネートフィルム2のピット面を下に向けて電極アセンブリB上に被覆し、熱プレスの方式で周縁をヒートシールし、組み立て電極アセンブリを得た。ここで、熱プレス温度が185℃であり、熱プレス圧力が0.5MPaであり、密封領域の幅が2mmであり、包装袋付き密封厚みが約0.27mmであり、シール領域の高分子層の厚みが約0.05mmであった。
【0135】
(8)注液封止:それぞれ組み立て電極アセンブリの二つのキャビティに電解液を単独で注入し、電極アセンブリA及び電極アセンブリBの全てのタブをアルミラミネートフィルムの外に引き出した。
【0136】
(9)電極アセンブリの直列接続:レーザ溶接の方式で電極アセンブリAの正極タブと電極アセンブリBの負極タブとを一体に溶接接続し、電極アセンブリA及び電極アセンブリB間の直列接続を達成し、電池の組み立てが完了した。
【0137】
実施例21
密封領域中の高分子シール領域の厚みが20μmであり、密封領域の幅が2mmであった以外は実施例1と同様にした。
【0138】
比較例1
調製ステップ(1)~(3)は実施例1と同様にした。
【0139】
(4)電極アセンブリA及び電極アセンブリBの調製:両面塗布負極片、セパレータ、両面塗布正極片をこの順に積層して積層シートを得、次に、以下のステップに使用するように積層シート構造全体の四隅を固定し、各電極アセンブリは一つの正極タブ及び一つの負極タブを含んていた。ここで、セパレータは厚みが15μmであるポリエチレン(PE)膜を選択した。
【0140】
(5)注液封止:電極アセンブリAと電極アセンブリBとをアルミラミネートフィルムで包装し、さらに包装の周縁を密封し、それぞれ電極アセンブリA及び電極アセンブリBが位置する密封キャビティに単独で電解液を注入し、かつそれを化成(0.02C定電流で3.3Vまで充電し、さらに0.1C定電流で3.6Vまで充電する)し、さらに電極アセンブリA及び電極アセンブリBの全てのタブをアルミラミネートフィルムの外に引き出した。
【0141】
(6)直列接続:レーザ溶接の方式で電極アセンブリAの正極タブと電極アセンブリBの負極タブとを一体に溶接接続し、直列接続を達成し、電池の組み立てが完了し、その構造概略図は図4に示す。
【0142】
比較例2
調製ステップ(1)~(4)は比較例1と同様にした。
【0143】
(5)封止注液及び接続:電極アセンブリA及び電極アセンブリBのタブはそれぞれ電極アセンブリの長さ方向に沿って引き出され、電極アセンブリの両側に位置し、且つ正極タブにシーラントが塗布され、レーザ溶接の方式で電極アセンブリAの負極タブ及び電極アセンブリBの正極タブを一体に溶接し、電極アセンブリAと電極アセンブリBとの間の直列導通を達成した。直列に接続された電極アセンブリA及び電極アセンブリBは、フォーム成形されたアルミラミネートフィルムで囲まれていた。封止時に外輪郭頂側を密封し、且つ、電極アセンブリA及び電極アセンブリBの正極シーラントに沿って電極アセンブリの幅方向に密封封止を行い、電極アセンブリA及び電極アセンブリBをそれぞれ独立した密封キャビティに位置させ、且つ単独で電解液を注入した。封止後、電極アセンブリA及び電極アセンブリBの長さ方向の一方側に正極タブを引き出し、他方側に負極タブを引き出し、電池の組み立てが完了し、その構成の模式図は図5に示す。
【0144】
比較例3
調製ステップ(1)~(4)は比較例1と同様にした。
【0145】
(5)電極アセンブリAの組み立て:電極アセンブリAをピット成形されたアルミラミネートフィルムのピット内に入れ、電極アセンブリAをアルミラミネートフィルムのピットの左側と接触させ且つ位置合わせし、もう半分のアルミラミネートフィルムを覆い、続いて電極アセンブリAの片側を圧着した。電極アセンブリAの右側境界位置に対応するアルミラミネートフィルムに接着剤を塗布し、且つ上下層のアルミラミネートフィルムを圧着して凝固成形した。
【0146】
(6)電極アセンブリBの組み立て:ステップ(5)で得られた半製品において、電極アセンブリAの右側の空き領域に電極アセンブリBを入れ、電極アセンブリBの左側は接着剤塗布領域に接触して位置合わせ、且つアルミラミネートフィルム全体に対して頂部熱プレス封止を行い、頂部封止は接着剤塗布領域に垂直であり、且つ両者が交差し、接触位置が密封され、電極アセンブリAと電極アセンブリBをそれぞれ独立した密封キャビティ内に位置させた。
【0147】
(7)注液封止:それぞれ電極アセンブリA及び電極アセンブリBが位置する密封キャビティに単独で電解液を注入し、且つ注液箇所のアルミラミネートフィルムを熱プレス密封し、以下のステップに使用するように電極アセンブリA及び電極アセンブリBの全てのタブをアルミラミネートフィルムの外に引き出した。
【0148】
(8)直列接続:レーザ溶接の方式で電極アセンブリAの正極タブと電極アセンブリBの負極タブとを一体に溶接接続し、直列接続を達成し、電池の組み立てが完了し、その構造概略図は図6に示す。
【0149】
比較例4
調製ステップ(1)~(4)は比較例1と同様にした。
【0150】
(5)電極アセンブリの組み立て:ピット成形された包装膜(アルミラミネートフィルム、厚み約90μm)を組み立て治具内に置き、ピット面を上に向け、電極アセンブリAをピット内に置き、電極アセンブリBを電極アセンブリAの上に置き、且つ圧着した。次に、別の包装膜のピット面を下に向けて電極アセンブリBに覆い、周縁をヒートシールした。
【0151】
その他のステップは比較例1と同様にした。
【0152】
比較例5
調製ステップ(1)~(3)は比較例1と同様にした。
【0153】
(4)注液封止:比較例1における電極アセンブリA及び電極アセンブリB中の全ての極片及びセパレータを積層して一つの電極アセンブリになり、次に、外装に入れ、注液口を残して封止し、一つの正極タブ及び一つの負極タブを引き出した。注液した後に注液口を封止し、直列接続のないリチウムイオン電池を形成した。
【0154】
比較例6
密封領域中の高分子シール領域の厚みが120μmであり、密封領域の幅が2mmであった以外は実施例1と同様にした。
【0155】
比較例7
密封領域中の高分子シール領域の厚みが16μmであり、密封領域の幅が2mmであった以外は実施例1と同様にした。
【0156】
比較例8
密封領域中の高分子シール領域の厚みが40μmであり、密封領域の幅が5mmであった以外は実施例1と同様にした。
【0157】
比較例9
隔離板の水透過率が1.7×10-2g/(day・m・Pa)/3mmであった以外は実施例1と同様にした。
【0158】
各実施例及び比較例のデータ及び測定結果を表1に示す。
【0159】
【表1-1】
【0160】
【表1-2】
【0161】
【表1-3】
【0162】
以上の実施例から分かるように、本発明によれば、直列接続により電池の出力電圧が向上し、高エネルギー密度及び高釘刺し合格率を維持しつつ、自己放電速度が低い。本発明の電池は、本発明の隔離板を採用することにより、湿潤環境内での安定性が著しく向上し、厚み増加率を低く維持すし、これは、本発明の実施例の電池では、水蒸気が電池内部に浸透することを防止し、電池の使用寿命を向上できることが示される。隔離板の水蒸気透過率が高すぎると、例えば、本発明の範囲を超えると、電池の厚み増加率が著しく増大し、これは、電池の耐水性が低下することが示され、使用寿命に影響を与える可能性がある。隔離板の水蒸気透過率が低すぎると、材料に対する要求が著しく高くなり、製造コストが著しく上昇する。シール厚みとシール幅との比が本発明の範囲の下限値を下回ると、例えば、電池のシール幅が大きすぎる場合、封止強度は向上するが、電池のエネルギー密度が著しく低下し、そして、電池のシール厚みが小さすぎる場合、封止強度が著しく低下する。シール厚みとシール幅との比が本発明の範囲の上限値を超えると、例えば、シール厚みが大きすぎる場合、電池の増加率は著しく増加する。いかなる理論にも拘束されるものではないが、シール厚みが大きすぎると、シール領域から電池内部へ水蒸気の侵入が起こり、電池の耐水性が低下するおそれがあると考えられる。
【0163】
上記のものは本発明の好ましい実施例だけで、本発明を限定するためではなく、本発明の主旨と原則の範囲内で行われた変更、同等の代替、改善などは、本発明の保護の範囲に含まれるものとする。
図1
図2
図3
図4
図5
図6